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戦国小町苦労譚

一五七九年十二月中旬

靜子原本打算在京停留約一週後離開,返回尾張,卻總以各種理由被留在京中。

静子は当初一週間程度の滞在で京を離れ、尾張へと帰還する予定だったのだが、何かと理由を付けては京で足止めを食らっていた。

不過她也不是單純為了安撫朝廷才留下來的。

だが彼女とて単に朝廷を宥(なだ)めすかす為だけに居残っているわけではない。

她早就注視著西端火之國,也就是九州的動向。

かねてより、彼女は西の果ては火の国こと九州の動向を注視していたのだ。

這並非因為九州的國人們可能成為阻礙信長統一天下的想像敵,而是因為過去一年島津家已握有統一九州的有力態勢。

それは信長の天下統一を阻む可能性が高い仮想敵が九州の国人達だったからではなく、ここ一年で島津(しまづ)家が九州統一に王手をかけていたからだった。

且其速度遠超靜子的預想。

そしてその速度は静子の予想を遥かに上回るものであった。

「直到前年還是大友、島津、龍造寺三家鼎立的時代,結果島津家一瞬間就躍進了啊。」

「つい一昨年(おととし)まで大友(おおとも)、島津、龍造寺(りゅうぞうじ)の三家鼎立(ていりつ)(互角の実力を持つ三者が、競合しながらも安定している様子)時代だったのに、あっという間に島津家が躍進しちゃったなあ」

靜子在京都宅邸的私室把九州地圖攤在地板上喃喃自語。

九州の地図を京屋敷にある静子の私室で床に広げながら静子は呟く。

她在九州的東北部放上大友家的札,西北部放上龍造寺的札,最後在九州南部放上島津家的札。

彼女は九州北東部に大友家の札を置き、北西部に龍造寺の札を、最後に九州南部に島津家の札を置いた。

在南部之中,於肥後(今熊本)南部放上相良家的札,肥後中部放上阿蘇家的札。

南部の中でも肥後(ひご)(現在の熊本)南部に相良(さがら)家の札、肥後中部に阿蘇(あそ)家の札を置く。

因為這兩家在大友家的支持下保持獨立,她便在各自的札旁也放上大友家的札。

この二家は大友家の支援を受けて独立を保っているため、それぞれの札の横に大友家の札も添えた。

九州南部處於島津家與相良家相互牽制的局面,縱使相良家有勇將,仍難以抵擋氣勢如虹的島津家猛攻,處於劣勢。

九州南部は島津家と相良家が睨(にら)み合う状勢であり、勇猛な将を抱える相良家といえども勢いに乗った島津家の猛攻に抗えず、劣勢を強いられている。

「大友家大幅衰落,曾追隨其威光的部下多人倒戈,再被龍造寺攻勢幾乎致命一擊,情況就是如此。」

「大友家は大きく力を落とし、その威光に従っていた配下が多数離反。とどめと言わんばかりに龍造寺の攻勢を受けている、と」

大友家應伊東氏之請(被島津家驅逐出日向國),率大軍南下。

大友家は島津家によって日向(ひゅうが)国を追われた伊東氏の要請を受け、大軍を率いて南下した。

對此島津家在前線的高城據城迎擊,此役後被稱為耳川之戰。

これに対して島津家は最前線となった高城(たかじょう)に籠城して迎え撃ち、後に耳川(みみがわ)の戦いと呼ばれるいくさとなる。

起初兵力寡少的島津家被擁有大軍的大友軍包圍,並以數量優勢持續攻勢。

当初は寡勢(かぜい)で籠城する島津家を、大軍を擁する大友軍が包囲して数的優位を生かした攻勢を続けていた。

然而高城本身東南為險崖、西為深谷,僅能由北方攻入,是座天然要塞,加上城主島津家久決死抵抗,使戰況膠著。

ところが高城自体が東と南が急崖、西は谷に囲まれ北側からしか攻め込めないという天然の要塞であり、城主の島津家久(いえひさ)が決死の抵抗を続けたため戦況が膠着(こうちゃく)する。

島津義久率領本隊到達後,局勢為之一變。

そこへ島津義久(よしひさ)率いる本隊が到着することで状況が一変した。

在島津軍猛攻下敗退的大友軍,為返回本國豐後國必須渡過暴漲的耳川,遭追擊時許多將士在河中溺斃。

島津軍の猛反撃を受けて敗走した大友軍は、本国である豊後(ぶんご)国へと戻るため増水した耳川を渡らなければならず、追撃を受けた大友軍将兵の多くが川で溺死してしまった。

如此一來九州的勢力圖被改寫,島津家乘勝攻下肥後的相良家,並伸手向其後方的阿蘇家進逼。

こうして九州の勢力図が塗り替わったのだが、島津家はその余勢を駆って肥後の相良家を降し、更にその背後に控える阿蘇家へと手を伸ばしている。

阿蘇家有以智將聞名的甲斐宗運鎮守,然而島津家發動不容智謀發揮的正面消耗戰。

阿蘇家には知将で知られる甲斐(かい)宗運(そううん)が控えていたのだが、島津家は智謀を許さぬ真正面からの削りあいを仕掛けた。

他們殘酷地把已降服的相良家將兵當作先鋒去挑釁阿蘇家,強迫其消耗。

それは降伏させた相良家の将兵を先兵として阿蘇家に嗾(けしか)け、消耗を強いるという残酷な策であった。

讓往日盟友相互爭鬥,不論誰勝均成島津之利,這是徹底排除情感的理性而巧妙的戰術。

かつての盟友同士を争わせ、どちらが勝っても島津の利益となる。完全に情を排した合理的かつ巧みな戦術であった。

「若能擊倒這兩家,島津將完全掌控南九州;另一方面,北方的龍造寺雖然致力擴張勢力……」

「この二家を倒せば島津は南九州を完全に掌握する。一方、北の龍造寺は勢力拡大に勤しんでいるけれど……」

靜子用指尖彈了彈龍造寺家的札。

静子は龍造寺家の札を指先で弾いた。

現任當主龍造寺隆信被畏為「肥前之熊」的猛將,但據報他隨著勢力擴大沉溺酒色,猜疑心亦日增。

現当主の龍造寺隆信(たかのぶ)は「肥前(ひぜん)の熊」と恐れられる猛将だが、勢力が拡大するにつれて酒色に溺れ、猜疑(さいぎ)心を深めているという報告が入っている。

他肅清諫言的忠臣,甚至連曾重用的義弟鍋島直茂也被疏遠。

諌言(かんげん)する忠臣を粛清し、あまつさえ重用していた義弟の鍋島(なべしま)直茂(なおしげ)すら遠ざけている始末だ。

「抱著不知何時會爆炸的內部炸彈而一路擴張的路線,如同史實所示,遲早會被部下的反亂所絆倒。」

「内部にいつ破裂するか分からない爆弾を抱えたままの拡大路線。史実通りなら、遠からず部下の反乱で足を掬(すく)われる」

無論如何,往後數年九州恐將陷入以血還血的戰亂狀態。

いずれにしても向こう数年、九州は血で血を洗う戦乱状態となるであろう。

宛如將有毒生物囚於密閉的壺中互相殘殺的蟲毒之術一般。

さながら密閉した壺の中に有毒生物を閉じ込めて互いに殺し合わせる蟲毒(こどく)と呼ばれる呪法のようだ。

閱讀了其他報告後,靜子作出的結論是「靜觀」。

他の報告書も読み込み、静子が下した結論は「静観」であった。

若現在我方先出手,三家可能會為「反織田」結成同盟。

今こちらから手を出せば、敵対する三家が「反織田」で結束しかねない。

靜子認為最佳策略是待他們彼此消耗殆盡,再趁勝者一剪除,坐收「漁夫之利」。

彼らが互いに消耗しきったところで、勝者のみを潰す「漁夫の利」を狙うが上策と考えた。

「好了,九州的方針就如此。……問題在這邊了吧。」

「さて、九州の方針はこれで良し。……問題は、こっちか」

靜子摺好地圖,輕輕嘆了口氣。

静子は地図を畳み、小さく溜息を吐いた。

今日接到信長的茶會邀請。

本日、信長より茶会の誘いがあったのだ。

是命令她在從京返回尾張的途中前往安土一趟。

京より尾張へと戻る途中で安土へ立ち寄れとの命令である。

若只是普通茶會倒無妨,但以近日信長的狀態,總覺得不可能只是閒聊結束。

ただの茶会なら良いが、昨今の信長の様子からして、単なる世間話で終わるはずがないという予感があった。

被引見進入的茶室裡瀰漫著奇異的氣息。

案内された茶室には、奇妙な空気が漂っていた。

信長既不算興高采烈,亦未至於不悅。

信長は上機嫌ではないが、不機嫌でもない。

那如同風止平靜的湖面般的寂靜,反而讓人感受到緊繃的壓力。

風が絶え完全に凪(な)いだ湖面のような静けさが、逆に張り詰めた緊張を感じさせる。

「今日也有好茶與有趣的點心。」

「今日も良い茶と、面白い菓子だ」

信長喝茶歇息時,把一塊顯示同心圓狀層面的點心巴姆庫亨塞入口中,忽然將銳利的目光投向靜子。

茶を喫し、一息ついた信長が、同心円状の層を成した切り口を見せる菓子、バウムクーヘンを口に放り込みながら、ふいに鋭い視線を静子に向けた。

「順帶一提,我有件事想知道,你不像周遭那些芸芸眾生一樣,會關心我的想法嗎?」

「ところで気になったのだが、貴様は周りの有象無象のように、わしの考えが気にならんのか?」

信長所說的「想法」,指的是天下統一後的統治體制。

信長の言う「考え」とは、天下統一後の統治体制のことである。

關白?征夷大將軍?還是太政大臣?

関白か、征夷大将軍か、太政大臣か。

信長坐上哪一個位子,公家、武家與寺社的既得權益就會因此決定。

信長がどの椅子に座るかで、公家も武家も寺社も、その既得権益がどうなるかが決まる。

這是日之本中各方權力者屏息以待的最大關切。

日ノ本中の権力者が固唾を飲んで見守っている最大の関心事だ。

「若說不在意那是謊言。但我認為,上樣尚未做出答覆。」

「気にならぬと言えば嘘になります。ですが、上様はまだ答えを出しておられぬ、と私は考えております」

「哦?」

「ほう?」

「日之本的政道一切屬於上樣。正因如此,上樣才不願被既有框架所限制,而在尋求最為合適的形態,不是嗎?」

「日ノ本の政道は全て上様のもの。なればこそ、既存の枠(わく)に収まることを良しとせず、最も相応しき形を模索されている最中ではありませんか?」

靜子說完,信長露出狡黠的笑容。

静子の言葉に、信長はニヤリと笑った。

「你也會這麼說了呢……那麼,你會怎麼做?當作打發時間,說來聽聽。」

「貴様も言うようになったな。……では、貴様ならどうする? 暇つぶしだ、申してみよ」

要說只是消遣,這問題太沉重了。

暇つぶしと言うには、あまりに重い問いだった。

但靜子決定說出她長久醞釀的一個構想。正因為有信長這樣的「超人」,更應當提出來。

だが静子は、以前から温めていたある構想を口にすることにした。信長という「超人」がいる今だからこそ、言わねばならないことだ。

「上樣,關白是朝廷的臣子,將軍歸根究柢也只是武家的首領。任何職位,要完全壓制朝廷、公家、寺社等古老權威,似乎都有些『器量』不足。」

「上様。関白は朝廷の臣、将軍とて所詮は武家の頭領に過ぎません。いずれの職も、朝廷や公家、寺社といった古き権威を完全に抑え込むには、些か『器』が小そうございます」

「那該如何做呢?」

「では如何にする?」

「不是以人為上,而是把『法』置於最高位。」

「人ではなく、『法』を最上位に置くのです」

「法?」

「法、だと?」

「是。制定一部武家、公家與百姓皆須平等遵守的絕對法,讓法支配日之本。如此可防止恣意的權力濫用,使人人都能信服的統治成為可能。」

「はい。武家も、公家も、民も、等しく従わねばならぬ絶対的な法を制定し、法が日ノ本を支配する形にします。さすれば、恣意(しい)的な権力行使を防ぎ、誰もが納得する統治が可能となりましょう」

這就是所謂的「法治國家」的概念。

いわゆる「法治国家」の概念である。

從人治轉向法治。那是邁向近代國家的第一步。

人の支配から法の支配へ。それは近代国家への第一歩だ。

信長一手扶著下巴,似乎在反覆咀嚼靜子的提案。

信長は頤(おとがい)に手を当て、静子の提案を反芻しているようだった。

過了一會兒,他緩緩開口。

やがて、彼はゆっくりと口を開いた。

他的聲音低沉,帶著令茶室空氣似乎凝結的威壓感。

その声は低く、茶室の空気が凍(い)てつくような威圧感を孕(はら)んでいた。

「……靜子。法處於最高地位,是否就表示連我這信長也要服從法、被法所束縛?」

「……静子。法が最上位ということは、この信長ですら、その法に従い、縛られるということか?」

一股寒意沿著靜子的脊背竄起。

静子の背筋に冷たいものが走る。

這是一個究極的二選一:若答「是」,便是不敬於主君;若答「否」,便導致論理破綻。

これは「是」と答えれば主君への不敬、「否」と答えれば論理の破綻となる、究極の二択だ。

信長的眼光銳利得仿佛能看透靜子靈魂深處,謊言與掩飾無法奏效。

信長の眼光は、静子の魂の底まで見透かすように鋭い。嘘や誤魔化しは通じない。

靜子用自己的指甲按住顫抖的膝蓋,定下決心盯著信長。

静子は震える膝を自身の爪で押し留め、覚悟を決めて信長を見据えた。

「……正是如此。」

「……左様でございます」

「哦。你是說要給我戴上項圈?」

「ほう。わしに首輪をつけると言うか」

「上樣是平定此亂世的超人。即便沒有什麼法令,僅憑您的威光也能治世。然而……繼承您衣缽之人未必也同樣是超人。」

「上様はこの乱世を平らげた超人です。法などなくとも、その御威光だけで世は治まりましょう。ですが……上様の後を継ぐ者が、上様と同じ超人とは限りませぬ」

靜子伏地,額頭幾乎擦在榻榻米上。

静子は畳に額を擦り付けるように平伏した。

「倚賴上樣威光的統治,一旦上樣不在便會瓦解。要讓織田的世代延續百年千年,必須以不是以上樣這個『個人』,而是誰也撼動不了的『法』為根基!為此,始祖上樣您本人必須示範遵從法的姿態!」

「上様の御威光に頼った支配は、上様がいなくなった瞬間に崩れ去ります。織田の世を百年、千年と続かせるには、上様という『個』ではなく、誰にも揺るがせぬ『法』という礎が必要なのです! その為には、始祖たる上様ご自身が法に従う姿勢を見せて頂かねばなりませぬ!」

說到底的靜子做好了被斬首的覺悟。

言い切った静子は、首が飛ぶことを覚悟した。

茶室內籠罩著沉重的沉默。

茶室に重苦しい沈黙が落ちる。

一秒鐘彷彿成了永恆。

一秒が永遠のように感じられた。

過了片刻――。

やがて――。

「咯、咯咯咯……哈——哈哈哈哈!!」

「く、くくく……はーっはっはっは!!」

如爆炸般的哄笑打破了寂靜。

爆発するような哄笑(こうしょう)が、静寂を打ち破った。

戰戰兢兢地抬起臉,眼前是抱腹大笑的信長。

恐る恐る顔を上げると、そこには腹を抱えて笑う信長の姿があった。

殺氣煙消雲散,他臉上掛著如孩童般天真的愉悅。

殺気は霧散し、まるで子供のような無邪気な愉悦が顔に浮かんでいる。

「你要把我塞進模子裡嗎!有趣,真是痛快!能為我死後的事繪製藍圖的,只有你了」

「わしを型枠に押し込むか! 面白い、実に痛快だ! 己が死んだ後のことまで図面を引けるのは、貴様くらいよ」

「呃、上樣……?」

「う、上様……?」

「好吧。我就乘上名為『法』的神輿吧」

「良いだろう。わしが法という名の神輿(みこし)に乗ってやろうではないか」

信長放下茶碗,將視線投向窗外尾張的方向。

信長は茶碗を置くと、窓の外、尾張の方角へと視線を投げた。

「靜子,我聽說你在尾張打造的那條『鐵之道』了。就是那種黑鐵之馬奔馳的東西」

「静子、貴様が尾張で作らせたという『鉄の道』の話を聞いたぞ。黒鉄(くろがね)の馬が走るという、あれだ」

「是、是的。是前些日子也讓靜之看過的那輛蒸氣機車吧?」

「は、はい。先日、静之にも見せた蒸気機関車のことでございましょうか?」

「嗯。聽說那東西有可怕的力量,但只能在預先鋪設好的鐵道(レール)上行駛,對吧?」

「うむ。あれは凄まじい力を持つそうだが、予め敷かれた鉄の道(レール)の上しか走れぬのだったな?」

「是的。因為太過沈重,若直接在地面上行走會陷下去而動不了。只有在堅固的地基和鐵道之上,才能發揮出那等荒唐的力量」

「はい。重量がありすぎますゆえ、地面を直に走れば沈んで動けなくなります。強固な地盤と、鉄の道があって初めて、あの馬鹿げた力を発揮できます」

「法,說的就是那個」

「法とは、つまりそれよ」

信長拍掌擊膝,點頭表示理解。

信長は膝を打ち、得心がいったように頷く。

「鋪設名為『法』的鐵道,其上由名為『國』的車輛行駛。正因有了道路,才能不致偏離,以牛馬絕對無法比擬的速度與力量向未來前進……不是這樣嗎?」

「法という名の『鉄の道』を敷き、その上を国という『車両』が走る。道があるからこそ、逸脱することなく、牛馬では到底及ばぬ速度と力で未来へと進める……そういうことではないか?」

靜子瞪大了眼睛。

静子は目を見開いた。

將她提出的法治國概念,比喻為信長未曾見過的鐵路系統,一瞬間便看穿其本質。

自らが提案した法治国家の概念を、信長は見たこともない鉄道システムに喩(たと)えて、一瞬で本質を理解してみせたのだ。

「上樣所言極是。縱然君王可行無路之道,但如此一來後人必然迷惘。我認為鋪設堅固的鐵道,才是留給下一代最大的禮物」

「上様の仰る通りでございます。道なき道を征くのは覇王の特権ですが、それでは後に続く者が迷います。強固な鉄の道を敷くことこそ、次代への最大の贈り物かと」

「將法置於至上是好主意。但光有一張紙沒有人會自動服從。既然如此,在制定法之後,便需要一個能讓人遵守它的組織」

「法を上に置くのは良い案じゃ。だが紙切れ一枚で誰もが従うはずもなし。ならば法を制定した後、それを守らせるようにする組織が必要となろう」

對於信長的提問,靜子點頭。無論制定多卓越的法律,總會有人違反,這是世事常情。

信長の問いに静子は頷く。どの様な素晴らしい法を制定しても、それを破る者が出てくるのが世の常だ。

若無法嚴懲違法者,該法就會喪失意義。

その時、破った者を厳しく罰することができなければ、その法は意味を失う。

需要行使現今所謂警察權的法執行機關。

現在でいう警察権(けいさつけん)を行使する法執行機関(ほうしっこうきかん)が必要となるのだ。

「若委由各國自行管理法律,執行上將會出現差異。因此必須在日之本創立一個統一的組織」

「それぞれの国に法の管理を任せるのでは運用にばらつきが出よう。なれば日ノ本で統一した組織を創らねばならぬな」

「正是如此」

「その通りでございます」

「但賦予過多權力亦為毒。制定與運用法的是我們,而懲罰違法者、調停爭端的組織應該另立。而且兩者要互相監督。若不如此,當執政者違法時便無法裁判」

「だが権力を持たせすぎるのも毒だ。法を定め運用するのは我らとして、法を破った者を罰し、諍(いさか)いを調停する組織は別にせねばなるまい。そして両者は互いに監視し合うのじゃ。そうでなければ為政者が法を破った時、裁くことが出来ぬ」

「佩服您的慧眼。若權力過度集中於一個組織,一旦腐敗將不堪設想。我認為應將權力分散,讓各單位掌握少量權力較為妥當」

「ご慧眼恐れ入ります。余り一つの組織に権力が集中すると、その組織が腐敗すれば目も当てられなくなります。権力は一つ一つには小さく持たせておくのが宜しいかと存じます」

「沒錯。畢竟要大幅改變社會結構,一旦失敗便無法挽回」

「そうだな。何しろ社会の構造を大きく変えるのだ。失敗したら取り返しがつかぬ」

說罷,信長吐了口氣。

言い終えると信長は息を吐いた。

或許因為一口氣說完而感到滿足,他周身的氣氛逐漸放鬆。

一気に語りきったことで満足したのか、彼の纏(まと)う空気が緩んでいく。

「好,今天就到此為止。細節由你去敲定,別急得太早跌個大跟頭,會沒法收場的」

「よし、今日のところはこの程度で良かろう。仔細については貴様が詰めよ、急ぎすぎて高転びしては目も当てられぬわ」

信長爽朗一笑,把剩下的茶點全部塞進懷裡。

快活に笑うと信長は残りの茶菓子を全て懐へ入れた。

名為『法』的鐵軌,名為『國』的機關車。

法という名のレール、国という名の機関車。

當這兩者齊備時,日之本將以前所未有的速度發展。

その二つが揃った時、日ノ本はかつてない速度で発展するだろう。

信長的雙眼彷彿已經凝視著無盡的未來鐵道。

信長の瞳は、すでに果てなき未来の線路を見据えているようだった。

完成這場九死一生的問答後,靜子如逃亡般離開安土,返回尾張。

命がけの問答を終えた静子は、逃げるように安土を後にし、尾張へと帰還した。

與與信長會談時的緊張相反,回到宅邸卻被年末特有的忙碌氣氛包圍,忙得像要命。

信長との会談での緊張感とは裏腹に、帰ってきた自邸は年末特有の殺人的な忙しさに包まれていた。

「歡迎回來,靜子大人!有一堆想請教您的案件堆積如山!」

「お帰りなさいませ、静子様! ご相談したい案件が山積みでして!」

「報告!年末贈禮的運輸已經滯留!街道被貨車擠得水泄不通,無法動彈!」

「報告します! 年末の贈答品の輸送が滞っております! 街道が荷車で溢れかえり、身動きが取れません!」

「各處酒藏來報,酒桶出貨趕不及,悲鳴四起!」

「各所の酒蔵より連絡! 樽の出荷が間に合わぬと悲鳴が上がっております!」

一踏進宅邸,四面八方便傳來如悲鳴般的報告。

邸宅に足を踏み入れた瞬間、四方八方から悲鳴のような報告が飛んできた。

靜子的改革使尾張的經濟爆發性成長。

静子の改革により尾張の経済は爆発的に成長している。

這是值得高興的事,但副作用是年末年初的物流已達到極限。

それは喜ばしいことだが、副作用として年末年始の物流が限界を迎えていたのだ。

大道小徑都被載滿貨物的貨車堵滿,港口擠滿了船隻,倉庫的庫存幾乎要爆滿。

道という道は荷車で埋まり、港は船で溢れ、倉庫は在庫でパンク寸前。

正如「欣喜的悲鳴」化作具體的噪音襲來,籠罩著靜子。

まさに「嬉しい悲鳴」が物理的な騒音となって静子を襲っていた。

「啊——真是的!每年每年都學不乖啊!」

「あー、もう! 毎年毎年、学習しないなあ!」

靜子抱著頭,忽然腦海中閃過前些日子與信長的對話。

頭を抱える静子だったが、ふと脳裏に先日の信長との会話が過った。

「若有鐵道,就能發揮牛馬無法比擬的力量」

『鉄の道があれば、牛馬では及ばぬ力を発揮できる』

靜子抬起臉,招呼身旁的技師過來。

静子は顔を上げ、側にいた技師を呼びつけた。

「喂,實驗線上的機車能啟動嗎?」

「ねえ、実験線の機関車、動かせる?」

「嗯?是的,檢查已經完成了……不過客車還沒有,正式運行的話……」

「は? ええ、点検は終わっておりますが……まだ客車もありませんし、本格運用は……」

「不用載乘客!把貨車接上!能接多少接多少!把倉庫裡堆滿的酒桶和米袋,全都餵給那匹黑鐵之馬!」

「客なんて乗せなくていいわ! 貨車を繋いで! あるだけ全部! 倉庫で溢れている酒樽や米俵、全部あの『黒鉄の馬』に食わせなさい!」

靜子的命令一出,現場像戰場般忙亂地運轉起來。

静子の号令一下、現場は戦場のような慌ただしさで動き出した。

實驗線雖然還是短區間,但經過主要的倉庫群及港口附近。只要連通這裡,物流的阻塞(塞栓)應該就能解除。

実験線はまだ短い区間だが、主要な倉庫群と港の近くを通っている。ここを繋ぐだけでも、物流の塞栓(そくせん)は解消できるはずだ。

數刻後。冒著黑煙,蒸汽機車啟動了。

数刻後。黒煙を吐き出し、蒸気機関車が動き出した。

在它後面,連接著將近十節臨時製作的無蓋車(無屋頂的貨車)。

その後ろには、急造の無蓋(むがい)車(屋根のない貨車)が十両近くも連結されている。

滿載的酒桶、米袋、木材與織物。

満載された酒樽、米俵、木材、織物。

若用貨車即便有一百台也運不完的貨量,竟被單節機車開始牽動。

荷車であれば百台あっても運びきれないような物量が、たった一両の機関車によって動き始めた。

「呃,動了……拉著那麼重的貨,比馬還快!」

「う、動いた……あんな重さを引いて、馬より速いぞ!」

工人們目瞪口呆地看著,列車伴著轟鳴駛離。

人足たちが呆気にとられて見守る中、列車は轟音と共に走り去る。

在塞滿車輛的街道旁,那滑行在鐵道上的身影正是物流的革命。

渋滞していた街道を尻目に、鉄の道の上を滑るように進むその姿は、まさに物流の革命だった。

只幾趟來回,堆積如山的庫存就消失了。

たった数回の往復で、山積みだった在庫の山が消えていく。

「……厲害」

「……凄い」

接到報告後,靜子對著自宅窗外遠處升起的黑煙喃喃自語。

報告を受けた静子は、自邸の窓から遠く上がる黒煙を見つめて呟いた。

當初向靜之展示時曾強調其作為「兵器」或「統治工具」的面向。

静之に見せた時は「兵器」としての側面、あるいは「支配の道具」としての側面を強調した。

但如今擺在眼前的是為支撐民生、運送富饒的純粹「力量」。

だが今、目の前にあるのは、人々の生活を支え、豊かさを運ぶための純粋な「力」だった。

「以法律為名的軌道,以經濟為名的蒸汽機關……嗎。上樣的比喻也未必全錯呢」

「法という名のレールに、経済という名の蒸気機関……か。上様の例えもあながち間違いじゃないね」

這股壓倒性的力量終將在日之本全土奔馳。

この圧倒的なパワーが、いずれ日ノ本全土を駆け巡る。

到那時,國家會變成什麼模樣呢。

その時、国はどのような姿になっているだろうか。

回到堆積如山的文件間,靜子在忙碌中感到確實的希望(次代的萌芽)。

積み上がった書類の山に戻りつつ、静子は忙しさの中に確かな希望(次代の萌芽)を感じていた。

「那麼,接下來是員工們的休假調整。別忘了給回鄉的人準備伴手禮」。

「さて、次は従業員たちの休暇調整ね。実家に帰省する人への手土産も忘れずに」

辦完大事後,終於在宅邸的辦公室歇了口氣時,家臣來報告。

大仕事を片付け、ようやく邸宅の執務室で一息つくと、家臣から報告が入った。

「歡迎回來,靜子大人。年末年始的食材與酒類的備貨已經完成了」

「お帰りなさいませ、静子様。年末年始の食材や酒の確保、完了しております」

「嗯,謝謝。別忘了給回鄉的人準備伴手禮喔」。

「うん、ありがとう。実家に帰省する人への手土産も忘れずにね」

在靜子宅邸工作的眾人會輪流在年末年始回鄉探親。

静子の邸宅で働く者たちは、年末年始に交代で里帰りをする。

武家出身者通常在正月回去,商家與農家出身者則避開繁忙期在過了十日後休假,這已成為慣例。

武家出身者は正月に、商家や農家出身者は繁忙期を避けて十日過ぎに休みを取るのが通例となっていた。

靜子為他們準備重箱裡的御節料理以及特別津貼。

静子は彼らのために、重箱に入ったおせち料理や、特別な手当を用意している。

「啊——對了。還得準備緣起袋」。

「あー、そうだ。縁起袋の準備もしなきゃ」

在靜子的宅邸,年初發放稱為「緣起袋」的獎金已成慣例。

静子の邸宅では、年始に「縁起袋」と呼ばれるボーナスを渡すのが恒例になっていた。

裡面的金額不論對方身份一律為二千九百五十一円。

中身は相手の立場に関係なく一律で二千九百五十一円。

因為與「福來い」諧音,又是個無法整除的數字,被認為有吉祥的意義。

「福来い」の語呂合わせであり、割り切れない数字として縁起が良いとされる額だ。

雖非大數目,但許多奉公人都很期待這筆錢。

大した額ではないが、これを楽しみにしている奉公人も多い。

「從金庫裡拿出零錢,裝進袋子裡……啊,人變多了,管理起來真麻煩」

「金庫から小銭を出して、袋詰めして……ああ、人が増えたから管理が大変だ」

在溫暖的房間裡,悠閒地為金錢計算而擔心。

温かい部屋で、のんびりと金勘定の心配をする。

就在幾天前還在天下人面前討論國家方針的自己,現在卻在為準備壓歲錢而傷腦筋。

つい数日前、天下人の前で国の在り方を問うていた自分と、今こうしてお年玉の準備に頭を悩ませている自分。

對於那種落差苦笑之餘,靜子重新體會到正是為了守護這平靜的日常,才需要「法」與「規範」。

その落差に苦笑しつつも、静子はこの平和な日常を守るためにこそ「法」と「レール」が必要なのだと、改めて実感していた。

「雖說是慣例,但明年得更有效率才行呢」

「恒例とはいえ、来年はもっと効率化しないとね」

一邊抱怨著,靜子卻帶著充實的表情開始投入工作。

ぼやきながらも、静子は充実した表情で仕事に取り掛かるのであった。