戦国小町苦労譚
1575年11月中旬
史上首次的攝影,以消耗品耗盡而告終。
史上初となる写真撮影は、消耗品の枯渇を以て終わりを告げた。
儘管有信長與朝廷的支持,對於這場天馬行空的攝影樂意協力的法隆寺僧侶們,靜子一一致以恭敬的謝意,並贈予用以珍藏所捐照片的畫框。
信長や朝廷の後押しがあったとは言え、海の物とも山の物とも知れぬ写真撮影に協力してくれた法隆寺の僧侶たちへ、静子は丁重に礼を述べると共に寄贈した写真を収めるための額縁を進呈した。
所謂畫框,並非泛泛之物,而是以最先端技術毫無保留打造的特製品;雖為素面無飾,卻散發出沉穩厚重的氣質。
一言に額縁と言っても、最先端の技術が惜しみなく注がれた特別製であり、装飾の施されていない無地ながらもどっしりとした重厚さを醸し出していた。
這也是理所當然:以進口的整塊黑檀木磨光作為邊框,鑲嵌極薄且高度透明的板玻璃,縱使遍尋世界,也只有靜子能備得出如此逸品。
それもそのはず、舶来ものの黒檀(こくたん)無垢(むく)材を磨き上げた縁取りに、薄く極めて透明度の高い板ガラスをはめ込んだ世界広しといえども静子にしか用意できない逸品であった。
告知拍攝出的照片一旦接觸外界空氣會變色或褪色,建議將其置入畫框保存,隨即展開撤收準備。
写真は外気に触れると変色したり、退色したりすることを伝え、額縁に入れて保存することを進言して撤収準備に取り掛かることとなった。
技術人員開始拆卸打包器材,並通知在法隆寺外駐守的士兵準備撤離,閒來無事的靜子便漫不經心地看著眾人忙碌穿梭。
技術者たちが機材の解体と梱包を始め、法隆寺の外に陣を張った兵たちにも撤収準備をするよう通達させると手持無沙汰となった静子は、皆が忙しく動き回るのを何気なく眺めていた。
這時正與攝影師談得起勁的虎太郎回到靜子身邊並搭話。
そこへ写真技師と何事か話し込んでいた虎太郎が、静子の許へと戻って来て話しかけてきた。
「齒輪發條式快門壞掉的原因,據說是因為主人指示將裝置本身小型化所造成的弊端。為何如此執著於小型化?」
「ゼンマイ式のシャッターが壊れた原因は、ご主人がお命じになった装置自体の小型化による弊害(へいがい)だそうです。何故、小型化に拘られたのですか?」
對於虎太郎的疑問,靜子托著下巴,若無其事地回答。
虎太郎の疑問を受けた静子は、頤(おとがい)に手を当てながら何でもない風に答える。
「如同我剛說的,滿足於現狀而停滯毫無意義。確實,零件越大可容許的誤差越大,能做出堅固的裝置。但發條作為無需燃料的小型動力裝置,不僅會用於相機,未來會在各種用途被需求。若要大量製造,較大的發條需更多材料,且這差距隨著生產越多而成加速度式擴大。懂吧?越早小型化越好,你能理解嗎?」
「さっきも言ったけど、現状に満足して停滞したんじゃ意味がないんだ。確かに大きな部品なら大きな誤差を許容できるから丈夫な装置を作ることができる。でも、燃料不要の小型動力装置であるゼンマイは、カメラだけにとどまらずあらゆる用途で求められるようになるでしょう。数を作るとなると大きなゼンマイは余分に材料を必要とし、その差は製造すればするほど加速度的に広がっていく。ね? 少しでも早い時期に小型化した方が良いって理解できるでしょう?」
「確實是說懷錶吧?主人傾注心力的機械式鐘錶,據說要做到能字面上放入口袋,每人都能攜帶的小型化。」
「確か懐中時計と仰っておりましたか? ご主人が力を入れておられる機械式時計は、文字通り懐に収まり、各個人が持ち歩ける程に小さくするのだとか」
「這個發條式快門也是用來測定一定時間。啟動時,必定會以相同的秒數關閉快門。這次是構成發條的鋼薄板承受不住上緊的力量而斷裂,不過打算改變材料或厚度再挑戰。」
「このゼンマイ式シャッターも一定の時間を測っているの。作動させれば、必ず同じ秒数でシャッターを閉めるんだ。今回はゼンマイを構成している鋼の薄板が、巻き上げる力に耐えきれずに破断しちゃったけれど、材料を変えたり厚みを変えたりして再挑戦するつもり」
「仍要繼續反覆試驗錯誤嗎?」
「なおも試行錯誤を続けられるのですな?」
「把今天的失敗記錄下來,分析為何失敗,為了明日能成功而持續挑戰。我稱那為『科學』,但我認為它是將知識與經驗整理並傳承給未來的方法。正因如此,為揭示世界真理並把其歸入知識的研究絕對不能停止。不過有很多研究賺不到錢,所以得把有賺頭的研究放到前面才行。」
「今日の失敗を記録し、何故失敗だったのかを分析し、明日こそ成功するために挑み続ける。私はそれを『科学』と呼んでいるけれど、知識や経験を整理して未来へ継承する術(すべ)だと思う。だからこそ世界の真理を解き明かし、知識へと落とし込む研究は決して止めることが出来ないの。まあ、お金にならない研究も多いから、お金になりそうな研究を前面に押し出さないといけないんだけどね」
靜子苦笑著總結。她接受祖父親自的英才教育,從小便透過農業參與研究現場。
静子は苦笑しつつ締めくくった。静子は彼女の祖父の手による英才教育を受け、幼い頃から農業を通して研究の現場に関わっていた。
談到農業研究,說沒有能在一朝一夕出成果的項目也不為過。
農業の研究と言うものは、一朝一夕に結果が出るものなど存在しないと言っても過言ではない。
年幼的靜子曾質疑祖父每日埋首的基礎研究究竟有何用處。
幼い静子は祖父が毎日掛かりきりになっている基礎研究が何の役に立つのか疑問であった。
然而,隨著與祖父一同農作,聽他以夢想之名述說,這些構想於靜子心中漸具形體,而當她升上中學時,其中一項化為現實。
しかし、それは祖父と共に農作業をする中で、彼の口から夢として語られることで静子の中に形を持ち始め、静子が中学校に上がる頃にその内の一つが現実に結実した。
他改良當時全日本種植的越光系稻種,使產量不變但株高約降低三成,並使其普及定著。
当時日本中で栽培されていたコシヒカリ系のお米を改良し、収量そのままに背丈を三割ほど低い品種として定着させた。
靜子的祖父培育出之品種因株高低而不易倒伏,且抗病力強、栽培管理也省力。
静子の祖父が生み出した品種は、背丈が低い為に倒伏しにくく、更に病気にも強い上に、栽培にも手が掛からないという性質を持っていた。
因此靜子的祖父獲頒當年的紫綬褒章(後來亦獲黃綬褒章)。
これにより静子の祖父は、当年の紫綬(しじゅ)褒章を受章するに至っている(後に黄綬(おうじゅ)褒章も受章)。
有這樣的經歷,她近距離見識到基礎研究的重要,並成為鼓勵工匠們投入研究的促因。
こういった経緯もあって、彼女は基礎研究の重要さを身近に見ており、職人たちにも研究を勧める要因になっていた。
然而,從事研究時出現了重大問題。
しかし、研究をする上で大きな問題が持ち上がった。
那是在科學尚未作為學問確立的戰國時代,連如何傳達研究成果的指引都不存在。
それは学問として科学が定着していない戦国時代には、研究成果をどのように伝えるのかと言うガイドラインすらなかったのだ。
在現代,靜子雖有機會見到作為研究成果之一的論文,但她並未處於需親自撰寫論文的情境,因此尚未掌握研究論文的要旨。
現代に於いて静子自身は研究成果の一つである論文を目にする機会はあれど、自身が論文を書くような状況に身を置いては居なかったため研究論文の要諦(ようてい)を掴んではいなかった。
因此,她把從現代帶來的手機中儲存的資料趁電池還能運作時抄寫到紙上,挖出關於專利申請的資料,並以此為基礎建立制度。
このため、現代から持ち込んだ携帯電話に保存していたデータを、バッテリーが稼働する内に紙へと書き写した特許申請に関する資料を掘り返し、それをベースに作り上げることにした。
首先作為展開理論的格式,擬定一套流程:觀察事象、由此推論、提出假說、依假說進行實驗,並附上對實驗結果的考察。
まず理論を展開するためのフォーマットとして、事象を観察し、そこから推論を導き、仮説を立て、仮説を元に実験を行い、実験結果に対する考察を添えるという一連の概要を作った。
並以此理論為基礎,制定在研究成果結實時的報告格式:記載開展研究之前提、列舉研究過程中發生的問題、總結如何解決,最後以結果報告。
そしてその理論を元に研究成果が結実した際には、研究をするに至った前提を記し、研究する過程で発生した問題を挙げ、それらをどのように解決したかを纏め、最終的に結果として報告するという形式を基礎として定めた。
對靜子而言,這是她有相當信心導入的制度,但在推行初期並不順利。
静子としてはそれなりの自信を以て導入した制度だったが、導入当初は上手くいかなかった。
因為要理解這些框架並依格式推進研究,需具備相當於高等教育的學識。
何故なら、これらの枠組みを理解し、フォーマットを用いて研究を進めるためには高等教育相当の学識が必須だったからだ。
因此靜子與工匠們一同投入研究,率先製作資料,口授其意義,並讓他們實際做實驗以產出資料,然後對其進行評估。
故に静子は職人たちに交じって一緒に研究を行い、率先して資料を作成し、意味を話して聞かせ、実際に実験を行わせて資料を作らせ、それを評価した。
就這樣研究手法逐漸在大家之間滲透,但隨之另一個問題出現──隱匿失敗。
こうして徐々に研究手法は皆に浸透していったが、今度は別の問題が持ち上がった。それは失敗の隠蔽であった。
加上在戰國時代失敗可能立即牽連生命的特殊情況,故難以根除。
失敗が即座に命に直結する戦国時代特有の事情もあって、なかなか根絶するには至らない。
雖然鼓勵即便是失敗也要探尋其原因並將之視為成果,但實際情況尚未跟上。
失敗であっても、何故失敗したのか原因を探り、それを成果とすることを推奨しているが実情は伴っていない。
研究者傾向執著於自己提出的假說,只想看到自己想要的結果。
研究者は自分が立てた仮説に執着し、自分の見たい結果のみを見ようとする傾向がある。
這是人性的根本問題,並非能即時改進之事。
これは人間の持つ本質的な問題であるため即座に改善できるというものではない。
今後只能耐心著手長期性的意識改革。
今後も腰を据えて長期的に意識改革に取り組むしかないと考えている。
「嗯,科學嗎。那似乎和主人在書房見到的唐代『科挙之学』是不同的東西呢」
「ふむ、科学ですか。それはご主人の図書室で見た、唐の『科挙之学(かきょのがく)』とは別物のようですな」
在中國,說到『科學』一詞乃科挙之学的縮略語,似乎自十二世紀左右開始使用。
中国に於いて科学と言えば科挙之学の略語であり、十二世紀ごろより使われていたらしい。
至於日本,『科學』一詞則從幕末到明治之際開始被使用。
対する日本は幕末期から明治にかけて、科学という用語が使われるようになった。
不過,當時使用那個詞的福澤諭吉與井上毅等人,將其視為已被體系化、整理(分科)的學問之集大成,稱之為科學。
尤も、当時にその言葉を用いていた福沢諭吉や井上毅といった人物は、体系化され整理された(分科された)学問の集大成として科学と呼んだ。
「嗯……我想起端就在那裡吧。科舉是考查廣泛知識的考試,但科學則是按體系分類的學問,差不多是這種感覺?」
「うーん、発端はそこにあるんだと思うんだけどね。科挙は広範な知識を問う試験だけど、科学は体系ごとに分類された学問って感じかな?」
「嗯……以主人你的年紀能說出如此含蓄的一句話,究竟積累了多少經驗,讓人不禁好奇。」
「ふむ……ご主人の年頃で、これほど含蓄のある言葉を生み出すに至るとは、どれほどの経験を積んでこられたのか興味が尽きませぬな」
「啊哈哈──」
「あははー……」
靜子覺得像是在剽竊先人經過苦心所取得的成果,心裡很不是滋味,但又不能坦率說出理由,只能苦笑以對。
静子としては先人が苦心の末に生み出した成果を剽窃(ひょうせつ)するようで心苦しいのだが、真正直に理由を語って聞かせるわけにもいかず苦笑するしかなかった。
虎太郎看了靜子的樣子,覺得她不想多提此事,便決定轉換話題。
虎太郎は静子の様子を見て、この件にはあまり触れて欲しくないようだと察して話題を変えることにした。
「話說主人,既然照片能夠記錄得如此精細,怎麼卻拍不到人物呢?」
「時にご主人、これほど精細な記録が出来る写真だと言うのに、人物は撮影されないのですかな?」
「啊──嗯。我有想過這點。日本有人認為人形會寄宿靈魂,若影像把姿態如此相像地映出來,似乎會被認為靈魂會被吸走到那裡去。」
「あー、うん。それは考えたんだけどね。日ノ本には人型をしたものには魂が宿るって言う考えがあって、これほどそっくりに姿を映し撮られれば魂がそちらに取り込まれてしまうって思うみたい」
「照你這麼說,主人是抱有不同見解嗎?」
「その言い様ですと、ご主人は異なった見識をお持ちですな?」
「當然不是那樣。按那理論,若平靜的水面映出身影,靈魂就會被水中奪走嗎?不會是那樣的吧?大家說照片長久留存會逐漸抽走靈魂使人早死,但照那樣,一天天在水邊工作、常被水鏡映到的水手,豈不是應該無一例外比陸上人更早死才怪?」
「当たり前だよ。その理屈でいけば、凪いだ水面に姿が映れば水中に魂が取られるの? そうはならないよね? 長く残るから徐々に魂が抜かれて早死にするって皆が言うけれど、それじゃ毎日水辺で仕事をして水鏡に映る機会の多い水夫は、陸の人々よりも一人の例外もなく早死にしないとおかしいはずだよね」
「原來如此,真是高見。那麼就做個實例吧。若沒有人願意,這虎太郎便願意試試看。」
「なるほど、卓見ですな。ならば実例を作ってしまえばよろしい。もし希望者が居ないと言うのであれば、この虎太郎が務めてみせましょう」
虎太郎這麼說著,朝靜子笑了笑。
虎太郎はそう言って静子に笑いかけた。
在靜子的眼裡,虎太郎看起來非常有興趣,並沒有什麼要當人柱那般悲壯的決心。
静子の目に映る虎太郎は、実に興味深そうな面持ちで、人柱になってやろうなどと言う悲壮な決意は見当たらなかった。
靜子覺得若他本人願意那也無妨,於是回答虎太郎。
本人が望むならそれも良いかなと思った静子は、虎太郎に答えた。
「對啊,回到尾張把相機修好之後就拍吧。」
「そうだね、尾張まで戻ってカメラの修理が終わったら撮影しようか」
「喔喔! 您答應了嗎。咕咕咕,這樣我就能作為第一個出現在照片裡的人而流芳百世。那些把我逐出教會的傢伙,定會咬牙切齒後悔!」
「おお! お聞き入れ頂けますか。くくく、これで最初に写真に写った人物として後世まで語り継がれましょう。私を破門した教会の連中は、歯噛みして悔しがることでしょうな!」
平日看似毫不在意被逐出一事,實際上虎太郎一直放在心上,還想以此報復,靜子只能嘆息。
普段は破門のことなど気にする素振りも見せないのに、しっかりと根に持っていた虎太郎とその意趣返しの方法に静子は嘆息するしかなかった。
「你不是說不拘泥過去嗎?唉,也好啦。」
「過去には拘らないんじゃなかったっけ? まあ、良いけれど」
送別那高興離去的虎太郎後,靜子確認撤收準備已就緒,向法隆寺的僧侶們表明辭行之意,然後啟程前往作為中繼地的京。
浮き浮きとした様子で歩み去る虎太郎を見送りながら、静子は撤収準備が整ったのを確認すると、法隆寺の僧侶たちに辞去する旨を伝え、中継地となった京を目指して出発した。
「到了京要和孩子們會合才行。呵呵,不知道能聽到什麼話題呢。」
「京に着いたら子供たちと合流しないとね。さてさて、どんな話が聞けるかな」
她思及留在京的四六和器在分開的期間是怎麼生活的。
京に残してきた四六や器が離れている間、どのように生活していたかに思いを馳せていた。
距離京半日路程時,接到信長命令的池田恒興派來的快馬抵達。
京まであと半日と言った処で、信長の命令を受けた池田(いけだ) 恒興(つねおき)より早馬が届いた。
據說不是要靜子出面,而是點名長可前往。長可把自軍指揮交給副官,與使者一起先行前往恒興在京的屋敷。
聞けば、静子にではなく長可を指名しての出頭依頼であった。長可は自軍の指揮を副官に任せると、使者と共に先行して恒興の京屋敷へ向かう事となった。
長可到屋敷後,恒興親自迎接並引至奧座敷。逐人離開後,恒興所說的是一項簡單的命令。
長可が屋敷に着くと、恒興自らが出迎え奥座敷へと案内される。人払いを済ませた後、恒興が語った内容は単純な命令であった。
因為堺的一位豪商把祖宗世代相傳的土地讓渡給他人,命令是要讓他承擔責任。
堺のとある豪商が先祖代々受け継いできた土地を他人へ譲渡してしまったため、その責を負わせろとのことだった。
若是飛鳥時代的公地公民制還另當別論,但在土地個人所有被公然承認的戰國時代,信長介入土地買賣實在奇怪,於是追問細節,結果發現讓渡對象是外國人。
公地公民制であった飛鳥時代ならまだしも、土地の個人所有が公然と認められる戦国時代に於いて、土地の売買に信長が介入するのは妙だと考え詳細を促すと、譲渡先が外国人であった。
「原來如此。以一儆百嘛,要把賣國賊的下場示眾是吧?」
「なるほど。一罰(いちばつ)百戒(ひゃっかい)だな、売国奴の末路を世に示せば良いのか」
長可聽了之後,立刻理解了信長想要的方向。
それを聞いた長可は、即座に信長が欲するところを察した。
把土地轉讓給同為日本的人民無妨,但若對象是外國人則情況不同。
同じ日ノ本の民に土地を譲るのは構わないが、これが外国人となると話は異なる。
極端地說,就會在日本境內形成他國的領土。
極端な言い方をすれば、日ノ本の中に他国の領土が出来てしまうのだ。
對祭奉天皇、欲圖天下統一的信長而言,這絕對是不能容忍的行為。
天皇を奉じて、天下統一を為さんとする信長としては断じて見逃すことのできない行為であった。
當然,信長在察覺後亦曾派文書與使者多次要求中止交易。
無論、信長としても情報を察知してから再々取引を中止するよう文や使者を遣わせた。
這位豪商到底意圖何為不得而知,但他拒絕了信長的要求。
この豪商が何を企図していたのかは判らないが、彼は信長の要求を突っぱねた。
恰巧與東國征伐失敗的消息同期傳來,或許有想脫離信長支配的意圖也說不定。
折しも東国征伐の失敗が伝えられたのと同時期であったため、信長の支配下から脱したいという意図があったのかも知れない。
接獲此訊息後,信長終止了進一步談判,轉向以武力施以制裁,而長可成為執行者的首選。
この報せを受けた信長は、それ以上の交渉を打ち切り、武力を以て制裁を課す方向へ舵を切った。その実行者として長可に白羽の矢が立ったと言う訳だ。
「蒙奉上意,明白。但若從現在就往堺去,旅裝還未整,且天色將晚。今夜留在京裡,等向我家主公報告後,翌晨再啟程,還請傳達。」
「上様の命は承知した。しかし、今から堺に向かおうにも、旅支度もできぬし、間もなく日も落ちる。今宵は京に留まり、我が殿にも次第を報せた後、翌朝京を発つとお伝え願いたい」
「收到。但我不覺得堺會心甘情願接受森殿,然而上意是『要讓那些想模仿的人心生畏懼』。」
「承った。しかし、堺が素直に森殿を受け入れるとは思えぬが、上様は『真似をせんとする輩が震え上がるようにせよ』と仰せだ」
「原來如此,正合小生之意,銘記於心。」
「なるほど、拙者好みのご命令、しかと心得た」
信長的話,等於允許長可可以焚燒堺。
信長の言葉は、長可に堺を焼いても良いと告げていた。
被賦予等同於信長全權委任狀的權限後,長可腦中已開始盤算如何對付對方。
信長の全権委任状に等しい権限を与えられた長可の頭の中では、相手をどのように料理するかの算段が始まっていた。
長可雖然給人武勇的印象很強,但自從城攻時的騷擾事件以來,耍謀略的迂迴攻擊也成了他的拿手好戲。
武辺者の印象が強い長可だが、城攻めに於けるハラスメント以来、策を弄(ろう)する搦(から)め手もお手の物となっていた。
一想到對方會懇求饒恕、落淚,長可現在就感到心情高昂。
相手が赦しを乞うて泣きを入れるのを思うと、今から気分が高揚する長可であった。
就算是長可也對同陣營中年長的恒興表示敬意,禮貌地告辭後前往靜子的京邸。
流石の長可も同陣営の年長者である恒興には敬意を払い、礼儀正しく辞去すると静子の京屋敷を目指す。
「你遲到了。那麼,池田大人怎麼說?」
「遅かったね。それで、池田様はなんて?」
「是上樣的密命,要去收拾堺那邊的頑逆。」
「上様からの密命で、堺の跳ねっ返りを始末することになった」
「別把堺燒成一片焦土喔?」
「堺を焼け野原にするのはやめてね?」
僅僅因為指名長可要暗殺,大家就以為他會把堺燒掉,這讓長可憤慨;同行的才藏似乎也同意靜子的看法,帶著些無奈的表情看著長可。
長可を指名しての抹殺指令というだけで、堺を焼くと思われた長可は憤慨するが、同席している才蔵も静子と同意見だったのか、やや呆れた様子で長可を見守っている。
「不不,就算是我也不會沒理由去燒像堺那麼大的城鎮!你就這麼不相信我嗎?」
「いやいや、いくら俺でも理由もなく堺程の街を焼く訳がない! そんなに信用が無いのか、俺は」
「你自己不是也說過了,有理由的話也會去燒……再說,照你到目前為止做過的事來看,也沒那麼誇張。」
「自分で言っているじゃない、理由があれば焼く事もあるって……それに今までに君がやらかして来たことを考えればそれほど大げさでもないよ」
被靜子冷靜指出後,長可不由自主地移開了視線。
静子の冷静な指摘に、長可は思わず目をそらした。
坊間流傳『若向織田反抗,赤鬼便會現身』,可見長可的逸事多半聽來相當兇猛。
巷では『織田に弓引かば、赤鬼が現れる』と言われる程に、長可の逸話は物騒な物が多い。
所謂赤鬼,是指被反血染得通紅的長可的稱呼,大家認為若與織田家為敵,長可會現身製造出地獄般的景象。
赤鬼とは返り血で真っ赤に染まった長可を指す隠語であり、織田家に敵対すれば長可が現れて地獄絵図を作り出すと思われていた。
「多虧我借給你的『人間無骨』(十文字槍),已經完全成了你的象徵了呢。」
「お陰で、私が貸し与えた人間(にんげん)無骨(むこつ)(十文字槍)が、すっかり君の象徴として定着しちゃったしね」
「雖覺抱歉,但果然是和泉守所做的,握起來很順手。」
「悪いとは思うが、流石は和泉守(いずみのかみ)の作よ、手になじむのだ」
一直被長可過度使用而撐著的巴爾迪什,果然因為過度負荷需要拆解重鍛一次。
長可の酷使に耐え続けたバルディッシュだが、流石に無理が祟ったのか一度解体して打ち直す必要が出てきた。
在那期間也不能空手,靜子借給長可的就是前述的那把人間無骨。
それまでの間を無手で過ごすわけにも行かないと、静子が長可に貸し与えたのが前述の人間無骨であった。
過去長可多用巴爾迪什或金棒這類以重量猛擊的武器,但史實上據說長可愛用的人間無骨兼具重量與銳利感的手感深深吸引了他。
それまではバルディッシュや金棒という重量で叩き潰す武器を用いてきた長可だが、史実でも長可が愛用したという人間無骨の、重量と鋭利さを兼ね備えた使い心地は彼を魅了した。
「那些非法設置的關所,你到底砸了幾個?」
「不法に設置された関所、一体幾つ壊したと思っているの?」
「超過二十個以後我就沒數了!」
「二十より先は数えておらん!」
當時除了國主設置的公家關所外,代官或地方有力者私設的非法關所到處可見。
当時は国主が設置する公的な関所の他に、代官や地元の有力者が私的に設置している不法な関所が至る所に存在した。
由於其存在本身就是非法,無論如何處理都不會有人有理可申訴,長可便喜歡襲擊那些關所。
存在そのものが不法な物であるため、どのように扱ったところで文句が出ない事を良いことに、長可は好んで関所を襲撃した。
除此之外,他也跟醉漢大打出手、放火燒寺、闖入民宅大肆暴動過。
他にも酔漢と派手に喧嘩をしたり、寺を焼き討ちしてみたり、民家に押し入って大暴れしたりもしている。
不過那個醉漢是吃霸王餐後還威脅店主搶奪金品的傢伙,被燒的寺廟也是因為裡頭的僧人涉足禁忌的高利貸而被處理。
尤も酔っ払いは無銭飲食をした挙句に、店主を脅して金品を強奪しようとした輩であり、焼かれた寺も禁じられた高利貸しに手を染めた生臭坊主を始末した結果であった。
闖入民家那件,是長可的部下遭屋主強佔其妻、又被栽贓為賊以圖封口,長可等人因此去討回公道的報復行為。
民家に押し入った件は、長可の部下が家主に妻を手込めにされた上に、賊に仕立て上げられ口封じをされたことに対するお礼参りであった。
若不知內情看起來像無法者,但因為他對自己人寬厚,崇慕長可的人比想像中還多。
事情を知らなければ無法者にしか見えないが、身内に対する懐の深さを具えているため、長可を慕うものは思いの他多い。
「做到一半還可以。但為什麼要把別人的財產帶回來呢……」
「途中までは良いんだよ。でもね、なんで他人の財産を持って帰ってきちゃうかな……」
「靜子你常說吧,財貨要用才有意義。死人不用財,放著會被燒掉。與其放著,不如帶回來由我使用不是理所當然?」
「静子も常々言っておるだろう、財貨は使ってこそ意味がある。死人は財を使わぬし、捨て置けば焼け落ちる。ならば持ち帰って、俺が使う方が良いのは道理だろう?」
「啊,是嗎……」
「ああ、そう……」
長可堅稱一切都是為了世道,靜子無言以對。原本要說別輕易放火燒家的話,最後也沒說出口。
あくまでも世の為だと言い張る長可に、静子は二の句が継げないでいた。そもそも気軽に家を焼くなと言う言葉は、結局放たれることがなかった。
儘管舉止如此傍若無人卻無人責罰,是因為長可受信長寵愛。
これほどまでに傍若無人に振る舞っているというのにお咎めが無いのは、長可が信長の寵愛を受けているためであった。
不管靜子如何責備,只要信長許可,靜子也無法追究。
幾ら静子が叱ろうが、信長が許してしまえば静子としても追及できない。
信長欣賞為信念而殉、行事直率且奔放的長可,對他所犯的過錯僅當作淘氣看待。
信長としては自分の信じる筋に殉じ、真っすぐにかつ奔放に振る舞う長可を好ましく思っており、長可がやらかす事をやんちゃ程度にしか思っていなかった。
同僚慶次覺得長可有好鬧的毛病,但只要他分得清不能逾越的界線就不會出言干涉。
同僚である慶次は長可を暴れ癖がある奴だとは思っていたが、越えてはいけない一線を弁えている限りは口出ししないつもりだった。
「好,決定了。這次上樣的任務,不可用武力,要去不動武地懲罰對方。」
「よし、決めた。今回の上様の任は、武力を用いずに相手を懲らしめてきなさい」
「喂喂,上樣是說要始末他啊,武士不以武力要怎麼始末?」
「おいおい、上様は始末しろと仰ってるんだぞ、武士が武を使わずにどうやって始末するんだよ」
「別找藉口。行動前要先動腦。若違令攻入堺,我就會派兵進去!」
「言い訳無用。直情的に行動する前に頭を使いなさい。もしも、禁を破って堺に攻め入ったら軍を送り込みます!」
靜子的話讓再豪爽的長可也心頭一震。若靜子真的派軍,那將成為個人武勇無法解決的戰鬥。
静子の言葉に流石の長可も肝が冷える。静子が軍を送り込むとなったら、個人の武勇ではどうにもならない戦いになる。
長可也不願與那個如此重視自己、栽培其才能的靜子為敵。
長可としても自分を高く評価し、才能を伸ばして育ててくれた静子に敵対したいはずがない。
更何況就算變成個人武勇的較量,長可也想不出自己能打敗才藏的畫面。
更に言えば個人の武勇勝負になったとしても、長可は自分が才蔵に勝てるビジョンが浮かばなかった。
若只論攻擊能力,他也有把握說自己會贏。
攻撃能力だけをとるなら、自分が勝っていると言える自信もある。
然而,才蔵已步入武者的成熟期,愚直地積累著那些單憑蠻力無法應付的修鍊。
しかし、才蔵は武人として円熟期に入っており、単純な力自慢では太刀打ちできない修練を愚直に積み上げている。
若被問能否突破他的防守而讓刀刃得手,只能回答不可能。
彼の守りを突破して刃を届かせることができるかと問われれば、否としか言えない。
「知道知道。不過,若是武力行不通,就只能談判了……」
「判った判った。しかし、力尽くが駄目となると交渉か……」
「嗯?我可從來沒說過要用談判解決(……)喔?」
「あら? 私は一度も交渉で解決しろ(・・・・・・・)とは言ってないよ?」
「啊?啊啊!原來是那個意思。我一直覺得,表面看起來溫和的靜子其實更危險喔?」
「あ? ああ! そう言うことか。前々から思っていたが、一見穏やかに見える静子の方が物騒だぞ?」
長可終於察覺靜子想表達的意思。靜子禁止的只是攻入堺、焚燒堺;只要不被發覺,使用暴力手段也沒問題。
ようやく静子が何を言わんとしているか長可は察した。静子が禁じたのは、堺へ攻め込むな、堺を焼くなであり、露見しないのであれば力技を使っても問題ないのだ。
況且信長已經終止了交涉,自己去代理談判是根本不可能的事。換言之,除了明面上的武力以外,只要不被看見,任何手段都行。
そもそも信長が交渉を打ち切っているのだ、自分が代理で交渉するなど論外である。目に見える武力以外を使うなら、何をやっても良いと言うことでもある。
「交給我!不到十日就讓人去向上樣道歉!」
「任せろ! 十日と経たずに上様へお詫びに行かせよう!」
長可直接動用武力的話還算好過,真正要讓堺衆知道被從側翼或暗手偷襲會有更大損害,卻是在數日之後。
長可が直接武力を用いている分にはまだマシであり、搦め手を使われた方が大きな被害が出ると堺衆が知るのは、それから数日後のことであった。
隔日,長可只帶著少數隨從前往堺,靜子則取出留在京屋敷的備用攝影器材,打算確認在專用保管場所以外保存的結果。
翌日、長可は僅かな手勢のみを伴って堺へ発ち、静子は京屋敷に残しておいた予備の撮影機材を持ち出し、専用の保管場所以外での保管の結果を確認することにした。
因為前久(さきひさ)用牛車帶著四六和器上京遊覽,沒能見到他們的面容。
四六や器は、前久(さきひさ)が上京(かみぎょう)を牛車で連れまわしているため、顔を見ることが叶わなかった。
隨行的可成沒有特別報告,判斷應該沒有大問題。
同行している可成から特に報告がないところを見るに、大きな問題はないと判断した。
隔日,長可往堺,靜子則開始用備用的玻璃乾板與雞蛋紙拍攝京城情況。
翌日、長可は堺へ、静子は予備のガラス乾板と鶏卵紙を使って京の様子を写真に収める作業に取りかかった。
「喔,那個如何?」
「お、あれなんてどうかな?」
靜子為確認保存狀況所選的被攝對象,是在陽光下重疊睡著的兩隻小貓。
静子が保存状況の確認用に選んだ被写体は、ひだまりに重なり合って眠る二匹の子猫であった。
以現有相機的性能,要把動體拍下來相當困難。
現在のカメラの性能では動体を写真に収めることは難しい。
然而,恰好在日光下睡著的小貓,大概在拍攝結束前都不會動。
しかし、あつらえたように日向(ひなた)で眠る子猫ならば、撮影が終わるまで動くことはないだろう。
這張偶然選取的照片日後會引發騷動,但靜子當時完全無法想像。
気紛れに選んだこの一枚の写真が後に騒動を巻き起こすのだが、その時の静子は想像だにしていなかった。
或許因為避免濕氣,保存在陰涼且通風良好的地方,照片得以順利拍攝。
湿気を避けて冷暗所かつ風通しの良い場所に保管していたためか、写真は問題なく撮影出来た。
順便一提,靜子命技術人員再補拍京城街景。剛好天色轉陰日光變弱,導致拍攝完成需約三十秒左右。
ついでとばかりに静子は技術者に命じ、追加で京の街並みを撮影させた。都合よく日が曇り、日差しが弱まったこともあり、撮影が完了するまで30秒ほどの時間を要するようになった。
在此條件下拍攝,移動中的人物不會入鏡,只有不動的街景會感光形成影像。
この条件下で撮影をすると、動いている人物は映りこまず、動かない街並みのみが感光して像を結ぶことになる。
看到與現實不同的無人街景,連不完全理解攝影原理的技術人員也皺起了眉頭。
現実とは異なる無人の街並みを見て、写真の原理までは理解しきれていない技術者も首をかしげていた。
靜子把小貓的照片並列展示,一邊向大夥解釋為何有人沒入鏡。
静子は子猫の写真と並べて、映りこまなかった理由を説明しながら皆に語って聞かせた。
「總有一天,京城的街貌會和今日完全不同。正因如此,才要將『現在』攝入照片。為了把我們所見的京城『現在』──人們的生活──傳給未來,對吧。」
「いつの日か、京の町並みは今日(こんにち)と全く違う様相になるでしょう。だからこそ『今』を写真に収めるのです。私達が見ている京の『今』を、暮らしぶりを未来に伝えるために、ね」
拍了數張風景照並確認能正常保存後,靜子安排把兩三張成色不錯的照片連同文書一併送給信長。
数枚の風景写真を撮り、問題なく保管できている事が確認できると、静子は出来の良い二、三点の写真を文と共に信長へ届けるよう手配した。
「呼,結束了結束了」
「はー、終わった終わった」
靜子透過與留在京屋敷的備用器材互換,確認了臨時修好的相機使用情況,隨即再下令包裝,讓它併入帶回尾張的行李。
京屋敷に残した予備の機材と交換することで、応急修理したカメラの使い勝手を確認した静子は再び梱包を命じ、尾張へ持ち帰る荷物に合流させる。
事情辦妥後手頭無事可做,在屋內自室發呆等待前久和孩子們回來。
用事が済んでしまえば手持ち無沙汰となり、前久と子供たちが戻ってくるのを屋敷の自室でぼんやり待つこととなった。
「結果還是把四六和器一直託付給近衛大人了啊」
「結局、四六と器は近衛様に預けっぱなしだったなあ」
被告知『既然是你的孩子,對我來說也如孫子,有時交給爺爺帶也好』的靜子,便坦率地接受了這份好意。
そなたの子ならば私にとっては孫も同じ、偶には爺に預けるのも良いだろうと言われた静子は、素直に好意に甘えた。
聰明的四六自從開始在尾張生活後,顯得更會表露情感;似乎前久很喜歡器,主動四處帶著他,並為他操持各種事務,這些都成了可成的報告內容。
利発な四六と尾張で暮らすようになって以来、感情を見せるようになった器を前久が気に入ったのか、率先してあちこちへと連れまわし、彼があれこれと世話を焼く様子が可成の報告に上がっていた。
一方面想著整天黏著父母也會令人喘不過氣,但同時也對這對喧鬧又熱鬧的兩人不在感到些許寂寥。
四六時中親とべったりってのも息が詰まるかな、と思いつつも騒がしくも賑やかな二人が居ない事に少しの寂しさを覚えていた。
「靜子大人,才蔵大人回來了」
「静子様、才蔵様がお戻りになりました」
「知道了。直接帶他到這裡來」
「判りました。直接こちらに案内して」
「哈哈」
「ははっ」
正當她享受久違的悠閒時光,小姓來報才蔵歸來。
久々のゆっくりとした時間を満喫していると、小姓が才蔵の帰還を報せる。
以巡視京畿為名,讓才蔵探聽本願寺勢力的動向。這次沒有用真田昌幸,而派才蔵,就是有其目的。
才蔵には京周辺の見回りと称して、本願寺勢力の動きを探って貰っていた。今回、真田昌幸を使わず、才蔵を遣わせたのには狙いがあった。
身為靜子心腹有名的才蔵,公開行動就是要向本願寺示意:我們在盯著你們。
静子の腹心として名の知れた才蔵が、表立って動くことで本願寺に対して見張っているぞという意思表示をするためだ。
信長在表面上裝作尋求與本願寺談判,但實際上是在等本願寺一方耐不住性子而主動攻入織田勢力範圍。
信長の方針としては表面上、本願寺との交渉を模索しているよう振る舞っているが、実際には本願寺側が痺れをきらし、織田の勢力下へ攻め入るのを待っていた。
雖未被告知詳細方針,但從情勢判斷,靜子認為他們的行動是切斷連接毛利與本願寺之間瀨戶內海的補給線,而非直接對本願寺本體下手。
詳しい方針は聞かされていないが、状況から判断する限りでは、本願寺本体よりも毛利と本願寺を繋ぐ瀬戸内海の補給線を断つよう動いていると静子は読んでいた。
為了印證這點,秀吉已被派往中國地方,光秀也被派往丹波。因為陸路被封鎖,只能利用海路。
それを裏付けするように秀吉が中国地方へ派遣され、丹波へは光秀を送り込んでいる。陸路を抑え込まれては、海路を利用する他ないからだ。
「我剛回來了」
「ただいま戻りました」
「辛苦了。這麼快就麻煩你,能否報告一下?」
「お疲れ様。早速で悪いのだけれど、報告をお願いできるかな?」
「沒什麼大事。簡單說,本願寺已處於龜縮狀態」
「如何ほどの事も御座いませぬ。端的に申しますれば、本願寺は亀になっております」
「還是不動嗎?」
「まだ動かないか」
因為教主顕如保留態度,縱使教如如何煽動,本願寺整體仍保持沉默。
本願寺は教主である顕如が態度を保留しているため、教如が幾ら煽ろうとも本願寺全体としては沈黙を保っていた。
雖然被逼到這步仍不見顕如表明方針令人不解,但自從他所倚重的腹心下間頼廉失去音訊後,據說他的話語已大為減少。
ここまで追い詰められて尚、顕如が指針を示さない理由が判然としないが、彼が腹心と恃(たの)んでいた下間(しもつま)頼廉(らいれん)が消息を絶って以来、すっかり口数が減ったとの噂が漏れ伝わっている。
「關於毛利,羽柴公與荒木公已前往上月城救援尼子公,但情況不佳」
「毛利は、羽柴殿と荒木殿が上月城(こうづきじょう)の尼子殿を援護に向かいましたが、状況は芳しくありませぬ」
在中國地方,毛利輝元率大軍包圍上月城,城主尼子向信長求援,信長遂派秀吉與荒木的聯軍前往。
中国地方では、毛利輝元が大軍を以て上月城を包囲しており、城主の尼子から救援要請を受けた信長が秀吉と荒木の連合軍を派遣した形だ。
目前僅偶有小規模衝突,兩軍相互對峙,情勢陷入膠著。
現状では小競り合いが時折発生する程度で、両軍が睨み合っており状況が膠着していた。
當地情報稀少且可信度不高,但傳聞三木城的別所長治可能倒向敵方,因而無法採取果斷行動。
現地の情報が少なく、確度は低いものの、三木城の別所(べっしょ)長治(ながはる)が敵方に付く可能性があるため、思い切った行動に踏み切れないとなっていた。
「明明對上樣說要當攻毛利的前鋒,卻躲在城裡,這是背叛嗎?」
「上様には毛利攻めの先鋒を務めるって言ったのに、城に籠っているってことは裏切りかな?」
「看起來是這樣。若如此,別所夫人的娘家丹波國的波多野也可能響應。就算是羽柴公也扼之以夾擊,難以招架」
「その様です。そうなれば別所の奥方の実家である、丹波国の波多野も呼応するやもしれませぬ。さしもの羽柴殿も挟み撃ちにあっては一たまりもありますまい」
「那麼只好捨棄上月城,與尼子一同攻入三木城了嗎。失去攻打毛利的橋頭堡實在可惜,但被從背後刺擊的局面——」
「となれば上月城を捨てて尼子と共に三木城へ攻め入るしかないか。毛利攻めの橋頭保を失うのは痛いけれど、背中を突かれる状況は——」
靜子話到一半不自然地閉上了嘴。看見才蔵將指放在唇邊,示意有人接近。
言葉の途中で静子が不自然に口を閉ざした。見れば才蔵が口元に指を立てており、他者の接近を告げていた。
「靜子大人。真田大人帶來了上樣的書狀,該怎麼處理?」
「静子様。真田様が上様より書状を預かっておいでです、如何(いかが)いたしましょう?」
「知道了。應該也有報告,請帶他進來」
「判りました。報告もあるでしょうし、こちらへお通しして下さい」
「哈哈」
「ははっ」
靜子回答後,小姓轉身離去。聽著小姓的腳步聲漸行漸遠,靜子不知不覺中又恢復了先前停止的呼吸。
静子は返事をすると、小姓が踵を返した。小姓の足音が遠ざかっていくのを耳にし、静子はいつの間にか止めていた呼吸を再開する。
「無法鬆懈真是令人疲憊啊」
「気が抜けないのは疲れるね」
「心情可想而知,但您對織田家也是要害所在。況且這裡不像尾張那般能提供充分護衛,雖給您添了憂慮,仍請再多留意身邊安全一段時日」
「心中お察しいたしますが、御身は織田家にとっても急所となり申した。ましてやこちらは尾張と異なり十分な警護が出来ておりませぬ、ご心労をお掛け致しますが今しばらく身辺にご留意ください」
「我知道。比起那些警護的人,我的心力並不算什麼……真想回尾張啊」
「判っています。警護の皆に比べれば、私の心労なんて大した事ないんだけど……尾張に帰りたいなあ」
剛從靜子的口中脫口而出抱怨時,又聽見有人在走廊上踏步的腳步聲。
思わず静子の口から愚痴が漏れたあたりで、再び廊下を踏みしめる足音が聞こえてくる。
在小姓引導下昌幸抵達並被帶入室內,寒暄畢後昌幸開口說道。
小姓に案内された昌幸が到着し、室内に通され一通りの挨拶が済んだところで昌幸が切り出した。
「從堀大人處獲悉羽柴大人的情況,似乎陷入苦境。荒木大人也一樣,憂慮後方而無法全力攻擊毛利」
「堀様より羽柴様の状況を伺いましたが、どうにも苦境に立たされておられるご様子。荒木様も同様に、背後を気にして毛利を攻め切れぬと」
昌幸的報告證實了才蔵的情報,靜子判斷情況幾乎無誤。
昌幸の報告によって才蔵の報告が裏付けされ、ほぼ間違いのない状況と静子は判断する。
這是自武田信玄發動西上作戰以來罕見的危機。
かつて武田信玄が西上作戦を開始して以来の危機であった。
若再失一步,局勢將如雪崩般惡化,最壞的情況下織田家會被逐出京都。
一つ下手を打てば、状況が雪崩のように悪化し、最悪織田家は京を追われることとなる。
秀吉因此心生畏懼也非無理,畢竟對手是西國雄霸毛利輝元。
秀吉が弱気になるのも無理からぬところではある。何と言っても相手は西国の雄、毛利輝元である。
談到毛利輝元,便是那位曾削弱曾經擁有一百二十萬石的尼子領地,與統治北九州一帶的大友宗麟交鋒,並將諸般戰事導向毛利家勝利的人物。
毛利輝元と言えば、かつて百二十万石を誇った尼子の領土を削り取り、北九州一帯を支配する大友(おおとも)宗麟(そうりん)と刃を交え、その悉(ことごと)くを毛利家の勝利に導いた存在だ。
「這次恐怕沒辦法了。雖然在這種情況下回尾張令人不捨,但我們留在這裡也無能為力」
「今回はどうしようもないかな。この状況で尾張に戻るのは心苦しいけれど、我々がここに居ても出来ることはないしね」
誰也無法反駁接近放棄語氣的靜子。
諦めに近い静子の言葉に、誰も反論できなかった。
與昌幸會談後,靜子按原定與四六及器會合,並擺脫勸她多留一會的前久,返回尾張。
昌幸との会談の後、静子は予定通り四六や器と合流し、もう少し滞在していけと慰留する前久を振り切って、尾張へと戻ってきていた。
返程途中在安土短停向信長報告情勢,但他對西國局勢置之不理,反而催促靜子回尾張。
帰路の途上で安土に立ち寄り、信長に状況を報告したが、彼は西国の状況は捨て置き、静子に尾張へ戻るよう促した。
儘管感覺到一絲不安氣息,回到尾張並稍事休養後,原本延後的虎太郎攝影竟發生了一場小風波。
ややきな臭い空気を感じ取りつつも、尾張へ戻り長旅の疲れが癒えた頃、先延ばしになっていた虎太郎の撮影に際してひと悶着が起きた。
事情的起因,是看見用蛋白紙燒印的黑白照片時,みつお隨口的一句話。
事の発端は、鶏卵紙に焼き付けられた白黒写真を見たみつおの一言だった。
「哎,原來用蛋白紙燒印就會呈現像彩色照片褪色後那種棕褐色調啊。雖然不能期待彩色,但這麼清晰,如果能幫我拍張家人照可以嗎?」
「へえ、鶏卵紙に焼き付けると最初からカラー写真が退色したみたいなセピア色になるんですね。カラー写真は望めなくても、これだけ鮮明に映るなら私の家族写真も撮って貰えませんか?」
說到みつお的家人,是指從島津家嫁來的鶴姫、她的侍女柴,以及她所生、已滿三歲的女兒葵。
みつおの家族と言えば、島津家より嫁いできた鶴姫と、その侍女柴(しば)、彼女が産んだ女児であり満三歳を過ぎた葵(あおい)を意味する。
本來是現代人的みつお對照片不會有排斥感,拿著他那張因時間而褪色的原彩照片的鶴姫也一樣。
元々現代人であるみつおに写真に対する忌避感などあるはずもなく、彼の持ち物である元カラー写真(こちらは経年による退色済み)を見ている鶴姫も同様だ。
靜子在接受攝影委託後,對於みつお不停重複葵多麼可愛的話語聽而不聞,陷入沉思。
静子は撮影依頼をして以降、いかに葵が可愛らしいかを延々と繰り返して説明するみつおの言葉を聞き流し、考え込んでいた。
「葵這個名字呢,是我太太從只在尾張盛開的花──向日葵(ひまわり)取的,希望她能像向日葵一樣總是朝向太陽綻放。她真的是非常可愛,可以說是我們的太陽也不為過。前幾天她還說『爸爸,別去工作』呢!我有多少次想從飼育場回家啊……」
「葵って名前はですね、僕の奥さんが尾張にだけ咲く花、向日葵(ひまわり)から取って常に日を向いて咲く葵になって欲しいと付けたんですよ。もう本当に可愛くてですね、僕たちの太陽と言っても過言ではないでしょう。この前も『ととさま、おしごといかないで』って言うんですよ! 何度飼育場から帰ろうと思った事か……」
靜子打斷仍興致勃勃繼續說話的みつお,做出了判斷。
尚も勢い込んで話し続けるみつおの言葉を遮って、静子は判断を下す。
「是啊。若在日之本由外國人虎太郎奪得第一名,對他的風評可能會更為強烈,不如先把みつおさん他們拍下來如何?接著再拍虎太郎,作為最初的人物攝影被攝體,會在歷史上留名——」
「そうですね。日ノ本で一番を外国人である虎太郎が取ると、彼に対する風当たりが強くなるかもしれませんし、まずはみつおさん達を撮りましょうか。続いて虎太郎も撮影すれば、最初の人物撮影の被写体として歴史に名が残るでしょうし——」
靜子說到那裡時,那嫋(たお)雅地伸出的纖手拍了拍她的肩膀。
静子がそこまで話したところで、嫋(たお)やかに伸びてきた繊手が静子の肩を叩いた。
「哎呀哎呀,靜子在有機會成為日之本第一時竟不召喚妾,真是變得相當薄情了呢」
「おやおや、静子は日ノ本一となる機会で妾を呼ばぬとは、随分と薄情になったものよな」
對於那以做作的悲傷口吻說話的貴人聲,靜子無法回頭。
如何にも作った悲し気な口調で話す貴人の声に、静子は振り向くことが出来なかった。