首頁 目錄

戦国小町苦労譚

消遣無聊

不限於封建社會,即便在現代,接近權力者的人,尤其是配偶,往往掌握著隱然的權勢。

封建社会に限らず現代に於いてさえ、権力者に近しい人物、とくに配偶者などは隠然とした権力を持つ。

在史實中的豐臣政權下,成為天下人的秀吉的正室ねね(・・)有時甚至能掣肘(せいちゅう)(妨礙行動)秀吉,顯示出相當的影響力。

史実に於ける豊臣政権下では、天下人となった秀吉の正室であるねね(・・)は、時に秀吉を掣肘(せいちゅう)(動きを妨げる)出来る程の影響力を誇った。

這一點到了江戶時代仍未改變,且因為形成了名為大奧的獨特社會,這種傾向反而更為顯著。

これは時代が下って江戸時代になっても変わらず、むしろ大奥という独自の社会が形成されたこともあって、その傾向に拍車が掛かった。

據說甚至有正室在丈夫將軍死後仍握有極大的影響力。

夫である将軍亡き後も絶大な影響力を振るった正室すら居たという。

被視為天下人的信長的正室濃姫,雖無領地與軍勢,仍具有龐大的影響力。

天下人と目される信長の正室たる濃姫もまた、領地や軍勢を持たずとも絶大な影響力を持っていた。

「來消遣妾的無聊吧」

「遊びにきたぞ。妾の無聊(ぶりょう)を慰めておくれ」

「我家不是戲棚」

「私の家は見世物小屋じゃありません」

濃姫對靜子的辯解聽而不聞,優雅地微笑回應。

静子の抗弁を右から左へと聞き流し、濃姫は上品にほほ笑んで見せる。

以信長入主安土為契機,濃姫原本寄居於靜子邸,但在信忠入城岐阜之時,她也遷居至岐阜城。

信長の安土入りを機に、静子邸に逗留していた濃姫だったが、信忠が岐阜城へ入城したのと時を同じくして彼女も岐阜城へと居を移していた。

即便以岐阜為根據地,濃姫仍時常偷溜出岐阜城,自稱幽訪,屢次造訪靜子邸。

本拠を岐阜に据えて尚、濃姫は折に触れては岐阜城を抜け出し、お忍びと称して静子邸を訪ねるという事を繰り返していた。

周遭當然不悅,但濃姫並不會收斂行為。近侍們向信長抱怨也被敷衍為『任其所好』而放任。

当然ながら周囲は良い顔をしないのだが、濃姫が行動を慎(つつし)むはずもない。近侍たちが信長に泣きついても「好きにさせておけ」と放任されていた。

城主信忠本身也不認為濃姫會安分,曾命屬下時常回報她的動向,但奇怪的是即便她不在,內部也沒有出現問題。

城主である信忠自身も濃姫が大人しくしているなどとは思っておらず、配下に時折様子を報告するようにさせていたのだが、不思議と彼女が不在にしていても奥向きに問題が発生しないのだ。

過去有人藉濃姫不在之機謀劃顛覆上位的暴舉,然而那些人無一例外都因為不測事故喪命,試想會是怎樣的情形?

かつては濃姫の不在にかこつけて下剋上を企むという暴挙に出るものもいた。しかし、その悉(ことごと)くが不慮の事故によって命を落としたとなればどうだろう?

謀劃下剋上的人當然遭殃,連曾縱容此行為的親族也會受牽連,因此在禍端萌生前便被親族扼殺,於是秩序得以維持。

下剋上を企(くわだ)てた本人は勿論、その行動を看過していた親族にすら累が及んだことから、災いの芽が出る前に身内に摘まれるようになり秩序が保たれている。

「近來少了有骨氣的人,無聊極了。想對妾露出獠牙的年輕人都被老人壓制,沒得好戲可逗,手足無措啊」

「近頃は気骨のある者がおらぬのでつまらぬ。妾に牙を剥かんとする若人(わこうど)を年寄りが押さえつけるゆえ、揶揄(からか)い甲斐が無くて手持無沙汰じゃ」

「請不要刻意養成禍端的蛀蟲。什麼事都不發生才是最好不是嗎」

「わざわざ獅子身中の虫を育てようとしないで下さい。何も起こらないのが一番じゃないですか」

「年輕人就該不斷向上抱有野心,結果自取滅亡也是年輕人的特權。只是也不能任後進斷絕,因此只好用間者來消遣一番」

「若い者はどんどん上を目指して野心を抱くべきなのじゃ。その結果、身を滅ぼすのも若人の特権よな。とは言え後進を絶やすわけにもいかぬゆえ、仕方なく間者で遊んでおるのよ」

「前陣子有報告說間者想偷走菜單,真不知道是在幹嘛,莫非是濃姫大人所為?」

「先日、間者が献立表を盗み出そうとしたという訳の判らない報告があったのですが、さては濃姫様の仕業ですか?」

尾張有由靜子與真田昌幸構築的監視網,如蜘蛛絲般縱橫交錯,難以逃脫。

尾張には静子と真田昌幸の手によって構築された監視網が存在する。蜘蛛の糸のように張り巡らされた網から逃れることは難しい。

有間者試圖從岐阜城帶走文書,被此網捕獲,自然遭到拘捕,在嚴刑拷打下吐露了文書的藏匿處。

そしてこの網に岐阜城から文書を持ち出そうとした間者が引っかかった。当然のように捕縛され、厳しい尋問の果てに間者が持ち出した文書の隠し処を吐いた。

昌幸接到報告說已找到間者所藏的文書,面對那份文書感到困惑不已。

逃げきれぬと悟った間者が隠した文書を見つけ出したとの報告を受けた昌幸は、その文書を前にして困惑する。

原來間者冒死帶出的文書是靜子邸廚房定期發行的菜單,這不過是張貼在廚房的公開文書,根本無需偷竊。

間者が命懸けで持ち出そうとした文書とは、静子邸の厨房が定期的に発行している献立表であり、わざわざ盗み出さずとも厨房に貼り出されている公開文書だったからだ。

「無論多麼無聊的東西,只要裝在厚重的外盒裡,就會看起來像機密文件啊」

「如何につまらぬ物であっても、重厚な外箱にしまってやれば機密文書に見えるものよの」

「啊──故意把要弄得很重要的樣子給間者看了對吧?」

「あー……大事そうに隠す様子をわざと間者に見せつけましたね?」

「那個傻子抱著漆塗桐箱裡的菜單,一副很珍惜的樣子,真是好看」

「漆塗りの桐箱に入った献立を大事そうに抱える間抜けの姿は見ものであった」

「真是做了巧妙的惡作劇」

「手の込んだ悪戯をなさる」

「遊戲就是要全力以赴才有趣」

「遊びは全力でやるからこそ面白いというものよ」

(被玩弄的一方可受不了就是了……)

(遊ばれる側は堪ったもんじゃないんですけどね……)

疲於吐槽的靜子閉口不語,只在心中低喃。濃姫理所當然地長居於靜子的私室,像是熟門熟路地在別人家中放鬆起來。

突っ込み疲れた静子は、口に出すのをやめて心の中で呟くにとどめた。濃姫は静子の私室に当然の様に居座ると、勝手知ったる他人の家とばかりに寛ぎ始める。

由於濃姫的行為已成常態,平時以靜子私室為巢的那些動物也不現身。

既に恒例となってしまった濃姫の行動ゆえ、普段は静子の私室を根城にしている動物たちも姿を見せない。

其中即便濃姫來也大搖大擺不走的馬努爾貓丸太,被寵得不亦樂乎。因此丸太嗅到濃姫的氣味後躲進了壁櫥的上層箱,不肯出來。

中でも濃姫が来ても図太く居座り続けたマヌルネコの丸太は、散々に可愛がられることとなった。その為、丸太は濃姫の匂いを感じ取ったのだろう押し入れの天袋に隠れてしまい出てくる様子もない。

「南蠻的果實香氣真高雅」

「南蛮の果実はなんとも香り高い」

濃姫邊說邊入口的,是從靜子的果園採收的山竹(マンゴスチン)。這座果園至今仍持續增加栽培品種,其中山竹堪稱奇蹟之果。

そう言いながら濃姫が口に運んでいるのは静子の果樹園で収穫されたマンゴスチンであった。今もなお取り扱い品種を増やし続けている果樹園だが、中でもマンゴスチンは奇跡の産物であった。

從種子到可收成需耗時五六年的山竹,栽培條件相當嚴苛:發芽後至少前兩年需遮光率七成培育,第三年起才能逐漸曝光成長。

種の状態から収穫可能となるまで5~6年を要するマンゴスチンは、発芽から最低でも2年ほどは遮光率7割で育て、3年目以降は光に当てて育てる必要があるなどと栽培条件が難しい。

在找到這套栽培條件之前,許多幼苗枯死,最後將少數株栽於盆中細心栽培,終於結出果實。

そうした栽培条件を見つけ出すまでに幾本もの苗が立ち枯れてしまい、最終的に鉢植えにして育てた数株がようやく実を結んだのだ。

「這東西只有在這裡才能嚐到。常來光顧是妾的特權啊」

「こればかりはここでしか味わえぬ。足しげく通った妾の特権よの」

「這是我的果園啦。只要把種子好好留下,妳多吃一點也沒關係……但請至少做出一點矜持的樣子好嗎」

「私の果樹園なんですけどね。種さえしっかり残して頂ければ、少々召し上がっていただいた処で問題はないのですが……少しは遠慮する素振りぐらい見せて下さい」

「別這樣客套了。妾和靜子之間不用顧忌的不是嗎?」

「水臭いことを申すな。妾と静子との間に遠慮など不要じゃろう?」

(簡直是說一套又反一套的典型)

(ああ言えばこう言うって見本だよね)

靜子悟出口舌上無法取勝,心中嘆息。然濃姫像個童女般歡喜地品嚐自己用心栽培的果實,讓人感到為人食物之作的最大欣慰。

口では勝てないと悟った静子は心の中で嘆息する。しかし、自分が丹精込めて作った果実を濃姫が童女のように喜んで口にする様子は作り手冥利に尽きるというものでもあった。

結果濃姫並未顧忌,之後仍繼續待到滿意為止。

結局、濃姫が遠慮をすることはなく、その後も彼女が満足するまで居座り続けた。