戦国小町苦労譚
1577年六月上旬
帝大為震怒。原因不言而喩,正是本願寺教如佔據石山本願寺。此次織田家與本願寺的和解由朝廷居中仲裁。
帝は激怒していた。原因は言うまでもなく本願寺教如による石山本願寺占拠であった。此度(こたび)の織田家と本願寺との和睦に於いては、朝廷が仲介を執り行っている。
雙方長年懷有深仇大恨,互相對峙已久,這場和解將為兩大勢力的紛爭畫上句點;同時也是向日本各方豪族彰顯朝廷仲裁權威不容動搖的千載難逢良機。
互いに深い確執を抱え、長きに亘って争った二大勢力のいくさに終止符を打つ。それは調停を担う朝廷の権威が揺ぎ無きものであると、日ノ本中の有力者たちへ示せる絶好の機会でもあったのだ。
因此,事到如今教如所為成了可謂將此前一切安排化為烏有、不可原諒的暴舉。
ゆえに、事がここに至って教如がしでかした事件は、これまでのお膳立てをすべて無に帰す赦しがたい暴挙となる。
教如大概是想向掌握本願寺的下間頼廉報復,卻是當面向信長挑釁,甚至等於向促成和睦的朝廷吐唾沫。
教如としては本願寺を掌握している下間(しもつま)頼廉(らいれん)に対する意趣返しのつもりだろうが、信長に対して真正面から喧嘩を売り、あまつさえ和睦を取り持った朝廷に対しても唾を吐く行為になるのだ。
今上即正親町天皇曾賜予本願寺門跡之位(高位寺格之意),教如向朝廷反抗宛如被自己所養之犬咬手般的屈辱。
今上(きんじょう)帝である正親町(おおぎまち)天皇は本願寺に対して門跡(もんぜき)(位階の高い寺格のこと)を与えており、その教如が朝廷に弓を引くことは飼い犬に手を噛まれるが如き屈辱であった。
因此帝震怒至極,面色由紅轉青,憤怒幾乎難以抑制。
それゆえ帝は激情の余り顔色が赤を通り越して青く見えるほどに憤怒を高ぶらせていた。
「已不可再縱。朕親率軍討取大逆者!」
「もはや看過ならぬ。余自らが軍を率いて大逆人を討ち取ってくれよう!」
若帝親自率軍,即屬御親征,一旦出征便容不得半點敗績,將成為生死攸關的慘烈戰事;而帝所能動員之官軍,並不足以支撐此等戰力。
帝が直接軍を率いるとなれば御親征(しんせい)であり、万に一つでも負けが許されない壮絶ないくさとなる。帝が率いるべき官軍にはそこまでの戦力が期待できない。
了解這種家財狀況的中宮與諸公家,正極力諫止天皇。
そういった懐事情を把握している御台所(みだいどころ)や公家衆は必死になって天皇を諫めていた。
「帝大為盛怒,懇請近衛大人出力相助」
「斯様(かよう)に帝は大層ご立腹であり、近衛様のご尽力を賜りとう存じます」
前久亦理所當然地掌握帝之狀態。公卿們對此畏懼不已,擔心一動便惹出大禍,結果多數採取觀望姿態。
帝の状態については、前久(さきひさ)も当然把握していた。公卿(くぎょう)(朝廷の最高幹部)らは、そんな帝の様子に戦々恐々としており、藪をつついて蛇を出すことを恐れるあまり日和見が続いているのだ。
一旦御親征,便需龐大經費。雖說如今窮困無以為生的公家已不多,但要維持各項典禮與政務已是勉強為之。
いざ御親征となれば莫大な戦費が発生する。日々の生活に窮するような公家は少なくなったとは言え、行事や政を滞りなく運営するので精一杯という状況だ。
在此情況下,絕對不容許敗北,且即便勝利也無額外利益可得,自然不可能籌出那等戰費。
そんな折に絶対に敗北が許されず、また勝利したところで別段利益が発生するわけでもない戦費など捻出できるはずがない。
於是公卿們思索是否能動搖織田家,今日也繼續向前久懇求相助。
故に公卿たちは織田家を動かせないものかと思案し、今日も今日とて前久に縋(すが)るのだった。
前久本就為五摂家首席,經濟實力無出其右,又身居關白等公家至高位,發言力益發強大,雖有人對此不滿,卻也無能為力。
ただでさえ五摂家筆頭の家柄であり、経済力に於いては並ぶものなし、更には権力でも関白という公家の最高位に任じられている前久の発言力がいや増すのを面白くないと思う者もいるのだが、さりとて無い袖は振れないという葛藤がある。
「憑帝之心情可想而知,但集結官軍之事對我等而言,實在過於沉重」
「帝のご心中は察するに余りあるが、官軍の結集など我らには荷が勝ちすぎるというもの」
「此事對織田大人亦當不可原諒,盼近衛大人代為斡旋,使織田大人出陣可否?」
「此度の件は織田殿にとっても許し難き行いでありましょう? ゆえに近衛様のお口添えをいただき、織田殿に御出陣頂くわけには参りませぬか?」
「織田大人亦怒不可遏,然考量朝廷面子而不願輕動。若硬要其出陣,朝廷恐將招致昔日威光已失之非議」
「織田殿とて怒り心頭でおられるでしょうが、朝廷の面子を慮(おもんぱか)って動かれぬのです。それを押して御出陣願うとなれば、やはり朝廷にはかつての威光などないとの誹(そし)りを受けることでしょう」
「若能使陛下放棄御親征……」
「それでも御親征を断念して頂けるのならば……」
「此外,這是來自我義女傳來的情報,似乎此次事件有愚人暗中操縱的嫌疑」
「それにこれは私の義娘(むすめ)から齎された情報なのですが、どうにも此度の件には痴(し)れ者の暗躍があるようです」
「何!若是來自號稱織田大人心腹之貴女的報告,那便該可信了」
「なんと! 織田殿の懐刀と名高いご息女よりの報であれば、確かなのでしょうな」
事件剛發生時信長與前久皆對教如之暴舉勃然大怒;但隨著冷靜,兩人對教如的行動生出違和感:教如若放棄自身不被掌握之優勢去搶奪,卻換來被拆除多處防禦設備的石山本願寺,得不償失。
事件発生当初は信長も前久も教如の暴挙に激昂した。しかし、頭が冷えてくるに従って教如の行動に違和感を抱く。教如にとって己の所在を掴まれていないという優位性を捨てた末に手に入るのが、防衛設備をいくつも解体された石山本願寺では割に合わないこと甚だしい。
再者此番和睦由朝廷主導,縱使從織田家奪回石山本願寺,也可能遭朝廷撤銷門跡身分,甚或被定為朝敵,面臨全國討伐的未來。
更に今回の和睦については朝廷主導で行われているため、仮に織田家から石山本願寺を取り返したところで、朝廷より門跡寺院の取り消しや、延(ひ)いては朝敵として日ノ本全土から攻められる未来が待っている。
明知無論如何都無出路,仍囚禁朝廷代官並強行奪回本願寺,前久思之不解,認為無論教如有何大義,其行動難以自圓其說。
どう転んでも未来が無いにもかかわらず、それでも朝廷の代官を幽閉した上に本願寺奪還を強行した。教如にどんな大義があったとしても、彼の行動を正当化するには至らないだろうと考えた前久は首を傾げることになる。
「自朝廷出面斡旋和解以來,織田大人已撤去包圍本願寺之兵。換言之,教如本可在更早時機佔領,何以偏在交接前夕起事,令人疑惑」
「織田殿は朝廷主導にて和睦を取り持つようになって以来、本願寺を包囲していた兵を引いておられました。つまり、教如側としてはもっと早い段階で占拠することも可能だったはず。何故引き渡し直前の今になって蜂起したのかが気にかかります」
「正如近衛大人所言,教如的用意實難捉摸」
「確かに、近衛様のご指摘にあるように教如めの狙いが判りませぬな」
與朝廷介入和睦同時,信長下令被派去包圍本願寺的佐久間等人撤兵。
朝廷が和睦に介入したのと時を同じくして、信長は本願寺を包囲していた佐久間達に兵を下げるように命じた。
此舉乃為回應本願寺一方之請求,且由處於有利地位的信長先行讓步,以顧全朝廷顏面。
これは本願寺側の要望に対して、有利な側である信長が率先して譲歩を見せることにより朝廷の顔を立てるためである。
縱然織田軍備有常備軍,但並非全員皆為常備。自願兵、湊數的徵募兵、借陣者等各色人等混雜其中。
如何に常備軍を配備している織田軍とはいえ、全ての兵員が常備軍かと言えば勿論そうではない。志願兵や数合わせの徴募兵、陣借り者等実に様々な人々が混在している。
這些人僅在軍中存在便消耗軍糧。對於陣借者而言,乃是戰力的強行推銷,原不需負擔其後勤,然佐久間等為維持紀律仍向其供給食糧。
これらの人々は、ただそこに存在するだけで兵糧を消費し続ける。陣借り者については、戦力の押し売りであるため面倒を見てやる必要等無いのだが、佐久間達は規律を維持するため彼らにも食料を配給していた。
解除包圍並撤兵後,能使大量人員解散,從而大幅節省軍隊維持費用。
包囲を解いて兵を下げるとなれば、多くの人員を解散させることが出来るため、軍隊の維持費を大きく節約することができるのだ。
換言之,信長此命令乃一箭雙鵰:避自身消耗,亦藉此向朝廷示好。
つまり信長の命とは、自分たちの消耗を避けつつも、朝廷に恩を売るという成果を得られる一石二鳥の方針だった。
以此為序幕,織田軍與本願寺雙方透過朝廷逐步靠向和解;在此最終階段,卻突發教如奪取本願寺的事變,成為現狀。
こうした動きを皮切りに、織田軍側と本願寺側が朝廷を介して互いに和睦へと歩み寄っていた。その最終局面に於いて、突然教如による本願寺乗っ取りが発生したというのが現状であった。
「無論如何,得先瞭解朝廷所派代官之狀況,以及教如會提出何等要求,應對策略方可有所不同」
「いずれにせよ、朝廷から派遣されている代官殿の御様子を知るのと、教如がどのような要求を突きつけてくるか次第で対応が変わるでしょうな」
「承知。於有進一步動向之前,向眾人傳達暫觀望之意」
「承知いたしました。何かしら動きがあるまで様子を見ると言うことを皆に伝えるとしましょう」
「至於帝,我會前去慰撫。使者當將此意告知諸人」
「帝については私の方から慰撫させて頂こう。ご使者殿はその旨を皆に伝えられよ」
屬於前久派閥的公家所遣使者露出放心之色,前久並未錯過他離去時一瞬的表情。
前久の派閥に属する公家が遣わせた使者は安堵の表情を見せる。その立ち去り際の一瞬の表情を前久は見逃さなかった。
即便多虧信長京中治安得以穩定,公家們的生活仍遠非優渥,尤其多數屬下級貴族者,其生活有時甚至不若豪農。
信長のお陰で京の治安が安定しているとはいえ、公家たちの生活は優雅から程遠いのが現状だ。特に公家の大多数を占める下級貴族たちの生活は、ともすれば豪農にすら劣ることがある。
即便如此,貴族自有體面與義務,一旦官軍成軍,將更迫使其拮据之家計雪上加霜;換言之,帝的行動對他們而言無異於災難。
それでも貴族には貴族の面子と義務があり、官軍が編成されるとなれば厳しい懐事情を更に逼迫(ひっぱく)させることは言うまでもない。つまり帝の行動は、彼らにとって災難でしかないのだ。
(至少從我等派閥來看,似乎可以避免有人做出背叛之舉)
(少なくとも我らの派閥からは、裏切り者を出さずに済みそうだ)
前久早在早期便掌握到這次騷動是由不贊成織田家統一日本的人所謀劃。
前久は今回の騒動が、織田家に拠る日ノ本統一を良しとしない者たちによって画策されていることは、早い段階から掴んでいた。
他雖然事先取得了情報,卻沒有採取阻止的行動。
事前に情報を得ていた前久だが、彼はそれを掣肘(せいちゅう)するような行動を取らなかった。
因為計畫本身荒唐無稽,幾乎不可能實現。即使萬一成功,也不足以顛覆織田家的天下,而且一旦暴露,全家宗族滅亡的風險與可能獲得的利益根本不成比例。
なぜなら計画自体が荒唐(こうとう)無稽(むけい)であり、およそ実現する可能性が低かったからだ。万が一成功したとしても、織田家の天下を覆すには至らない上に、露見すれば一族郎党が破滅するというリスクに対してメリットが釣り合わないものだった。
因此前久判斷這整個計畫本就是一個以洩露為前提針對自己的陷阱。然而,計畫實際上還是被執行了。
ゆえに前久は、この計画自体が漏洩することを前提とした自分に対する罠だと判断していた。しかし、実際に計画は実行された。
(就算是打賭也太不利了。幕後黑手是怎麼想要收場這件事的呢)
(博打(ばくち)にしても分が悪い。黒幕はこの一件の落としどころをどう考えているのだろうか)
前久在使者離開後的室內沉思良久。
前久は使者の立ち去った室内にて、しばし思索に耽(ふけ)っていた。
他設想最壞的情況,確認自己的派閥是否已被瓦解,結果發現對方的手還沒那麼伸得那麼遠。
最悪の状況を想定し、自分の派閥が既に切り崩されているか確かめてみたが、彼らの手はそこまで長くないようだと言うことが判った。
既然如此,前久認為不必再顧忌,開始設計對那些為私欲惹事的愚人才施以鐵錘的方策。
ならば遠慮など要るまいと判断した前久は、我欲の為に面倒ごとを引き起こした愚か者に鉄槌を下す方策を練り始めた。
只有朝廷被教如的暴舉弄得慌張,信長並不怎麼在意,說到底他根本不把教如放在眼裡。
教如の暴挙に狼狽していたのは朝廷だけであり、信長は然(さ)して気にしていなかった。そもそも教如のことなど眼中に無いというのが本音だろう。
「若是有天皇下達的宣旨也未可否認,但沒有請求的情況下沒必要親自出面。朝廷既然已經介入,若不能了結此事就沒立場了吧。」
「帝より宣旨(せんじ)(天皇の命令書)があれば考えんでもないが、要請も無いのに出向く必要はあるまい。朝廷も介入したからには始末をつけねば立場がないだろうしな」
信長被配下諸將詢問如何處置教如,他帶著不耐回答道。對他來說,本願寺的事已經了結,現在教如再做什麼,本願寺復興也只是夢話。
配下の諸将より教如への対処を問われた信長は、面倒そうにそう答えた。彼にとって本願寺の件は既に終わったことであり、今更教如が何をしようと本願寺再興など夢物語でしかない。
與信長的抗爭結果導致本願寺門徒不再有昔日的凝聚力,反而分裂為追隨顕如與頼廉的溫和派,和同調教如主張的徹底抗戰的強硬派,彼此相互牽制。
信長との抗争の結果、今や本願寺門徒にかつての結束力は無い。それどころか顕如や頼廉に従う穏健派と、教如の唱える徹底抗戦に同調する強硬派とに分かれて互いに牽制し合うようになったからだ。
這是自本願寺和睦提上檯面以來,信長暗地進行離間工作的集大成。也就是對溫和派提供食料等物資與金援,使屬於強硬派的門徒相對陷入困窮。
これは本願寺との和睦が俎上(そじょう)に上がった時から、信長の手によって密かに行われてきた離間工作の集大成であった。即ち穏健派に属する門徒には食料をはじめとする物資や資金援助を行い、強硬派に属する門徒たちが相対的に困窮するよう仕向けていたのだ。
透過這些手段,原本應團結的本願寺門徒之間出現了經濟差距,生活寬裕的溫和派充滿厭戰情緒而避戰,反之生活困苦的強硬派思想更趨尖銳,採取更激烈的行動。
これらの工作によって一致団結するはずの本願寺門徒間に経済的格差が生まれ、生活に余裕の生まれた穏健派は争いを疎(うと)む厭戦(えんせん)気運に満ち、一方生活苦に喘ぎ困窮する強硬派はより思想を先鋭化し、より過激な行動を取るようになっていった。
因為極端言行與過激行動增加,強硬派遭到排斥,如今即便教如主張討伐信長,也只能響應他的恐怕只有那些對現狀不滿的強硬派。
極端な言動や過激な行動が目立つようになった強硬派は排斥され、今や教如が信長討つべしと唱えたところで呼応するのは現状に不平不満を抱いている強硬派のみだろう。
在朝廷為收拾事態奔走之際,靜子召來正在謹慎的四六。
朝廷が事態を収拾すべく奔走する中、静子は謹慎中の四六を呼び出していた。
「朝廷差不多該採取行動了吧。四六,你對我所出的課題有了答案嗎?」
「そろそろ朝廷が行動を起こす頃でしょう。四六は私の出した課題に対する答えを出せましたか?」
靜子所說的課題,是作為懲罰四六未經許可跟隨上杉家捲入家中紛爭而每天被課的事項。而就近期而言,課題是要四六就教如破壞和睦並據守寺內一事提出他自己的解決方案。
静子の言う課題とは、四六が上杉家のお家騒動に許可なくついていったことに対する罰として日々課されるものであった。そして直近では、教如が和睦を反故にして立て籠った件を、どのように決着させるのかについて四六なりの答えを出すという課題が出されていた。
這是個稍具難度的課題,靜子原本覺得即使不能給出結論只要能找出方向就很好,沒想到四六卻以堂堂之姿點頭表示同意。
少々難しい課題であり、答えが出せずとも方向性さえ見いだせていれば上々と考えていた静子の思惑に反し、四六は堂々たる態度で首肯してみせた。
「我認為此事的結局教如之死是難以避免的。但我認為主動率先攻擊本願寺是下策。即便失去昔日氣勢,本願寺門徒仍有十萬之眾,且寺內以贊成和睦的溫和派為主流,不能因為部分過激派起事就一律屠殺,否則難免遭到抨擊。」
「此度の件の結末として、教如の死は避けられないと考えます。とはいえ率先して本願寺を攻撃するのは下策と存じます。かつての勢いを失ったとは言え、それでも本願寺門徒は十万を数えます。そして本願寺内には和睦に肯定的であった穏健派が主流となっており、一部の過激派が蜂起したからと言って一律に虐殺すれば批判は免れませぬ」
「嗯嗯,首先你對現狀掌握得不錯。不過,上様並沒有顯示出要積極介入本願寺的樣子啊?你以為會發生一律屠殺的根據是什麼?」
「ふむふむ、まずは良く現状を把握できていますね。しかし、上様は本願寺に対して積極的に関与する様子を見せておられませんよ? 一律に虐殺が起こると判断した根拠はあるのですか?」
「我認為現今朝廷沒有能力討伐本願寺。既然沒有力量,理當向有能力者借力。也就是說,我推測可能會下達宣旨,命上様討伐成為朝敵的本願寺。」
「今の朝廷に本願寺を叩く力は無いと考えます。そして力が無いならば、有るところから借りるのが道理でしょう。即ち上様に朝敵となった本願寺を討つよう、宣旨が下されると思料しました」
「原來如此,觀察點不錯。不過其中似乎有些論理跳躍。我想,大概不會對上様下達宣旨吧。」
「なるほど、目の付け所は良いですね。しかし、少し論理の飛躍があるようです。恐らくですが、上様に対して宣旨が下されることはないでしょう」
「會有人在對立當事人上様之外組織官軍嗎?」
「対立の当事者たる上様を差し置いて官軍が組織されるのでしょうか?」
「這個問題要扣分。你在接受我的意見後,還沒先導出自己的想法就發問了吧?這種習慣不經意間很難養成,所以要時常注意。既然難得就一起想一想,這次是朝廷主導的和睦。若這個和睦被打翻,朝廷又無法收拾,反而求助於上様,想像一下在這情況下誰的顏面被最打擊?」
「今の問いは減点です。私の意見を受けて、それに対する自分なりの考えを導く前に問いを発していますね? これは意識して習慣付けないと中々身につかないので、常に心掛けるようになさい。折角ですから一緒に少し考えてみましょう、今回の件は朝廷主導による和睦です。これをご破算にされた上に、それに対する始末を付けられず、上様に頼った場合を想定します。この状況で一番面目を潰しているのは誰でしょう?」
被靜子指點後,四六察覺自己差點放棄思考去搶向靜子可能已有的答案,他一邊自戒自己的淺見,一邊努力思考,不願錯過靜子教導的機會。
静子に指摘され、四六は思考を放棄して静子が持っているであろう解答に飛びつこうとしたことに気が付いた。己の浅慮を自戒しながらも、静子が手ほどきをしてくれる機会を逃すまいと必死に思考を巡らせた。
「那樣的話,朝廷將失去立場。明明被雙方委託仲裁和睦,卻無法懲罰把和睦攪局的人,那朝廷便可被斷言已無資格擔任和睦仲介。」
「その場合、朝廷が立場を失います。双方から和睦を付託され間を取り持ったにもかかわらず、そのお膳立てをひっくり返した者を罰することが出来ないのであれば、もはや朝廷には和睦を仲介する資格なしと断じられるでしょう」
「做得好。上様是當事者,對朝廷而言會是惹麻煩的一方。朝廷應該會想避免唯一去請上様代為收拾善後這種情形。」
「良くできました。上様は当事者であり、朝廷からすれば迷惑をかけた相手になります。朝廷としては上様に後始末を願うということだけは避けたいはずです」
「然而,朝廷實際擁有的武力恐怕連攻入本願寺都困難。頂多就是撤銷門跡,並認定為朝敵而已吧?」
「しかし、実際に朝廷が持つ武力では本願寺に攻め入ることすら難しいでしょう。精々が門跡を取り消して、朝敵に認定するのが限度では?」
「分析得很好。不過那樣一來終究還是要靠外部力量討伐朝敵,朝廷的面子無法因此恢復。」
「良く分析できていますね。しかし、それでは結局朝敵を討つという外部の力を頼ることになり、朝廷の面子が回復されません」
四六又差點去搶靜子的答案,但在關鍵時刻忍住話頭開始思考,他在腦中試圖整理情勢有沒有遺漏。
またしても静子の持つ解答に飛びつきそうになった四六だが、すんでのところで言葉を飲み込み思考を巡らせる。彼は頭の中で何か見落としが無いか、一度状況の整理を試みた。
這次織田家與本願寺的和睦並非處於對等地位,織田軍與本願寺的戰事已呈消化戰態勢,勝負已基本底定。
今回の織田家と本願寺との和睦は対等な状況での和睦ではない。織田軍と本願寺とのいくさは既に消化試合の様相を呈しており、大勢は決してしまっている。
因此掌握本願寺實權的頼廉為了爭取較有利的和睦條件,迴避直接與織田家談判而請求朝廷居中仲介。
そこで本願寺を掌握している頼廉が、直接織田家との和睦交渉を避け、少しでも有利な和睦条件を結ぶべく朝廷に和睦の仲介を依頼したという経緯だ。
透過介入第三者,試圖將實質上的無條件投降軟著陸為附條件的敗北,結果織田家也無法撕毀朝廷的面子,只得作出讓步。
間に第三者を介することで実質的な無条件降伏から、条件付きの敗北へと軟着陸を試みた結果、織田家としても朝廷の顔を潰すわけにはいかず譲歩をすることになった。
朝廷先促成織田家的讓步後,接著向本願寺方面逼出讓步,逐步成功整合和睦條件。
最初に織田家の譲歩を引き出したことにより、次は本願寺側に譲歩を迫り、朝廷は見事に少しずつ和睦の条件をまとめつつあった。
本願寺的解除武裝也已完成,並以交出本願寺首領顕如與頼廉給織田家為交換解除包圍。就在只剩從本願寺撤出這一步時,行蹤不明的教如現身了。
本願寺の武装解除も済み、本願寺の首脳である顕如と頼廉の身柄を織田家に引き渡すことと引き換えに本願寺の包囲も解除された。残すは本願寺からの退去のみという段になって行方を眩(くら)ませていた教如が現れた。
他拘束了在本願寺內負責確認撤出並將參加引渡的朝廷代官,並以不知從何處搬來的武具、軍需物資及眾多僧兵為盾劫持並奪取本願寺。
本願寺の引き渡しに立ち会うべく本願寺内の退去確認をしていた朝廷の代官を拘束し、何処(いずこ)からか持ち込んだ武具や軍事物資と数多(あまた)の僧兵を盾に本願寺を乗っ取ったという状況だ。
朝廷派遣的代官未被釋放,安否不明。靜子指出那名代官很可能是教如的同謀,四六也同意這一看法。
朝廷から派遣された代官は解放されず、彼の安否は不明のままだ。静子は代官こそが教如を手引きした共犯者であろうと指摘しており、四六も同意見であった。
(未免也太巧合了。交出顕如與頼廉時,本願寺門徒的撤離也已開始。上様也命佐久間解除了包圍。為確認撤離順利,代官進入本願寺內,結果卻立刻武裝起義。大量武具、物資與眾多僧兵到底從何而來?最自然的解釋是他們混進了朝廷代官一行。)
(いくら何でも都合が良すぎる。顕如と頼廉の身柄を引き渡す際に、本願寺門徒の退去も始まっていた。それに合わせて上様は佐久間様に本願寺の包囲を解かせている。本願寺からの退去が滞りなく進んでいることを確認するため代官が本願寺内に入った途端に武装蜂起。大量の武具や物資及び多くの僧兵は何処からやってきたのか? 朝廷の代官一行に紛れて入り込んだと見るのが自然だろう)
對本願寺的解除武裝在較早階段就已進行,內部已無類似武器的東西。頼廉說服猶豫不決的門徒,逐一拆除本願寺的防禦設備,準備撤退。
本願寺に対する武装解除は早い段階になされており、内部には武器らしい武器は置いていない状況だった。頼廉は渋る門徒を説得して回り、本願寺の防衛設備を解体して退去の準備を進めていったのだ。
如果要固守城池,保留像護城堀和矢倉之類的防禦設施才會有利,然而他們卻等到那些完成之後才武裝起義,說不通。
籠城するのであれば堀や櫓といった防衛施設が残っている方が有利だと言うのに、それらが完了してからの武装蜂起というのだから理屈に合わない。
(朝廷方面不會承認自己委以信任而派去的代官竟然協助叛亂這樣的事實。無論如何都要嘗試用自家手段解決,但沒有資源就無能為力。從母親的話裡解讀,似乎會動用朝廷內可用的戰力……)
(朝廷としては己が信任して派遣した代官が反乱を手引きしたなどという事実は認められない。何としてでも自分たちの手による解決を図らねばならないのだが、無い袖は振れない。母上の言から読み解けば、朝廷内の戦力を用いることになるが……)
四六想再怎麼想也找不到頭緒。朝廷雖然也有負責警備的兵力,但若把它們全部派出去,京都的警備就無法維持。再者,那些兵力本就為防禦而設,並未接受對外侵攻的訓練。
いくら考えても四六には見当がつかなかった。朝廷にも警備を担う兵力は存在するが、それら全てを派兵しては京の警備がままならない。更に、そもそもが防衛の為の兵力であり、外部へ侵攻するための訓練など積んでいないのだ。
再加上朝廷的家計極為拮据。曾是主要收入來源的莊園,現在連從前的一成都不到,據說已經難以應付戰事,僅僅維持生活就吃力不討好。
加えて朝廷の懐具合は極めて厳しい。主要な収入源であった荘園はかつての一割にも満たず、いくさは疎(おろ)か生活を維持するので精一杯と聞いている。
「不清楚。我也想過了,朝廷所掌的兵力遠遠比不上大名。他們能調動出什麼有用的戰力嗎?」
「判りませぬ。私なりに考えてみましたが、朝廷の持つ兵力は大名に遠く及びませぬ。そんな彼らが用いる事の出来る戦力などあるのでしょうか?」
「燈下黑啊。太近反而容易忽略了。公家之中是否也有能與織田家重臣匹敵、擁有相當軍事力量的人物?」
「灯台下暗し、ですね。あまりにも近すぎて見落としていますよ? 公家の中にも織田家の重鎮に匹敵する軍事力を擁する人物が居られませんか?」
「不……不會吧!?」
「ま……まさか!?」
被說到這裡,四六恍然大悟。確實有一位公家人物擁有巨額財富、掌握織田軍中數一數二的精銳部隊,並具絕大的政治影響力。
ここまで言われて四六は思い至った。巨万の富を持ち、織田軍有数の精兵を抱え、絶大な政治的影響力を持つ公家の人間(・・・・・)が確かに一人いる。
「難、難道是母親嗎?母親確實是攝關家的近衛家成員……」
「も、もしや母上ですか? 確かに母上は摂関家である近衛家の人間ですが……」
「答對了!」
「ご名答!」
靜子拍了拍手,綻放如花般地微笑。
静子はポンと手を打って花がほころぶように微笑んで見せた。
「身為侍奉上樣的人,嚴格來說不能算是公家。即便如此,從朝廷的角度看,也是受賜官位與職務的公家一員。因此他們能採取的手段只有一種,設法把我捲入公家那一方。」
「上様に仕えている身ですから、厳密に言えば公家とは言えません。それでも朝廷から見れば、官位も役職も与えた公家の一員であると言えるでしょう。ゆえに彼らが取るべき手段はただ一つ、どうにかして私を公家側に巻き込むことですね」
「這未免太勉強了吧?母親現在是上樣所指揮各方面軍的後方支援、兵站統括者。朝廷應該清楚把她拉出來意味著什麼才是吧。」
「流石に無理筋というものでは無いでしょうか? 母上は現在、上様の手がける各方面軍を後方から支援する兵站の統括者です。その母上を駆り出すという事が何を意味するか判らぬ朝廷ではないでしょう」
靜子目前一手負責織田信長所發動東西兩路征伐的後方支援。雖然未直接參與戰鬥,但也承擔了擬定作戰與計畫的軍師性職責。
静子は現在、信長が手掛ける東西の征伐作戦に関する後方支援を一手に担っている。直接的な戦闘には関与していないとは言え、作戦や計画を立案するなど軍師的な役割をも担っていた。
表面上看似信長一手操持一切,實際上靜子常以信長名義代行,在各方面進行協調。自從電信實用化後,這樣的運作反而加速。
表向きには信長がすべて差配しているように見せているが、実際には静子が信長の名代として各方面に調整を図っている場面が多い。電信が実用化されて以来、この流れは加速している。
雖然仍併用早馬等傳統方式以防間諜,但實際上信長與靜子透過電信不斷交換意見來運用兵站。
早馬などの従来の手段も間者対策のため併用しているが、実際には電信を介して信長と静子は常に意見を交わしながら兵站を運用しているのだ。
過去在織田領內穿梭的早馬若突然消失,等同於向外界宣傳有其他替代手段存在。這樣即便明知冗餘,維持傳統通訊手段也成功擾亂了敵方的諜報。
今まで織田領内を行き来していた早馬が突如として姿を消せば、それに取って変わる何らかがあると喧伝しているに等しい。こうして無駄とは知りつつも、従来の通信手段を維持していることで敵陣営の諜報をかく乱することに成功している。
「西方的戰況已趨穩定,東方征伐短期內也不會有動作。若好好準備,大概能擠出一週左右的時間吧?」
「西方の戦況は落ち着いていますし、東方征伐に関しては当分動きがないでしょう。しっかりと準備をすれば、一週間程度の時間は捻出できるかな?」
「母親能在一週內攻下以難攻不落聞名的本願寺嗎?」
「母上は一週間で難攻不落と名高い本願寺を落とせるのですか?」
「說不準,勝負本來就難料。無論如何朝廷會找上我。作為義父,若是朝廷的正式請求,也難以拒絕替我居中牽線吧。」
「はてさて、勝負は水ものですからね。いずれにせよ朝廷から私に対して接触があるでしょう。義父上としても朝廷からの正式な依頼であれば、私との橋渡しを拒絶することは難しいでしょうから」
聽了靜子的話,四六恍然領悟:靜子已經算計出一週內解決教如問題的方案。即便未能立刻分出勝負,也有一條必定能引至決着的路徑可走。
静子の言葉を聞いた四六は悟った。静子は一週間で教如の問題を解決できる算段が既についているのだと。よしんば決着が付かずとも、決着に至る道筋は確実に通せる見通しが立っているのだろう。
四六細細品味她常說的那句「戰事必須在開始之前就決定完畢」的含義。
彼女が常々口にしている「いくさは始まる前に決着をつけておかなければならない」と言う言葉の意味を四六は噛みしめた。
他想到,正是那種以周詳準備為後盾的靜子從容態度,使得屬下在即將面對戰事時也不致焦躁,而能維持如平靜湖面般穩定的日常。
そうした準備に裏打ちされた静子の余裕ある態度が、配下の者にとっていくさを目前に控えているというのに焦燥に駆られることなく、穏やかな湖面の如く安定した日々を支えているということに思い至った。
(自己仍遠不及母親。即便拿一生去賭,也不知能否追上她的背影。然而,即便如此也無法不去追隨偉大母親的背影。)
(自分は未だ母上の足元にも至っていない。己の一生を賭したとして、その背に追いつけるかすら判らない。しかし、それでも偉大なる母の背を追わずにはいられない)
「如此一來,上樣應該會覺得不高興吧。」
「となれば、上様としては面白くないでしょうね」
「是啊。雖然這樣說有些自負,但我位處織田家的中樞近旁。即便是暫時借出這股力量,也必須為上樣帶來某種利益。恐怕會與朝廷進行某種交易,若如此義父也不得不站到最前線承擔壓力。」
「そうですね。自分で言うのも何ですが、私は織田家の中枢に近い位置にいます。一時とは言え、その力を貸すのですから上様には何らかの利が齎されねばなりません。恐らくは朝廷と何らかの取引をすることになるでしょうし、そうなれば義父上も矢面に立たざるを得ないでしょう」
「似乎實際出力的母親得不到任何好處……」
「実際に労を取る母上に何ら利が無いように思えますが……」
對四六不由自主脫口而出的話語,靜子苦笑以對。
思わず口をついてしまった四六の言葉に、静子は苦笑を返す。
「確實就這一連串騷動而言,即使費心我也沒有直接好處。但騷動平息之後又如何?」
「確かに一連の騒動に関して骨を折っても私には利がありません。しかし、騒動が片付いた後はどうでしょう?」
「原來如此!在瓦解本願寺之後,要復興大坂(現在的大阪)地區就需要母親的能力。若不回報屬下的勞力,未來便不會有人願意再助朝廷一臂之力。但朝廷並無足夠的酬金可付給母親,只好拿促成和睦所帶來的回報來支付,也就是把大坂開發相關的各種利權交給她,差不多是這樣吧?」
「なるほど! 本願寺を解散させた後、大坂(現在の大阪)の地を再興させるには母上のお力が必要となります。配下の労に報いねば、今後朝廷に力を貸そうと言う者は現れなくなりまする。しかし、朝廷としては母上に支払うべき対価が無い。となれば和睦を取り持ったことに対する報酬より払うほかなく、つまりは大坂開発の各種利権を与えられるといったところでしょうか?」
「恐怕大坂之地會成為天領(天皇的直轄地)吧。」
「恐らく大坂の地は、天領(天皇の直轄地)になるでしょうね」
「若成為天領後,實際管理或會委託給近衛大人。不過近衛家除母親外並無軍隊可用,便會向織田家請求駐軍。朝廷與近衛可從大坂地獲取稅收,而以本願寺門徒不持武為條件,允許其信仰與居住。上樣透過駐軍實質掌控大坂,而各種開發利權帶來的收益則會經由母親流入。」
「天領としたのち、実際の管理は近衛様に委託されるのでしょう。しかし、近衛家は母上以外の軍を持たないゆえ、織田家に軍の駐留を依頼する。朝廷や近衛様は大坂の地より上がる税を得られ、本願寺門徒は武力を持たないことを条件に信仰と居住を許される。上様は軍を駐留させることで実質的に大坂を支配下に置き、各種開発の利権に伴う収益が母上を経由して入ってくる」
「那大概就是妥協點。在此基礎上還要為未來佈下幾個棋子。為免那一帶再被重建城砦,就要進行大規模土木工程把它們阻斷。然後把本願寺的門徒當作這些土木工程的人夫來雇用。」
「その辺りが落としどころでしょうね。その上で将来に向けていくつか布石を打ちましょう。あの一帯に再び城砦を造られては面倒なので、それらを許さぬように大規模な土木工事を行います。そしてその土木工事の人夫として本願寺の門徒を雇いましょう」
「即便是被丟得赤身露體的門徒,也能靠日工收入重整生活基礎。如此一來對織田家的不滿也會有所緩和。」
「着の身着のまま放り出された門徒であっても、日銭を得ることができ生活基盤を整えることができますね。さすれば織田家に対する不満もいくらか和らぐでしょう」
「因教如的武裝蜂起,他們被迫失去居所,無法帶走的家當也會喪失。然而,就算是護城堀不論,拆除上物也相當費工。若仍有遺留物品,人們會生不捨之情。乾脆嫁禍於教如,將之燒毀,豈不是能杜絕後患?」
「教如の武装蜂起のせいで、彼らは住む場所を追われ、持ち出せない家財を失うことになるのですからね。しかし、堀はともかく上物を解体するのも一手間ですね。それに物が残っていれば未練が湧くのも人の常。いっそのこと、教如のせいにして焼失させてしまえば禍根が生じないかな?」
四六對靜子突然說出如此恐怖的話感到害怕。若被奪去財產會留下怨恨,但若一切都被燒燬,也只能認命。
四六は突如として空恐ろしいことを口にし始めた静子に恐怖を感じた。己の財産を奪われたとなれば恨みも残るが、全てが焼失してしまっては諦める他ない。
若把罪名推到被人栽贓的教如頭上,或許能算是一個八面玲瓏的妙策。
罪をなすりつけられる教如を除外すれば八方丸く収まる妙案と言えるだろう。
看到像想到惡作劇般眼睛發亮的靜子,四六見識到這位偉大母親出乎意料的一面。
いたずらを思いついた子供のように目を輝かせる静子の様子に、四六は偉大なる母の意外な一面を見ることになる。
「天然瀝青,是嗎?」
「天然あすふぁると、ですか?」
「對對。它也可作為遠洋出航時所需技術的副產品取得,覺得各種用途都很方便就透過關係人弄來了。多出來又可惜,鋪設物資運輸用的軌道又不夠量,處理起來有困擾。這真是雪中送炭吧?」
「そうそう。外洋へ繰り出す際に必要となる技術の副産物としても得られるんだけれど、色々と便利に使えそうだから伝手を使って取り寄せたんだ。余らせておくのも勿体ないし、物資運搬用の線路を敷設するには量が足りないから処分に困ってたんだよね。これが渡りに船って奴かな?」
靜子忽然變得說話很快,四六無法理解她滔滔不絕中的許多詞彙,但為了不打擾她愉快的樣子,一邊記筆記一邊附和著。
急に早口になった静子がまくしたてる単語の多くを四六は理解することができなかったが、静子の楽しげな様子を邪魔するまいとメモを取りつつ相槌を打つのであった。
靜子宣告給慶次的戒酒期半月結束後,同時期四六的罰也被解除,兩人恢復了先前無異的日常。
静子から言い渡された慶次の断酒期間である半月が過ぎた頃、時を同じくして四六の罰も解除され、二人は以前と変わらぬ日常へと戻っていた。
五月結束,六月上旬。在當事人靜子未得知的密室內,朝廷、前久與信長三方達成了約定。內容正如靜子與四六所預想的那般。
五月が終わり、六月の上旬。当事者である静子の知らない密室にて、朝廷と前久、信長の三者に拠る約定が交わされる。それは静子が四六とともに予想していた通りのものであった。
朝廷指定關白前久為官軍總大將,以近衛家的宗女靜子所率之軍為主體編成官軍。朝廷表面上並未公開向信長求助,但實際上將借用信長的軍隊,因此承諾給予信長一筆稱為『迷惑料』的恩賞。
朝廷は関白である前久を官軍の総大将とし、近衛家の息女である静子の軍を主として官軍を編成した。朝廷は表立って信長に協力を要請しなかったが、実質的に信長の軍を借り受けることとなるため、信長に対して迷惑料と称する恩賞を約束した。
此外因為靜子為支援信長各方面軍之兵站總管,正式書面約定借用她與其部隊的期間以一週為限。
また静子が信長の各方面軍を支える兵站の総括者であるため、彼女と彼女の軍を借り受ける期間は一週間を限度とすることを正式に書面を交わしている。
對於戰事一向門外漢的朝廷認為一週不足,曾申請延長,但被信長以「若動用靜子直屬之軍還需要一週,那本願寺本就不會攻下」回絕,因而作罷。
いくさに関しては素人である朝廷は、一週間では心許ないと延長を申し入れたが、信長に「静子直属の軍を動員して一週間も掛かるようなら、そもそも本願寺は落ちぬ」と返されたため引き下がった。
「總算決定方針了嗎。應該快輪到我被徵召,我趁現在把伊達家的事先處理一下如何?」
「ようやく方針が決まりましたか。そろそろ私に声がかかるでしょうし、今のうちに伊達(だて)家の方を片付けておきますか」
信長傳來臨時電信,得悉今後行程的靜子決定與先前被擱下的伊達家使者會面。
信長から臨時の電信があり、今後の予定を知った静子は保留となっていた伊達家の使者と面会することにした。
伊達家的使者早已在很久以前抵達尾張,但因本願寺事態緊急而被請求留宿,會面被延後。至於最上家的使者因夜趕行程,走偏入甲斐森家的領地內山道時迷路,被人救助。
伊達家よりの使者は随分前に尾張へと到着していたのだが、本願寺の件が緊急であったため逗留を促し、面会を先延ばしにしていた。なお最上(もがみ)家の使者は夜を徹して先を急いだがため、甲斐にある森家の領地内で街道から逸れた山道で迷っているところを保護された。
甲斐尚處於混亂期,從大路隱入山道者難免被懷疑為間諜。即便是持有密書的使者也會被拘留,直到能向國府查證其身分為止。
甲斐は未だ混乱期にあり、街道を逸れて山道を隠れ進む者は間者の可能性を捨てきれない。ゆえに密書を携えた使者であろうとも拘束され、その身元を国許に照会できるまで留め置かれることになっている。
蘆名家的使者被北條家的間者擒獲,密書因此曝光。現階段尚未見明顯行動,但北條對蘆名起疑應屬確實。
蘆名(あしな)家の使者は北条家の間者によって捕らえられ、密書の存在が明るみとなった。現時点では表立った動きは見られないものの、北条が蘆名に対して疑惑を持ったのは確実だろう。
(把情報給北條的應該是真田先生,所以到這裡算是照計畫進行吧)
(北条の間者に情報を流したのは真田さんだろうから、ここまでは予定調和かな)
利用定時聯絡的真田昌幸與能隨時通電的信長之間資訊傳遞出現時差,靜子認為自己的推測應該沒錯。
定時連絡を利用する真田昌幸と、随時に電信を利用できる信長との情報伝達に時差が出た形だが、自分の推測は当たっているだろうと静子は考えていた。
被託以密書的使者行動相當謹慎,不會輕易犯下被捕的失誤。
密書を託された使者であれば、相当に用心して移動しているため、そう簡単に捕まるようなへまは犯さない。
儘管如此被間者拘捕,且該情報為信長所知的情況,除了靜子的預想外很難找到其他解釋。
それにも拘わらず間者に捕縛され、またその情報を信長が知っているという状況は、静子の予想以外では考えにくい。
(不愧是真田先生,狸貓的面目躍然;把蘆名當作棄子、製造同盟內部不和的手腕果然了得,只是這種事不可公開稱讚,等會私下賞他點東西吧)
(流石は真田さん、狸の面目躍如といったところかしら。蘆名を捨て石にして、同盟に不和を生み出した手腕は流石なんだけれど、表立って褒められないから、後でこっそり褒美を渡すとしましょうか)
一邊思考種種,不知不覺到了與伊達家使者會面的時間。果然出現在靜子面前的,正是如預期的遠藤基信本人。
あれこれと考えを巡らせていると、あっという間に伊達家の使者との面会時間となった。果たして静子の前に現れた伊達家の使者は、予想通り遠藤(えんどう)基信(もとのぶ)その人であった。
「此次得以謁見尾張三位大人(即靜子),在下謹致謝忱」
「この度は尾張三位(さんみ)様(静子のこと)にお目通りが叶い、心よりお礼申し上げまする」
基信在靜子面前深深低頭,恭敬地行禮套語。『尾張三位』乃朝廷賜予靜子的官位敬稱。
基信は静子を前にて深々と頭を下げ、恭しい態度で拝謁の礼を述べた。尾張三位とは静子が朝廷より賜った官位を基にした敬称である。
另有職稱『尾張納言』,廣為人知的『靜子』一名則被視為通名。
他には役職である尾張納言(なごん)という呼び名もあり、広く一般に知られている静子という呼び名は、仮名(けみょう)と思われていた。
「就免掉那些生硬的寒暄吧。遠藤殿既來至尾張,是否可視為伊達家脫離北條同盟、歸附織田家?」
「堅苦しい挨拶は抜きにしましょう。遠藤殿がここ尾張に参られたということは、伊達家は北条の同盟を脱し、織田家に与(くみ)すると考えてよろしいですね?」
「回禀!在下奉我家主公之親書,還請大人過目」
「はっ! 我が殿より親書をお預かりしておりますれば、どうかお検め頂きたい」
靜子檢閱遠藤經小姓遞來的親書,瀏覽其中內容。去掉客套,親書記載了伊達家當前處境與其決意臣服於織田家的旨意。
静子は遠藤が小姓を通じて渡してきた親書を検め、内容に目を通していった。挨拶や前置きを抜きにすれば、伊達家の置かれている状況と、伊達家は織田家に臣従する旨が書かれていた。
「明白。伊達大人的意向我會轉呈上樣。已即時取得准許派遣佐久間大人為援軍,會安排後續動作」
「判りました。伊達様のご意向は私より上様にお伝えいたします。取り急ぎ佐久間様を援軍として派遣する許しを得ておりますので、段取りをつけます」
靜子的一席話讓基信表情僵住,然而他立即匍匐以示禮節以免表情被察覺。
静子の言葉に基信の表情が硬直する。しかし、すぐに表情を読まれないよう平伏すると礼を述べた。
目前伊達家情勢相當艱難,已無法掌握稙宗鼎治時期的十一郡。如今與相馬家當主相馬盛胤及其子義胤交鋒,戰況膠著。
現在伊達家が置かれている状況は中々に難しく、最盛期である伊達稙宗(たねむね)が治めていた11の郡を支配下に置けていない。今は相馬(そうま)家当主である相馬盛胤(もりたね)とその息子義胤(よしたね)を相手取り、一進一退の攻防を繰り広げている。
加入北條同盟,也是為了將衝突帶入暫時停戰。即便勢盛的相馬家,也不會魯莽到對結盟北條的伊達家當頭開戰;但伊達亦難捨野心,遂陷入僵持局面。
北条の同盟に加入したのも、これらを一時停戦に持ち込む為であった。勢いに乗っている相馬家といえども、関東の覇者である北条と縁を結んだ伊達家に噛みつけるほど向こう見ずではなく、さりとて野心を諦めることもできず拮抗状態となっている。
然而被稱為戰國最強的武田家在短短一個月內被滅,北條作為同盟卻袖手旁觀,使東北形勢再度變得詭譎。
しかし戦国最強と謳われた武田家が僅か一か月で攻め滅ぼされ、それに対して同盟たる北条が手を拱(こまね)いていたため、東北の情勢は再びきな臭くなった。
伊達家擔心相馬父子何時會破局再度發兵,心情焦慮不安。
伊達家としては相馬親子がいつ停戦を破棄して攻め込んでくるか、気が気ではない状況に陥っている。
因此無論如何都需要織田家的援軍,必須讓外界知道伊達背後有織田相挺。就算被說成借虎威的狐狸,弱者在弱肉強食的亂世求生也是無可奈何。
ゆえにこそ何としても織田家からの援軍が必要であった。伊達家の背後には織田家がついたと周囲に知らしめる必要があるのだ。虎の威を借りる狐と言われようとも、弱者が弱肉強食の乱世を生き抜くためには仕方ない。
「上樣命令最上家再度併入為伊達家家臣,至於蘆名家如何處置,只要隨你的意即可」
「最上家は再び伊達家の家臣として併呑し、蘆名家については如何様にでもお好きになされれば良いと上様は仰せです」
「竟、竟能獲得此等許可!?」
「そ、そこまでお許し頂けるのですか!?」
「無妨。我代上樣與君言。我之言即上樣之言,若需證明,上樣會親賜約定書」
「構いません。私は上様の名代として話しております。私の言葉は上様のお言葉、ご心配とあらば上様より約定書を賜る手筈となっております」
「失禮之辭,還請賜與織田大人之約定書為荷」
「不躾(ぶしつけ)とは存じますが、織田様よりの約定書を賜りたくお願い申し上げまする」
若問是否有必要,確實有書面為憑較為穩妥。但基信更想知道的是,靜子在信長眼中究竟有多大影響力。
必要かと問われれば、勿論書面があれば形として残る為確実である。しかし基信としては書面よりも、静子がどの程度信長に影響力を持っているかを知りたかった。
靜子名聲在外,人人皆言若想見信長,通過靜子最快;基信視此為試金石,想藉機驗證其真偽。
信長と面会したくば、静子を通して願うのが一番早いと言わしめるほどに信任が厚いと言うのが静子の評判である。それが本当かどうかを推し量る試金石となると基信は考えた。
「遠藤殿正如此向上樣稟報,如何?」
「遠藤殿はこう仰っておいでですよ、上様?」
正說話之際,襖猛地被推開。突如其來的響動讓基信一驚,但當他看清開門者是誰後,心思頓時一片空白。
静子の言葉と同時、襖が勢いよく開けられた。唐突な快音にビクリとした基信だが、襖を開けた人物が誰かを理解して彼の思考は漂白された。
「與其說需要書面,不如說是要試驗你到底有多大能耐」
「書面が必要というより、貴様の力がどれ程のものかを試されておるのよ」
襖另一側,惡作劇成功而滿面春風的信長在場。
襖の向こうには、悪戯が成功したことでご満悦の信長がいた。