戦国小町苦労譚
招き猫
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その日、静子邸に突然数匹の猫が運び込まれた。
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外国産の珍しい品種というわけではなく、突然変異で誕生した新種だとの触れ込みだ。
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静子邸の外苑は既に動物園状態であり、珍しい動物はとりあえず運び込まれるのが常となっている。
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問題の猫達は届けられた日から数えて数日間の慣熟期間を置き、ようやく静子とのご対面となった。
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「なるほど、珍しい変異をしたんだね」
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届けられた猫は七匹おり、全て同じ母から生まれた兄弟猫である。
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兄弟すべてが突然変異したわけではなく、内二匹のみが誰の目にも明らかに足が短い。
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生まれた直後は目立たなかったのだが、成長するにつれて二匹だけがマンチカンのように足が短く、他の兄弟とは異質であることが明らかとなる。
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これらの猫達は飼い猫であり、飼い主は突然変異に対する知識など持ち合わせていなかった。
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そして突然生じた短足の子猫を愛らしく思うと共に、これは何かの呪いではないかと疑念を抱くに至る。
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こうして兄弟七匹すべてを静子邸にて鑑定を依頼するに至った。
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既に短足猫種の存在を知っている静子としては、猫と一緒に送られてきた飼い主からの文に対して苦笑が漏れる。
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未知の事象に対して恐れを抱くのは、人間として当たり前の反応であるため、飼い主の無知を責めることはできない。
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「こんなに愛らしいというのに、呪いとは愚かしい」
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世間では鬼と恐れられる長可だが、無類の猫好きであるためかすっかり目尻が下がってしまっている。
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一緒に立ち会っているのが静子だけだったならば、懐に隠し持っているマイ猫じゃらしを取り出して振り回しているだろう。
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一方の子猫達は挙動不審な長可を警戒し、若干距離をとっていた。
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最初は慣れない部屋のあちこちを調べていた猫達だが、やがて危険はないと判断したのかおもいおもいに寛(くつろ)ぎ始める。
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「ぐふぅ!」
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短足ゆえに兄弟達の走りについて行けず、まだ文机という段差を跳び越えることもできずにコロコロと転がる二匹の姿を目にした女性が奇声をあげて悶絶した。
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彼女は明智光秀の娘である珠(たま)であった。
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彼女も長可同様、猫大好きの女中として静子邸では名の知れた存在だ。
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日頃から生真面目かつ勤勉な珠だが、こと猫が絡むと態度が豹変してしまう。
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端的に表現するなら『気持ち悪い』であろう。
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猫狂いとすら呼ばれている彼女がこの場にいる理由は単純であり、珍しい猫が持ち込まれたとの噂を聞きつけて静子に同席できるよう懇願したのだ。
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珠は光秀の娘でこそあるものの、静子邸に於ける立場はさほど上位という訳でもない。
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本来であれば静子の私室で猫と戯(たわむ)れるなど高望みと評されることだろう。
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しかし、そこは生粋の猫狂いたる珠の必死の懇願に、静子が一瞬で絆(ほだ)されてしまったという経緯があった。
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「ただでさえ愛くるしい子猫だというのに、短い足を必死に動かしてよちよちと歩く姿が堪(たま)りませぬ……」
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恍惚といった表情を浮かべて悶絶していた珠だったが、件(くだん)の短足猫が彼女の足元で転んでしまい、彼女を見上げて一声鳴いた途端に硬直した。
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「ひうっ――」
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鋭く息を吸い込むような奇妙な声を上げると、彼女はその場にバタンと倒れる。
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余りの多幸感と猫成分の過剰摂取により、彼女は気を失ってしまったのだ。
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猫と触れ合っている時に彼女が卒倒することは、さほど珍しいことでもないため、彼女は部屋の隅に寝かされたまま放置される。
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「それで静子よ、この子猫たちはどうするんだ?」
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「どうしようかな……飼い主さんには悪いけれど、呪いなんかじゃなくて自然に起こり得ることだとお返ししたら、それはそれで危険なんだよね」
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珠が意識を飛ばした途端に寝転がり、懐から取り出したマイ猫じゃらしで猫たちと戯れながら長可が処遇について訊ねてきた。
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それに対して静子は腕を組んで唸ってしまう。珍しい猫として領主である静子の目に止まったとなれば、好事家たちが目の色を変えて欲しがる可能性があった。
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この戦国時代に於いて猫を七匹も飼おうという酔狂な飼い主は、当然金銭では子猫を譲ろうとしないだろう。
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そうなれば飼い主に危害を加えて強奪を図る輩が出ないとも限らない。
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「一応鑑定料を頂いた以上は、鑑定書を付けてお返しするんだけど。これも希少性を証明してしまう要因なんだよねえ……」
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「じゃあ俺が飼い主に交渉して貰い受けるよ。安心しろ、俺の処へ奪いにくるなら命を以て贖って貰うだけだ」
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「何一つ安心できる材料がないよね。まあ、勝蔵君の家族を狙うなら命懸けは当然か」
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「そうそう、俺の留守中は森家が責任を持って預かるから安心だぞ」
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「ただね……」
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自信ありげに話す長可に対して、静子は盛大にため息を吐いた。
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その様子からまだ何かがあると察した長可は、静子に続きを促す。
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「私の家に猫が持ち込まれるとね、何故か特定の方々(・・・・・)に伝わるのよね」
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「なんだそりゃ?」
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「ご歓談のところ、失礼致します」
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長可が問い返したところで、障子の向こうから声が掛かった。
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静子と長可との会話が止まり、それに促されるように声を掛けた小姓は続きを告げる。
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「今しがた上様より、間もなくこちらに到着するとの先触れがございました。近衛様もご一緒とのことです」
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「判りました。大広間を片付けて上座にお招きして下さい」
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「はっ」
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静子の指示を受けた小姓は頭を下げると踵(きびす)を返す。彼の足音が聞こえなくなったのを確認し、静子は肩を竦(すく)めて呟いた。
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「ね? 報告もしてないのに来客があるの……」