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戦国小町苦労譚

一五七八年 九月下旬

謙信聽到靜子的話,驚訝地睜大眼睛一瞬,隨即展顏一笑。

静子の言葉を耳にした謙信は、一瞬目を見開いて驚くが直ぐに破顔した。

「到了這個時候還不改嗎」

「ここに至っても変わらぬか」

謙信以只有自己能聽見的音量低聲自語。自從認識靜子以來,謙信一直注視著她。

謙信は自分にだけ聞こえる程度の声量で呟く。静子を知って以来、謙信はずっと彼女を注視してきた。

這是因為她在戰國時代顯得異質,但她一貫是個付出者的性格。

それは彼女が戦国時代に於いて異質な存在だということもあったのだが、その性質が一貫して与える者であったからだ。

人類幾乎整個歷史長河中,人們總是飢餓。所謂飽食的現代先進國只是略顯異常,仍有大量人類處於飢餓之中。

人類の歩んできた歴史のほぼ全てに於いて人々は常に飢えていた。飽食の時代と呼ばれる現代先進国が少し異常なだけで、相変わらず多くの人類は飢えている。

於被稱作亂世的戰國時代亦然,強者常從弱者手中掠奪,而靜子則致力於不是掠奪而是增加供給。

乱世と呼ばれる戦国時代についても同様であり、強きものが弱きものから奪うのが常である中、静子は奪うのではなく増やすことに尽力した。

謙信認為,這構築了支撐尾張繁榮的基礎,並使被稱為弱兵的尾張軍人成為精強之師。

それが尾張の繁栄を支える基礎を作り、弱兵と呼ばれた尾張兵をして精強な軍へと導いたのだと謙信は考える。

對於士兵們而言,只要靜子仍在,即便在戰場上捨命,他們也相信她會讓家人不至於挨餓,這種信任就是他們力量的源泉。

兵たちにとって静子さえ健在であれば、たとえいくさで己が命を落とそうとも彼女が家族たちを飢えさせないでくれるという信頼が強さの源泉となっていた。

(靜子殿身後事將成問題……不過她不會不知道這點吧。應該有什麼對策吧)

(静子殿亡きあとが問題となるだろうが……そのことを彼女が知らぬはずもないか。何かしら手だてがあるのだろう)

若要說缺點,就是尾張的繁榮過度依賴靜子這個人。因此靜子去世後尾張能否持續享受繁榮,就取決於繼承者。

欠点と言えば静子という個人に尾張の繁栄が依存しすぎている点だろう。ゆえに静子亡き後、尾張が引き続き繁栄を享受し続けられるかは、後継者にかかっている。

謙信對中央集權型組織「好壞一旦首領更換萬事皆變」的問題頗為在意,但他不得不承認,在技術與知識的傳承方面,她正積極推行,繼承者的培育也比自己做得好得多。

良くも悪くもトップが変われば全てが変わる中央集権型組織の問題点が気になった謙信だが、少なくとも技術や知識の継承については積極的に取り組んでいるし、後継者育成についても自分よりは遥かに上出来だと認めざるを得ない。

「知道了。既然如此,讓我在微薄之力上助一臂之力吧」

「承知した。ならばその夢、微力ながらお力添えさせて頂きたい」

謙信決定協助靜子,那不是要他在戰國時代稱霸,而是成為實現她所說「讓我們的子孫不愁吃穿的世代」的夥伴。

謙信は静子に協力することを決意した。それは自身が戦国の世に覇を唱えるのではなく、彼女が語った「我らの子孫が食うに困らない世」を実現するパートナーとなることを意味する。

對於謙信而言,只要靜子的夢能成真,他從心底認為自己不用成為天下人也無妨。

謙信自身は静子の語った夢が現実のものとなるのであれば、自分が天下人にならずとも良いと腹の底から思えたからだ。

「某也願意協力」

「某(それがし)も協力させて頂きましょう」

謙信表態後,家康也定了方針,向靜子低頭。事到如今,伊達家也無從反對,大家一致贊成。

謙信が発現したことを受け、家康も方針を決めたのか、同様に静子へ首(こうべ)を垂れる。ことがここに至っては伊達家に否やがあるはずもなく、皆が賛同することとなった。

由此東國決定以織田家為首,與德川家、上杉家、伊達家四家共同統治。形式上信長位居頂點,但實務由信長委任的靜子執掌。

これにて東国は織田家を筆頭として、徳川家、上杉家、伊達家の四家によって合同統治することが決定した。形式上は信長が頂点ではあるのだが、実務は信長より委任された静子が執り行う。

「謝謝。正式文書日後再簽,先行打擾甚感抱歉,我方將派遣農業士前往,請儘量為他們提供便利。」

「ありがとうございます。正式な文書は後日改めて交わすとして、早速で申し訳ありませんが農業士をこちらから派遣いたします。彼らに可能な限り便宜を図って頂けるようお願いいたします」

農業士指的是繼承靜子農業技術、並具有一定經驗的技術人員。他們的工作大致三項:一是對他人進行農業指導,二是調查土壤與水源等環境,三是整理當地農業史並報告。

農業士とは静子の農業技術を継承し、一定以上の経験を積んだ技術者を指す。彼らの仕事は大きく三つ、一つは他者に対する農業指導、一つは土壌や水源などの環境調査、一つは現地の農業史を取り纏めて報告するであった。

當然,並非一人承擔所有任務,而是由多名農業士以團隊方式合作。他們出身多樣,可能是農民出身,也可能是武家後裔,但共通點是都曾在靜子的學校一同學習。

勿論、これらを全て一人がこなすわけではなく、複数の農業士をチームとして取り組む。彼らの出自は様々であり、百姓出身であったり、武家の末子であったりと様々なのだが共通しているのは静子の学校で共に学んだということだ。

在尾張,畢業於靜子學校時會授予學位,該學位在當地保證其身分,但對外並無意義,因此在成為農業士的同時會被賜予士分。

尾張に於いては静子の学校を卒業した際に学位が授与され、その学位によって身分が保証されるのだが対外的には何の意味もないため、農業士になると同時に士分に叙されることとなる。

這僅是對外的名義,並非實際建立武家,因此不能世襲,只限一代。

これはあくまでも対外的なものであり、実際に武家を興すという訳ではないので継承出来ない一代限りのものとなっていた。

「那些農業士會做些什麼呢?」

「その農業士とは何をされるのでしょう?」

「可以把他們當作農業方面的專家。主要業務是現地環境調查、農業指導以及記錄結果。根據他們的調查報告,判斷當地適合栽培哪些作物、導入何種技術較為有效,因此擔負重要角色。」

「農業に関する専門家と思って頂ければ結構です。主な業務は現地の環境調査、そして農業指導及びその結果を記録することとなります。彼らの調査報告を元に、現地でどの様な作物を栽培するのが良いかや、どのような技術を導入することが効果的かを判断しますので、重要な役目を担っております」

「知道了」

「承知した」

「為什麼需要所謂的環境調查?」

「環境調査とやらは何故必要なのでしょうか?」

「並非在尾張成功的事物他處也能同樣成功。舉例來說,尾張與越後的氣候不同,水溫也不同。大家應該以經驗知道,種稻時冷水是大敵。」

「尾張で出来たことが他所でも同様に出来るわけでは無いからです。一例として尾張と越後では気候も異なり、水の温度も異なります。米を育てるにあたって冷たい水が天敵だというのは皆様も経験則としてご存じかと思います」

靜子的農業技術並非萬能,若不依地調整適宜,甚至可能造成害處。農業關係到食物,失敗可立即牽涉性命,必須謹慎。

静子の農業技術は万能ではない。その土地に合わせて適宜調整をしなければ害をもたらすことすらあるのだ。農業は食料に直結するため、その失敗は即座に命にかかわるため慎重を期する必要があった。

「人類的技術無論進步到何等程度,農業始終是與自然的鬥爭。」

「どれだけ人の技術が進歩しようとも、農業というのは自然との闘いなのです」

會談結果決定,派遣至德川領二百人,對上杉領則計畫累計三千人。上杉領派遣人數較多,是因為冬季積雪易阻斷道路。

会談の結果、徳川領には二百人、上杉領にはのべ三千人規模の人員が派遣されることが決定した。上杉領への派遣人数が多い理由は、冬になると積雪で道が閉ざされやすいためである。

當然不會一次性送進三千人,人員會陸續替換,預計總人次為三千人。

流石に一度に三千人もの人員を送り込むことは無く、人員は都度入れ替わりながら、のべ人数として三千人を見込んでいるということだ。

相較之下德川領為鄰國,易於視情況增派人手,因此估計總人次二百人。氣候與尾張大致無異,故以上杉領為重點。

対して徳川領は隣国であり、状況を見て追加人員を送りやすいことから、こちらものべ人数で二百人と見積っている。気候に関しても尾張と大差ないことが既に判っており、上杉領に対して重点を置くこととなった。

原本也計畫派遣至伊達家領地,但當前以集結兵力為優先,待奧州平定後再另行討論,於是就此定案。

当初は伊達家に対しても派遣する予定だったのだが、当面はいくさを集結させることが優先であり、奥州平定後に改めて論じるということで話が纏まった。

「那麼,政治上的試探到此為止。我為各位準備了小小的宴席。今日以當季食材豐富烹調,請盡情品嚐尾張的美味。」

「さて、腹の探り合いをする政(まつりごと)はここまでと致しましょう。お集まりの皆様にささやかながら宴席を設けさせて頂きました。本日は旬の食材をふんだんに使用したお料理を用意しておりますので、どうぞ尾張の味覚をご堪能下さい」

雖然細節待會再議,只決定大方向,但時間已接近午後二時。於戰國時代,二時左右即為用餐時間。

細かいところは後回しにし、大筋だけを決めていたというのに時刻は既に午後二時を過ぎようとしていた。戦国時代に於いて二時頃とは食事時である。

靜子提議用餐是理所當然的事。

静子が食事を取ろうと口にするのは当然のことであった。

然而,竟要以吃飯之事中斷足以左右大家前途的重大會談,讓人有些不忍心。

しかし、自分たちの行く末を左右するほどに重大な会談を飯如きで中断するというのは気が引けた。

「數量不多,但亦備有上等清酒。」

「多くはございませんが、上物の清酒もご用意してございます」

若是出了名的尾張清酒上桌情況就不同了。即便在現代,酒後繼續工作的人也少見;到了戰國時代,酒常常豪飲,宴會一開便會有人喝到失去分寸。

噂に高い尾張の清酒が出るとなれば話は別だ。現代に於いても酒を飲んだ後に仕事をしようとする者は稀だろう。戦国時代ともなれば酒は浴びるように飲むことが多く、宴会などが催されれば前後不覚になる者が続出する。

換言之,酒一上桌就等於宣告今天不再繼續議論。他們裝作無可奈何,實則難掩期待。

つまり酒が出るということは、今日はこれ以上議論することは無いと宣言したに等しい。彼らは仕方ないという風を装っているが、期待を隠し切れずにいる。

不只是他們興高采烈,靜子的家臣們同樣為酒宴而滿懷期待。除了被嚴命禁酒的靜子外,其他人大概都認為今天的公事已經結束了吧。

そして浮かれているのは彼らだけでは無かった。静子の家臣達も同様に、酒宴への期待に胸を膨らませている。禁酒が厳命されている静子以外は、もう今日の仕事は終わったと考えているのだろう。

靜子帶著苦笑看著那情景,忽然發現有視線投向自己。順著目光看去,正是謙信本人。他像被迫餓着的狗般,帶著有些可憐的表情凝視著靜子。

その様子を苦笑しつつ見守っていた静子だが、ふと自身に向けられた視線に気が付いた。視線の主を追ってみると、相手は謙信その人であった。彼はお預けを食らった犬のような、どこか情けない表情を浮かべて静子を見つめていた。

想著究竟是什麼讓他陷入那樣的惆悵,靜子立刻想到理由。

はて、何が彼をそんな切ない気分にさせているのだろうかと考えたところ、直ぐに理由に思い当たる。

(對了,上杉大人也被要求禁酒了呢)

(そういえば、上杉様も禁酒されたんだよね)

曾經謙信因為屢次酗酒,身體糟到不行。靜子認為照這樣下去他會如史實般早逝,於是向謙信提出與みつお的酒量較量,強逼取得了他會戒酒的承諾。

かつて謙信は度重なる深酒により、体がボロボロの状態になっていた。このままでは史実通りに早死にすると考えた静子は、謙信にみつおとの酒勝負を持ち掛け、禁酒する旨の確約をもぎ取っていた。

之後經過多年治療,近來終於恢復到可以說接近正常人的程度。只要未來不再如從前那般酗酒,稍微嗜酒一點應該沒問題。

それから年単位に亘る治療を続け、近頃はようやく健常者と言っても差し支えない程度まで回復してきている。今後は前のような深酒をしないのであれば、多少お酒を嗜む程度は問題ないと言えるだろう。

但酒精依賴根深蒂固,若輕易允許飲酒可能會復發,靜子因而不曾停止要求謙信持續戒酒生活。

しかしアルコール依存症とは根深いもので、安易に飲酒を許せば元に戻ってしまうのではないかと危惧した静子は、謙信が禁酒生活を続けているのを止めなかった。

(果然在這次宴席還強迫戒酒似乎有些可憐啊)

(流石に今回の宴席でまで禁酒を強いるのは可哀想だよね)

定期檢查謙信健康的醫生也報告說稍微飲酒沒問題。於是判斷今天可以允許謙信喝一點酒。

謙信の体調を定期的に確認している医者からも、多少の飲酒ならば問題ないとの報告を受けている。ならば今日くらいは謙信に飲酒を許可しても良いだろうと判断した。

「聽說以上杉大人為首,越後一帶的人多為酒豪。希望今天的酒能合您們的口味。」

「上杉様を筆頭に、越後の皆様は酒豪が多いと聞き及んでおります。本日のお酒がお気に召すと良いのですが」

若直接當面說許可謙信飲酒會破壞他的面子,靜子便以婉轉的措辭與眼神向謙信傳達許可。謙信似乎理解了她的意思,微微握緊了右拳。

面と向かって謙信に飲酒を許可しますと言えば、彼の面子が潰れると思った静子は婉曲な表現と目配せを以て謙信に許可を伝えた。謙信も静子の言わんとすることを理解したのか、小さく右拳を握りしめている。

「(他是那麼想喝酒嗎?)會場將在大廣間,讓家人引導過去吧。請稍等。」

「(そんなにお酒が飲みたかったのかな?)会場は大広間となりますので、家人に案内させましょう。少々お待ち下さい」

雖然比一般民宅大,但靜子宅終究還是私人宅邸。並非設計讓大群人同時移動,於是安排引導的人分批漸次移往大廣間。

一般の家屋に比べれば大きいとはいえ、所詮は静子邸も私邸の域を出ない。大人数が一度に移動するようには出来ておらず、案内の者をつけて少しずつ大広間へと移動して貰った。

本以為引導順序與席次會有些爭執,但沒有人在意這些。事情進展比預想順利,靜子反而擔心是否藏有意想不到的陷阱。

案内する順番や、席順について少しは揉めるかと懸念していたのだが、誰もそんなことを気にしている様子がない。予想よりもスムーズに物事が進んでいることに静子は思わぬ落とし穴があるのではないかと不安を抱く。

不過既然目前沒有問題,過度擔心也顯得多餘,於是她告訴部下若有狀況即刻行動,自己也前往宴會場。

とは言え、現状で何も問題が起こっていない以上は気にしすぎるのも野暮だろうと思い直し、何かあった際に即座に動けるよう配下に告げると自身も宴会場へと赴いた。

這次宴席採用了與戰國時代常識不同的形式,靜子比起政事更為煩惱的是這種方式能否被接受。

今回の宴席は戦国時代の常識とは異なる様式を採用しており、静子自身はこの方式が受け入れられるかどうかの方が政よりも悩ましかった。

(每次都覺得,宴會的料理太多了吧。即便吃不完也會被認為是廚師的失職……)

(毎回思うんだけれど、宴会の料理って多すぎるよね。それでも食べきらないと庖丁人の不手際とされるからね……)

戰國時代宴席供應的食物量對女性如靜子來說相當嚴苛。這次她是主辦方所以無妨,但若被邀請時靜子吃不完留下菜餚,接待者或廚師將負責受罰。

戦国時代の宴会で供される食事の量は、女性である静子にとっては厳しいものがある。今回は自身が催す側であるため問題ないが、招かれた場合に於いて静子が料理を残せば、その責は饗応(きょうおう)役(接待する人)や料理人となるのだ。

只是因為吃不完菜就懲罰下屬,雖然荒謬,但在戰國時代卻成了常態。

たかだか料理を食べきれなかった程度で下の者が処罰されるなど無体な話だと思うが、それが常識となっていたのが戦後時代である。

靜子認為若因自己的緣故讓下屬受罰會覺得很不是滋味,於是打算提出新的宴席形式。

流石に自分の都合で下の者たちが処罰されたのでは目覚めが悪いため、静子は新しい宴席の形を提起しようと考えた。

但只在尾張通行的形式沒有意義,因此她想到在這次東國掌管者齊聚一堂的機會中示範。

だが尾張だけで通用する形式では意味がない。そこで今回、東国を差配する者が一堂に会する機会に披露しようと思いついたのだ。

希望他們回到各地後能把這次的宴會樣式廣為傳播,靜子不禁祈禱此次宴會能成功。

今回の宴会様式を国許に戻った彼らが広めてくれることを期待して、静子は此度の宴会が成功することを祈らずにはいられなかった。

(三河武士討厭過於矯飾。對越後武士不太了解,但從景勝等人的樣子看來應該是質實剛健型。因此史實上明智光秀款待家康與穴山梅雪的菜單不能直接採用。)

(三河武士は過飾を嫌う。越後武士については詳しく判らないけれど、景勝君たちの様子から見て質実剛健なタイプだと思う。ゆえに史実で明智光秀が家康や穴山(あなやま)梅雪(ばいせつ)をもてなした献立は使えない)

自室町時代起宴席的料理會一次擺齊,因此在膳具上也講究華麗的演出技巧。

室町時代以降、宴席の料理は一度に全て並べられるため、膳にも華やかさを演出する手法が凝らされた。

有把盛菜的盤子下的臺,也就是把膳本身以金或銀塗飾並繪畫的『をけ金』,把插菜的串塗以金的『亀足(きそく)金』,在菜餚下鋪上鍍金箔的和紙『甲立(かわたて)』,以及在菜中添上假花的『唐花(からはな)』等。

料理を盛る皿の下にある台、即ち膳自体を金や銀で塗り、絵を施した『をけ金』、料理に刺す串を金で塗る『亀足(きそく)金』、料理の下に金箔が施された和紙を敷く『甲立(かわたて)』、造花を料理に添える『唐花(からはな)』などがあった。

據史實記載,光秀在安土城款待家康時,不僅命人以各地匯集的山珍海味下廚,還使用了這種華麗的演出。據說連早餐與午餐也這麼講究,可見當時光秀是多麼細膩用心。

史実に於いて安土城で家康を光秀が接待した際、各地から集めた山海の珍味で料理を作らせるだけでなく、このような華やかな演出までをも駆使していたのだ。それを朝食や昼食に於いても行っていたというのだから、当時の光秀がどれほど気を配っていたかが判るだろう。

(可以理解想稍微奢華款待的心情,但總覺得演出優先,反而忽視了味道。)

(少しでも豪華なもてなしをしたいという気持ちは判るけれど、如何せん演出優先で味を疎(おろそ)かにしている気がするよね)

並非所有宴席都是如此,但偶爾也遇過只重視華麗演出,菜餚味道平淡的場合。

全てがそうという訳ではないのだが、たまに華やかな演出だけに力を注ぎ、料理の味はさっぱりという宴席に当たったことがある。

對於只要普通盤子上擺著美味料理就心滿意足的靜子來說,味道差是絕對不能接受的。

普通の皿に美味しい料理が載っていれば、それだけで満足という静子からすれば味が悪いのは論外であった。

她不會把不滿表露出來,以免影響對方廚師,但她認為料理是要靠味蕾來享受的。

不満を表に出してしまえば相手方の料理人たちにも影響が出るからとおくびにも出さないが、料理は舌で楽しめてこそだと思う。

(雖然已獲上意許可,但我的想法總會被說成小氣。)

(上様から許可は得ているけれど、私の考えはどうしても貧乏くさいって言われるのよね)

靜子事先就宴席向信長諮詢。雖然實際以要在宴席上供應的方式推出了幾道菜,但以信長的審美來說,評價是「實在有些寒酸」。

静子は事前に宴席について信長に相談をしていた。実際に宴席で供する方式で幾つか料理を出してみたものの、信長の感性からすれば「どうにも貧相だ」というのが評価であった。

對於如此直率的話語,靜子決定絕不告訴廚師們。

余りにも有難いお言葉に、決して料理人には伝えないでおこうと静子は心に決めた。

靜子想著各種事,遵從小姓的引導坐上上座。謙信和家康也已就座,靜子一行禮宴會便將開始。

色々と考えていた静子だが、小姓の案内に従って上座に座った。謙信や家康も既に座っているので、静子が挨拶をすれば宴会が始まるという状態だ。

靜子只動眼睛掃視會場,看到有幾人皺著眉頭做出難色。她猜想那是曾在安土或京受過接待的人。

静子は目だけを動かして会場の様子を見渡す。眉根を寄せて難しい表情をしている者が幾人か見受けられた。安土や京で接待を受けたことのある者たちだと静子は予想する。

因此他們對此次宴席也許不太感興趣吧。

ゆえに今回の宴席も余り気乗りがしないのだろう。

再移開視線時與家康家臣忠勝對上目光。那瞬間他高興得誰看了都一目了然。坐在旁邊的半藏嘆了口氣並戳了他的肋側,忠勝明白情況後便收起了表情。

更に目線を動かしていくと家康の家臣である忠勝と目が合った。その瞬間、彼は誰が見ても判るほどに上機嫌となる。隣に座っている半蔵がため息と共にわき腹をつつくと、状況を理解した忠勝が表情を引き締める。

看著那情景的康政輕笑了一下。

その様子を見ていた康政が小さく笑った。

(那三人真的很要好呢)

(あの三人は本当に仲が良いね)

看著自古不變的三人互動讓緊張鬆弛下來,靜子將視線轉向其他面子。越後一方的席位上還有景勝等人質組坐著,這是因為景勝已被確定為謙信的繼承人所做的安排。

昔から変わらない三人の様子に緊張がほぐれた静子は、他の面子にも視線を向けた。越後の面々が座る席には景勝たち人質組も加わっていた。これは景勝が謙信の後継者として確定しているための措置である。

在伊達家的席位上,藤次郎為首的數名代表坐著。

そして伊達家の席には名代として藤次郎を筆頭に数名が座している。

靜子看著即將主導東國的陣容,重新覺得責任重大。然而她認為吃飯時不應再帶著工作心情,清了清喉嚨後輕輕拍手,向配膳人員示意。

これから東国を動かしていく面子を見て、改めて責任重大だと思いなおす静子だった。しかし、これから食事をするにあたって仕事を引きずるのは良くないと考えた静子は、一つ咳ばらいをすると軽く手を叩いて配膳係たちに合図した。

接到靜子的指示後,配膳人員在出席者面前逐一擺上膳肴。

静子からの合図を受けた配膳係たちは、宴席に着いた各自の前へ膳を置く。

「這是……?」

「これは……?」

「呃、嗯」

「う、うむ」

每擺上一份膳,四處便傳出困惑的聲音。雖然臉上未表露,但可看出謙信甚至家康也有疑問。

膳が置かれるたびにあちらこちらから困惑の声が上がった。表情にこそ出さないものの、謙信も家康でさえも疑問を持っていることが窺える。

靜子低頭看向自己面前的膳,膳上放著一只裝有梅酒的小尾張切子玻璃杯,以及今日的菜單。

静子は自分の前に置かれた膳に視線を落とすと、膳の上には梅酒の入った小さな尾張切子のグラスと本日の献立が置かれていた。

「這次的宴席我稍微改變了些趣向。各位對此或多或少會有各自想法,但還請各位容忍一下我的任性,好嗎?」

「此度の宴席は少し趣向を変えております。皆さま色々と思うところがおありでしょうが、どうか私の我儘(わがまま)にお付き合いいただけないでしょうか?」

靜子採用的是會席的套餐料理。這是現代宴會常用的套餐形式,據說是從本膳料理演變並簡化而來。

静子が採用した方式は会席のコース料理であった。現代でも宴会などで採用されるコース形式であり、本膳料理から派生して簡略化されたものだと言う。

它不像本膳料理那般拘泥於繁複規矩,會根據時代與季節加入各種飲食偏好。

本膳料理ほど堅苦しい決まりがなく、時代や季節に合わせた嗜好などが凝らされる。

類似的詞有『懷石』,那是茶會提供的料理。兩者的差別在於懷石為飲茶前的輕食,用以暫時充飢;而會席則為配酒而設,菜品數量與種類較為豐富。此外飯食與湯品供應的時序也不同,懷石於最初供應,會席則在最後。

似た言葉として『懐石』があるが、こちらは茶会で供される料理となる。二つの違いは『懐石』が茶を飲む前の軽食であり、空腹を一時的に満たすものに対し、会席は酒をたしなむ為に料理の品数や種類が豊富である。また飯物と汁物が提供されるタイミングが異なり、懐石は最初、会席は最後に供されるという差があった。

題外話是,懷石原本稱為『會席』,但到了江戶時代,改以『懷石』的漢字來表示。

余談だが懐石は元々『会席』と呼ばれていたのだが、江戸時代に入り会席ではなく『懐石』という漢字が当てられるようになった。

而且原本『懷石』一詞就包含料理的意義,說成『懷石料理』實屬贅詞,但受會席料理影響,現代普遍還是稱為『懷石料理』。

そして元々は懐石だけで料理の意味が含まれており、懐石料理とすると重言になるのだが、会席料理の影響からか現代では懐石料理と呼ぶのが一般的となっている。

此外現代亦作為一般餐飲而提供,食事處通常稱為懷石料理,而在茶席上則區分稱為『茶懷石』。

また現代では一般的な食事としても供されているため食事処では懐石料理、茶席に於いては『茶懐石』と呼び分けて区別している。

「這是我個人的意見,本膳料理嘛……對我來說份量太多了。」

「これは私個人の意見ですが、本膳料理はその……私にとっては量が多すぎるのです」

靜子有些羞澀地說出這話,但內心也有少數人表示同意。本膳料理以本膳(一膳)、二膳、三膳為基本,若要隆重款待則還會有與膳、五膳、御菓子等續上。

恥ずかしそうに告げる静子だが、内心では同意する者も若干名いた。本膳料理は本膳(一膳)、二膳、三膳が供されるのを基本とし、丁重にもてなす場合には与膳、五膳、御菓子と続く。

每一膳擺放四到七道菜,因而最低要吃十種,最多甚至要吃三十種料理。靜子的情況因為信長下了禁酒令而無妨,但其他人還會在此基礎上配上酒。

そして各膳には料理が四から七ほどが載せられているため、最低でも十種類、多い場合は三十種類もの料理を食べる必要があった。静子の場合は、信長から禁酒令が出されているので問題ないが、他の者にはこれに加えて酒までもが供される。

「不過若因飽腹而留下料理,便無法對饗應役與廚師交代。因此此次我想舉辦一種新的宴席形式。」

「しかし、腹が満ちたからと言って料理を残せば饗応役や庖丁人に顔向けできませぬ。そこで此度、新しい形式の宴席を催させて頂こうと思います」

無法吃完本膳料理,這是靜子無可隱瞞的真心話。

本膳料理は食べきれないというのが、偽らざる静子の本音だ。

然而她也明白大量飲食被提供的原因。雖然現代被稱為飽食年代,但直到那時能吃飽仍屬難得之事。

しかし、大量の食事が供される理由も判っていた。現代は飽食の時代と言われているが、それまで腹一杯食べるということは貴重であったのだ。

靜子也曾歷經無法獲得滿足餐食的處境,正因如此她才能理解在宴會上能吃飽是多麼重要。

静子も満足な食事を得られない状況を経験したからこそ、宴会に於いて腹一杯食べられるというのが重要だと理解できる。

像靜子這樣想減少份量的人十分罕見,人們認為若吃不下便表示到了世代交替的時候。

今の静子のように量を減らしたいと思う方が稀であり、食べられなくなったのなら世代交代の時期が来たということだとされていた。

雖然理解情勢,但也不想每次都挑戰胃的極限,因此選擇了比本膳料理更不拘禮數且更易調整份量的會席。

事情はわかれども毎回胃の限界に挑戦するのは勘弁願いたい。そこで量を調整しやすく、本膳料理より堅苦しくない会席に目を付けた。

「為免誤會,我並非要否定本膳料理。本膳料理自有其獨到之處。再次聲明,此次宴席是我的任性。」

「誤解のないよう申し上げますが、私は本膳料理を否定するつもりはございません。本膳料理にはそれならではの良さがございます。此度の宴席は私の我儘であることを繰り返し述べさせていただきます」

「嗯……從這菜單看來,這一膳似乎不是全部。那種前所未有的新樣式也令人好奇。能夠率先體驗,倒是件幸運的事吧。」

「ふむ……献立とやらを見る限り、この膳で全てという訳ではないようだ。今までにない新しい様式とやらも気にかかる。ましてやそれを最初に経験出来るというのは僥倖(ぎょうこう)だろう」

一直聽著靜子發言的謙信開口了。雖然表情有些為難,但並未顯出否定的氣息。

それまで静子の言葉を聞いていた謙信が口を開いた。やや難しい表情を浮かべているものの、否定的な雰囲気は感じられない。

「是啊。若有問題,我等會指出。以靜子大人而言,下次宴席必能巧妙改進。」

「そうですな。なに、問題があれば我々で指摘すれば良いのです。静子殿ならば次の宴席で、見事改善して下さるでしょう」

家康也贊同謙信。此處年輕的藤次郎因酒性不佳被禁酒,他面前的杯中裝的是梅子汁。

家康も謙信に同意する。ここでは若輩者となる藤次郎だが、彼は酒癖の悪さから禁酒を言い渡されており、彼の膳に供されたグラスには梅ジュースが入っている。

小十郎對於藤次郎聞著毫無酒精感的香氣,擔心他是否失禮。

酒精の感じられない香りを嗅いでいる藤次郎に、不調法なのではと小十郎は気が気ではなかった。

「(說起來,政宗也以喜愛新鮮事物聞名呢)謝謝。到時請不必客氣指教。」

「(そう言えば、政宗も新しい物好きで有名だよね)ありがとうございます。その時はご遠慮なくご指摘下さい」

「哈哈哈。既然已得靜子大人的回應,便容我立刻問一個問題。這聞起來像是梅酒,酒水就只有這一杯嗎?」

「はっはっは。では、静子殿の言質も頂戴できたことゆえ、早速質問させていただきたい。こちらは匂いからして梅酒かと思いますが、酒はこれだけになるのでしょうか?」

靜子覺得第一個問題居然是關於酒,真是謙信的作風,但她立刻切換思路,不讓自我多想而延誤回答。

最初の質問が酒についてなのが謙信らしいと思った静子だが、余計なことを考えて返答を送らせるわけにはいかないと頭の中を切り替える。

「這是開胃酒。膳上附有今日供應料理的清單。酒類未明列,會視情況供應。因上樣尚未解除對我的禁酒令,我會喝別的飲品,但各位請儘管享用。」

「こちらは食前酒となります。膳の上に本日提供される料理の一覧が献立として添えられております。酒については記載がなく、適宜供されます。私は上様からの禁酒令が解かれていないので、他の物を頂戴しますが、皆さまは遠慮なく召し上がって下さい」

自信長對靜子下達禁酒令以來,從未解除過。若真需飲酒,數量也會被嚴格規定。

静子が信長から禁酒令を言い渡されて以降、一度として解除されたことがない。どうしても酒を飲む必要がある場合には、厳格に量を規定されていた。

信長甚至嚴令派人同席監視酒量,可見他多麼不想讓靜子飲酒。

酒量を確認する目付け役を同席させる旨が厳命されていることから、信長がどれほど静子に飲酒をさせたくないかが窺えよう。

靜子曾疑惑為何要如此不讓她飲酒,便曾詢問與她同住的慶次和長可等人。

そこまでしてまで酒を飲ませたくないというのは何故なのかと疑問を抱いた静子は、慶次や長可などの共に起居する者に訊(たず)ねたことがあった。

他們被信長反覆告誡靜子的酒癖,幾乎被說到耳朵起繭,因此大家齊聲勸她不要喝酒。

彼らは信長より静子の酒癖について耳に胼胝(たこ)ができるほど聞かされていたため、全員が口を揃えて酒を飲まないよう諭されたのだった。

被如此警告的靜子反而好奇自己醉後會做出什麼事,但無論問誰都遭到閉口,於是她理解這些事不應去探問。

そうまで言われた静子は、逆に自分が酔った際に何をしでかしているのか気になったのだが、誰に聞いても口を閉ざすことから聞いてはいけないのだと理解する。

她難以相信自己會有酒亂之性,但若知道真相恐怕會後悔,因而決心終生不去探聽。

自身に酒乱の気があるとは信じがたいが、知ってしまえば後悔しそうな気になったため、一生涯聞かないことにしようと心に決めた。

「哦哦!這張和紙上寫的就是菜單嗎?雖說不太看得懂,但似乎會供應相當的品項。」

「ほほう! この和紙に書かれているのが献立ですか? なにやら良くは判りませぬが、それなりの品数が供されるようだ」

家康拿起擺在膳上的菜單。其他人似乎也好奇,便跟著家康看了過去。

家康が膳に乗っている献立を手に取った。他の者も気になっていたようで、家康に続く。

菜單上有食前酒、作為前菜的先付(さきづけ)、做為下酒菜的八寸(はっすん)、供應吸物與煮物的椀物(わんもの)、提供湯引或皮霜等刺身的向付(むこうづけ)、提供烤魚等燒物的鉢肴(はちざかな)、提供炸物與燙青菜的強肴(しいざかな)、供應醋物與和え物(拌物)的止(と)め肴(ざかな)、供飯、湯與香物的食事(しょくじ),最後則是供水果的水菓子(みずがし)。

献立には食前酒、前菜を出す先付(さきづけ)、酒の肴を出す八寸(はっすん)、吸い物や煮物を出す椀物(わんもの)、湯引きや皮霜作りといった刺身を出す向付(むこうづけ)、焼魚などの焼物を出す鉢肴(はちざかな)、揚げ物やおひたしを出す強肴(しいざかな)、酢の物や和え物を出す止(と)め肴(ざかな)、飯と汁、香の物を出す食事(しょくじ)、最後に果物を出す水菓子(みずがし)だ。

先付與八寸兩者都作為下酒菜,因此意思上幾乎相同,但因會席本就是以賞酒為目的的宴會,靜子便把八寸加入了菜單。具體差別在於先付為溫野菜,八寸則以豆類製成下酒菜。視季節狀況,有時可以省略八寸,由先付同時供應兩者亦無問題。

先付と八寸はどちらも酒の肴を供するのでほぼ同じ意味だが、これは会席が酒を楽しむ宴会という事で静子が献立に追加した。具体的な違いは先付が温野菜、八寸が豆類で作られた酒の肴になる。季節によっては八寸を抜いて、先付で両方を供しても問題はない。

「真是各式各樣。讀了菜單讓人對料理充滿期待,而且看起來也準備了好幾種酒」

「色々とありますな。献立を読むと料理への期待が掻き立てられるし、酒も幾種類も用意頂いてる様子」

「好像有熱酒呢」

「何やら温かい酒があるようですぞ」

先前去向配膳係確認酒種的人把消息傳了回來。

先んじて配膳係に酒の種類を確認した者が情報を流す。

「所謂熱酒這點令人很在意呢」

「温かい酒というのは気になりますな」

「其實在下並不太擅長喝酒。不過若是只有在這裡才能喝到的酒,在下倒想試試看」

「実は某、それほど酒が得意ではござらぬ。しかし、ここでしか飲めぬ酒とあらば、試してみとうござる」

「在下想先吃飯……」

「某は先に飯が頂きたい……」

大家邊看菜單邊開始各自說出心中的想法。看得出他們注意不讓場面太吵,但從偶爾聽到的談話得知,大致上是以好意接受的。

献立を見ながら各自が思い思いのことを口にし始める。流石に騒がしくならないよう気を使っているようだが、漏れ聞こえる会話から概ね好意的に受け止められたと判った。

靜子覺得一開始的掌握相當良好,於是下定決心要以這個氣勢讓宴席成功舉行。

最初の掴みは良好だと感じた静子は、この調子で宴席を成功させようと決意した。

「若有在意的地方,請向配膳係等人詢問,便不勝感激。話說正式又生硬的致詞未免沒趣,便讓宴會開始吧」

「気になったことは配膳係などにお聞き頂ければ幸いです。それでは堅苦しい挨拶も無粋でしょうし、宴会を始めましょう」

一邊說著,靜子拿起裝有梅汁的杯子,話音剛落便同時將杯子傾起飲下。

言いながら静子は梅ジュースの入ったグラスを手に取り、話し終えると同時にグラスを傾けた。