戦国小町苦労譚
千五百七十八年 八月中旬
朝廷委任信長為東國惣無事的消息在日之本國中傳開了。
朝廷が信長に対して、東国の惣無事(そうぶじ)を任じたことは日ノ本中を駆け巡った。
聽到此事的民衆,或許因已感受到『世上是織田的時代』,並未出現太大動盪就接受了這項消息。
この報せを耳にした民たちは、既に『世は織田の時代』と感じているためか大きな動揺もなく受け入れられた。
反而,緊接著頒布的『將關於東國惣無事的一切全權交由靜子』這項布告更令世間譁然。
むしろ、間を置かずに『東国惣無事に関する全権を静子に与える』との発布されたことの方が世を騒がせることとなる。
這在戰國時代可謂百年難遇:不是將權力交給作為後繼者的信忠,而是給予一位非血親的靜子總共二十五國的統治權,實屬暴舉。
これは戦国時代に於いては異例中の異例となる出来事であり、後継者たる信忠ではなく血族ですらない静子に計二十五カ国もの統治権限を与えてしまう暴挙だった。
然而在織田家中,包括重臣在內幾乎所有人都認為這是合宜的決策而予以接受。
ところが、織田家家中に於いては重鎮を含め殆どの者が順当な采配だと受け入れてしまっている。
「近衛大人真有那等信賴的品德嗎?」
「近衛様とは、それほどの信用に能(あた)う御仁なのでしょうか?」
「即便我對她深信不疑,你恐怕也不會因此心服。那麼你就去親自調查她成就的偉業吧。若你能做到與靜子殿相同之事,我便為你安排那機會。但切記,失敗即意味死亡,你可有此覺悟?」
「わしが信用を受合ったところで、其方(そなた)は納得しまい。ならば彼女の成した偉業を自らが調べるが良い。その上で己が静子殿と同じことが出来ると言うならば、わしがその機会を用意してやろう。但し、失敗は即ち死を意味することを努々(ゆめゆめ)忘れるでないぞ。其方にその覚悟はあるかな?」
明智光秀如同教誨般回應了年輕近習的提問;他認為若靜子是個貪圖私利、獨占利益之人,信長也不會如斯重用她。
明智光秀は、己に付き従う年若い近習からの問いに諭すように説いた。もしも静子が我欲のままに利益を独占する者であったならば、信長も彼女をここまで重用していなかったであろうと彼は考える。
「我們能在對毛利的戰事中佔有利,是因為靜子殿承擔了軍備一切的籌措。若她真是個野心勃勃之人,會如此為我們這等競爭對手提供便利嗎?」
「我らが毛利に対し、いくさを有利に進めていられるのも、静子殿が軍備手配の一切を請け負って下さっているおかげであろう。もしも彼女が野心溢るる人物であったならば、競争相手でもある我らに対し斯様(かよう)に便宜を図ってくれるものだろうか?」
感激靜子的人不僅是光秀,秀吉也是如此。
静子に対して恩義を感じているのは光秀だけでなく、秀吉も同様である。
不止這兩人,現今支撐織田家的譜代家臣更不必說,柴田、滝川、丹羽等有力將領都是共度艱難時期之人,對此有共同認知。
この二人だけでなく今の織田家を担う譜代の臣は言うに及ばず、柴田や滝川、丹羽などの有力な将は辛く苦しい時期を共に乗り越えた者たちが抱く共通認識であろう。
對於只知曉織田一家一統近時的年輕人來說或許覺得理所當然,但在戰場上無需擔心飢餓而能用餐、能穩定領到整備良好的武具、並能使用遠勝他國的充裕彈藥等環境,皆可說是靜子長年建立出的精髓。
織田家一強となった最近しか知らない若人にとっては当たり前だと考えているようだが、いくさ場において飢える心配なく飯を食らい、常に整備された武具が支給され、他国を圧倒するほどに潤沢な銃弾を使用できる環境は、いずれも静子が長い時間を掛けて築き上げた精髄(せいずい)とも言えるものなのだ。
她成就如此偉業卻從不自誇;當然也非無償提供,而是獲取相應報酬,但她所提供的物資比各將領各自籌備要便宜且品質更高,現已可稱為織田軍的基礎基礎設施。
これほどの偉業を成したというのに彼女は功を誇ることも無かった。無論、無償で提供していた訳ではなく相応の対価を得ているが、諸将がそれぞれ自前で用意するよりも遥かに安価で高品質な物資を提供するため今や織田軍の基盤インフラとさえ言える。
「無論如何,最好能取得靠近尾張的領地,或是在尾張與關東間的延線上得一塊地吧」
「いずれにせよ、尾張に近い領土もしくは尾張と関東との延線上に領土を得るのが望ましいだろう」
這是織田家重臣們的共識。被封於尾張一國的靜子,將以此為契機向東國擴展勢力。
これが織田家重鎮たちの共通認識であった。今まで尾張一国に封じられていた静子が、これを契機に東国へと手を広げるのだ。
即便如今該地價值有限,但沿著連接尾張與關東的街道繁榮是顯而易見的。關於作為東國征伐褒章可得的領地,激烈的爭奪戰已經開始,唯獨靜子還未察覺。
今はそれほど価値が無くとも、尾張と関東とを結ぶ街道沿いが栄えるのは目に見えている。東国征伐の褒章として得られる領土に関して、熾烈な駆け引きが始まっていることを静子だけが知らずにいた。
「這樣名實相符地作為通往關東的物流動脈,就能鋪設鐵道了呢」
「これで名実共に関東までの物流を担う動脈として、鉄道を敷くことが出来るね」
果如織田家重臣所料,靜子對東國的基礎建設抱持極大熱忱;談到陸上大規模且高速的運輸,鐵道是不容忽視的選項。
織田家の重鎮たちが予想していた通り、静子は東国のインフラ整備に意欲を燃やしていた。陸上での大規模かつ高速輸送と言えば鉄道は避けて通れない。
現階段鐵道所需的核心技術已完成開發,若在整修街道的同時平行鋪設軌道,不久便會迎來蒸汽機車在東海道上運行的日子。
現時点で鉄道に必要となる基幹技術の開発は済んでおり、街道を整備しつつ並行して軌条を敷設していけば遠からず蒸気機関車が東海道を運航する日が訪れるだろう。
然而靜子也不能立刻就全面展開基建;在此之前,她必須完成信長交付的任務。
しかし、静子としても直ぐにインフラ整備に取り掛かれるわけではない。その前に信長から任されている仕事を済ませる必要があった。
那就是向所有在東國擁有領地的國人下達通告,要求他們前往安土謁見信長並誓於臣從。
それは東国に領地を持つ全ての国人に対し、信長に謁見するため安土へと赴いて臣従を誓わせる旨を通達することだ。
實際上這些國人已屬於信長的支配之下,但作為對外的儀式仍屬必要之舉。
実質的には既に信長の支配下と言えるのだが、対外的な儀式として必要な措置である。
「果然還是需要給一定的準備時間吧」
「流石にある程度は準備に時間も必要だよね」
靜子考慮到各國人離開國許前往安土所需的準備時間,於通達中加註了回覆期限為今年內。
静子としては各国人達が国許を離れて安土へと向かう準備をする時間を考慮し、回答期限を今年中と定める旨を通達に付け加えていた。
順帶一提,若未回覆會受到何種處置她並未明文規定;她覺得比起附上一些低劣的威脅文字,以沉默的壓力來施壓更為合宜。
因みに、回答が無かった場合にどのような処遇を受けるかは明文化していない。安っぽい脅迫内容を沿えるよりも無言の圧力を掛ける方が良いと考えたからだ。
靜子原本估計通達一個月左右便會有回應,然而她低估了近衛家與自身在東國的聲望之高。
静子は通達から一月程度で返答が来れば良いと見積っていたのだが、彼女が考えるよりも東国に於ける近衛家及び静子の名声は強かった。
各國人遂奔走以儘速回應,立即著手準備前往安土所需的物資,並以文書回報其進度與能夠回應的大致時程。
各国人達は可及的速やかに返答すべく奔走することになる。即座に安土詣(もう)での物資調達を図り、その進捗状況及び回答出来るおおよその目安を文書で回答してきた。
由於是由以盛大聲勢就任東國管領的靜子發出的通達,各國人皆心驚,無心之間在東國各地引發了混亂。
鳴り物入りで東国(とうごく)管領(かんれい)に就任した静子からの通達だけに各国人達は震えあがり、意図せずして東国のあちこちで混乱を招く。
熟悉靜子性情者知道只要以禮相待便無大礙,但因她是被以苛烈著稱的信長拔擢的人物,任何小差錯也難以容忍,於是引發了過度反應。
静子の人となりを知る者ならば礼儀正しく振る舞えば問題ないと判るのだが、苛烈な性格で知られる信長が大抜擢した人物だけに少しの落ち度も許されないと過剰な反応となったのだった。
而招致混亂的當事人則絲毫不以為意,已抱着一種完成了一項任務的心情埋首於即將到來的『御馬揃え』準備之中。
混乱を招いた当の本人はと言えば、既に一仕事終えた気分で目前に迫りつつある『御馬揃え』の準備に邁進している。
她與各相關處所緊密往來書信,每次明朗化的龐大物資調度與運輸、以及與相關人物的協調,需處理的事項繁多。
関係各所と密に文をやり取りし、その都度明らかになる膨大な物資の調達や輸送、関連する人物との調整にとやるべきことは多岐にわたっていた。
靜子一邊將這些作業分類、體系化並整理為作業手冊,一邊被繁重的工作所淹沒。
それら作業を分類し、体系立てて手順書として纏め上げながらの作業に静子は忙殺されていた。
工作接連不斷地湧入,靜子的書桌上總是堆滿文件,但她絲毫不顯疲態,反而精力充沛、看起來很享受地投入其中。
次から次へと仕事が舞い込み、静子の文机には常に書類が山を為している状態なのだが、本人は疲労感など微塵も感じさせず精力的に、むしろ楽しそうに取り組んでいる。
「我所作的文書能成為歷史的一部分,說不定這樣的機會再也沒有了!」
「私が作った文書が歴史の一部になるなんて、こんなチャンスは二度と無いかもしれない!」
能在趣味與實利上同時大放異彩的靜子,藉著一連串的作業如今已成為比誰都更熟悉御馬揃え的第一人者。
趣味と実益を最大限発揮できる立場となった静子は、一連の作業のお陰で今や誰よりも御馬揃えに詳しい第一人者と言えるようにまでなった。
認識靜子的人從未見過她如此生氣勃勃;正當大家好奇這股熱量從何而來時,一封報告書送到了她手上。
静子を知る誰もがこれほどまでに溌剌(はつらつ)とした彼女を見たことが無かった。これほどの熱量が何処から生まれてくるのか不思議に思われていた頃、静子の許へ一通の報告書が届く。
報告書內容是決定對北條進行處罰的事項。靜子認為一旦牽涉到北條的處遇便不可等閒視之,於是中斷作業細閱報告書。
それは北条に対する処罰が決まったとの内容であった。北条の処遇となれば見過ごすことはできないと思い、静子は作業を中断して報告書に目を通す。
因為東國征伐軍已經擊敗北條,多數部隊已經解散。現在由信忠主導戰後處理,而作為東國管領的靜子將接手其結果。
東国征伐軍は北条を下したことにより大多数が解散していた。今は信忠が中心となって戦後処理を進めており、その結果を東国管領となった静子が引き継ぐ手筈となっている。
「氏政與氏照切腹,氏直則蟄居嗎?」
「氏政と氏照は切腹、氏直は蟄居(ちっきょ)ですか」
北條三名首腦同意以自身切腹交換對部下將兵的赦免。信忠則判處直接負責的氏政、氏照兄弟切腹,僅對氏直施以蟄居,至此定案。
北条の首脳である三人は、揃って自身の切腹と引き換えに配下の将兵に対する助命を請うた。これに対して信忠は、直接的な責任を負う氏政・氏照兄弟に切腹を申し渡し、氏直のみを蟄居とすることを以て決着とした。
結果上,史實中早已切腹的大道寺政繁與松田憲秀等人得以保住性命。除此之外,還命令許多北條一族與宿老們立刻讓出家督並出家。
この結果、史実では切腹している大道寺(だいどうじ)政繁(まさしげ)や松田(まつだ)憲秀(のりひで)らが命を繋ぐこととなった。他にも多くの北条一族や宿老達に対し、即座に家督を譲って出家するよう命じている。
接受此命後,氏直率領總勢近五十名家臣離開小田原城。之所以如此強硬地進行世代交替,是為了不讓北條一族的戰略、戰術與人脈等傳給後繼者。
この命を受け、総勢で五十名近い家臣を伴い、氏直は小田原城を出立した。これほどまでに強引な世代交代を図ったのは、北条一族の戦略や戦術、人脈などを後継者に引き継がせないためであった。
如同戰國時代的常態,多少會有些傳承,但藉由取消世代交替的猶予,刻意造成了斷絶。
戦国時代の常として、ある程度は伝えているのだろうが、世代交代までの猶予を無くすことで意図的な断絶を作り出したのだ。
於是留在小田原者多半都是對北條武者的基礎一無所知的年輕人。僅此一點就足以扼殺反抗氣運,信忠還進一步沒收了北條家代代相傳的家寶與武具全部。
こうして小田原に残ったのは、殆どが北条武者としてのイロハも知らない若年者ばかりとなった。これだけでも反抗する気運を潰している状態だが、信忠は更に北条家伝来の家宝や武具の一切合切を没収した。
這種徹底作法不僅限於北條家與其姻族,連家臣們也被波及。信忠下令「作為服從的證明,應當自動供出」,不從者視為有反逆之意而處罰。
それは北条家及びその姻族だけに留まらず、家臣たちまでもを対象とした徹底したものだった。信忠曰く「服従の証として、進んで供出すべし」と通達し、従わない者は反逆の意図有りとして処罰される。
「那麼被供出的就是這些了呢」
「そうして供出されたのが、これらになるのですね」
靜子的眼前安放著北條家家寶──名物「日光一文字」,以及收藏它的黑漆塗飾葡萄紋蒔繪刀箱。
静子の目の前には北条家家宝である名物『日光(にっこう)一文字(いちもんじ)』とそれを収める黒漆塗りの葡萄文蒔絵刀箱が鎮座している。
作為刀劍還有備前長船長義作的「山姥切」、板部岡江雪斎的「江雪左文字」等並列,可窺見毫不留情的刀狩正在進行。
刀剣としては他に備前(びぜん)長船(おさふね)長義(ちょうぎ)作の『山姥(やまんば)切(きり)』、板部岡(いたべおか)江雪斎(こうせつさい)の『江雪(こうせつ)左文字(さもんじ)』が並び、容赦の無い刀狩りが行われていることが窺えた。
此外還收押了有名之物,如法螺貝「北條白貝」與「吾妻鏡」等。
他にも有名どころとして法螺貝(ほらがい)である『北条白貝(ばいがい)』や『吾妻鏡(あづまかがみ)』などが接収されていた。
信忠體貼地考量到若把這些物品一併送出可能遭劫,遂將之分批小件送到靜子處。
これらの物品は纏めて送れば襲撃される可能性があるため、小分けにして順次静子の許へと送り届けるよう信忠が配慮している。
與甲冑等大型物不同,刀與書冊等不至於成為大件行李,故大概較早送達。靜子感謝信忠的關懷,回以謝函並附上清酒與酒肴一同送出。
甲冑などの大物とは異なり、刀や書物などはそこまで大荷物とならないためか、早めに届いたのであろう。静子は信忠の心遣いに感謝し、礼状を認(したた)めると清酒や酒肴と共に送り出した。
靜子為這些物品製作了目錄,並安排妥善保管。特別是吾妻鏡如史實所示已四散流失,殘存部分亦可見作者或編纂者的用意深深反映其上。
静子はこれらの品々に対して目録を作成し、保管する手筈を整える。中でも吾妻鏡に関しては史実の通りに散逸しており、残っている部分についても作者や編纂者の思惑が色濃く反映されているのが見受けられた。
即便如此,作為史料仍屬一級品,是了解鎌倉時代人們生活樣貌的重要資料。
それでも史料としては一級品であり、鎌倉時代当時の人々がどのような暮らしをしていたかを知れる資料となる。
「啊,我想到好主意了!」
「あ、良い事を思いついた!」
靜子一面翻閱以變則漢文書寫的吾妻鏡一面喊道。她認為,正如現代仍會在舊家藏中發現歷史史料一般,東國仍有許多珍貴資料無人察覺地沉睡著。
静子は変則的な文法の漢文で記された吾妻鏡に目を通しながら声を上げた。現代に於いても旧家の蔵から歴史的史料が発見されることがあるように、東国にはまだまだ貴重な資料が誰の目にも触れず眠っている可能性があると彼女は考えた。
她想到可能有未曾見天日而失落的史料,遂決定充分利用自身的權威與權力採取行動。
日の目を見ずに遺失した史料があるかもしれない、そう考えた静子が取った行動は己の持つ権威と権力を余すことなく活用することであった。
她以受朝廷委託保護藝事的權威,並憑東國管領的職權下達通達,廣泛向東國民眾收購歷史史料。
芸事保護を朝廷より委託されているという権威に、東国管領という立場からの権力を利用し、広く東国の人々に対して歴史的史料を買い取る旨の通達を出したのだ。
東國民眾對於她要收買並非一般認為有價值的金銀財寶、土地或茶器,而是那些古舊的文書、書籍,甚至看起來像塗鴉的字條也一併收買的敕示,難免感到困惑。
一般的に価値があるとされる金銀財宝でも土地でも茶器ですらない古臭い文や書物、下手をすれば落書きにしか見えないような書きつけまでをも買い取るとの御触れに東国の人々が困惑したのは言うまでもない。
即便如此,因小田原征伐時的恐怖陰影仍重,為了向未來可能到任的為政者討好,各地沉睡的公文書、私文書、抄本,甚至不知誰所寫的日記都被送向靜子之處。
それでも小田原征伐時の恐怖が色濃く残っている東国では、今後赴任してくるであろう為政者に対して媚を売るべく、各地に眠っていた公文書は勿論のこと、私文書や写本、果ては誰が書いたともしれない日記までもが静子の許へと送られた。
「權力與財力就是要在這種時候使用」
「権力や財力とはこういう時に使うのよ」
面對堆得高高的歷史史料,靜子顯得十分滿足。然而認為那些東西有價值的只有靜子本人,周遭仍覺得她是把垃圾當寶的怪人。
堆(うずたか)く積まれた歴史的史料を前に静子はすっかりご満悦の様子だった。ただし、それらに価値があると思っているのは静子だけであり、周囲は相変わらずゴミを有難がる変人だと思っている。
「靜子還是一如既往,總在奇怪的時候動用權力啊」
「相変わらず静っちは、変な時に力を振るうよな」
「別說了,那傢伙把那些垃圾看成寶物吧。連不知誰寫給領主的怨歌,在他眼中也足以值得保護」
「言うな、あいつにはあのゴミが宝に見えているんだろうよ。誰が書いたとも知れぬ領主への悪口の歌ですら、あ奴には保護するに足りうるものらしい」
「他是見什麼買什麼,但照那樣看來,裡面恐怕混了相當多贗品……就算把那些仔細鑑定過,剩下的也只是砸下大錢買來的塗鴉罷了……」
「手当たり次第購入しているが、あの様子では相当数偽物も紛れ込んでいよう……それらを精査したところで、残るのは大金を叩(はた)いた落書き……」
即便是多年交情的慶次與長可,也完全無法理解靜子蒐集歷史史料的癖好。
長年の付き合いとなる慶次や長可でさえも、静子の歴史的史料蒐集癖には全く理解が及ばなかった。
關於刀的蒐集,像信長、上杉謙信等也以嗜好者著名,這點可以理解。但會為看似連點火都嫌多餘的破布碎片或被蟲蛀、保存極差的日記而眼睛發亮,大概只有靜子如此。
刀の蒐集については信長をはじめ、上杉謙信なども数寄者として有名であるため理解できる。焚きつけになるかすら怪しい襤褸切(ぼろき)れや、保存状態が悪く虫が食った日記ですらも目を輝かせるのは静子ぐらいであろう。
她的此類奇行並非首次,而是屢次為之。或許正因如此,史實中被埋沒於歷史黑暗的書物其原本收存於靜子的藏中,抄本則成為靜子圖書館的藏書。為此高興的,恐怕只有靜子本人與後世能夠發現它們的史學家。
彼女のこうした奇行は今回が初めてという訳ではなく、今までにも繰り返し行っている。その為か、史実では歴史の闇に葬られた書物が原本は静子の蔵へ、写本が静子の図書館に蔵書として保管されている。この事に喜ぶのは、静子本人と後世に於いてそれを発見できた歴史研究家だけであろう。
「不過,只有在做那事的時候靜子的工作病才會消停啊」
「だた、あれをしている間だけは静っちの仕事病が収まるんだよなあ」
家人們縱容靜子的奇行,是因為她一旦沉迷蒐集,工作狂的毛病暫時會消失。
家人たちが静子の奇行を由(よし)としているのは、蒐集に熱中している間だけはワーカホリックが鳴りを潜めるからであった。
信長把東國的管理交給靜子,除了她是絕對不會背叛的能臣外,還有其他理由。
信長が静子に東国の管理を任せたのは、絶対に裏切らない能臣であるということもあるが、他にも理由があった。
那是因為授予信長的東國惣無事令,本身就是某個人設計的策略。
それは信長に与えられた東国の惣無事令自体が、とある人物が描いた策略であったためだ。
靜子透過信長向朝廷運作,以勅令取得東國惣無事令,而有人見此機會併乘機策畫陰謀。
静子から信長を通して朝廷に働きかけ、勅令という形で得られた東国惣無事令だが、これに便乗する形で謀略を案じた者がいた。
他們認為,若信長全心投入東國惣無事,京與西國的注意力將會分散,自己便能獲得恢復失地的餘裕,甚至暗地促成根回し助力。
信長が東国惣無事に掛かりきりになれば、京や西国に関する注意が散漫となり、己の失地回復をする余裕が生まれると考えて根回しの後押しさえした。
然而,信長的機智讓那人悔恨其行動。
しかし、信長の機転により己の行動を悔やむこととなる。
「這到底是怎麼一回事!!」
「これは一体どういうことなのじゃ!!」
把從京城來的文書摔到地上怒不可遏的是仍難以放棄的義昭。他輾轉寄居於各處,如今隨足利將軍家遷移至具有由緒的備後國鞆。
京から届いた文を床に叩きつけて憤慨しているのは、未だに諦めの悪い義昭であった。彼は様々なところに身を寄せながら流れ続け、今は足利将軍家にとって由緒ある備後国(びんごのくに)は鞆(とも)へと動座していた。
那裡曾是像義昭一樣被逐出京的足利義稙得以重返將軍職的吉兆之地。
そこは、かつて義昭と同じように京を追われた足利義稙(よしたね)が将軍職へと返り咲いた吉兆の地でもあった。
在此地,義昭仍不死心地發出幕府復興與討伐信長的御內書;他曾因試圖對靜子下手而遭兄長足滿施以足以致命的折檻,自此連提起靜子之名亦避之唯恐不及。
この地に於いて幕府復興と信長討伐の御内書を懲りずに出していた義昭は、以前静子を狙ったがために兄である足満から命にかかわる折檻(せっかん)を受けることとなり、それ以降は静子の名前を口に出すことすら避けていた。
「不論如何陛下安之,我等東國之惣無事係近衛……咳。尾張三位殿已由右府殿(此處指右大臣,即信長)全權委任」
「どのように仰られようと、東国の惣無事は近衛……ゴホン。尾張三位殿が右府(うふ)殿(右大臣のこと、この場合信長を指す)より全権委任されておりまする」
義昭氣得頭冒熱氣,然而對此恵瓊面色未變。恵瓊之所以在說到靜子名字時吞吞吐吐,是因為義昭因創傷反應露出發作的徵兆。
頭から湯気でも出る勢いで憤慨する義昭だが、それに対する恵瓊(えけい)は顔色一つ変えなかった。尚、彼が静子の名前を言い淀んだのは、義昭がトラウマから発作の前兆を見せたからであった。
義昭作為從足滿那裡受到幾乎等同拷問的體罰後遺症,只要聽到靜子的名字便心悸劇烈、喘不過氣,並因極度恐懼而冷汗止不住。
義昭は足満から受けた拷問にも等しい折檻の後遺症として、静子の名前を聞くだけで動悸が激しくなって息切れを起こし、猛烈な恐怖から冷や汗が止まらなくなるのだ。
在現代醫療中,這些症狀大概會被診斷為創傷後壓力症候群(PTSD)。
現代であれば病院にて心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断されるであろう症状を呈していた。
「因、因此!! 為什麼、那、那個會通過!? 照你所說,不是應該能把可恨的信長給束縛在東國嗎!?」
「だだだ、だから!! どうして、そ、そ、それが通るのじゃ!? お主の話では、憎き信長めを東国に縛り付けられるはずではなかったのか!?」
「右府殿也知道此事,故而敢將其委任於尾張三位殿。何況她深得右府殿信任,且總是能交出超出所求的成果。」
「右府殿もそれを知り、敢えて尾張三位殿にお任せされたのでしょう。何せ彼女は右府殿の信任も厚く、常に求められた以上の結果を出し続けておられますゆえ」
「稱讚敵人有何用!」
「敵を褒めてどうする!」
「即便是敵人,有能之人也該被公正評價。若因為是敵人就蔑視輕看,得到的只不過是自己的虛榮心。最重要的……不,沒什麼。」
「たとえ敵であろうとも、有能な者は正当に評価すべきでしょう。敵であるからと言って蔑(さげす)み、軽んじたところで得られるものは己の虚栄心のみ。何より……いえ、何でもござりませぬ」
恵瓊瞥了一眼狼狽的義昭,將欲出口的話嚥了回去。縱然他仍是足利將軍家出身的義昭,對恵瓊而言他早已不過是個厄運之神。
狼狽(ろうばい)する義昭を一瞥(いちべつ)した後、恵瓊は口の端に出掛かった言葉を飲み込んだ。腐っても足利将軍家の義昭だが、恵瓊にとって彼は最早疫病神でしかなかった。
原本恵瓊就反對義昭來到西國。經過種種曲折之後義昭下向鞆,果然如恵瓊所憂所慮般犯下失態。
元々、恵瓊としては義昭が西国に来ること自体に否定的であった。紆余曲折の末に鞆へと下向した義昭は、恵瓊が懸念した通りの失態を演じる。
他一面依靠毛利家並寄身其下,卻在未曾與毛利商議一句的情況下就在鞆宣布幕府樹立。此舉令以毛利輝元為首的毛利家對應上十分為難。
毛利家を頼って身を寄せていながら、その毛利に一言の相談もなく鞆にて幕府の樹立を宣言したのだ。これには毛利輝元をはじめ、毛利家が対応に苦慮することとなる。
這場騷動之後,義昭的問題行為仍未平息,最終毛利與織田關係對立。恵瓊與作為與織田對立一因的宇喜多斷絕往來,並向織田申請允許和解,但未被接受。
この騒動の後も、義昭の問題行動は収まらず、結局毛利は織田に対して敵対することとなっている。恵瓊は織田と対立する理由の一つであった宇喜多(うきた)と断交し、織田との和解を許可するよう申し入れたが受け入れられることは無かった。
(毛利正處於前所未有的困境。自稱副將軍之類只不過是徒然。)
(毛利はかつてない窮地に立っている。副将軍などと僭称(せんしょう)したところで虚しいだけよ)
擁護義昭的輝元被義昭任命為副將軍,毛利軍便自承為公儀之軍、為西國的盟主。然而義昭自身早已放棄征夷大將軍之職,根本無權任命副將軍,故此頭銜在與織田的交戰中並未帶來任何優勢。
義昭を擁護した輝元は、義昭から副将軍に任じられ、毛利軍は公儀の軍として西国に於ける盟主であると嘯(うそぶ)いた。義昭自身が既に征夷大将軍の職を返上しており、彼に副将軍を任命する権限など有りはしないため、その肩書が織田とのいくさに於いて優位に働くことは無かった。
信長在攻打西國的初期,織田軍雖處於劣勢,卻在連敗中逐漸學習毛利的戰略與戰術。不到一年,便已能找出毛利的弱點並轉而反擊。
信長の西国攻め初期に於いては劣勢に甘んじた織田軍だが、負け続きながらも毛利の戦略・戦術を学びつつあった。そして一年も経つ頃には毛利の弱点を突いて反撃に転ずるまでとなっていた。
到秀吉攻下鳥取城時,情勢已徹底逆轉,毛利軍淪為全面防守。
秀吉が鳥取城を落とした頃には、状況はすっかり一転して毛利軍は防戦一方となっている。
「那麼,究竟該怎麼辦!?」
「それでは、どうすれば良いのじゃ!」
「說什麼也沒用,關於東國已無從再出手。對方是近衛家的人物,若明面上傷害他們,不只會得罪織田家,甚至會將朝廷也變成敵人。現任近衛家當主比起嫡男更疼愛尾張三位殿,你應該知道吧?」
「どうするも何も、東国に関してはこれ以上手を打ちようがありませぬ。相手は近衛家の人間、表立って害すれば織田家だけでなく朝廷までをも敵に回しまする。現近衛家当主が尾張三位殿を己が嫡男より可愛がっているのはご存じでしょう?」
「嗚嗚嗚!」
「ぐぐぐっ!」
身為關白的近衛前久在朝廷中建立了無可匹敵的龐大勢力,已取得到即便其餘四家聯合也難以抗衡的權勢。
関白である近衛前久は、朝廷に於いて他の追随を許さない巨大勢力を築き上げていた。もはや五摂家の残り四家が結託して反旗を翻したところで勝負にならない程の権勢を得ている。
作為名實皆成的五摂家首位、近衛家當主的前久,竟將對嫡男信伊的寵愛拋在一旁,轉而溺愛靜子。
そんな名実ともに五摂家筆頭となった近衛家当主である前久が、嫡男である信伊(のぶただ)を差し置いて溺愛しているのが静子なのだ。
只要是與靜子的約定,甚至會將與朝廷有力者的會談擱後。此外靜子能被自由行動,本就可見其受寵程度。
それは静子との約束ならば、朝廷の有力者との会談であろうとも後回しにする程である。また静子を自由に行動させていることからも、溺愛ぶりが窺える。
但若說靜子的存在會成為近衛家的致命要害則非如此,反而可說她承擔著近衛家的武力。
かといって静子の存在が近衛家の急所となるかと言われれば否であり、むしろ近衛家の武を担っているとさえ言える。
護衛前久的兵,從靜子直屬部隊中選拔出精銳,且近衛邸周邊與靜子的私邸皆由靜子軍常年守護。雖以二條城與信長在京時常用的本能寺接近為由,但巡邏範圍遠不止於此。恵瓊認為應是在警戒整個上京區域。
前久を護衛する兵は、静子直属の兵から精鋭が選抜されており、また近衛邸周辺及び静子の私邸は静子軍の兵が常に警護している。二条城及び、信長が京に滞在中に良く利用する本能寺が近いと理由付けされているが、見回りをしている範囲はそれだけに留まらない。上京全体を警戒しているのだろうと恵瓊は考えていた。
「那、那就要袖手旁觀任由信長奪取天下嗎!?」
「な、ならば信長めが天下を掴むのを黙って見ておれと申すのか!?」
「……請冷靜想一想。就連東國霸主北條也曾遭遇敗北。」
「……冷静になってお考え下さい。東国の覇者たる北条ですら敗北を喫したのです」
「這我知道!」
「それは知っておる!」
「然而東國對織田的統治尚淺,因此原以為織田會暫時全心投入東國事務。可一揭開局勢,重大任務卻交由尾張三位殿,右府殿則留在安土。這意味著什麼,你應該已明白了吧?」
「しかし、東国は未だ織田の支配が浅い状態。ゆえにこそ織田は暫く東国支配に掛かり切りになると思われておりました。ところが、蓋を開ければ大役を尾張三位殿に任せ、右府殿は安土に留まっておいでです。これが何を意味するか、既にお分かりでしょう?」
「嗯……」
「むう……」
義昭悻悻低吟,恵瓊卻察覺他並未真正理解情勢。對於他的愚昧幾欲嘆息,卻在最後一刻忍了下來。
悔し気に唸る義昭だが、恵瓊は彼が状況を理解していないことを察した。余りの暗愚さにため息が漏れそうになるが、すんでのところで堪(こら)える。
「我們已將織田家中最具革新性的尾張三位殿逼往東國,但這也意味著她以外的家臣們一旦從東國返還便會加入西國的討伐。現在只有羽柴一人,但若增援到來……即便毛利傾全力,勝算也令人擔憂。」
「織田家の中で最も革新的な尾張三位殿を東国に追いやることは出来ました。しかし、彼女以外の家臣たちは東国より帰還すれば西国攻めに加わることを意味します。今は羽柴だけですが、後詰めが加わることになれば……果たして毛利が全力を以てしても勝利は危ういかと」
心中雖有答案,卻自然未說出口。然而無論如何樂觀估計,恵瓊已悟出毛利無勝算。
心中では答えが出ていても、流石に口に出すことは無かった。しかし、どれだけ甘く見積もったところで、毛利に勝ち目が無いと恵瓊は悟っていた。
在連羽柴軍都無法應付的情況下,若再加入明智或柴田等軍隊的話,後果早已昭然若揭。
羽柴軍だけですら持て余す現状に於いて、明智や柴田等の軍が加わればどうなるかなど日の目を見るより明らかであった。
雖不願想像,但戰事將變成慘烈的屠場。不,甚至可能如傳聞中的延曆寺那樣遭到殘殺。
考えたくは無いが、いくさは凄惨な狩場へと変ずるであろう。否、音に聞こえた延暦寺のように虐殺される恐れすらある。
「事到如今……」
「事がここに至っては……」
話未說完恵瓊便行了一禮離去。義昭對這突如其來的舉動愣住,隨後怒色滿面。
最後まで言い終えることなく恵瓊は一礼して部屋を後にした。唐突な行動に呆然となった義昭だが、やがて怒りに顔を染める。
「當條件尚佳時就該和睦。」
「条件が良いうちに和睦をすべきです」
因此恵瓊最後低語的話並未傳到他的耳裡。
ゆえに恵瓊が最後に呟いた言葉が彼に届くことは無かった。
信長看著地圖滿臉笑容。他的統治領地如今已覆蓋日本三分之二,剩下的只有中國地方與九州,那也只是時間問題。
信長は地図を見て満面の笑みを浮かべていた。彼の支配地はいまや日ノ本の三分の二にも及ぶ。残るは中国地方と九州のみであり、それすらも時間の問題と言えた。
「不過,真是大膽的作為啊。」
「しかし、大胆なことをされましたな」
並立於信長旁的森可成面帶平和表情低語。他所謂的大膽之舉,是命令將其領地中超過半數交由靜子治理。
信長の隣に並ぶ森可成が穏やかな表情で呟いた。彼の言う大胆なこととは支配地の実に半分以上を静子に統治するよう命じたことであった。
通常情況下,將如此龐大的領土交給非宗親的人治理,幾乎是不可能的事。
通常であればそれほどの領土を血族でもない者に与えるなどあり得ない話なのだ。
「會說大話的傢伙不少,但當被問到靜子治理尾張到底有多久時,他們就都噤聲了」
「喧(かまびす)しい口を叩く奴は多くいたが、静子が尾張だけ(・・)を統治して何年になると問うと、黙りおったわ」
「哈哈哈。儘管積累了那麼多功績,卻連想要領地這種事都不會的人啊」
「ははは。あれだけの功績を積み上げても、領地を欲することすらせぬお人ですゆえ」
「前些日子還叫人拿工作來給她?真是一個讓人頭疼的傢伙」
「先だっては代わりに仕事を寄越せと言うてきたぞ? 全く困った奴じゃ」
「她向來有過於勤勉的傾向,那已成為習性吧。要是上樣能統一天下,應該也會安定下來的」
「昔から勤勉すぎるきらいはありましたが、それが習い性になっているのでしょう。流石に上様が天下統一なされれば、落ち着くでしょう」
「別說些無心之言,那種話就看著我的眼睛說」
「心にもないことを言うでない。そういう事はわしの目を見て言わんか」
若天下真能統一,連信長、甚至可成都難以想像靜子會閒著不做事的樣子。
仮に天下統一が成ったとして、信長は勿論、可成でさえも静子が仕事をしていない姿を想像できなかった。
「唔、嗯……她是喜歡做東西的」
「ま、まあ彼女はモノ作りを好みますれば……」
「那麼東國對她來說會成為有趣的遊樂場,反正可做的事多得很」
「ならば東国は奴にとって楽しい遊び場となろう。何しろやれることは山ほどある」
「確實。前次相見時,她還豪氣地說要打造東之京」
「確かに。この前お会いした折には、東の京を作り上げると息巻いておられました」
「聽說她要讓用鐵做的馬奔馳。我對未來的東國充滿期待啊」
「何でも鉄で出来た馬を走らせると言うておったぞ。これからの東国が楽しみでならぬわ」
信長所欲並非維持現狀,而是建立新的織田時代,在推行革新統治方面,無人能出靜子之右。
信長の欲するところは現状維持ではない。新しい織田の世を作り上げることであり、革新的な統治を行うことに於いて静子の右に出る者はいない。
然而靜子並不會因為舊有而一律斷然淘汰再以新事物取代,她會保留那些雖古卻良的事物,把不良之處改為新的體制。
とは言え、静子は古いものごとを旧弊だからと切り捨てて新しいものごとで塗り替えることはしない。古くても良いものは残し、悪しきものは新しい仕組みへと切り替える。
正因為她能做到這點,才被賦予掌管整個東國的重任;而且靜子尤其樂於提升當地人民的生活水平。
これが出来るからこそ東国一帯を任せるという大役を与えたのだ。何よりも静子はその地に住まう人々の生活を底上げすることを楽しんで行う傾向があった。
「尾張作為東國首屈一指的繁榮之地,但靜子看了之後說『富が一極集中するのは宜しくない』。凡人多半不會為自己富裕而擔憂,只有她會斷言那種狀態是危險的」
「尾張は東国随一の国として栄えているが、それを見て静子が語ったのは『富が一極集中するのは宜しくない』だった。凡人ならば己が富む状況を憂うものはいない。あ奴だけはその状態を危険だと断ずるのだ」
「這或許正符合上樣的盤算吧」
「上様の目論み通りといったところでしょうか」
「嗯。她對錢財的知悉甚至勝過我。正因如此,才能預見財富集中時會發生什麼。然而她無慾,正因無欲而能預見,也因無欲所以不擅長用錢」
「うむ。奴は銭のことをわし以上に知悉(ちしつ)しておる。ゆえにこそ、富が一か所に集中した際に何が起こるかを予見し得るのだろう。しかし、奴には欲が無いゆえにそれが予見でき、またそれゆえに銭を使うのが下手だ」
金錢常被比作血液;血液若不在全身流通而停留在一處,其後果不言自明。因此靜子投出私財以促進開發。
金はしばしば血液にたとえられる。血液が体全体を巡らずに、一か所に留まればどうなるのかは自明だろう。だからこそ、静子は私財を投じて開発を促すのだ。
過去她曾企圖把私財納入公費,但以彩為首的掌管金錢者斷定那是「公私混同」,於是她改為以各種事業名義興辦並投資應對。
過去には私財を公費に組み込もうと画策したが、彩を筆頭に金を預かる者達から「公私混同」と断ぜられ、何かと事業を興しては投資をするよう対応している。
「確實。本來能積聚那等財力,某也想不出除了征戰以外的用途」
「確かに。そもそもあれほどの財を成せば、某(それがし)とていくさ以外で使い道が思いつきませぬ」
「真是個依舊奇怪的傢伙。面對巨額財富能自律有強韌之心,反倒一旦身處必須花錢的立場就不知所措」
「相も変わらずちぐはぐな奴よ。大金を前にしても自らを律する強靭な心を持っていながら、むしろ金を使わねばならぬ立場となれば持て余す」
「她本就不喜奢侈,通常是把華美的服飾或飾物送出給女性們,而自己很少打扮。從南蠻進來的獸類,如今也成了民眾的休憩場所」
「元より奢侈(しゃし)に興味を持たれませぬし、一般に女人が好まれる華美な装いや装飾も送り出す側であり、ご自分が着飾られることは稀ですしな。南蛮より仕入れていた獣も、今や民たちの憩いの場となっております」
多多鳥、巨海雀、海邊水獺等在靜子時代已滅絕的動物,她認為在戰國時代可能仍存活,便趁著華盛頓條約等根本不存在,把牠們帶入日本。
ドードー鳥やオオウミガラス、ウミベミンクなど、静子の時代では絶滅してしまった動物たちも、戦国時代ならば生きている可能性があると考えた静子は、ワシントン条約など欠片も存在しないことを良いことに日本へと持ち込んだ。
畢竟若引入風土病就糟了,所以她作出苦痛的決斷:當第一代繁殖出下一代時便把親子隔離飼養,如此避免父母的疾病傳給子代,反覆幾次以防疫病蔓延。
流石に風土病などまで持ち込まれては困るため、最初の世代が次代を産むと親子を隔離して飼育するという苦渋の決断を下している。こうして親が持つ病気などが子に移らないようにし、これを何度か繰り返して病気が蔓延しないよう手を打った。
在所取得的動物中,能適應日本生活的被納入她所管理的動物園,現在定期向大眾開放並持續飼養繁育。
そうして手に入れた動物たちのうち、日本での生活に適合できた動物たちは自身の管理する動物園に入れ、今では定期的に一般公開しながら飼育を重ねている。
當然也有因氣候或食性而無法繁殖的動物,但仍留下飼育記錄,努力將情報盡量傳給後世。
勿論、気候や食性故に繁殖でき無かった動物も多くいる。それでも飼育の記録を残し、少しでも情報を後世に伝えられるように尽力していた。
這些動物飼育花費連信長也覺得不少,雖然對外開放多少有些收入,但整體仍在虧損中。
これらの動物飼育には信長からしても結構な費用が掛かっており、一般公開して多少なりとも収益を上げているものの赤字を垂れ流している現状だ。
「說到南蠻,最近還向南蠻人打聽是否有擁有某項技術的奴隸。好像叫做きぃぷな什麼的」
「南蛮と言えば、最近ではとある技術(・・・・・)を持つ奴隷がいないかと南蛮人に尋ねておられましたな。確か……きぃぷなにがしかと申されておりましたが」
「又在醞釀奇怪的事。無妨,反正大概是為了滿足嗜好吧」
「またぞろ奇怪なことを企んでおるな。構わん、どうせ趣味を満喫するためであろう」
信長根本不認為靜子會與海外勾結圖謀什麼,而且靜子也並非想要奴隸,只因要讓歐洲人去找那個目標人物,奴隸是唯一可行的選項。
静子が海外と結託して何かを企むという考えは、信長には無かった。そして静子も奴隷を欲しているわけではなく、ヨーロッパ人に目的の人物を捜させるには、奴隷しか選択肢が無いからである。
「不,那件事我不擔心。我所憂慮的是,她本就忙碌,似乎還會增加更多工作……」
「いえ、その事は心配しておりませぬ。某が懸念しているのは、ただでさえ忙しいのに更に仕事を増やしそうな気がしておりまして……」
「……會想些對策的」
「……何か対策を考えておく」
雖然完全沒有謀反的可能,但在工作量方面如果外界不加以關照,靜子會做得過頭,信長對此嘆了口氣。
謀叛(むほん)の恐れはまるでないが、仕事量に関しては外野が配慮しないと無理をし過ぎる静子に、信長はため息を吐いた。