首頁 目錄

戦国小町苦労譚

1577年 七月下旬

時光稍微回溯,石山本願寺陷落的消息由快馬帶到京城之時。

時はやや遡(さかのぼ)り、石山本願寺陥落の一報が早馬によって京に齎(もたら)された頃。

作為公家之頂點的五摂家之一、二條家當主昭實在宿所所搭起的帳幕中度過了輾轉難眠的夜晚。

公家の頂点でもある五摂家が一つ、二条家当主の昭実(あきざね)は寝所に設(しつら)えられた御帳(みちょう)の中でまんじりとも出来ない夜を送っていた。

此時期由近衛家積極推廣的棉被正在富裕的公家之間普及,但昭實固執地拒絕接受。

この頃になると近衛家が積極的に広めている木綿布団が裕福な公家の間で浸透しつつあったのだが、昭実は頑なにこれを拒んでいる。

換算成現今貨幣價值,一床鋪墊與被褥一套大約相當於一輛國產高級乘用車的價格,就算是上級貴族公卿若無足夠財力與人脈也買不起。

現在の貨幣価値に換算すると敷布団と掛け布団の一組で国産の高級乗用車一台分程度の値段となり、上級貴族たる公卿(くぎょう)であろうと財力とコネの両方を兼ね備えない限り手が出ない代物だ。

當然身為五摂家一角的二條家,身為當主的他能夠買到,但對織田家日益傾倒感到疏離的昭實,卻視之為墮落的象徵。

勿論五摂家の一角を担う二条家のそれも当主ともなれば入手できるのだが、織田家に対する今以上の傾倒を疎(うと)ましく感じている昭実にとっては堕落の象徴にさえ思えたのだ。

所以他仍橫臥在古老的八重畳上,把和服覆在身上閉眼,卻全然無法入睡。

それゆえに昔ながらの八重畳(やえだたみ)の上に横臥(おうが)し、着物を上に掛けて目を瞑(つむ)っているのだが一向に睡魔は訪れない。

原因在於本願寺陷落的詳細消息。從官軍對本願寺的布陣到陷落僅僅兩日,且竟然生擒了叛亂首謀者教如。

その原因は本願寺陥落の詳報にあった。官軍の本願寺布陣から僅か二日で陥落し、よりにもよって反乱の首謀者たる教如(きょうにょ)を生け捕りにされてしまっていた。

在策劃一連騷動時,他透過在京城掌管暗部的人向教如提供援助與指示,若這些線索被反追索,就可能暴露自己的參與。

一連の騒動を画策するにあたり、京に於いて暗部を司る者達を通して教如に対する援助や指示を出していたため、それらを逆に辿られれば己の関与が発覚しかねない。

而昭實甚至密謀刺殺對織田家要害的靜子。信長對敵人的殘酷在京中亦聞名,想到那股威勢已逼近自己便夜不能寐。

そして昭実は織田家の急所たる静子の暗殺を企ててしまっていた。敵に対する信長の苛烈さは京に於いても有名であり、それが自分の間近にまで迫っているかと思えば夜も眠れないでいたのだ。

連日失眠導致的睡眠不足在他眼下留下深重的黑眼圈;疲憊深鎖的面色像死人,汗脂浸濕的髮絲黏在額頭上,完全不像位高權重之人。

連日の不眠による寝不足は目の下に濃いクマとなって現れている。疲労が色濃く残る顔色は死人のようであり、脂汗に塗(まみ)れた髪が額に張り付いている様子はとても貴人とは思えない有様だった。

他確實被逼到角落。自從第一則消息傳來後,身邊接連發生異常事件,甚至連與掌管暗部者的聯絡也斷絕了。

彼は確実に追い詰められていた。第一報が齎されて以降、彼の身の回りでおかしな事が相次いで起こるようになり、ついには暗部を担っている者達との連絡さえつかなくなってしまう。

昭實天生就是壓倒性的強者,雖被他人怨恨卻從未被公開敵視。長期被迫生活在可能何時遭受危害的未知恐懼之下,壓力可想而知。

昭実は生まれついての圧倒的強者であり、他者から恨まれはすれど表立って敵意を向けられたことすらなかったのだ。それがいつ自分の身に危険が降りかかるとも判らない恐怖に晒され続ける重圧はいかばかりであろうか。

「不過是想把這等不知分寸、以女子身分插手政事的無禮者排除!這有什麼錯!!」

「女の分際で政(まつりごと)に口を出す身の程知らずを排そうとしただけでは無いか! それの何が悪いと言うのだ!!」

他抓扯著頭髮連頭皮一起搔起,指間纏滿了一把把被油脂沾濕的髮束。看見大量掉髮的昭實發出短促的悲鳴「嗚!」。

ガリガリと頭髪ごと頭皮を掻きむしると、指の間には脂に濡れた頭髪の束がごっそりと絡みついていた。おびただしい量の抜け毛を見た昭実は「ひいっ!」と短く悲鳴を上げる。

他把指間纏繞的髮束像可憎之物般甩開,用腳踢向房間一角,想把它盡量遠離自己。

指の間に絡みつくそれを忌まわしい物であるかのように振り払い、少しでも己から遠ざけようと足で蹴って部屋の隅へと追いやった。

那時他才注意到自己所處情況的反常;明明大聲呼喊並弄出聲響,卻沒有人來確認情形。

その時初めて彼は己が置かれた状況の不自然さに気が付く。大声を出した上に相応の物音も立てているというのに、誰も様子を確認しに来ない。

更甚者,當發出聲響的自己一旦沉默,周遭即被寂靜支配得彷彿耳鳴般;連蟲聲都消失,緊繃的空氣沉重地壓迫著。

それどころか音の発生源たる自分が沈黙した途端、耳鳴りが聞こえるほどの静寂が辺りを支配していた。まさに虫の音さえ絶え、張り詰めた空気が重く圧(の)し掛かる。

「有人嗎!有人在嗎!」

「誰か! 誰かある!」

昭實盡其所能呼喊,但在人煙絕跡的屋內只聽得殘響迴盪,沒有回應。

昭実は声の限り呼びかけるが、人気(ひとけ)の絶えた屋敷内に残響がいんいんと響くのみで、応(いら)えが返ることはない。

昭實坐立難安地穿上衣服,忽然一股不協調的氣味撲鼻而來,帶著某種香味,又像山火帶來的燻煤味。

居ても立っても居られなくなった昭実が着物を纏っていると、場違いな匂いがふんと鼻をついた。それは何処か香ばしく、そして山火事を思わせる煤(すす)けたものだった。

就在昭實快要因無法忍受寂靜而喊叫之際,一個赤黑色、沉重的東西飛進了他的帳內。

昭実が静寂に耐え切れず叫びそうになった瞬間、彼の御帳の中に赤黒い重量のあるものが飛び込んできた。

它在八重畳的階差處停下並滾了過來,無聲地向昭實揭示了自己的真面目。面對它,昭實在極度恐懼中不但無法呼喊,甚至連吐氣都困難,只能發出喉音。

それは八重畳の段差で止まるとゴロンと転がり、昭実に自分の正体を無言のまま告げた。対する昭実は極限の恐怖から叫ぶどころか、息を吐きだすことすらままならず喉を鳴らす。

那看似赤黑的物體,竟是四肢被切斷、只剩軀幹與頭部的人體。之所以呈現赤黑,是因為軀幹的肉被削到見骨,切削面又被高溫炙燒所致。

赤黒い物体に見えたもの、それは四肢を切断され胴体と頭のみになった人体であった。赤黒く見えたのは骨が見える程に胴体の肉が削られており、また切削面が高熱で炙られていたためだ。

與極為慘烈的軀幹形成對比的是,為防止咬舌頭而被厚布塞滿口部的頭部幾乎保留原形,昭實認出那是與自己及暗部相聯繫的聯絡人。

無残極まる胴体の有様とは対照的に、舌を噛まぬよう厚手の布を口いっぱいに詰め込まれた頭部はほぼ原形をとどめており、自分と暗部とを繋ぐ連絡役のものだと理解できてしまった。

把帶著苦悶表情、陰森骸骨拋進來的主使,從黑暗中踏入被燭台光照亮的帳內。

苦悶の表情を浮かべる陰惨な躯(むくろ)を投げ込んだ張本人が、闇の中から燭台の明かりが照らす御帳の中に踏み入ってくる。

在微弱燭光下,炯炯發亮的眼、噴著蒸氣的口,構成了憤怒的模樣。昭實一見便悟出,地獄的鬼現身了。

薄明りの中爛々(らんらん)と光る眼(まなこ)と、蒸気を噴き上げる口が造り上げる憤怒(ふんぬ)の相。昭実は一目見るなり、地獄の鬼が現れたのだと悟った。

那鬼雖然怒氣滔天,卻無聲無息地踏上昭實蹲伏的八重畳,傲然俯視著他開口說道。

その鬼は振りまく凄まじい怒気とは裏腹に、足音一つ立てることなく昭実のうずくまる八重畳を踏みしめ、傲然と彼を見下ろしながら告げた。

「你就是二條家當主昭實嗎?」

「お前が二条家当主、昭実か?」

昭實在如被火炙般的熱意中顫慄,本能地認為若不回答就會被殺,像壞掉的玩具般一次又一次點頭。

昭実は炎で炙られているかのような熱に慄(おのの)きながらも、本能的に返事をしないと殺されると感じ取り、壊れた玩具のように頭を何度も縦に振る。

被鬼的目光射穿,因極度恐懼而失禁並且隨後排糞,昭實連羞恥的餘裕都沒有。

鬼の眼光に射竦(すく)められ、極限の恐怖から音を立てて失禁し、ついで脱糞をしたというのに昭実には羞恥(しゅうち)を感じる余裕すらなかった。

另一股不同於先前的惡臭湧起,鬼像見到醜陋之物般皺起面容。被鬼發出的蔑視與厭惡所逼,昭實因羞辱而流下眼淚。

先ほどまでとは別の異臭が立ち込める中、鬼は醜悪なものを見たかのようにその面貌を顰(しか)める。鬼から放たれる侮蔑と嫌悪を受けて昭実は羞恥から涙を流した。

「接下來我要說的都是既定事實,你不得拒絕!若你說不,那便會成為你未來的模樣。」

「これからわしが告げることは全て決定事項だ。お前が拒むことは赦さぬ! 否と言うのであれば、それがお前の未来の姿となる」

鬼用似乎從地底傳來的聲音斷然說出。聽了鬼的話看向那聯絡人,就能理解他全身的肉被一次又一次、長時間地薄薄削去。

鬼は地の底から響いてくるかのような声で決然と言い放った。鬼の言葉を受けて連絡役の男を見やると、体中の肉という肉を繰り返し何度も何度も時間を掛けて薄く削ぎ落されたのだという事が理解できた。

昭實雖不知情,但這是中國及朝鮮半島古時施行的凌遲刑,是處以最重刑罰者的極端拷問形式之一。

昭実は知らぬことながら、これは中国及び朝鮮半島で古くから行われていた凌遅(りょうち)刑という処刑の一つであり、刑罰の中で最も重い刑を課された者に与えられる究極の拷問(ごうもん)の形でもあった。

此刑拘束受刑者,如釘在柱上,然後以燒至通紅的刀刃在受刑者仍然活著時逐步削去其肉,手法極其殘酷。

それは受刑者を磔(はりつけ)にするなどして拘束し、赤熱するまで焼いた刃物を用いて受刑者の肉体を生きたまま少しずつ削ぎ落していくという凄惨極まりない手法を取る。

通常用刀削肉會造成大量出血而很快死亡,但加熱的刀刃在削除過程中會將傷口燒縮以抑制出血,故此刑以延長受刑者痛苦為核心,是種殘忍的處刑。

通常であれば刃で肉を削ろうものなら出血多量で程なく死に至るのだが、熱された刃は削り落とす過程で傷口が焼き縮められるため出血を抑えられることにより、少しでも受刑者を長く苦しめることを主眼に置いた残酷な処刑である。

有時甚至會花數日到數十日施刑,但這次為了追出首謀者而在短時間內致其刑死,是否對當事人來說是一種解脫則無從得知。

長ければ数日から数十日かけて刑を課すこともあるというが、今回は首謀者を突き止めるために短時間で刑死させられていたのだが、それが本人に取って救いとなったかは定かでない。

「自今起你將被綁以繩索,作為罪人示眾於京中,隨後流放往壹岐。今後無論有何恩赦,你均不得享受。於日本境內你能度過一生的地方僅此一處,銘記在心。不論出於何等理由,一旦離開那裡,我必對你、你的妻子以及子孫後代施以令你們哀求被殺般的極刑與折磨!」

「お前はこれより縄を打たれ、罪人として京中に晒された後に壱岐(いき)へと流される。今後どのような恩赦が有ろうとも、お前がその恩恵に与ることは決してない。この日ノ本に於いてお前が生を紡げる場所は、そこのみと心得よ。如何様な理由があろうとも、そこを出ればお前もこやつと同じく殺してくれと懇願するほどの責め苦をお前は勿論、お前の妻及び子々孫々に至るまで与えてやろう!」

昭實慢慢咀嚼著從鬼口中道出的話。先為自己不被取去性命而感到放心,隨即絕望於將不得不在名為壹岐的離島耗盡一生。

鬼の口から告げられた言葉を昭実はゆっくりと咀嚼(そしゃく)する。まずは己の命が取られないという事に安堵(あんど)し、次いで壱岐という離島で一生を過ごす羽目になることに絶望した。

而這等嚴酷的裁決不僅針對他個人,還將延伸至他的宗族與部下,令昭實愁眉不展。見狀鬼又加重了語氣。

それもその過酷な沙汰が己だけに飽き足らず、自身の一族郎党にまで及ぶとあって昭実は渋面を作る。それを見咎めた鬼が言葉を重ねた。

「你一副好像不服的樣子?要知道,你所犯的罪光靠你那一條骯髒的命是絕對無法贖清的!本願寺從天降火一事你應該略有耳聞吧?你犯下了絕對不能碰觸的禁忌。你不得享有安樂的死、在世上唯有不停啜飲苦汁、品嚐辛酸,這將成為你被允許的一切。」

「不服がありそうな顔をしておるな? お前の犯した罪はお前ひとりの薄汚い命では到底贖(あがな)い切れぬと知れ! 本願寺に天より火が降り注いだことは聞き及んでおろう? お前は決して触れてはならぬ禁忌を犯したのだ。お前には安楽な死など許されぬ、この世で苦汁を啜(すす)り辛酸を舐め続けることのみがお前に許される全てとなろう」

被鬼以最後通牒般宣判罪名後,昭實感到眼前一片漆黑。這鬼話裡話外是在威脅,如果他不活着受苦,就會對他的親人下手。

鬼より最後通牒となる断罪を告げられ昭実は目の前が真っ暗になる感覚に襲われた。この鬼は言外に自分が生きて苦しまなければ、自分の身内を手に掛けると脅しているのだ。

昭實明白,即便要啃食樹根、咬石而活,也得在最邊遠之地壹岐過著充滿苦難的日子。理解到那般程度後他心有所定,為了哪怕腐敗也要以二條家當主之自尊示人,便問出了鬼的名號。

昭実は木の根を食(は)み、石に齧りつくことになろうとも最果ての地、壱岐にて苦難に満ちた生を送らねばならないと悟った。そこまで理解が及ぶと肚(はら)も座り、腐っても二条家当主としての意地を見せるべく鬼の名を問うた。

「吾名足滿,乃近衛靜子的守護者,對於加害於彼者揮下斷罪之刃者!將吾名刻在身上,伴隨悔恨終生不忘!吾常常在注視著你!」

「我が名は足満、近衛静子の守護者にして彼女に仇為す者に断罪の刃を振り下ろす者なり! 我が名を後悔と共に終生忘れぬようその身に刻み付けよ! わしは常にお前を見ておるぞ!」

說完便轉身消失在黑暗之中。對昭實來說那段時間只有惡夢一說,但確實留下了非夢境的證據。

それだけを告げると、鬼はその身を翻し闇の中へと消えていった。昭実にとっては悪夢としか思えぬ時間だったが、それらが夢で無かった証拠は確かに残されていた。

那是一具已不復有人形的屍體,還有自被大小便弄髒的身軀上升起的惡臭。昭實思忖自己的將來,抱頭蜷縮,漸漸只有抽泣聲自那裡漏出。

それは既に人の形をなしていない死体であり、大小便に塗れた己の体から立ち上る悪臭だ。昭実は己の行く末に思いを馳せ、頭を抱えてうずくまった。いつしかそこからは啜り泣く音のみが漏れ始めるのだった。

離開二條邸的足滿,忽有未現身之人聲向他開口。

二条邸を後にした足満に対し、姿を見せない何者かの声が掛けられる。

「該讓被催眠之人也回復意識了,昭實已有看守在側,不打算擄走他嗎?」

「そろそろ眠らせた者も意識を取り戻しましょう、昭実には見張りを付けておりますが攫(さら)わずとも良いのですか?」

「已經那般恐嚇並牽涉因果,他該不會做無謂掙扎。本音而言,若他真要做無謂掙扎,我甚至會想親手斷罪他呢」

「あれだけ脅して因果を含ませたのだ、よもや悪足掻きなどすまい。本音を言えば悪足掻きしてくれれば、いっそこの手で断罪してやれるとすら思っておるのだがな」

「必須讓向靜子大人張牙舞爪的人,以其身示範給其他不知檢點者看將遭何種下場。然而對於一連串騷動首謀的處置,難道就不告知靜子大人嗎?」

「静子様に牙を向けた者がいかなる末路を辿るのか、その身を以て他の不心得者に示し続けて貰わねばなりませんな。しかし一連の騒動に関する首謀者への仕置きについて、静子様にお伝えしなくとも宜しいのですか?」

「鳶加藤(足滿麾下之忍),此事一概不准告知靜子。你被人圖謀性命之事會由真田轉告,若能使靜子察覺自身失誤並促其反省便足夠。這是吾的任性,但吾不願讓靜子見到人性那無可挽回的醜陋面。未知即幸福。人的業只要一接觸便會在心中沉積成澱,終有一日侵蝕其心。血洗血的修羅之道,吾一人足矣。」

「鳶(とび)加藤(かとう)(足満配下の忍)、そのことは静子に一切知らせることを許さぬ。己が命を狙われたと言うことは真田より伝えられよう、静子が自分の失敗に気付き反省を促す糧となりさえすれば良い。これはわしの我儘(わがまま)だが、静子には人が持つどうしようもない醜い部分を見せたくないのだ。知らぬという事は幸せよ。人の持つ業は触れるだけでも心の中に澱(おり)として溜まり続け、いつしかその心を蝕(むしば)んでしまう。血で血を洗う修羅の道を征(ゆ)くのは、わし一人で充分だ」

聽了足滿的話,鳶加藤回了一聲領命,便隱去了氣息。足滿也背起了又一樁因緣,消失在黑暗之中。

足満の言葉を受けると、鳶加藤は一言了承を返し気配を消した。足満もまた一つ増えた因業を背負い、闇の中へと消えていった。

尾張迎來較晚的梅雨,由此流過約一個月左右的平靜時光。即便在現代,雨多時人們的活動會減弱,這一傾向在戰國時代亦無二致。

尾張では遅めの梅雨入りを迎え、そこから一か月ほど平穏な時間が流れていた。現代であっても雨が多くなると人々の活動が下火になるが、その傾向は戦国時代にあっても変わらない。

即使是動員大量人力、物資與金錢的戰事,遇上梅雨時節也無法如意行動,活動會被大幅限制。

大量の人・物・金が動員されるいくさに於いても梅雨時ともなれば思うように動けず、その活動を大きく制限されてしまう。

在織田領內的主要街道若有鋪設,自不會泥濘難行。但一旦稍微離開街道,便得順從自然之理,人的足跡與車轍會長久殘留。

織田領内の主要街道であれば舗装が施されているため、道がぬかるんでしまうような事はない。しかし、少しでも街道から外れてしまえば自然の道理に従うこととなり、人の足跡や轍(わだち)の跡が長く残ってしまう。

換言之,想盡量不讓敵人發覺人員與物資移動等軍事行動也勢必變得遲緩,除少數例外……外,默契性的停戰狀態持續著。

つまりは人員や物資の移動を極力敵に知られたくない軍事行動なども鈍くなるのが自明であり、一部の例外(・・・・・)を除いて暗黙の停戦状態が続いていた。

「不可因梅雨而鬆懈。正是他人休息之時,才是創造決定性差距的良機。」

「梅雨だからと油断してはなりません。他者が休んでいる時こそが、決定的な差をつける好機となります」

「是,母上」

「はい、母上」

四六正從靜子那裡接受關於立於人上者應有心構的指導。即便是靜子的兒子,也不會只是依靠父母的威光就有人追隨。

四六は静子から、人の上に立つものとしての心構えについて指導を受けていた。如何に静子の息子とは言え、親の威光だけで人が付いてくることは無い。

向先達學要旨,時有親赴現場以一兵卒身份累積實地經驗。不諳現場的上層只會成為害群之馬,而僅以現場視角卻失去大局的為政者亦免不了被斥為無能。

先達から要諦を学び、時には現場に立って一兵卒として実地経験を積むことさえある。現場の事を全く知らない上層部など害悪でしかなく、また現場と同じ視点だけで大局を見失う為政者も無能の誹(そし)りを免れない。

然而人的能力有其限度,為政者不可能完全掌握到末端,故構建中間管理者層並採取中央集權式體制是合理之策。

とは言え人の能力には限界があり、為政者が末端までを完全に把握することなど不可能であり、中間管理者層を構築して中央集権型の体制を敷くのが合理的だ。

在此需要的是能成為自己之眼、手足的中間管理者識別力,但四六在此能力上相較他人顯著不足。

その際に必要となるのが、自分の目となり手足となってくれる中間管理者を見抜く目なのだが、四六はこの能力が他者と比べて著しく劣っていた。

以他特殊的身世來說或許情有可原,但敵對者不會斟酌這些,因此必須速補此缺口。

彼の特殊な生い立ちからすれば無理からぬことなのだろうが、敵対者はそのようなことを斟酌(しんしゃく)してはくれないため、早急に補う必要があった。

「人常會恐懼並排斥無法理解之物。換言之,執著金錢與權力者認為他人也必然如是,因而討厭不為其所動之人。」

「人は往々にして理解できないものを恐れ排除しようとします。つまり金や権力に執着を抱く者は、他人も当然そうであると考えており、それに靡(なび)かない者を嫌います」

「無欲反而會招致警戒之心,意思是這樣嗎?」

「無欲であることが逆に警戒心を生むということですか?」

「無論何事,『容易理解』是重要的。以利害這種明確關係結成的商業交易最為明顯;滿足對方欲求,以換取對己之便宜,形成互惠關係。總之,無欲之人因其欲求不明,難以被影響。人若受恩,會產生想回報對方的『互惠原理』。」

「何事に於いても『判り易い』という事は重要なのです。利害という判り易い関係性で結ばれる商取引などが最たるもので、相手の欲するところを満たし、代わりに己に対する便宜を図って貰おうとする互恵関係があります。要するに無欲であるという事は、その人が欲するところが見えないため、働きかけることが難しくなってしまうのです。人は恩を受ければ、その相手に報いてやりたいと思う『返報性の原理』が働きます」

「原來如此,刻意讓對方知道自己的所欲,反而更容易建立關係呢!」

「なるほど、敢えて己の望むところを相手に知らせることで関係を結びやすくなるのですね!」

「正是如此。不僅限於收受金品,欲成其事便需相應的投資。民眾眼中不受賄的潔癖君主或可受人愛戴,然而若有君主因厭惡向有勢者給予便宜而選擇獨力緩慢整治領內,與此相對的是,那些向有力商人或豪農提供便宜以換取出資與人手,從而推進領內公共工程的君主,這種人難道就是惡嗎?」

「そうです。金品を受け取ることに限らず、何かを為そうとすれば相応の投資が必要になるのです。民から見れば賄賂を受けない潔癖な君主が望ましく見えるのでしょうが、力を持つ者に便宜を図ることを嫌う余りに独力で少しずつ領内の普請をする君主がいるとします。対照的に有力な商人や豪農などに便宜を図る代わりに出資や人手を募り、領内の公共事業を次々に推し進める君主は悪ですか?」

「我認為不見得是惡的……很難說。」

「悪では無いと思います……難しい」

「養成從多視角看事物的習慣。立於人上者需有容納清濁並濟的度量。人無法僅靠空泛的美言而生活。」

「様々な視点から物事を見る癖をつけなさい。人の上に立つ者には清濁併せ呑む度量が求められます。人は綺麗ごとだけでは生きていけないのです」

「明白了,我會努力。」

「分かりました、努力します」

幼年受虐、被靜子救出之經歷使四六傾向厭惡有力者的橫暴,於是他學習在自己擁有力量時該如何對待他人。

幼くして虐げられた経験を持ち、静子によって救い出された経緯から力あるものの横暴を嫌う傾向のある四六は、己が力を持った際の扱い方を学んでいく。

當然,教導四六的不只有靜子,他也向哥們慶次與長可,乃至曾為人質的景勝學得良多。

勿論、四六に教えを授ける相手は静子だけではない。兄貴分である慶次や長可、果てには人質であった景勝からも多くを学んでいた。

「怎麼了,已經撐不住了嗎?」

「どうした、もうへばったか?」

話音剛落,四六便被慶次掀翻。他正接受慶次的相撲訓練,場中真切呈現出成人與孩童之間的力量差距。

その言葉と同時に四六は慶次に転がされた。彼は慶次に角力(すもう)の稽古をつけて貰っているのだが、そこには文字通り大人と子供の力量差が存在した。

練習場上幾乎只有四六留下的足跡顯眼,慶次幾乎未從最初的站位上移動。被反覆摔倒的四六渾身泥土,而慶次身上僅於與四六碰撞之處略為髒污。

なにせ稽古場には四六が付けた足跡ばかりが目立ち、慶次は最初の立ち位置から殆ど動いてすら居ないのだ。幾度も転がされた四六は全身が土まみれだが、慶次は四六がぶつかった箇所のみが汚れているに過ぎない。

「還不行!」

「まだまだ!」

「好!剛才不錯,再把腰降低些,從頭部撞上去」

「よし! 今のは良い感じだ、もっと腰を落として頭からぶつかれ」

「哇!」

「うわっ!」

或許是意外命中的好一擊,慶次一面稱讚四六,一面從下手位由腋下往上掬起將他掀翻。全體重撞上的四六在化解衝擊時,仍無法應對繼而轉為投技的慶次所施的掬投。

予想外に良い当たりを受けたのか、慶次は四六を褒めつつも下手を脇の下から上へと掬い上げるようにして四六を転ばせる。全体重を乗せてぶつかった四六は、衝撃を受け流しつつ投げに派生する慶次の掬い投げに対処できなかった。

衝力過大滾到地上,狠狠撞上用來做抵擋練習的鐵桿而痛苦抽搐。周圍的人把過去的自己投射到四六身上,苦笑著把他扶了起來。

勢い余ってゴロゴロと地面を転がり、突っ張り稽古用の鉄砲柱にしたたかにぶつかって悶絶する。周囲の皆はかつての自分の姿を四六に重ね、苦笑しながらも彼を助け起こす。

「好,歇一口氣吧。觀看別人的角力也是一種學習。」

「よし、一息いれな。他人の角力を見るのも勉強の一つだ」

「是、是。」

「は、はい」

被長可扶起的四六意識到自己完全氣喘吁吁,點了點頭。靠在練習場的牆邊坐下,從帶來的水筒喝了水。

長可に助け起こされた四六は、完全に息が上がってしまっている事を自覚して頷いた。稽古場の壁にもたれかかり腰を下ろすと、持参していた水筒から水を飲む。

近處傳來慶次與長可拼死相搏時,訓練有素的身軀碰撞出的激烈撞擊聲。

すぐ近くから慶次と長可ががっぷり四つに組み合う際の、鍛え上げられた肉体同士がぶつかり合う激しい音が響く。

看著前傾著身、雙腳支撐抵抗長可強力衝撞的慶次,以及連慶次都被逼退的長可,四六明白自己以前被多麼留手。然而,僅此程度並不能使四六氣餒。

前傾体勢となって脚を踏ん張り、長可のぶちかましに耐える慶次と、その慶次すら後ずらせる長可の姿を見て己が如何に手加減されていたかを悟る。しかし、その程度では四六が腐ることは無い。

(大家從小就為了戰鬥接受嚴酷鍛鍊。只為了過日子而活的自己與他們有差距是理所當然,庸才如我只能不斷努力。)

(皆、幼少より戦うために厳しい鍛錬を積まれた人だ。ただ生きるために日々を送った自分とは差があって当然、非才な身としては努力を重ねるしかない)

「被留手你不滿嗎?」

「手加減されて不満かい?」

正當他對自己與慶次等人之間巨大的差距嘆息時,景勝走來對四六說話。四六行了個目禮後搖頭回應景勝的問題。

自分と慶次たちとの間に横たわる果てしない差にため息をついたところで、景勝が四六に話しかけてきた。四六は目礼した後に首を振りつつ景勝の問いに答える。

「我最近才開始角力,妄想與長年鍛鍊的慶次殿並肩實在不自量力。把我當孩童看待也理所當然。」

「ここ最近になって角力を始めた私が、長く鍛錬を積んでこられた慶次殿と肩を並べようなどと不遜なことは思いませぬ。童扱いも当然でしょう」

「能這樣想就很了不起了。普通人會因為與自身差距過大而絕望、屈膝不前。然而四六殿知道差距之後,竟仍想去彌補它。」

「そう思えるだけでも大したものよ。普通は我が身との余りの差に絶望し、膝を折ってしまう者も多い。しかし、四六殿は差を知って尚、その差を埋めようとしておられる」

「過獎了。」

「勿体なきお言葉です」

對於景勝對自己表現出肯定,四六感到有些難為情。

自分の事を評価してくれていた景勝に、四六はどこか面映(おもは)ゆくなる。

「別謙虛了,那可是難得之事。而且我乃人質之身,不必如此拘謹也罷?」

「ご謙遜(けんそん)召されるな、なかなか出来ぬことゆえ。それに私は人質の身、そのように畏(かしこ)まらずとも構いませぬぞ?」

「別開玩笑了。身為母上的兒子我被多少重視一些。您能從越後之龍手中獲得繼承者之位,而我尚未有所成,實在望塵莫及。」

「ご冗談を。私は母上の息子という事で一目置いて頂いている身。見事越後の龍より後継者の座を得られた貴方と、未だ何も為していない私では足元にも及びませぬ」

「哈哈哈,我到現在也毫無作為,若被你如此當面稱讚我真難以招架。既然如此,容我提出一點忠告,我覺得四六殿過於自守分際。若因與他人比較而自卑或迷失方向,讓我教你一個能助你一臂之力的心法:那就是擁有在你活著時絕對不會放棄的某件事物。」

「ははは、私もつい今までは何も為していなかった故、そう真正面から褒めて頂いては立つ瀬がござらぬ。では私から一つ助言をさせて頂くならば、四六殿は己が分を弁えすぎておられるように見受けられる。他者と比べて卑屈になったり、道に迷ったりした折に一助となる心構えをお教えしましょう。それは己が生きる上で絶対に譲れない何かを持つことです」

「絕不能讓步的東西嗎?」

「譲れないもの、ですか?」

對於四六的回問,景勝望向某個不是這裡的遠方回道。

四六の問い返しに、景勝はここではない何処かを眺めるようにして返す。

「對我而言,那就是越後。保護孕育我、使我出生的越後,以及在那裡生活的所有民眾,是我的本心。侵犯它的人,即使是對我有大恩的織田殿也不例外。就算被罵為忘恩負義、就算是注定不能勝的戰鬥也絕不讓步。容許那種事發生對我而言比死還痛苦。」

「私ならば越後がそれに当たる。私が生まれ、私を育んでくれた越後とそこで暮らす民たちすべてを守ることが私の本懐。それを犯す者は、たとえそれが大恩ある織田殿であったとしても変わりませぬ。恩知らずと罵られようと、決して勝てぬ戦いであろうとも譲れない。それを許すことは私にとって死よりも辛いことなのです」

「原來如此,對我而言絕不能讓步的事物是……」

「なるほど、私にとって譲れぬものとは……」

「四六殿自己要花時間去問自己,那到底是什麼。」

「四六殿にとってのそれが何なのか、それは時間を掛けて己に問うしかありませぬ」

「承蒙賜教,謹表感謝。我雖仍年輕微賤,但今後仍請多多指教教導。」

「貴重なご助言を賜り感謝いたします。まだまだ若輩の身なれど、これからもご指導ご鞭撻をお願い申します」

對於四六略顯拘謹的話,景勝輕輕拍了拍他的肩膀回應。

どこか堅苦しい四六の言葉に、景勝は軽く肩を叩いて応えた。

七月末、八月將至之際,作為伊達家對織田家臣服之證的人質被秘密送往織田家。信長在接獲此報後,立刻命東國征伐諸將改往討伐北條。

七月も末となり八月が迫る頃、伊達家より織田家に対する臣従の証として人質が秘密裡に送り届けられた。その一報を受けた信長は、即座に東国征伐を担う諸将へ北条征伐に向かうよう命じる。

阻礙上杉謙信率領的越後軍行軍的殘雪也融化,織田家的軍事與經濟支援開始到達。長期的繼承者爭端也見分曉,後顧之憂得以解除。

上杉謙信率いる越後軍の行軍を阻んでいた残雪も消え、織田家からの軍事及び経済支援が届くようになった。かねてより課題であった後継者争いも決着を見せ、後顧の憂いが断たれた状況となる。

接到信長發布的出陣大號令後,信忠立刻開始行動。外人看來或許覺得他為求功名而操之過急,但若了解內情就會發現那並非如此。

信長が発した出陣の大号令を受け、信忠は即座に行動を開始した。余人の目には功を焦って先走ったようにも見えるだろうが、内情を知ればそれが誤りであることに気付くだろう。

他從過去的失敗中汲取教訓,信忠一直保持戒備。無論何時號令下達,都能立即出陣,並努力蒐集情報掌握局勢,甚至還在對外策動情報迷惑敵人。

かつての失敗に学び、信忠は常に備え続けていたのだ。いつ号令が発されようと、即座に出陣が出来る準備を整え、世の動向を把握するべく情報収集に勤しみ、また己に対する情報かく乱すら行っている。

「若(指信忠)之初動令人稱許。命令一出,一兩日內就能出陣,無人能及。這正彰顯了擅長閃電戰的織田軍的風采吧?」

「若様(信忠のこと)の初動はお見事。号令一下、一両日程度で出陣できたのは他にいない。まさに電撃戦を得意とする織田軍の面目躍如といったところかな?」

「也不能這麼樂觀啊!九鬼水軍艦船的航速本應是機密中的機密,卻聽說從某處洩漏出來了!」

「そう暢気(のんき)な事も言ってられないぞ! 九鬼水軍が擁する艦船の航行速度は秘中の秘であるはずが、どこかしらから漏れたって話だからな!」

對於正在悠閒發表感想的靜子,長可焦急地插話。正如長可所言,靜子已被信長召見,預定要接受有關機密洩漏的訊問。

のんびりと感想を述べている静子に対し、長可が焦った様子で口を挟んだ。長可の言葉通り、静子は信長から呼び出しを受けており、機密情報漏洩に関する事情聴取を受ける予定になっている。

尤為致命的是,洩漏出具體數據:若步調一致從尾張出發到敵方里見家所治的安房,大約要二十天……這種數字已外洩。

とりわけ致命的なのは足並みを揃えた状態で尾張から、敵地こと里見家が支配する安房(あわ)までおよそ二十日(・・・・・・)掛かるという具体的な数値が漏れていることだ。

無論裝備多先進,只要能預測何時從何處通過,奇襲就容易實施。因此位於安土的信長,在諸將催促下召見了靜子。

如何に最新式の軍備を持っていようと、いつ何処を通るかが予測できるのであれば奇襲を掛けることも容易い。ゆえに安土にいる信長は、諸将にせっつかれる形で静子を呼び出すに至っていた。

「勝藏君還是太天真了呢。」

「勝蔵君もまだまだ甘いね」

「啊?」

「あん?」

「你以為在自己出陣前夕,若會不知道我被召到安土嗎?」

「自分の出陣直前になって私が安土へ呼び出されることを、若様が知らないと思う?」

被指出後長可回想起來。靜子是後勤核心且難得的參謀,既然他被從自己軍隊牽走,信忠不可能不知情。

指摘されて長可は思い返す。兵站の中枢であり、得難い参謀でもある静子が自軍から引き剥がされるのだ、それを信忠が把握していないはずがない。

儘管如此,信忠既沒有向信長抗議,也沒有挽留靜子,而是乾脆前往軍港與九鬼水軍會合。

それにも拘わらず信忠は信長に対して抗議するでもなく、静子を引き留めることもせずにさっさと九鬼水軍と合流すべく軍港へと向かっている。

與信忠交情尚久、又了解他性格的長可並不認為他會樂觀行軍。在遭受近期的失利後,他已不再輕視任何敵人。

それなりに付き合いが長く、信忠の性格も理解している長可は、彼が楽観的に軍を進めているとは思わない。喫緊の敗北を受けて、彼はいかなる敵であろうと侮ることが無くなっていた。

「啊!」

「あっ!」

到此長可意識到他朦朧感到的不安。關於這次的機密洩漏事件,無論是信忠或是靜子,都有顯得不像他們本人的異常之處。

ここに至って長可は漠然と抱いていた違和感を自覚した。今回の機密漏洩事件に関しては信忠にしても静子にしても、彼ららしくない点が目立つ。

正因為是幾乎可稱為至親的親密關係,才會察覺到那股違和感,外人根本不可能注意到。換句話說,這實在對敵人太過有利了。

身内とも言える親しい間柄だからこそ気付ける違和感ゆえ、部外者では到底気付き得ないことだろう。つまり余りにも敵にとって都合が良すぎたのだ。

「告訴你一件好事。人就是會把自己辛苦取得的情報當成真的。」

「良いことを教えてあげる。人ってのは自分が苦労して得た情報を、本物だと思い込むんだよ」

「等、你不會吧!」

「って、お前まさかっ!」

「呵呵?若讓上樣久等恐怕要挨罵了,快點吧。」

「はてさて? 上様を待たせるとお叱りを受けちゃうからね、急ごうか」

靜子以眼神制止了剛要脫口而出的長可,然後催馬加速。長可明白那不是能在可能有他人耳目之處說出口的事,雖感不服卻還是跟在靜子身後。

思わず何かを口にしかけた長可を目で制して静子は馬の速度を上げた。何処に他人の耳目があるとも知れない場所で口にすべきことではないと理解した長可は、釈然としないながらも静子の後を追う。

靜子到達安土後的行動也顯得怪異。明明早早入城,卻在傍晚前才向信長發出先行的通報。

安土に着いてからの静子の行動も妙な点が目立った。早々に安土入りしていながら、信長に対して先触れを出したのが夕刻寸前という有様だ。

對習慣早作行動的人來說,顯然她對與信長的會面有些畏縮。

何事も早め早めに行動する彼女を知る者からすれば、明らかに信長との面会に対して気後れしているように見えた。

(好事多磨。事事順利時反而更要小心。)

(好事魔多しってね。物事が思い通りに進んでいる時こそ気を付けないとね)

對於靜子的此番行動,諸將的反應大致分成兩派:一方如信長與堀,明知她另有盤算仍故意配合;另一方則暗自竊喜認為她犯下了首度的大失誤。暗中窺視眾將的長可,極力忍受著那些可憐傢伙在不知自己正被靜子玩弄下得意洋洋的滑稽模樣。

この静子の行動に対して、諸将の反応は大きく二つに割れた。一つは信長や堀のように静子が画策していることを承知の上で、敢えて乗っている人間。他方は静子が初の大失態を犯したとほくそ笑む者達だ。居並ぶ諸将を盗み見ていた長可は、静子の手のひらで転がされているとも知らず得意満面になっている哀れな連中の滑稽さに必死で耐えていた。

「好極了,來得正好」

「よくぞ参った」

他極力壓抑笑聲是因為正在與信長謁見。再怎麼放肆如長可,若在信長面前放聲大笑也免不了被責難。他忍住,等待那個註定到來的揭曉時刻。

声を必死で噛み殺しているのは信長との謁見中であるためだ。いくら傍若無人を絵に描いたような長可であっても、信長を前にして爆笑しては顰蹙(ひんしゅく)を免れない。いずれ訪れる種明かしの時を信じて彼は耐えた。

「首先為聯絡遲了致歉。突如被召,準備來不及。」

「まずはご連絡が遅れましたことをお詫び申し上げます。突然のお呼び出しに、支度が間に合いませんでした」

「無妨。那麼,這次你打算搞甚麼?」

「構わぬ。それで、此度は何を企んだ?」

「關於此次並非出自於我。全都是若樣親自策劃的。」

「今回(・・)に関しては私ではありません。全て若様の手による策でございます」

「想必是如此。照你出的計策總覺粗糙,沒有你那等失誤作餌恐怕做不成吧。」

「そうであろうな、貴様の策にしては粗が目立つ。貴様の失態という餌無しでは成らぬであろう」

信長與靜子的對話一出,諸將間便掀起了動盪。大家原本鐵了心以為靜子被召到安土城是要為情報外洩負責並受到訓斥。

信長と静子の会話を受けて、諸将の間に動揺が走った。今回静子が安土城まで呼び出された理由は、情報漏洩に関する責任を問われ叱責されるためだと信じ切っていたからだ。

然而一揭開蓋子,竟然是雙方心照不宣的鬧劇,這種事讓人無法不感到震驚。

それが蓋を開けてみれば、双方納得ずくの茶番であったというのだ。驚くなという方が無理であろう。

「向來擺佈他人的你,現在被擺佈的感覺如何?」

「いつも人を動かしていた貴様が、動かされる立場になった気分はどうだ?」

「意外地並不壞。所謂『三日不見,當以刮目相待』正是如此。」

「存外悪くありません。『男子三日会わざれば刮目してみよ』とはこのことですね」

「那就把這話傳給我那愚兒吧。」

「それは愚息にこそ伝えてやれ」

「我不能就此對仍有成長空間的若樣一味放言讚美。曾向我求教的若樣如今能在無我助之下邁步前行,作為師者再無比此更欣慰之事了。」

「まだまだ伸びしろを残されている若様をここで手放しに褒めるわけにはいきません。私の教えを請うておられた若様が、私の助けなしに歩みだされたのです。師としてこれほど嬉しいことはありません」

那是靜子發自內心的感受。從幼時就教導信忠諸多事,如今他竟能在未再依賴靜子協助下自立成長。

それは嘘偽りのない静子の気持であった。幼いころより様々なことを教え聞かせていた信忠が、いつしか静子の手助けを借りずに独り立ちしてゆく。

雖有一絲寂寞,但較之更令她驕傲的是他的成長。因此她也才會加入那套甚至欺瞞盟友的策劃,送行此刻正前往東國的信忠。

一抹の寂しさはあるものの、それよりも彼の成長が誇らしかった。それ故に味方をも欺(あざむ)く策に乗り、今ごろ東国へと向かっている信忠を見送ったのだ。

「如此一來若樣又長進了。我想我也不必再親自引領他了吧。」

「これでまた若様は成長されました。もう私が手を引く必要も無いのでしょう」

「是嗎。既然如此,趁你閒來我有一件事要託付。作為對連我也被你瞞著的代價,應該算便宜吧?」

「そうか。ならば手隙となった貴様に一つ頼みごとをするとしよう。なに、わしにまで黙っていた対価としては安かろう?」

信長咧嘴帶著頗為愉快的笑容說出代價。雖然明顯是在取樂,但以『代價』之名向周遭施加印象的手法頗有心機。

にやにやと実に愉快げな笑みを浮かべながら信長は対価を口にする。面白がっているのは明白だが、対価という名目を周囲に印象付けているのは手が込んでいる。

「關於從伊達家那裡預來的人質,由你負責照顧。」

「伊達家より預かった人質について、貴様が面倒を引き受けよ」

就這樣,信長的計策成形:把來自伊達家的受預人質送到織田領內最安全的尾張,並配以最強的護衛。

こうして伊達家からの人質を、織田領内に於いて最も安全な尾張に最強の護衛付きで送り届ける信長の策は成った。

在戰國時代,人質是對方不敵對的保證。然而人質並非僅是紙上的憑證;為免對我方留下壞印象,會受厚待,若有才幹者甚至會接受培養,成為未來側近的人選。

戦国の世に於ける人質とは、相手に対して敵対しないことを約束する保証であった。しかし人質は単なる証書代わりの存在では無い。我が方に対する悪印象を抱かれぬよう厚遇し、有能であれば将来の側近候補として英才教育さえ施すのだ。

其中最典型者是真田昌幸,正因武田信玄毫不吝惜地灌輸他各種知識,才有今日之成就。

その最たる人物が真田昌幸であり、武田信玄が己の持つ様々な知識を惜しげもなく叩き込んだからこそ、今日の彼がある。

被列為戰國三英傑之一的德川家康,少年時期亦在今川家度過並受厚待。今川家當主義元令家康接受軍事訓練,且在元服時擔任烏帽子親(實質上的後見人),想將他培養為今川家的重臣。

戦国三英傑に数えられる徳川家康も、少年時代を今川家で過ごし厚遇されていた。今川家当主である義元は家康に軍事訓練を積ませ、また元服の折には烏帽子親(えぼしおや)(実質的な後見人)を務め、今川家の重臣に育て上げようとしていた。

如此一來,提到人質雖讓人聯想到籠中之鳥,但只要本國不背叛寄養主,憑一己才幹也有可能立足成名。

このように人質と言うと籠の鳥であるかのような印象を持つが、国許が寄親を裏切らない限り、己の才覚一つで身を立てることが出来る可能性を持っていた。

在處理人質方面,靜子以景勝建立了出色的實績。她除了培養出長可與才蔵等多位人材外,還開始辦學,逐漸受到教育者的肯定。

そして人質の扱いについて、静子は景勝という出色の実績を打ち立てた。彼以外にも長可や才蔵など数多くの人材を育成し、また学校運営を始めたことにより教育者としても評価されつつあった。

透過向有志者不問身分而積極開放教育之門,尾張的生產力之高令其他地區難以匹敵。

希望者には身分を問わず、積極的に教育の門戸を開くことで尾張の生産性の高さは他の追随を許さない。

除了這些實利面向外,被主君託付人質亦是信任的證明與一種榮譽。然而若只有靜子被過度重用,不管她多有實績,人之常情便會生出不悅。

そういった実利的な面とは別に、主君より人質を預けられるというのは信頼の証でもあり、名誉とされる。余りにも静子ばかりが重用されれば、如何に彼女が実績を持っていようとも面白く無いのが人の常。

因此信長在委託人質時,採取名義上像是輕微懲罰的形式以達平衡。再者,信長在一見到伊達藤次郎(後來的政宗)時便有了想法。

故に信長は人質を託す際に、名誉では無く軽い罰としての形式をとる形で釣り合いを取ったのだ。それに信長は伊達藤次郎(後の政宗)を一目見るなり思う。

雖然行為有些古怪,但若把這名精明、才智令人驚豔的少年交給靜子,可能會有有趣的結果。

やや奇矯な言動が目立つものの、利発さについては目を見張るものがある少年を静子に預ければ面白いことになりそうだと。

(上樣愛欲含糊其詞的時候,向來不會有好事發生。)

(上様が含みを持たせている時って、碌なことがないんだよね)

靜子察覺到信長有陰謀,然而可悲的是作為臣下她無權拒絕。除了信長的用心之外,她自己也懷有想一窺未來伊達政宗風貌的私心。

信長が何かを企んでいるのは察していたが、哀しいかな臣下たる静子に拒否するという選択肢は無い。そんな信長の思惑とは別に、将来の伊達政宗を見てみたいという下心も多分にあった。

「順帶一提,若樣的計策到底是什麼?據你和上樣的談話,那個讓北條上鉤的信息是假的,對吧?」

「ところで若様の策って何だったんだ? 上様との話じゃ、北条がまんまと掴まされた情報は偽物なんだよな?」

靜子在思索如何處置伊達藤次郎及其家臣時,長可從旁拋出問題。對長可而言,藤次郎並非特別引人興趣,但信忠竟能用計騙過信長這點令他在意。

静子が伊達藤次郎とその家臣たちの扱いについて思いを巡らせていると、長可が横から質問を投げかけてきた。長可にとって藤次郎はさほど興味を惹かれる存在ではなく、信忠が信長すら欺いた策というのが気になった。

從靜子的語氣判斷,她似乎是知情並配合信忠的計策,雖未必知悉全貌,但應該掌握大致輪廓。

静子の口ぶりから判断するに、彼女は知っていて信忠の策に乗っかっている節があり、全容とはゆかないまでも大枠は把握しているのではと判断した。

「沒錯,從尾張到北條本據地相模國坐船大約要二十天這件事本身是真的」

「そうね、尾張から北条の本拠地である相模国まで船で二十日ほど掛かるって言う話自体は本当なの」

「那麼若樣每次為了補給靠港就有被奇襲的風險?即便想把敵軍分散出擊逐一殲滅,這也算是拙劣之策吧?」

「それじゃあ若様は補給のために港へ立ち寄るたび、奇襲される恐れがあるってのか? 敵の軍を小出しにして各個撃破を目論むにしても、流石に下策だろう?」

多虧靜子推動的技術革新,九鬼水軍雖然擁有無與倫比的戰力,但絕非所向披靡。若遭箭火攻擊,船會起火,人被射中也會有死傷。

静子が推し進めた技術革新のお陰で、九鬼水軍は比類なき戦力を誇ってはいるものの、決して無敵の存在ではない。当然矢を射かけられれば船は炎上するし、人に当たれば死傷もする。

戰時根本調不來熟練的船員。若有可能,最好避免不必要的戰鬥,將決戰保留在本土進行。

戦時中に熟練の船員など調達できるはずもなく。可能であるならば余計な戦闘を避け、本土決戦に臨むというのが望ましい。

「若様在此處設了陷阱。說二十天左右,是指曾帶著載到極限的商船同行時所需的天數」

「若様はここに罠を仕込んだの。二十日程って言うのは、限界まで積み荷を載せた商船を伴っていた際の日数よ」

「嗯?那樣在當地補給物資會比較容易,作為商船若受艦隊護衛航行也安全。這次難道不也是帶商船隨行嗎?」

「ん? 現地で物資を調達しやすくなるし、商船としても船団に護衛されれば道行は安全だ。今回も商船を随伴するんじゃないのか?」

「這就是我們兵站軍的存在意義。各地港口附近已設有集積物資的基地,安排持續將補給線往前推進。換言之只用純軍船也能行軍,補給次數降到最低,若強行三天,遲則五天就能奇襲對北條而言為海軍要地的里見領」

「そこが我ら兵站軍の存在意義だよ。既に各地の港付近には物資を集積した基地があり、継続して補給の最前線を押し上げていく手筈なの。つまりは純粋な軍船のみで行軍が可能であり、補給の回数も最小限で済むから無理をすれば三日。遅くとも五日あれば北条にとっての水軍の要である里見領を急襲できるのよ」

「什麼嘛!就算催馬也來不及,根本沒法應對。果然是事後才知道的事啊」

「なんだそりゃ! 早馬を仕立てても間に合わないんじゃ、手の打ちようがねえじゃねえか。だから後の祭りってことか」

事到如今即便間諜知悉真相也無法傳達。正如長可所言,催馬連夜趕路也比不上軍船的速度。

ことがここに至っては間者が真実を知ったとしても伝える手段が無い。長可が口にしたように、早馬を乗り潰して夜通し駆けたところで軍船の速度には及ばない。

「嗯,就算此次情報傳到了對方,或是沒傳到,也不會造成太大困擾吧」

「まあ、仮に今回の情報が相手に伝わっていても、いなくても然程困ることはないでしょうね」

「……是強襲上陸作戰嗎」

「……強襲上陸作戦か」

長可沉思片刻後喃喃道。所謂強襲上陸作戰,乃由登陸艦與護衛艦構成的艦隊實施的上陸作戰。

少し考えてから長可は呟いた。強襲上陸作戦とは揚陸艦(ようりくかん)と護衛艦からなる船団によって実施される上陸作戦だ。

登陸艦配有裝甲板與可前進後退的螺旋槳,縱使沒有大型港灣設施,也能直接登上海岸讓兵員與軍備上陸。

揚陸艦は装甲板と前進後退が可能なスクリューを備えた艦艇であり、大規模な港湾施設が無くとも直接海岸に乗り上げて兵員や軍備を上陸させることが出来る。

也就是說敵人不能只守護港口,而被迫警戒整段廣闊的海岸線,必然導致每處可配置的兵力大幅減少。

つまり敵は港だけを守っていれば良いという状況から、広大な海岸線全てを警戒する必要に迫られ、必然的に一か所当たりに配置できる兵力が激減してしまうことになる。

「我推測,若様會先將以旗艦為首的艦隊展示在里見眼前。等敵人注意力集中在那邊時,便從別處海岸登陸的部隊夾擊」

「予想だけれど、若様はまず旗艦をはじめとする船団を里見の目前に見せつけると思う。そして敵の意識がそちらに集中している間に、別の海岸から上陸した軍と挟み撃ちにするだろうね」

「若放任主力艦隊,港口會被奪;若集中兵力應對艦隊,則各處登陸的部隊會四處蹂躪陸地。真是靜子喜歡用的齷齪手段。付諸實行時往往無可奈何,實在相似」

「主力の船団を放置すれば港湾が落とされ、逆に船団に対処しようと兵力を集中させれば各所から上陸した軍が陸地を荒らしまわる、か。実に静子が好みそうな厭らしい手だな。実行に移された時点でどうしようもない処が実に似ている」

「應該說算是有效的作戰」

「効果的な作戦と言って欲しいね」

「也可以這麼說」

「そうとも言うな」

與長可互相打趣的同時,兩人朝著等待人質伊達藤次郎的安土別邸前進。

長可との軽口を応酬しながら、二人は人質である伊達藤次郎の待つ安土の別邸へと向かった。

不過被安排的落腳處在尾張,這裡安土只是臨時宿所。只要完成讓靜子相見人質的面見,便能比較自由地度日。

とは言え、預かり場所は尾張であり、ここ安土は仮宿に過ぎない。人質として静子に対する顔見せさえ終えれば、比較的自由に過ごす事が出来る。

「說起來,伊達家的奇才藤次郎君到底是個怎樣的孩子呢?」

「さてさて伊達家の奇才、藤次郎君はどんな子かな?」

「嗯,哪裡聽來他是奇才的傳聞?一般被當作人質的多半是溫順又耐苦的孩子啊」

「ん、奇才なんて噂をどこで仕入れたんだ? だいたい人質に出されるのは大人しく我慢強い奴と相場が決まってるんだがな」

「太天真了。上様笑著把他推過來,絕對是個難纏的傢伙」

「甘いなあ。あの上様が笑顔で押し付けてきたんだから食わせ者だよ、絶対」

「……好吧,吃苦的又不是我」

「……まあ、苦労するのは俺じゃないしな」

「咦?好像屋敷周圍有點騷動?發生什麼事了嗎?」

「あれ? なんだか屋敷の周りが騒がしくない? 何かあったのかな?」

「難道人質逃走了……但沒那種殺氣,倒像是在困惑?」

「まさか人質が逃げた……にしては殺気だって無いな。どちらかというと困惑している感じか?」

「先去問問看吧?」

「とりあえず聞いてみましょう?」

屋敷正門附近聚集了許多人,靜子將目光落在那個發號施令的人身上。

屋敷の表門付近に多くの人が集まっており、静子はその中であれこれと指示を出している人物に目を付ける。

伊達家的側近也注意到靜子等人的存在,門衛兵致以最敬禮,由此判斷出她們身分不凡。

伊達家の側近たちも静子たちの存在に気付いており、門衛の兵士が最敬礼をしたことから身分の高い人物であると理解した。

被視為中心的人青年高聲吩咐讓路,整理儀容後向靜子深深低首。

中心人物と目される青年は声を張って道を空けるように指示し、居住まいをただすと静子に深く首(こうべ)を垂れた。

「初次見面。某為主君伊達藤次郎的近習,片倉小十郎是也」

「お初にお目にかかりまする。某は主君、伊達藤次郎が近習、片倉(かたくら)小十郎(こじゅうろう)と申します」

「失禮於馬上。我想諸位已有所聞,我是負責照管諸位的近衛靜子。看起來似乎有些困擾,發生了什麼事?」

「馬上より失礼仕ります。既にお聞き及びかと思いますが、私は皆様をお預かりすることになった近衛静子と申します。何やらお困りの御様子、如何されました?」

周遭似為伊達家家臣的人臉色瞬間齊齊改變。但小十郎用手示意制止,然後開口說道。

伊達家の家人たちと思われる周囲の人々の顔色がさっと一様に変わった。しかし、それを小十郎が手で制して口を開いた。

「非常抱歉,讓伊達家丟臉實在過意不去,但我方主君藤次郎大人說要四處散步,之後就不見蹤影了」

「申し訳ございません。伊達家の恥を晒すようで心苦しいのですが、我が主たる藤次郎様が辺りを散策すると言ったきり姿が見えぬのです」

聽到小十郎那張苦得像嚼了苦蟲的表情與話語,靜子心中不禁想捂額。

苦虫を噛み潰したような表情の小十郎の言葉に、静子は内心頭を抱えたい気分になるのであった。