戦国小町苦労譚
一五七七年 四月上旬
秀吉所面臨的問題可以歸結為「過度依賴靜子」。靜子自從出任織田家顧問以後,便受到各方不同身分的人士前來諮詢,而其中來自秀吉的詢問格外頻繁。
秀吉が抱える問題とは『静子に頼りすぎた』という点に集約される。静子は織田家相談役に就任して以降、様々な立場の人々から相談を受けていたのだが、その中でも秀吉からの問合せが突出して多かった。
起因於他在自家領地今浜(今為長浜)經營遭遇挫折時,輕易求助於她,而靜子的經濟對策如同帶來劇效的強心劑,反而凸顯出他所提出施策的差異。
自身の領地である今浜(現在の長浜)の運営に躓(つまず)いた際に安易に頼ってしまったのが発端なのだが、劇的な効果を齎(もたら)すカンフル剤にも等しい静子の経済対策は自分の打ち出す施策との差異を浮彫にしてしまう。
因此他對自己的政策失去自信,凡遇重大決斷便向靜子徵求意見;家中那些愛說閒話的人見狀,便揶揄秀吉是靜子的傀儡。
これがため自分の施策に自信が持てず、大きな決断を迫られるたびに静子に意見を求めるようになり、その姿勢を見た織田家家中の口さがない者たちは秀吉のことを静子の操り人形だと揶揄(やゆ)した。
在那之中,隨著在播磨平定上終於取得卓越成果,秀吉的評價逐漸被重新看待;因為在亂世中,擅長用兵本身具有極大的意義。
そうした中、ようやく播磨平定に於いて際立った成果を上げたことで秀吉が見直されつつあった。乱世に於いてはいくさ上手であるという事が非常に大きな意味を持つためだ。
考量到上述經過,靜子擔憂若再度向她求助開發有馬溫泉,會不會反而貶低秀吉的評價。
こうした経緯を踏まえたうえで、有馬温泉開発に再び静子の助力を求めることは秀吉の評価を下げることになるのではないかと静子は危惧していた。
「關於神戶港的開發,乃是由我發起,因此已在各方進行斡旋。然而,當然那當中並不包含有馬溫泉開發。若我涉入這突如其來的案子,豈不會損及羽柴樣的顏面嗎?」
「神戸港の開発に関しては、私の発案であるため各方面に根回しをしております。しかし、当然ながらそこに有馬温泉開発は含まれておりません。突如として降ってわいた案件に私が絡むと、羽柴様の面子を潰すことになりませんか?」
神戶港是靜子極為重視的事項,她在朝廷方面充分利用了近衛家的關係,在武家社會則倚仗信長的人脈進行斡旋。因此那些先前不敢公開對神戶港開發提出異議的人,可能會趁機發聲。
神戸港は静子の肝煎(きもい)り案件であり、朝廷方面に関しては近衛家の、武家社会に関しては信長のコネを存分に用いて根回しを行った。それ故に神戸港開発に対して表立って文句を言えなかった者たちが、ここぞとばかりに声を上げる可能性があった。
善於腹中運籌的秀長不待靜子多言便已理解這種情勢。然而,若能順利推動有馬溫泉這等龐大計畫,便有必要捨名取實。
腹芸に長(た)けた秀長は、静子が言うまでもなくこうした状況を理解していた。しかし、有馬温泉開発という巨大プロジェクトを円滑に推進できるのであれば、名を捨ててでも実(じつ)を取る必要がある。
「確實兄上好不容易重新被看重的評價,或許會再度跌落……但面子不能換飯吃。」
「確かにようやく見直されつつある兄の評価は、再び地を這うことになるやもしれませぬ……とは言え背に腹は代えられぬのです」
秀長判斷,有馬溫泉開發所能帶來的財富,足以抵消這些不便,為秀吉帶來超過的利益。他們尚不得而知的是,對於這項苦衷決定,亦有利好之勢在推動。
有馬温泉開発の結果として生み出されるであろう富は、こうした不都合を呑んでも余りある利を秀吉に齎すと秀長は判断していた。彼らは知り得ないことだが、この苦渋の決断に対して追い風となる動きもある。
「這還未對外公開,但實際上有在長宗我部殿領地設置港灣都市的計畫。更打算與回歸商業活動的雜賀眾合作,透過內陸河川經由堺連結至神戶,構築一個龐大的商圈。」
「これはまだ開示されていない話になりますが、実は長宗我部(ちょうそかべ)殿の領土に港湾都市を設ける計画がございます。更には商(あきな)いに立ち戻った雑賀衆(さいかしゅう)と連携し、内陸から河川を通じて堺を経由し神戸とを結ぶ一大商圏を構築する構想になっています」
「為何會將如此重大的計畫隱匿不宣?」
「そこまで大きな話が伏せられているのは何故でしょう?」
黑田官兵衛提出了理所當然的疑問。對此靜子思考如何說明,最終判斷「百聞不如一見」,便命小姓取來地圖。不久,呈上了一幅畫到從畿內經中國地區、四國直至九州、在此時代精度不凡的地圖。
黒田官兵衛が当然の疑問を口にした。その問いに対して静子はどう説明したものかを考えあぐね、『百聞は一見に如かず』だと判断して小姓に地図を持ってくるように命じる。少し間を置いて、この時代では異例の精度を誇る畿内から中国地方、四国を経由して九州までを描いた地図が届けられた。
靜子把這張地圖在小姓準備的大書桌上一攤,招手叫秀長等人觀看。彼時將地圖視為極度機密,官兵衛因此畏縮不前,但見秀長與半兵衛應允,便也隨之而去。
静子はこれも小姓に用意させた長机一杯に地図を広げると、秀長たちにこれを見せるべく手招きした。当時の価値観に於ける地図と言えば秘中の秘であるため、官兵衛は尻込みしてしまったのだが秀長や半兵衛が応じたのを見て彼らに倣(なら)う。
「看了地圖便會明白,阻斷內陸與堺連結動線的栓塞正是本願寺。他們若撤退,便可從北陸經今浜、琵琶湖,沿宇治川、淀川通出內海。」
「地図を見て頂ければわかると思いますが、内陸と堺とを結ぶ動線を塞いでいる栓が本願寺です。彼らが退去すれば北陸から今浜、琵琶湖を経由して宇治川、淀川を通じて内海へと出られるのです」
靜子將手指置於位於北陸的越後,沿著越中與能登之間滑過,經加賀、越前至有琵琶湖的近江;再由琵琶湖南端順河而下,中途經巨椋池,通出大阪灣。
静子は北陸に位置する越後へと指を置き、越中と能登の間を抜け、加賀、越前を経て琵琶湖のある近江へと指を滑らせる。そのまま琵琶湖の南端から河川を辿って、途中巨椋池(おぐらいけ)を経由し大阪湾へと抜けた。
靜子所劃出的路線,浮現為串連日本海側與太平洋側的巨大全流通路;傳統上要麼全靠陸路,要麼北迴需經津輕海峽大幅繞行,或南迴需通過關門海峽繞行並經瀨戶內海。
静子がなぞった経路は日本海側と太平洋側を結ぶ、巨大な流通経路として浮かび上がる。従来はすべてを陸路で賄うか、北回りであれば津軽海峡を抜けて大きく迂回する、もしくは南回りで関門海峡を抜けて回り込み瀬戸内海を経由する必要があった。
北陸地區雖以陸路為主,但將其餘路段以水運直線相連的新流通路,能帶來驚人的時間縮短。時間一旦縮短,便可大幅壓低成本,由此流通路所產生的權益將變得龐大,想像得到其利潤之豐厚。
北陸地方こそ陸路ではあるものの、残りを水運で一直線に結ぶ新流通路は凄まじい時間の短縮を実現する。時間が短縮されればそれだけ費用を抑えることが出来、この流通路が生み出す権益は莫大なものとなることは想像に難(かた)くない。
「在長宗我部殿所治的土佐整備港灣的理由很明白:不能讓以表面順從、暗中抗衡的堺掌握連結織田支配圈的流通路。至少要建立即使排除堺也能成立的航路,從尾張經紀伊連結土佐,並由此向更遠的明(即現今中國)與南蛮開展交易。若先行連到筑前,便足以掌握西國的流通。」
「長宗我部殿が治める土佐に港湾を整備する理由は明確です。織田の支配圏を結ぶ流通路を面従腹背の姿勢を貫く堺に握らせる訳にはいかない。少なくとも堺を排除しても成り立つ航路を成立させるべく、尾張から紀伊を経由して土佐を結び、そこから更に遠方の明(みん)(現在の中国)や南蛮との交易を実現します。ひとまず筑前までを結ぶだけでも西国の流通を支配できるでしょう」
連結本州與四國的瀨戶大橋、明石海峽大橋、瀨戶內しまなみ海道等現代本州四國連絡橋在此時代當然不存在。雖然實現大量陸運的鐵道已在視野中,但要連結被海洋隔離的地區,仍只能倚賴海運。
本州と四国を結ぶ瀬戸大橋や明石海峡大橋、瀬戸内しまなみ海道の本州四国連絡橋は当然この時代には存在しない。大量の陸上物流を実現する鉄道は視野に入りつつあるが、海が隔てる地域を結ぶには海運に頼るしかない。
不過若一人獨大太過又會招致反感,因此雖將堺納入商圈,但為免讓對方自以為掌握要害,仍需同時開發其他路線。
とはいえ一人勝ちしすぎると疎まれるのは世の常であるため堺を商圏に組み込んでいるが、急所を握ったと思いあがらせないためにも他の経路を同時に開発する必要があった。
「……原來如此。您已經在設想與毛利之戰的後局了吧。」
「……なるほど。既に毛利との戦役後(・・・)を見ておられるのですね」
由靜子的話,官兵衛察覺她已將毛利滅亡視為既定事實。她對毛利必敗毫無疑問,雖可能會遭受些許苦戰,但確信不會敗北。
静子の語る言葉から官兵衛は、毛利の滅亡を確定事項としていることに気が付いた。彼女は毛利の敗北を疑っていない。多少は苦戦を強いられるかもしれないが、負けることなどあり得ないと確信している。
官兵衛疑惑她的自信從何而來,但回顧她的經歷便可找到端倪。靜子所建的最大武功固然是與武田信玄的決戰,但除此之外,她實際上常常不以戰鬥本身取勝。
彼女の自信はどこから来るのかと疑問を抱いた官兵衛だが、彼女の経歴を振り返れば見当がついた。静子の上げた最大の武功と言えば武田信玄との決戦になるが、それ以外ではそもそもいくさ自体をしていない事が分かる。
更可說的是,從她早期的戰績看來,敗戰居多。然而考慮到她仍穩健擴張勢力,浮現出驚人事實:她體現了「不戰而屈人之兵」的精神。
更に言うならば初期の戦歴を見れば負けいくさの方が多い。それでも彼女が着実に勢力を拡大してきたことを考えれば、驚愕すべき事実が浮かび上がった。即ち『戦わずして勝つ』を体現しているのだ。
未及發展為白刃相見,她便在更前的階段解決對手,將敵對勢力悉數吞併,這一事實令官兵衛感到戰慄。
いくさに発展して切り結ぶまでもなく、それ以前の段階で決着をつけてしまい、敵対勢力の全てを併呑しているという事実に官兵衛は戦慄を覚えた。
「是的,當然。諸位是打算輸才去作戰嗎?」
「ええ、勿論です。皆さんは負けるつもりで戦っておられるのですか?」
「當然會贏!」
「無論勝ちまする!」
秀長有些搶白地插話道。
秀長が少し食い気味に言葉を被せる。
「只要諸位穩紮穩打累積勝利,討伐毛利便等於既成;剩下的無非是早晚之分而已。」
「皆様が着実に勝利を積み重ねていただければ、毛利討伐はなったも同然。後はそれが早いか遅いかだけの問題にすぎません」
聽到靜子的話,官兵衛不由自主地將視線投向竹中半兵衛。半兵衛似乎也察覺她的用意,兩人對視片刻。靜子所談的一大流通路,不僅止於建立經濟圈。
静子の言葉を耳にした官兵衛は、思わず竹中半兵衛へと視線を向けた。彼も彼女の真意に気付いたようで、二人はしばしの間見つめ合う。静子が語った一大流通路は単に経済圏の確立にとどまらない。
(毛利包圍網……)
(毛利包囲網……)
一旦此巨大商圈成立,毛利便如四肢被斬。即便是毛利,若被四面環敵且從經濟上被封殺,便無力抵抗。
この巨大商圏が成立してしまえば、毛利は四肢をもがれることになる。如何に毛利といえども、周囲を敵に囲まれた上で経済からも締め出されれば抗うことなど出来ようはずがない。
惟一未被織田支配觸及之日本海側,須越過險峻山脈才能出海,根本無法作為商業通道。一旦被逼到這樣的境地,毛利就已然走投無路。
唯一織田家の支配が及ばない日本海側に出るには険しい山脈を越えねばならず、とても商売として成立しえない。この状況下に追い込まれた段階で、毛利は既に詰んでいるのだ。
「那麼,關於正題的有馬開發,並非沒有辦法。」
「さて、本題の有馬開発についてですが、手がないわけでもありません」
「那是什麼?」
「それは一体?」
「南蠻有句諺語『要藏樹就藏在森林中』。換言之,最好把它納入一個更大的計畫的一部分。若能讓上樣親自宣布,便成為我援助的正當理由。不過我先前積攢的金子已大量支出,眼下能立刻備妥的約為一萬貫(以現今貨幣價值約十億日圓)左右。」
「南蛮には『木を隠すなら森の中』という格言がございます。つまりはもっと大きな計画の一部に組み込んでしまえば良いのです。それを上様直々に宣言して貰えれば、私が援助する大義名分となりましょう。とはいえ溜め込んでいた金子をかなり吐き出したため、すぐにご用意できるのは一万貫(がん)(現在の貨幣価値にして約10億円)程になります」
「一萬!!」
「一万!!」
官兵衛不由得喊出聲來,但強忍住要接著說的話。他原以為靜子充其量會做中長期投資便心滿意足,然而靜子竟說要立刻拿出一萬貫的現金。
思わず声を発してしまった官兵衛だが、続く言葉が漏れるのを無理やり抑え込んだ。彼は静子が中長期的に出資してくれるようになれば御の字だと考えていた。しかし、静子は即金で一万貫もの大金を用意すると言う。
就算身為織田家的重臣,這也是超出個人可獨斷調動的金額。官兵衛忽然明白,靜子宛如一座能壓制洶湧激流的巨大堰壩;她一旦動起來,將攪動驚人的人、物、金規模,精明的商人絕不會錯過。
如何に織田家の重鎮とは言え、一個人が独断で動かせる金額の範疇を超えていた。唐突に官兵衛は理解する。静子とは激流を抑え込む巨大な堰(せき)なのだと。彼女が一度動き出せば、途方もない規模の人・物・金が動くのだ。利に聡い商人たちが見逃さないはずだと舌を巻いた。
「若能得到上樣的認可,恐怕沒有人會說不。」
「確かに上様からお墨付きを頂ければ、否と言えるものはおりますまい」
半兵衛判斷似乎能獲得靜子的協助,便暗自鬆了口氣。說得不好聽些,這等於分得巨大商圈構築的零碎好處,但若能共享繁榮,便毫無問題。
静子の協力を取り付けられそうだと判断した半兵衛はそっと胸をなでおろしていた。悪く言えば巨大商圏構築のおこぼれに与(あずか)る形となるが、繁栄を享受できるのであれば何ら問題はない。
「不過,要把這事向上樣稟報,恐怕要花相當多的時日吧?」
「しかし、上様へとお話を持っていくとなれば、かなりの日数を要するのでは?」
「啊,我還沒告知。無需擔心,正巧上樣目前就住在這裡。」
「ああ、お伝えしていませんでしたね。御心配には及びません、折よく上様がこちらにご滞在中です」
正當眾人開始設法安排與信長會面的程序時,靜子投下了一枚震撼彈。這意外的近乎擦身而過,讓靜子以外的人都面色一變,毋庸置疑。
信長に会うための段取りを模索し始めた矢先に、静子が爆弾発言を放り込んできた。まさかのニアミスに静子以外の面々が顔色を悪くしたのは言うまでもない。
信長留宿於靜子府上的理由有數項,其中之一便是進行新準備的通信機器試運轉。靜子被請託通融,原本已完成任務準備拆解的驗證用通信機得以繼續使用。
信長が静子邸に逗留している理由は幾つかあるのだが、そのうちの一つに新たに用意させた通信機の試験運用をすることが含まれる。静子に無理を言って役目を終えて解体を待つばかりであった検証用の通信機を使えるようにさせた。
他把它運往安土城,透過通信連結尾張與安土,確認能在多大程度上掌握情勢並下達指示。
これを安土城へと輸送させた上で尾張と安土を通信で結び、どの程度の状況把握と指示を出すことが可能となるのかを確かめているのだ。
結果相當理想,信長能在尾張的靜子宅中安坐,所下的差配在安土執行時並無太大差異。他深信這種革命性的通信手段,不只改變軍事,亦足以一舉翻轉政治與經濟等與民生直結的領域。
結果は上々であり、信長は尾張の静子邸で寛ぎながらにして安土で差配しているのと大差ない状況を生み出した。この革命的な通信手段は軍事だけにとどまらず、政治や経済といった生活に直結した分野すらも一変させ得ると確信する。
當然並非沒有問題。正如目前能部署的數量尚可用一手指頭數盡,這說明設備本身極為昂貴;此外,能掌控通信、並在有限時間內準確傳遞大量資訊的技術人員也少之又少。
とは言え問題がないわけではない。未だに片手で数えられるほどしか配備できないことからも分かるように、機材がそもそも高価であること。また通信を制御する技術者や、限られた時間でより多くの情報を正確に伝達する手順に習熟した通信手が少ないことにあった。
但信長對此持樂觀態度。他認為自從火器傳入日ノ本後便迅速遍及全國,這麼具便利性的技術不可能得不到支持。
しかし、信長はこれら諸問題を楽観視している。日ノ本に鉄砲が伝来して以来、瞬く間に全国へと広まったように、これほどの利便性を齎す技術が支持されないわけがない。
電信蘊藏無限可能,雖因技術被少數掌握而需時推廣,但終有一天會建成連結日ノ本各地的通信資訊網。雖然需要龐大費用,信長自信能創造足以彌補並超越這些成本的利益。
電信は無限の可能性を秘めており、技術を独占しているがために時間を要することになるが、いずれは日ノ本各地を通信で結んだ情報網が出来上がるだろう。それには莫大な費用が必要となるが、信長にはそれらを補って余りある利益を生み出せる自信があった。
「嗯,這樣便好。情況一有變動就通報。」
「ふむ、これで良かろう。状況が変わり次第連絡するよう伝えよ」
「哈哈!」
「ははっ!」
說罷,信長把親自批示的文書交給在側的小姓。小姓將此文書交給事務人員,照電信格式抄清後送入電信室,藉由電波傳至安土。
そう言うと信長は控えていた小姓に自ら認(したた)めた書類を託す。小姓はこの書類を事務方に預け通信様式に沿って清書をして貰い、電信室へと運び込まれたそれは電波に乗って安土へと届くことになる。
此時遠在安土的堀大概正看到信長下達的命令。由於電信技術仍在黎明期,通信品質差,男性低沉的聲音難以辨識,因此多由女性擔任通信員,電信室成了女性的職場。
今頃遠く離れた安土では、堀が信長からの命令を目にしていることだろう。電信技術は未だ黎明期にあるため、通信品質が悪く男性の低い声では聞き取りづらい。そのため通信手はもっぱら女性が起用され、電信室は女性の職場となっていた。
這在一般地方難以成立,但幸好尾張有許多接受高等教育的女性。在普遍認為女性不需習學的社會裡,唯有尾張如同特殊點般,讓女性得以活躍。
通常であれば成立しえない状況なのだが、幸いにして尾張ならば高度な教育を受けた女性が数多く存在する。女性に学問は必要ないとされる世の中に於いて、尾張だけは特異点が如く女性の活躍し得る状況にあった。
信長徹底為電信世界所吸引,沉溺於其便利。雖然若需會見要人仍得花數日返回安土,但除此之外,他已可足不出尾張處理政務。
信長はすっかり電信の世界に魅せられ、その利便性に耽溺(たんでき)していた。流石に重要人物との面会ともなれば、数日かけて安土へと戻る必要が出てくるが、それ以外であれば尾張に居ながらにして政務をこなすことが出来る。
正如「一所懸命」這句話所示,武士不應對土地執著以命相搏,然而信長正在逐漸失去對土地的執念。
『一所懸命』という言葉があるように、土地に執着して命を懸ける武士にあるまじきことながら、信長は土地に対する執着を失いつつあった。
(我終於明白靜子秘藏電信的理由了。這是可怕的『力量』。超越場所與時間的能力——原本只有神佛才能實現的空想世界,現在將成為我的所用)
(静子が電信を秘する理由が良く判ったわ。これは恐ろしい『力』ぞ。場所と時間を超越するなぞ、神仏にしかなし得なかった空想の世界が、我が物になるのだ)
信長暗自得意。他腦中利用通信形成的新戰略逐漸成形。就在這時,一聲類似猛獸低嚎的聲音從他腹中響起。
信長は一人ほくそえんでいた。彼の頭の中では通信を利用した新たな戦略が形になりつつあった。そんな折に、猛獣の唸りにも似た音が信長の腹から響く。
信長因沉迷電信而忘了進食,全神貫注;頭腦因興奮而清明,然而未獲足夠燃料的身體先發出警示。他咯咯一笑,便吩咐小姓去辦事。
信長は電信に夢中になるあまり、食事をとることも忘れて没頭していた。頭は興奮で冴えわたっていたが、ろくに燃料を補給されない体が先に悲鳴を上げたのだ。何が面白かったのか、信長はくくっと笑うと小姓に命じる。
「速去告訴靜子,趕緊準備飯食。」
「急ぎ食事の支度を整えるよう、静子に伝えよ」
「是、是!」
「は、ははっ!」
小姓一接到信長的話,便真地飛奔而去。
小姓は信長の言葉を受けるや否や、文字通りすっ飛んで行った。
「在這種不合時宜的時段……」
「こんな中途半端な時間に……」
被告知信長的所望後,靜子不禁抱頭。招待主君理所當然已備午餐,卻被信長一句「不需!」打發,轉而沉迷於電信。
信長の所望を伝えられた静子は思わず頭を抱えていた。主君である信長をもてなすに当たって、当然ながら昼餐(さん)は準備されていた。しかし、それを信長は「要らぬ!」と一言で切って捨て、電信に夢中になっていた。
那些菜肴已冷,無法端上桌,且早已由家臣吃掉。此刻正處於午餐與晚餐之間的尷尬時段,廚師們也吃完員工餐、正休憩中。
時が経ち冷えてしまった料理を出すわけにもいかず、それらは既に臣下の腹に収まってしまっている。更に今は昼餐と晩餐の合間という実に中途半端な時間であり、料理人たちも賄いを食べ終わり寛いでいたところであった。
在這種時候還要緊急準備飯菜,著實令人難以招架。通常會等到晚餐的信長不知為何要正餐而非點心,作為主婦的靜子自然不能不應允。
そんな折に急いで飯の支度をせよと言うのだから堪らない。通常であれば晩餐まで待つ信長が、何を思ったのか間食ではなく食事をご所望なのだ。静子は亭主としてこれに応えないわけにはいかない。
近來對飲食越發講究的信長使得烹調變得棘手。他為避免思考遲鈍而不嗜酒,改以茶相代,並對各種食材有獨到的堅持。
近頃とみに食への拘りを強めている信長の食事は難しい。思考が鈍るからと酒を好まない代わりに茶を求め、様々な食材に対して独自の拘りを発揮する。
他基本上偏好重口味,但在蔬菜方面較喜蒸物多於燉煮;然而在上肉菜時,又會要求連配菜也要有濃烈調味。懷念起當年只要能填飽肚子、什麼都無所謂的日子來。
基本的に濃い味を好むが、野菜類に関しては煮物・炊きものよりも蒸し料理を好んだり、かと思えば肉料理を出す際には野菜にも強い味付けを要求したりもする。食事など腹に溜まれば何でも良いと言っていたころが懐かしい。
「沒辦法了,抱歉打擾你們休息,請去叫廚師們準備吧。」
「仕方ないか、休憩中のところ申し訳ないけれど、料理人たちに支度するよう声をかけて頂戴」
「明白了」
「承知しました」
餓得肚子咕嚕叫的信長食慾異常旺盛,把端上來的料理一樣樣吃光;而且還如常出席了按時舉行的晚餐,照舊享用一頓飯。
腹の虫が鳴くほどに空腹だった信長は、いつになく旺盛な食欲を発揮し、出される料理を片端から平らげた。更には信長の命により定刻通り催された晩餐にも顔を出し、常と変わらぬ食事をとった。
即便是大食家也吃過頭了,已步入中年的信長因胃痛而不得不臥床休養。
如何に健啖家(けんたんか)であろうとも流石に食べ過ぎであり、中年の域に達している信長は腹を痛めて寝込む羽目となる。
「……我不是說過應該延後或取消晚宴嗎?」
「……私は晩餐の時刻を遅らせるか、中止すべきだと言いましたよね?」
靜子對因胃痛臥床的信長提出譴責。尷尬的信長轉過頭裹在被裡,對靜子的話置若罔聞。
腹痛で寝込んでいる信長に対して静子は苦言を呈する。ばつの悪い信長はそっぽを向いて布団に包(くる)まると、静子の言葉を右から左へと聞き流す。
畢竟不能說信長是因暴食而臥病,於是便謊稱要與靜子內談,將人遣走後退居內室休養。
流石に信長が食べ過ぎで寝込んでいるとは言えないため、静子と内密の会談を行っていることにして人払いをした奥の間に引き籠っている。
「並非肚子痛。妳只是多慮罷了。」
「別に腹など痛めておらぬ。貴様が心配性なだけだ」
「好好,我知道了,請喝這個。」
「はいはい。判りましたから、これを飲んで下さい」
對於始終不肯承認過錯的信長,靜子一邊不理會他的辯解,一邊遞上茶盞。因無速效胃藥可用,靜子所遞之物乃將蘿蔔磨碎後以布過濾,加入少量蜂蜜調成易入口之飲品。
あくまでも己の非を認めようとしない信長に対し、静子は抗弁を聞き流しながら湯呑を差し出した。即効性のある胃腸薬など存在しないため、静子が差し出した湯呑の中身は大根をすりおろしたものを布で漉(こ)し、少量の蜂蜜を加えて飲みやすくしたものであった。
即便是信長,也似乎對因脹氣引起的噁心感到厭煩,他坦然把這簡便胃藥一飲而盡,又背對著靜子開口說話。
さしもの信長も膨満感から来る吐き気には辟易していたのか、素直にこの簡易胃薬を飲み干すと再び静子に背を向けながら声をかける。
「聽說禿鼠的手下來了呢」
「ハゲネズミの手下が来ているそうだな」
信長所說的禿鼠指的是秀吉,而手下自然指秀長以及半兵衛與官兵衛。雖因相似猿猴而出名的秀吉,信長也常以他那清癯的面相稱作禿鼠。
信長の言うハゲネズミとは秀吉のことを指し、手下とは言うまでもなく秀長及び半兵衛と官兵衛を示している。猿に似ていることで有名な秀吉だが、信長は彼の貧相な顔立ちを指してハゲネズミと呼ぶこともあった。
至於秀長等人在和靜子會談後,認為在準備不足的情況下直接去見信長並不妥當,於是借用了靜子宅邸的一間房室,摟在一起開始商議什麼。
肝心の秀長らは静子との会談の後、準備不足のまま信長に会うことを良しとせず、静子邸の一室を借りると頭を突き合わせて何事か相談を始めていた。
「現在大概正在準備,可以和上樣報告吧。還要再等一陣子」
「今頃、上様にお話しできるよう準備をなさっているのでしょう。もう暫くはかかりそうです」
「哼,總算回升的氣勢,看樣子是相當不想讓它斷掉。禿鼠這陣子也一直無甚大作為」
「ふん、ようやく上向いてきた流れを余程断ち切りたくないと見える。ハゲネズミはこのところ鳴かず飛ばずであったからな」
正如信長所言,秀吉的財務狀況並不好。不過這並非秀吉獨有的困境,打仗愈多,金錢愈容易消耗,這是世道常理。
信長の言葉通り、秀吉の懐事情は芳しくない。とはいえ、これは秀吉に限った話ではなく、いくさをすればするほどに銭を失うのは世の定めであった。
戰事單是維持軍隊就會耗掉巨額金錢,即便割取領地,從那裡產生收益也要往後推延。能夠勉強不出赤字的光秀,反而可說擁有罕見的手腕。
いくさは軍を維持するだけで金が飛ぶように減ってゆき、たとえ領地を切り取ったとしてもそこから収益が上がるのは先の話になってしまう。辛うじて赤字を出していない光秀は稀有な手腕を持っているとさえ言えた。
「近來因為輕易讓剩餘資金回流,誤以為自己的統治成功的人越來越多了……」
「このところ安易に余剰資金を還流したため、己の統治が成功した要因だと思い込む方が増えておりまして……」
靜子在準備東國征伐的同時,把手頭上多餘的資金散布於織田領各地。
静子は東国征伐の準備をする傍ら、手元にだぶついていた余剰資金を織田領の各地でばら撒いた。
正因為是外在因素帶來的突如其來景氣,領主們因此自鳴得意,便漸漸有把那歸功於自己手腕的驕傲之風。
まさに外的要因によって降ってわいた好景気に気を良くした領主は、それを己の手腕によるものだと慢心する風潮が見られるようになった。
「放著不管吧。那等被一點東西就弄糊塗的人,非得吃點苦頭不會明白」
「捨て置け。その程度で勘違いする奴らは、己が痛い目を見ねば理解せぬ」
靜子自責於自身的不足,然而信長卻懷疑那等連杠桿(てこ)之存在都察覺不到者之資質。
静子は己の至らなさを悔いていたが、信長は梃子(てこ)入れの存在すら察知できない者の資質を疑っていた。
「……好。無論如何,為了牽制堺過度富裕,開發有馬也有其意義。給他們些錢去做」
「……良し。いずれにせよ、堺が過剰に富むのをけん制する意味でも有馬開発には意味があろう。あ奴らに金を出してやれ」
「承知」
「承知しました」
「不問理由嗎?」
「理由を問わぬのか?」
「我也和上樣有相同結論。而且既然要出錢,絕不會全然放手不管。務必請他們成功,為此我會出言也會出手」
「私も上様と同様の結論を持っております。それに金を出す以上は、丸投げには致しません。是が非でも成功して頂き、そのためには口も手も出しますゆえ」
聽到靜子的話,信長露出一抹奸笑。對靜子來說,若是信長的命令便不會拒絕。雖未明言,但她也理解雙方大致想法是一致的。
静子の言葉を聞いた信長はにやりと笑みを浮かべた。静子としても信長からの命であれば否やは無い。更に直接口にはしないものの、凡(おおよ)そ考えていることは同じだと理解できていた。
若靜子要出資,受理窗口的御用商『田上屋』將會開店。已具全國規模的田上屋若承擔起現代所謂的銀行業務,有馬溫泉的利權便幾乎落入靜子掌中。
静子が融資をするとなれば、窓口となる御用商である『田上屋』が店を出すことになる。既に全国規模の田上屋が現代で言う銀行業を担うのだ、有馬温泉の利権は既に静子が牛耳っているに等しい状態となるだろう。
「照你想做的那樣去做吧」
「貴様のやりたいようにやってみせよ」
「請交給我」
「お任せください」
獲得信長信任的靜子,向不願直視她的信長深深一躬以示敬意。
信長の信任を受けた静子は、目線を合わせようとしない信長に深々と頭を下げて見せた。
隔日,秀長被告知靜子已取到信長的許可。雖然事態在他們頭上越過而進行讓秀長心生不快,但他是擅長處世之人,仍在表面上應付過去。
翌日になり、秀長は静子から信長の許可を取り付けた旨を伝えられる。自分たちの頭越しに事態が進んだため秀長としては面白くないが、処世術に長けた彼はそれでも表面上を取り繕って見せた。
他們不露半點不滿,向靜子禮貌致謝後便離開尾張。抵達尾張港時,剛好有一艘即將出航前往神戶的船,他們便登船成為船上之人。
不満をおくびにも出さず静子に丁重な礼を告げて秀長ら一行は尾張を後にする。彼らは尾張港へと到着すると、折よく出航間近であった神戸へ向かう船に乗り込み、船上の人となった。
「被人說我們那草率的計畫不需要,雖不快,但我們總算盡到了職責。再者還多得了一筆優厚得離譜的融資」
「我らの杜撰(ずさん)な計画など不要だと言われたようで面白くはないが、我らが役目を果たせたことには代わりない。それも法外なまでの好待遇の融資を取り付けられたおまけつきだ」
秀長走到甲板上望著海面,對旁邊一直面露苦色的官兵衛說話。船越出灣內進入穩定航行時,秀長便邀閒得無事的官兵衛上甲板。
秀長は甲板に出て海面を眺めながら、隣でずっと渋面を浮かべている官兵衛に話しかける。船が湾内を出て安定航行に入った処で、秀長が暇を持て余していた官兵衛を甲板に誘ったのだ。
留下獨自一人的半兵衛因為不易暈船,便決定鑽研在尾張購得的書籍,婉拒了秀長的邀請。
一人残された半兵衛は船酔いしない体質を良いことに、尾張で仕入れた書物を読み込むことに決め込んだようで、秀長の誘いをやんわりと断っている。
「作為初期費用一萬貫。再者若制定並提交事業計畫,並且半年一次提交靜子殿指定的會計報告,便能再追加獲得二萬貫的融資,如何?」
「初期費用として一万貫。更に事業計画を策定して提出するのと併せて、半年に一度静子殿の指定する会計報告とやらを出せば、更に追加で二万貫をご融資頂ける、か」
「這說得也太好聽了。世上不可能沒個坑。此外所謂的會計稽核也不好惹。豈非我等的家底都要被看光?」
「話が旨すぎますな。これに裏がないはずがありませぬ。それにかの会計監査というのが曲者です。我らの懐事情が筒抜けではありませぬか!」
「可是若不接受,那有馬開發本身將淪為畫餅而已」
「しかし、それを呑まねば有馬開発自体が『絵に描いた餅』となろう」
官兵衛面對作為會計報告範本的冊子以及記錄了複式簿記基本的書籍,露出絕望的表情。或許因為他不打算親自執掌實務,秀長對會計報告看得格外輕鬆。
官兵衛は会計報告の見本として渡された冊子と、複式簿記の基本が記された書籍を前に絶望的な表情を浮かべる。実務に携わるつもりが無いためか、秀長は会計報告を圧倒的に甘く見ていた。
若曾稍微學過簿記的人便知,具備日語與四則運算能力的話,簿記三級程度靠高中程度的學力即可取得。然而在戰國時代,達到高中生程度的學力本身就已是相當高的門檻。
簿記を少しでも学んだ方ならお分かりになるだろうが、日本語と四則演算ができれば簿記の3級程度なら高校生レベルの学力で十分取得が可能である。しかし、戦国時代に於いては高校生程度の学力というハードルが既に相当に高いのだ。
你以為是要強加無理條件以拒絕融資,但對方說若有不安,會派遣並教育通曉會計的人員來處理。官兵衛對靜子的用意完全摸不著頭緒。
なんだかんだと無理難題を押し付けて融資を断るつもりかと思えば、不安があるのであれば会計に明るい人員を派遣・教育まで面倒をみてくれると言う。官兵衛には静子の狙いが何処にあるのか皆目見当がつかなかった。
(看不懂……做這件事究竟有何利可圖?)
(読めぬ……これをすることに何の利があるというのだ?)
官兵衛無法理解也有其情有可原之處。會計報告是在某一基準日時點對企業績效的評價,若不怕誤解,可說接近成績單。
官兵衛が理解できないのは仕方ない面もある。会計報告というのは企業のとある基準日時点で見た際の業績評価であり、語弊を恐れずに言うならば通信簿に近い。
在接受過MG研修薰陶的靜子眼中,她希望經營者不僅囿於過去成績,還能談論未來;但任何事都難以一蹴而就。
MG研修の薫陶(くんとう)を受けている静子からすれば、過去の成績にとどまらず未来を語れる経営者となって欲しいという思惑があるが、何事も一足飛びに実現することは難しい。
因此她要求導入能以統一評價標準評斷事業經營的會計制度。這不僅是為出資者靜子,也是對將成為經營者的秀吉有利,但要非商家出身的官兵衛去理解,實在是苛刻。
このため、統一された評価基準で事業運営を評価できる会計制度の導入を要求したのだ。これは出資者である静子のためだけでなく、経営者となる秀吉にも利のあることなのだが、商家ならぬ官兵衛にそこを理解しろというのは酷であろう。
「不管怎樣,應該是很好的刺激吧。那麼,你覺得靜子殿如何?」
「何はともあれ、良い刺激になったでしょう。して、静子殿をどう見ました?」
就在恰到好處的時機,秀長問出了問題,彷彿能看透官兵衛心中所想。雖然知道秀長擅長察言觀色,仍令人每次感到驚訝。
まるで官兵衛の心中が見えているかのようなタイミングで秀長が問いかけた。秀長が他者の心の機微を察する力に秀でていると知ってはいても、毎度驚かされてしまう。
「真是個難以捉摸的人。做為人上之人應有的霸氣一點也看不出,卻又說話像是在瞭望遙遠的彼方。老實說看不透她的底細」
「なんとも掴みどころの無い御仁ですな。人の上に立つものとしての覇気などは微塵も窺えぬというのに、遥か遠くを見据えているような物言いをなさる。正直底が見えませぬ」
「呵呵呵。不是初次見面就能看穿的淺薄之人。別說了,從今以後免不了會長期相處。好好用你的眼睛慢慢看清楚吧」
「ふふふ。初顔合わせで見抜けるほど浅い御仁ではありませんよ。なあに、これから嫌でも長い付き合いになります。じっくりとその目で見定められるが良いでしょう」
「即便如此,竟然對一項不知屬於海產抑或山產的事業,隨手就拿出一萬貫,實在不像是正常人的行為。就算是靜子大人,一萬貫也算是一筆巨款吧?難道她不怕失去錢財嗎?」
「それにしても、海の物とも山の物ともつかぬ事業にポンと一万貫を出すなど正気の沙汰とは思えませぬ。さしもの静子殿にしても一万貫は大金でありましょう? 銭を失うことを恐れておられぬのでしょうか?」
「不能說是微不足道的錢,但對她來說就算失去一切也不會那麼痛苦。靜子大人的本性始終是個百姓。她會在貧瘠的大地上挑戰、撒下種子,為了豐收而毫不猶豫地去投資。」
「はした金とは申しませんが、彼女からすれば全てを失ったところでそれほど痛くないのでしょう。静子殿の本質はどこまで行っても百姓なのです。不毛の大地に挑んで種を蒔(ま)き、大きく実った処を収穫するため、投資をすることを躊躇(ためら)われませぬ」
「也就是說,必須先撒種、澆水並悉心照料,才能有所收穫嗎?」
「種を蒔き、水をやった上で手を掛けてやらねば実りを得られぬと?」
「你看看神戶港的工程。那正是她做事方式最具代表性的範例。種子不播撒就不會發芽;既然如此,她知道播種並細心呵護,正是最短的道路。」
「神戸港の事業をご覧なさい。あれこそがまさに彼女のなさりようの最たるものでしょう。種を蒔かないことには芽が出ぬのです。そうであれば種を蒔き、手を掛けてやることこそが最短だとご存じなのですよ」
秀長帶著彷彿看透一切的笑容說道。建造港灣是個大工程,就連秀吉也是向富商與有力者募資,然而靜子竟能獨自承擔所有費用。
まるで見透かしたように笑いながら秀長が言う。港湾を作るというのは一大事業であり、秀吉にしても豪商や有力者から資金を募っている。ところが静子はそれを単独で賄い得るのだと言うのだ。
明明擁有那般的資金實力,靜子宅邸卻樸素節制,靜子本人也毫無華麗之處。官兵衛接觸到她那不顯私慾的為人,便覺得世上竟有此人,實在令人起疑。
それほどの資金力を持っているというのに、静子邸の佇まいは慎ましく、本人にも華美なところがまるでない。まるで我欲を臭わせない静子の人となりに触れて、官兵衛はそんな人間がいるものかと実に胡散臭く感じていた。
「若是有那麼大的資金實力,豈不是會把有馬的事業併吞了嗎?」
「それほどまでに資金力があるのなら、有馬の事業を乗っ取られてしまうのではありませぬか?」
「若靜子大人有此心意,隨時都能做到。正因為如此,她才絕不會做出無理霸道的行徑。」
「静子殿にその気があればいつでも出来るでしょうね。それゆえにこそ、決して無体な真似はなさいませんよ」
對於「能做到卻不做」這樣的說法,官兵衛根本無法理解。他覺得秀長似乎已完全被靜子籠絡,決心至少自己不被騙,保持警惕。
出来るからこそしないという、秀長の言い分が官兵衛にはまるで理解できなかった。秀長がすっかり静子に取り込まれてしまっているように見えた官兵衛は、己だけでも騙されまいと眉に唾する心積もりであった。
「並非叫你不要警戒,但若一開始就抱著疑心,便會忽略事物的本質哦?」
「警戒するなとは言いませんが、頭から疑ってかかると本質を見落としますよ?」
「承蒙忠告,感激不盡」
「ご忠告痛み入ります」
官兵衛那樣回應後轉身背向秀長,回到船艙。看著言語之外態度卻愈發冷硬的官兵衛,秀長在一旁暗自竊笑。
そう返事をした官兵衛は秀長に背を向けると船室へと戻っていった。言葉とは裏腹に態度を硬化させた官兵衛を見て、秀長は一人ほくそえんでいた。
「這倒是會變得有趣了呢」
「これは面白くなりそうですね」
秀長的低語隨著船上的風飄散,未曾傳入任何人耳中便消失了。
秀長の呟きは船上を吹き抜ける風に乗り、誰の耳にも届くことなく消えていった。