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戦国小町苦労譚

千五百七十五年 四月下旬

騷動的原因在於伊勢的情勢。北伊勢由神戶(かんべ)具盛(とももり)的養子信孝(のぶたか)治理;而掌管南伊勢的是伊勢國司、成為北畠(きたばたけ)具房(ともふさ)養子的信雄(のぶかつ)。

騒動の原因は伊勢の情勢にあった。北伊勢は神戸(かんべ)具盛(とももり)の養子、信孝(のぶたか)が治めている。一方南伊勢を治めるのは伊勢国司、北畠(きたばたけ)具房(ともふさ)の養子となった信雄(のぶかつ)であった。

最初在提案開發伊勢一帶時,只有治北伊勢的信孝表明要參與。計畫順利推進,逐漸朝著開發連接美濃、尾張與北伊勢的經濟圈的方向成形。

当初伊勢一帯の開発が持ち上がった際、北伊勢を治める信孝のみが参画の意を示した。計画は順調に進められ、美濃・尾張・北伊勢を繋ぐ経済圏を開発することで話は纏まりつつあった。

這時信雄忽然提出阻止。對於信雄事到如今才挑剔的態度,信孝大為憤怒;但信雄面不改色地表示,這項開發會影響整個伊勢,若把自己排除在外便說不過去。

そこへ唐突に信雄が待ったを掛けた。今更になって難癖を付ける信雄の態度に、信孝は激怒した。しかし信雄は涼しい顔で、この開発は伊勢全土に影響を及ぼすため、自分を外されては困ると言ってのけた。

自本就互不服氣,加上領地接壤,因利害關係常常發生爭執,兩人交惡是眾所皆知的事。

元より互いにそれぞれの事を良く思っておらず、更に領地の国境が接していることもあり、何かと利害関係で揉めることが多く、二人の仲が険悪だというのは周知の事実だ。

不願負擔開發啟動階段的各項協調或整個開發區的調查費用,卻等到事業開始運作時才要搭便車,實在太厚顏,信孝因此憤慨也不足為奇。

開発立ち上げ段階の各所に対する調整や、開発地域一帯の調査費用などの一切を負担せず、事業が動き始める頃になってタダ乗りさせろとは虫の良過ぎる話であり、信孝が憤慨するのも無理からぬことであった。

信孝與信雄正面衝突,瞬間演變成捲入雙方部下的大爭吵。作為開發事業總負責人的信忠盡力諫止,但兩人頑固堅稱除非把對方排除出計畫,否則絕不讓步。

信孝と信雄は真正面から対立し、瞬く間に互いの配下をも巻き込んだ大喧嘩へと発展した。開発事業の総まとめ役である信忠が、二人を諫めようと手を尽くしたが、二人ともが互いに相手を計画から排除しない限り、一切の譲歩をしないと頑迷に言い張った。

被弄得束手無策的信忠向遷往安土的信長請求仲裁。信長也想藉此看清信忠的才能,但包括黒鍬衆在內有大量人力、物資與資金被動員,不能讓這些資源閒置浪費。

ほとほと困り果てた信忠は、安土へ移った信長に仲裁を願い出た。信長としては信忠の器量を見極めたいという思惑もあったが、黒鍬衆をはじめとする多くの人・物・金が動員されており、それらを無為に遊ばせることはできなかった。

最終信長發了朱印狀給信孝與信雄,對信雄諫曰「你明明不明事理又落後,竟想濡手抓粟,實在不可理喻。應該投入與前人所付代價相稱的出資,方能站上同一舞台。」對信孝則告誡道「有句話叫同舟相救,平日雖反目,若為了同一目標亦可合作。好好取得成果,向世人展示你的器量。」

最終的に信長は信孝、信雄両名に対して朱印状を発し、信雄に対しては「己の不明で出遅れておきながら、濡れ手で粟を掴もうとするなど言語道断。先人が払った対価に見合うだけの出資をして、はじめて同じ土俵に立てると心得よ」と諫め、信孝に対しては「同舟(どうしゅう)相救(あいすく)うとの言葉があるように、日頃反目し合っていても、同じ目的を得れば協力できるもの。見事成果を出して己の器量を示してみせよ」と説いた。

兩人果然無法無視信長的仲裁,雖當下收兵,但並非一切都解決了。

流石の二人も信長からの仲裁を無視することなど出来ようはずもなく、即座に矛を収めたものの、万事解決とはいかなかった。

「結果上北伊勢考慮地理條件派人前往,南伊勢則包括先期投資在內多出資金,暫時達成共識,不過信孝與信雄關係惡劣果然是真的啊。」

「結果的に北伊勢は立地を考慮して人員を送り、南伊勢は先行投資分も含めて余分にお金を出すということで落ち着いたけど、信孝と信雄の仲が悪いって言うのは本当だったんだね」

如本次事件所露出的,信雄被評為不懂道理的『うつけもの』,而信孝則踏實累積實績,雖緩慢但逐漸嶄露頭角。

今回の件でも露呈したように、信雄は道理を弁えぬ『うつけもの』と評される一方、信孝は堅実に実績を積み上げ、徐々にではあるが頭角を現しつつあった。

然而可悲的是,在戰國時代的序列中,信孝始終落在信雄之後。即使以看得見的方式展現實力,仍未受到應有評價,信孝為此心懷不滿。

しかし、悲しいかな戦国の世の序列に於いては、常に信雄の後塵を拝していた。目に見える形で己が実力を示してもなお、評価されないことに信孝は不満を抱いていた。

並非信孝的評價被不當貶低,而是因為他事事與信雄對立、惹出麻煩,功績被抵銷這一事實,他沒有察覺到。

信孝の評価が不当に低い訳ではなく、事あるごとに信雄と対立し、面倒ごとを起こすため功績が相殺されているという事実に、彼は気付けていなかった。

這次在開發中率先自告奮勇,極大部分是出於想要超越信雄、搶先一步的企圖。

今回の開発に際しても率先して名乗り出たのは、信雄を出し抜かんとした意図が多分に含まれている。

「是不是想把北伊勢弄得繁榮,拉開與南伊勢的差距,這次好徹底改寫序列呢?」

「北伊勢を繁栄させ、南伊勢との差を明らかにし、今度こそ序列を塗り替えようと企んだのかな?」

為調停兄弟間的血肉爭端而費心的靜子,對於收穫稀少不禁長嘆一聲。

兄弟が起こす骨肉の争いを調停するため骨を折った静子は、その実りの少なさに大きなため息をつかざるを得なかった。

三月,分發到尾張各地的尾張米秧苗青翠欲滴。未見枯黃焦褐,按區塊整齊調配生長狀況的秧苗一列列排列。

尾張全域に配布する尾張米の苗が青々と色付く三月。黄色く焼けて枯れることもなく、区画ごとに生育状況を揃えられた苗たちが並んでいる。

因信長命令將栽培規模擴大到尾張全域,處理的秧苗數量比以往多出十數倍。考量運送與插秧日程,準備了些許錯開生長時序培育的秧苗,到了各自的插秧期便陸續出貨。

信長の命により尾張全域へと栽培規模が拡大されたため、扱う苗の数が従来とは桁違いとなっていた。搬送や作付けの日取りを考慮して、少しずつ生育状況をずらして育てられた苗が用意され、それぞれの田植え時期になると順次出荷されていく。

最初由靜子擔任村長的那個村起源的人力插秧機,因為被更多人使用而逐漸精進演化。

かつて静子が村長に就任した最初の村に端を発した人力田植え機も、多くの人々が利用することでより洗練されたものへと進化していた。

與早期型相比,分化為兩系:一種放大為以牛牽引為前提的六行畜力插秧機,另一種則朝向小型輕量化、保持簡單耐用的傳統兩行人力插秧機。

初期型の物と比較して大型化し、牛に牽かせることを前提とした6条植えの畜力田植え機と、逆に小型軽量化を推し進め、シンプルで壊れにくい従来通りの2条植え人力田植え機の2系統へと分かれていた。

因分區整地的關係,坡地、梯田或形狀不規則的田地多使用人力插秧機,而規格化的大型田塊則以畜力插秧機為主。

区画整理の都合で傾斜地や棚田、変形した田などでは専ら人力田植え機が用いられ、規格化された大きさの大型圃場では畜力田植え機が活躍している。

不用說六行的畜力插秧機,即便是人力插秧機,只要由熟練者操作,一天就能完成一公頃的插秧。

6条植えの畜力田植え機は言うに及ばず、人力田植え機ですら慣れた人間が用いれば、1ヘクタールの土地に対する植え付けを一日でこなせる。

與舊來完全徒手作業相比,效率近乎提高七倍,使用畜力的甚至超過十倍。這些農機具與織田家簽約,若妥善運用即可免費使用。

これは旧来の完全手作業と比較して、実に7倍近い効率を叩きだし、畜力のものに至っては10倍を超える。これらの農機具は織田家と契約を結び、適切に運用するならば無料で利用することが出来た。

當然並非無限借出,會依村落的種植規模決定借出的上限。不過若借到所需數量,並有適當人手同步進行,便能在大約一週內完成所有田地的插秧。

無論無制限という訳にはいかず、村の作付け規模に依って貸し出される数の上限が決まっている。しかし、必要数を借り受けて、適切な人数が一斉に植え付けを行えば、一週間程度で全ての土地に植え付け出来るよう配慮されていた。

與他國相比,尾張每人口的種植面積大幾倍,但農務仍不致崩潰,這裡存在著一套運作機巧。

尾張と他国を比較した際に、人口当たりの作付面積が数倍という規模になっているにも関わらず、農作業が破綻しない絡繰りがここにあった。

「果然要遍及尾張全域的話,規模就會天壤之別啊」

「流石に尾張全域へ行き渡らせるとなると、規模が桁違いになるねえ」

看著為配合插秧機而規格化的育苗箱整齊排列,借出的農機具一字排開,靜子喃喃自語。

田植え機に合わせて規格化された苗箱が整然と並び、貸し出される農機具がずらりと並んでいる様を見て静子が独り言(ご)ちた。

因自始就以日後擴展到尾張全域為目標,借出的農機具數量被充裕地準備著。

当初よりいつかは尾張全域への拡大を視野に入れて計画されていただけに、貸し出される農機具類の数は余裕を以て準備されている。

此次擴大種植規模本身是第二次嘗試,因此預期可避免首度時的混亂。大部分運作上會發生的不便已在上次得到處理,因此對這次作業的擔憂不多。

作付け規模の拡大自体は、今回で二度目の試(こころ)みとなるため、初回時のような混乱は回避できると見込んでいる。運用する上で発生する大部分の不都合は前回で対応できているため、今回の作業に不安は少なかった。

尾張米的種植雖然限於尾張,但尾張式農法計畫將由尾張全土逐步擴展到中部地方全域,甚至包含近江、越前等織田家支配的全域。

尾張米の作付けについては、尾張のみに制限されるものの、尾張方式の農法については、いずれ尾張全土から中部地方全域へ、更には近江や越前なども含めた織田家の支配地全土へと順次展開が予定されている。

可說是全國展開的試金石,此計劃受織田家內有力者注視,容不得失敗。

言うなれば全国展開の試金石となる試みだけに、織田家家中の有力者たちが注視しており、失敗の許されない計画でもあった。

「主要問題已在上回找出,即便發生意外也有經驗豐富的優秀人員可依靠,但仍不可掉以輕心。」

「大きな問題点は前回で洗い出せたし、不測の事態が発生しても前回を経験している優秀なスタッフがいるから安心だけど、それでも油断は禁物だね」

靜子這麼自言自語並下定決心,但結果她的憂慮成了多餘的擔心。運送途中雖有事故導致部分秧苗廢棄,但憑備用秧苗可補足,因此順利完成插秧,無大礙。

そう口に出して呟き、覚悟を決めた静子だが、結果的に静子の心配は杞憂(きゆう)となった。運搬途中の事故で一部の苗が廃棄処分となったものの、予備の苗で賄える分量であったため大過なく植え付けを終えることができた。

四月下旬,與順利的種植形成對照,伊勢開發又再次出現問題。

四月下旬、順調だった作付けと対照的に、またしても伊勢開発で問題が発生した。

在信長的調停下,終於開始動起來的美濃、尾張、伊勢包括經濟圈構想,在計畫啟動的會議上卻沒有看到信雄的身影。

信長の調停を以て、ようやく動き始めた美濃・尾張・伊勢包括経済圏構想だが、計画始動に際する会合の場に信雄の姿はなかった。

明明已在調整所有相關人員的行程並反覆確認本人必須出席的情況下,信雄仍派名代缺席。

関係者全員のスケジュールを調整した上で日程が組まれ、必ず本人が出席することを念押しした上での会合であったにも関わらず、信雄は名代を立てて欠席していた。

由名代帶來的文書寫道領地發生問題,只有領主信雄能處理,因而不得不缺席,但沒有人相信這句話是真的。

名代によって届けられた文には、領地で問題が発生し、領主である信雄でなければ対処できないゆえ、やむを得ず欠席したいと綴られていたが、それを額面通り受け取るものはいなかった。

尤其信孝毫不掩飾心中的憤懣,其他參加者也有類似的心情。

特に信孝は憤懣(ふんまん)やるかたない様子を隠そうともせず、他の参加者も似たような思いを抱えていた。

(明明是自己要求參一腳,卻如此不負責任,難免讓人懷疑他的胸襟吧)

(自分から一枚噛ませろと言い出したのに、こうも無責任な態度だと流石に器量を疑われるよねえ)

與信忠一同以尾張代表出席的靜子,一邊聽著信孝發洩對信雄的不滿,一邊思索信雄的真意。

信忠と共に尾張代表として参加している静子は、信孝が漏らす信雄への愚痴を聞き流しながら、信雄の真意について考えてみた。

就信雄的人物評來說,從傳聞聽到的幾乎沒有好名聲。平日把政務全部丟給部下,完全不插手,但偶爾像是想起來似的插嘴,讓現場陷入混亂。

まず信雄の人物評として、伝え聞こえてくる限りでは、良い噂は殆どない。日頃は政務を配下に丸投げし、一切関わろうとしないのだが、時折思い出したかのように口を挟み、現場を混乱させていた。

在先代北畠具教尚在世時他還會顧忌他人目光,但自從處決具教與北畠一門後,信雄的放縱恣意便越發無所顧忌。

先代である北畠具教(とものり)が存命中は人目を気にしていたが、具教をはじめとした北畠一門を処刑して以降、信雄の放埓(ほうらつ)さは留まるところを知らなかった。

關於具教的處刑,當武田信玄西上作戰失敗時,信雄斷定具教與北畠主要一族與信玄有密約,逼過周遭反對,將相關人士一概處決。

具教の処刑に関しても、武田信玄の西上作戦が失敗した折、信雄が具教や主だった北畠一族が信玄と密約を交わしていたと決めつけ、周囲の反対を押し切って関係者の悉(ことごと)くを処刑した。

那次處刑手法也十分強硬,襲擊了已處於隱居狀態的具教宅邸,不允許任何反論或抗辯,就地斬殺了對方。

その処刑についても強引なやり口を取っており、隠居状態だった具教の屋敷を襲撃し、一切の反論や抗弁を許さずその場で斬り殺してしまっていた。

常言道死人無言,沒有人相信信雄所言「因被激烈抵抗才不得已斬殺」的說法。

死人に口なしとは良く言ったもので、激しく抵抗されたためやむを得ず切り伏せたとの信雄の言を信じる者はいなかった。

這一連串肅清究竟是信雄獨斷抑或信長指示尚不可考,但自此之後北畠一門迅速失勢,如今完全受制於信雄的擺布。

この一連の粛清が信雄の独断に拠るものか、信長の指示かは不明だが、これ以降北畠一門は急速に力を失い、今では完全に信雄の言いなりとなっていた。

即便有人想諫止信雄的無法作為,位列僅次於信忠的信雄也無人敢反對,北畠只剩下名義,已被徹底奪走。

信雄の無法を諫めようにも、信長の後継者たる信忠に次ぐ序列に位置する信雄に逆らえる者はおらず、北畠は名だけを残して完全に乗っ取られてしまっていた。

「靜子殿,有在聽嗎!」

「聞いておられますかな、静子殿!」

「欸?啊、是的,我在聽。」

「え? あ、はい、聞いております」

突然被信孝問話的靜子只能敷衍回應,明顯沒有在注意,但信孝不以為意,繼續對信雄發牢騷。

突然、信孝から話を振られた静子は生返事をするのがやっとだった。明らかに聞いていないのだが、信孝は気にする様子もなく、信雄に対する愚痴が再開された。

「他沒有作為南伊勢國主、繼承北畠家家督的自覺。大概是對先前那件事和志摩國的事兩頭都鬱鬱不樂吧。」

「奴には南伊勢の国主、北畠家の家督を継いだという自覚がない。大方、先日の件と志摩国(しまのくに)の件の双方で不貞腐れておるのだろう」

志摩國是九鬼嘉隆於1569年由信長拝領的領地,自古以來就是向內陸供應海產的重要據點。

志摩国は九鬼(くき)嘉隆(よしたか)が1569年に信長より拝領した国であり、古くから内陸部へ海産物を供給する要地であった。

擁有伊勢灣這樣對漁業極為有利地理位置的志摩國,對於想進一步擴大漁業的靜子而言絕不可放過。

伊勢湾という漁業を営む上で絶好の立地を持つ志摩国は、より一層の漁業拡大を目論む静子としては見逃せない。

於是靜子透過信長向嘉隆提出共同開發水產資源的打診;嘉隆也期望振興領地產業,二話不說便答應,隨即派出靜子所信任的水產相關人員。

そこで静子は信長を介して嘉隆へ水産資源の共同開発を打診した。嘉隆としても領地の産業振興は望むところであったため、二つ返事で了承し、即座に静子子飼いの水産関係者が派遣された。

就這樣,曾在尾張克服創業苦難的能幹家族大展身手,志摩國一躍成為養殖業的重要據點。

こうして尾張で事業立ち上げという苦難を乗り越えた辣腕(らつわん)家が腕を振るい、志摩国は一躍養殖業の一大拠点となった。

嘉隆打算以水產業帶來的財源為基礎,預期未來會有從尾張經海路前來參拜伊勢神宮的旅客,因而計畫整備通往南伊勢的街道。不論港町的住宿設施,或街道沿線的旅籠等,都有可觀的商機。

嘉隆は水産業で潤った財源を元に、将来的には尾張から訪れる海路を通じての伊勢神宮参拝客を見込み、南伊勢までの街道整備を計画している。港町の宿泊施設等は言うに及ばず、街道沿いの旅籠(はたご)等にも十分商売として成り立つ需要が見込める。

然而基礎建設為龐大工程,非等閒可開始行動,至今仍停留在計畫階段。

しかし、インフラ整備は巨大事業であるため、さすがにそう易々とは乗り出せず、未だに計画止まりとなっていた。

信孝所說的志摩國一事,是指他沒能分得這個大利權。為了將尾張與志摩以海路直接連結,中途經過的南伊勢根本沒有任何好處可得。

信孝の言う志摩国の件とは、この一大利権に対して自分が食い込めなかったことを指している。尾張と志摩を直接海路で結ぶため、途中に位置する南伊勢には一切旨味がないのだ。

光憑這點已難以原諒,加上因街道整備不周遭受責難,並被迫放棄作為祭祀皇室氏神天照坐皇大御神的伊勢神宮之庇護者地位,讓他更加心生怨恨。

これだけでも許しがたいというのに、街道整備の不首尾に対する責任を問われ、皇室の氏神である天照坐(あまてらします)皇大御神(すめおおみかみ)を祀る伊勢神宮の庇護者の地位を返上させられたことでの逆恨みも加わっている。

本來受南伊勢庇護的伊勢神宮,對於停滯不前的街道整備以及庇護者未盡之職責,除了不滿被完全課稅外,還反抗於事事被加徵賦稅。

元々は南伊勢の庇護下に収まっていた伊勢神宮だが、一向に進まない街道整備や、庇護者としての義務を充分に果たさないにも関わらず、十全に税を課せられるだけに飽き足らず、何かにつけて賦税(ふぜい)を申し付けられることに反発した。

信長考量到這是內部的失誤,且不能得罪與朝廷關係深厚的伊勢神宮,於是將其改置於財力與政治手腕俱佳的志摩國之庇護下。

信長としても身内の落ち度である上に、朝廷と縁の深い伊勢神宮を敵に回す訳にもいかず、財力及び政治的手腕に優れる志摩国の庇護下へと組み替えたのだ。

為了平衡信雄領地的減少,將志摩國英虞郡的一部分編入伊勢國度會郡,然而信雄對此心生怨恨。

領地が減る信雄には志摩国英虞郡(あごぐん)の一部を伊勢国度会郡(わたらいぐん)に編入させることで釣り合いを取ったのだが、信雄はそれを恨みに思っていた。

由於以上諸事,作為與志摩國接壤的南伊勢國主信雄,見鄰國獨自受惠而心懷怨恨,自然難以甘心。

以上のことから志摩国と国境を接する南伊勢の国主である信雄としては、恨みの募る隣国だけが潤っているという状況は面白くない。

然而此事係由信長仲介,連信雄也無法強烈挑剔。向來少受忍耐之苦的信雄,大概不想與威光對他失效的信忠與靜子,或位階低卻不服從的信孝面對面相處。

しかし、難癖をつけようにも信長が仲介した案件だけに、流石の信雄とて強くは言えない。我慢を強いられることの少なかった信雄としては、己の威光が通用しない信忠や静子、自分よりも低い序列にも関わらず従わない信孝と顔を合わせたくないのだろう。

(若不能做到即便與不喜歡的人也能合作的權謀心機,往後會很辛苦吧)

(嫌いな相手とでも手を組める程度の腹芸ができないと、この先辛いんじゃないかな)

把握時機順勢而起的志摩國日益繁榮,南伊勢則走向衰退。對信雄而言,志摩國的昌盛是令他垂涎三尺的渴望。

機を逃さず時流に乗った志摩国が栄える一方で、南伊勢は衰退の一途を辿っている。信雄からすれば志摩国の繁栄は喉から手が出るほど欲してやまないものだった。

靜子可望在以伊勢灣為外海據點進行海上研究與開發,信長則能藉由向朝廷進貢海產與乾貨來強化政治基盤;對嘉隆而言,雖有外資介入,但可在較低負擔下推進產業開發,形成互惠關係。

静子は伊勢湾という外洋を見据えた海上拠点での研究や開発が見込め、信長としては献上される海産物や乾物を朝廷へと納めることで政治基盤を強化できる。残る嘉隆としては外資が入るものの、少ない負担で産業開発が進むという互恵関係が出来上がっていた。

只要信長、靜子、嘉隆三方的互惠關係不被破壞,信雄便沒有機會侵占那塊權益。

信長、静子、嘉隆の三者による互恵関係が崩れない限り、信雄が権益に食い込める余地はなかった。

(信孝大概也討厭我,但他有壓下這點、仍想超越信雄以取得優勢的上進心。或許他打算利用我來把信雄踢下臺?不過若計畫順利,我不會干涉個人的算計。)

(信孝も私を嫌っているだろうけれど、それを呑み込んででも信雄より優位に立ちたいという向上心がある。あるいは私を利用して、信雄を蹴落とす腹積もりかな? まあ、計画が順調に進むなら、個人の思惑には関与しないけど)

「……這樣也夠了。當面罵不在場之人無益。好了,雖然有些人彼此已有面識,仍重新各自介紹——」

「……もう良かろう。この場に居らぬ者を罵ったところで益はない。さて、面識のある者もおろうが、改めて各自を紹介——」

趁信孝的牢騷告一段落,信忠不掩厭煩之色,宣布會議開始。信孝聽聞後似乎想起該做之事,端正坐姿;替信孝冷嘲熱諷默默忍受的信雄名代,終於露出稍微安心的神色。

信孝の愚痴が一段落したのを見計らい、信忠が倦厭(けんえん)(うんざりする様)さを隠そうともせず、会合の開始を告げた。信孝はそれを耳にして、自分の為すべきことを思い出したのか居住まいを正し、信孝の当て擦りにひたすら耐え続けていた信雄の名代は、ようやく人心地がついたといった様子であった。

「北畠三介(『三介』為信雄的通稱,因繼承北畠家家督而以北畠三介具豐之名)不在令人遺憾,但現在改為說明事業概要。或有人已知,此為構築跨越美濃、尾張、伊勢三國的經濟圈。既然如此就直說,此次計畫以對伊勢的經濟支援為主軸。」

「北畠三介(三介は信雄の通称。北畠家の家督を継いだため、北畠三介具豊(ともとよ)を名乗っていた)の不在は残念だが、事業のあらましを改めて説明しよう。既に知っている者もおろうが、美濃・尾張・伊勢の三ヵ国を跨ぐ経済圏を構築する。この際だからはっきりと言うが、この度の計画は伊勢への経済支援という側面が強い」

信忠不講客套的話沒人反駁。就算整合伊勢南北,其經濟規模與尾張相比仍微不足道。

建前を省いた信忠の言葉に反論できる者はいなかった。伊勢の南北を統合したとしても、その経済規模は尾張と比して微々たるものとなる。

本就如陸上孤島的劣勢地理條件不說,未及早著手的街道整備更是顯著後遺,影響甚鉅。

元より陸の孤島といった立地の悪さもさることながら、早期に手を付けるべきであった街道整備を怠ったことが響いていた。

在削弱雑賀衆時確有幾條由尾張協力優先整備的街道,但就現狀而言仍不得不說不夠完善。

雑賀衆を切り崩す際に、尾張からも梃(てこ)入れをして優先的に整備した街道もあるが、現状では不十分と言わざるを得ない。

因此決定將其納入龐大的美濃與尾張經濟圈,特別把尾張明顯的剩餘資金投向伊勢開發;資金投入的決定深受靜子的意向影響。

ゆえに巨大な美濃と尾張の経済圏に取り込み、特に尾張で顕著な余剰資金を伊勢開発につぎ込むことにした。資金投入の決定には静子の意向が大きく関与している。

織田家所轄地已過了經濟資源一極集中的時期,若不能構築更大的經濟圈,將因資本主義的結構性缺陷而逐步萎縮。

既に織田家の支配地域は経済資源の一極集中をする時期を過ぎており、より大きな経済圏を構築できねば、資本主義の構造的欠陥により先細りとなってしまうためであった。

「……無法否認。尾張已成為東國第一的大國。人、物、金從全國匯集,又散向各地。在此情況下,我等伊勢被說成依靠尾張的累贅也無可厚非。」

「……否定は出来ぬ。尾張は既に東国一の大国となっている。全国から人、物、金が集まり、また各地へと散っていく。この状況下に於いて、我ら伊勢は尾張に寄り掛かるお荷物と言われても仕方ない」

「若能冷靜接受現狀那便是上策。關於以陸路連結伊勢與尾張,木曾三川是一大難題。在開發之前,首先必須完成治水工程。」

「冷静に現状を受け入れられるなら上等よ。さて、伊勢と尾張とを陸路で結ぶにあたり、木曽三川が難題となって立ち塞がる。開発に先駆けて、まずは治水工事を完遂せねばならない」

「明白。地理上較近的我們北伊勢會提供人員,南伊勢負擔資金。沒有異議吧?」

「承知している。立地的に近い我ら北伊勢が人員を提供し、南伊勢は資金を負担する。相違ないな?」

「是、是的。我已經這麼回報。」

「は、はい。そのように伺っております」

信孝銳利地瞪著南伊勢代表的名代再三確認。名代如同被蛇盯住的青蛙,縮起身子回答。

南伊勢代表の名代を鋭く睨みながら信孝が念を押した。蛇に睨まれたカエルの如く、名代は身を竦(すく)ませながら返答する。

(這個名代也真倒楣啊。照這情形,下次恐怕會換人來。)

(この名代の人も災難だよね。この様子だと次回には別の人が来ることになりそうだ)

把議事進行交給信忠,自己則專心聆聽的靜子,一邊觀察信雄的名代一邊思索。大概是被信雄命令,要為南伊勢爭取有利條件吧。

議事の進行を信忠に任せ、自分は聞き役に徹している静子は、信雄の名代の様子を窺いながら考える。恐らくは信雄から、南伊勢にとって有利な条件を勝ち取って来いと命じられているのだろう。

從那明顯畏縮的姿態看,絕對無法向諸位國主提出會讓人受損的談判。然而就這樣窩囊回國,必然會惹怒信雄而被革職,這是顯而易見的。

明らかに腰の引けた姿勢を見る限り、居並ぶ国主に対して不利益を呑ませる交渉など出来ようはずがない。しかし、そのままおめおめと帰国すれば、信雄の怒りを買って更迭されるのは目に見えている。

「嗯……靜子。你那邊有什麼要說的嗎?」

「ふーむ……静子。其方(そなた)から何か言う事はあるか?」

討論停滯時,信忠向靜子徵求意見。雖然在思索,卻已把握住話題脈絡的靜子立刻作答。

議論が停滞したところで、信忠が静子の意見を求めた。思案しつつも、話の流れを掴んではいた静子は、即座に応えて見せた。

「這個嘛,伊勢獨有、別處沒有的特色。若無法打出這一點,即便能獲得一時的繁榮,也無法期待持續的興盛吧。」

「そうですね、他所(よそ)にはない、伊勢だけの特色。これを打ち出せないのなら、一時(いっとき)の隆盛は得られても、継続的な繁栄は望めないでしょう」

「如此一說?」

「と申されると?」

信孝聽了靜子的發言,微微向前催促她繼續。

静子の発言を受けて、信孝がやや前のめりに続きを促す。

「是的。尾張有被稱為『尾張樣式』的文物,以及只在尾張生產的特產。美濃則作為連接尾張與京等他國的中繼地,孕育出支撐物流的產業。反觀伊勢,有沒有其他國家所沒有的特色呢?」

「はい。尾張ならば『尾張様式』と呼ばれるようになった文物や、尾張でのみ生産される特産品があります。美濃には尾張と京をはじめとした他国とを結ぶ中継地としての役割があり、物流を支える産業が育っています。翻って見た時に、伊勢には他国に無い特色はあるでしょうか?」

靜子並未特意指出,但在伊勢一帶只有志摩國相較他國具備突出的特色。擁有被說成一生必訪的伊勢神宮,不僅孕育豐富的海洋資源,還掌握作為海運要衝的伊勢灣。

静子は敢えて言及しなかったが、伊勢一帯では志摩国のみが他国と比して抜きんでた特色を具(そな)えている。一生に一度は訪れてみたいと言われる伊勢神宮を擁し、豊かな海洋資源を育むだけでなく、海運の要ともなる伊勢湾を押さえている。

然而,南北的伊勢國並無特別的特色。勉強說的話,只是通往志摩國的通過點。若當初計畫的街道整備能推進,理應能成為連接近畿與東海地區的交通要衝。

然るに、南北の伊勢国にはこれといった特色がない。強いて言うならば、志摩国への通過点でしかない。当初予定されていた街道整備さえ進んでいれば、近畿地方と東海地方を結ぶ交通の要衝となれたはずであった。

事實上史實中在江戶時代從東海道分岐的伊勢街道被整備,成為支撐南路陸路的中繼地而繁榮。

実際に史実でも江戸時代に東海道から分岐した伊勢街道が整備され、南周りの陸路を支える中継地として栄えることになる。

而在開局就失手的信雄、信孝兄弟所治的伊勢,甚至沒有餘力進行大規模的基礎建設。

そして初手で躓(つまず)いた信雄、信孝兄弟が治める伊勢には、大規模なインフラ整備をする余力すらなかった。

「要吸引人潮就需要『招牌』。即便會稍微繞遠路,若沒有能讓人願意順道到伊勢一遊的東西,終有一天會被美濃奪去地位。」

「人を集めるには『目玉』が必要です。少々遠回りになろうが、伊勢に立ち寄ろうと思えるだけの何かが無ければ、いずれ美濃にその地位を奪われるでしょう」

「嗚……雖然你這麼說,但如果那種東西存在,我等也不會袖手旁觀。」

「ぐぬ……そうは申されるが、そんなものが有れば我らとて手を拱(こまね)いてはいない」

一方面承認靜子所說有一理,卻一時想不出能成為特產的有望對象,因而不由自主地反駁。

静子の語る内容に一理あると認めつつも、即座に特産品となり得る有望な存在など思い当たらず、意図せず反発してしまう。

「若沒有就自己造。整備街道至少能爭取十年的緩衝期。利用那段時間培育出特產就好。幸運的是位於南方的伊勢有許多日照良好的斜坡,那麼栽種不會與他國特產重複的橘(たちばな)或柑子(こうじ)如何?」

「無いのなら作れば良いのです。街道を整備することで少なくとも十年の猶予は得られましょう。その時間を使って、特産品を生み出せば良いのです。幸い南に位置する伊勢には日当たりの良い斜面が多い、ならば他国の特産品と被らない橘(たちばな)か柑子(こうじ)を育てるのは如何でしょう?」

橘與柑子是日本自古生長的柑橘類。橘出現在《日本書紀》與《古事記》中,不老不死的靈藥『非時(ときじくの)香果(かくのこのみ)』被認為就是橘。

橘や柑子とは日本に古くから自生している柑橘類である。橘の存在は日本書紀や古事記にも登場し、不老不死の霊薬である『非時(ときじくの)香果(かくのこのみ)』が橘であるとされる。

從『常世之國』帶回來,讓人聯想到即便生命枯竭的冬天也依然蒼翠葉茂的永恆生命之果。現在以大和橘(ヤマトタチバナ)之名聞名的品種即是其一。

『常世の国』より持ち帰り、生命の枯れ果てる冬にも青々と葉を茂らせる永遠の生命を思わせる果実。現在ではヤマトタチバナの名で知られる品種がそれだ。

靜子如果可能想栽培溫州(うんしゅう)蜜柑,但現階段不確定溫州蜜柑是否已存在,而且因為無籽品種可能會被認為不吉而被避忌。

静子は可能ならば温州(うんしゅう)みかんを栽培したいと考えていたが、現時点で温州みかんが存在しているか判らない上に、種なしの品種であるため縁起が悪いと敬遠されかねない。

於是她反過來利用這種吉凶觀念,認為被稱作不老不死靈藥的橘或許能成為伊勢的代表產業。

ならば縁起を逆手にとって、不老不死の霊薬とも謳われた橘ならば、伊勢を代表する産業となるのではないかと考えたのだ。

「嗯……承蒙珍貴意見,甚感榮幸。靜子大人的提案,回去後會與家臣商議。」

「ふむ……貴重な意見を頂戴し、忝(かたじけな)い。静子殿の案は、持ち帰り家臣と相談させて頂きたい」

被靜子斬釘截鐵地說『沒有就製造』,令信孝震驚,卻也在靜子的方案中看到可能性。然而事關一國存亡,不可能立刻做出決定。

無ければ作れば良いと言ってのける静子に驚愕した信孝は、静子の語る案に可能性を見た。しかし、ことは一国の命運を左右することだけに、即座に決断することはできなかった。

因為會合從一開始大方向已定,只要決定伊勢應採取的方針,之後的討論便順利結束。信孝得到回去處理伊勢特產如何推動的作業,但其他人則繼續肅然進行各自工作。

最初から大筋の決まっている会合だけに、伊勢が取り組むべき方針さえ決まれば、その後はすんなりと話が纏まった。信孝は伊勢の特産品をどうするかという点について、持ち帰りの宿題が発生したが、他の面々は粛々と作業を進めるだけだ。

只有信雄的名代面露悲壯表情。不只是要爭取對南伊勢有利的條件,若無法準備所需金子,還得向主君回報必須即便向尾張與美濃借貸也要湊齊。

ただ一人信雄の名代だけが悲壮な表情を浮かべていた。南伊勢に有利な条件どころか、金子が用意できない場合は、尾張と美濃から借り入れてでも用立てよと主君に伝えねばならない。

他確定會被主君發怒,搞不好會被迫代罪切腹。名代毫不掩飾那黯淡的心情,信孝卻一副看來很愉快的樣子盯著他,靜子對此抱著微妙的感受注視著。

主君の勘気を被るのは確実であり、下手をすれば詰め腹を切らされかねない。暗澹(あんたん)たる心持ちを隠そうともしない名代を、さも愉快げに見つめる信孝の様子を静子は微妙な気持ちで見つめていた。

「等事業步上軌道,就交給他人吧……」

「事業が軌道に乗ったら、誰かに任せよう……」

信雄姑且不論,連原本還覺得有可看性的信孝,也希望合夥事業主信雄下臺。照這情形,頻繁發生問題是顯而易見的。

信雄はともかく、まだ見どころがあると思えた信孝ですら、共同事業主となる信雄の失脚を望んでいる。この様子では、度々問題が発生するであろうことは目に見えていた。

覺得每次兄弟爭執都要被求仲裁實在無聊的靜子,早早把事業計畫要旨整理好,並交代彩選出專任負責人後,便回自己的房間。

兄弟喧嘩の度に仲裁を求められるのも馬鹿らしいと考えた静子は、早々に事業計画の要諦(ようてい)を纏めると、専任の担当者を選出するよう彩に伝え、自分は自室へと引っ込んでしまった。

「啊——幹勁都沒了」

「あー、やる気が削(そ)がれる」

她在床間大字形躺平,伸展全身一邊抱怨。口頭決定把工作留到明天,靜子正式進入休息狀態。

床の間に大の字に寝転がり、全身を伸ばしながら愚痴を零す。仕事は明日にしようと声に出して決意し、静子は本格的に休息の姿勢となった。

默默地在維特曼他們旁邊躺了一會兒,突然傳來一陣像是許多人喧鬧的吵雜聲到靜子的耳中。

暫く無言でヴィットマンたちの隣に寝転んでいると、なにやら大勢の人間が騒いでいるような喧噪が静子の耳にも届いてきた。

靜子覺得那聲音不像是警告危險,倒更像祭典的氣氛,於是站起身尋找聲源。

危険を告げるような性質のものではなく、どちらかと言えば祭りの雰囲気に近いと思った静子は、声の出所を探るべく立ち上がった。

她摸了摸轉頭望向靜子的維特曼的頭,然後獨自出房朝聲音的方向走去。

静子の方へ首を向けるヴィットマンの頭を撫でて、静子は独りで部屋を出ると、声のする方へと歩いていった。

「……原來如此」

「……なるほど」

靜子靠近聲源漸漸察覺到大致情況,但到達的地方是靜子邸一角的武道場。

音の発生源に近づくにつれ、おおよその事情を察した静子だが、辿り着いた先は静子邸の一角にある武道場であった。

靜子邸的武道場為了方便做為娛樂的相撲比賽,設置了堂皇的土俵。不只土俵,周圍還設有觀眾席,是相當正式的構造。

静子邸の武道場には娯楽でもある相撲を取り易いよう、立派な土俵が設えられていた。土俵だけでなく、周りを取り囲む観客席も設けられ、本格的な造りをしている。

「喔——在比賽呢」

「おー、やってるね」

靠近武道場的土俵時,男丁們在大聲歡呼中進行相撲。雖然不知是個人戰還是團體戰,但看著落敗者下場、勝者留下,顯然是勝者續戰制。

武道場の土俵へ近づくと、男衆たちが大歓声を上げながら相撲が行われていた。個人戦なのか、団体戦なのかは判らないが、負けた方が土俵を下り、勝った方が残っているところを見るに勝ち抜き戦であるのは確かなようだった。

「加油啊──!等等,是靜子大人!?」

「頑張れよー! って静子様!?」

喊著高聲加油的其中一人注意到正靠近不遠處的靜子,發出驚訝的聲音。這一聲成了契機,喧鬧的觀眾瞬間安靜,人人分開留出一塊空白地帶。

大声を張り上げて声援を送っていた一人が、すぐ傍まで近づいていた静子に気付き、素っ頓狂な声を上げた。それを切っ掛けにあれほど騒いでいた観客が静まり、人波が割れてぽっかりと空白地帯が出来上がる。

「不好意思,打擾了嗎?我先過一下。」

「ごめんね、お邪魔だったかな? ちょっと通るよ」

感到四周目光都集中在自己身上有些尷尬,但還是走向觀眾席的最前排。

周囲の視線が自分に集中していることに、若干気まずさを覚えつつも、観客席の最前列へと歩を進める。

「喲,靜醬,剛剛很吵嗎?」

「おや静っち、騒がしかったかい?」

走到土俵邊,看到慶次剛才似乎在比賽,半裸身上帶著泥汙。

土俵際まで辿り着くと、先ほどまで相撲を取っていたのか、半裸姿に土汚れを纏った慶次が居た。

還有長可、才藏、高虎等人,這邊似乎聚集了織田家關係者;對面則有上杉景勝、直江兼續等越後人佔位。

他にも長可や才蔵、高虎もおり、こちら側に織田家の関係者が揃っているようだ。反対側を見やると上杉景勝や直江兼続など越後人たちが陣取っていた。

「是聽到很熱鬧的聲音,好奇就來瞧瞧。」

「いや、楽しそうな声が聞こえてきたからね。少し気になって覗いてみたんだ」

「哈哈哈。正如你所見,這是織田對上杉的團體戰。當然,輸贏不記仇。」

「はっはっは。見ての通り、織田対上杉の団体戦だ。勿論、勝っても負けても恨みっこなしの勝負だがな」

「嗯。我知道了,大家別弄傷了。」

「うん。事情は分かったよ、お互い怪我のないようにね」

靜子擺出靜觀的姿態後,比賽又開始了。雖然知道是織田與上杉勢的交流戰,但她仍對一件事感到有些在意。

静子が静観の構えを見せると、再び取り組みが始められた。織田勢と上杉勢の交流戦だというのは判ったが、それにしても少し気になることがあった。

「氣氛相當熱烈啊。難道有人在連勝嗎?」

「随分と盛り上がっているね。連勝記録を更新している人でもいるの?」

靜子感到違和的是觀眾的瘋狂與選手的投入程度。織田與上杉分隊相撲並非首次,之前也常舉行。

静子が違和感を覚えたのは、観客たちの熱狂ぶりと、選手たちの入れ込み具合だった。織田勢と上杉勢に分かれて相撲を取るのは、今回が初めてという訳ではなく、以前から度々催されている。

據靜子所知,從未出現過像這次這般高漲的熱度,這一點令她擔憂。

静子の知る限りでは、今回ほどの盛り上がりを見せたことはなく、その一点が気掛かりであった。

「這次輸的人要付勝方的飯錢。雖然微不足道,但只要有賭注的元素,大家的熱情就會不一樣。」

「今回は負けた方が、勝者側の飯代を持つことになっているからな。ささやかだが賭けの要素があれば、皆の盛り上がりも変わってくるってもんだ」

長可回答了靜子的疑問。不只選手,連觀眾也在互相為各自選手的勝敗賭飯錢而沸騰。

静子の疑問に長可が答えた。選手同士は言うに及ばず、観客たちも互いの選手の勝敗に飯代を賭けて盛り上がっていたのだ。

靜子覺得合理,判定無妨。既非莊家操控的賭博,也不至於要大驚小怪,於是她道出看法。

納得のいった静子は、問題なしと判断した。胴元が握っての賭博になっているわけでもなし、目くじらを立てるほどでもないと考えた静子は告げる。

「那種程度就沒問題。拿出各自的矜持好好比一場吧。」

「その程度なら問題なし。互いに矜持を懸けて存分に戦いなさい」

「不愧是靜醬!你真懂事。」

「さっすが静っち! 話が分かるぜ」

「但光是給飯錢當獎賞也太無趣了。為了彌補打斷熱鬧,我想提供一點小獎品,不知如何?」

「しかし、勝者への褒美が飯代だけってのも味気ないよね。盛り上がっているところに水を差しちゃったお詫びに、私からささやかな賞品を提供しようと思うんだけど、どうかな?」

靜子罕見露出調皮的表情,話音剛落,瞬間歡呼爆發。

珍しく茶目っ気のある表情をしている静子の言葉に、一瞬の空隙の後、歓声が爆発した。

「我要提供的獎品是這個。有些人應該看得出帶札的鑰匙是什麼地方的吧?」

「私が提供する賞品はこれ。一部の人は、この札の付いた鍵が何処の鍵か判るでしょう?」

靜子滿意地點頭,打算再從頭重來團體戰,從懷裡掏出作為獎品的鑰匙。看似普通的掛鎖鑰匙,但吊牌上刻著一個『酒』字。

もう一度最初から団体戦をやり直そうとしていることに静子は満足げに頷いて、懐から賞品となる鍵を取り出した。何処にでもある南京錠の鍵に見えるが、下げられた札には『酒』の一文字が刻まれていた。

靜子掏出的鑰匙是她管理的一處酒藏的鑰匙。因為她自己被禁酒,大多數存放的酒仍未動過,靜靜放著。

静子の取り出した鍵は、静子が管理する酒蔵の一つの鍵であった。静子自身が酒を禁じられているため、保管されている酒の大半は手つかずのまま眠っている。

流言說裡面甚至有準備獻給帝的酒,以及只有信長、前久等少數人能入口的特級酒。

中には帝へ献上するために仕込まれた酒や、信長や前久などの一部の人間しか口に出来ない特級酒もあると、まことしやかに噂されていた。

「其實為了慰問柴田大人準備的酒還剩不少,正煩惱該怎麼處理。勝者不就是該享用勝利的美酒嗎?」

「実は柴田様への陣中見舞いにと用意した酒が余っていてね、酒の処分にこまっていたんだ。勝者には勝利の美酒が似合うでしょう?」

有人咽了口口水的聲音。靜子把鑰匙放在貴賓用的桟敷席上,拍了拍手吸引大家的目光。

ゴクリと誰かが唾を飲み込む音が聞こえた。静子は貴賓用の桟敷(さじき)席に鍵を置くと、両手を叩いて全員の視線を集めた。

「織田對上杉的團體戰,勝利星多的一方就把這把鑰匙託付給你們。裡面的東西怎麼處置當然自由!」

「織田対上杉の団体戦、勝ち星の多かった方にこの鍵を託しましょう。無論、中のものをどうしようが自由です!」

「「「哇喔喔喔喔喔喔喔!!」」」

「「「うおおおおおおおおおお!!」」」

這聲音震動了相撲場,彷彿是鬨聲一般。能有機會品嘗人人稱羨的秘藏美酒,哪有酒徒不沸騰的?

鬨(とき)の声かと思う程の大音声が相撲場を揺るがした。誰もが羨む秘蔵の酒を味わえる機会とあっては、盛り上がらない呑兵衛などいはしない。

「越後的人想像不到酒藏裡面長什麼樣,先請雙方選出代表,我實際給你們看裡面的東西。」

「越後の人達は酒蔵の中を想像できないでしょうから、まず双方の代表者を選出して下さい。実際に蔵の中身をお見せします」

經過商議,尾張選出慶次與長可,越後選出景勝與兼續。靜子帶著四人前往酒藏,開了鎖,打開了封閉的門扉。

話し合いの末に、尾張からは慶次と長可が、越後からは景勝と兼続が選ばれた。静子は四人を伴って酒蔵まで赴き、鍵を開けると閉ざされた扉を開け放った。

「喂喂,這是尾張大吟釀耶。再說是兩年前的那批,被稱為大當り的那種!」

「おいおい、こいつは尾張大吟醸だぜ。しかも二年前って言やあ、大当たりって言われた奴じゃねぇか!」

「這邊也有厲害的!是與獻給帝的御用酒同批釀造的酒桶!即便沒被選中,也是天下一品的保障!」

「こっちにも凄いのがあるぞ! 帝に献上される御用酒と一緒に仕込まれた樽だ! 選に漏れたとは言え、天下一品のお墨付きだぜ!」

慶次和長可眼睛發亮地確認酒桶上的標記;另一方面,越後的景勝與兼續不明白他們在驚訝什麼。

慶次と長可が目を輝かせて、酒樽に貼られた表書きを確認していく。一方、彼らが何を驚いているのか判らないのが、景勝と兼続の越後組。

不過能讓同為酒友的慶次眼睛發亮,足以讓人明白這裡擺的都是好酒,期待不由自主地升起。

ただ、酒飲み仲間である慶次が目を輝かせる程度には、良い酒が並んでいるのだという事は理解出来、否が応にも期待が募る。

「嘛,酒還是要喝了才知道。那邊有試飲用的杯子,稍微嚐一口吧?」

「まあ、お酒は飲んでみないと判らないよね。そこに試飲用の盃があるから、少し味見してご覧?」

靜子把其中一個酒桶傾倒,拔出稱為「ダボ」的木製塞子,插上「呑み口」。再把酒桶立起,然後拔掉「呑み口」的塞子。

静子は樽酒の一つを倒して『ダボ』と呼ばれる木製の栓を抜き、『呑み口』を差し込ませた。再び酒樽を立ててから、『呑み口』の栓を抜く。

當他們說是試飲用的杯子拿出來時,竟是一只朱漆的大盃。那盃斟得滿滿的酒由四人先拿著走出藏,靜子再度把鑰匙鎖上。

試飲用の盃と言って持ち出されたのは、朱塗りの大盃であった。その大盃になみなみと注がれた酒を持って、四人が先に蔵を出て、静子が再び鍵を閉めた。

回到武道場的土俵邊時,大家都坐在地上休息。發現靜子等人回來後,先前坐著的人也站了起來走過來聚集。

武道場の土俵際へ戻ると、皆が地面に座り込んで休憩しているところだった。静子達が戻ってきたことに気付くと、腰を下ろしていたものも立ち上がって集まってくる。

「我從勝利的美酒中挑了一個帶來。會輪流喝,參加者請排隊嘗嘗看吧」

「勝利の美酒の中から一つを選んで持ってきたよ。回し飲みになっちゃうけど、参加者は並んで味見してみてね」

拿著大盃的慶次先把杯子遞給景勝,說首先應該由越後這邊喝。

大盃を持っていた慶次が、まずは越後側が飲むべきだと、景勝に手渡した。

接過相當有份量的大盃後,景勝被杯中升起的濃郁香氣陶醉。

かなりの重量がある大盃を受け取った景勝は、酒杯から立ち上る芳醇な香りに陶然とする。

在眾人屏息以待下,他把嘴貼到大盃上,將酒灌入口中。

皆が息を飲んで見守る中、大盃に口を付けて酒を口中に流しいれた。

「喔,這個……」

「おお、これは……」

含在口中翻轉,在舌上品味,最後嚥下到喉嚨深處。不說什麼,首先嘆了口氣。

口に含んで転がし、舌の上で味わい、最後に喉の奥へと嚥下(えんか)する。何を言うでもなく、まずため息が漏れた。

只有一口,卻也是一口。他那一口酒就將他迷住了。不知道要如何釀造會成這樣,明明澄澈但口感卻有點像濁酒般的黏稠滑順。

たった一口、されど一口。彼が味わった酒は、ただの一口で彼を魅了した。どのように仕込めばそうなるのか判らないが、澄み渡っているというのに何処か濁り酒のようなトロリとした口当たりをしていた。

入口甜柔,卻有如灼燒喉嚨般強烈的酒精力量滲透全身。酒液經喉而過時散發的花香,撫平了他額間的皺眉。

甘く柔らかい口当たりながら、喉を焼くような酒精(しゅせい)の強さが体に染み渡る。喉を通った際に香る花の様な芳香は、彼の眉間の皺を和らげた。

從他的反應就能想像那酒有多美味,大家也咽了口口水。靜子因越後人的反應而心情大好,一邊看著大盃依序傳遞,一邊又把酒藏的鑰匙放回桟敷席上。

彼の反応から、その酒がどれほどの味だったのかと喉を鳴らす。越後人たちの反応に気を良くした静子は、順繰りに大盃が回されていく様を眺めながら、再び桟敷席に酒蔵の鍵を置いた。

「那麼,勝利的美酒合你們胃口嗎?獎品是與此等同的酒,足夠多到即便讓在場的每個人像被淋灑般喝掉也還有餘。想要者請站出來!」

「さて、勝利の美酒はお気に召したかな? 賞品はこれと同等の酒が、ここに居る全員が浴びるほど呑んでも余るほどあるよ。さあ、我こそはと思う者は名乗りを上げよ!」

在靜子的鼓動下,參加者蜂擁而至,團體戰的對陣表規模達到前所未有。

静子の発破に参加者が詰め掛け、団体戦の組み合わせ表はかつてない規模となっていた。

「那麼,雙方都小心別受傷,好好使勁戰鬥吧」

「それじゃ、双方とも怪我だけはしないように、張り切って戦いなさい」

靜子說完這句便離開了土俵旁。剛走出武道場,身後就傳來一陣大歡呼。

静子はそれだけを言うと、土俵の傍を後にした。武道場から外に出た直後、背後から大歓声が聞こえた。

看來比賽立刻就開始了。由於有點對上杉一方有所顧忌,稍微煽動了下,事後才覺得那效果比預期還好。

早速取り組みが始まったようだ。若干上杉勢に遠慮が見られたため、少し煽って見せたのだが、予想以上の効果だったなと今更ながら思う。

「嗯,就算小心也難免會有人受傷吧。要先去安排醫生嗎?」

「まあ、気を付けていても怪我人は出るだろうね。先に医者の手配をしておこうか」

靜子背對著比她先前來察看的時候還熱鬧的武道場,朝著有彩所在的母屋走去。

静子が様子を窺いに来た時以上の賑わいを見せる武道場に背を向け、静子は彩の居る母屋へと足を向けた。