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戦国小町苦労譚

1575年 十月中旬

足滿留在尾張,駐守於技術街的兵器廠內。

尾張に残った足満は、技術街に存在する兵器廠(へいきしょう)に詰めていた。

他端詳著由前線以快馬送來的迫擊砲運用資料與破損部位的草圖,喃喃自語。

前線から早馬で齎された迫撃砲(はくげきほう)の運用データと、破損個所のスケッチを眺めて足満は唸っていた。

「既然火砲本身尚未成熟,就開發了想要取野砲與迫擊砲優點於一身的兵器,結果卻發現不沿襲前人已走出的道路,獨自打造的武器,難成大器嗎……」

「火砲自体が未成熟な今ならば、野砲(やほう)と迫撃砲の良いとこどりをした兵器が通用するかと開発したが、先人の踏み固めた道をなぞらぬ独自の兵器は、そうそうものにはならぬか……」

受損的實物太重無法用快馬運送,只收到用墨水畫在紙上的零件圖,但仍能理解故障的成因。

破損した現物は重量があるため早馬では運べず、紙に墨で描かれた部品の図だけであったが、それでも何が原因で故障が発生したかは理解出来た。

說到底足滿所開發的迫擊砲,嚴格來說稱不上真正的迫擊砲。迫擊砲透過採取高仰角,將發射時的衝擊導向地面,為換取簡單與輕量而犧牲射程與精度的火砲。

そもそも足満が開発した迫撃砲は、厳密には迫撃砲とは呼べない。迫撃砲とは高い射角を取ることで、発射の衝撃を地面に逃がす構造になっており、射程や精度を犠牲にする代わりに極めてシンプルで軽量な砲である。

反之,追求射程與命中精度的火砲則被稱為野砲或卡儂砲,是需要長砲管與堅固支架的複雜且重型火砲。

対して射程や命中精度を求めた火砲が、野砲(やほう)やカノン砲と呼ばれる砲となる。長大な砲身と堅牢な支持架(しじか)を必要とする複雑かつ重量級の砲だ。

迫擊砲朝向更簡素、更輕、更易攜帶的方向發展,而野砲與卡儂砲則朝向更遠、更精準地投送砲彈的方向發展。

迫撃砲がより簡素に、より軽量で可搬性に優れる方向性を持つのに対し、野砲やカノン砲はより遠くへ、より正確に砲弾を届かせると言う方向性を持っている。

如前所述,迫擊砲為了達成簡單的發射結構而犧牲射程與精度,兩者因而形成相互矛盾的設計理念。

前述の通り迫撃砲は射程と精度を犠牲にしてシンプルな発射構造を実現したため、お互いに相反する設計思想を持つようになった。

足滿在誤入靜子那個時代時常往圖書館去,因而得知火砲的存在;被在自己出生的時代不存在的長射程、大威力武器所吸引,將各式砲的構造、利弊與演進歷程記在腦中。

足満は静子の生まれた時代に迷い込んだ際、図書館通いをしていて火砲の存在を知った。自分の生まれ育った時代には存在しなかった長射程、大威力の兵器に魅せられ、それぞれの砲の構造と利点や欠点、進化の足跡を頭に叩き込んだ。

基於此,他認為在火砲尚未普及的過渡期,若能做出比野砲或卡儂砲更簡單、又比純粹的迫擊砲有更長射程與高精度的砲,便能作為萬能兵器通行無阻。

その上で、火砲自体が一般的ではない過渡期の今ならば、野砲やカノン砲よりも構造がシンプルかつ、純粋な迫撃砲よりも長射程高精度の砲が万能兵器として通用すると考えた。

「果然隔螺式閉鎖機在加工精度上是個難題嗎」

「やはり隔螺式(かくらしき)閉鎖機(へいさき)は工作精度的に難しいか」

隔螺式閉鎖機是指在砲管後部裝填砲彈後,嵌入刻有螺旋形溝槽的螺塞以封閉砲管;如此在發射時能將爆炸產生的推進力完整傳給砲彈。

隔螺式閉鎖機とは、砲身の後部より砲弾を込めた後、螺旋型の溝を掘ったネジをはめ込むことで砲を閉鎖する。こうすることで、砲弾の発射される際の爆発による推進力を砲弾に余すところなく伝えることができる。

透過旋轉位於閉鎖機上方的把手來實現蓋的開關及螺塞的鎖緊與鬆開,因而結構必然複雜、可動部件眾多,容易發生故障。

閉鎖機上部に存在するハンドルを回すことで、蓋の開閉及びネジの締め込みと緩めを実現するため、どうしても構造が複雑となり、可動部が多いため故障が生じ易くなった。

果不其然此次也出現這個問題,他們拔除把手後以直接嵌卸螺塞的方式操作。因為螺塞的開合耗時使射擊間隔拉長,但既不影響運用就照樣使用了。

案の定今回もそこに問題が生じ、ハンドルを取り外した上でネジを嵌めたり外したりして運用したとのことだった。ネジの開け閉めに時間を要するため、発射間隔が伸びるが運用自体には問題がないためそのまま運用した。

接著顯露出下一個問題:砲身材料強度不足。由於連續砲擊的熱與衝擊,砲管逐漸變形,最終在兩門迫擊砲中的一門砲管產生了裂縫。

そして次の問題が明らかになる。それは砲を構成する素材の強度不足だった。繰り返される砲撃による熱と衝撃のため徐々に砲身に歪みが生じ、ついには迫撃砲二門のうち片方の砲身に亀裂が生じてしまった。

若出現此狀況,爆壓會從裂縫處逸散,最壞會導致砲管爆裂釀成大禍。雖然砲彈尚存,但不得不停止砲擊。

こうなってしまっては爆圧がそこから漏れ、最悪の場合は砲身が爆発して大惨事を引き起こす。このため砲弾は未だ残っていたが、砲撃を中止せざるを得なくなったのだ。

「能顛覆戰場上數量優勢原理的兵器,似乎還很難完成。靜子被逼入絕境而僅僅因此免於使用那顆砲彈,也算是件好事吧」

「いくさに於ける、数の原理を覆す兵器は未だ完成には遠いか。静子が窮地に追い込まれ、例の砲弾を使わずに済んだだけでも良しとしようか」

他如此自言自語,拿著報告書走向技術人員。最後瞥見的地方放著一個木箱,裡面安置著與交給靜子同型的砲彈。

そう独り言(ご)ちて、足満は報告書を片手に技術者たちの許へと歩んでいった。彼が最後に一瞥した場所には静子に渡したのと同型の砲弾が木箱に入った状態で安置されていた。

架上木箱的名牌上寫著「白磷彈」。白磷彈是一種現代亦有的煙幕彈,內封白磷在空氣中燃燒會吸濕並產生極難透過、阻礙視線的煙幕。

木箱の置かれた棚に付けられた名札には『白燐(はくりん)弾』と記されている。白燐弾とは現代でも存在する煙幕弾の一種であり、封入された白燐が大気中で燃焼すると吸湿して視認性を阻害する極めて透過性の悪い煙幕を発生する。

然而,足滿交付靜子作最終手段的武器絕不會只是單純的煙幕。足滿準備的白磷彈帶有焚燒效果。

しかし、足満が静子の身を護る最終手段として託した武器がただの煙幕だけであるはずがない。足満が準備した白燐弾には焼夷(しょうい)効果が持たせてあった。

燃燒中的白磷會化作火焰粒子灑落,對於無視煙幕仍欲追擊靜子的人會造成極為嚴重的燒傷。附著的白磷會自燃,難以撲滅,若碰觸到裸露皮膚便會灼燒,如同地獄般的痛苦。

燃焼中の白燐が炎の粒子となって降り注ぎ、煙幕を無視して静子を追撃しようとした者には極めて重篤な火傷を生じさせる。付着した白燐自体が化学的に燃焼するため、容易には消火できず、露出した肌などに触れようものなら身を焦がされる地獄の苦痛を味わう羽目になる。

它一方面遮蔽視野、一方面阻止追擊,對撤退時讓敵方無從追蹤逃散方向極為有效,但若風向不利也可能將己方逼入滅亡,因此只能在撤退時使用,是種運用困難的武器。

視界を遮りつつ追撃をも阻むため、逃げた方向すら掴ませない撤退時には極めて有効な兵器だが、風向き次第では自軍をも破滅に追い込むため、逃走時にしか使えない運用の難しい武器でもあった。

進攻武田領的信忠遭遇季節外的颱風直襲,損失慘重。他未能制止渴求戰功而心急如焚的部下,因在無庇蔭的平原紮營而使受害範圍擴大。

武田領へと攻め込んだ信忠は、季節外れの台風に直撃され壊滅的な損害を出していた。戦功を求めて逸(はや)る配下を抑えきれず、視界を遮るものすらない平野部に陣を張っていたため、被害が拡大した。

在猛烈風雨下,雜兵本已四散,連統率他們的將兵也散失,信忠周圍僅剩馬廻衆等最低限的近侍。

激しい風雨に晒され、雑兵は元より彼らを率いる将兵すらも散り散りになってしまい、信忠の周囲には馬廻衆など最低限の側近しか残されていなかった。

昔日那場慷慨陳詞、倡議猛攻的軍議似乎成了謊言,現在呈現出淒慘光景。被大自然的狂暴打得無力的信忠,反覆咀嚼著靜子曾說過的話:「在勝利之時,稍有失誤就足以導致全軍崩潰」。

先日の血気盛んに進撃を訴えた軍議が嘘であったかのように、惨めな様相を呈していた。荒ぶる大自然の脅威に打ちのめされた信忠は、かつて静子が語った「勝ちいくさの時ほど、僅かな失策が軍全体の崩壊に繋がる」という言葉を噛みしめていた。

另一方面,武田一方的勝頼陷入掙扎。聽取偵察回報得知信忠本陣因颱風受創甚重,他猶豫是否應視為良機發起追擊。

一方、武田側では勝頼が葛藤していた。物見より報告を受け、信忠の本陣が台風により大きな損害を出した事を知ったが、これを好機と見て追撃を出すか迷っていた。

暴雨使大地泥濘,武田引以為傲的騎馬隊機動力因此受限;更有當初連被稱作無敵的信玄也被討取的靜子軍存在。

豪雨によって大地は泥濘(でいねい)化しており、武田が誇る騎馬隊の機動力は殺(そ)がれてしまう。更には無敵と呼ばれた信玄すらをも討ち取った静子軍の存在があった。

該軍如同不知會跳出何物的驚喜箱,在高天神城之戰中曾以彷彿妖術般從天而降的死石摧毀友軍北條軍,致其潰敗。

何が飛び出してくるか判らないビックリ箱のような存在であり、高天神城での合戦では空から死の礫を降らせるという妖術めいた手段で、友軍の北条軍を壊滅へと導いた。

雖是討取信忠的絕佳機會,但無法排除遭致命反擊的可能,因而遲疑未下達追擊命令。

信忠を討ち取る絶好の機会でありながら、致命的な逆撃を受ける可能性を捨てきれず、追撃の命令を下せずにいた。

勝頼本就未認為能擊倒織田,目的在於爭取時間整頓武田家的態勢,若能讓織田覺得武田不可小覷便已足夠。

元より勝頼は織田を倒せるとは思っていなかった。武田家の態勢を立て直す時間稼ぎが目的であり、織田に対して武田は侮り難(がた)しと思わせることさえできれば良かった。

正巧北條提出聯手的提議。若信玄仍在世,他絕不會托人援軍,也會看穿北條提議背後的陰謀而不答應。

そこへ折よく北条から共闘の申し出があった。仮に信玄が存命中であれば、援軍を頼ることもなく、北条の申し出の裏に存在する狙いをも見抜いて応じなかったであろう。

然而當時在武田家內孤立、陷入窘境的勝頼,既未受國人式教育、政治視野也欠缺,因而被北條的甜言蜜語所誘惑。

しかし武田家内で孤立し窮地に陥っていた勝頼は、国人としての教育を受けておらず政治的な視野に欠けることもあり、北条の甘言に飛びついてしまった。

一旦事態揭露,結果是在高天神城造成毀滅性損害後的大敗。無論北條的目的為何,這樣的代價恐怕遠不划算。

いざ蓋を開けてみれば、高天神城での壊滅的な損害を出した上での大敗。北条の狙いが何処にあったにせよ、到底割の合うものではないだろう。

儘管如此若能斬下信忠之首便能抵消損失。明明是突如其來的絕佳機會,勝頼卻無法拂去不祥之感而遲疑不前。

それでも信忠の首を取れば帳尻は合う。降って湧いた絶好の機会だと言うのに、勝頼は嫌な予感を拭い去れず二の足を踏んでいた。

勝頼撤回本領的高遠城,但北條軍則另有打算;他們雖挑唆勝頼開戰,卻被織田、德川聯軍好好擊敗,造成不可忽視的損失。

勝頼は自領にある高遠城へと引き上げたが、北条軍は違っていた。勝頼を唆して戦端を開いたものの、織田・徳川連合軍に良いように打ち負かされ、看過できない損害を出していた。

毫無戰果且遭受毀滅性損失。正當他們即便只是分得末席也欲獲得織田家屬將首級之際,颱風襲來。

何一つ戦果を上げることなく壊滅的な損害を被(こうむ)った。ここはたとえ末席であっても、織田家に連なる武将の首級が欲しいと思っていたところへ台風が押し寄せた。

幸好在撤退途中借宿於一座寺院,得以安然度過颱風,此時傳來信忠軍本陣因颱風而潰散的消息。

幸い撤退の途上に存在した寺に身を寄せ、台風をやり過ごすことが出来た。そこへ信忠軍の本陣が台風により壊滅したとの一報が入った。

面前被懸著大將首這顆金星所誘惑,北條軍急忙重整軍隊,企圖襲擊信忠軍本陣遺址。無論之前犯下多少失誤,若能擒獲織田家下一任當主之首即可彌補一切。

目の前に大将首と言う金星をぶら下げられ、北条軍は急遽軍を編成し直し、信忠軍の本陣跡へと襲撃を企てた。どれ程の失態を演じようとも、次期織田家当主の首を挙げれば補って余りある。

然而他們本就處於敗走中、士氣低落,為優先速度甚至把本應拉運傷者的貨車馬改裝為騎乘用,編成粗糙而拼湊成一支雜亂無章的部隊。

しかし、元々敗走中であり士気も低く、速力優先で負傷者を運搬する荷車を牽く馬すら騎馬に仕立てて無茶な編成をしたため、寄せ集めでちぐはぐな部隊が出来上がった。

另一方面,信忠軍本陣遺址已由長可與慶次抵達並著手重建本陣,並在當地居民協力下避開因土石流阻斷的道路,走小徑提早會合。

一方、信忠軍の本陣跡には、既に長可と慶次が到着して本陣の立て直しをしていた。地元住民の協力もあって、土砂崩れで通行不能となった道を避けて裏道を通り、早期の合流を果たしていた。

靜子未經允許便出陣,許多物資無法帶出,隨從也僅有少數。然雖寡兵,平日追隨長可無謂行軍的,卻是個個能獨當一面的猛者。

静子の許可を得ずに出陣したため、多くの物資は持ち出せず、手勢も少数に限られている。しかし寡兵とはいえ、普段から長可の無茶な行軍に付き従う一騎当千の猛者が揃っていた。

即便只帶了些許,他們攜來的糧秣與藥品也讓信忠軍本陣漸漸恢復了些許穩定。這時可以看見北條軍殘黨像在泥濘中劃開而來,隊形拉得鬆散地走來。

そして僅かとは言え、彼らが持参した糧食や医薬品によって信忠軍の本陣も多少の落ち着きを取り戻しつつあった。そこへ北条軍の残党が泥濘を掻き分けるようにして、隊列を伸び伸びにした状態でやってくるのが見えた。

靜子軍制式採用的望遠鏡先一步發現了他們,長可軍遂周密整備埋伏。新式銃數量有限,於是也使用鹵獲(ろかく)(戰場上從敵方奪取之物)的火繩銃,採取齊射奇襲。

静子軍制式採用の遠眼鏡でいち早くそれを発見した長可軍は、入念に準備を整えて待ち伏せを仕掛けた。新式銃は数が限られているため、鹵獲(ろかく)(戦場で敵より奪取すること)した火縄銃をも用いて一斉射撃で奇襲した。

長可軍認定以不同射程與命中精度的武器混合射擊只能奏效一次,遂留下配備新式銃的銃兵,其餘棄置火繩銃發動衝鋒。

射程も命中精度も違う武器を用いた射撃など、出合い頭の一度しか通用しないと割り切っている長可軍は、新式銃を装備した銃兵を残すと、火縄銃を放り捨てて突撃した。

「衝啊——!!」

「だっしゃぁぁ!!」

長可慣用的晨星錘粉碎了騎馬的腿。雖被泥濘牽絆導致速度下降,但身披甲冑摔馬的武將,命運只有破滅。

長可愛用のモーニングスターが騎馬の脚を粉砕した。泥濘に脚を取られて速度が落ちていたとは言え、甲冑を着た状態で落馬した武将の運命は潰えるしかない。

不幸從頭部摔下的武將,頸部被扭向奇怪的方向,變成了無慘的屍體。被銃擊阻止了腳步後又遭側面攻擊,北條軍作為一支軍隊的機能已然喪失。

運悪く頭から落ちた武将は首を奇妙な方向へと捻じ曲げた無残な死体へと変じた。銃撃を受けて脚が止まったところへ、横合いから攻撃され北条軍は軍としての機能を失っていた。

長可軍準備萬端、舉長兵以小隊發起攻擊,對於已失去聯繫僅剩個體的北條軍,根本無勝算。

準備万端待ち構え、長物を掲げて小部隊で攻撃してくる長可軍に、連携を失った個でしかない北条軍に勝ち目はなかった。

「呼——!相變如故,氣勢兇猛,來,我們也不能示弱。」

「ひゅー! 相変わらず凄まじい勢いだな。さて、こっちも負けちゃいられない」

慶次對長可軍的突破力吹口哨,從北條軍正欲重整的槍部隊後方發動奇襲。即便是無法協同的雜兵,只要給他們槍並湊足人數,也能成為阻擋敵方突擊的盾。

長可軍の突破力に口笛を吹いた慶次は、北条軍が立て直しつつあった槍部隊の後方から奇襲をかけた。たとえ連携が取れない雑兵であっても、槍を持たせて数を揃えれば敵の突撃を防ぐ盾となり得る。

在意料外的襲擊造成的混亂之中,北條軍能重新整頓槍部隊的指揮官頗為優秀,但慶次的策略更勝一籌。

予期しない襲撃を受けた混乱の最中(さなか)、それでも槍部隊を立て直した北条軍の指揮官は優秀だったが、慶次の策略は更にその上を行った。

慶次因為隨行有步兵,判斷混亂平息後對方會恢復陣勢,便藏身於灌木之中繞到背後,待長可軍正要反擊時出其不意襲擊。

騎馬だけでなく歩兵を随伴していたことから、混乱が収まれば態勢を立て直されると読んだ慶次は、茂みに身を隠して背後に回り込み、今まさに長可軍へと反撃しようとしていたところへ襲い掛かった。

連番奇襲下,正欲在馬上環顧四周以掌握狀況的武將忽然從馬上被打落。稍遲響起的乾脆銃聲宣告了他遭到槍擊。

奇襲に次ぐ奇襲を受け、状況を把握しようと馬上で周囲を見渡していた武将が唐突に落馬した。遅れて響いた乾いた銃声が、彼が銃撃を受けた事を知らせた。

停住腳步、杵立不動的騎兵絕非配備新式銃的銃兵之敵。銃兵越過步兵的防線,接連射落了馬上的武將。

脚が止まり棒立ちとなった騎兵など、新式銃を装備した銃兵の敵ではなかった。歩兵の守りを越えて、馬上の武将を次々に撃ち落としていく。

北條軍隊列拉長亦成了禍端,招致戰力分次投入的失誤。對於無法抵抗而遭討取的武將感到哀憐,但慶次毫不手軟。

北条軍の隊列が伸びていたことも災いし、戦力の漸次投入という失態を招いた。抵抗らしい抵抗も出来ず討ち取られる武将を哀れに思ったが、慶次が手を緩めることは無かった。

「我們正閒得發慌,不如在此好好露一手吧!」

「こっちは出番がなくて暇を持て余してたんだ、ここは一花咲かせてみせようか!」

說話間慶次揮出的戟一道劃過。因為地面不穩,沒大踏步而是以穩住身形的橫掃,但三個雜兵的頭顱在空中飛舞。

言葉と共に慶次が繰り出したハルバードが一閃した。足場が悪い為、大きく踏み込まず足を踏ん張った状態での横薙ぎだったが、雑兵の首が三つ宙を舞った。

「好嘞!再來一擊!」

「ほいきた! もう一丁!」

隨著輕快的喊聲,慶次不減勢頭在原地一轉,這回踏出一步將武器大幅揮下。這回砍倒的不是頭,而是在戟旋轉半徑上的雜兵約十人被斬倒。

軽快な掛け声と共に、勢いを殺さずその場でくるりと回転した慶次が今度は一歩踏み込んで得物を大きく振るった。今度は首ではなく、ハルバードの回転半径上に存在した雑兵が十人ほども薙ぎ倒された。

長柄武器藉由離心力與帶重心的斧刃所施展的斬擊,將雜兵的鎧甲撕裂致命。見到這等慘狀的雜兵棄械而逃,像被驚散的蜘蛛子一般四處散開。

長柄武器の遠心力と重量のある斧が繰り出す斬撃は、雑兵の鎧を打ち砕いて絶命させていた。その惨状を目にした雑兵は武器を放り捨てて、蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。

「別逃!和我一戰!!」

「逃げるんじゃねえ! 俺と戦え!!」

敵人雖然敗走,長可軍並不會就此放過他們。追上逃兵的背後,以刀斬殺、以拾得的槍刺穿,若逃到槍力夠不及之處則丟石頭追擊追加。

敵が逃げ出したからと言ってむざむざ見逃す長可軍ではなかった。彼らは逃げる敵の背に追い縋り、刀で切り伏せ、拾った槍で突き刺し、槍が届かない位置まで逃げられれば投石をして追い討ちをかけた。

四處傳出慘叫,絕命的吶喊回蕩,宛如阿鼻叫喚的地獄圖景展開。

そこらじゅうで悲鳴が上がり、断末魔の叫びが響く阿鼻叫喚の地獄絵図が繰り広げられた。

「東國那幫人沒帶鐵砲嗎?這樣根本不是對手!!」

「東国の連中は鉄砲を持ってないのか? これじゃ相手にならないだろ!!」

不管長可多麼強,一面對鐵砲也同樣面臨生命危險。然而信長為了不讓鐵砲與火藥流入東國而嚴加管制,導致東國本身的鐵砲保有量本就稀少。

いかに長可が強いと言っても、鉄砲を前にすれば等しく命の危険に直面する。しかし、信長が東国に鉄砲や火薬が流れないよう締め付けているため、東国の鉄砲保有数そのものが少ないのだ。

當然北條軍也擁有鐵砲,但因打算以騎兵為主發動奇襲所以幾乎沒攜帶,且在混亂中火繩被弄濕無法發射。

当然北条軍も鉄砲は保有しているのだが、騎兵を主体とした奇襲をかけるつもりであったため殆ど持って来ておらず、更に混乱の最中に火縄が濡れてしまい発砲できなくなっていた。

「哇哇!鬼啊!地獄的蓋子開了——!!」

「ひいっ! 鬼じゃ! 地獄の蓋が開いたんじゃー!!」

北條軍的足輕發出痛哭般的喊聲。在他眼中長可滿身濺血、揮舞著從未見過的武器,連連將同伴撲殺,於是宛如地獄的獄卒。

北条軍の足軽が悲痛な叫びをあげた。彼の目には返り血で真っ赤に染まり、見た事もない武器を振り回し、次々に味方を撲殺して回る長可が地獄の獄卒にしか見えなかった。

「呼。暢快多了,可是味道真難聞。」

「ふう。スッキリしたが、酷い臭いだ」

當周遭的慘叫聲漸止,長可從懷中取出手巾拭去滿臉血污。潛藏的壓力已得以發洩,血色的妝容被抹去後,他甚至露出爽朗的笑容。

周囲から悲鳴が聞こえなくなった頃、長可は懐から手拭いを取り出して血塗れの顔を拭いた。溜まっていたストレスが発散出来た事もあり、血化粧が拭い去られると爽やかな笑みを浮かべてさえいた。

因為自本就人數不足,長可軍中止了進一步追擊,與慶次等人會合後返回信忠處。

そもそもが数に劣るため、長可軍はこれ以上の追撃を中断し、慶次達と合流して信忠の許へと戻っていった。

「辛苦了。那個……有沒有受傷?」

「た、大儀であった。その……怪我をしてはおらぬのか?」

全身沾滿返血、肉片和內臟的長可散發出令人作嘔的血腥味,看起來根本不像安然無恙。另一方面看起來乾乾淨淨、根本不像剛戰過的慶次,並未覺得長可受了手傷。

全身に返り血や肉片、臓物を貼り付けたままの長可は、むっとするような血臭を漂わせており、到底無事には見えなかった。一方で戦闘をしたとは思えぬような身綺麗な慶次は、長可が手傷を負ったなどとは考えていなかった。

「沒問題。我們已把他們徹底驅散,短期內不會回來;但此地正處於敵境中央,無暇多談。請隨我走我們來時的後路,同行至靜子等候的中繼地。」

「問題ございませぬ。散々に追い散らしたゆえ、すぐには戻って来ぬでしょうが、ここは敵地の真っただ中。長話をする猶予はございませぬ。我々が通ってきた裏道をご案内しますゆえ、静子の待つ中継地までご同行願います」

「嗯,是這樣。明白了,各位把累贅的行李丟掉,撤退!」

「む、そうじゃな。判った、皆の者かさばる荷物は捨てて構わぬ、引き上げるぞ!」

勝利戰轉為敗走,信忠可能會表示異議,不過出乎意料地他坦然接受撤退,慶次這才鬆了口氣。

勝ちいくさから一転しての敗走に信忠が難色を示すかと思ったが、予想外に素直に撤退を受け入れたことに慶次はほっと胸を撫で下ろした。

長可與慶次的擅自行動,只有在守住信忠性命的情況下才會被赦免,按理應該受懲罰,最壞甚至可能被斷定為謀反。

長可と慶次の独断専行も信忠の命を守り抜いてこそ赦されるものであり、本来ならば懲罰を受けて然るべき行動であり、悪くすれば謀反と断じられる可能性すらあった。

不知察覺了何事,但長可堅稱不立即行動信忠將喪命,說服慶次而強行出陣,事後也露出安心的表情。

一体何を察知したのか判らないが、今動かねば信忠が命を落とすと訴え、慶次を説き伏せて無理矢理出陣した長可も安堵した表情を浮かべていた。

以慶次居先、中段放置信忠、由長可扮演殿(しんがり)的隊形,向物資集積點前進。信忠不僅分給協助長可的村民,也將沿路遇到的村落中從北條軍奪得的金物分贈。

慶次を先頭に据え、中ほどに信忠を配し、殿(しんがり)は長可が引き受けると言う隊列で物資集積拠点を目指した。信忠は長可に協力した村人は勿論、途中に通りかかった村々で北条軍から奪った金品を分け与えた。

如此一來投靠織田軍有利可圖,下一次造訪時較容易取得合作;再者若武田軍或北條軍發動追擊,沿途村落若有所獲,或許會轉移敵方目光而放鬆追擊。

こうすることで織田軍に与(くみ)すれば利益があり、次に訪れた際の協力を得やすくなる。更には仮に武田軍や北条軍が追撃を放ったとして、途中の村々が潤っていれば、彼らはそちらに目を奪われて手が緩むかもしれない。

若以不協助為由誣陷並奪走他們的財產,將導致國力進一步衰弱。雖是一箭雙鵰的計策,成功機率卻不高。

自分達に協力しなかったと言いがかりをつけて、彼らの財産を奪おうものなら、更なる国力の弱体化を招くことになる。一石二鳥の策略だが、成功する目算は高くない。

即便如此,不播種就不會發芽。為了將其作為能連結未來的投資,信忠即使自掏腰包也向武田領的領民施捨,邊施捨邊撤退。

それでも種を撒かねば、芽は出ない。少しでも次に繋がる投資とすべく、信忠は身銭を切ってでも武田領の領民へと施しをしながら撤退していった。

幸好沒有遭到兩軍的追擊,信忠抵達了靜子等候的中繼基地。撤退決定時他也派人通知友軍德川軍,於是德川軍與靜子軍、滝川軍一同會合了。

幸いにして両軍の追撃を受けることなく、信忠は静子の待つ中継基地へと辿り着いた。信忠は撤退を決めた際に、友軍である徳川軍へも知らせを遣わせており、静子軍、滝川軍と共に徳川軍も合流してきていた。

「此次狼狽不堪,讓我深感羞愧,深知與未出任何一人脫落的德川殿之差距。」

「此の度は無様を晒し申した。一人の脱落者をも出されぬ徳川殿との差を思い知り、恥じ入っており申す」

「你年輕若和年長的我做出同樣事,作為長輩我便無立場。況且於那般危急之時仍保全性命,這就是所謂天的配剤(はいざい),能將武田擊退並授以重創,便已足夠。」

「年若い貴方が年経た私と同じことをされたのでは、年長者として立つ瀬がござらん。それにそのような窮地にあって尚、命を拾われた。それは天の配剤(はいざい)というもの、武田を追い返し痛手を与えたことで良しといたしましょう」

「多謝特別關照。我等先回尾張一趟,戰後的細節稍後再處理。」

「格別のご配慮痛み入り申す。我らは一度尾張へと戻ります。細かい戦後の処理については後ほど」

對家康而言,不僅擊退攻入其領的武田·北條聯軍,還順勢奪得了部分武田領地。似乎信忠軍承受了重大損失,但自軍幾乎無損,可說是相當成功。

家康としては自領へと攻め入った武田・北条連合軍を追い払った上、逆に幾ばくかの武田領をも切り取ることが出来た。信忠軍には大きな損害が出たようだが、自軍には損害らしい痛手は皆無。上々の出来と言えた。

家康判斷,信忠會以此次失敗為踏板成長。若再起東國征伐,他會吸取教訓以萬全之姿應戰,必能擊敗武田。

家康の見立てでは、今回の失敗をばねに信忠は更なる成長をするだろう。次に東国征伐が持ち上がった際には、今回の反省も踏まえて万全の状態で臨み、必ずや武田を打倒して見せると思われた。

在盟友時令人可靠,但若他志在天下,家康已隱約感覺到他將成為將橫亙眼前的強敵。

味方でいる間は頼もしいが、己が天下を狙うならば必ずや眼前に立ちはだかるであろう強敵となる片鱗を感じていた。

信忠與靜子與家康別後返回尾張。靜子在尾張處理戰後事務,信忠則先行前往安土向信長報告。

信忠と静子は家康と別れると尾張へと戻った。静子は尾張で戦後処理をし、信忠は一足先に信長へ報告するため安土へと旅立っていった。

雖然靜子也有向信長報告的義務,但若不是先由信忠報告再由靜子補報,會有損信忠的顏面。

静子自身も信長へと報告の義務を負っているのだが、信忠が先に報告して次に静子が報告をするという形を取らねば、信忠の面目を潰してしまう。

連本該要求迅速信息傳遞的事項也被政治牽扯,顧面子真麻煩,靜子一邊這麼想一邊解散了自軍。

迅速な情報伝達が求められるべきところにまで政治が関わってきており、面子を大事にするのって面倒だなと思いつつ、静子は自軍を解散させた。

(颱風的來襲雖然意外,不過上様的課題應該已完成了吧)

(台風の到来は予想外だったけど、上様の課題は果たせたかな)

信忠已盡其所能的人事調配,運作也達到及格以上,但天沒有站在這個無法完全掌控局勢的他這邊。

信忠は自身が出来る人事を尽くし、及第点以上の運用をしてみせた。しかし、天は身内の手綱を握り切れなかった彼に味方しなかった。

敗因可說是未能等到天向他微笑的時機。

天が彼に微笑む時機を待てなかったのが敗因と言った処だろう。

(身為非神的人,無法避免發生無可奈何的失敗。有些體驗只有在遭遇沉痛失敗後才能學到……某種意義上,天是不是向我微笑了呢?)

(神ならぬ人の身では、どうする事も出来ない理不尽な失敗も起こり得る。己が手痛い失敗をしない限り学べない経験を積めた……ある意味、天は私に微笑んだのかな?)

這正是信長為了教信忠如何敗陣,刻意安排一場可被接受的失敗的理由所在。

信長が信忠に負け方を教える為、許容できる敗北を演出しようとした理由はそこにある。

不知敗北為何物的將帥,雖在優勢時令人安心,但一旦陷入劣勢便無法堅守。必須親身感受到敗北逼近的徵兆,對失敗的氣息敏感,否則終有一天會被人掬去腳下。

敗北を知らない大将は、優勢な時は頼もしいが、一度劣勢に陥れば踏みとどまれない。敗北が忍び寄ってくる気配を己の肌で感じ取り、負けの気配に敏感にならねばいつか足元を掬われる。

這點無論對誰都無法直接教授,必須在自身的敗北中領悟,因此信長明知有危險仍如將子推入千尋(せんじん)深谷般示範一番。

こればかりは誰であろうと教えることが出来ず、己が敗北の中で学び取るしかないため、危険を承知で我が子を千尋(せんじん)の谷へと突き落とすような真似をして見せたのだ。

這次敗北會賦予信忠許多事──可能遭到失去兵力的親眷指責,或在外界被評為戰事無能。

この敗北は多くの事を信忠に与えるだろう。それは自分達の手勢を失った身内からの糾弾であったり、対外的にもいくさ下手との評がたったりするかもしれない。

儘管如此,信長仍相信信忠會從困境中再度站起。即便他一人難以為成,身旁仍有可靠的引導者相伴。

それでも信長は、その苦境の中から信忠が再び立ち上がると信じていた。彼一人では難しくとも、傍に寄り添う頼もしい先導役もいるのだ。

「不過,那位奇妙大人竟然寫情書,真是意外啊」

「しかし、あの奇妙様が恋文とはねえ」

靜子回想起剛才的事,嘴角微微上揚。信忠積極從事東國征伐是眾所周知,但在靜子看來他似乎比平時更為投入。

静子は少し前のことを思い返して頬を緩めた。信忠が東国征伐に意欲的に取り組んでいるのは周知の事実だが、静子には普段以上に入れ込んでいるように思えた。

起初她以為他是想向譜代家臣證明自己不容小覷,展示自己將承擔織田家下一代的地位。但細看之下似乎不只是如此。

はじめは譜代の家臣に舐められないよう、己こそが次代の織田家を担う存在だとアピールしようとしているのだと思った。しかし、よくよく観察しているとそれだけではなさそうに思えてきた。

說得俗氣些,當男人打起精神奮鬥時,背後往往有一個女性的影子。作為歷史女的教養,靜子對信忠有基本的認識。

下世話な話だが男がやる気を振り絞る時、その陰には女の存在が付き纏う。そして静子は歴女の教養として信忠に関する予備知識を持っていた。

她雖有預感,但認為男人為女人奮發也是本分,於是觀望。於回尾張途中,經歷敗戰,覺得現在是問他的好時機,便向信忠詢問。

予想はついていたが、女の為に張り切るのも男の甲斐性と見守っていた。敗戦を経て尾張への帰還中、聞くのならば今しかないと思い、信忠に訊ねてみた。

「你那麼拼命,又如此執著武田的理由,會不會正是為了松姬?」

「妙に張り切っていたけれど、そこまでして武田に固執した理由って、もしかして松姫かな?」

那一瞬,信忠的臉頰瞬間通紅。與他並肩的護衛保持距離,能發現他異狀的恐怕只有同在一旁並行的靜子了。

その瞬間、信忠の顔が真っ赤に染まった。周囲を固める護衛とは距離があり、彼の異変に気付けたのは轡(くつわ)を並べた静子だけであっただろう。

松姬是已故武田信玄的第六女,永祿十二年(1569年)信忠11歲、松姬7歲時曾訂下婚約。

松姫とは、今は亡き武田信玄の六女であり、永禄12年(1569年)に信忠11歳、松姫7歳にして婚約していた。

但因信玄的西上作戰,這宗婚約被取消。戰國時代的訂婚與現代不同,幾乎等同結婚,一旦訂婚,妻一向被視為應對夫獻上全部。

しかし、信玄の西上作戦によりこの婚約は破棄されることとなる。戦国時代の婚約は現代のそれとは異なり結婚とほぼ同義であり、婚約した時点で妻は夫に対して全てを捧げるのが一般的であった。

婚約解除後,松姬仍對信忠傾心,暗中以書信往來培養愛情。婚約破棄後松姬多次有提親,但她始終未曾點頭。

婚約が破棄された後も、松姫は信忠に対して心を捧げ続け、密かに文のやり取りを通じて愛を育んでいた。松姫には婚約破棄後に何度か縁談が持ち上がったのだが、彼女は決して首を縦には振らなかった。

當時女性是政治工具,松姬因堅守對成為敵方的信忠的貞節而一再拒絕婚約,遭受的待遇並不佳。透過書信得知情況的信忠,為了拯救她而振作起來。

当時の女性は政治の道具であり、敵となった信忠に操を立てて縁談を断り続ける松姫の待遇は決して良いものではなかった。文を通じてその状況を知っていた信忠は、彼女を救い出すべく奮起していたのだ。

「靜子,那個消息你是從誰那聽到的?」

「静子、その話を誰から聞いた?」

「從誰那聽?送信書信的間諜頭兒是我啊。書信受上様檢閱,我雖不看內容,但知道要送到哪裡。」

「誰からって、文を届ける間者たちの元締めは私だよ? 文は上様が検閲されてるし、私は中身こそ見ないけれど、何処に届けるかは知っています」

信忠在馬上捂臉悶絕。向來裝作對女人不感興趣的姊姊看見自己親筆的情書,其心情的苦惱可想而知。

信忠は馬上で顔を覆って悶絶した。普段から然(さ)も女には興味ありませんよと言う態度を見せてきた姉に、己の直筆ラブレターを見られた心境と言えば彼の苦悩が理解できるだろう。

信忠被全心崇慕他的松姬所牽絆(ほだ),不知不覺也對她產生了愛情。即便婚約被取消,彼此分屬敵我兩方,情感也未改變。

信忠は一心に自分を慕ってくれる松姫に絆(ほだ)され、何時しか彼も彼女に恋愛感情を抱くようになっていた。それは婚約が破棄され、互いが敵味方の陣営に分かれても変わりがなかった。

知悉松姬所處境遇,且有機會親手救她來臨,有哪個男人不會為此躍躍欲試?

松姫の置かれた境遇を知り、己の手で彼女を救い出す機会が巡ってきたのだ、それで張り切らない男はいまい。

「不、不對啊靜子。你誤會了。我這個織田家下一任當主,怎會為了不過一個女人做那種公私不分的事?」

「ち、違うぞ静子。お前は思い違いをしている。次期織田家当主のこの俺が、たかが女一人の為にそんな公私混同な真似をするはずないだろう?」

「我只是問會不會牽涉到松姬而已,並不是說那是主要原因好嗎?」

「別に私は松姫のこともあったのかなって聞いただけで、それが主要因だとは言ってないんだけど?」

正所謂自投羅網,信忠再度捂臉在馬上伏下。

語るに落ちるとはこのことであり、再び信忠は顔を覆って馬上に突っ伏した。

「很好吧?能為了喜歡的女孩努力的男孩子,我覺得很帥喔?」

「良いじゃない? 好きな女の子の為に頑張れる男の子って恰好良いと思うよ?」

「不……不是那樣。好了好了,但別跟任何人說喔?」

「ちが……違わない。もう良い、その代わり誰にも言うなよ?」

「好啊。不過,我覺得知道的人相當多就是了」

「良いよ。でも、割と知っている人は多いと思うけどね」

「等、等一下靜子!那、那是誰?說出來——!!」

「ちょ!! ちょっと待て静子! そ、それは誰なんだ? 言えー!!」

信忠慌亂地叫喊,但靜子帶著含笑置之不理。圍在周圍的馬廻衆也當作平常事般帶著微笑看著,沒有人去制止兩人。

信忠が取り乱して叫ぶが、静子は含み笑いを浮かべたまま聞き流す。周囲を固める馬廻衆も、いつもの事だと微笑ましく見守っており、二人を制止する者はいなかった。

順帶一提,長可與慶次把信忠從窮地救出的大功勞,單看結果當然是大功一件,但在以軍隊綱紀肅正為宗旨的組織裡,他們也犯了重大違規。

因みに信忠を窮地から救い出すと言う大金星を上げた長可と慶次の沙汰についてだが、結果だけ見れば大手柄となる反面、軍隊と言う綱紀粛正(こうきしゅくせい)を旨とする組織に於いて重大な違反をも犯していた。

他們在未經直屬上司靜子同意的情況下擅自調動部隊,甚至帶出並使用了極秘的新式火槍與彈藥。若以日本作比,等同於自衛隊在未獲得最高指揮監督者內閣總理大臣許可下自行出擊,與他國發生一戰的暴舉。

彼らは直属の上司である静子に無断で軍を動かし、更に極秘扱いの新式銃や銃弾をも持ち出して使用している。これは日本でたとえるなら自衛隊が最高指揮監督者である内閣総理大臣の許可を得ずに勝手に出撃し、他国と一戦交えたに等しい暴挙となる。

然而,若無他們的行動,信忠很可能已喪命;對外則被交代為長可與慶次並未出陣,信忠是獨力擊退敵人並逃脫的。

しかし、彼らの行動が無ければ信忠が命を落としていた可能性は高く、対外的には長可と慶次は出陣しておらず、信忠は独力で敵を退け、逃げ延びたという事になった。

當然,他們為了賭上性命的行動沒有任何報酬。順帶一提,跟從他們的下屬並未受到特別處罰,視為正當軍務而給予報酬。

無論彼らの命懸けの行動に対する報酬等存在しない。因みに彼らに従った配下については、特に罰されることもなく、正当な軍務に就いたとして報酬が支払われる。

另一方面,率領行動的兩人則在內部受到懲罰。畢竟做出這種事,即便是靜子也無法完全庇護他們。

一方彼らを率いた二人に対しては、内部的に懲罰が課せられることとなった。流石にこれだけの事をしでかしてしまうと、如何に静子であっても彼らをかばい切れない。

長可與慶次兩人既無榮譽亦無報酬,唯一的回報大概只有信忠個人的好感。對他們的懲罰為譴責處分,並記錄為軍規違反者。

長可と慶次の二人には名誉も報酬もなく、信忠個人の覚えが目出度くなったと言うのが唯一の報酬だろう。彼らに課せられた懲罰は、譴責(けんせき)処分(失敗や不正を厳しく咎めること)となり軍規違反者として記録される。

他們的俸給也被減額,休假及自由裁量權等亦在一定期間受到限制。

彼らに与えられる俸給も減額され、休暇や自由裁量権についても一定期間制限されることとなった。

「這次因為是我的軍單獨行動所以能私下處理,但即便是在同屬織田軍的情況下,若在與其他組織聯合作戰時擅自行事,最糟會被判謀反而處以死罪,注意點。即便行動的起因是勝蔵君個人的直覺,只要事先商量我也不會一概拒絕,保證不要再犯。對外則當作從未發生過,關於此事對所有相關人員實施箝口令(禁止向他人透露的命令)。」

「今回は私の軍単独で行動していたから内々に処理できたけど、たとえ同じ織田軍であっても他の組織と合同で作戦行動をしている最中に独断専行をやらかしたら最悪謀反(むほん)と判断されて死罪を申し付けられるから気を付けてね。行動の発端が勝蔵君個人の勘であったとしても、相談されれば無下にはしないと約束するから二度とやらないこと。対外的には無かったこと(・・・・・・)になっているから、この件に関しては関係者全員に箝口令(かんこうれい)(他者に話す事を禁ずる命令)を敷きます」

靜子召集所有相關人員,在部下面前宣讀對兩人的處分。被配下當眾譴責對兩人來說是不名譽的,但兩人都明白這是靜子所能做出的最大讓步,因而心甘情願接受處分。

静子は関係者全員を集めた上で、部下の面前にて二人に処分を言い渡した。配下の眼前で譴責されることは、二人にとって不名誉だが二人とも静子が出来る最大の譲歩と判っているため甘んじて処分を受け入れた。

若只是依長可的直覺就調動軍隊,靜子將必須承擔全部責任。他們原本是為了不讓靜子困擾才採取行動,結果反而給靜子添了麻煩。

長可の勘という根拠が薄い理由で軍を動かせば、静子が全責任を負う事になる。静子の迷惑にならないように、と考えた末での行動だったが、かえって静子に迷惑をかける事となってしまった。

因此回往尾張的途中,兩人不被允許騎馬,反而被塞進當作營倉替代的貨車內接受謹慎處分,卻也一句抱怨都沒有。

それゆえ、尾張への帰途についても、二人については騎乗が許されず、営倉代わりの荷車に押し込められての謹慎処分に対しても文句一つ言わなかった。

「歡迎回來」

「お帰りなさいませ」

靜子解散軍隊返回屋敷時,以彩為首,蕭、四六、器等與靜子親近的人都到齊迎接。雖然早馬已傳達敗戰的消息與靜子無事,但考量到可能受傷,甚至準備了醫生與藥品。

静子が軍を解散させて屋敷へと戻ると、彩を筆頭に蕭、四六、器と静子に近しい面々が揃って静子を出迎えた。早馬によって負けいくさとなったことは伝えられており、静子の無事も伝えられていた筈だが、傷を負った可能性を考慮して医者と医薬品までが準備されていた。

雖覺得有些過度保護,靜子仍對他們的關心表示感謝,並終於有種回到自己家的感覺。

少し過保護だと思いつつも、静子は彼らの心遣いに感謝し、やっと自分の家に帰ってきたのだと言う気持ちになった。

「我回來了,謝謝大家迎接。唉呀,輸了輸了。這麼大的敗仗好像自宇佐山城以來吧?之後可能會被上様責罵,但先想洗個澡。能請你們準備一下嗎?」

「ただいま、皆出迎えありがとう。いやー、負けた負けた。ここまでの大敗は宇佐山城以来かな? 後で上様からお叱りを受けるだろうけど、まずはお風呂に入りたいな。準備をお願い出来る?」

「已經準備好了,隨時可以進去」

「既に用意してあります、すぐにでもお入り頂けます」

無論戰後或耕作後,只要事畢總是先洗個澡的習慣使然,入浴準備早已齊全。由彩為首的侍女們幫靜子脫下戰鬥服,匆忙送她到浴場。

いくさの後も、畑仕事の後も一仕事終えた後はまず風呂と言っていたからか、入浴の準備は整っていた。彩を筆頭に侍女たちの手によって静子はいくさ装束を解かれ、慌ただしく風呂場へと向かった。

快速洗淨身體後,靜子沉入略熱的浴池,浸至肩膀。

手早く体を洗い流し終えると、やや熱めの湯船に肩まで沈み込んだ。

「啊啊……呼……能自由使用天然溫泉……這種職務之便就是放不掉啊」

「っああ……ふぅ……天然温泉を自由に使える……この役得だけは手放せないなあ」

隨著逐漸上湧的熱意,靜子發出奇妙的聲音,盡情享受溫泉。在寬廣的浴池裡伸展手腳,深深伸個懶腰,仿佛全身的疲勞都在熱湯中溶解。

じわじわと込み上げてくる熱に押されるように、口から奇妙な声を上げつつ静子は温泉を満喫した。広い湯船で手足を思いっきり伸ばし、大きく伸びをすると全身に凝り固まっていた疲れがお湯に溶けていくようにすら感じた。

享受得幾乎要睡著,但她強忍著,比平常多泡了一會兒。讓微熱的肌膚在外氣中涼快一下,換好衣服回到自己的房間時,曾把靜子的房間當老巢的維特曼,以及雪豹「ゆっきー」和しろちょこと一起,正盡情享受久違的自由。

余りの極楽気分に思わず寝そうになったが、何とか耐えていつもより長風呂を味わった。程よく茹で上がった肌を外気に晒して涼を取り、着替えて己の自室へと戻ると静子の自室を根城にしていたヴィットマンや、ユキヒョウのゆっきーやしろちょことともに、久々の自由を満喫していた。

「動物療法真的很有效呢,雖然在這個時代並不是誰都能做到的」

「アニマルセラピーって本当に効果的だよね、この時代だと誰にでも出来ることじゃないんだけども」

在維特曼等以全身表達對主人歸來的歡迎下,與武田·北條聯合軍的戰事逐漸成為過去。

主人の帰還に対する喜びを、体全体を用いて表現してくれるヴィットマン達の歓迎を受け、武田・北条連合軍とのいくさも過去のものへとなっていく。

「結果,上杉家內寄居的親北條派並沒有蜂起啊。聽到高天神城的壓勝,是否只是因此而暫時押後時機呢?」

「結局、上杉家に巣くう親北条派は蜂起しなかったんだね。高天神城での圧勝を耳にして、時期を見合わせただけかな?」

原本被認為會配合武田·北條聯軍的起義而採取某些行動的親北條派,反而保持著詭異的沈默。

武田・北条連合軍の決起と呼応して何らかの行動を起こすと思われた親北条派は、不気味な沈黙を守っていた。

他們原本可能打算等織田·德川聯軍與武田·北條聯軍之戰拖延,等上杉謙信應信長援軍之請出陣而離開時再行動。

本来は織田・徳川連合軍と武田・北条連合軍のいくさが長引き、上杉謙信が信長からの援軍要請に応えて出陣して留守になったところで行動するつもりだったのだろう。

他們預期高天神城會落入武田·北條聯軍手中,至少會演變為長期的籠城戰。然而,事實一揭開卻以電擊戰決著,連援軍請求都沒有發生。

彼らの見込みでは高天神城は武田・北条連合軍の手に落ち、少なくとも籠城戦でいくさが長期化すると睨んでいたのだろう。しかし、蓋を開けてみれば電撃戦で決着がついてしまい援軍要請すらなかった。

在謙信仍對外施加威懾的情況下,確實難以妄動,也許他們是在繼續表面服從內心不服從的策略。

流石に謙信が睨みを利かせている状況で下手な動きなど出来ず、面従腹背を継続しているのかも知れない。

「要是這次能露出馬腳就輕鬆多了……無論如何,這件事會使北條陷入困境」

「今回で馬脚を露(あらわ)してくれれば楽だったのに……いずれにせよ、今回の件で北条は苦境に立たされることになるね」

若北條郎堂堂正正地對抗並正面交戰,也許信長還會有再考慮的餘地。即便敗北而降于織田旗下,北條家存續的可能性也許還能保留。

北条が堂々と敵対し、真正面から戦ったのであれば信長にも一考の余地があっただろう。たとえ敗北して織田の軍門に降ることになったとしても、北条家の存続が許された可能性すらあった。

然而像這次使用卑劣的側翼手段、裝作中立卻行奇襲之事,只會讓信長對北條的印象更差。之後對北條家的信賴將蕩然無存,甚至可能導致家破人亡。

しかし、今回のように姑息な搦め手を用い、中立を装っていながら奇襲するような真似は信長の心証を悪くする。以降、北条家の態度には信が置けないとして、お家断絶すらもあり得るのだ。

北條是抱著什麼樣的意圖而起兵?考慮到失敗時的風險,這種行為根本不可能有利可圖,靜子的思緒墜入無出口的迷宮。

如何なる思惑で北条は挙兵したのか? 失敗した際のリスクを考えれば、到底割に合うとは思えない暴挙に静子の思考は出口のない迷路へと迷い込んだ。

「資訊不夠呢。別再想了」

「情報が足りないね。考えるのを止めよう」

認定再怎麼想也得不到答案後,靜子放棄了思考。

いくら考えても答えは出ないと割り切り、静子は思考を放棄した。

「真是太棒了」

「素晴らしい」

靜子拿起送來的刀,將它掩映在光中,陶醉地低語。臉頰微紅、露出恍惚的表情,外人看了彷彿以為她談了戀愛,但她手上握的是所謂「人斬り包丁」——日本刀。

静子は届けられた刀を手にし、光に翳(かざ)してうっとりと呟いた。上気した頬と恍惚とした表情を浮かべ、余人が見れば恋でもしているかのようだが、手にしているのは人斬り包丁こと日本刀。

看起來顯然不像是想接近的那類人,但靜子的刀劍蒐集癖已成眾所周知,沒有人敢當面指出這點。

明らかにお近づきになりたくない類の人に見えるが、静子の刀剣蒐集癖は周知の事実となっており、それを口に出して指摘するものはいなかった。

靜子手中的不是古刀,而是早就下了訂製、終於鍛成的刀劍。而且製作方法不是戰國時代的,而是刻意以鎌倉時代的手法鍛造的一振。

静子が手にしているのは古刀ではなく、前々から依頼を出してついに打ち上がった刀剣であった。しかも、製造方法が戦国時代のものではなく、敢えて鎌倉時代の手法で鍛えられた一口(ふり)であった。

這是在現代已失傳的技術,但在刀劍蒐集的過程中找到了一個傳承該技術的家族,靜子以保護那一家族為交換而委託打造。

現代に於いては失伝してしまった技術だが、刀剣蒐集の過程で技術を伝える一族が見つかったため、静子が一族の保護と引き換えに依頼したものであった。

盼望已久的那把刀終於落到她手中,靜子興奮也無可厚非,但這事對旁人來說根本難以理解。

待ちに待ったその刀がようやく自分の手に入ったのだ。静子が興奮するのも無理はない、しかし余人には到底理解し得ない話でもあった。

「那麼,來處理留守時送來的公文吧。」

「さて、留守中に届けられた文を片付けるかな」

看足一會兒滿足後,靜子將刀納入鞘中,輕輕放在用鹿角製作的刀掛上。打消興奮的餘韻,開始動手處理自回家以來一直擱置(偷懶)未批的文件。

ひとしきり眺めて満足すると、静子は刀を鞘に納めて鹿の角で造らせた刀掛けにそっと置いた。興奮の余韻を振り払い、帰宅して以来決裁を保留し(サボって)ていた書類に手を付ける。

把按優先順序從上到下堆疊的文件一頁頁翻開,看見那份量便覺得灰心。她還不知道未來自己會硬是把堆積的文件處理完、為了向信長報告而去安土,回到尾張時卻又發現同樣數量的文件再度堆積。

優先順位の高い方から上になるよう重ねられた書類をペラペラと捲り、その分量を見てゲンナリとした。なお、積み上がった書類を気合で片付け、信長に報告するため安土へと赴き、再び尾張へと戻ってきた際に、同分量が積み上がっているという未来を彼女はまだ知らない。

「秋天牽涉到收成,要判斷的事真多啊。」

「秋は収穫絡みがあって、色々と判断することが多いなあ」

文件大半是報告書,需要決裁的其實不多。報告書只稍作略讀,其中有一頁引起了靜子的興趣。

書類の大半は報告であり、決裁をするものはそれほど多くない。報告書は流し読みをする程度だったのだが、その中の一枚に静子の興味を引くものがあった。

「哦!隕石和隕鐵兩者都取得了啊。」

「ほう! 隕石と隕鉄、両方手に入ったんだ」

靜子所說的隕鐵,是現代所稱的「白萩隕鉄1號」。它於1890年在富山縣上市川上游,被一名尋找醃菜石的人偶然發現(鐵隕石相對體積非常重,適合作為醃菜石)。另外,該發現兩年後,同一地區又發現了「白萩隕鉄2號」。

静子が言う隕鉄とは現代に於ける『白萩隕鉄1号』の事である。1890年に富山県上市川上流で漬物石を探していた者が偶然発見したものだ(鉄隕石は大きさの割に非常に重いため、漬物石として適している)。なお、その発見から二年後に同じ地域から『白萩隕鉄2号』が発見されている。

靜子知道隕鐵所在的理由,是因為她知道有用這隕鐵打造的兩口長刀和兩口短刀的「流星刀」逸話。

静子が隕鉄の場所を知っていた理由は、この隕鉄を使って作られた長刀二口に短刀二口の流星刀(りゅうせいとう)の逸話を知っていたからである。

並且如史實中明治時代榎本武揚所為,靜子也想要一把用隕鐵鍛造的刀。再者時勢也站在她這邊,藉由謙信向信長臣從的契機,她在取得謙信的許可後開始尋找隕石,終於據說找到了。

そして史実に於いて明治時代に榎本(えのもと)武揚(たけあき)がそうしたように、自分も隕鉄で造られた刀が欲しいと考えた。更に時勢も静子に味方した、謙信が信長に臣従したことを機に、謙信に許可を得た上で隕石探しを開始した。それがようやく発見されたとのことだ。

至於那顆隕石,是在1885年由田上山的農民偶然發現的日本最大隕石。也稱為田上隕石,同樣是鐵隕石,其重量竟達173.9公斤。

対する隕石とは1885年に田上山で百姓が偶然発見した日本最大の隕石である。田上隕石とも呼ばれ、こちらも鉄隕石でありその重量はなんと173.9kgもある。

在靜子所處的時代,那物在東京國立科學博物館入口正前方展出,但靜子想擁有它的理由很單純:是從天而降之物,武家常重視吉兆,她認為武家會喜歡這種東西。

静子の居た時代では東京の国立科学博物館の入り口正面に展示されていた代物だが、静子が欲した理由は単純だ。天からの飛来物であり、縁起を担ぐことの多い武家が好みそうだと考えたからだ。

靜子本身的收藏慾也不小,但她認為即便信長自己不迷信,也能把它當作賞賜分給部下。

静子自身の蒐集心も少なからずあるが、信長自身は縁起を担がずとも、配下に褒美として与える事もできるのではと考えたのだ。

她當然沒打算無償獻上,而是打算用來換取他秘藏的刀劍等物。

当然無償で献上するつもりなどさらさらなく、彼秘蔵の刀剣などと引き換えにすることを目論んでいる。

若把當事人的心境拋開,對旁人來說不過是塊石頭,因而得不到任何人的共鳴。

そんな当人の内心を他にすると、余人の目にはただの石ころにしか見えないため、誰の共感も得られなかった。

「……完全不懂。」

「……さっぱり分かりません」

「安心吧,我也不懂。」

「安心しろ、俺にも分からん」

靜子的養子四六滿面得意地被拿去看這顆隕石,困惑地說出上述話。坐在四六旁邊聽靜子講解的慶次也露出爽朗的笑容表示同意。

静子の養子である四六は得意満面の笑みでこの隕石を見せられ、困惑して上記の言葉を漏らした。四六の隣で静子の講釈を聞いていた慶次も、爽やかな笑みを浮かべて同意した。

聽說她花大錢買下一團超過一把抱量的岩塊時,曾懷疑靜子是否還有理智。確實比同等大小的石頭重,但這並不能令人相信它就是從天而降,連自認懂得品味的慶次也覺得有疑點。

大金を払って一抱え以上もある岩塊を買い付けたと聞いた時は静子の正気を疑った。確かに同じ大きさの石と比べると重いが、それが即ち天から飛来した証左になるとは到底思えず、粋を理解する慶次をして眉唾物であった。

「前田大人您也這麼認為嗎?」

「前田様もそう思われますか?」

「嘛,像靜醬說的,似乎適合作為醃菜石,但除此之外我就不懂了。就算不理解也無妨吧。靜醬看起來高興,那花的錢就值得了。」

「まあ、静っちが言うように漬物石には良さそうだが、それ以外は判らん。まあ、理解できずとも良いじゃねえか。静っちが嬉しそうなら、金を払った価値はあったってものさ」

「是那樣的東西嗎……」

「そんなものですか……」

慶次覺得與從前不同,四六似乎異常在意靜子。父母若是大人物,孩子會畏縮或反抗,但四六的樣子看來並非如此。

以前とは異なり、妙に静子を意識しているなと慶次は思った。親が大人物だと子は萎縮するか、反発するものだが四六の様子はどうもそのような感じではなさそうに思える。

「怎麼了?有什麼掛心的事嗎?」

「どうした? 何か気掛かりな事でもあるのか?」

「從周遭人們的話語可以理解到,靜子大人對我們懷有愛情。理性上能理解,但總覺得說不過去,無法在心裡感受到。也許是因為性格上能夠感受到,她已完全向靜子大人打開心扉、對靜子大人依戀。我還無法理解靜子大人,覺得自己可能因此達不到那種境界,於是努力想要理解……」

「静子様が私たちに愛情を向けて下さっているというのは、周囲の方々の言葉から理解できるのです。頭では理解できるのですが、今一つ腑に落ちないと申しますか、心で感じ取ることが出来ないのです。器は感じ取ることが出来たのか、すっかり静子様に打ち解けて、静子様に懐いています。私は未だ静子様を理解できずにいるから、その境地に至らないのかと思い、理解しようと努めているのですが……」

「哇哈哈哈哈!」

「わっはっはっはっ!」

知道四六在意靜子的理由後,慶次哈哈大笑。並非嘲笑四六,而是高興得不由自主地笑出了臉。

四六が静子を気にかけている理由を知って慶次は呵々(かか)と大笑した。四六を馬鹿にしている訳ではなく、嬉しくなってつい破顔してしまったのだ。

「那樣被笑也太過分了!」

「そのように笑われるのは、あんまりです!」

「抱歉抱歉,並不是你可笑。只是有點出乎預料,讓我高興起來。嘛,方向有點錯就是了。」

「悪い悪い、お前さんが可笑しかった訳じゃないんだ。ちと予想外の出来事に、嬉しくなっちまってね。まあ、方向性が間違っちゃいるんだがな」

對於四六的抗議,慶次老實道了歉。他把煙管敲在煙草盆上、彈掉菸灰,邊再次填菸邊接著說。

四六の抗議に慶次は素直に謝った。煙管を煙草盆に打ち付け、灰を落とすと慶次は再び煙草を詰めながら言葉を紡いだ。

「愛情這種東西不是用理解的。難道因為生孩子肚子痛就會愛孩子嗎?因為生活困窘而拋棄孩子的父母多得是。你因為太會動腦反而想太多,信任靜醬,坦誠地去表達就好了。」

「愛情なんてもんは理解するもんじゃないんだ。腹を痛めて産んだから子供を愛するのか? 食い詰めて我が子を捨てる親なんぞ、掃いて捨てるほどいる。お前さんはなまじ知恵が回るから余計な事を考えるんだ、静っちを信じて本音でぶつかれば良いんだよ」

如果自己有弟弟,或許也會有類似的對話。慶次這樣想着又接著說道。

もしも自分に弟が居たのなら、こんな会話を交わしたかも知れない。そんな事を想いつつ慶次は言葉を重ねた。

「拋開羞恥和門面,不要想著會被拒絕,去抱住靜醬吧。人的體溫比百句言語更能傳達愛意哦?」

「恥も外聞も取り払い、拒絶されたらどうしようとか思わず、静っちに抱きついてきな。人の体温ってのは、百の言葉を重ねるよりも愛情を伝えてくれるぜ?」

「是……」

「はい……」

雖然有答覆,但四六臉紅低頭仍不肯行動,慶次便加以催促。

一応返事はするものの、顔を赤らめて俯くのみで一向に行動しようとしない四六に慶次は発破をかけた。

「喂喂,依賴母親是孩子的特權啊?有什麼好猶豫的,若等到想做卻做不到就糟了。不做後悔不如做了後悔。我不覺得靜醬會拒絕你,但要是沒成功我會帶你去個好地方。」

「おいおい、母に甘えるのは子供の特権だぞ? 何を躊躇う必要がある、今にしたくとも出来なくなるんだ。やらずに後悔するよりも、やって後悔した方が良い。静っちが拒絶するとは思わんが、上手くいかなかったら俺が良い場所に連れていってやるよ」

聽到慶次的話,四六一時說不出話來;慶次因為對四六的態度感到滿意,咧嘴一笑。

慶次の言葉に四六は言葉を詰まらせる。四六の態度に気をよくした慶次はニヤリと笑う。

「既然決定了,事不宜遲。快去吧,我想現在靜子應該也有空。」

「そうと決まれば善は急げだ。早速行ってこい。今なら静っちも暇していると思うぜ」

說完,慶次強行把四六扶起,從背後一把推送出去;即便他仍回頭望去,慶次也帶著和煦的笑容點頭。

そう言うと慶次は四六を無理やり立たせて、背中を押して送り出す。それでも尚振り返ると、慶次は和やかな笑みを浮かべて頷いていた。

明白已無退路只能鼓起勇氣,四六忐忑不安地邁開腳步。

こうなっては腹を括るしかないと理解すると、四六はおずおずと歩き出した。

「謝謝你。那麼我就去一趟了。」

「ありがとうございます。それでは行ってきます」

總算憋出那句話,煩惱消散、心情舒暢的四六意氣昂然地朝靜子的房間走去。

何とかそれだけ口にして、悩みが晴れて爽やかな気持ちになった四六は、意気込んで静子の部屋へ向かった。

之後雖然走到靜子的房間,卻在關鍵時刻說不出話,垂頭喪氣地回來;慶次想安慰他並要帶他去色街,結果被彩看見責備並狠狠訓斥,這就不用多說了。

その後、静子の部屋まで行ったまでは良いが、肝心なところで言葉が出ずにすごすごと帰ってきた四六を、慶次が慰めて色街へと連れ出そうとしたのを彩が見咎(とが)め、雷を落としたのは言うまでもない。