戦国小町苦労譚
一五七五年 十一月中旬
「此次之戰雖為敗戰,然以將奇妙從死地平安帶回並抑止損害,故以賞罰相抵為定」
「此度のいくさは敗戦なれど、奇妙を死地より無事に連れ戻し、損害を抑えたことを以て賞罰相殺(そうさい)とする」
在群臣列坐的謁見之間,信長所賜的言語並非斥責。靜子原以為會被追究敗戰之責,因而感到這判決出乎意料。
諸侯の居並ぶ謁見の間にて、信長より賜った言葉は叱責ではなかった。静子としては敗戦の責を問われると思っていただけに、予想外の沙汰であった。
「明明佔優卻未能徹底攻下,且又被風暴擾亂軍勢。也就是說時機尚未成熟。敗戰之責由奇妙承擔,但也命你暫時蟄居(閉門並在家自肅)」
「優勢でありながら詰め切れず、嵐によって軍を乱した。つまりは機が熟しておらぬということよ。敗戦の責は奇妙が負うが、貴様も暫く蟄居(ちっきょ)(閉門した上で、自宅謹慎すること)を申し付ける」
「哈、哈哈!」
「は、ははっ!」
靜子從信長的話語中察覺到了隱含的算計。
静子は信長の言葉から、裏に秘された思惑を察していた。
信長依信賞必罰之原則理應懲罰靜子。然而靜子已完成信長所下的密命,並在艱難任務中救出大將使其生還。
信長としては信賞必罰の原則として静子に罰を与えなければならない。しかし、静子は信長が与えた密命を果たした上に、大将の窮地を救い生還させるという困難な使命を達成している。
因此在對外的賞罰上以功罪相抵,實質上免除公職、命以蟄居。對那些有野心的家臣來說是懲罰,對靜子而言卻成了獎賞。
そこで対外的な賞罰として功罪相殺し、実質的に公職免除となる蟄居を申し付けた。野心家の家臣達にとっては懲罰となるが、静子にとっては褒美となる沙汰を言い渡したのだ。
此次下達給靜子的蟄居,禁止參加織田家的官方行事,也禁止出仕朝廷。
今回静子に言い渡された蟄居の場合、織田家の公式行事への参加が禁じられ、また朝廷への出仕をすることも禁じられる。
然而在目前靜子尚無後繼者的情形下,身為領主的職務仍須由靜子執行。另有來自朝廷所付託的藝事保護,也有責任不讓其停滯。
しかし、静子の後継者が育っていない現状、領主としての仕事は静子が行う必要がある。織田家の事情とは別に朝廷より任された芸事保護についても滞りなく務める義務があった。
實際上的限制幾乎只在於出領地時需獲得信長許可。可說是比自宅謹慎更像尾張謹慎。
実際的な制限としては、自領を出る際には信長の許可が必要となる以外は無いに等しい。自宅謹慎ならぬ尾張謹慎と言ったところだろう。
(已放棄在東國征伐時先行試運用,不過很快就要開始相機的實地試驗了。如果也能硬說這是藝事保護的一環,應該能參與實際試驗吧?最初會是在法隆寺,還是東大寺的正倉院呢?春日大社也很值得留下紀錄吧!呵呵,好期待)
(東国征伐での試験運用は諦めたけど、もうすぐカメラの実地試験が始まる。これも芸事保護の一環と言い張れば、実際の試験にも立ち会えるかな? 最初は法隆寺、それとも東大寺の正倉院だろうか? 春日大社なんかも記録に残す意義があるよね! ふふっ、楽しみだなあ)
一旦相機實用化,就在記錄保存的意義上會是飛躍的進步。靜子始終只從文化面向思考,但照片能擷取並保存某一瞬間的世界。
カメラが実用化されれば、記録を残すという意味では飛躍的な進歩となる。静子はあくまでも文化的な側面しか認識していないが、写真はその瞬間の世界を切り取って保存する。
當然有曝光等限制,卻能如實地將自己所見的資訊傳達給他人(……)。她忽略了這將在斥候、偵察乃至觀測上帶來的飛躍性進步。
当然露光限界等はあるものの、自分の見たままの情報をありのままに(・・・・・・)他者へ伝える(・・・・・・)事が出来る。これが齎す斥候や偵察は勿論、観測等に於いても飛躍的な進歩を促すという事を失念していた。
「在接到另行通知之前就在屋敷內謹慎。下次東國征伐時會給你洗刷污名的機會,要讓那卑劣的北條等人見識見識。直到那時先在領地積蓄實力」
「追って知らせるまで屋敷にて謹慎しておれ。次の東国征伐においては汚名返上の機会を与える、卑劣な北条めらに目にものを見せてやれ。それまで領地にて力を蓄えておけ」
「是」
「はっ」
信長在公開場合明言下一次有東國征伐。家臣們對靜子的表情,難以說是同情還是憐憫。
信長は公の場に於いて、次の東国征伐があることを明言する。家臣達は静子に対して同情とも憐憫(れんびん)ともつかない表情を浮かべていた。
說是洗刷污名聽起來好聽,實則意味著要站在需付出大量犧牲的最前線,完成使命後才可能彌補失分。
汚名返上の機会と言えば聞こえが良いが、多くの犠牲を払う必要のある矢面に立たされるというのに、使命を果たしてやっと失点がなくなるだけなのだ。
家臣們覺得這像是把債務強加於人。信長對他偏愛的靜子也下了如此嚴厲的判決,令眾人感到震撼且警醒。
これでは借金を背負わされたようだと、家臣達は思った。信長のお気に入りであるはずの静子をして、この厳しい沙汰を下したことで家臣達は身が引き締まる思いをしていた。
在家臣們惶恐自問明日是否輪到自己時,靜子反而稍感寬慰。暗中得了信長的休假,暫時無需介入政治,且織田家也明確了對北條的敵對立場。
家臣達が明日は我が身かと戦々恐々としている中、静子は少し安堵していた。信長から暗に休暇を賜り、暫く政治にかかわる必要がなくなった上、織田家は北条への敵対姿勢を明確にした。
事到如今,對討伐北條持慎重態度的人只得閉口。信長將承擔營造東國征伐氛圍的責任,靜子因此覺得肩上的擔子輕了些。
事がここに至った以上、北条討伐に対する慎重派は口を噤(つぐ)まざるを得ない。東国征伐に対する気運の醸成を信長が担ってくれることになり、静子は少し肩の荷が軽くなる思いがした。
在向信長深深施禮、告辭謁見之後,靜子心中仍掛念一事。
信長に深々と頭を下げ、謁見の場を辞した後、静子はある事が気に掛かっていた。
既然連作為監督者的靜子都受罰,作為總責任者的信忠會受到多嚴厲的處分呢?
お目付け役の静子に対してすら罰が与えられたのだ、総責任者たる信忠にはどれほど厳しい沙汰が下されたのだろう?
信長在東國征伐前對信忠囑咐過:「雖然失去信玄,但勝頼是善於作戰之人。切莫輕視,必須慎重行事。」
信長は東国征伐を前にして信忠に「信玄を欠いたとは言え、勝頼はいくさ巧者。決して侮らず、慎重に当たれ」と言い渡していた。
信忠雖年輕,卻在首戰中出色地掌握局勢,乘勝追擊。然而因抑制不住急躁的部下,於不慎之地紮營,結果遭逢風暴。
信忠は若輩でありながら初戦を見事に制し、勢いに乗って追撃に身を投じた。しかし、逸(はや)る配下を抑えきれず、不用意な場所に陣を張った結果、嵐に見舞われた。
這明顯是未能管束部下之失策,信長很可能對此加以斥責。
部下の手綱を御(ぎょ)せなかったという明らかな失態であり、信長が叱責をした可能性が高い。
(……這次我也有錯。我過於執著要讓他從敗北中學習,身為輔佐之人卻怠於盡責。)
(……今回は私も悪かった。彼に敗北を学ばせることに固執しすぎて、彼を補佐する立場にありながら、それを怠ってしまった)
靜子一邊自省一邊行走,忽被信忠的小姓攔住。得知信忠請求會面並欲談話,靜子視此為時機,立即同意並由小姓引領前往信忠處。
静子が自省しながら歩いていると、信忠の小姓に呼び止められた。聞けば信忠が会って話をしたいと申し入れているとのこと。渡りに船と考えた静子は、即座に了承すると小姓に案内されて信忠の許へと向かった。
與信忠的會談在他於城下町建造中的屋敷內舉行。因信忠希望與靜子單獨對談,才藏與小姓等人都退下,室內僅剩兩人。
信忠との会談は、城下町で建設中の彼の屋敷で行われることになった。信忠の希望により、静子との一対一の対談となるため、才蔵や小姓たちも下がらせると、室内は二人だけとなった。
「這個?是父上狠狠打我的痕跡」
「これか? 父上に思い切り殴られた痕だ」
靜子看著信忠倒吸一口氣,他左眼下方到臉頰有青腫。信忠察覺靜子的視線後,半開玩笑地說是從信長那裡拿到的。
静子は信忠を見て息を呑んだ、左目の下から頬にかけて青あざが出来ていた。信忠は静子の視線に気づくと、おどけた調子で信長から頂戴したと語った。
被打之處腫得很大,將左眼下眼瞼擠起,看起來視線不佳。口內大概也有受傷,說話時不時會皺起臉。
殴られた場所は大きく腫れあがり、左目の下瞼を押し上げているため視界が悪そうに見えた。恐らく口の中も切れているのだろう、話しながら時折顔を顰(しか)めている。
「要不趕緊處理傷口!我先去拿冰袋——」
「手当をしないと! 取りあえず氷嚢(ひょうのう)を取って来させるから——」
「不用了,就保持這樣吧。這是我該承擔的失敗烙印,是因為我畏懼年長部下的反抗而容忍危險的怯懦之證」
「いや、このままで良い。これは俺が負うべき失敗の烙印(らくいん)よ、年かさの配下が反発するのを恐れ、危険を容認した俺のふがいなさの証だ」
信忠阻止了欲為他處理傷口的靜子。靜子見那腫脹的臉頰幾乎翻倍,驚慌不已,但信忠看起來並不特別在意。
傷の手当てをしようとした静子を信忠が制した。静子は倍ほどにも腫れあがった頬を見て狼狽(うろた)えるが、信忠はさして気にしている風でもなかった。
信忠自嘲道,正因為自己活著回來才能反省,但在風暴中迷失方向最後凍死的將士們,連後悔都來不及。
信忠は、生還できたからこそ反省も出来るが、嵐の中で風雨を避けようと迷走した挙句に凍死した将兵たちは後悔することさえ出来ないのだと自嘲して見せた。
「那是我們所有將領都應該承擔的——」
「それは私たち将全てが負うべき——」
「靜子,我是東國征伐的總大將。決定在那處紮營最終是我的判斷。不論過程如何,既然最終決定在我,所有責任就應由我來負」
「静子、俺は東国征伐の総大将だ。あそこに陣を張ると最終的に判断したのは俺だ。過程がどうであれ、最終的に決断したのが俺である以上、全ての責は俺が負わねばならぬ」
靜子正想說敗戰的責任並非僅在總大將一人,但信忠強行打斷了她的話。
敗戦の責任は総大将だけでなく、武将全員にあると静子は口にしかけたが、信忠が強引に遮(さえぎ)った。
信忠確實從敗北中學到了教訓。他承認了自己判斷的錯誤,並因靜子的盡力而得以活命,幸而獲得了連結下一次的機會。
信忠は正しく敗北を学んでいた。自分が判断を誤ったと認め、静子の尽力により生を拾った。幸いにして次に繋がる機会を得た。
信忠將失敗銘刻於心,不是沉溺於悔恨,而是思考下次如何才能取得好結果,並朝明日邁出一步。
信忠は失敗を胸に刻み、悔やむのではなく次にどうすれば良い結果を出せるかを考え、明日に向けて一歩を踏み出していた。
「還以為你會消沉,看到你精神抖擻我就放心了」
「自棄(やけ)になっているかと思ったけど、元気そうで安心したよ」
「並非沒有想法,但若我任由情緒放縱而消沉,反只會讓那些想要趁機打倒我的傢伙高興。鐵要趁熱打,若一直原地踏步,部下會看我不順眼的」
「思うところがないわけではないが、俺が感情に任せて自棄になったところで、俺の足を掬ってやろうと狙っている輩を喜ばせるだけだ。鉄は熱いうちに打たねばならぬ、いつまでも足踏みをしているようでは配下に見限られてしまう」
「既然知道了,那就不必特地諫言了吧」
「判っているなら、敢えて諫言(かんげん)するまでもないね」
靜子端正身姿,正面注視信忠開口說道。
静子は居住まいを正し、真正面から信忠を見つめながら声を掛けた。
「當然會向武田和北條表示感謝吧?」
「勿論、武田と北条にはお礼をするよね?」
「當然。已經懲處了向德川動手的事,但還沒教訓對織田露出獠牙的人。我意識到事事由我親自做是不對的。因此想把在上杉內部的親北條派的處置交給靜子。靜子手下應該有擅長間諜的人吧?我會趁此與武田了結。如此一來就只剩下北條了」
「当然だ。徳川に噛みついた仕置きは済んだが、織田に牙を剥いた事に対する躾(しつけ)が済んでおらぬ。今回のことで何でも俺がやろうとするのは誤りだと気付いた。そこで上杉内の親北条派への対処を静子に任せたい。静子の手には間諜に長けた者がいるであろう? 俺はその間に武田と決着をつける。さすれば残すは北条のみとなる」
「是在為下一步鋪路呢。不過,要是要調動軍隊的話,還得請上様做判斷……」
「次に繋がる布石を打つのね。でも、軍を動かすとなったら上様の判断を頂かないと……」
「沒問題。我已向父上說明會借助靜子的手,並講述對武田將實施的報復概要,已獲得同意。『要讓他們後悔以為自己是堅固的箭而依附稻草』」
「問題ない。父上には静子の手を借りる事、武田に対して行う報復の概要を語って了承を得ている。『丈夫な矢だと思って藁に縋(すが)った事を後悔させてやろう』」
那句話雖稍有變動,卻是曾經靜子對信長說過的話。恐怕是信長在背後運作,讓信忠聽到的吧。
それは多少変わってはいるが、かつて静子が信長に伝えた言葉であった。恐らく信長が裏から手を回して、信忠の耳に入るようにしたのだろう。
信忠細細咀嚼那話,並將其作為自己重振旗鼓的信念向信長表達出來。
信忠はそれを咀嚼(そしゃく)し、己の再起に懸ける信念として信長に語ってみせたのだ。
信長繪製的藍圖大致成為現實。這次敗戰讓信忠學到的,比信長和靜子預想的還要多得多。
信長が描いた絵図面は、おおむね現実のものとなった。今回の敗戦によって信忠が学んだことは、信長や静子が予想していたよりもはるかに多かった。
即便嘗到了首次失利並在家臣面前被責罵的挫折,也沒有鬧脾氣,反而為再起採取最佳行動。
初めての黒星と家臣達の面前で叱責されるという挫折を味わったと言うのに、不貞腐れることすらなく再起に向けて最善の手を打てる。
經過這次失敗,信忠在精神上大為成長。靜子認為這正是「男子三日不見當刮目相待」的真意。
今回の敗北を経て、信忠は精神的に大きく成長を遂げた。『男子三日会わざれば刮目して見よ』とは正にこのことだと静子は思った。
「在下一次東國征討中,靜子打算如何行動,能說說你的想法嗎?」
「次の東国攻めに於いて、静子はどう動くか考えを聞かせてくれないか?」
「會從一開始就向上杉謙信請求出陣。這樣一來盤踞在越後的親北條派就不得不行動。若武田和北條被滅,他們將孤立無援,無法維持派閥。這將是他們成為上杉家主流的最後機會」
「初手から上杉謙信へ出陣を要請する。そうなれば越後に巣食う親北条派は動かざるを得ない。武田と北条が滅んでしまえば、彼らは孤立し派閥(はばつ)を保てなくなる。彼らが上杉家の主流になれる最後の機会(・・・・・)になるからね」
「不愧是靜子。這次的戰事中,親北條派無法行動。他們大概因我們的敗北而越發有恃無恐,只要露出破綻就會立刻咬上來,是這個意思吧!」
「流石は静子よ。此度のいくさでは、親北条派は動くに動けなかった。我らの敗北で奴らは勢いづいていることだろう、そこで隙を見せてやれば簡単に食いつくという寸法か!」
「只要不放棄野心,他們能做的只有起兵。讓謙信事先隱蔽部隊前進,當蜂起的消息傳來瞬間折返,用預伏的兵力包圍,可一網打盡。他們大概沒有拿城當枕頭討死的覺悟,故意留一道逃路,就能輕易斬獲了吧」
「野心を捨てない限り、取れる行動は蜂起しかない。謙信には事前に隊を伏せながら進軍して貰い、蜂起の報が届いた瞬間とんぼ返りを打ち、伏せておいた兵で囲めば一網打尽。彼らには城を枕に討ち死にするような覚悟はないだろうし、わざと逃げ道の一つも残しておけば労せず討ち取れるだろうね」
信忠聽了靜子的話,心中不禁讚嘆。人心本不可窺,先行推測也無法排除不確定因素。於是將可取的選項縮小,逼對方置於不得不選擇那一項的境地,靜子的戰略眼光令人畏懼。
信忠は静子の話を聞いて、内心舌を巻いていた。元来人の心は覗けぬもの、先読みをしても不確定要因は排除できない。それならば取り得る選択肢を狭めてしまい、それを選ばざるを得ない状況に追い込むという静子の戦略眼は恐ろしくすらあった。
他們或許會在被討取的最後一刻仍以為自己是做了最好的選擇。決斷早已在局外形成,現實像是復盤般展開。
恐らく彼らは自分の手で最善の手を選んだと、最後の瞬間まで思いながら討ち取られるのだろう。決着は既に盤外にてついており、現実は感想戦の如く進んでいくのだ。
「靜子也變得心機更重了啊,那是遺傳自足滿嗎?」
「静子も底意地が悪くなったな、それは足満譲りか?」
「說得難聽!我只是想尋找能盡量減少我方犧牲的方法而已。我已多次向他們伸出援手。他們因野心而揮去援手選擇敵對,應該對相應的結局有所覺悟吧?」
「人聞きの悪い! 私は味方の犠牲を少しでも減らせる手を探しているだけです。彼らには既に何度も手を差し伸べた。野心からそれを振り払って敵対する道を選んだのだから、相応の結末は覚悟するべきでしょう?」
「親北條派那些人不會以為自己的命被放在賭盤上。到那時為止就儘管自以為是在釋尊掌中胡鬧的猿猴吧」
「親北条派どもは賭け皿に自分の命が載せられているとは思っていまいよ。それまでは精々釈尊(しゃくそん)の掌で暴れた猿猴(さる)のように思い上がって居れば良い」
「哎呀,竟然引用『西遊記』,你也有讀最新的書嗎?」
「へー『西遊記』から引用するだなんて、最新の書物にも目を通してるんだ?」
「嗯,父上專注於南蠻,我反而向唐(指外國總稱,此處意指明朝)學習。我終將繼承織田家的家督,僅僅追隨父上的腳步毫無意義。看著吧靜子,我必定重振旗鼓,讓織田人說出『織田有信忠』!」
「ああ、父上は南蛮に目を向けておいでだから、俺は逆に唐(から)(外国全般を指す言葉、ここでは明(みん)を意味している)にも学ぶ。俺はいずれ織田家の家督を継ぐ身。父上の歩まれた足跡をなぞるだけでは意味がない。見ておれ静子、俺は必ず再起を果たし、織田に信忠ありと言わせて見せる!」
緊握拳頭,信忠表達了自己的氣概。
拳を固く握りしめ、信忠は己の心意気を語って見せた。
與信忠會見結束後,靜子直接返回了領地。又被命令閉門謝客,她認為正好趁著作戰期間處理積累的事務。
信忠との会見を終えた静子は、真っすぐ自領へと戻った。蟄居の申し付けもあり、いくさをしている間にたまった仕事などを片付ける良い機会だと考えたからだ。
因為已將留守期間的事務以彩為首委託給雇用的文官們處理,既有案件運轉無虞。
留守中の事は彩を筆頭として、雇い入れた文官たちに権限を委譲していたため、既存の案件については過不足なく回っている。
然而,新案或突發問題的處理需要請示靜子的判斷。這類文件堆在靜子的文箱上,等待核決。
しかし、新規の案件や突発的な問題への対処は静子の判断を仰ぐ必要があった。そうした書類は静子の机の文箱に積まれ、決裁を待つこととなっている。
當然,無法等待核決的事項則由文官們合議決定,或派快馬送到靜子處理。
無論、決裁を待つことが出来ないものについては、文官たちの合議で決定するか、早馬を仕立てて静子の許へと届けさせることなどで対応する。
「嗯……都是一時無法解決的問題呢」
「うーん……すぐには解決しない問題ばかりだね」
靜子的根基在於農業。雖然如今擁有從生產到加工、流通一貫經營的六次產業,但若沒有物資則無從談起,所以起點仍是初級產業。
静子の基盤は農業にある。今でこそ生産から加工、流通までを包括して運営する六次産業を擁しているが、物がない事には始まらないため、起点は一次産業となる。
影響農業成敗的一大要因是水利。正如「我田引水」一語,關乎生命的農業成敗之水利權,成了諸多紛爭的根源。
そして農業の出来を左右する大きな要因に水利があった。『我田引水(がでんいんすい)』の言葉があるように、命に直結する農業の成否を左右する水利権は、多くの騒動の要因となっていた。
在靜子的情況下,信長以強權掌握水利並制定城市計畫,將農地交由靜子管理。因為從一開始就以盡可能公平的水利分配來規劃農地,所以沒有人抱怨。
静子の場合は信長が強権で水利を把握し、都市計画を立案した上で静子に農地を任せた。最初から可能な限り平等な水利を与える計画のもと、農地が準備されていたため誰からも文句の声は上がらなかった。
然而,隨著時光流逝與人口增加,加上豪農整合農地的結果,平衡逐漸被打破。為了養活不斷增加的人口,農地持續擴張。
しかし、時の流れと共に人口の増加や、豪農による農地の統廃合の結果、徐々にバランスが崩れ始めた。増加の一途を辿る人口を養うため、農地はどんどん拡張された。
對於任意擴張的農地,始終無法建立足以供給充足水量的體制。如此一來便產生圍繞水利而引發農民間爭端的問題。
野放図に広がる農地に対して、十分な水を供給できるだけの体制はついぞ作る事が出来なかった。こうなると水利を巡って農民同士が争うという問題が発生する。
根據信長制定的法令,未經許可改動河川屬於重罪。他們能做的只有透過代官向領主靜子請願,申請水利調整。
信長が制定した法により、許可を得ずに河川に手を加えることは重罪にあたる。彼らに出来る事と言えば、代官を通じて領主である静子の許へ水利の調整を願い出る陳情をすることだけだった。
(把水分給這塊農地,下游地區必然不足。這只能增加上游總水量,但愛知用水仍無著落。或許只能準備調整池來增加水量……需要調查。)
(この農地に水を回せば、下流域が不足するのは目に見えている。これは大元の水量を増やすしかないけど、愛知用水は未だに目処が立たない。調整池を用意して水量を増やすしかないか……調査が必要だね)
翻看著那種此處成立彼處難以成立的陳情書,根據文官們附上的資料一邊點頭一邊處理。
あちらを立てればこちらが立たずという状況の陳情書を眺め、文官たちが添えてきた資料を元にうんうんと唸りながら処理をしていく。
靜子花了好幾天全心處理文件。雖是繁瑣而微妙的工作,但若忽視水利權,作為國家基礎的「糧食」將會崩壞。對靜子而言這絕非可鬆懈的工作。
静子は数日かかり切りになって書類を集中して処理しきった。面倒で繊細な作業だが、水利権を疎かにすれば国の礎である『食』が崩壊してしまう。静子としては決して手の抜けない仕事であった。
「這是……來自宗易大人嗎。長谷川大人決定應試了。我方並未訂出期限,但對方提出希望以今年年底為止作為期限。如果這樣能激起他的幹勁就隨他去吧」
「これは……宗易様からか。長谷川殿は試験に臨むと決断したんだ。こちらとしては期限を切らなかったけれど、先方から今年一杯までを期限としたいと言う申し入れか。それでやる気が出るなら好きにさせるかな」
在確認同意的回信後,靜子將其放入已處理的文箱。此文會由文官回收,整理為正式文書後送出。
承諾する旨の返事を認(したた)めると、静子は処理済みの文箱へと入れる。これは文官たちに回収され、正式な文として整えられて送られることとなる。
「接下來,是來自京的報告啊」
「次は、京からの報告かあ」
靜子一邊翻閱彙整自派往京的間諜的報告書,一邊喃喃自語。按常理這些文件應由昌幸核閱並在其權限內裁決,因此能上到靜子這裡的文件並不多見。
京に配された間者からの報告をまとめた書類を捲(めく)りながら静子は呟(つぶや)いた。常であれば昌幸が確認し、彼の権限に於いて決裁されるため、静子のところにまで上がってくる書類は珍しい。
帶著是否發生了什麼大問題的些許不安繼續閱讀,而那份不安果然成真。確實,這件事不只要報她,甚至需要回報到信長那裡。
何か大きな問題でも起きたのかと若干不安を抱きつつ読み進めた。そしてその不安は的中していた。確かにこれは自分どころか信長にまで報告する必要がある事案であった。
(耶穌會分裂了嗎……)
(イエズス会が割れたか……)
報告顯示,起因是京中基督徒間的傳聞,間諜根據與耶穌會有往來的商會及有力者等的動向追查後,查證結果似乎屬實。
報告に拠れば発端は京に居るキリシタンの間で囁かれた噂であり、間者がイエズス会と取引のある商会や有力者たちなどの動向などを元に裏を取った結果、どうやら真実らしいと言う事が判った。
近來與靜子也有往來的奧爾甘蒂諾,與日本教區負責人卡布拉爾之間發生了對立。
近頃、静子とも関係を構築しているオルガンティノと、日本教区の責任者たるカブラルが対立しているとのことだった。
卡布拉爾指責奧爾甘蒂諾穿著以絲綢等製作的華麗服飾,有違應持清貧的聖職者精神。
カブラルはオルガンティノが絹などを用いた華美な服装を着用しており、清貧であるべき聖職者の精神に反していると非難した。
依卡布拉爾之說,奧爾甘蒂諾與商人勾結,過度沉迷於營利,疏忽信仰。
カブラルに言わせれば、オルガンティノは商人たちと結託し、金儲けに傾倒し過ぎて信仰を疎かにしているのだそうだ。
而奧爾甘蒂諾則如前任托雷斯所言,在日之本若忽視儀表,反而會成為受蔑視的對象。
対するオルガンティノは、前任者のトーレスが語ったように日ノ本に於いて、身なりを疎かにしていては侮蔑の対象となってしまう。
在非故鄉的日之本,為了整飾儀表就需要資金。故他反駁說必須自行積極募款,那些為此的努力是佈教所不可或缺的行為,只要自己未受神罰,便合乎神意。
故国ではない日ノ本に於いて、身なりを整える為には資金が必要となる。故に自ら積極的に資金を集める必要があり、その為の努力は布教の為に不可欠な行為であり、我が身に神罰が下らぬ以上、神の意に適っていると反論した。
對於不下場的卡布拉爾來說,奧爾甘蒂諾看起來像是淪為商業主義走狗。然而與乾燥的故國不同,潮溼的日之本光是保持清潔就需要相當的心力與金錢。
現場に出ないカブラルの目にはオルガンティノが商業主義の走狗に成り下がったように見えた。しかし乾燥した祖国と異なり、湿潤な日ノ本に於いては身を清潔に保つだけでも相応の努力と金を必要とする。
正因為投入資金與時間來保持潔淨,人們才會對那人心生敬意。整日閉門在宅的卡布拉爾,與佈教時精力充沛奔走的奧爾甘蒂諾等一線修道士,所需的衣物量本就不同。
資金と手間暇をかけて清潔を保つからこそ、人々はその人物に敬意を払う。一日中屋敷に籠っているカブラルと、布教に際して精力的に動き回るオルガンティノたち現場の修道者たちとでは、そもそも必要となる衣服の量からして違うのだ。
在耶穌會內部階級上卡布拉爾位階較高,但實際在一線佈教的宣教師支持卻集中於奧爾甘蒂諾。
イエズス会内での位階としてはカブラルの方が上位だが、現場で布教している宣教師たちの支持はオルガンティノに集中していた。
此外,奧爾甘蒂諾與被視為天下人的信長有關聯,連卡布拉爾也不敢輕易動手。
更にオルガンティノは、天下人と目される信長と関係を結んでいるため、さしものカブラルとしても容易には手を出せないでいた。
「嗯……從卡布拉爾來任時就覺得會變成這樣。卡布拉爾作為宗教家很優秀,在耶穌會也是菁英,但他固執於理想且帶有歐洲中心主義。若以現今日之本的情勢來看,奧爾甘蒂諾追求的和解路線較為可取……不過這種事也不好輕易插手,只能觀望吧。恐怕是他動了真珠出口的歪念,觸怒了本國上面的人?」
「まあカブラルが赴任した時からこうなりそうな気はしてたんだけど。カブラルは宗教家としては優秀で、イエズス会でもエリートだけれど、理想に固執する上にヨーロッパ中心主義者だしね。今の日ノ本の情勢下に於ける布教を考えるなら、オルガンティノが目指す融和策が望ましいんだけど……まあ、これは下手に手を出せないから見守るしかないね。恐らく真珠の輸出に食指を動かしたのが、本国のお偉方の逆鱗に触れたのかな?」
真珠在聖經中也被列為至高的寶石。俗語中著名的『豬對珍珠』一說,據傳源自聖經中『不可把珍珠丟在豬前』的一節。
真珠は聖書にも最高の宝石として登場する。慣用句として有名な『豚に真珠』という言い回しも、聖書に記された『豚の前に真珠を投げてはいけない』という一節が由来とされている。
因此在卡布拉爾眼中,掌握日之本珍珠交易、試圖創造龐大利益的奧爾甘蒂諾看來像是背信者。
故にカブラルの目には、日ノ本の真珠取引を掌握し、莫大な利益を生み出そうとするオルガンティノが背信者に見えるのだろう。
「如果得知被交易的珍珠是養殖的,卡布拉爾可能會氣死吧?」
「取引される真珠が養殖された物だと知ったら、カブラルは憤死するんじゃないかな?」
靜子做出這種奇怪的聯想,忍不住苦笑。整頓心情後,她繼續閱讀報告。
妙な想像をした静子は思わず苦笑していた。気を取り直すと、静子は報告書を読み進める。
「耶穌會的分裂,對基督徒們也不是旁觀者的事啊」
「イエズス会の分裂は、キリシタンたちにも他人事じゃないようだね」
即便不提此次事件,卡布拉爾的佈教方針已在宣教師與日本信徒間造成裂痕。其方針中潛藏著致命的問題。
今回の件がなくとも、カブラルの布教方針は宣教師や日本人信徒との間に溝を作っていた。そこにはカブラルの方針が持つ、致命的な問題が潜んでいたのだ。
依卡布拉爾的方針,基督教是至高的教義,對當地未成熟粗陋的宗教視為不足取的對象。
カブラルの方針に沿えばキリスト教こそが至上の教えであり、未熟で粗野な現地の宗教など取るに足りないとして扱われる。
此時代的京中,各宗派到處頻繁說法。故多數日本人對各宗教教義有基本認知,甚至存在那種即使不識字也能理解宗教本質的信徒,像個笑談般的存在。
この時代の京では、各宗派による説法があちこちで頻繁に行われていた。このため、多くの日本人はそれぞれの宗教の教義に対する基本的な知識を有しており、たとえ読み書きが出来ずとも宗教の本質を理解しているという冗談のような信徒が存在し得た。
因此那些到處聽說法的農民,雖衣著拙劣,卻常擁有令宣教師自嘆不如的知識,甚至在理論上武裝自己。
このためあちこちの説法に顔を出す百姓などは、粗末な身なりをしていても宣教師顔負けの知識を持ち、理論武装している事すらあった。
在此背景下,對既有宗教與信仰缺乏了解的宣教師被視為學識不足、愚笨而遭輕視。
こうした背景から既存の宗教や信仰に対する知識を持たない宣教師は、勉強不足で頭が悪いと見做され軽蔑された。
單方面只宣講基督教優點的說法,沒有人會傾聽,卡布拉爾的方針不僅為日之本信徒所厭,也逐漸被作為佈教者的其他宣教師所疏遠。
一方的にキリスト教の美点だけを述べ続ける説法では誰も耳を貸すことがなく、カブラルの方針は日ノ本の信者だけでなく、布教者たる宣教師たちからすらも疎まれるようになっていた。
鼓吹救世的宗教之所以盛行,背後有社會情勢不安的因素。在權力歸於信長且治安穩定的京城,宣教師的教導也因此不太能打動人心,這是其中的內情。
救世を謳う宗教が流行る背景には、社会情勢が不安だと言う要因がある。信長の元に権力が一本化され、治安が安定している京に於いては宣教師の教えも今一つ心に響かないと言う裏事情もあった。
「卡布拉爾是否理解到一旦魯莽行動就會出現伴天連追放令的現實呢?目前上樣保障布教自由,但若以布教不順為藉口介入政治……」
「下手に動くと伴天連追放令が出されるという現実をカブラルは理解しているのかな? 今は上様が布教の自由を担保しているけれど、布教の不首尾にかこつけて政治に手を出せば……」
信長格外厭惡宗教家抱持政治野心、恃信徒之數以揮舞權威。本願寺與延曆寺也因倚仗佛之權威而掌握政治權力並武裝起來,故與之為敵。
宗教家が政治的野心を抱き、信徒の数を恃(たの)みに権威を振りかざすことを信長は殊の外嫌う。本願寺や延暦寺も仏の権威をかさに着て、政治権力を手中に収め武装したが故に敵対しているのだ。
因此信長為了將宗教與政治切離,史實上與石山本願寺進行了長達十一年的戰爭,並執意逼迫延曆寺解除武裝,最終甚至燒毀了坂本。
このため信長は宗教と政治を切り離すべく、史実に於いて石山本願寺と十一年にも及ぶ戦争をし、延暦寺にも執拗に武装解除を迫り、ついには坂本を焼き払うに至っている。
「嘛,長崎已有前例,發佈追放令也只是時間問題吧」
「まあ、長崎での前例があるから、追放令が出されるのも時間の問題だろうね」
對於以近畿圈為據點的基督徒來說是大事,但靜子將其視為必然現象而淡然帶過。
近畿圏に拠点を置くキリシタンにとっては一大事であったが、静子としては必然的な事象として軽く流した。
耶穌會與靜子的關係不過是互相利用而已。若信長頒布伴天連追放令,靜子也別無他法只能遵從。
イエズス会と静子との関係性は相互に利用し合っているに過ぎない。信長が伴天連追放令を発布すれば、静子としても従うほかはない。
兩方並非那種會勉強庇護的關係,若統治者示範輕視法律,百姓終將亦會輕視法律。這是統治者絕不可犯的最大禁忌。
無理を押して庇いだてするような関係ではないし、統治者が法を軽んじる姿を見せれば、いずれ民も法を軽んじるようになる。それだけは統治者が犯してはならない最大の禁忌であった。
「啊!關於長谷川大人的事要補充一點!要寫上若在執行課題時有不足之處,請毫不客氣提出來才行」
「あ! 長谷川殿の件については補足をしないと! 課題に取り組むに当たって足りない物があれば、遠慮なく申し出よと書き添えないとね」
她從剛才放入已處理文箱的文書中取出,在空白處把字寫小了些補上。雖稍顯失禮,但對方非需講究格式的人,意圖能傳達就足夠,於是又放回文箱。
先ほど処理済みの文箱に入れた文を取り出し、余白に少し文字を小さくして書き込んだ。少々無作法ではあるが、格式ばった形式が必要な相手でもなし、意図が伝われば十分として再び文箱に戻した。
「說起來,不知道會完成出什麼樣的作品呢」
「さてさて、どんな作品が出来上がってくるかな」
靜子對長谷川信春的作品,從現在起就期待得不得了。
長谷川信春の作品、今から楽しみで仕方が無い静子だった。
「嗯,是來自上杉家嗎……嗯,他們會協助『鰤起こし』啊!」
「えーと上杉家からか……ふむ、『鰤起こし』に協力してくれるんだ!」
「鰤起こし」是石川縣金澤地區使用的說法。
鰤起こしとは石川県金沢地方で使われている言葉になる。
在北陸,從十一月中旬到十二月間會有雷鳴轟響、狂風肆虐的日子,人們把那種天氣稱為「鰤起こし」。
北陸では、十一月の中頃から十二月にかけて、激しく雷が鳴り響いたり、猛烈な風が吹き荒れる日があり、それを指して『鰤起こし』と呼んでいる。
這時期開始捕到在日本海迴游的寒鰤,據說因為漁夫「起網」和把睡著的鰤「叫醒」的雙關意義,便稱作「鰤起こし」。
この頃に日本海を回遊している寒鰤が獲れ始めるため、漁師が網を『起こす』というのと寝ている鰤を『起こす』と言う意味をかけて『鰤起こし』というようになったのだそうだ。
這時候迴游的鰤魚身上脂肪豐富,非常美味。對美食孜孜不倦的靜子當然無法放過,早就向謙信請求協助。
この時期に回遊してくる鰤は、その身にたっぷりと脂を宿しており非常に美味とされる。美食の追及に余念がない静子としては当然見逃せるはずもなく、以前より謙信に対して協力を要請していたのであった。
靜子所熟悉的海域一直是太平洋一側,其他不過像琵琶湖那樣的湖泊。面對冬季日本海的滔天巨浪,沒有經驗的靜子等人根本無法應付,若要捕鰤就必須仰賴謙信的幫助。
今まで静子の知る海は太平洋側であり、それ以外では琵琶湖などの湖に過ぎない。冬の日本海の荒波に対して、経験のない静子達では太刀打ちできるはずもなく、鰤漁をする為には謙信の協力が不可欠であった。
再者,為了把捕獲的鰤魚以新鮮狀態送到安土、京、尾張,還需要守路的柴田協助。柴田是織田家中人,很快就同意了,但謙信那邊則花了些時間,現在終於送達到靜子這裡。
更に言えば、獲れた鰤を新鮮なまま安土や京、尾張へと届けるためには道中を守護する柴田の協力をも必要とした。柴田は織田家内の人間であり、早々に了承を得られたのだが、謙信のそれはしばらく時間を必要とし、ようやく今静子の許へと届けられた。
「想用河道一次運過去,但如果不準備充足的保冷用冰,半路上就會壞掉啊……季節到了也可以從湖上切冰來用」
「川を使って一気に運びたいところだけど、保冷用の氷を潤沢に用意しないと道中で腐っちゃうよねえ……季節的に湖の氷を切り出しても良いけど」
將日本海側上岸的寒鰤運到遙遠的安土,需要經過各種程序。
日本海側で水揚げされる寒鰤を、遠く離れた安土まで運ぶには色々と手順が必要となる。
現代或許可以把魚放進大型水槽帶活魚運送,但在戰國時代根本不可能,因此要採用稱為活け締め的處理技術。
現代ならば大型の水槽に入れて生かしたまま鰤を運ぶことも可能だろうが、戦国時代に於いては望むべくもない。となれば必要となるのは魚の活け締めと呼ばれる技法になる。
不只魚,許多動物為了讓身體動作會消耗稱為ATP(アデノシン三リン酸)的物質;ATP由呼吸作用消耗體內物質而產生。
魚に限らず多くの動物は、その肉体を動かすためにATP(アデノシン三リン酸)と呼ばれる物質を消費する。ATPは呼吸によって体内物質を消費することで生み出される。
對於生活在低溫水中的魚來說,被釣上來置於常溫陸地如同灼熱地獄,因此魚會拼命掙扎直到體內的ATP耗盡。
低温の水中で生活する魚にとって、釣り上げられた常温の陸上は灼熱の地獄である。このため魚は体内のATPが枯渇するまで力の限り暴れまわる。
這樣死去的魚因體溫上升而自體燒灼,ATP耗盡後會發生屍僵,體內開始出現肌肉分解的自我消化反應。
こうして死んだ魚は体温上昇によって自身の体を焼き、ATPを消費し尽した体は死後硬直が発生し、体内で筋肉が分解される自己消化反応が始まる。
像鮪魚等大型魚類這一傾向更為顯著,出現稱為「身焼け」的變色肉會帶有酸味,淪為連狗都不吃的魚肉。
マグロなどの巨大な魚はこの傾向が顕著であり、身焼けと呼ばれる変色を起こした身は酸味を帯びてしまい、犬も食わないと呼ばれた魚肉に堕してしまう。
防止魚類鮮度下降的就是所謂的活け締め技法;對上岸的魚立即施行活け締め,使魚瞬間死亡以阻止ATP消耗,從而延緩屍僵的發生。
こうした魚の鮮度低下を防ぐのが活け締めと呼ばれる技法である。水揚げされた魚に対して、即座に活け締めを施すことにより、魚を即死させてATPの消費を防ぐことで死後硬直を遅らせる事が出来る。
活け締め是切斷魚的脊髓,阻斷來自腦部的神經信號使魚瞬死,然而肌肉仍會反射性收縮,因此會用鐵絲等細長金屬挖出延髓,連同腦脊髓液把神經掏出。
活け締めは魚の脊髄を切断し、脳からの神経信号を遮断することで魚を即死させる。しかし、それでも筋肉は反射によって動くため、針金などの細長い金属を用いて延髄を抉り、髄液と共に神経を掻きだしてしまう。
與此同時,一旦置於常溫雜菌便會迅速繁殖,因此會將血液排出體外以保鮮;這一整套流程就稱為活け締め。
これと並行して常温になると途端に雑菌の増殖が始まり、生臭さの元となる血液を体外に放出することで鮮度を保つ。これら一連の流れを指して活け締めと呼ぶ。
經過這些處理後,可將魚的鮮度長期維持,在冷藏環境下再慢慢促進自我消化,分解肌肉轉化為肌苷酸(イノシン酸)等進行熟成也變得可能。
これらを行うことで、魚の鮮度を長期に亘って保つことができ、冷蔵環境下に於いてゆっくりと自己消化を促し、筋肉を分解してイノシン酸へと変える熟成などを行う事も可能となっている。
「魚的處理真是化學呢」
「魚の処理って化学だよねえ」
進行活け締め後,要從料理時間反推計算鰤的流通時程,並據此決定要準備多少冰塊或鋸末等。
活け締めをすることにより、調理時間から逆算して鰤の流通を計画する必要があり、それに応じて氷やオガクズなどを準備する量を決めることになる。
不僅活け締め,還指示在上岸後立即去除鰓和內臟,因為鰓過濾海水中的氧氣,會附著各種雜菌,是腐敗與異味的根源。
活け締めだけでなく、更に水揚げ直後にエラと内臓を取り除くよう指示も出している。これは海水から酸素を濾しとるエラには様々な雑菌が付着しており、腐敗や悪臭の元となるからだ。
內臟是寄生蟲的溫床,魚死亡後內臟最先腐敗。在這時,寄生蟲可能會脫離溶解的內臟移到肌肉,因此去除內臟既能保持鮮度也能避免寄生蟲風險。
内臓については寄生虫の温床であり、魚が死ぬと内臓は真っ先に腐敗し始める。この時、寄生虫は溶けだした内臓を脱して筋肉に移行することがあり、内臓を取り除くことには鮮度を保ちつつ寄生虫リスクを回避するという側面もあった。
經過各種辛勞後,終於成為能入口到信長嘴裡的鰤。之所以如此費心,乃因信長視寒鰤為冬季風物詩,頗為鍾愛。
こうして様々な苦労を経て、ようやく信長の口に入る鰤となる。こうまでして面倒な手間をかけるのは、信長が冬の風物詩としていたく鰤を気に入った事が影響している。
起因於靜子對一直吃太平洋側鰤的信長說,若是寒鰤脂肪會更多更美味,且若做活け締め就可能以保鮮狀態運到尾張。
太平洋側で獲れた鰤を食べていた信長に対して、静子が寒鰤であればもっと脂が乗っていて美味しく、活け締めをすれば鮮度を保ったまま尾張まで運べるかもしれないと口にしたことに起因する。
聽聞此事的信長,下令務必讓他品嚐寒鰤,無論如何都要做到。
そんな話を聞かされた信長は、是が非でも寒鰤を味わわせよと静子に命を下したのであった。
「真懷念那位不講究餐食、只吃湯浸飯就滿足的上樣啊……」
「食事に拘りを持たず、湯漬けで満足していた上様が恋しいね……」
明白內情的人一聽定會大聲回嗆「都是你害的!」,這樣的牢騷被冬夜的天空吞沒了。
事情を知るものが聞けば「お前が原因だ!」と声を大にして突っ込まれるであろう愚痴は、冬の夜空へと吸い込まれていった。