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戦国小町苦労譚

艷本騷動

在戰國時代的日之本,提到書籍多以手寫為主流,僅在極少數受限地區出版的書籍流通。

戦国時代の日ノ本に於いて書物と言えば手書きの物が主流であり、ごく一部の限られた地域にのみ出版された書物が流通している。

那些受限地區,便是帝居住的政治中心京與持續發信最先端風潮的尾張。

その限られた地域とは帝のおわす政治の中心地である京と、最先端の流行を発信し続ける尾張となる。

原因在於作為印刷要衝的輪轉機,以及大量墨水與紙張,只有那兩處據點能夠準備得起。

何故ならば印刷の要(かなめ)となる輪転機及び、大量のインクと紙を用意できるのがその二拠点のみに限られるからだ。

由靜子的義父近衛前久(さきひさ)主導的京版出版物,多以報紙、佛書與歷史書等具有濃厚學術色彩的書籍為主。

静子の義父にあたる近衛前久(さきひさ)が主導している京の出版物は、主に新聞や仏書に歴史書などといったアカデミック色の強いものが多い。

而在尾張,或許因為靜子的統治,通俗的娛樂書也被允許,加上高識字率,閱讀文化在庶民間紮根。

一方の尾張では静子の統治ゆえか、通俗な娯楽書も認められており、高い識字率も相まって庶民の間に読書文化が根付いていた。

支撐這文化的人,是當年曾擁有玻璃筆而被靜子圈養的少女們。

この文化を下支えしたのが、かつてガラスペンを所持していたことから静子に囲われた少女達だ。

她們名為詩(うた)與海(うみ),定期向前久在京屋敷出版、面向公家的報刊『京便り』投稿絵巻物。

彼女たちの名前を詩(うた)と海(うみ)と言い、前久が京屋敷で定期的に出版している公家向け新聞である『京便り』に絵巻物を寄稿している。

在公家之間她們成為身分不明的人氣作家,但她們的本質其實是熱愛衆道的腐女子。

公家の間では正体不明の人気作家となった二人だが、彼女らの本質は衆道をこよなく愛する腐女子であった。

詩擅長以高等教養與豐富詞彙編織文章,海則以天才般的感性擅長畫似顏繪與風景。

詩は高い教養と豊富な語彙力に裏打ちされた文章を紡ぎだすことに長じており、海は天才的なセンスによって似顔絵や風景を描くことを得意としている。

各自專長融合之後,誕生了比當代似顏繪更寫實筆致、附有大型插畫的紀行風衆道小說。

それぞれの得意分野が融合した結果、この時代の似顔絵と比較して写実的な筆致の大きなイラストが添えられた紀行文風の衆道小説が誕生した。

作為作家她們二人堪稱天才,但在定期向『京便り』投稿絵巻物時,浮現出致命的問題。

作家としては天才的な二人だが、『京便り』への絵巻物を定期的に寄稿するにあたり致命的な問題が表出する。

那就是兩人皆為嗜好者,因沉浸於寫作而疏於日常生活。

それは二人ともが趣味人であるため、執筆活動に没頭するあまり日常生活を疎かにしてしまうという点だ。

為了矯正此狀況,靜子派遣名為澪(みお)的少女來,她與兩人同年,擅長家事,從連載進度管理到餐食與打掃,像個照料她們的母親般。

これを是正すべく静子が派遣したのが澪(みお)という名の少女であり、二人と同年代ながら家事全般を得意とし、連載の進捗管理から食事に掃除にと世話を焼いてくれるお母さん的存在だ。

三位少女結成一組,在本職絵巻物的空檔撰寫的衆道娛樂小說,一時風靡一方。

三人の少女達が一組となり、本業である絵巻物の合間を縫って執筆される衆道娯楽小説は、一世を風靡(ふうび)していた。

在尾張印刷了相當數量,透過貸本屋送到庶民手中。

尾張に於いてはそれなりの部数が印刷され、庶民の間には貸本屋を通して届けられることとなる。

在貸本屋常是長銷熱門書目,新刊一到即日全數外借,連既刊也常常要等候歸還才拿得到,人氣之高由此可見。

貸本屋では常に人気のタイトルであり、新刊が届けば即日全てが貸し出し済となり、既刊ですら返却待ちとなることが多い程の人気を博していた。

以往的書籍多為為了傳承知識的嚴肅之物,而且價格高昂,能購買的本就限於佛家、武家、公家等。

これまでの書籍と言えば知識を継承するための堅苦しい物であり、そもそもが高価であるため購入できるのも仏家や武家、公家などに限られている。

然而透過娛樂作品的流通,以及貸本屋這種以廉價供給的業態,終於能到達庶民手中,掀起熱狂。

しかし、娯楽作品の流通と貸本屋という業態による安価での供給により、庶民たちの手に届くところとなって熱狂を生み出すこととなる。

他們幾人合資借書,於圈內輪流閱讀並交換感想與考察,漸漸甚至產生想自己創作作品的念頭。

彼らは数人で金を出し合って本を借り、仲間内で回し読みをしては感想や考察を語り合い、やがては自分たちでも作品を書いてみたいと思うようにまでなった。

對此反應敏銳的是在商業界如鬥智奪利的商人們。

これに目聡く反応したのが生き馬の目を抜く業界に生きる商人達だ。

由於需特殊器材而競爭對手稀少,他們向所謂的藍海──出版業進軍。

彼らは特殊な機材が必要となることから競合他社の少ない、所謂(いわゆる)ブルーオーシャンである出版業へと進出する。

靜子與前久始終使用最新型輪轉機,退役的舊式輪轉機則被淘汰下來流入市場。

静子や前久は常に最新式の輪転機を使用しているが、型遅れとなった旧式の輪転機は払い下げられて市場へと流出していた。

上述商人買下這些機器,並從靜子的御用商『田上屋(たなかみや)』採購運用方法與消耗品,成立出版公司。

前述の商人達はこれを買い取り、運用方法や消耗品などを静子の御用商たる『田上屋(たなかみや)』から仕入れる形で出版会社を立ち上げる。

在尾張出版旅籠(はたご)用的指南時,培育出了掌握ガリ切り等出版技巧的人才。

尾張には旅籠(はたご)用のガイドブックを出版した折に、ガリ切りなどの出版に関するノウハウを持った人材が生まれていた。

雇用這些人材,並招攬有志自己寫娛樂小說的作家胚芽後,開始刊行各式出版物。

それらの人材を雇い、また自分でも娯楽小説を書かんと志した作家の卵を囲い込むと様々な出版物を刊行し始める。

因為在東國尾張是聚集最會賺錢的庶民之地,能支撐這類小規模出版社的土壤得以形成,結果不僅僅是娛樂小說,各種實用教學書與指南性質的書籍也開始出版。

東国に於いて尾張が最も金回りの良い庶民が集まる国であるため、こうした小規模出版社を支え得る土壌が形成された結果、娯楽小説だけに留まらず様々なハウツー本やガイドブックに相当するような書籍までもが出版されるようになった。

教養階層如佛家與公家有人批評娛樂作品低俗不堪,但既然實質掌管東國的靜子容許,便無法公開提出反對。

教養人である仏家や公家などからは娯楽作品など低俗でけしからんという声もあったが、実質的な東国の統括者たる静子が容認している以上、表立って文句を唱えることもできないでいる。

在這種特殊環境下,庶民娛樂被孕育,率先於史實中的江戶時代之前,大眾文化開始綻放。

こうした特異な環境下に於いて庶民の娯楽が醸成され、史実での江戸時代に先駆けて大衆文化が花開くこととなっていた。

「那麼,有什麼藉口要說嗎?」

「それで、言い訳があるなら聞くよ?」

「非常抱歉!」

「申し訳ございません!」

對於靜子冷淡的質問,詩與海一同整齊地行了漂亮的土下座。

静子の冷ややかな問いに対して詩と海は揃って綺麗な土下座を披露した。

毫不遲疑的土下座行為,甚至讓人覺得她們已經習慣此招,在她們身後的澪也帶著疲憊的表情低頭。

一瞬の遅滞すらなく土下座を敢行する様は、既に土下座慣れしているのでは無いかと思えるほどであり、そんな二人の後ろで澪も疲れた表情を浮かべて頭を下げる。

她們究竟做了什麼,是將『艶本(えんぽん)(以畫作或文字表現性交的書,本亦稱春本)』洩露出來。

二人が何をやらかしたのかと言えば『艶本(えんぽん)(性交渉を絵や文章で表現した本、春本とも)』を流出させたことにあった。

由於上方並未實施明確管制,作者便愈發推出過激作品,這股潮流最終走到極端便是艶本的出現。

お上がこれと言った規制をしなかったのを良いことに、執筆者側はどんどん過激な作品を世に送り出し始め、その流れが行きつく果てに艶本がある。

海所繪耽美的春畫產生了極大的影響。

海の手による耽美な筆致の春画は、絶大な影響を生み出してしまった。

在露骨至極的性表現顯現後,情勢發展到連靜子也不得不出面規制的地步,這便是結果。

露悪的なまでの性表現の発露を受け、流石に静子としても規制に乗り出さざるを得ない状況へと発展した結果がこれである。

「說實話這個實在不適合公開展示吧?」

「流石にこれは公の目に触れて良い物ではないよね?」

「正如您所言! 請您海涵!!」

「仰る通りにございます! どうか御寛恕(かんじょ)下さいませ!!」

詩與海十分拼命辯解。畢竟靜子一念之間,就能決定她們傾注全心血所創之作品的去向,如同子女的命運般。

詩と海は必死であった。何せ静子の匙加減一つで、己の全身全霊を掛けて生み出した我が子とも呼べる作品の行く末が決まるのだ。

若規制程度輕微,或只限流通限制;但最壞情況則可能回收作品並付之一炬成為焚書(ふんしょ)。

規制の程度が軽ければ流通の制限で済むが、最悪の場合は作品回収の上に焚書(ふんしょ)となる可能性すらある。

詩與海不惜一切也想維繫自己孩子的性命。

なんとしても我が子の命を繋ぎたい詩と海であった。

「……那麼就好吧。澪,這件事就委託妳處理了」

「……まあ良いでしょう。澪、これに関しては貴女に一任します」

這次的問題在於所謂「生物」(此為以實在人物為題材的隱語),雖然他們為免失禮稍微改動了本名,但仍明顯能辨認出原型人物。

今回の件で何が問題になったかと言えば、所謂『生モノ(実在の人物をネタにすることを指す隠語)』であり、流石に本名そのままでは無礼討ちもあるため多少改変していたのだが、明らかに元となる人物が判った。

這雖不是詩與海的作品,但甚至出現把森蘭丸描寫成名為『守家之藍』的女性的作品。

これは詩と海の作品では無いが、例えば森蘭丸を『守(もり)家のお藍(らん)』という女性として描いた作品までもあったのだ。

靜子希望藉由規制這兩位為先驅者的作品,以避免近未來可能發生的大災難。

静子としてはこれらの先駆けとなった二人の作品を規制することで、近い将来起こりうる大惨事を回避したいと言う思いがある。

她認為若能懲處在出版業界被視為巨匠的兩人,以示警告整個業界,就不必做到焚書那種地步。

出版業界に於いては巨匠のように崇められている二人を罰することにより、業界全体に対して警告を発することさえ出来れば焚書まではしなくても良いと考えた。

因此決定將裁定委託給身為監督者的澪。

その結果、二人を監督する立場である澪に裁定を委(ゆだ)ねることとしたのだ。

「這次的事讓靜子大人費心了,十分抱歉。關於這兩人我會從我這裡嚴厲訓誡他們」

「此度(こたび)の件は、静子様のお手を煩(わずら)わせることになり申し訳ございません。この二人には私からキツく言い聞かせます」

澪作為兩人的監督者向靜子道歉後,接過了成為該作品版元的原稿。

澪は二人の監督者として静子に謝罪すると、問題となった作品の版元となる原稿を受け取った。

澪在接到原稿的瞬間注意到詩與海正以滿懷期待的眼神看著她。

澪が原稿を受け取った瞬間、詩と海が期待のこもった目でこちらを見ていることに彼女は気付く。

三人結束與靜子的會面離開靜子宅邸後,詩與海從希望被狠狠摔入絕望。

三人が静子との面会を終えて静子邸を辞すと、詩と海は希望から絶望へと叩き落されることとなった。

被特地從京城召到尾張,又直接受主君親自訓斥,最後交付了這樣的處置。

わざわざ京より尾張まで呼び出され、主君より直々にお叱りを受けた上での沙汰預けである。

三人回到在城下町所住的旅店後,澪以讓人感到徹骨寒意的聲音對兩人說道。

三人は城下町でとっていた旅籠に帰りつくと、澪が二人に向かって底冷えするような声音で言い放った。

「你們兩個給我坐下!」

「二人ともここに座りなさい!」

「欸、可是……」

「え、でも……」

「正・座!」

「せ・い・ざ!」

平日帶著如慈母微笑的澪變成像能面般沒有表情,兩人嚇得在板間正坐。

いつも慈母(じぼ)の如き笑みを浮かべている澪が、能面のような無表情になっていることに恐怖を覚えて板の間に正座する。

在連一點回嘴都不被允許的氣氛下,兩人才終於意識到澪的心情極為惡劣。

僅かな口答えすら許されない空気に、二人はようやく澪のご機嫌が恐ろしく悪いことを自覚した。

詩將視線從澪移到她正以瞪視之色盯著的那一疊紙。

詩は視線を澪から彼女が睨んでいる紙の束へと移す。

那是用兩人的原稿以謄寫版(即ガリ版)印刷、尚未裝訂的印刷物。

それは二人の原稿を用いて謄写(とうしゃ)版(ガリ版とも)にて印刷された製本前のものであった。

已以領主靜子之名發布布告,通令禁售過度激進的出版物。

既に領主である静子の名に於いて布告が出されており、度を超えて過激な出版物は販売を禁ずる旨が通達されている。

因此震驚的出版社便把尚未裝訂的印刷物寄回給了兩人,便有此一經過。

これに震えあがった出版社は製本前の印刷物を二人の許へと送り返したという経緯がある。

不只他們兩人被出版社退回原稿,在尾張各處多半也上演著類似的光景。

出版社に原稿を送り返されたのは二人に限った話ではないため、尾張の各所でこのような光景が繰り広げられていることだろう。

「我不是有跟你們忠告過嗎?停止以真實人物為題材的艷本。你們還點頭,我以為你們理解了,沒想到太天真了呢」

「私は二人に忠告したよね? 実在の人物を題材にした艶本は止めなさいって。二人が頷いたから、理解してくれたかと思ったんだけれど甘かったようだね」

原稿從澪手中滑落。詩與海知道澪會做什麼,但她那凄厲的表情讓人無法阻止。

澪の手から原稿が滑り落ちた。詩と海は澪が何をするか理解していたが、凄絶な表情を浮かべている澪を止めることなど出来るはずも無かった。

原稿被投進房中的火爐,著火並逐漸燒成灰燼,兩人呆然地注視著這一切。

部屋に作りつけられている囲炉裏にくべられる原稿に火が点き、徐々に燃え広がって灰になるさまを呆然と眺める二人。

「你們必須好好反省。這次只是針對今後出版物採取規制就算了,但最壞的情況會是把過去發表的所有作品全部回收,甚至會被處以死罪!」

「二人はちゃんと反省すること。今回は今後出版する物に関して規制で済んだけれど、最悪の場合は今までに世に出した作品を全て回収した上で死を賜(たまわ)ることすらあったんだからね!」

澪因過度擔憂兩人聲帶哽咽、強忍心中情感將她們珍視的原稿焚燒,其身影美得令人屏息。

二人を心配するあまり涙声になりながら、心を鬼にして彼女たちが大事にしている原稿を燃やす澪の姿は、見惚れるほどに美しかった。