戦国小町苦労譚
一五七八年四月下旬
北條氏的居城小田原城,在本丸內一間嚴密上鎖的房間裡,有一名男子手捧著某樣東西。
北条氏の居城たる小田原城は、本丸内に設けられた厳重に施錠されている一室にて一人の男性が何かを捧げ持っていた。
「這正是出發點、原初的一發。將它帶給織田家的那人,是如何想到這個主意的……」
「これこそが出発点、原初の一発。織田家にこれを齎した人物は、如何にしてこれを思いついたのか……」
被燈明之光映出的那物,是灰鈍色的彈丸。
燈明の光に浮かび上がるそれ(・・)は鈍色(にびいろ)の弾丸。
與戰國時代被視為常識的球形彈丸不同,它有著稱得上流線型卻略顯粗短的前身與圓筒型的後身。
戦国時代に於いて常識であった球形の弾丸とは異なり、流線形と呼ぶにはややずんぐりな前身と円筒形の後身を持つ。
最顯著的特徵是彈丸側面刻著等間隔的溝槽。雖說手工痕跡粗糙,但確實刻有緩緩呈螺旋的溝紋。
何よりも特徴的であったのは銃弾の側面に刻まれた等間隔の溝だった。加工と呼ぶには稚拙だが、確実に緩い螺旋を描く溝が切られている。
正是這顆彈丸讓北條氏看見了一線希望,它擔當了織田軍新式火器那與傳統火繩槍截然不同性能之祕密一端。
この銃弾こそが北条氏に一筋の希望を見出させたもの、従来の火縄銃とは隔絶した性能を誇る織田軍の新式銃、その秘密の一端を担っていた。
關於織田軍的新式火槍,機密守護嚴密,連在數次戰場上對陣的北條軍也連一挺都未能繳獲。
織田軍の新式銃に関しては機密保持が徹底されており、数度の戦場で相対した北条軍ですら只の一丁さえ鹵獲(ろかく)できていない程の有様なのだ。
然而機密終究會洩漏,奇蹟般有顆彈丸在彈跳後保持原形,最後鑽進了馬糞堆被發現。
しかし、それでも秘密というものは漏れるものであり、奇跡的に原型を保ったまま跳弾した末に馬糞の山に突っ込んだものが見つかった。
至今被發現的新式彈丸多數是從傷者體內取出,幾乎全數都有缺損或變形。
今までに発見されていた新式銃の銃弾は、その多くが負傷者の体内から取り出されており、そのほぼ全てが欠けたり変形したりしていたのだ。
雖然新式火槍本體尚未被繳獲,但僅憑這一發彈丸,織田軍的祕密便開始外洩。
未だに新式銃本体こそ鹵獲されていないが、たった一発の銃弾から織田軍の秘密は漏れ始める。
在微暗燈光下將彈丸高舉觀察溝紋的男子名為高座的彌勒。
薄暗い明かりに弾丸を翳(かざ)して溝を眇(すが)め見る男の名を『高座(こうざ)の弥勒(みろく)』と言う。
高座是地名,彌勒這名則取自撿拾並養育此人之寺廟的本尊彌勒如來。
高座は地名であり、弥勒の名は男を拾い育ててくれた寺のご本尊、弥勒(みろく)如来(にょらい)から頂戴した。
彌勒是所謂的戰災孤兒,在嚴冬將至的深秋早晨,被放在籠中遺棄於彌勒寺山門前的嬰兒。
弥勒はいわゆる戦災孤児であり、厳しい冬の到来を目前に控えた晩秋の朝、弥勒寺の山門前に籠に入れられて捨てられていた赤子だった。
清晨誦經時被僧侶發現,尚餘微弱氣息的嬰兒令住持憐憫,便視為神佛感召收養撫育。
早朝のお勤めの折に僧侶が発見し、まだ辛うじて息をしていた赤子を哀れに思った住職が、これも神仏のお導きと育てることにした。
彌勒在寺廟這個遠離紅塵的集體生活圈中成長,作為研習宗教的學徒長大。
弥勒は寺という俗世から離れた集団生活の場に身を置き、宗教という学究の徒として育つ。
他自幼便充分展露才智,正如諺語「門前的小僧會念未學的經文」所言,彌勒能背誦未曾被教過的經文。
彼は幼少よりその才覚を存分に発揮していた。『門前の小僧習わぬ経を読む』のたとえにあるように、弥勒は教えられてもいないお経を諳(そら)んじて見せた。
他極其機敏且手巧,因而被領主發現並招入府中為家人。
極めて利発であり、また手先も器用であったことから領主の目に止まり、家人として召し抱えられた経緯があった。
入主府後彌勒仍迅速嶄露頭角,逐漸以智者之名聞名。
領主に召し抱えられてからも、めきめきと頭角を現した弥勒は、知恵者として名を馳せるようになっていた。
北條氏下令,若有人能依據那顆奇蹟般保留原型的彈丸打造出最優秀的火繩槍,將被迎為臣下。
そして奇跡的に原型を保ったまま入手できた弾丸を元に、最も優れた火縄銃を作りだせた者を臣下として迎え入れると北条氏より御触れが出される。
回應此令後,眾多智者與火槍鑄匠中脫穎而出、登上頂峰的正是彌勒。
これに応じた末に並み居る知恵者、鉄砲鍛冶を差し置いて頂点に立ったのが弥勒であった。
以彌勒為首的多數參與者,根據最初當作參考展示的彈丸,製作出類似橡實形狀的彈丸。
弥勒を始めとして多くの参加者は、最初に参考として見せられた銃弾を元に椎の実型をした銃弾を作る。
因為比傳統彈丸更大更重,在相同火藥量下反而飛得更近。
従来の銃弾よりも大きく重くなったため、同じ火薬量ではむしろ飛距離が短くなってしまうという結果になった。
因此增加火藥發射,卻遭遇發射衝擊使槍管斷裂或飛距離不如預期等問題。
そこで火薬を増量して撃ちだすようにすると、発射時の衝撃で銃身が割れてしまったり、想定よりも飛距離が伸びなかったりなどの問題に悩まされる。
在其他參與者無法改善之際,唯有彌勒透過對彈丸進一步加工,解決了諸多問題。
他の参加者がこれを改善出来ない中、弥勒だけが銃弾に更なる加工を施すことで諸問題を解決してみせた。
彌勒直接在彈丸上雕刻螺旋形溝紋,發現發射時衝擊沿溝紋推動彈丸自轉,藉由陀螺效應使彈道穩定。
弥勒は銃弾に直接螺旋型の溝を彫り、撃発時の衝撃が溝に沿って銃弾を押すことにより銃弾自体が回転し、そのジャイロ効果によって弾道が安定することを発見したのだ。
彌勒認為彈丸所刻的溝紋如同箭羽般發揮作用,使彈道穩定。
弥勒は銃弾に刻んだ溝が、矢羽根のような役目を果たして弾道が安定するのだと考えた。
儘管連彌勒也未能完全理解所有原理,但他在多種彈丸上刻入數十種螺旋溝反覆試射,終於成功達到超過以往兩倍以上的射程。
流石の弥勒も全ての原理が理解できた訳ではないが、とにかく何種類もの銃弾に何十通りもの螺旋溝を刻み込んで試射を繰り返し、遂には従来の倍以上という飛距離を出すことに成功したのだった。
「然而,製造一發彈丸的成本並非小數,織田軍究竟如何解決這個問題……」
「しかし、銃弾を一発造るための費用が馬鹿にならぬ。織田軍は如何にしてこの問題を解決しているのだ……」
要對每顆彈丸精確雕刻螺旋溝極其困難。首先以手工打造理想彈丸,然後取模製作金型。
銃弾一発一発に対して正確に螺旋の溝を彫ることは至難を極めた。まずは手作業で理想の銃弾を作り上げ、それを型取りして金型を作る。
將熔化金屬澆注冷卻可復刻大致的彈丸,但為了延長射程仍需對每發彈丸以銼刀修整溝紋。
そこに溶かした金属を流し込んで冷やせば大まかな銃弾は再現されるのだが、飛距離を伸ばすためには更に銃弾一発一発に対してヤスリを使って溝を均す必要があった。
這個構想的盲點是彌勒等北條一方未能察覺的。
ここに発想の落とし穴があることに弥勒を始めとした北条側は気付けなかった。
秘密不在於彈丸,而是在於槍管內刻有螺旋溝,發射時與彈丸磨擦在其上留下旋條痕。
銃弾に秘密があるのではなく、銃身側に螺旋の溝が彫ってあり、撃ちだす際に銃弾と擦れて旋条痕が刻まれているということに。
進入四月後氣溫回暖,封鎖關東的積雪開始融化。一直緊盯時機的信忠重新啟動對北條的征討。
四月に入ると気温も和らぎ、関東地方を閉ざしていた積雪が溶け始めた。虎視(こし)眈々(たんたん)と機会を待ち続けていた信忠は、北条征伐を再開する。
隨軍諸將曾建議再等一陣,但信忠強硬主張提前進軍。
従軍している諸将からは、もう少し待った方が良いとの意見も出たのだが信忠が強硬に早期進軍を主張した。
一向重視和的信忠為何會違背信念急行,原因在於傳來情報指稱北條已研發出可與織田軍維持優勢的新式火器相匹敵的兵器。
常から和を重視している信忠が信念を曲げてまで急いだのには理由がある。それは織田軍の優位性を担保し続けている新式銃に匹敵する兵器が、北条の手によって開発されたとの情報が齎されたからである。
雖有報告猜測這可能是北條方面刻意散布的訊息,但實際上確有多次射擊聲被觀測到。
これは恐らく北条側が意図的に情報を流しているのだろうという報告も添えられていたのだが、実際に何度も射撃を繰り返しているような音が観測されている。
信忠判斷或許尚非大規模進軍的時機,但應積極派出斥候收集情報。
本格的な進軍には時期尚早かもしれないが、積極的に斥候を放って情報収集に務めるべきだと信忠は判断した。
(畏懼之事終於開始了嗎……即便如今鐵炮已成理所當然,當初也只有兩挺被帶到種子島。優勢不會永遠持續。)
(恐れていたことが遂に始まったか……。今では当たり前に使用されている鉄砲とて、初めは種子島に持ち込まれた二丁のみだったのだ。いつまでも優位を保てる訳ではないか)
信忠推測北條方面也許有一位堪比靜子的奇才,深感北條氏廣納在野人才的強韌。
信忠は、北条側にも静子に匹敵するような異才の持ち主がいるのだろうと当たりを付ける。在野の才能を広く集める北条氏の強(したた)かさを思い知らされた。
儘管如此,信忠並不認為己方優勢會動搖。他認為即使北條開發的新兵器有與新式火槍匹敵的射程,也不太可能有足夠物資將其配備至全軍。
それでも信忠は自軍の優位性が揺らぐとは思っていなかった。北条側が開発した新兵器とやらが新式銃に匹敵する射程を持ったとして、それを全軍に配備するだけの物量を確保できているとは思えない。
在能打敗被稱為戰國最強的武田背後,其根底是兵站上的差異,因為已構築起可確保壓倒性物資量的生產體制。
戦国最強と呼ばれた武田を打ち破った根底には、圧倒的物量を担保する生産体制が構築されているという兵站の差があったのだ。
信忠就這樣開始行動,不久便從派出的間諜那裡獲得了有益的情報。
そうして動き始めた信忠だったが、程なくして放っていた間者から有益な情報を得ることとなる。
情報是有種射程為傳統火繩槍兩倍的火槍正在被開發。從物資流向等來判斷,似乎已下令量產,感覺有些為時已晚。
それは従来の火縄銃に倍する射程の銃が開発されているとの情報だ。物資の流れなどから判断して、既に量産を命じている節があり、遅きに失した感があった。
「開發新型火繩槍的人據稱被稱為『高座之彌勒』,恐怕正被隱匿在小田原城內」
「新しい火縄銃を開発したとされる人物は『高座の弥勒』と呼ばれており、恐らくは小田原城内に匿(かくま)われていると思われます」
(哪裡都有被稱為天才的人啊)
(何処にでも天才と呼ばれる人物はいるものだな)
得到關於北條方面那位開發新型火繩槍的人士的情報後,信忠感到不寒而慄。於即將到來的小田原城攻擊局面,預料北條方面很可能會投入這項新武器。
北条側の新しい火縄銃を開発したとされる人物に関する情報を得た信忠は戦慄を覚えていた。来たる小田原城攻めの局面に於いて、恐らく北条側はこの新武器を投入してくるであろうことが想定される。
這個時代火繩槍的最大射程約三百公尺,但就能命中目標的有效射程而言,只有大約五十到一百公尺左右。
この時代の火縄銃が持つ最大射程は約三百メートルだが、狙った的に当てられる有効射程という意味では五十~百メートル程となってしまう。
即便最大射程增加一倍,也不代表有效射程會相應倍增。於弓道的遠射中,射手與靶的距離被定為六十公尺。
たとえ最大射程が倍になったとしても、即ち有効射程が倍になるとは限らない。弓道に於ける遠的(えんてき)では射手と的との距離が六十メートルと定められている。
標的直徑只有一公尺,要命中它相當困難。
的の大きさが直径一メートルであり、これに命中させることは中々に難しい。
反過來若把有效射程設為二百公尺,從那距離射手眼中的人的大小如何,考慮一下就能理解這大致不屬於現實的說法。
翻って有効射程が二百メートルとして、その際の射手から見た人間はどの程度の大きさに見えるかを考えれば、およそ現実的な話では無いと理解できるだろう。
「繼續努力蒐集情報,並且若有可能,務必取得該新武器的實物」
「引き続き情報収集に努めよ。また、可能であればその新武器の現物を確保するのだ」
下令間諜後,信忠為了與信長及靜子共享截至目前所掌握的事實,進行了緊急通信。
そのように間者に命じると、信忠は現時点で判明している事実を信長や静子と共有すべく緊急通信を行った。
緊急通信是在定時聯絡之外,於需要火速通訊時使用的通信手段;其中使用所謂的摩爾斯電碼,並確認對方是否能應對通話請求。
緊急通信とは定時連絡の他に、火急の通信が必要となる場合に用いられる通信手段である。これには所謂モールス信号が用いられ、通話の要望に対して相手が応じられるか確認を取ることになる。
若確定發話者與受話者雙方皆可通訊,則會重新約定時刻,然後接通電話線。
発話者と受話者の双方が通信可能であると確認が取れれば、改めて時刻を定めて電話回線が繋がれるという流れだ。
此時使用的時鐘以尾張為基準對時,並在一天三次的定時聯絡時進行校正,作此運作。
この際に用いられる時計は、尾張を基準として時刻合わせがされており、一日三回の定時連絡の際に調整されるという運用を取っている。
與信長及靜子聯絡後推測,恐怕是回收失敗的未爆彈,或因某些因素保留原形的彈丸被繳獲。
こうして信長及び静子と連絡を取った結果として、恐らく回収しそこねた不発弾か、もしくは何らかの要因によって原型を保った銃弾が鹵獲されたものと推測された。
目前尚未確認有新式火槍遭遺失或被竊(因以序號管理,故可掌握),因此判定目前掌握的槍無論射程或連射性能,都遠不能與新式火槍相比。
現時点で紛失または盗難された新式銃は確認されておらず(シリアルナンバーで管理しているため、把握が可能)、射程及び連射性能のいずれも新式銃のそれには遠く及ばないであろうと結論づけられた。
聽到這點,信忠由衷地鬆了一口氣;那種害怕被剝奪自軍壓倒性優勢的恐懼,似乎比預想更折磨著他。
それを聞いた信忠は心底安堵していた。自軍の圧倒的アドバンテージを奪われたかもしれないという恐怖は、信忠の心を予想以上に蝕んでいたようだった。
如果可能的話想把開發者納入織田陣營,但北條方面想必也會極力保護,故想要奪取相當困難。
可能であれば開発者を織田陣営に取り込みたいところだが、北条側とて必死に囲い込んでいるであろうことから難しいと思われる。
在攻打小田原城時,目標將定為奪取該開發者及其研究成果,或是將之徹底除去。
小田原城攻めの折には、この開発者及び研究成果を奪取するか、もしくは葬り去ることが目標として定められることとなった。
如此一來,經由信長、信忠與靜子的三方首腦會談,北條進攻的基本方針被稍作調整。
こうして信長、信忠、静子の三者による首脳会談の結果、北条攻めの基本方針が若干見直されることとなる。
大致上與以往無異,但優先於快速攻下守護小田原城的支城,應建立確實的包圍網。
大筋としては今までと変わりないが、小田原城を守る支城を落とす速度よりも、確実な包囲網を構築することを優先する。
如同反覆所言,守城是以增援為前提的策略;若無法期待外部增援,守城不過只是延遲死期而已。
何度も述べているように籠城とは、増援ありきの戦略である。外部より増援が期待できないのであれば、籠城したとて死期を先延ばしにしているだけに過ぎない。
除了北條方面已掌握的物資外,若就關東一帶的物流由國家級別進行調度,消息便會立刻傳到靜子耳裡。
既に北条側が確保している物資を除き、関東一円の物流に関しては国レベルの調達が行われれば、たちどころに静子の耳に入ることになっている。
北條方面也深諳此道,知道在織田軍所攻下的支城裡,殘留的物資極少,多數已被帶走。
北条側も心得たもので、これまでに織田軍が落とした支城に於いて、残置されている物資はごく僅かであり、多くは持ち去られていることが解っていた。
因此推測小田原城內仍儲備有相當數量的物資,不得不判斷以糧食圍城的效果薄弱。
こうしたことから小田原城には相当な量の物資が備蓄されていることが推測され、兵糧攻めは効果が薄いと判断せざるを得ない。
再者,從每日發生的小衝突中未見北條方面投入新兵器,判斷尚未湊足能投入實戰的數量。
また日々発生している小競り合いに於いて、北条側が新兵器を投入している様子が無いことから、未だ実戦配備できるだけの数を揃えられていないと判断された。
基於以上情況,信忠預測新火繩槍全數集中於小田原城,並會在攻城時一舉投入。
これらのことから信忠は、新火縄銃は全て小田原城にあり、攻城時に満を持して投入してくると予想した。
「恐怕能投入實戰的新型火繩槍數量不會超過一百挺。且未有火藥改良的相關情報,若仍是如往常每射一發就需清理的槍,便無須過度畏懼;不過仍應加強警戒為上」
「恐らく実戦に投入できる新火縄銃の数は百丁を上回ることはあるまい。火薬の改良まで開発が進んでいるような情報は入ってきていないことから、従来通りの一発撃つごとに掃除が必要な銃であれば恐れる必要はない。それでも警戒をするに越したことはないだろう」
(若在最後關頭被人絆倒便因小失大。不可讓父上和靜子笑話,必須讓北條見識我方的勝利)
(最後の最後で足を掬われては本末転倒だ。父上や静子に笑われぬよう、北条を倒して見せねばならぬ)
稍微恢復了些餘裕的信忠,帶著警惕心仍穩步準備著奪取北條的實力。
幾分か余裕を取り戻した信忠は、警戒心を抱きつつも着実に北条の力を奪うべく準備を進めた。
關於北條方面的新火繩槍,不只是信忠,與里見氏及佐竹氏對峙的才蔵那裡也獲得了情報。
北条方の新火縄銃については信忠だけでなく、里見氏及び佐竹氏と向かい合っている才蔵の許にも情報が齎される。
才蔵對敵方擁有新兵器的消息皺眉,但讀過送來的詳報後鬆了口氣。
敵方の新兵器と言う情報に眉をひそめた才蔵だが、届けられた詳報を読んで胸をなでおろした。
雖聲稱射程較傳統火繩槍長,但其他性能並無飛躍性提升,結論是需警戒但不至於要改變方針。
従来の火縄銃よりも長い射程距離を誇るが、その他の性能に関しては飛躍的な向上は見られず、警戒は必要だが方針を見直す程ではないと結論づけられていた。
「北條不可能把新火繩槍交給里見或佐竹。沒有人會把自己寶貴的新兵器交給可能會背叛的人」
「北条が里見や佐竹に新火縄銃を渡すはずがない。虎の子の新兵器を裏切る可能性がある者に託す馬鹿はいまい」
近距離觀察北條行動的才蔵認為,他們不會把新兵器供給里見或佐竹。即便要提供,也會把能操作的部隊連同裝備作為增援送來。
北条の行動を間近で見ている才蔵は、彼らが新兵器を里見や佐竹に供与しないと考えていた。万が一にも提供するのであれば、運用する部隊ごと増援として送ってくるはずだ。
若沒有那樣的舉動,便可確定北條無意發送增援。換言之,里見與佐竹可說是完全孤立了。
それが無い以上、北条としては増援を送るつもりが無いのは確実だろう。つまり里見と佐竹は完全に孤立してしまったと言える。
「里見家的內情傾向於投降並歸附織田軍。然而若在北條尚未投降的情況下率先投降,會被視為武家之恥,據此推測他們正忍耐著」
「里見家の内情は、降伏して織田軍に下るというのが主流になっています。しかし、未だ北条が降伏していない状況で先に下ったとあれば武家の名折れと考えており、耐えている状況だと推測されます」
「對里見只需保持警戒,無需積極處置。問題在於佐竹」
「里見については警戒こそすれど、積極的に対処する必要はあるまい。問題は佐竹だ」
才蔵判斷里見不會發動積極攻勢。與已受重創的里見不同,仍具備戰力餘裕的佐竹不知會採取何種行動。
才蔵の見立てでは、里見が積極的な攻勢に出ることはないと踏んでいた。既に手痛い一撃を貰っている里見と異なり、未だ戦力的に余裕のある佐竹は何をしてくるか判らない。
與消極的里見相對,佐竹氏內部以應採取積極攻勢的論調佔上風。大致上佐竹氏內部分為兩派:既要觀察北條動向並尋求和睦的溫和派,以及因厭倦固守而主張以決戰定生死的激進派。
消極的な里見とは対称的に、佐竹氏内では積極的な攻勢に出るべきだとの論調が有力であった。およそ佐竹氏内では派閥が二つに分かれており、北条の様子を窺いつつも和睦を模索する穏健派と、籠城に焦れて雌雄を決するべきと主張する過激派がいる。
前者為主家佐竹一族,後者則以真壁一族為首的臣下們。
前者が主家である佐竹一族であり、後者は真壁一族を筆頭とする臣下達であった。
「等到雪融、泥濘消退,真壁很可能會行動」
「雪解けを迎え、地面の泥濘が解消されれば、真壁が動く可能性は高い」
「那麼,到時該如何是好?」
「その場合、如何致しましょう?」
「與對里見時無異。若他們從正面衝過來便迎頭痛擊,若耍詭計就一併粉碎」
「里見の時と変わらぬ。真正面から乗り込んでくるならば迎え撃つ、策を弄するようならばそれごと粉砕するのみ」
「若能多用大砲便能一舉擊潰本陣,但若以大砲為前提進攻,他們恐怕會嘲笑我們是沒骨氣的懦夫吧」
「大砲をもっと使用できれば本拠を一気に叩けるのですが、大砲ありきで攻めれば奴らは我らを腰抜けとあざ笑うのでしょうね」
在織田軍中,個人武勇已不再左右戰局的時代已然結束。
織田軍に於いては既に個人の武勇がいくさを左右する時代は終わりを迎えている。
放眼整個日本,普遍的國主認為決定戰局走向的關鍵在於能集結多少火槍。
日ノ本全体を見渡してもいくさの行く末を決定するのは、どれだけ多くの銃をかき集められるかが鍵となると考えている国主が主流となっていた。
然而在東國,尤其是關東,個人武勇仍有被吹捧的傾向。
それでも東国、それも関東に於いては未だ個人の武勇がもて囃(はや)される傾向にあった。
因此,作為臣下的真壁得以向主家佐竹提出意見。
故に臣下である真壁が主家である佐竹に対して意見を述べることが許されている。
「真壁的現任當主便是傳聞中的『鬼真壁』氏幹。以武勇聞名的真壁,未戰便投降的選擇恐怕比死還難以承受。因此即便主家主張投降,他們仍選擇抵抗」
「真壁の現当主は噂に名高い『鬼真壁』こと氏幹(うじもと)だ。武勇の誉れ高い真壁としては、一戦も交えることなく降伏するという選択肢は、死よりも尚辛いのであろう。ゆえにこそ主家が降伏を唱えていても、抵抗しているのだ」
後世史家或許會斷定真壁的態度愚蠢,但才蔵卻欣賞那種不屈於自身信念的真壁。
後世の歴史家は真壁の姿勢を愚かだと断じるであろう。しかし、才蔵はあくまでも己の生き様を曲げない真壁を好ましく思っていた。
作為一名武人,才蔵自己也忍不住想與鬼真壁交鋒一番。
才蔵自身も一人の武人として、鬼真壁と刃を交えてみたいと思わずにはいられない。
不知是否那念頭應驗,四月下旬將近時,真壁派遣使者到才蔵處;使者所帶的書信內容極為簡潔。
そんな思いが通じたのか、四月も下旬に差し掛かろうと言う頃、才蔵の許へ真壁からの使者が遣わされた。使者に託された書には極めて簡潔な内容が記されている。
「以大將對決的一騎討決定勝負。若我方敗則真壁歸附織田,反之若勝則織田軍撤退。真是多麼方便的條件」
「大将同士の一騎討にて雌雄を決さん。己が破れれば真壁は織田に下る、逆に勝利すれば織田軍は撤退すべし、か。何とも都合の良い話だ」
戰局早已不能稱為五五波,大家普遍認為才蔵一方佔優;基於此,他們打出了一招翻盤之策。
戦況は既に五分とは言えず、才蔵方が優勢だというのは共通認識だろう。それを踏まえた上で逆転の一手を打ってきたのだ。
「有趣。就讓我接受吧!」
「面白い。受けて立とう!」
真壁的使者本不以為會被接受,因此被才蔵的回應擊得措手不及。但見才蔵露出自信的笑容,他便收正態度說了「承知」後返回。
真壁の使者はよもや受け入れられるとは思っていなかっただけに、才蔵の返答に虚を突かれる。しかし、不敵な笑みを浮かべる才蔵を見て姿勢を正すと「承った」と答えて帰っていった。
鬼真壁與才蔵的一騎討瞬間傳遍雙方陣營。佐竹內部對真壁的擅自行動連番不滿,但在衡量了必須承擔的犧牲與可得利益後,仍選擇默許。
鬼真壁と才蔵との一騎討は瞬く間に両陣営に伝わった。佐竹氏内部では真壁の勝手な行いに不満が続出したが、それでも自分たちが払う犠牲に対して、得られる利益を考えた結果黙認する。
另一方面,里見則興致盎然地注視兩人的一騎討;畢竟真壁的武名也傳到里見那裡。
一方の里見は興味津々といった様子で両者の一騎討を見守ることになった。何せ真壁の武名は里見にも轟いているのだ。
若真壁敗北,戰局將陷入絕望;但在已僵局的情況下,僅有翻盤的可能也算是賺到了。
仮に真壁が破れれば戦況は絶望的となる。しかし、既に手詰まりの状況に於いて逆転の目があるだけでも儲けものだ。
更何況無論何時,男人這種生物對強者之間的激烈對決總難以不被吸引。
更に言えばいつの世であろうとも、男と言う生き物は強い雄同士の戦いには心魅かれずにはいられない。
鬼真壁與名傳一方的『笹之才蔵』的一騎討,激起了關東武者的興趣;在此情勢下,有人暗自竊喜。
鬼真壁と音に聞こえた『笹の才蔵』との一騎討は、関東武者の興味を掻き立てた。その状況下で、一人ほくそ笑む者がいる。
「正是好機!趁他們的注意力都集中在一騎討時發起攻勢」
「今こそ好機! 奴らの意識が一騎討に向いている間に攻勢に出るぞ」
知曉此事的信忠露出不懼的笑容,轉而發起攻勢。
これを知った信忠は、不敵な笑みを浮かべて攻めに転じた。
就連主要敵人北條也未將目光放在他們身上,此情此景本應使武士的矜持受辱而憤慨;然而信忠乃濃烈承襲信長血脈之人。
主敵である北条すらも自分たちを注視していない状況は、武士の矜持を傷つけられたと憤慨して然るべき場面であろう。しかし、信忠は信長の血を色濃く継ぐ者だ。
當他判斷此情勢有利於己方時,立刻改採攻勢。即便在雪融之後仍謹慎行事的準備奏效,北條亦追不上信忠的速度。
この状況が自分たちにとって有利に働くと判断すると、即座に一転攻勢へと転じた。雪解けの後も慎重に事を進めていたことが功を奏し、北条は信忠のスピードについてこられなかった。
信忠於冬前後始終保持謹慎姿態,北條因而被安撫地以為『織田尚未進攻』。
信忠は冬を挟んだ前後のいずれに於いても慎重な姿勢を貫いており、北条側としては「織田は未だ攻め込んでこない」と楽観視させられていた。
實際上信忠有別於信長,偏向謹慎處事;他會仔細準備,沒有勝算便不輕舉妄動。故北條認為若信忠出手,必有某種預兆。
実際に信忠は信長と異なり、ことを慎重に運ぼうとするきらいがある。入念に準備を整え、勝算がない限りは行動に移さない。故に信忠が攻勢に出るとすれば、何らかの予兆があると北条は思い込んでいた。
自從曾遭受一次慘痛敗績後,信忠便避免輕率行動;但他也不會膽怯到讓良機白白溜走。
信忠はかつて一度手痛い敗北を喫して以来、軽々にことを起こすことを忌避するようになっている。しかし、それでも好機をみすみす見逃すほど腰が引けてはいない。
換言之,信忠出手意味著已做足了充分準備。
つまり、信忠が行動に出たということは、既に十分な準備がなされていたということに他ならない。
「若君,八王子城的築城已經開始了」
「若様、八王子城の築城が始まりました」
「好。那裡是北條的要衝。將來要作為瞄準關東一帶的要塞來運作,下令築起堅固的城池」
「よし。あそこは北条の急所。いずれは関東一円を睨む要(かなめ)として機能しよう。堅牢な城を築くよう命じよ」
「是,遵命」
「はっ、承知しました」
信忠一舉攻下北條的支城八王子城,隨即下令立即開始改築。說到八王子城,雖是北條旗下支城中最為重要者之一,但在此時仍未完成本格築城。
信忠は北条側の支城である八王子城を瞬く間に攻め落とすと、すぐさま改築を始めるよう命じた。八王子城と言えば、北条が抱える支城の中でも最重要と言える城だが、この時点では未だ本格的な築城の最中であった。
因此並非史實中那般堅固的城,而只是一座簡陋的山城;守軍稀少,八王子城不到半日便告陷落。
それゆえ、史実のような堅牢な城ではなく、簡素な山城でしかなかったのだ。このため詰めていた兵数も少なく、八王子城は半日ともたずに落城する。
「北條應該也認識到八王子城的重要性,只是時間不足罷了」
「北条も八王子城の重要性は認識していたであろうが、刻が足りなかったか」
從陷落的八王子城中留下了大量建築所需的資料,運來的資材也尚在,可見北條十分重視位於關東西部的八王子城。
落城した八王子城からは、建築に必要な多くの資料が残されていた。運び込まれた資材も残っており、北条が関東の西に位置する八王子城を重視していたことが窺えた。
然而,要把八王子城改築為堅固城池所需的時間太過不足。即便史實中耗費約十年的工程,也不可能在短短一年內完成。
しかし、八王子城を堅牢な城へと改築するには余りにも時間が足りなかった。史実に於いても十年程も掛けた工程を、僅か一年で賄うなど出来るはずもない。
「不論那些資料是什麼,都先送給靜子,由她決定要不要使用吧」
「資料は何であれ静子に送っておけ。要不要は奴が決めるであろう」
「知道了」
「承知しました」
(就算是書面資料,即使是木片也要全部帶回去……相處已久,還是不懂那傢伙的價值觀。他既不是為了研究,也不打算獨占,整理成資料後還會公開,究竟想做什麼啊……)
(書き物であれば、それが木片であろうとも全て持ち帰れとは……長い付き合いながら、あいつの価値観は判らぬ。研究するわけでもなし、占有するでもなし、資料としてまとめれば公開するのだから何をしたいのやら……)
無法理解靜子要收集從木匠們的潦草筆記到苦力們的飯食配給等一切東西的真意。連誰看了都毫無價值的塗鴉也想要,真令人頭疼。
大工たちの走り書きや、人足たちの飯の配給に至るまで全てを欲する静子の真意が理解できない。誰が見ても無価値な落書きすら欲しがるのだから始末に負えない。
她似乎把這些全部分類、系統化整理並記錄下來,而那些記錄成了範圍廣泛的龐大資料。
それらの全てを分類し、系統立てて整理しては記録しているようだが、その記録は多岐にわたる膨大な資料となっていた。
靜子管理的圖書館一隅所佔的資料達到十數冊,厚度如同百科全書般,據說常常挑戰裝訂的極限。
静子が管理する図書館の一角を占有する資料は、百科事典程の厚みを備えた本が十数冊にも及んでおり、常に装丁の限界に挑戦していると言われる程だ。
(曾經看過其中一本,那東西倒不如說是鈍器更為貼切。裡面還貼了彩色照片,究竟要拿來做什麼呢?)
(一度それらのうち一冊を見たことがあるが、アレは本というより鈍器と呼ぶのが相応しいものだった。彩色した写真まで貼り付けていたが、アレは本当に何に使うのだろう?)
可能因為朝廷委託她保護藝能,靜子把戰國時代存在的文物一件件資料化。
芸事保護を朝廷より委託されている関係からか、静子は戦国時代に存在する文物を片っ端から資料化していた。
這些不僅限於藝術,連習俗與風俗也一併收集,對於僅以口傳流傳的事物還會把它們記錄下來,這份執念令人驚訝。
それらは芸術だけに留まらず、風習や風俗に至るまでを収集し、口伝でしか残されていないものは書き起こしてまで記録する執念には驚かされる。
有人稱靜子為記錄狂,看到她做的事也不得不覺得這稱呼並不為過。
静子を指して記録魔と呼ぶ人がいるようだが、それも無理のないことだと思わずにはいられない。
「那傢伙在這類事情上執念深到讓父親都覺得頭疼。就寄過去,讓她討厭為止吧。」
「あいつ、この手の事に関しては父上も辟易するほど執念深いからな。嫌というまで送り付けてやれ」
「是」
「はっ」
信忠也許是被靜子反覆叮嚀得不耐,凡是有字的東西不論為何都裝箱寄給靜子。
信忠は静子から何度も繰り返し念を押された意趣返しか、文字が書いてあれば何であれ箱に詰めて静子の許へと発送した。
許多東西明顯像是垃圾,家臣們頗為憂心,但信忠仍下令照寄不誤。
明らかにゴミと思える物も多く、家臣たちが気を揉む一面もあったが、信忠は構わず送るように命じるのだった。
家臣擔心兩人會不會因此交惡,但這種擔心最後成了杞人憂天。
家臣は二人が仲違(なかたが)いをしないだろうかと気が気ではなかったのだが、その考えは杞憂に終わる。
後來靜子回送了感謝的禮物與大量軍需物資,家臣們只好理解那些被視為垃圾的東西對靜子而言是有價值的。
大量のゴミを受け取ったであろう静子から、お礼の品や大量の軍需物資が送られてきたことを以て、あれらは静子には価値があるのだと理解するしかなかった。
自從信忠前往東國征伐後,各式各樣的資料便陸續送到尾張的靜子宅邸。載補給物資的船隻回程時會把資料和商貨一併運來,數量已相當龐大。
尾張の静子邸には信忠が東国征伐に向かって以降、実に様々な資料が届けられるようになった。補給物資を積んだ船便が、帰りに商材などと一緒に運んでくれているのだが、これが膨大な量になっている。
因為在攻下北條方的支城時取得了大量資料,所以以軍事、政治、地理資料居多,但出乎意料地也有能窺見領民生活的紀錄與商交易的文書等,範圍相當廣泛。
北条側の支城を落とした際に得られた資料も多いため、軍事や政治、地理的な資料が多いのだが、予想外に領民たちの暮らしぶりが窺える記録や商取引の証文など実に多岐にわたっていた。
在靜子宅邸,司書與靜子親自按類別分類,決定要如何編纂為何種資料。靜子滿意地望著收好資料的書架,這時收到了通報。
静子邸では司書と静子自らがカテゴリーごとに分類し、どのような資料として編纂するのか方向性を決めている。そうして出来上がった資料が収まった棚をご満悦といった表情で眺める静子に報せが届く。
「終於動了」
「ようやく動いたんだ」
傳達給靜子的急報是,真壁氏已自居城佐貫城出發,正朝才藏駐守的支城前進。
静子に届けられた急報とは、真壁氏が居城である佐貫城を出立し、才蔵が構えた支城へ向かったというものだった。
不清楚佐竹與真壁之間發生了什麼經過,但靜子確信此舉將成為打破膠著狀態的「蟻穴」。
佐竹と真壁との間でどのような経緯(いきさつ)が有ったのかは判らないが、静子はこの動きが膠着状態を崩す蟻の一穴になると確信していた。
對靜子而言沒有能取代才藏的人才;不過對真壁氏來說,即使當主氏幹被討取,家督也由其弟義幹繼承。雖然是賭不好的一局,靜子只能選擇信任才藏。
静子にとって才蔵に代わる人材はいないが、真壁氏にとっては当主たる氏幹が討ち取られても家督は弟である義幹(よしもと)が継ぐ。分の悪い賭けだが、静子としては才蔵を信じる他なかった。
「各位好好聽著! 聲名遠播的鬼真壁,似乎只率少量手勢朝這邊來了。」
「皆の者良く聞け! 音に聞こえし鬼真壁が、僅かな手勢のみを率いてこちらへ向かっているようだ」
真壁出陣的消息也傳到了才藏那裡。有人聽說兵力不多而皺眉,但才藏繼續說道。
真壁出陣の一報は才蔵の許へも届けられていた。手勢の数が少ないと聞いて眉根を寄せる者もいたが、才蔵は言葉を続ける。
「他本就只帶了進行一騎討、以及同場處理與後續清理的人員。反而可以說是痛快乾脆。」
「元より一騎討と、その立ち合い及び後始末だけの人員を率いておるのだろう。むしろ潔いというもの」
「你不會認為他會暗算我們吧?」
「こちらが騙し討ちにするとは考えないのでしょうか?」
才藏的部下脫口而出的一句話,使周圍一陣騷動。
才蔵の配下が放った一言に、周囲がどよめいた。
「既然一騎討被接受,他們必然斷定不需小把戲。真是爽快不是嗎?」
「一騎討が受け入れられた以上、小細工は不要と断じたのであろう。実に小気味良いではないか」
「即便只討取鬼真壁一人,也不會影響大局。但若萬一可児大人被討取,對他們將是大勝利。」
「仮に鬼真壁一人が討ち取られたからと言って、大勢に影響はない。しかし、万が一にも可児(かに)様が討ち取られれば、奴らにとって大金星となる」
「也就是說,值得男子用生命去賭上一把的價值吧。」
「漢が命を張るだけの値打ちはあるということですね」
聽到家臣的話才藏點頭,重重用拳拍著胸口,開口說道。
家臣の言葉に才蔵は頷く。拳で強く胸を叩きながら、才蔵は言葉を紡いだ。
「這才藏,既接受一騎討的挑戰,便不會逃避隱藏,必以全身全靈應戰。」
「この才蔵、一騎討を挑まれたとあっては逃げ隠れせぬ。全身全霊を以て応えるのみ」
面對才藏可靠的態度,部下將兵親身感受到他的自信。看見他們那副模樣,才藏露出一抹奸笑。
才蔵の頼もしい態度に、配下の将兵は才蔵の自信の程を肌で感じていた。そんな彼らの様子を見て、才蔵はニヤリと笑みを浮かべる。
「然而就這樣坐等敵人到來也太無趣了,讓我來個不會動搖賭局分量的意趣回擊如何?」
「しかし、このまま手を拱(こまね)いて敵の到着を待つのもつまらぬ。賭け皿に足らぬ重さ分の意趣返しをさせて貰おうか」
部下將兵們興奮地等待著才藏那帶著頑童笑容的安排。
悪ガキのような笑みを浮かべる才蔵の言葉を、配下の将兵たちはワクワクしながら待った。
自真壁出陣的消息傳出整整兩日後,一行已整備完畢,眼看就要抵達才藏所待的支城。
真壁出陣の一報から丸二日が経ち、万全の体勢を整えた一行が才蔵の待つ支城を目前に控えていた。
發揮少數精銳的優勢,全部騎兵編成的真壁一行稍作最後的短暫休息後便朝支城前進。
少数精鋭の優位性を活かし、全てが騎馬で統一された真壁一行は最後の小休止を取ると、支城に向かって進み始める。
「織田真的會應允一騎打嗎?」
「織田は本当に一騎打ちに応じるのでしょうか?」
在氏幹背後的一名側近忍不住表露不安。從戰況來看,真壁之首與才藏之首根本無法相提並論。
氏幹の背後に控える側近の一人が思わず不安を口にした。そもそも戦況的に見て、真壁の首と才蔵の首とでは全く釣り合いが取れない。
才藏一方只需等待里見・佐竹聯軍疲敝,就能獲得有利局面,因此沒有必要冒著一騎討那種危險去追求速戰速決。
才蔵側は里見・佐竹連合軍が疲弊するのをただ待っていれば状況が有利になるのだから、一騎討などという危険を冒してまで早期決着を図る必要性が無いのだ。
「即便遭到偷襲也無從抱怨。本來這是對織田一方沒有利益的一對一決鬥。即便如此,可兒殿作為武人也會應戰吧」
「仮に騙し討ちにあったとて文句は言えぬ。そもそも織田側にとって益の無い一騎討なのだ。それでも可児殿は武人として応じて下さるだろう」
本就是寄望過高而押上的一騎討。雖然口中說著就算被偷襲也無可奈何,但氏幹卻斷言那種事不會發生。
そもそもが過ぎた高望みを賭けての一騎討。騙し討ちされても仕方ないと口にしつつも、そのようなことが起こるはずが無いと言い切る氏幹。
既然是把性命賭上的主人這樣說了,作為家臣也只能跟從。於是當他們抵達支城門前時,不由自主地發出了聲音。
実際に命を賭ける主人にそう言われてしまえば、家臣としては付き従う他ない。そうして支城の門前に着くと彼らは思わず声を上げた。
「這、這是什麼!!」
「な、なんだこれは!!」
氏幹愣住發出聲響,但家臣們因眼前的景象過於驚異甚至無法出聲。映入他們眼簾的,是支城門扉大開的空間中那異常的光景。
氏幹が呆気に取られて声を上げるが、家臣たちは余りの光景に声を発することすら出来なかった。果たして彼らの目に飛び込んだのは、支城の門扉が大きく開け放たれた空間に存在する異様な光景である。
那是一處臨時搭建的設施,以像是將相撲土俵放大數倍的圓形為中心,東西兩側僅以繩索圈起的觀眾席環繞而成。
それは角力(すもう)の土俵を数倍にも広げたような真円を中心に、東西に縄を張り巡らせただけの観客席を設けた急ごしらえの施設であった。
在那圓形中心附近擺放的矮凳上坐著的武人站起來,放聲高喊。
その真円の中心付近に設えられた床几に腰を下ろした武人が立ち上がり、大音声を張り上げる。
「歡迎蒞臨,真壁殿。請在吾前顯示汝的武威!」
「ようこそ参られた真壁殿。其方(そなた)の武威を我が前に示されよ!」