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戦国小町苦労譚

一五七七年三月下旬

東國征伐的第一階段甲州征伐由長可率領的先遣隊的迅猛進軍拉開序幕。

東国征伐の第一段階である甲州征伐は長可率いる先遣隊の快進撃によって幕を開けた。

從岐阜城出發的長可強行從兵器廠帶出的大砲,原本打算用來援救被木曾義昌堅守的木曾福島城。

岐阜城を出発した長可は兵器廠(しょう)に無理を言って持ち出した大砲を用い、木曾義昌が籠城する木曽福島城を救うつもりであった。

但聽了前鋒中更前方的斥候帶回的情報,長可判斷以目前的行進速度根本來不及,決定割捨這件珍貴的大砲。

しかし先遣隊から更に先行する斥候が持ち帰る情報を聞くに、このままの進軍速度ではとても間に合わないと判断した長可は虎の子の大砲を切り捨てるという決断を下す。

然而對織田軍來說,把足以左右戰局的重要兵器大砲隨意丟棄是不可想像的;若要運回後方又需分隊護送,反而完全難以負擔。

とは言え織田軍にとっても戦況を左右しうる重要兵器の大砲をその辺に投棄するなど論外である。後方まで輸送しようにも隊を分けて護衛を付ける必要があるため、完全に持て余してしまうことになった。

因此長可想到乾脆在緒戰的岩村城攻略中使用,之後作為占領後城內的防禦設備邊使用邊等著回收即可。

そこで長可はいっそ緒戦である岩村城攻略に使用し、その後は占領した岩村城内の防衛設備としつつ回収を待てば良いのではと思い至る。

在此要稍微談一下成為日ノ本首次遭受砲擊攻城的岩村城。

ここで日ノ本初の砲撃による攻城戦を受けることになった岩村城について触れたい。

岩村城起源於鎌倉時代遠山景朋築造的山城,後世被列為日本三大山城之一,曾以雄偉與無與倫比的堅固著稱。

岩村城は鎌倉時代に遠山景朋(かげとも)が築城した山城に端を発する。後世に於いて日本三大山城の一つに数えられる程の威容と比類なき堅牢さを誇った。

歷史上元龜三年(1572)岩村遠山家當主遠山景任逝世後,遺留下來的女城主、織田信長的姑母「おつやの方」一度守城與武田作戰,但翌年與武田方武將秋山信友結婚而投向武田,最終遭遇悲慘結局。

史実では元亀3年(1572年)に岩村遠山家当主であった遠山景任(かげとう)が亡くなったことを契機に、残された女城主であり織田信長の叔母に当たる『おつやの方』は暫く武田と戦いながら城を守っていたが、翌年武田方の武将秋山信友(のぶとも)と結婚し、武田方へ寝返ったため悲劇の最期を迎えた。

另一方面,在本時代的設定中於元龜三年末武田信玄討ち死に,形勢大幅傾向織田;或因使歷史快轉的因素,遠山景任比史實早逝,而因信玄的西上作戰契機,おつやの方也自織田倒向武田。

一方この時代では元亀3年末の段階で武田信玄が討ち死にし、情勢は武田から織田へと大きく傾いた。歴史を早回ししたことによる影響なのか遠山景任が史実よりも早く逝去し、信玄の西上作戦を契機にやはり織田方から武田方へとおつやの方は寝返ってしまった。

信長對於親族的背叛自然大怒,但即便如此放過她超過五年,想必是因為當時武田方對信長而言已經不再那麼重要。

当然ながら親族の裏切りに信長は激怒した。それにもかかわらず五年以上も見逃されていたのは信長にとって武田方の重要性が低くなってしまったからだろう。

然而在此次第二次東國征伐中,岩村城已被列為明確的攻略目標,可見是要趁此機會給她一個了結。

とは言え此度(こたび)の第二次東国征伐に於いては、しっかり攻略目標に設定されていることから、そろそろ引導を渡してやろうと言う思惑が窺(うかが)えた。

儘管岩村城以難攻不落聞名,若在無援軍可及的情況下固守則根本不可行。

如何に難攻不落で知られた岩村城とは言え、援軍のあてが無い段階での籠城は論外だ。

城山麓所建的物見櫓傳來織田軍逼近的報告,迎擊部隊遂以此為契機出陣欲截斷敵方先鋒。

城山の麓(ふもと)に建てられた物見櫓(やぐら)から織田軍接近の報が齎(もたら)されたのを契機に相手の出鼻を挫(くじ)かんと迎撃部隊が出陣していった。

但之後物見櫓與迎擊部隊皆斷了聯繫,對此異常情況城主秋山信友無法作出決斷,白白浪費了時間。

そしてその後は物見櫓からも迎撃部隊からも連絡が途絶えてしまう。この異常事態に対して城主の秋山信友は判断を下せず、徒(いたずら)に時間を浪費することになる。

長可則採取非常規的部隊運用,把最慢的大砲部隊擺到最前列;他打算把這一仗當作唯一補給來源,將大砲盡用到底。

対する長可は最も脚の遅い大砲部隊を最前列に据えるという常識外の部隊運用をしていた。この一戦だけ弾薬がもてば良いという割り切りから、大砲を使い倒すつもりなのだ。

戰鬥中通常佔高地者占優,然而長可以蠻力顛覆了這一常理;一聽自軍的偵察說敵人集結在山門後方,便命令對附近的物見櫓與山門一帶開砲。

戦闘では一般的に高所を取っている側が有利となるのだが、長可はこれを力業で覆(くつがえ)してみせた。自軍の物見から山門の裏に敵が集結していると聞くや否や、傍に建っている物見櫓及び山門一帯に対する砲撃を命じた。

長可把大砲部隊置於最前列中央,周邊以火繩槍隊防備奇襲,不做觀測射擊便直接開始砲擊。

長可は大砲部隊を最前列中央に据え、周囲を奇襲に備えて鉄砲隊で固めると観測射撃もしないまま砲撃を開始する。

如所料首發未命中預定目標,但敵方見到如同雷鳴的巨響與那被信賴為能抵擋任何攻擊的石垣被大幅抉除的景象,驚愕不已。

当然のように初弾は狙った地点に着弾しなかった。しかし敵方は落雷のような轟音と共にどんな攻撃にも耐え得ると信頼を寄せていた石垣が大きく抉(えぐ)り取られる様を目撃することになった。

次彈偶然直中物見櫓中段,將櫓折斷;目睹此景的敵方陷入恐慌,隨即接連砲彈無情地摧毀防禦設施。

次弾は偶然にも物見櫓の中ほどに直撃すると、櫓をへし折ってしまう。これを目にした敵方は恐慌状態に陥るが、間を置かずにどんどん撃ち込まれる砲弾は容赦なく防衛施設を破壊していった。

由於仰角等因素長可一方看不清敵軍配置,但便以僥倖命中為幸不斷修正目標瘋狂射擊。

長可側からは仰角(ぎょうかく)の関係で、敵軍の配置は判らないものの、当たるを幸いに適宜目標を修正しながら撃ちまくる。

重複此舉直到麓的防禦設施被殲滅,長可軍在未有一兵犧牲的情況下成功將秋山軍困在城中。

これを麓の防衛施設が壊滅するまで繰り返し、一兵の犠牲すら出すことなく長可軍は秋山軍を籠城させることに成功した。

本來即便攻下山麓,要攻上接近山頂的區域也極為困難。

本来であれば麓が攻略されたとしても頂上部付近まで攻めあがるのは至難の業だっただろう。

因為連接山麓與山頂的路線僅有名為藤坂、兩側被樹林包圍的陡峭坡道,天然的險要令防守易而進攻難。

なぜならば山麓(さんろく)と山頂を結ぶルートは藤坂と呼ばれる左右を林に囲まれた急な坂道のみであるからだ。守るに易く攻めるに難(かた)い天然の要害が立ちふさがる。

守方可在山中伏兵,並利用高地將重物滾下攻擊敵人,擁有明顯優勢。

防衛側は山中に兵を伏せることもでき、また高所を利用して重量物を転がすだけで敵を攻撃することが可能となる優位性を持つ。

然而對於攻方的長可來說,他又一次以蠻力突破了這些阻礙。

一方の寄せ手である長可は、またしても力業でこれを突破することになる。

雖說經重砲轟擊後四處崩壞,但石垣構築的山城仍然堅固,於是命令把大砲並列指向山頂,以弧線彈道進行轟擊。

度重なる砲撃を受けてあちこちが崩壊したとは言え、流石に石垣造りの山城は堅固であり、大砲を山頂に向けて並べると山なり弾道での砲撃を命じた。

經足滿改造過的大砲在結構上近似阿姆斯壯砲,砲身刻有膛線,彈體亦刻溝以緊密貼合,所用為椎實型的彈丸、所謂的ミニエー彈,搭配改良過的褐色火藥發射。

足満の手によって魔改造を施された大砲は構造的にアームストロング砲に近く、砲身に刻まれたライフリングと密着するよう弾体にも溝を刻んだ椎の実型の砲弾、所謂(いわゆる)ミニエー砲弾を用いて改良された褐色火薬で撃ちだす仕組みだ。

額外一提,隨著工業化進展,由於可使用硫酸與硝酸,火藥有向無煙火藥轉換的趨勢,但現場仍大量使用庫存充足的褐色火藥。

余談だが工業化が進んだことにより、硫酸や硝酸を使用できる関係から火薬を無煙火薬へとシフトさせようと言う流れになっているが、現場では未だに在庫が潤沢にある褐色火薬が使われている。

經由這些踏實的技術改良,長可所用的大砲雖略為舊型,但最大射程仍可達兩千公尺左右;而岩村城標高約七百餘公尺,故不必冒險走危險的登山路線,也能從麓以曲射攻擊。

こうした地道な技術改良の結果、長可の用いる大砲は少し旧型となるがそれでも最大射程で2000メートルを誇るまでになっていた。対する岩村城は標高700メートル少々であることから、わざわざ危険な登坂ルートをゆかずとも麓から曲射することが出来るのだ。

被用上完全不同技術水準的武器一方陷入大混亂;因為山麓的聯絡中斷,他們還在猶豫要不要派偵察時,山麓便響起不間斷如雷的砲聲。

完全に隔絶した技術水準の兵器を使われた側は大混乱に陥っていた。山麓からの連絡が途絶えたため、偵察を出すか否かを思案していたら、麓から絶え間なく雷鳴の如き砲声が響き渡る。

由於坡度與高低差難以觀測落點,砲擊命中精度相當糟糕,但目標夠大所以仍然有不少命中;高高堆起的堅固石垣也在長可無視高地優勢的攻擊下使秋山方士氣崩潰。

傾斜と高低差があるため着弾点を観測できず、砲撃の命中精度は散々なものだったのだが的がデカいのでそこそこ当たった。高く積み上げられた堅固な石垣も、高所という地理的優位性すら物ともしない長可の攻撃に秋山の心は折れてしまった。

即便當主下令抗戰,也絕對不會對率先開始逃竄的人群起作用;約半刻(約一小時)過後,長可派遣使者呼籲投降,秋山方無條件接受降伏。

仮に当主が抗戦を命じたとしても、我先にと逃げ出し始めた群衆には響かなかったであろうことは疑いようもない。地獄のような半刻(約一時間)が過ぎたところで、長可より投降を呼びかける使者が遣わされ、無条件での降伏を受け入れた。

就這樣城主秋山信友連同其妻おつやの方一同被捕,交付予將會會合的後續部隊;號稱難攻不落的岩村城,在不到半日內便陷落。

こうして城主である秋山信友は、その妻おつやの方共々捕らえられ、合流してくるであろう後続の部隊へと託されることとなった。難攻不落と謳われた岩村城が、わずか半日足らずで陥落したのだ。

長可率領的先遣隊的速勝以電信把要點做為速報傳回,隨後送來的詳報由駐守在靜子宅邸的通信隊接收,事務方抄寫後交到靜子手中。

長可の率いた先遣隊の快勝は、電信によって要点のみを速報として伝えられた。追って送られた詳報は、静子邸に常駐している通信手部隊が受け取り、事務方が清書することによって静子の手元に届けられる。

信長看見能在自宅便掌握信濃國戰況的靜子,心中暗自讚歎;即便自認開明,信長也未能預見電信帶來的革新性。

自邸に居ながらにして、信濃国での戦況を手に取るように把握する静子の姿を見た信長は内心唸っていた。開明的であると自負している信長をして、電信が齎す革新性は見通せていなかった。

看著透過臨時速報與定時聯絡在立體地圖上被適時更新的戰況圖與物資存量,信長意識到自己正目睹戰法根本改變的瞬間。

臨時の速報や定時連絡を通じて、適宜更新されていく立体地図上の戦況図と物資の残量を見て信長はいくさのやり方が根本的に変わった瞬間に立ち会っていると自覚した。

信長接收甲州討伐先遣隊與本隊的聯絡,望向立體地圖上以箭頭型棋子標示的預測進路上存在的攻略目標。

信長は甲州討伐の先遣隊及び本隊からの連絡を受け、立体地図上に矢印型のコマとして配置されている予想進路上に存在する攻略目標を見やる。

長可等先遣隊離開岩村城向北行,目標為木曾福島城。

長可ら先遣隊は岩村城を出て北上しながら木曾福島城を目指す。

若被圍守的木曾義昌能堅守住,則將會與之會合後擊潰武田軍,經鳥居峠越過桔梗ヶ原(長野縣塩尻市)抵達諏訪湖。

籠城している木曾義昌が耐えきれれば、合流した上で武田軍を蹴散らし、鳥居峠を抜けて桔梗(ききょう)ヶ原(がはら)(長野県塩尻市)を経由して諏訪湖へ至る進路を取る。

另一方面,由信忠率領的本隊自岩村城出發,沿天龍川南下並攻下滝沢城。

一方で信忠が率いる本隊は岩村城を出発し、天竜川に沿って南下しつつ滝沢城を落とす。

從此向北上進,目標新府城,途經松尾城、飯田城、大島城逐一攻略,在高遠城與先遣隊會合並攻下它,經過諏訪湖沿岸的上原城後,朝新府城前進。

ここから北上しつつ新府城を目指しながら途上にある松尾城、飯田城、大島城を攻略、高遠城にて先遣隊と合流しこれを攻め落とし、諏訪湖沿岸の上原城を経て、新府城へと向かう進路となる。

如上可見,無論採哪條路線,高遠城都是武田軍防守上不可或缺的要衝。對武田來說,高遠城是從諏訪通往伊那的交通樞紐,也是牽制駿府與遠江的前線基地。

以上から解るようにどちらのルートにとっても避けては通れない武田軍防衛の要となるのが高遠城だ。高遠城は武田にとって諏訪から伊那へと向かう交通の要衝であり、駿府(すんぷ)や遠江(とおとうみ)を睨む前線基地となる。

高遠城在武田信玄手下與大島城、飯田城一同被大規模擴建,形成守護武田的最後防線。

高遠城は武田信玄の手によって、大島城や飯田城と共に大規模な拡張を施されており、武田を守る最後の防衛ラインを形成していた。

換言之,高遠城一失守便意味著武田滅亡。畢竟新府城尚未完成,高遠城以東沒有任何城池能夠承擔起攻克高遠城的重任。

言い替えれば高遠城が落ちるということは武田の滅亡を意味する。何しろ新府城は未だに完成しておらず、高遠城以東には高遠城をも陥落させるような軍を受け持てる城が存在しないからだ。

「根據間諜的報告,武田正向北條調用缺乏的軍備。因此可以斷言不會有北條的援軍來到。」

「間者の報告によれば武田は北条から不足している軍備を融通して貰っています。ゆえに北条からの援軍は無いと断言しても良いでしょう」

靜子向皺眉凝視立體地圖的信長說明現狀。原本安排是信長在安土城接獲聯絡,但不知為何他卻一人來到了尾張。

眉を寄せた表情で立体地図を覗き込んでいる信長に静子が現状を説明した。当初の手はずでは信長は安土城にて連絡を受けることになっていたのだが、何故か単身尾張までやってきてしまっている。

濃姫大概早已預料到信長會如此行動,但僅因覺得有趣便沒告訴靜子。靜子的眼神像死魚般渾濁,絕非錯覺。

信長の行動を予測していたであろう濃姫は、面白そうだからというだけでその可能性を静子に告げなかった。静子の目が死んだ魚のように淀んで見えるのは、決して気のせいなどではない。

「哦! 不是援軍而是希望得到軍備嗎?」

「ほう! 援軍ではなく軍備を望むか」

「武田亦有作為武家主將的自尊。再者北條也許無餘力大幅支援武田。無論如何,雖然武具、糧食、箭矢、火槍與彈藥被送到,但僅憑那些不足以改變戰局吧。」

「武田とて武家の頭領たらんとした矜持(きょうじ)があります。また北条にも武田の支援に割(さ)ける余裕がなかったのでしょう。ともあれ武具や糧食、矢に鉄砲と弾薬が届けられたそうですが、それだけでは戦局は動かないでしょうね」

「我方的軍備如何?」

「我が方の軍備はどうなっておる?」

「萬事準備妥當無虞。日前也已向羽柴等在西國平定的人馬追加發送了糧食。」

「万事滞りなく支度できております。先日羽柴様ら西国を制圧しておられる方々に向けて、食料の追加発送も済ませております」

「嗯。也就是說完美無缺嗎。」

「ふむ。完璧というわけか」

「不,殿下。於兵站而言並不存在完美這一說。」

「いいえ上様。兵站に於いて完璧というものは存在しません」

聽了靜子的話,信長緊張地皺起眉頭。周遭的人感受到緊張而沉默,但靜子仍如往常淡然繼續說下去。

静子の言葉を受けて信長の眉が神経質そうに顰(ひそ)められる。高まる緊張感を受けて周囲の者は押し黙るが、静子はいつもと変わらぬ様子で続けた。

「戰況總是流動變化。若以此自滿而停止行動,從那一刻起資訊便會陳舊,前線與後方就會產生齟齬。要避免此事,只能不斷以達到完美為目標持續努力。」

「戦況というのは常に流動的に推移します。これで完璧として手を止めれば、その時点から情報の陳腐化が始まり、現場と後方での齟齬(そご)が生まれます。これを避けるには常に完璧であろう(・・・・・・)と目指し続ける(・・・・・・)ほかありません」

「那麼,何時才算準備就緒?」

「では、いつになれば準備が整ったと言えるのだ?」

「那將由後世解讀歷史的學者來判斷吧。」

「それは後の世に於いて、歴史を紐解く学者達が判断することになるでしょう」

靜子斷言判斷者並非他們自己。信長聽後垂下眼尾微笑,把手放在靜子的頭上揉亂她的頭髮。

判断するのは自分たちではないと静子が断言する。これを耳にした信長は目尻を下げて微笑むと、静子の頭に手を置いてわしゃわしゃと掻き乱した。

「有其氣概!但若總是太過用力,遲早會犯下大錯。此刻就老實接受誇讚吧。」

「その意気やよし! しかし常に気負っていては遠からず大失敗をやらかすぞ。ここは素直に褒められておけ」

信長邊說邊輕拍揉得亂七八糟的靜子頭頂。

そう言いながら信長はぐちゃぐちゃになった静子の頭をポンポンと撫でた。

「呃、嗯……」

「は、はあ……」

「好。對了,我渴了。聽說有一種大家都稱讚的飲料?就要把我一人排除在外嗎?」

「よし。そうじゃ、わしは喉が渇いたぞ。何やら皆が絶賛した飲み物があると聞いたぞ? ここでもわしだけ仲間外れにすると言うのか?」

靜子稍帶困惑地用手梳理髮絲點頭,但從信長接下來的話推測出他特地來尾張的理由之一。

少し迷惑そうに手櫛で髪を整えながら静子は頷くが、続く信長の言葉で彼がわざわざ尾張まで出張ってくる理由の一つに見当がついた。

(不知道他是從誰那裡聽到蜂蜜檸檬的事呢?)

(誰からはちみつレモンの話を聞いたんだろう?)

東征前見到長可努力特訓,靜子想起運動社團的訓練,便讓人做了檸檬蜂蜜漬,這是源起。

東国征伐を前に長可が特訓に励んでいるのを見て、静子が運動部の練習を思い出してレモンのはちみつ漬けを作らせたのが事の発端だ。

製作了於身體疲勞時補充維他命與快速攝取營養的檸檬蜂蜜漬,覺得剩下的漬汁可惜便加入少量鹽後以水稀釋,改製成蜂蜜檸檬飲料。

肉体疲労時のビタミン補給と速やかな栄養摂取に適しているレモンのはちみつ漬けを作り、余った漬け汁を捨てるのも勿体ないと考え、少量の塩を加えて水で割ったはちみつレモンドリンクへと加工した。

把它冰鎮後送給特訓後的士兵,廣受好評,那清爽的酸甜與沁入身體的口感經由口碑瞬間傳開。

これをやはり特訓後の兵士たちに冷やして届けたところ絶賛され、その爽やかな甘酸っぱさと体に染み渡るような味わいが口コミで瞬く間に広まってしまった。

(端出一樣的東西也沒創意……嗯,加碳酸水調成蜂蜜檸檬蘇打如何?這樣大概可以說是日本初創吧。)

(同じものを出しても芸がないし……うーん、炭酸水で割ってはちみつレモンソーダにするかな? これなら日ノ本初と言えるだろうし)

雖有獨特刺激,但若說是第一次喝到含碳酸的飲料,信長的心情恐怕會好起來。靜子這麼想,便前往廚房為信長準備飲品。

独特の刺激はあるものの、炭酸入りジュースを初めて飲んだことになると言えば信長のご機嫌も良くなるだろう。そう思った静子は、信長に提供する飲み物を作るために厨房へ向かった。

但靜子忘了濃姬的存在。若真想稱為日本初,必須在她不在場時才行,這一點她沒想到。

しかし静子は濃姫の存在を失念してしまっている。真に日ノ本初を名乗ろうと思うのならば、彼女がいない時でなければならないという事に思い至らなかった。

信忠率領的本隊進軍速度出乎眾人預料。本隊比長可晚出發四日才追來,但因長可帶走了大砲,到達岩村城時已將差距縮短到只剩一天。

信忠が率いる本隊の進軍速度は誰しもが予想しえない程のものであった。長可の出発から遅れること4日で後を追い始めた本隊だが、長可が大砲を持ち出したこともあって岩村城に着いた時にはその差が1日まで縮まっていた。

但因長可把大砲留在岩村城,差距再度拉開。當信忠率隊抵達已占領的岩村城,進行戰後處理與整備為中繼據點時,先遣隊已朝木曾福島城行軍。

しかし長可が大砲を岩村城に残していったことにより、再び差が開くこととなる。信忠の率いる本隊が占領下にある岩村城に到着し、戦後処理や中継拠点としての整備をしている間にも先遣隊は木曾福島城を目指して行軍していた。

就這樣匆忙抵達木曾福島城的先遣隊發現,城非但未被包圍,反而與在離地點布陣的武田軍僵持對峙,僅偶有小衝突,令他們意外失望。

そうして押っ取り刀で木曾福島城へと到達した先遣隊だが、城は包囲されるどころか離れた地点に陣を張った武田軍と睨み合っており、時折小競り合いが発生する程度という状況に拍子抜けすることとなる。

進入木曾福島城的先遣隊與城主木曾義昌會合,重編隊形,決定由守城轉為對武田軍發動奇襲。木曾方自有地利,熟悉周邊地形,便以壯觀步兵陣列威嚇武田軍開始進軍。

木曾福島城に入った先遣隊は城主の木曾義昌と合流して部隊の再編制を行い、籠城から一転して武田軍へと急襲を掛ける策に出た。元より地の利は木曾側にあり、周辺の土地を知り尽くしていることを利用し、派手に歩兵部隊を並べると武田軍を威圧するように進軍を開始する。

面對出乎預料規模的長可與木曾聯合部隊,武田軍惶恐間,長可軍的新式火槍隊在木曾軍熟悉山路的引導下,與木曾的鐵炮隊與弓隊隱匿於山巔佈陣。

予想以上の規模となった長可・木曾の連合部隊を目にした武田軍が慌てている間に、山を知り尽くしている木曾軍の案内を受けた長可軍の新式銃部隊と、木曾軍の鉄砲隊や弓隊が山々の峯に隠れつつ配置についた。

開戰的信號是新式火槍的一齊齊射聲。當正面大軍吸引目光之際,他們從側面受到猛烈一擊。

開戦の合図は新式銃による一斉射撃の音で始まった。正面から迫る大軍に目を奪われていたところへ横合いから強烈な一撃を受けたのだ。

由於距離與樹木遮蔽導致瞄準偏差,並未造成太多傷亡,但被來自視線外的攻擊襲擊的武田軍仍然驚亂失措。

距離があったことと、木々に遮られて狙いが逸れたこともあり、それほどの犠牲者は出なかったのだが、意識の外から攻撃を受けた武田軍は浮足立った。

期間內長可與木曾聯合部隊從正面接近,且從周圍箭矢與火槍彈雨湧下,武田軍以綑束竹木作為盾防禦,反而向前衝入混戰,以圖削弱箭雨與火槍射擊的效果。

その間にも長可・木曾連合部隊は正面から距離を詰めており、更に周囲から矢や鉄砲の弾が降り注ぐ状況に武田軍は竹や木を束ねた盾で防御しつつ、むしろ前に打って出ることで混戦に持ち込み、矢や鉄砲の雨を無効化しようとした。

另一方面,長可與木曾聯合部隊如預期般開始後撤,武田軍在槍彈與箭矢驅逐下被誘至鳥居峠,雙方於此展開真正的激烈衝突。

一方、長可・木曾連合部隊は武田軍の行動を予測していたように後退をはじめ、武田軍は銃弾と矢に追い立てられるようにして鳥居峠へと誘い込まれてしまい、ここで両軍が本格的に激突することになった。

鳥居峠為狹窄險峻的單行道,不適合大軍交鋒,部隊會不得不縱長延伸。前方被長可・木曾聯合部隊封堵,後方又被自軍壓迫無法機動,並且從側面遭受射擊,武田軍被誘入這等死亡之地。

鳥居峠は険しい一本道であるため大軍がぶつかるには不向きであり、どうしても部隊が長細く伸びてしまう。前方は長可・木曾連合部隊に塞がれ、後ろは味方の部隊が詰まっており身動きの取れない状況で更に側面から銃撃を受けるという死地に武田軍は誘い込まれてしまった。

就這樣,武田軍付出不少犧牲,狼狽潰敗;長可與木曾聯合部隊則與先埋伏的火器與弓兵會合,展開追擊。

こうして武田軍は少なくない犠牲を出しながら這(ほ)う這(ほ)うの体(てい)で敗走し、これを長可・木曾連合部隊は伏兵としていた鉄砲及び弓部隊と合流して追撃することになる。

持續撤退的武田軍在奈良井川與其支流田川之間的桔梗原重整陣地。桔梗原為奈良井川的扇狀地,廣闊平坦,非常適合大軍決戰。

撤退を続けた武田軍は奈良井川とその支流である田川に挟まれた桔梗ヶ原で陣を立て直す。奈良井川の扇状地であり、原野の広がる台地となっている桔梗ヶ原は大軍同士がぶつかり合うのに申し分のない立地であった。

然而可悲的是,武田軍已付出過多犧牲,喪失了兵力優勢。勢如破竹的長可·木曾聯軍與人數不足且士氣低落的武田軍一旦交鋒,結果不言自明。

しかし、悲しいかな武田軍はそれまでに犠牲を払いすぎ、すでに数の優位性を失ってしまっていた。勝ちいくさで勢いに乗った長可・木曾連合軍と、数で劣る上に士気の下がった武田軍がぶつかり合えば、結果は火を見るよりも明らかであった。

局勢自始至終由織田一方佔優,武田軍再度四散潰逃。雖然戰國時代慣例是追擊潰逃敵軍將其殲滅,但此時長可·木曾聯軍出現了問題。

終始織田方優勢で状況が推移し、またしても武田軍は散り散りに敗走することとなる。敗走する敵を追撃して刈り取るのが戦国の習いだが、ここにきて長可・木曾連合軍に問題が持ち上がった。

「不能再追了!為了與從南路侵攻的勘九郎大人(即信忠)保持步調一致,應該在此桔梗原駐營,作為攻打上原城的立足點!」

「これ以上の追撃は許可できぬ! 南回りで侵攻しておられる勘九郎様(信忠のこと)と足並みを揃えるためにも、ここ桔梗ヶ原に陣を敷いて上原城を攻める足掛かりとすべきであろう!」

「敵大多向北方的深志城(後來的松本城)逃去。若放任不理,攻打上原城時會被從後方突襲!」

「敵の大部分は北の深志(ふかし)城(後の松本城)を目指して落ち延びた。これを放置しておいたら上原城を攻める際に背後を突かれるって言ってんだよ!」

長可堅持要追擊,而作為先遣隊軍目付同行的織田長益主張應先穩固據點,雙方意見分歧。

長可はあくまでも追撃を主張するのに対し、先遣隊の軍目付(いくさめつけ)として同行している織田長益(ながます)は足場固めをすべきだと主張したため意見が分かれた。

長益是信長的弟弟,縱使是長可也不能輕忽。可長可自信主張有理,根本無意遵從長益。

長益は信長の弟に当たり、流石の長可であってもこれを無視することは出来ない。しかし長可は自分の主張に理があると考えており、長益の意見に従うつもりは毛頭なかった。

最初受命擔任先遣隊的團平八也同意長可,遂使意見完全分裂,雙方互不妥協衝突不斷。

当初の先遣隊を任されていた団(だん)平八(へいはち)もまた長可に同調したため、完全に意見が分かれ平行線となり、互いに妥協することなくぶつかり合った。

「上樣已吩咐我可按我意行事!而且據說深志城由馬場昌房駐守,若武田殘黨在此會合,會成為不可忽視的力量!」

「俺は上様から好きにして良いと仰せつかっている! それに深志城には馬場昌房(まさふさ)が詰めているって言うじゃないか、ここに武田の残党が合流したら無視できない勢力になっちまうぞ!」

長可一拳重砸放在軍議場的長桌怒喝。長可的力道使桌腳折斷,擺放其上的戰況略圖等散落一地。

長可は軍議の場に置かれていた長机へ思いきり拳を叩きつけて叫んだ。長可の剛力に長机の脚が耐えきれずにへし折れ、上に載せられていた戦況を示す略図などが散乱する。

「還是怎樣?你能在上樣面前說:我們放過絕佳良機,眼睜睜看著敵人整頓隊形,結果被從後方突襲而慘敗嗎!?」

「それとも何か? 絶好の機会を見逃して敵が態勢を立て直すのを指咥えて見守った結果、まんまと背後を突かれて負けましたって、お前は上様の前で言えるのか!?」

長可怒不可遏,抓起折斷的長桌殘段投擲。重重的長桌在空中飛起,撞上支撐帳幕的木樁,轟然倒下並碎裂。

長可は激情に駆られるまま、脚の折れた長机の残骸を掴んで投げ捨てる。決して軽くはない長机が軽々と宙を舞い、陣幕を支える幕串にぶつかると盛大になぎ倒しながら砕け散った。

「我受不了這種窩囊廢了!我自會自行處置。想留下的人就留在這陣中罷!那個(……)就由我們攻深志城的人帶走!」

「これ以上腑抜けには付き合ってられん! 俺は俺で勝手にやらせて貰う。残りたいやつらはこの陣に引きこもっておれば良い! アレ(・・)は深志城を攻める俺たちが持っていくからな!」

說罷長可怒氣沖天離開陣地。整合慎重派的長益對長可如暴風般的行徑目瞪口呆,但仍未阻止他。

そう言い捨てた長可は、まさに怒り心頭といった様子で陣を出て行った。慎重派を纏める長益は、長可の嵐のような暴れっぷりに呆然としていたが、それでも彼を引き留めよとは言わなかった。

不服從軍目付的意見顯然違反軍規,但無人敢責備暴怒的長可。支持長可的團等也跟著退出,雖然氣氛凝重,軍議仍繼續。

軍目付の意見に従わないというのは明らかな軍規違反なのだが、荒ぶる長可を相手にそれを咎められる者はいない。長可に同調する団なども、彼に続いて陣を退出し、寒々しい空気の中それでも軍議は続けられた。

「森大人,真的可以嗎?」

「森様、本当によろしいのですか?」

「我們整整被耽擱了一天,不能再拖延下去。」

「丸一日も足止めを食ったんだ、これ以上遅れるわけにはいかん」

一名側近追在長可身後問道。長可揮手輕輕回應,彷彿沒什麼大不了。

長可の後を追いながら側近の一人が訊ねる。長可は何でもないとでも言うように手をひらひらと振って応じた。

側近雖對長可的反應嘆息,仍轉向忙著整裝待發的士兵。他所注視之處有配備新式火器的百名銃兵,正在檢查各自裝備與行李。

長可の対応に嘆息しながらも、側近は慌ただしく出立の準備をしている兵士たちへ視線を向ける。彼が見つめる先には新式銃を装備した銃兵100名が、各自の装備と荷物の確認を行っていた。

在織田家與武田家命運交錯並決定興衰的『三方原之戰』中,戰爭形式發生了巨大的範式轉移。

織田家と武田家の運命が交錯し、その後の盛衰を決定づけた『三方ヶ原の戦い』でいくさに関する一大パラダイムシフトが発生する。

正如現在為靜子麾下統籌間諜的真田昌幸之兄、已故的真田信綱所悟,單靠兵力多寡決定戰局的時代已告終。

今では静子の配下として間者を取り纏めている真田昌幸の兄である、亡き真田信綱が悟ったように単純に兵士の多寡(たか)がいくさの趨勢(すうせい)を決定する時代は終わりを告げた。

自火槍傳入以來已有此趨勢,而新式火槍的出現使之成為決定性因素;換言之,能準備多少火器與彈藥成為左右勝負的重大要素。

鉄砲の伝来以降、その傾向はあったものの新式銃の登場によって決定的となる。即ちどれだけ鉄砲と銃弾の数を用意できるかが、勝敗を左右する大きな要因となったのだ。

同樣稱為火槍,但傳統火繩銃與靜子軍制式採用的新式火槍之間存在天壤之別,三方原之戰已證明此點。

一口に同じ鉄砲と言っても、従来の火縄銃と静子軍が制式採用している新式銃とでは、隔絶した性能差が存在することを三方ヶ原の戦いが証明してしまった。

其後持續擴充新式火槍,配備新式火槍的銃兵達到正規兵三千名,訓練中或預備役的預備兵五百名,另有負責觀測的支援兵三千五百名,組成龐大部隊。

その後も新式銃の拡充が図られた結果、新式銃を装備した銃兵は正規兵3000名を数え、訓練中や予備役(よびえき)となっている予備兵が500名、更に銃兵の観測手も務める支援兵が3500名を定員とする大部隊になっている。

統領約七千人的龐大部隊自始至終仍為靜興(即玄朗)掌管,但因超出直轄管理的極限,故以每一千人(正規銃兵五百、支援兵五百)編成一個大隊,共七個大隊,各設大隊長統帥。

約7000名という大所帯を統括するのは初期から変わらず静興(しずおき)(玄朗のこと)だが、流石に直轄で管理できる限界を超えているため正規銃兵500名、支援兵500名を合わせた1000名で7つの大隊を構成し、それぞれに大隊長を置いて統括する。

且在大隊下設四個編制為二百五十人的中隊,每中隊下再編五個五十人的小隊。由於新式銃兵需求高,基本上以小隊為單位派遣。

更に大隊の下に定員250名の中隊を4つ配置し、その下に定員50名の小隊を5つという編制を取っている。新式銃兵の需要が高いため、基本的に小隊単位での派遣が行われる。

「真的要把兩小隊共一百名銃兵全數帶走嗎?他們不是應該分配給所有先遣隊嗎……」

「本当に銃兵2小隊100名全員を連れていかれるのですか? 彼らは先遣隊全てに対して割り振られたはずでは……」

「那個(……)只有支援兵能操作,帶全員走是理所當然。再說留在這裡會被別人挖走,實戰部隊被當成裝門面的傢伙那就太浪費了,不是嗎?」

「アレ(・・)を扱えるのは支援兵だけだからな、全員連れて行くのが当然だ。それにここに置いていったら、また自分の陣営に取り込もうと引き抜きを始めやがるからな。実働部隊を権威付けのお飾りにするような馬鹿には勿体ないだろう?」

「有投訴說因沒人願意被挖角,對方的招募手段越來越粗暴。即便挖來了,連裝備與訓練水準都維持不了吧。」

「誰も引き抜きに応じないので、どんどん勧誘の手口が強引になっているとの苦情がありました。仮に引き抜いたところで装備と練度の維持すらできないでしょうに」

「而且有相當數量狂熱的靜子信徒啊。」

「それに熱狂的な静子信者がそれなりの人数いるからな」

「森大人您也是支持者之一吧?」

「森様もお仲間ですよね」

「你說了什麼嗎?」

「何か言ったか?」

「沒,沒說什麼。」

「いえ、何も」

長可瞪視,但側近若無其事裝傻。長可咂舌一聲,卻意外地相當欣賞這副態度的側近。

長可が睨みを利かせるが、側近は素知らぬ顔でとぼけて見せる。側近の態度に舌打ちを一つした長可だが、意外にもそんな側近を彼は気に入っていた。

「順帶一提,森大人,您攻下深志城之後會再回來嗎?」

「ところで森様、深志城を攻略された後は再びこちらに戻られるのですか?」

「是這樣打算的。」

「その予定だ」

「明白了,那我也去準備出發。」

「承知しました。それでは私も出立の準備をして参ります」

雖為平城,但因本丸、二之丸、三之丸皆以水濠隔開而聞名易守難攻。能當作理所當然會攻克深志城的主君讓側近覺得可靠。

平城(ひらじろ)とは言え、本丸・二の丸・三の丸ともに水堀で隔てられているため守りが堅いことで知られた深志城を、当たり前のように攻略できる前提で話す主を頼もしく思う側近であった。

長可率領部隊離開桔梗原,北上直指深志城,卻不見敵影。

長可が率いる部隊が桔梗ヶ原を出発し、一路深志城を目指して北上するも敵の影は見受けられなかった。

追擊殘敵常會因時間流逝而失去機會,但深志城所在之地形成了周遭竟有十六座城池的要塞地帶,所以殘黨逃入任何一處也不足為奇。

敵の後を追うには時間が経過してしまっていることもあるが、深志城は実に16もの城が周囲に存在するという要塞地帯を形成しているため、その何処に残党が逃げ込んでいても不思議ではない。

長可軍無人阻撓地向北前進,但在看見沿路最南端的赤木城時停止了腳步。

誰にも邪魔されることなく北上を続けていた長可軍だが、進路沿いの最も南に位置する赤木城が見えるところまで進んだ辺りで足を止めた。

並非發生何事,乃是長可突如下令全軍停止。依其命令用望遠鏡掃視四周山巒時,發現崖上、正好路狹處有數名士兵伏地。

何があった訳でもなく、唐突に長可が全軍停止を告げたためだ。そして長可の命令で周囲の山を望遠鏡で見まわすと、ちょうど道が細くなっている箇所の崖上に数名の兵士が伏せているのを見つけた。

「您真是看得仔細呢」

「良くお気づきになりましたね」

「不,我也非一眼就看見。只是這裡對我而言是會埋伏兵的絕佳位置,所以只是讓人確認一下。敵人不會以為自己已被發覺,佯裝小休息的同時準備那個(・・)。」

「いや、俺だって見えちゃいなかったさ。ただ、俺ならここに兵を伏せるだろうなって言う好立地だったからな、念のため探らせたまでだ。敵はこちらに気付かれているとは思うまい、小休止のふりをしながらアレ(・・)を準備しろ」

依長可所示,全隊開始佯裝小休息,赤木城的伏兵便從暗處探出身來,想獲得些敵情。長可軍士兵一邊從水壺飲水或吃乾糧,一邊仍持續警戒四周。

そうして長可の指示したように部隊全体が小休止を始めると、対する赤木城の伏兵は少しでも敵の情報を得ようと物陰から身を乗り出してきた。長可軍の兵士は携帯している水筒から水を飲んだり、携行食を口にしたりしながらも周囲を警戒し続ける。

赤木城士兵以手勢示意他人,可見視野外還有伏兵。稍作休整後,長可軍似乎依號令再度行軍,但陣形組得對行軍來說異常。

赤木城の兵士たちは身振りで誰かに合図しているようで、見えていない場所にも兵士が伏せているであろうことが判る。しばらく休憩を取ったのち、長可の号令に従って再び行軍を開始するように見えた長可軍だが、行軍にしては妙な形に陣形を組んでいた。

一名未持武器、背著大包的士兵走到前方,從背囊取出包在皮袋裡的棒狀物,開始做些準備工作。

そして武器を持たずに大きな荷物を背負っている兵士が前方に進み出ると、背嚢から革袋に包まれた棒状のものを取り出して何やら作業を開始する。

那東西看似鋼鐵製的筒狀物,塗成消光黑以免反光,外形奇特如同長了一足。眾人將其傾斜約四十五度設於地面,雙膝夾住固定,從筒口塞入拳頭大的物體。

それは光を反射しないようマットな黒に塗装された鋼鉄製と思わしき筒状の物体に、一本足が生えたような奇妙な外見をしていた。彼らはそれを斜め45度ぐらいに傾けて地面に設置すると、両膝で挟むようにして固定し、筒の先端から拳大の物体を滑り込ませる。

首先響起的是如震撼腹部的沉低巨響,接著那奇怪的筒狀部件噴出火光。那不明攻擊輕易越過伏在崖上的赤木城部隊,向遠方呼嘯灑下死亡之雨。

最初に起こったのはズドンという腹に響くような重低音、次いで奇妙な筒状の部品が火を噴いた。謎の攻撃は崖上に伏せていた赤木城の部隊を軽々飛び越え、遥か後方に風切り音とともに死の雨を振りまいた。

長可所用乃通常稱作擲弾筒的兵器。足滿謹製的型式為墜發式(落入式)結構,從砲口頂端放入砲彈,使砲彈底部撞擊擊發針而引爆。

長可が用いたのは一般に擲弾筒(てきだんとう)と呼ばれる兵器であった。足満謹製のそれは墜発(ついはつ)式(落とし込み式)と呼ばれる構造をしており、砲口の先端から砲弾を落とし込み、その砲弾底部のファイアリングピンに激突することで発火する。

砲彈底部填有發射用火藥,起爆時底部膨脹並將燃燒氣體朝後方沖擊從而發射。因爆壓膨脹的砲彈底部會咬入砲管上的膛線而獲得旋轉,從而得到直進力。

砲弾底部には発射用の爆薬が込められ、これが起爆することで砲弾底部を膨張させつつ背後に燃焼ガスを叩きつけることで撃ちだされる。爆圧によって膨張した砲弾底部は、砲身に設けられたライフリングに噛み込むことで回転して直進力を得る。

發射出的砲彈靠稱為安定翼的羽狀部件,極有可能先端先著落;那撞擊會使砲彈內的炸藥再度起爆,爆風夾帶金屬碎片四散,攻擊周遭。

撃ちだされた砲弾は安定翼と呼ばれる羽状の部品によって高い確率で先端から着弾し、その衝撃で更に砲弾内の爆薬が起爆すると爆風と共に金属片をまき散らして周辺を攻撃するのだ。

簡言之,此物接近於將發射手榴彈的榴彈發射器做成架設式的迫擊砲。所發射的砲彈因在山林間被樹木阻擋,直擊的較少。

要するに手榴弾を撃ちだすグレネードランチャーを設置式にした迫撃砲に近い武器であった。撃ちだされた砲弾は、森の中という事もあり木々に遮られて直撃したものは少なかった。

然而從上方以猛烈之勢灑下的鋼片令人難以抵擋。廣範圍無差別散布的碎片致使赤木城許多士兵受傷、陷入恐慌,或許有人企圖突擊以停止砲擊。

しかし、上空から猛烈な勢いで降り注ぐ鉄片を受けた方は堪らない。広範囲にわたって無差別に振りまかれる破片によって、赤木城の多くの兵士が負傷し恐慌に陥ったのか、または砲撃を止めるべく突撃をしようとしたのか。

無論如何,從藏匿處奔出後,有些人想向長可軍發動攻擊。但早有埋伏的長可軍不會讓對方輕易攻擊,便以新式火槍與弓箭射殺他們。

とにもかくにも隠れていた場所から飛び出すと、一部の者が長可軍に向けて攻撃を加えようとした。しかし、それを待ち構えていた長可軍がみすみす攻撃されるのを待つはずもなく、新式銃の銃撃や弓での射撃によって次々と討ち取られていった。

「哼,果然是從岩村城逃來的那群人通了情報。見大炮在前,知曉固守無用,就出來埋伏想打場野戰吧。」

「ふん、さては岩村城から落ち延びた奴が情報を伝えたな。大砲を前に籠城は無意味と悟って、野戦を挑むべく待ち伏せに出たってところだろう」

「前方還有小屋城,他們也會出來迎戰嗎?」

「この先には小屋城がありますが、そちらも打って出てきますでしょうか?」

「不曉得呢?若受到剛才攻擊逃走的那幫人去通報,可能會選擇閉門固守。若如此,對策也是有的。」

「どうだかな? 今の攻撃を受けて逃げた奴が知らせれば、籠城するかもしれないな。それならそれで攻めようはある」

果如長可所言,下一座小屋城關閉城門固守。若成為長期戰對無法獲得補給的長可軍不利,於是他們以擲弾筒發射徹甲彈轟碎城門,並以同法破壞防壁,瞬間制壓。

果たして長可の言葉通り、次の小屋城では城門を閉ざして籠城された。長期戦になると補給の受けられない長可軍が不利となるため、擲弾筒で今度は徹甲弾を打ち込んで城門を破砕し、同じ要領で防壁を無効化して瞬く間に制圧した。

能如此輕易攻略諸城亦有運氣因素。此地數年前受焼岳噴火災害影響,至今未完全恢復。無論如何可動員兵力稀少,任少數部隊的長可軍肆意蹂躪。

ここまで容易く城を攻略できたのには運の要素も影響している。この一帯は数年前に焼岳(やけだけ)の噴火被害を被っており、未だに復旧しきれていなかった。何にしても動員できる兵力が少ないため、少数部隊の長可軍に良いように蹂躙(じゅうりん)されてしまう。

至於接下來迎上來的井川城,砲彈一發入侵,士兵便揮動頭上笠帽作出(……)(當時投降時的信號),接連投降。見狀城主也投降,幾乎無血開城。

次に立ちふさがった井川城に至っては、砲弾が撃ち込まれた途端に兵士が身に着けた笠を振り(・・・・)(当時の投降する際に行う合図)、次々に投降してしまった。その様子を見て城主も降伏し、ほぼ無血開城と相成った。

實際上擲弾筒的砲彈對靜子軍來說成本亦高,並未能大量備齊;但那種轟響伴隨自天而降、落地同時將廣域破壞散播的未知兵器令武田軍徹底震懾。

実際には擲弾筒の砲弾は静子軍にとってもコストが重く、それほど大量に準備できていないのだが、轟音と共に天から降り注ぎ着弾と同時に広範囲に被害をばら撒く未知の兵器に武田軍は心底震えあがっていた。

最終抵達深志城時,剩餘砲彈已消耗至十數發,但只要首輪齊射便令敵軍投降,周邊諸城也因此配合解除武裝。

最終的に深志城に辿り着いた時には、残りの砲弾が十数発というところまで消耗していたにもかかわらず、最初の一斉射を受けただけで敵軍が降伏し、それを受けて周辺の城も武装解除に応じることになる。

另一方面在西國,秀吉的播磨平定進入白熱化。受信長命令要鞏固地盤的秀吉開始著手改築從小寺政職奪得的姬路城。

一方西国では秀吉の播磨平定が佳境を迎えていた。信長より足場固めを命じられていた秀吉は、小寺政職(まさもと)から奪った姫路城の改築に着手した。

這本是以作為征伐毛利的前線據點為名,但他卻偷偷指示在本丸增建天守,從優先外觀豪華而非防禦功能可見秀吉有意與光秀競較。

これは毛利征伐の前線拠点とする名目だったのだが、ちゃっかり本丸に天守を増築するよう指示を出しており、防衛機能よりも見た目の豪華さを優先しているところから、秀吉が光秀を意識していることが窺えた。

「多虧大家的努力,再一鼓作氣就能平定播磨。此刻正是挺住的時候!」

「皆の尽力によって、もう一息で播磨平定が成る。ここが踏ん張りどころぞ!」

秀吉一邊讚賞部下的表現,一邊激勵士氣。若播磨與但馬平定,對毛利的全面進攻將正式展開,秀吉正謀求在毛利戰中掌握主導權。

秀吉は部下の働きぶりを褒めつつも発破をかける。播磨と但馬が平定されれば、本格的に毛利攻めが始まるため、秀吉は毛利戦での主導権を握ろうと画策していた。

秀吉認為若錯失此時與光秀的差距將變得決定性,故意圖盡早平定播磨,以向信長展示他已為後續戰事做好準備。

ここを逃せば光秀との差が決定的になると考えた秀吉は、少しでも早く播磨を平定してその後の戦役に対する準備が整っていることを信長にアピールしたいという狙いがあった。

當然秀吉的動作光秀也知道,兩人如競賽般急於平定各自任地。

当然秀吉のこの動きは光秀も承知しており、二人は互いに競うようにして任地の平定を急いでいる。

「竹中殿,播磨去年有許多歉收之地,百姓當然,連將兵都難以溫飽。若保證其食糧供給,或可籠絡他們。」

「竹中殿、播磨は昨年不作の地域が多く、民は勿論のこと将兵に至るまで満足に食えておりませぬ。食い扶持(ぶち)を保証してやれば取り込めるかと」

在秀吉於播磨征伐中所得之人中,有位他自評超出自己所需的黑田孝高(通稱黑田官兵衛,以下稱官兵衛)向竹中半兵衛提出意見。

秀吉が播磨征伐で手に入れたものの内、彼自身が自分には過ぎたるものと評した黒田孝高(よしたか)(通称として黒田官兵衛、以降は良く知られている官兵衛とする)が竹中半兵衛に意見を述べる。

自信長開始侵入播磨時,官兵衛便看重信長的前途。官兵衛原本仕於前述小寺政職,惟荒木村重顯露謀反之兆時,他勸諫主君,反被關入土牢幽禁。

信長が播磨侵攻に着手した頃から官兵衛は、信長の将来性に着目していた。官兵衛は元々前述の小寺政職に仕えていたのだが、荒木村重が謀反の兆しを見せたことに呼応しようとしたため、主君を諫めたところ逆に土牢に幽閉される。

結局荒木未真正反叛,但小寺拒絕秀吉的策反而被討取,其時被幽禁的官兵衛獲救,遂歸順秀吉。

最終的に荒木は謀反に至らなかったものの、小寺は秀吉の調略に応じなかったため討ち取られることとなり、その際に幽閉されていた官兵衛は救い出されたことから秀吉に仕えるようになった。

然而因為他過去仍為小寺最後反抗信長之家臣,故即便獻出了兒子松壽丸為人質也未獲信任,人質待遇亦不佳。

しかし最後まで信長に反抗していた小寺の家臣であったため、人質として息子の松寿丸(しょうじゅまる)を差し出したものの信用されず、人質の待遇も決して良いものではなかった。

打破此局的是竹中半兵衛。半兵衛早期便察覺官兵衛之才,向秀吉力陳應改善其待遇。

この状況を打開したのが竹中半兵衛である。半兵衛は早い段階で官兵衛の能力を見出し、秀吉に彼の待遇を改善するように訴えたのだ。

得知此事的官兵衛對半兵衛的斡旋深表感謝,為不忘恩情而以竹中家的家紋「石餅」為己用,代代相傳。

それを知った官兵衛は半兵衛の取りなしに甚(いた)く感謝し、彼への感謝を子々孫々に至るまで忘れぬよう石餅(こくもち)という竹中家の家紋を使うようにしている。

「嗯。即便給予食糧,度過饑荒後不就會忘恩嘛……?」

「ふむ。食い扶持を与えたとて喉元過ぎれば……となるのでは?」

「那就把供給控制在不至於餓死的最低限度,藉由他們是感激還是積怨來篩選。監視抱怨者,若有謀反徵兆便討之;至少有『已保證扶持』這一大義在手。」

「そこは飢えぬ最低限に加減し、これに感謝するか不満を募らせるかで篩(ふるい)にかけるのです。不満を抱く輩を監視し、謀反の兆しあらばこれを討てば良いでしょう。少なくとも扶持を保証したという大義はございます」

「原來如此。果然是名不虛傳的辣手腕啊。」

「なるほど。噂に違(たが)わぬ辣腕(らつわん)を振るわれる」

半兵衛對官兵衛的計策感到佩服。官兵衛在半兵衛出面斡旋之前,就不因不被信任而氣餒,而是積極地不斷提出平定播磨的獻策。

半兵衛は官兵衛の策に感心する。官兵衛は半兵衛の取りなしを受ける前から、信用されないことに腐らず積極的に播磨平定の献策を続けた。

秀吉能順利推進播磨征伐,多虧半兵衛與官兵衛互相影響。尤其官兵衛通曉播磨,他所提出的策謀即便被人識破也難以迴避,反而恰到好處地奏效。

秀吉の播磨征伐が滞りなく進むようになったのは半兵衛と官兵衛が互いに影響し合うようになったお陰であろう。何より官兵衛は播磨に通じており、彼の立てる策はそれと判っていても回避できずに見事にはまった。

官兵衛也接受了與他匹敵的智者半兵衛的意見,得以提出更加銳利的獻策。當然,這還需要秀吉的胸懷去採納,以及能夠執行那些策謀的實動部隊的配合。

官兵衛も半兵衛という自身に伍する知恵者の意見を受け、一層研ぎ澄まされた献策をできるようになっている。勿論、彼らの策を受け入れる秀吉の度量と、その策を実行できる実働部隊の働きあってのことではある。

「哦,您竟然在這裡嗎?」

「おお、このような場所におられましたか」

正當官兵衛與半兵衛就計策交換意見時,秀長悠然地走了過來,他一如既往地帶著飄然的態度,淡淡地笑著。

官兵衛と半兵衛が互いに策に関して意見を交わし合っていると、ふらりと秀長がやってくる。彼はいつも通りの飄々(ひょうひょう)とした態度で薄く笑みを浮かべていた。

看到秀長,官兵衛的表情變得嚴肅。官兵衛從一開始跟隨秀吉時就覺得他有些可疑,與他接觸後更了解其為人,遂確信他是個非同小可、應予警惕的人物。

秀長の姿を目にした官兵衛の表情が引き締まる。官兵衛は秀吉に仕え始めた当初から彼のことを胡散臭(うさんくさ)く思っていた。彼と接するようになり、人となりが解るようになると、まごう事なき要注意人物だと確信するに至る。

「準備已就緒。即將轉移到神戶港,之後再乘船前往尾張。雖然軍議也很重要,但這次赴尾張是要事,也請你們多加留意。」

「準備が整いました。近く神戸港に移動し、その後船で尾張へと向かいます。軍議も良いのですが、此度の尾張行きは重大事です。そちらにも意識を割いて頂きたい」

「……是要重建有馬吧。不過,秀長殿所說的那位靜子殿,真的會出資嗎?」

「……有馬の再建でしたな。しかし、秀長殿の仰る静子殿とやらが本当に資金を投じて下さるのですか?」

「是的,毫無疑問她會出資。不僅如此,她一旦投資,其他人也必定會競相投入資金。」

「ええ、間違いなく出資されます。それだけに留まらず、彼女が投資する事業には必ずや他の者も競い合うように金を出すでしょう」

雖然耳聞許多傳聞,但對不太了解靜子的官兵衛而言,這實在難以置信。

噂はいくつも耳にしておれど、詳しく静子を知らない官兵衛からすれば信じがたい話であった。

「靜子大人所投資的事業無一例外地高速成長,精於利潤的商人絕不會忽視。你可知道新開發中的神戶港情況?就會像那樣飛躍成長。」

「静子様が投資される事業は例外なく大きく成長しております。利に聡(さと)い商人がこれを見逃すことはありますまい。新たに開発されている神戸港の様子はご存じでしょう? あの様に飛躍的な成長を遂げるのです」

熟識靜子的半兵衛舉出實例補強論據;官兵衛也因信賴半兵衛而改變了看法。

静子を良く知る半兵衛が実例を挙げて論拠を補足する。官兵衛も信を置く半兵衛の言葉に考えを改める。

「的確,曾經荒涼的寒村神戶,現今因為許多商人而熱鬧起來,周邊一帶都充滿生氣。」

「確かに寂れた寒村だった神戸が、今や多くの商人で賑わい、付近一帯が活気づいております」

神戶如官兵衛所言,本來只是一個毫無特色的荒涼寒村;但在靜子的開發下,簡易的軍港一經建成,商人便以如洪潮般的氣勢蜂擁而至。

神戸は官兵衛の言うように、元々これと言った特徴の無い寂れた寒村でしかなかった。そこに静子の開発を受けて簡易的な軍港が整備されるや否や、怒涛(どとう)の勢いで商人たちが雪崩れ込んできた。

熟悉當地情況的官兵衛對此既驚又惑:那些剛整備尚小的神戶港周圍荒地,被人搶先購買,若土地不足還會開墾原野來擴張,令他不解。

現地の様子を良く知る官兵衛からすれば、整備されたばかりの未だ小さい神戸港周囲の寂れた土地を我先に買い求め、土地が足りなくなれば原野を切り開いてまで整備をする様に困惑するばかりだ。

先一步整理好店舖的商人積極展開商業活動,收購他處運來的貨物,或開始以船員為對象的生意;這成長連鎖愈發加速,如今已呈現出不遜於港町的景象。

いち早く己の店を整えた商人は、他所から持ち込まれる荷を買い付けたり、船員相手の商売を始めたりと活発に商業活動を始めている。この成長の連鎖はますます加速し、今や港町と言っても遜色のない様相を呈していた。

更有人開始自備船隻,做起類似廻船問屋的生意。像堺這種大規模港口往往被既得利益牢牢把持,新進者難以介入;但若在神戶港,只要把從西方到達的貨物運到尾張,就能有機會一舉獲利。

更には自前で船を用意し、廻船問屋の走りといった商売を始めるものも出始めている。堺のような大規模港の場合、既得権益でがっちりと囲いこまれていて新規参入が難しいのだが、ここ神戸港ならば西から届いた荷を尾張まで運ぶだけで一攫千金が狙えるのだ。

以神戶港為起點激烈競爭的,不僅止於海運相關,還有大量只用一身力氣東奔西走運貨的棒手振流入。

神戸港を起点として熾烈な争いを繰り広げているのは何も海に関するものばかりではない。その身一つで西へ東へと荷を運ぶ棒手振(ぼてふり)が数多く流れてきていた。

他們肩扛扁擔,前後掛著裝貨的桶四處行商,明白近距離運送與販售的場域對自己有大量需求。

天秤棒一つを肩に担ぎ、前後に荷の入った桶をぶら下げて行商する彼らは、近距離の運搬と販売を担う自分たちの活躍の場が多くあると理解していたのだ。

正如他們所料,神戶港的擴建工程順利推進,隨之港口相關人士與商人,甚至前來購買商品的普通民眾都成了他們的客戶。

そして彼らの読み通り、神戸港の拡張工事は順調に進められ、それに伴って港湾関係者や商人たち、更にはその商品を買い求める一般の者たちまでもが彼らの顧客となった。

繁榮來得太快,以至於海產還好說,蔬菜等青物的供應跟不上,農地像衛星城般在港鎮外圍擴展。

あまりに急な繁栄ぶりに海産物はともかく、青物などの供給が追い付かなくなり、港町の更に外側に衛星都市のように農地が広がるようにまでなった。

沿河利水良好的耕地非常搶手,連被稱為大商人的人都開始投入私財開墾。一等地早已被靜子掌握,因此開發不得不往外擴張。

利水に優れた河川沿いの耕地は人気が高く、大商人と呼ばれる者たちまでもが私財を投じて開墾を始める始末。一等地はすでに静子が押さえているため、外へ外へと開発が広がっていく。

「為了滿足以港口為中心的大量需求,周遭聚集了越來越多人,已經成長到可以稱為港町的規模了。」

「港を中心とした大きな需要を満たすため、周囲にどんどん人が集まって既に港町と呼べる規模に成長しております」

「據說靜子殿在計畫階段就提出在平地種植米、酒米、大豆、蕎麥及蔬菜,在坡地則栽種果樹。」

「静子殿は計画段階の時点で米と酒米、大豆、蕎麦及び野菜を平地で栽培し、傾斜地では果実の栽培も行うと伝えてきておられました」

「經營範圍相當廣啊」

「随分と手広く扱われるのですな」

「不不,這只是農業的一小部分而已。除了農業之外,還有人才可以從事林業、水產業、土木工程到流通等各式各樣的事業。」

「いえいえ、これは農業だけに過ぎず事業全体のほんの一端に過ぎません。農業の他にも林業、水産業に土木工事から流通に至るまで本当に多くの事業を手掛けられるだけの人材を抱えておられるのです」

「竟然如此……」

「なんと……」

說實話,若非受大恩於半兵衛,官兵衛恐怕會一笑置之,認為「不可能有那種萬能存在」。看秀長對半兵衛的話也無表示反應,便可理解這大概是真事。

正直なところ、大恩ある半兵衛の言でなければ官兵衛は「そんな万能の存在などあり得ない」と一笑に付していたことだろう。秀長も半兵衛の言葉に対して何の反応も示さない処を見るに、本当のことなのだろうと理解できた。

(借此機會務必好好見識一番)

(この機会に是非見定めてみたいものだ)

聽百遍不如見一回,越多資料反而讓人物形象模糊不清;官兵衛開始期待與靜子的會面。

百聞は一見に如(し)かずとも言う、これ以上情報を得たところで人物像はあやふやになる一方だ。官兵衛は静子に会うのが楽しみになっていた。