戦国小町苦労譚
一五七七年 四月下旬
靜子先派先遣,申請讓信長接見。目的是費心把目前被排除在東國征伐核心之外的信忠,重新使其名實皆復得總大將之位。
静子は先触れを遣わし、信長と謁見できるよう申し込んだ。現状では東国征伐の中核から外されている信忠を、再び名実ともに総大将へ戻すべく骨を折るのだ。
若能取信長赦免,信忠便可光明正大地參陣討北條。不過既已拒絕織田家當主信長的命令,並惹出牽連臣下的大騷動,總不能就此無事了吧。
信長からの赦しが得られれば、晴れて信忠は北条攻めに参陣が叶う。とは言え織田家の当主である信長の命を拒絶した挙句、臣下をも巻き込んだ大騒動を起こしたからには、なんらお咎めなしとはいかない。
至少需要帶來某種能夠抵消因信忠一時衝動所致損失的禮物或手土產。
少なくとも信忠の短慮によって被った被害を相殺しうる、何らかの手土産を持参する必要があった。
「那麼,我該做什麼?」
「それで、俺は何をすれば良いのだ?」
信忠自松姬大腿旁抬頭坐起,正面向靜子問道。靜子從懷中取出剛才信忠曾想偷看之文件,打開示於信忠可見之處。
松姫の腿から頭を上げて起き上がると、静子に真正面から向かい合って信忠が訊ねる。静子は先ほど信忠が先に盗み見ようとした書類を懐から取り出し、信忠にも見えるように開いて示す。
「這是寄給在奧州爭霸的三家回覆的密書。你知道北條把陸奧納入同盟吧?其中治理出羽國的是最上氏,在陸奧互相牽制的是伊達氏和蘆名氏,彼此關係並不好。不過因為伊達總次郎(即伊達政宗之父輝宗)的正室是從最上家迎來的義姬,蘆名氏便與奧州畠山氏結盟以維持均衡。」
「これはね奥州(おうしゅう)で覇を競い合っている三家に送った密書への回答。北条が陸奥(みちのく)を同盟に組み込んでいるのは知っているよね? 中でも出羽国(でわのくに)を治める最上(もがみ)氏、陸奥国(むつのくに)で睨みあう伊達(だて)氏と蘆名(あしな)氏は互いに仲が悪い。ただ伊達総次郎(伊達政宗の父、輝宗のこと)の正室が最上家から迎えた義姫(よしひめ)であるため、蘆名氏は奥州畠山(はたけやま)氏と結ぶことで均衡を保っているね」
「嗯——」
「ふーん……」
對明顯毫無興趣的信忠,靜子提出訓斥。
あからさまに興味が無さそうな様子の信忠に対し、静子が苦言を呈す。
「小覷陸奧的情勢可不妙。即便東國征伐的主眼是武田與北條,也絕不能輕忽其周邊的態勢。等會兒會讓你記住,先把這陸奧三家記好了。」
「陸奥の情勢を軽視するのは感心しないね。東国征伐の主眼が武田と北条とは言え、その周囲を取り巻く情勢を軽んじて良いわけがないからね。後で頭に叩き込ませるとして、まずはこの陸奥の三家ね」
「那三家有何關係?」
「その三家がどうしたんだ?」
「織田家而言,這三家中任一接受調略都可以,但若伊達氏能治理奧州則最有利。伊達在三家中最為開明,不會死守北條。」
「織田家としてはこの三家のいずれが調略に応じてくれても良かったのだけれど、伊達氏が奥州を治めてくれると都合が良いのよね。三家の中でも最も開明的であり、北条に固執しないから」
「也就是先瓦解奧州,排除北條向那裡調援的可能性?」
「まずは奥州を切り崩して北条攻めに援軍を出す可能性を排除するってことか」
「嗯。不只這裡,還會同時在常陸國的佐竹氏、安房國的里見氏那裡打楔子。」
「うん。ここだけじゃなくて常陸国(ひたちのくに)の佐竹氏、安房国(あわのくに)の里見氏も同時に楔(くさび)を打つよ」
「就算軍隊分散,常陸與安房之間被北條占據,難道還能攻進去嗎?」
「軍を分けるにしても、常陸国と安房国じゃあ間に北条が居座っているから攻められないだろう?」
「你知道我們把九鬼水軍派去協助長宗我部氏平定四國吧?那不是新兵器的試驗運用,而是為進攻里見與佐竹所做的實戰演習。」
「長宗我部(ちょうそかべ)氏の四国平定に九鬼水軍を派遣していたのは知っているよね? あれは新兵器の試験運用じゃないの。里見氏及び佐竹氏攻めを見据えた実戦演習だったんだ」
「原來如此,兩者的領地都面海!」
「なるほど、どちらも領土が海に面しているからか!」
聽到這裡信忠想起來了。九鬼家率領的水軍因靜子引進的技術而取得驚人成長。於瀨戶內一役揚名的九鬼水軍,甚至被說能擊潰兩倍數的敵軍。
ここまで言われて信忠は思い出した。九鬼家の率いる水軍は静子の導入した技術によって目覚ましい発展を遂げている。瀬戸内の一件で名をはせた九鬼水軍は、倍する相手を蹴散らすとまで言われるようになっていた。
那支九鬼水軍已實戰投入了裝有齒輪以實現前後推進的動力螺旋槳與裝甲板覆蓋船體的揚陸艦。
そんな九鬼水軍はギアによって前進後退が可能な動力スクリューと装甲板で覆われた船体を持つ揚陸艦(ようりくかん)を実戦投入していた。
依以往戰國常識,要以船運送兵力,必須先攻略港口、確保安全後才以安宅船等運送。
今までの戦国時代の常識では船による兵員移送をしようと思えば、港を攻略した後に安全を確保した上で安宅船(あたけぶね)等で運ぶしかない。
但九鬼水軍的揚陸艦不依賴港灣設施,能直接擱淺登陸,將步兵與大砲等大型兵器運上岸。
ところが九鬼水軍の擁する揚陸艦は港湾設備に頼らず、単身海岸に乗り上げて歩兵や砲などの大型兵器をも上陸させることができるのだ。
換言之,對方不再只需守護港灣,而必須注意所有可登陸的海岸線;在船舶基礎能力上已有兩倍以上的差距,且在兵力數量上也會被迫處於不利。
つまり相手方は港湾だけを守れば良いわけではなく、上陸可能な海岸線全てに気を配らなければならず、船舶の基礎能力で倍以上の差がある上に数の上でも不利を強いられることになる。
「計畫是先一舉殲滅里見,誘發北條動搖;同時攻入佐竹領,將北條的防禦剝光。而被調略的最上、伊達、蘆名則無法行動。如此一來,陸路上的東國征伐本隊會逼近,就算想走海路脫逃也已被九鬼水軍掌握制海權。這不就是前門有虎後門有狼嗎?」
「まずは里見を一気に滅ぼして北条の動揺を誘う、その間に佐竹の領土へも攻め込んで北条の守りを丸裸にする手筈なの。そして調略を受けている最上、伊達、蘆名は動けない。そうこうしていると陸からは東国征伐の本隊が迫り、海への脱出を試みようにも既に九鬼水軍が制海権を確保している。こういうのを前門の虎後門の狼って言うんだっけ?」
「真心覺得有靜子這樣的盟友真是太好了」
「本心から静子が味方で良かったと痛感するわ」
信忠以有些絕望的語氣嘟囔。若織田家將里見領納入旗下,北條就如同利刃抵喉。
げんなりとした口調で信忠が呟く。織田家が里見領を支配下に置けば、北条はのど元に刃を突きつけられた状態になる。
掌握位於房總半島尖端的安房國後,相模灣便近在咫尺,能直接向北條根據地小田原城射擊火砲。
房総半島の先端に位置する安房国を押さえれば、相模湾は目と鼻の先であり、北条氏の本拠地である小田原城へと直接火砲を叩き込める状態となるのだ。
「嗯,果然由伊達家治理陸奧的構圖最好。最上家雖然脫離伊達獨立,但因長期受到介入,並未徹底擺脫影響力。」
「うん、やっぱり陸奥は伊達家が治める構図が良いね。最上家は伊達家の支配を脱して独立したんだけど、長らく介入を受けていた経緯があるから影響力を脱し切れていない」
「也就是說?」
「つまり?」
「最上家並非和平地從伊達獨立。被自己飼養的犬咬了一口的伊達家自然不服氣,若有機會會攻向最上、再度置其於支配之下。」
「最上家は穏当に伊達家から独立したわけじゃないの。飼い犬に手を噛まれた伊達家としては当然面白くないわけ。隙あらば最上家に攻め込んで、再び支配下に置きたいと考えるだろうね」
「確實,被家臣奪走長谷堂城,還被人擅自稱作國人,面子完全丟光了啊。」
「確かに家臣に長谷堂(はせどう)城を奪われた上に、勝手に国人を名乗られちゃあ面目丸つぶれだな」
「沒錯,伊達家有向最上家宣戰的正當理由。而最上家內部仍有對當主面從腹背的家臣。現下當主派佔優而維持均衡,但若援助親伊達派會怎麼樣?」
「そうね、伊達家には最上家に攻め込む大義名分がある。それに最上家には未だ当主に対し面従腹背の家臣がいる。今は当主派が優勢だから均衡を保っているけれど、ここに親伊達派を援助すればどうなるかな?」
「天平一旦傾向一方,接下來就會瞬間崩潰吧。」
「天秤がどちらかに傾むいてしまえば、後は一気に崩壊するだろうな」
「屆時為了防止蘆名氏來添亂,會請佐久間大人前去牽制。」
「その際に蘆名氏がちょっかいをかけてこないよう、佐久間様に足止めをお願いすることになるだろうね」
「若伊達家不動怎麼辦?」
「伊達家が動かなければどうするんだ?」
「那就會請上杉家也出兵,讓上杉暫時治理最上領,製造三家互相牽制的局面。若上杉要攻最上,伊達也不得不有所行動。」
「その場合は上杉家からも兵を回して貰って、最上領を上杉に治めて貰い三すくみの状況を作りだすことになるね。まあ上杉家が最上家を攻めようとすれば、伊達家は動かざるを得ないだろうね」
「明白了,這是對織田包圍網的反擊吧! 把北條的手腳奪走,反過來把他們包圍回去。」
「わかったぞ、これは織田包囲網に対する意趣返しか! 北条の手足を奪って逆に包囲し返すんだな」
「沒錯。不是說過很多次嗎?戰爭的勝敗在開戰前就已由準備決定;實際交鋒時不過是在驗證已定的結果。要做到這點,最需要的就是情報。」
「そう。何度も言っているでしょう? いくさは始める前にどれだけ準備したかで勝敗が決まるの。実際に矢や刃を交える時には決着はついていて、答え合わせをするに過ぎない状況に持ち込むんだよ。そしてこれをするために必要になるのが情報よ」
靜子確實徹底致力於情報收集。孫子說『知彼知己,百戰不殆』,她讓人細緻調查敵情,從軍事到領民生活都不放過。
実際に静子は徹底して情報収集に努めてきた。孫子の教えに『彼を知り己を知れば百戦殆(あや)うからず』とあるように、敵に関する情報は軍事に限らず領民の生活ぶりに至るまで入念に調べさせた。
將那些資料彙整分類、整理再解析並加以活用,便能創造優勢。
それらを集約して分類し、整理した上で解析して活用することでアドバンテージを生み出している。
「而且重點在這裡,我要你擔任這一連串指揮。」
「そしてここが肝心なんだけれど、これら一連の指揮を君に執って貰う」
「以確立東國征伐的立足點之功績,重登總大將之位,意思是這樣吧?」
「東国征伐の足がかりを確たるものにしたという功績を以て、総大将の地位に返り咲くというわけか」
「比起就此未參加東國征伐而結束,這樣不是比較好嗎?」
「東国征伐に不参加のまま終わるよりはいいでしょう?」
對靜子詢問,信忠考慮片刻便同意了。
静子の問いに信忠は少し考えてから承諾した。
自從滯留在靜子府邸以來,松姬好幾次目睹令人難以置信的景象:屋內擺設從未見過般奢華,而那些名震一時的武將竟對一位與她同為女性的屋主低頭請教,這本身便足以令人震驚。
静子邸に滞在して以来、松姫はわが目を疑うような光景を何度も見てきた。見たこともないような調度品で彩られた屋敷の主にして、名だたる武将が頭を垂れて教えを乞う存在が己と同じく女性であるということがまず驚愕に値する。
更讓她驚訝的是靜子面對主君信長的態度。
更に彼女を驚かせたのは主君である信長に対する静子の態度であった。
「喔……所以妳是說想用我那愚蠢的兒子嗎?」
「ほう……それで愚息を使いたいと申すのか?」
聽完靜子的話後,信長以如同寒冷滲骨的眼神盯著靜子。松姬只是因為信忠牽扯其中而被迫同席,原本已難以忍受那彷彿帶有實體壓力的沉重氛圍,如今又感受到信長施加的更大壓力。
静子の話を聞き終えた信長は底冷えするような眼差しで静子を睨む。信忠が絡むことだけに同席させられた松姫だが、物理的圧力を伴うかのような重苦しい空気に耐えかねているというのに更に信長から発される圧力が増した。
松姬冷汗直流,靠著細碎換氣才勉強不至於昏厥,然而靜子卻面不改色、從容地大方陳述意見。
冷や汗を流しながらも細かく息を継ぐことで辛うじて倒れずに済んでいるというのに、対する静子は涼しい顔をしたまま堂々と意見を述べている。
「是的,一旦掌握里見所治的安房國,幾乎等於拿下相模灣。況且在同數艦隊的情況下我方在艦隊能力上已佔優勢,只要能防止被夾擊,沒有敗的道理。」
「はい、里見の治める安房国を押さえれば相模湾は落としたも同然です。そもそも同数同士の艦隊能力で上回っている以上、挟撃を防げれば負ける道理がありません」
「如果伊達不出動怎麼辦?」
「伊達が動かぬ場合は何とする?」
「就動用上杉家。若上杉的勢力向最上逼近,牽有宿怨的伊達理應不得不出手。即便如此仍不動,那就證明他們無以統御奧州的器量,便讓他們消亡吧。」
「上杉家を動かします。最上に対して上杉の勢力が迫れば、因縁のある伊達としては動かざるを得ないでしょう。それでも尚動かないようならば、奥州を治めるに足る器では無かったということで滅んで頂きます」
「最上和伊達我明白了。剩下的蘆名怎麼辦?」
「最上と伊達は判った。残る蘆名は何とする?」
「若伊達能納入最上,剩下的蘆名便只能選擇臣服或死亡。無論如何,陸奧的勢力版圖將被改寫。」
「伊達が最上を取り込めば、残る蘆名は服従か死かを選ばねばなりますまい。いずれにせよ陸奥の勢力図は塗り替えられましょう」
「你玩弄計策太多了。若事情未如你所料運行,怎麼辦?」
「策を弄(ろう)しすぎておるな。思い通りにことが運ばぬ折はどうする?」
「即便最壞全盤皆落空,也只憑我們的餘剰兵力便能全數平定給諸位看。」
「最悪全てが裏目に出たとしても、我らの余剰兵力だけで全てを平らげてご覧に入れます」
靜子對信長的質問如行雲流水般回答。對松姬來說,散發猛獸氣息的信長固然可怕,但比起那猛獸更讓人畏懼的,是能無所畏懼直面猛獸的靜子。
静子は信長の問いに対して立て板に水とばかりに答えを返した。松姫にとって猛獣のような気配を放つ信長も恐ろしかったが、それ以上にその猛獣に対し臆することなく向かい合う静子こそが恐ろしかった。
被養成未曾涉足政事的松姬,對他們所談之事半數都無法理解,但總算能明白那是一個鋪展著龐大謀略的世界。
政(まつりごと)に携わることなく育てられた松姫には、彼らの話していることの半分も理解することが出来ないのだが、途方もない謀略の世界が繰り広げられていることだけは何とか理解できた。
若想到是由這等智者們互相交鋒決定方針,便能接受武田家的滅亡或許是必然的結局。
これほどの知恵者が意見を戦わせあって方針を決めていたのだと思えば、武田家の滅亡も必然であったのだろうと今は受け止めることができた。
「好吧。不過――」
「良いだろう。ただし――」
「知道了。關於正室一事,會由本人前來說明。」
「承知しております。正室の件については本人より話させます」
瞪著靜子露出嚴肅表情的信長,靜子會意後看向信忠。信長之意是要信忠撤回他所發出的將松姬立為正室的宣言。
厳(いか)めしい顔つきを静子に向ける信長を見て、彼の意図を汲み取った静子は信忠を見やった。信長の言わんとする処は、信忠が発した松姫を正室に据えるという宣言を撤回させろということである。
正室不僅具政治影響力,亦決定嫡流血統。對重視血統的武家而言,將已滅敵方的姬嫁為正室,簡直不是理智之舉。
正室というのは政治的影響力だけでなく、嫡流の血筋を決定する立場である。血統に拘る武家に於いて、滅ぼした敵方の姫を正室に据えるなど正気の沙汰ではない。
並非沒有前例,但織田家並無必要為此將松姬立為正室到那種程度。
前例がないわけではないが、織田家にはそこまでして松姫を正室に据えねばならない理由がなかった。
「父上,都是因為我不足而讓您徒增憂慮。在此懇求給我一個洗清汙名的機會。我在此撤回將松姬立為正室的言論,並伏地致上歉意。」
「父上、私が至らぬばかりに要らぬご心配をおかけしました。つきましては汚名を返上する機会を賜りとう存じます。松を正室に据えるとの発言はここに撤回し、伏してお詫び申し上げまする」
信忠像是擠出最後一絲聲音般如此說道,並將額頭貼向地面。
信忠は絞りだすかのようにそう口にして額を床にこすりつけた。
信忠作出決斷的背後有靜子的說服。此次事務並非只有信忠才能完成,反而是個能給那些無法立功、鬱鬱不得志的家臣提供表現機會的絕佳時機。
信忠が決断した背景には静子の説得があった。今回の件に関しては別に信忠でなければ為しえない作戦ではない。むしろ手柄を立てられず燻っている家臣たちに活躍の場を与えられる絶好の機会でさえあるのだ。
換言之,這是承蒙靜子的寬恩所賜的機會,但本該給予他人的功勞反而被讓渡給他。
つまりは静子の温情によって機会を与えられているが、これは本来別の人間に与えられるはずだったものを譲って貰う形になっている。
此外若繼續執意我行我素,兩人若有子嗣,將招致滅亡。縱使不能容許動搖織田家根基的存在,母子雙雙遭到暗殺也極有可能。
更にはこのまま自分の我侭(わがまま)を押し通した場合、二人の間に子を為した際に破滅が訪れる。織田家の根幹を揺るがす存在が許されるわけもなく、母子ともに暗殺されるのが関の山であろう。
作為亡國之姬的松姬,沒有能成為後盾的本家,因此陷入窮境。當暗殺成為盤面上的選項時,便已走投無路。
亡国の姫である松姫には後ろ盾になってくれる実家の存在もないため、今回窮地に追い込まれているのだ。暗殺という選択肢が俎上(そじょう)に載った時点で、詰んでしまう。
因此松姬只能以側室身份保全自己。而信忠若為背叛命令付出代價,向信長請求赦免並讓她成為側室,便難以對這一決定提出反對。
ゆえにこそ松姫は側室で居なければならなかった。そして信忠が命令に背いたケジメをつけた上で、信長に許しを請い側室となれば、その決定に否を突きつけることは難しい。
若因此毀了所有為此操勞者的面子,誰也不會輕易去羞辱包括信長、靜子、信忠在內的首腦群。
一連の騒動に対して骨を折った全員の面子を潰すことになるため、信長をはじめ静子、信忠という首脳陣全てに唾を吐く行為など出来ようはずがない。
被靜子諄諄勸說了以上諸點後,信忠選擇撤回發言。
以上のことを静子から諭された結果、信忠は発言撤回を選ぶに至った。
在諸將亦同席的場合下,信忠向信長就一連正室風波致歉並撤回宣言。除了在相關人員的私下場合處理之外,於諸將集會的公開場合也再次進行了謝罪與撤回。
信忠が諸将も同席する中で信長に対し、一連の正室騒動に関する謝罪をした上で宣言を撤回した。関係者だけの席で行われたものとは別に、諸将が集まる公の場に於いて改めて謝罪と撤回が行われた。
此事在同席的諸將間迅速傳遍織田家中,眾人皆長舒一口氣。
これは同席した諸将らから瞬く間に織田家中に広まった。そして誰もが安堵に胸を撫でおろすことになる。
因為那不過是單純的親子之爭,若不久將以繼承問題爆發,成為撕裂織田家的骨肉之爭這一點顯而易見。
ことは単なる親子喧嘩に過ぎず、遠からず後継者問題として噴出し、織田家を二分する骨肉の争いとなることが目に見えていたからだ。
信長接受了信忠的謝罪,並宣告派其執行別任務以支援北條征伐。同時松姬交由靜子看管,並被處罰在信忠完成所有職責之前與其分居。
信長は信忠の謝罪を受け入れ、信忠に北条征伐を支援すべく別任務にあたることが宣言された。また松姫は静子預かりとなり、信忠が全ての責務を終えるまで別居することが罰として申し渡される。
當這一切的贖罪完成後,信忠便可恢復為東國征伐的總大將,此事亦已被通告。
これら全ての禊(みそぎ)が済めば、晴れて信忠は東国征伐の総大将へと戻されると通達された。
「雖然有預料到,但意外地比想像中早浮上檯面呢。」
「予想はしていたけれど、意外に早く表面化したね」
靜子一邊閱讀報告書一邊低聲道。當前赴北條征伐之人整備之際,在政局尚不穩定的甲斐爆發了叛亂。
報告書を読みながら静子が呟く。北条征伐に赴く者たちが準備を整える中、未だ政情不安定な甲斐に於いて反乱が勃発した。
不過因為與史實不同,上杉家已向織田家臣服,叛亂的規模因此小了許多。
とは言え、史実のそれとは異なり上杉家が織田家に臣従しているため、規模が随分と小さかった。
儘管如此,叛亂就是叛亂,若有人喊著排斥織田而攻城上來便不能不處置。仍留在甲斐剷除叛亂苗頭的長可迅速集結手勢,立即展開鎮壓。
それでも反乱は反乱であり、織田家の排斥を唱えて城まで攻めあがられては対処しないわけには行かない。未だに甲斐に残り反乱の芽を潰して回っていた長可は、素早く手勢を集めると即座に鎮圧に乗り出した。
電話的定時聯絡報告說將從現在開始鎮壓,不過此時戰鬥恐怕已經開始了。
電話による定時連絡ではこれより鎮圧するという報告があったが、今頃すでに戦闘が始まっていることだろう。
靜子認為起兵反叛的原因仍不明,但參與者必然會受到嚴厲懲罰,這點無可避免。
反乱を起こすに至った理由は未だ不明だが、反乱に与した者が厳しく罰されることになるのは避けられないだろうと静子は考える。
「還好是在把剩餘資金和裝備運往尾張之前。到明天的定時聯絡前應該會有了結,關於對反亂軍的處罰就交由現場處置,請如此轉達。」
「余剰資金や装備を尾張に移送する前で良かったよ。明日の定時連絡までには決着もついているだろうし、反乱軍の処罰に関しては現場に一任すると伝えて」
「是」
「はっ」
告訴通訊員那些話後,靜子離開了電信室。關於反亂軍的處置已有諸法度規定,無需請示信長,首謀者及參與者都將以死來償罪。
それだけを通信士に伝えると、静子は電信室を後にした。反乱軍の処遇については諸法度に定められており、信長の判断を仰ぐまでもなく首謀者及び参加者は死を以て償うことになる。
這一連串事件的治安維持權限被託付給長可,只要報告已依其裁量處罰就沒問題了。
これら一連の沙汰に関しては長可に治安維持の権限が託されており、彼の裁量に於いて処罰したと報告するのみで問題ないと考えた。
事後接獲報告的信長並未視為大事而放行。對於這次反亂的首謀者適用了連坐制,連一族郎黨也被斬首。
実際に、事後報告を受けた信長はこれを問題視せず流している。この反乱の首謀者に関しては連座制が適用され、一族郎党に至るまでが斬首された。
所有參與反亂者無一例外皆被斬首,支援反亂者也受到重罰。
反乱に参加したものは例外なく斬首され、これらの反乱を支援したものにも重い処分が下された。
被脅迫而提供糧食等的村莊,只要向官府通報反亂存在就會獲得獎金;反之若未通報放過反亂的村莊則會被加重課稅。
脅されて食糧などを供出した村に関しても、役所に反乱の存在を通報していれば報奨金が下賜された。逆に反乱を通報せず見逃した村には追徴課税が課されることになる。
透過這些處罰,織田家的統治以賞罰分明為旨,對抗者將遭嚴罰之觀念廣為人知。
これらの処罰によって織田家の統治が信賞必罰を旨とし、歯向かった者へは厳罰を以て臨むということが周知された。
「真不愧是伊達家,能第一時間出手,果然有先見之明呢」
「流石は伊達家と言ったところかな、真っ先に動くあたりは先見の明があるね」
有報告說來自陸奧三家、帶著密書的使者正往尾張去。從下決心到行動所花的天數裡,伊達家最快,蘆名最遲疑。
陸奥の三家から密書を携えた使者が尾張に向かっているとの報告があった。決断に至るまでの日数は伊達家が最も早く、蘆名の腰が最も重かった。
靜子對事態如預期發展露出淡淡的微笑。
予想通りに物事が推移していることに静子は薄く笑みを浮かべる。
一邊確認報告書,一邊在攤開的地圖上重畫勢力圖。若東國征伐成事,將會形成一個擁有龐大版圖的強大勢力,織田家與其盟友在名實上都會迎來被稱為日本第一的一天。
報告書を確認しつつ、広げられた地図上の勢力図を塗り替えていく。東国征伐が為された際には、巨大な版図を持つ一大勢力が出来上がり、織田家とそれに与する勢力が名実ともに日ノ本一と呼ばれる日が訪れるだろう。
(伊達家會派誰來呢?按理應該是遠藤基信之類吧)
(伊達家は誰を送り込んできたのかな? 順当に考えれば遠藤(えんどう)基信(もとのぶ)あたりなんだけど)
基信是伊達家現任當主輝宗的家臣,以出色的外交手腕聞名。史實上他曾與信長、家康、北條氏交涉,也曾建議輝宗與信長建立交流。
基信は伊達家現当主である輝宗の家臣であり、その優れた外交手腕で知られた人物である。史実に於いて信長や家康、北条氏とも交渉を行っており、輝宗へも信長と交流を持つよう進言していた。
此次事件極有可能是基信親自參與,派直臣而非外交僧來遞密書,目的大概是要向信長與靜子表現其誠意。
今回の件に関して基信自身が関与している可能性が高く、外交僧などではなく直臣の自分が密書を届けることで、信長や静子に対して本気度をアピールする狙いがあるのだろう。
無論如何,若情勢如是發展,伊達家的使者將會首先在尾張進行交涉,正如靜子的企圖,將邁出擔負陸奧霸權的第一步。
いずれにせよこのまま状況が推移すれば、伊達家の遣いが最初に尾張にて交渉を行うことになり、静子の目論見通り陸奥の覇権を担う第一歩を踏み出すことになる。
「喂,靜子,有沒有什麼能久放的甜食?」
「なあ静子、何か日持ちする甘いものはないか?」
靜子在整理文件時,伴隨著一聲喊話信忠進了房。想到今後一段時間無法見到松姬,且他並未帶著她來,靜子放下筆,覺得可能有隱祕的事要說。
静子が書類を整理していると、掛け声と同時に信忠が入室してきた。これから暫くは松姫に会えない日々が続くというのに、彼女を伴っていないことを考えれば内密の話でもあるのだろうと、静子は筆をおいた。
「會把巧克力棒作為軍用隨身糧額外分配。那麼有什麼事?」
「軍用の携行食としてチョコバーを追加割り当てするようにするよ。それで用件は何かな?」
「真是感激。雖說天要暖和了,但陸奧還是很冷。要不是好吃的行動食(指非正餐的零食,於登山等大量消耗體力時補充的高熱量食品),真受不了。」
「ありがたい。これから暖かくなるとは言え、陸奥は寒いからな。旨い行動食(食事以外の間食で口にし、登山等の体力消耗が激しい場面で補給する高カロリー食のこと)でも無ければやってられぬ」
「咦?甜食只是藉口吧,是不是有什麼隱密的事?」
「あれ? 甘味は口実で、何か内密の話があるんじゃないの?」
「不,沒有啦。起初想要抱怨幾句,但冷靜下來看就明白現在的狀況是最妥當的。因為重要之人面臨危險,我急躁地想衝動行事,卻該在那之前先向靜子商量。」
「いや、別にないぞ。最初は文句の一つも言おうと思ったが、冷静になって見れば今の状況が最善だと理解できた。自分が大事にする者に危険が迫ったゆえ、焦って暴走したがその前に静子に相談すべきであった」
「是啊。就算你著急不採取行動,也要記得有周圍願意幫你一把的人存在。」
「そうだね。君が焦って手を打たなくとも、君に力を貸そうとしてくれる人々が周りに居ることを思い出してね」
「嗯。我這次所做的本意是想保護松,卻發現把她逼入死地,讓我嚇破了膽。我一向自負能冷靜看事,但成為當事者後才深刻感受到困難。」
「うむ。今回の俺がしたことと言えば松を守るつもりが、死地に追いやっていたと気付いて肝が冷えたわ。自分だけは冷静に物事を見られると自負していたのだが、当事者になると難しいのだと痛感した」
「事情就是如此。別人做的看起來簡單,但自己去做就相當困難。對於那些你覺得沒什麼大不了的人,他們其實和你同一水平;對於你認為與你同格的人,應該抱持他們比你優秀的心態去行動。」
「そういうものだよ。他人がやっていることは簡単そうに見えるけれど、実際に行うとなれば相応に難しいものなの。自分がこいつは大したことないなと思っているぐらいの人物は自分と同格。自分と同格だと思っている人物は、己より優れていると思って行動しなさい」
靜子調查了那些建議把松姬從側室除名者的背景。這些人都是出於想把自家血脈嫁入本家這種在當時很平常的野心,雖不可稱道但也不至於要懲罰。
静子は松姫を側室から外すべきだと進言した者たちの背景を探っていた。いずれも本家筋に己の血筋を送り込みたいという、この時代では当たり前にある野心からの行動であり、褒められたものではないが罰するほどでもない。
其中也有人企圖傷害松姬以除去她的側室地位,但因未付諸行動所以不會受罰;不過這些人成為了要注意人物,間者會持續監視他們。
中には松姫を害してでも側室から追い落とそうと画策していた者もいたのだが、行動には移していないためお咎めはなしとなった。ただし、要注意人物として間者が常に監視する対象とはなっている。
因為信忠在諸將面前道歉並撤回,這些暗中活動的人也覺得形勢不妙,於是暫時乖乖服從現狀。
諸将の前で信忠が謝罪と撤回をしたことにより、これら暗躍していた面々も流石に旗色が悪いと悟って現状はおとなしく従っていた。
「總有一天空著的正室之位還是得填補吧?」
「いずれ空席となっている正室の座は埋めないといけないよ?」
「這點我知道。總有一天會配上與家格相稱的正室,生下接班人。可只是為了生子而建立的關係,能算是夫妻嗎?」
「それは理解している。いずれ家格に見合った正室が宛がわれ、世継ぎを作ることになるのだろう。ただ子を為すのみの関係は夫婦と呼べるのだろうか?」
雖未明說,但信忠等同於表示他無法把正室當作妻來愛。
はっきりと言葉にはしなかったが、信忠は正室を妻として愛することができないと言ったも同然であった。
在那個時代反而多是此類婚姻,彼此相愛而結合的情形稀少,但靜子仍希望信忠能過著幸福的生活。
この時代はむしろそのような夫婦の方が多く、互いに好きあって結ばれることなど稀なのだが、それでも信忠には幸せな生活を送ってほしいと願う静子であった。
「啊,對了。有件事麻煩幫個忙好嗎?」
「ああ、そうだ。せっかくだから一つ頼まれてくれないか?」
「嗯?是什麼事?」
「ん、何かな?」
「想把靜子的侍女借給松做照護。畢竟松沒有靠山,想表明靜子在關心她。而且在女子的圈子裡,像我這樣的男人有無法涉入的界限……」
「松の世話係に、静子の侍女を貸して欲しい。やはり松には後ろ盾がないからな、静子が気にかける存在だと示したいのだ。それに女の世界には男の俺では立ち入れぬ限界があるゆえな……」
「確實因為這次的事她的地位變得危險。好吧,雖然身分上我無法成為她的後見人,但批准派遣侍女。」
「確かに今回のことで彼女の立場は危うくなったからね。良いよ、後見人には立場上なれないけれど、侍女の派遣は許可します」
翻開歷史可見,侍奉養君(貴人子嗣等,將來會成為掌權者)的人往往日後掌握權勢。
歴史を紐解けば養君(貴人の子息等、いずれ権力者となる者)に仕える人物が後に権力を振るうことが往々にして起こりうる。
尤其乳母對養君既是家臣也是母代,成年後往往成為後見人的後盾。
特に乳母は養君にとって家臣でもあり、母代わりでもあり、成人した後は後見人ともなる後ろ盾でもあった。
而乳母的親生孩子被稱為乳兄弟,會與養君一同作為侍從被養育,長大後多數會成為養君的家臣效力。
そして乳母の実子は乳兄弟と呼ばれ、養君と共に従者として育てられ、長じると養君の家臣として仕えることが多かった。
因此,乳母以及乳母的親生子出人頭地較早,基於此等利益,對於侍女來說要侍奉誰是最重要的事。
このため、乳母や乳母の実子は出世が早く、こういった利点から侍女にとって誰に仕えるかは最重要の事項でもあった。
但是,仕於靜子屋敷的侍女們不同。她們有憑藉自身才智向上攀爬的氣概,並且擁有如此突出的能力。
しかし、静子の屋敷に務める侍女たちは違う。己の才覚一つでのし上がろうとする気概があり、またそれだけ突出した能力をも持ち得ていた。
「我不會強迫,所以松姬本人帶上能與她建立信賴關係的侍女去比較好吧?」
「私から強制することはしないから、松姫本人が信頼関係を結べた侍女を連れていくと良いんじゃないかな?」
「如果誰都無法建立信賴關係怎麼辦?」
「誰とも信頼関係を結べないときはどうする?」
「實在沒辦法替你包辦到那種程度啦。天只會幫助自助者喔?」
「流石にそこまで面倒は見切れないよ。天は自ら助くる者を助くだよ?」
「嗯,是那樣的嗎。真遺憾,但這不是我能插手的範圍啊……」
「む、そう言うものか。口惜しいが俺が手を出せる領分では無いのだな……」
「既然要侍奉君的寵姬,某種意義上出人頭地是有保證的,應該不會出現沒人要的情況才對。啊,不過如果附上侍女的話,會不會被認為是我在撐腰呢?」
「君の寵姫に仕えるんだから、ある意味出世は約束されているし、誰もつかないなんてことはないと思うけどね。あ、でも侍女を付けたら、私が後ろ盾になったと思われるかな?」
「哼哼,我已經得到了口頭承諾。現在想反悔可不行喔?」
「ふふん、既に言質は取ったからな。今更やっぱりやめたは無しだぞ?」
「好吧,既然都費了這麼多功夫,至少你們要幸福,不然就不划算了嘛」
「まあこれだけ骨を折ったんだから、せめて君たちが幸せになってくれないと割に合わないよね」
話畢,靜子含笑望著那頑皮的弟弟,彷彿在守護般。
そう言ってやんちゃな弟を見守るように微笑む静子であった。