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戦国小町苦労譚

一五七五年 二月下旬

天正二年,是信長在岐阜城迎新年的最後一年。信長遷往安土的計畫已為人所知,至安土城落成前的臨時御殿也已完工,搬遷相關的各項細緻準備也都順利進行中。

天正二年は、信長が岐阜城で新年を祝う最後の年となる。信長の安土移転計画は既に周知されており、安土城落成までの仮御殿も完成し、移転に向けた細々とした準備も滞りなく進んでいた。

為了讓大家能在繁忙的年末年始安然度過,遷往安土的預定日期訂在新年十五日前後。信長離去後,岐阜城由繼承者信忠進駐,繼續治理岐阜。

何かと慌ただしい年末年始を皆が安らかに過ごせるようにと、安土への移転予定日は新年十五日頃となっていた。信長が去った後の岐阜城へは、後継者である信忠が入り、岐阜を治めることとなる。

「元旦總算能好好休息了呢」

「元日だけはゆっくりできるね」

照例元旦時,靜子的部下大多回娘家。留下來的不是沒有可回之處,就是不打算回去的人。靜子把這裡視為家,而彩沒有可歸之所。直到去年兩人還是獨自過年,但今年多了四六與器,熱鬧了些。

例年元日には静子の配下も殆どが実家へと帰省する。残留する者は帰る家がないか、もしくは帰るつもりがないかのどちらかとなる。静子はここが家であり、彩は帰る家を持たない。去年までは二人きりの正月であったが、今年は四六と器が加わり、少し賑やかな雰囲気となっていた。

對於家人也只留下最低限的人手,其餘則被允許回娘家。這是靜子的用意——日常忙碌不說,至少過年這段時間希望大家能好好休息。

家人たちについても最低限の人数を残し、他は実家へと帰らせた。常時はともかく、正月の間ぐらいはゆっくり休んでほしいという、静子からの心づくしであった。

屋敷規模大而住人稀少,連一點聲響都聽不見,靜子便撫摸著躺在身旁的維特曼們。

屋敷の規模に対して住人が少ないため、物音すら聞こえない中、静子は傍らに寝転がっているヴィットマン達を撫でていた。

在維特曼家族中,作為父母的維特曼與巴爾蒂最近多半都在躺著。也難怪,整個維特曼家族如今已步入晚年。

ヴィットマンファミリーの中でも父母に当たるヴィットマンとバルティは、近頃横になっていることが多い。それもそのはず、今やヴィットマンファミリー全体が老境に達している。

由於不知道維特曼與巴爾蒂的出生日期,只能推測年齡,みつお說若換算成人類,大概相當於八十歲以上。

ヴィットマンとバルティに関しては出生日が判らないため、年齢は推測するしかないのだが、人間で言えば八十歳以上に相当するだろうとみつおが言っていた。

也許因為留下了所謂的狼犬品種,或是因長期被馴養而本能淡化,維特曼家族已沒有純血的後嗣。

ウルフドッグという種を残したためか、飼育下に置いたことで本能が薄まったのか、ヴィットマンファミリーには純血の後継者が絶えてしまった。

眼前這些就是全部的家族,等他們一一走完人生,他們的族群便會滅絕。

ここにいるファミリーが全てであり、彼らが生を終えた時、彼らの一族は潰えることになる。

「你也已經是老爺爺了呢。我一直以為能一直在一起,但作為生物的壽命總是無可奈何……雖然已經有為那一刻做準備……還是不想那麼快用上啊」

「お前も、もうお爺ちゃんなんだよね。ずっと一緒に居られると思っていたけど、生物としての寿命だけはどうしようもないんだね……。その時の準備はしているけど……まだ使わせてほしくないな」

不只是人類,年邁者與留下來者的生活都令人心酸。生命力所帶來的粗獷與奔放逐漸沉寂,只剩寧靜地默默走向終點。

人間に限らず、老いたものと残されるものの生活は切ない。生命力が生み出す荒々しさは鳴りを潜め、ただ穏やかにひっそりと最期に向かって着実に歩んでいく。

面對維特曼停止追隨靜子、卻仍守護她居所等候的老去,令人難受。靜子的做法不是任由那一刻無準備地降臨,而是設法讓他們能安然度過最後時光,這是她堅持的方式。

静子の後を追いかけることをやめ、それでも静子の居場所を守って待っていてくれるヴィットマンの老いに向き合うのはつらい。しかし、いつか確実に訪れるその時を、何の準備もしないまま迎えるのではなく、最期まで安らかに過ごせるよう腐心するのが静子なりの筋の通し方であった。

摸完維特曼後,依序撫摸凱澤、克尼希等人的頭。凱澤他們第二代在壽命上還有些餘裕,但從阿德爾海特與魯茲的面容已少了銳氣,變得溫和許多。

ヴィットマンに続いて、カイザーやケーニッヒなど順に頭を撫でていく。流石にカイザー達、第二世代の寿命には幾分猶予があるが、それでもアーデルハイトやルッツの顔つきから精悍さが失われ、優し気な風貌になってきている。

「作為飼主的宿命嗎……頭腦上以為已理解,但比想像中還要痛苦啊」

「飼い主の宿命か……。頭では解っていたつもりだったけど、想像以上にツライね」

想起中學時的朋友曾談起與從出生起一起長大的愛犬分別的事。那個一直在身旁、可稱為自己一半的家人就這樣離去。

中学時代の友人が、生まれた時から一緒に育ってきた愛犬との別れを語っていたのを思い出す。傍にいるのが当たり前の、自分の半身とも呼べる家族が去っていく。

當時自以為理解朋友的苦惱與悲哀,但說到底還是覺得像是別人的事。沒想到會如此深切地刺入心頭。

その時は、友人の苦悩と悲哀を理解したような気になっていたが、やはりどこか他人事だったのだろう。これほどまでに身につまされるものだとは思わなかった。

「我,作為你們的主人,有沒有成為合格的人呢?」

「私は、お前たちの主人として相応しい人物になれたかな?」

她出聲問了,當然不會有回應。她知道這不過是多愁善感,但仍忍不住那樣問。

声に出して訊ねてみるが、当然応えは返らない。これが感傷に過ぎない事は判っているが、そう問わずにはいられなかった。

似乎察覺到靜子的心情,巴爾蒂舔了舔她的手,仿佛把牠的體溫與親暱之情傳達了過來。

そんな静子の心情を察したのか、バルティが静子の手を舐める。彼女の体温と親愛の情が伝わってくるようだった。

「是嗎……謝謝你」

「そっか……ありがとうね」

她沒有說話,但能感覺到牠那樣承認靜子作為群體的領導者。靜子微微一笑,將手環上巴爾蒂的脖子抱住。

彼女は何も言わないが、ただあるがままの静子を群れのリーダーとして認めてくれているのが判った。静子は薄く笑みを浮かべると、バルティの首に手を回して抱き着いた。

平時不喜過度接觸的巴爾蒂,這次卻甘心地把身體交付在她懷裡。

普段は過剰な接触を嫌うバルティだが、この時ばかりはされるがままに体を預けてくれていた。

從正月二日起如往年般忙碌地過去。尤其在岐阜城,因信長即將遷出,能同時向信長與信忠致意成了千載難逢的機會,排隊的人龍比往年更長。

正月二日目以降は例年通り、慌ただしく過ぎていった。特に岐阜城では信長の転出に伴い、信長・信忠双方に挨拶出来る絶好の機会とばかりに、例年以上の長蛇の列が形成された。

答禮的信長等人當然忙不過來,幕後的近侍們更是忙得連暖個座位的功夫都沒有。

挨拶に応じる信長たちが忙しいのは勿論だが、裏方を務める近侍達はまさに席をあたためる暇もない程に忙殺されていた。

「本以為諸位皆多忙,故克制不去拜會,結果本人親自闖來,這是如何回事……」

「皆様がご多忙だと思い、挨拶を控えておりましたのに、ご本人が乗り込んでくるのは如何なものかと……」

「你在說什麼。既然要移往安土,以後也難得再這麼輕鬆來訪。多留戀些也無妨。」

「何を申す。安土へ移らば、こうして気軽に訪ねることも叶わなくなる。名残を惜しんでも罰は当たるまい」

靜子從幕後聽聞岐阜城的喧囂,便等到平靜時再去致意,並留書在宅中等候。若她前去,為她而來的擁擠會更加劇,連近侍們也難以應付。

岐阜城の喧噪を裏方から聞いていた静子は、落ち着いた頃に挨拶に伺うと文を送り、邸宅で控えていた。静子が向かえば、静子目当ての混雑が加わり、さしもの近侍衆たちも来客を捌ききれなくなる。

別人或許不同,但靜子深得信長賞識,無需搶先前往致意。她也不願對本已辛苦的幕後人員雪上加霜。

他の者ならばいざ知らず、充分に信長の覚えが目出度い静子は、我先に挨拶に赴く必要性が薄い。それでなくとも大変な思いをしている裏方に対して、火に油を注ぐような真似をしたくなかった。

正當她等著岐阜城平息時,雖說已是深夜,信長本人卻衝到靜子宅邸來了。

そうして岐阜城が落ち着くのを待っていたところへ、夜が更けてからとは言え、信長本人が静子邸へと押しかけてきた。

「若輕易將岐阜城空出,等候上意裁可的幕後人員難道不會困擾?」

「不用意に岐阜城を空けられては、上様の裁可を待つ裏方が困るのでは?」

「眼下都是一輪又一輪的拜會,並不需什麼決裁。與其如此,不如趕快把那『けえき』拿出來吧」

「当分は挨拶尽くしで、決裁なぞ必要ない。それよりも早う『けえき』とやらを出さぬか」

她不由得嘆了口氣,但既然人已到來,也只能釋然,靜子重新開始做蛋糕。

思わずため息が漏れるが、既に来てしまっている以上は仕方ないと割り切り、静子はケーキ作りを再開する。

雖然遠不及現代的品質,但巧克力已經做好了。幸好新鮮的雞蛋多得能賣,於是她打算用蛋與巧克力做一款只需這兩樣材料的巧克力蛋糕(ガトーショコラ)。

現代の品質には遠く及ばないとは言え、チョコレートが出来たのだ。幸いにも新鮮な鶏卵は売るほどあるため、卵とチョコレートだけで作れるガトーショコラを作ろうと考えていた。

大約就在她向靜子宅常客宣布要做巧克力蛋糕的那時,信長出現了,事情便進展到現在這般。

静子邸のいつもの面々に対して、チョコレートケーキを作ると宣言したのを聞きつけたようなタイミングで信長が登場し、現在に至っている。

不過蛋糕耗時,為了讓信長等候時能先吃些東西,她先做了容易製作的鬆餅來招待。

とはいえ、ケーキ作りは時間が掛かるため、信長に待って貰う間に摘まめるものも出そうと、手軽に作れるパンケーキを先んじて提供していた。

當靜子以隔水加熱融化巧克力時,長可在極寒的冰室裡打發蛋白霜。既沒有冰箱這種便利物,必須在讓牙關發冷的環境中持續攪打蛋白。

静子がチョコレートを湯煎で溶かしている間、長可が極寒の氷室でメレンゲを立てている。冷蔵庫などという便利なものはないため、歯の根が合わないような環境で卵白を混ぜ続ける必要があった。

「靜子的家,和無聊絕緣啊」

「静子の処は、退屈とは無縁よのう」

濃姬一邊凝視著站在廚房中靜子的背影一邊低語。原本增援的人手只有信長,但不知是否被鬆餅的香氣吸引,濃姬、市、茶々與初都現身並留下來。

厨(くりや)に立つ静子の後姿を眺めつつ、濃姫が呟いた。追加人員は信長だけだったのだが、パンケーキの焼ける匂いに釣られてか、濃姫や市、茶々に初も現れて居座った。

當然無法把食物給還在哺乳的江吃,於是只有乳母與江在另一室等待。

流石に乳飲み子である江に与えるわけにもいかず、乳母と江のみが別室で待機することとなった。

匆匆把貴人份的鬆餅烤好後,逐一放到各自的膳上送出。新烤出的鬆餅散發出引人食慾的香氣,胃袋發出輕微抗議的聲音,但被無視後,將微涼的巧克力與蛋黃混合搓拌起來。

取り急ぎ貴人分のパンケーキが焼きあがると、それぞれの膳へと載せられ運ばれていく。焼きたてのパンケーキが立てる食欲を誘う香りに、胃袋が音を立てて軽い抗議をするが無視して、粗熱をとったチョコレートに卵黄を混ぜて練っていく。

「靜、靜、靜子! 這、這、這個! 做好了喔」

「し、し、静子! こ、ここ、これ! 出来たぞ」

正巧這時長可出現,端來一團勉強能稱作蛋白霜的東西。道了謝接過來,瞧向長可的狀態,唇已被寒冷染成紫色,牙根打顫說不出話來。

そこへ折よく長可が現れ、辛うじてメレンゲと呼べそうな物体を持ってきた。礼を言いながら受け取り、長可の状態を窺えば、冷え切ったのであろう唇は紫色になっており、歯の根が合わず上手くしゃべれなくなっている。

「能做到這裡真不容易,謝謝你勝藏君。浴槽已備好,你去洗澡吧」

「良くここまで仕上げてくれたね、ありがとう勝蔵君。お風呂の用意がしてあるから、行っておいで」

精製糖的技術也有限,手邊又沒有像樣的攪拌機,要做出細緻的蛋白霜是極為困難。本來也可以選擇邊加熱邊做的瑞士式蛋白霜,但為了做出鬆軟的蛋糕,還是需要法式蛋白霜。

精糖技術も甘く、ハンドミキサーなどという気の利いた物がない状態で、キメの細かいメレンゲを作るのは至難の業だ。加熱しながら作るスイスメレンゲを利用するという選択肢もあったのだが、ふんわりとしたケーキにするためどうしてもフレンチメレンゲが欲しかった。

送走像是被抱著去浴室的長可後,靜子將還保有些許尖角狀態的蛋白霜分數次混入巧克力麵糊中。

体を抱きかかえるようにして風呂場へ向かう長可を見送り、静子は一応ツノが立っている状態のメレンゲを数回に分けてチョコレート生地に混ぜ入れる。

為了不壓碎蛋白霜,她輕快地拌勻,然後把事先塗了薄薄菜籽油的模具放上,將巧克力麵糊倒入,輕輕敲打以排出空氣。

メレンゲを潰さないようにサックリと混ぜ合わせると、事前に用意しておいた金型に菜種油を薄く塗ったところへ、チョコレート生地を流しいれてトントンと叩いて空気を抜いた。

「靜子接下來要去烤『けえき』,我們就吃這個等著吧」

「静子はこれから『けえき』を焼くようじゃ、わしらはこれを食べて待つとしよう」

信長在冒著熱氣的鬆餅上大量淋了蜂蜜,用筷子巧妙地對折夾進嘴裡,大口咬了下去。

信長は湯気を立てるパンケーキにたっぷりと蜂蜜をかけ、箸で器用に二つ折りに畳んで口へと運び、大きくかじり取った。

蜂蜜「滋潤」地滲入,與厚實承接它們的蛋糕體那香而帶甜的滋味,讓人不由得嘴角放鬆。

『じゅわり』と染み渡る蜂蜜と、それらをどっしり受け止めるケーキ生地の香ばしくも甘やかな味わいに、思わず頬が緩んだ。

「好吃!」

「うまい!」

作為玻璃製品副產物的大量小蘇打加入的鬆餅,和現代的相比也毫不遜色,不只是信長,濃姬等人也睜大眼睛細細品嘗。

ガラス製品の副産物である重曹がたっぷりと入れられたパンケーキは、現代のそれと比べても遜色のない出来栄えであり、信長だけでなく濃姫たちも目を見開いて味わっていた。

信長很快就吃下一片,又在新的一片上抹了盛在另個盤裡的鮮奶油與柿子果醬塞入口中。靜子一邊覺得他果然還是愛吃甜食而微微莞爾,一邊把預熱好的石窯放入蛋糕模具。

早くも一枚を平らげた信長は、新たな一枚に別皿に盛られたクリームと柿のジャムを塗って頬張っている。甘党なのは相変わらずだなと、静子はどこか微笑まし気に眺めつつ、余熱してあった石窯へとケーキの金型を投入した。

「配著甜食喝,這略帶澀味的紅茶也別有一番風味。微微帶點酸反而更討喜」

「甘いものと一緒に飲むと、この渋い紅茶とやらも格別よの。僅かに酸味を感じるのが、かえって好ましい」

市一邊晃動杯中的紅茶一邊低聲說。先前還對有纖細把手的茶杯有所顧忌的市,現在已優雅地使用自如。

ティーカップに入った紅茶を揺らしながら市が呟いた。華奢な取っ手のついたティーカップに尻込みしていた市だが、今では優雅に使いこなしている。

「好、好甜」

「あっまーい」

「好甜—」

「あまいー」

茶々和初一邊喊著,一瞬間就把鬆餅吃光了。這是為主菜巧克力蛋糕做的前菜,而且她們不像大人能吃很多,所以鬆餅做得較小。

茶々と初は声に出しながら、瞬く間にパンケーキを平らげた。メインのチョコレートケーキに対する前座であり、大人と違って量を食べられない彼女たちのパンケーキは小さい。

吃得很快,雖然她們貪婪地盯著大人的鬆餅看,但還是乖乖等待著更美味的巧克力蛋糕登場。

早々に食べ終えてしまい、大人たちのパンケーキを物欲しそうに眺めるものの、より美味なるチョコレートケーキの登場をおとなしく待っていた。

一邊偷看客廳的情況一邊看著石窯的靜子,拔出烤好的巧克力蛋糕插入竹籤,確認沒有生麵糊黏上後露出笑容。

客間の様子を窺いながら石窯の様子を見ていた静子は、取り出したチョコレートケーキに竹串を突き刺し、生焼けの生地がついてこないのを確認して微笑んだ。

是巧克力品質的問題還是蛋白霜不夠,無法確定,但外觀雖然有些欠佳,這部日本首次出現的巧克力蛋糕終於順利烤好。

チョコレートの品質の問題か、メレンゲが十分でなかったのか判らないが、やや見てくれが悪いものの本邦初のチョコレートケーキが無事に焼きあがった。

靜子把蛋糕從模具取出後用刀切割,將整顆切成八等分。客間坐著的貴人有五人,除去理所當然會分給盡了大任的靜子與長可,最後一片的去向看來將生波瀾。

静子は金型から取り出したケーキに包丁を入れ、1ホールを八等分に切り分けた。客間に居座る貴人は5人、大役を務めた静子と長可が受け取るのは当然として、最後の一切れの行方が波乱を生みそうであった。

「……真是濃郁,香氣十足的味道」

「……なんとも濃厚で、香り高い味わいよ」

「在南蠻的語言裡叫做ガトーショコラ(法語中意為巧克力蛋糕)」

「南蛮の言葉でガトーショコラ(フランス語でチョコレートケーキの意味)と申します」

作為本邦首次嘗試,最先下口的信長一時說不出話來,沉默了一會兒才擠出感想。巧克力那迷人的香氣,以及豐厚的油脂與糖分帶來的強烈衝擊,徹底震撼了信長。

本邦初ということで、真っ先に口をつけた信長は絶句し、しばらく間をおいて何とか感想を搾りだした。チョコレートの持つ蠱惑的な香りと、豊富な油分と糖分がもたらすパンチ力が信長を打ち据えたのだ。

信長與靜子交談之際,濃姬等人也動手吃起蛋糕,為其滋味拍手稱快。茶々和初可能覺得巧克力苦味偏重,於是塗了鬆餅用的鮮奶油再咬下去。

信長と静子のやり取りをよそに、濃姫たちもケーキに手を付けて、その味わいに舌鼓を打っていた。茶々と初にはチョコレートの苦みが強かったのか、パンケーキ用のクリームを塗って頬張っている。

「靜子,這個能多做一些嗎?」

「静子や、これはもっと作れぬのか?」

雖然材料本身是有的,但做蛋白霜的工序相當辛苦,並非輕易就能大量製作的事,靜子如此說明後,全場的目光便死死盯著蛋糕盤上剩下的最後一片。

材料自体は存在するが、メレンゲを作る作業が過酷であり、そう易々とは作れないと説明すると、全員の目がケーキ皿に残された最後の一切れに釘付けとなった。

靜子為避免自找麻煩,乾脆退到一旁,本不出面爭運氣,但很明顯地,錯失幸運之人的某些行為,又讓長可再度被送往冰室,這點不言而喻。

静子は自ら火の粉を被りに行く愚を避け、さっさと退散したが、幸運をつかみ損ねた誰かの手によって、再び長可が氷室へ送り込まれることになったのは言うまでもない。

忙得不可開交的信長特地來訪,光是蛋糕不足以讓他滿足,還把葡萄酒、啤酒以及相配的小菜都以土產的名義帶走了。

多忙を極める信長がわざわざ出向いたのだ、ケーキだけで満足するはずもなく、ワインやビールのほか、それに合うツマミ類までもを土産と称して持ち去っていった。

正因為岐阜與尾張距離不遠,才得以輕易往返,但若遷往安土,不僅飲食將受限,各種生活方式也會遭到約束。

岐阜と尾張の距離だからこそ、気軽に赴くことも叶うが、安土へと移れば食は言うに及ばず、様々な生活様式に制限を受けることになる。

由於冷藏與運輸技術低下,即便是天下人也無法改變這樣的宿命。

冷蔵や輸送技術が低いため、天下人であろうともこればかりは何ともしようのない宿命であった。

(說不定到了安土城下他還會要求也能做蛋糕之類的……)

(安土城下でもケーキを作れるようにしろとか言いかねないな……)

雖然以為信長到了安土後的放蕩會有所收斂,卻不知為何竟能想像出他依舊不改無理要求的未來,靜子於是停止再想下去。

安土に移れば信長の奔放さも鳴りを潜めるかと考えたが、何故か信長が変わらず無茶ぶりをする未来が想像できてしまい、静子は考えることをやめた。

雖然撐過了如風暴般的一次到訪,天卻沒有給予她休息。

嵐のような訪問をしのぎ切った静子であったが、天は彼女に休息を与えなかった。

「……終於到了嗎」

「……ようやく、か」

正讀著送來的文書的靜子,萬般心情地低聲嘆道。文中記載著天下五劍最後一振——數珠丸的入手報告。

届けられた文を読んでいた静子は、万感の思いを込めて呟いた。文には天下五剣の最後の一振り、数珠丸(じゅずまる)入手の報が記されていた。

童子切(どうじぎり)安綱(やすつな)、鬼丸(おにまる)國綱(くにつな)、三日月(みかづき)宗近(むねちか)、大典太(おおでんた)光世(みつよ)這四振較早就陸續匯聚到靜子手中。

童子切(どうじぎり)安綱(やすつな)、鬼丸(おにまる)國綱(くにつな)、三日月(みかづき)宗近(むねちか)、大典太(おおでんた)光世(みつよ)の四振りは比較的早期に静子の許へと集まっていた。

然而作為最後一振的數珠丸(じゅずまる)恒次(つねつぐ)的入手則極為困難。畢竟數珠丸是日蓮上人的遺物,與其他遺品一起長期被退藏於身延山(みのぶさん)久遠寺(くおんじ)。

しかし、最後の一振りである数珠丸(じゅずまる)恒次(つねつぐ)の入手は困難を極めた。何しろ数珠丸は日蓮上人の遺品であり、他の遺品と一緒に長らく身延山(みのぶさん)久遠寺(くおんじ)に退蔵されていた。

靜子透過踏實累積的文藝保護成績獲得了評價,加上朝廷的斡旋,這回終於只有數珠丸恒次被允許出世。

静子が地道に積み上げた文芸保護の実績が評価され、朝廷からの働きかけもあって、この度ようやく数珠丸恒次のみが世に出されることとなった。

可以想見,到此為止必定進行了漫長而艱難的交涉。靜子感謝排除萬難奪回結果的朝廷負責人,以及最終讓步的久遠寺僧侶。

ここに至るまで長く険しい交渉が行われていたであろうことは想像に難くない。万難を排して結果をもぎ取った朝廷の担当者と、最終的に折れてくれた久遠寺の僧侶に静子は感謝した。

「不過,勝藏君居然說不需要大典太光世……慶次先生和才蔵先生也不願意接受啊」

「しかし、勝蔵君が大典太光世を要らないと言うとは……慶次さんや才蔵さんも受け取ろうとしないし」

雖然集齊了天下五劍,但若讓它們閒置不用便毫無意義。在留下資料之後,原本打算將實物下賜給配下諸將,卻沒有人願意領受。

天下五剣を揃えたものの、死蔵させたのでは意味がない。資料を残した上で、現物を配下の将へと下賜しようとしたのだが、誰も受け取ろうとしなかった。

作為對配下將領的對外褒賞,已將天下五劍下賜給慶次與才蔵,但重要的僅是公開下賜的事實,慶次與才蔵兩人皆把刀本體留存在靜子府邸的倉中保存著。

配下の将に対する対外的な褒美として、慶次と才蔵には既に天下五剣を下賜しているのだが、皆の前で下賜されたという事実だけが重要であり、慶次も才蔵も刀本体は静子邸の蔵に保管したままとなっていた。

也許因為所有權名義上已移轉,他們偶爾會親自維護刀物,但即便回鄉也不見有帶回去的樣子。而這次的長可更是乾脆說根本不需要擺出下賜的姿態。

一応所有権が移っているためか、時折本人達が手入れをしているようだが、帰省の折にも持ち帰る様子すらない。そして今回の長可に至っては、そもそも下賜するというポーズすら不要だと言い切った。

因此只有三日月宗近日常由足滿所有,其他四振以及名刀大包平(おおかねひら)則由從未揮刀的靜子所收藏。

よって三日月宗近のみ、普段から足満が所有しているのだが、他の四振り及び大包平(おおかねひら)という名刀を、刀を振るうことのない静子が所蔵することになってしまった。

足満本人若靜子有意願,原本也願意讓渡三日月宗近,但靜子也覺得把實用品束之高閣實在說不過去,於是決定由足満繼續代為管理。

足満自身は静子が望めば、三日月宗近を譲る気でいたのだが、静子としても実用品を死蔵させるのは忸怩たる思いがあるため、引き続き足満に管理してもらうこととした。

「嘛,算了。能阻止歷史資料散逸就已經不錯了。比起這個,領地來的陳情……」

「まあ、良いか。歴史的資料の散逸が防げただけでも良しとしよう。それよりも、領地からの陳情が……」

「靜子——!」

「しずこぉ!」

正當靜子伸手準備確認陳情書時,隔開房間的襖被粗暴地推開。能在屋內做出這種無理行為的人寥寥無幾,兇手自然而然可被識別。

陳情書を確認しようと、静子が文机に手を伸ばした瞬間、部屋を隔てる襖が乱暴に開かれた。このような狼藉をするものは、屋敷の中でも数人しかおらず、自ずと犯人は知れた。

「不可以做工作的喲。伯父大人這麼說的!」

「しごとをしてはならぬのじゃ。おじうえがそうおっしゃっていた!」

得意洋洋挺胸的是茶々。若對工作狂靜子僅僅奪走外交就讓她休息,那也太省事了。如此想著的信長,便拔擢茶々擔任靜子之監視役。

得意満面といった様子で胸を張るのは茶々であった。仕事人間の静子に対して外交を取り上げた程度で休むようなら苦労はない。そう考えた信長が、静子のお目付け役として茶々を抜擢した。

受敬愛的伯父信長委以重任,且茶々亦享受被靜子關注的時光,反而成了禍端;靜子一想工作,茶々便不知從何處出現。

敬愛する伯父の信長から大役を仰せつかったことと、茶々自身が静子に構って貰えることを楽しんでいることが災いし、静子が仕事をしようとすると、どこからともなく茶々が現れるのだった。

作為孩子專注力不持久是缺點,卻也因天性靈敏能把握時機前來打擾,連老練的靜子也為之頭疼。

子供であるため集中力が長続きしないという欠点はあるものの、天性の勘の良さを発揮してタイミング良く邪魔をしに現れる茶々に、さすがの静子も手を焼いていた。

「這不是工作喔。只是讀信而已」

「これは仕事じゃないよ。お手紙を読んでいるだけ」

「不行!那張臉是說謊的臉喲」

「ならぬ! そのかおはうそをついているかおじゃ」

見靜子不由自主地眼神游移,茶々便指責她的話是謊言。

思わず目が泳いでしまう静子を見とがめた茶々は、静子の言葉を嘘だと断じた。

「話且先不提,茶々大人。現在不是應該上座學的時間嗎?」

「それはさておき、茶々様。今の時間は座学のはずでは?」

靜子以身示範義務教育之有用,因而凡在靜子府邸逗留到一定年齡的人皆會受到教育。本該與同年齡的孩童並肩用功的時段,茶々出現在此處等於在偷懶。

義務教育の有用性を身をもって示した静子だけに、静子邸に滞在する一定年齢の人間は漏れなく教育が施される。本来ならば同年代の子供らと机を並べて勉学に励んでいるはずの時間であり、茶々がここにいることはサボタージュを意味する。

「比起讀書,任務比較重要!」

「べんきょうよりもおやくめがだいじ!」

對靜子的指責,茶々轉開眼睛裝出若無其事的樣子。不敢直視別人是有疚的證據,考量到成雙的初不在,推測她是獨自溜出來的。

静子の指摘に茶々は目を逸らして嘯(うそぶ)いた。目を見て話さないのは疚しいところがある証拠、二人セットの初がいないことも考慮すると、一人だけ逃げ出してきたのだと推測できた。

「茶々大人,竟然在這等地方啊」

「茶々様、このような場所におられたのですね」

伴隨著毫無情感起伏的冷聲,突然伸出的手抓住了茶々的衣領。

感情の起伏が感じられない冷ややかな声とともに、突然伸びてきた手が茶々の襟首を掴んだ。

「哇!從背後來真是卑鄙耶!」

「うわっ! はいごからとはひきょうだぞ!」

「無論妳說什麼,都要接受學習」

「何を申されようが勉強を受けていただきます」

「放—開—我—!」

「はーなーせー!」

以精湛身手將茶々制服的彩,無視茶々的掙扎把她拖走。茶々的聲音漸行漸遠,轉過走廊的拐角處便徹底聽不見了。

見事な手腕で茶々を拘束した彩は、茶々の抵抗を無視して彼女を引きずって去っていった。茶々の声は徐々に遠ざかっていき、廊下の角を曲がった辺りでぷっつりと聞こえなくなった。

「……還是讀讀這封陳情書吧」

「……陳情書、読もうかな」

把一連串事件視而不見的靜子伸手拿起文桌上的文件箱,取出最上頭的陳情書。

一連の事件をなかったことにした静子は、文机に置かれた書類箱に手を伸ばし、一番上に置かれた陳情書を取り上げた。

已到一月下旬,信長將根據地遷往安土的臨時御殿。空出的岐阜城由信忠入城,得知信長移往安土的人們,開始謠傳他終要與本願寺決一死戰。

一月下旬となり、信長は安土の仮御殿へと本拠を移した。空いた岐阜城へは信忠が入城し、信長の安土移転を知った人々は、遂に本願寺との決着を付けるつもりだなどと噂をしていた。

對本願寺來說,已非可輕忽為只不過是謠言的情況。留在本願寺的戰力僅剩紀伊門徒衆,其他則只剩西國如毛利等少數協力者。

本願寺にとって、所詮は噂よと捨て置けるような状況では無かった。本願寺に残された戦力は紀伊門徒衆だけであり、他には西国に毛利などの協力者を残すのみとなる。

在東國深耕的門徒衆如今已不成氣候,絕非可被期待之戰力。就算向甲斐的武田或東國雄族北條求援,中間還有擁護靜子的信忠盤踞其間阻隔。

東国に根を張った門徒衆は、今となっては見る影もなく、到底戦力として期待できるものでは無かった。甲斐の武田や、東国の雄である北条に助けを求めようにも、間を遮る形で静子を擁する信忠が居座っている。

失去東國這條支援臂膀而必須與信長對峙的事實,使本願寺首腦部為之頭疼。

東国からの支援という片腕をもがれた形で、信長と対峙しなければならないという事実が、本願寺首脳部の頭を悩ませていた。

「我等正站在滅亡的邊緣」

「我らは滅びの瀬戸際に立っております」

在本願寺為對抗信長所召開的軍議上,頼廉如此評斷現狀。眾人齊聲指責這是消極,但在頼廉一瞪之下便都閉口不言。

本願寺で開催された対信長の軍議の場に於いて、頼廉(らいれん)は現状をこう評した。弱気な姿勢だと皆は口々に非難したが、頼廉に一睨みされると口を閉ざした。

「諸位也請好好思量。我們至今已促使散於全國的門徒衆奮起,動員了大量兵力。然而織田之手已鎮壓各地門徒衆,今乃至以本願寺門徒自居亦覺畏懼。曾為一大據點的長島亦被奪,連加賀也被奪去,被逐的門徒衆成為難民湧入,造成今日我等的窮困。反觀織田,兼併了那些生產基盤而更壯大。儘管如此,僅靠紀伊門徒衆無法挫敗織田,且我們身負眾多難民,若坐以待斃也只是死等著罷了」

「皆も良く考えて頂きたい。我らは今まで全国に散らばった門徒衆に決起を促し、多くの兵力を動員出来た。しかし、織田の手によって各地の門徒衆は鎮圧され、今や本願寺門徒を名乗ることが憚(はばか)られる状態となった。一大拠点であった長島も加賀をも奪われ、地を追われた門徒衆が難民となって押し寄せ、今日(こんにち)の我らの窮状を作り出している。一方の織田は、それらの生産基盤を併呑して勢いをました。さりとて紀伊門徒衆だけでは織田を挫(くじ)くことなど敵わぬ上、多くの難民を抱える我らは、座していても死を待つのみというのが現状」

「可是,不能就這樣拋棄飢餓的信徒……」

「しかし、飢えた信徒を見捨てる訳には……」

「我們剩下的選擇只有兩個。一是拋下一切徹底抗戰討伐織田;另一是接受敗北,透過天皇介入申請調停。作為組織的本願寺將被瓦解,但作為宗教則有望存續,我等會被解散,被迫交出石山本願寺(此地)——」

「我々に残された選択肢は二つ。一つは全てを投げ打ち、織田を討つ徹底抗戦。もう一つは敗北を受け入れ、帝を介して調停を申し入れる。組織としての本願寺は潰えるが、宗教としては存続できよう、我らは解散させられ、石山本願寺(ここ)の明け渡しを迫られ——」

「不行!」

「ならぬ!」

頼廉談到交出石山本願寺的瞬間,有一人反對打斷,並發出怒喝。

頼廉が石山本願寺の明け渡しに言及した瞬間、とある人物がそれを遮って怒声を上げた。

聲音的主人名為教如。為本願寺法主顯如的長子,主張與織田徹底抗戰的先鋒,他與支持他的一派強硬主張徹底抗戰。

声の主の名は教如(きょうにょ)。本願寺法主である顕如(けんにょ)の長男にして、織田との徹底抗戦を唱える急先鋒であった。彼と彼を支持する一派は、強硬に徹底抗戦を主張していた。

這最終會導致本願寺東西分裂的悲劇。

これが後に、本願寺を東西に割る悲劇を生むことになる。

「一向宗的『一向』就是一意專心。若拐彎抹角,還談何一向衆!進則極樂往生,退則墮入無盡地獄。我等沒有降伏這個選項!」

「一向宗の一向とは一意専心。行く道を曲げて、何が一向衆か! 進まば極楽往生、退けば無限地獄に落ちようぞ。我らに降伏という選択肢はない!」

就在如常軍議趨於消極之際,教如出面激勵。他們甚至對與織田的短暫和議表示難色,絕不可能接受實質性敗北的調停案。

いつものように軍議が消極的になろうとしたところへ、教如が発破を掛けた。織田との一時和睦にすら難色を示す彼らは、実質的な敗北を受け入れる調停案など呑めるはずがなかった。

然而對能正確認識現狀者而言,他們的主張無非顯得誇大妄想。

しかし、現状を正しく認識している者にとっては、彼らの主張は誇大妄想の域にしか見えなかった。

「那麼請問,如此要如何打倒織田?」

「では、お尋ねします。如何にして織田を打倒するのですか?」

「只要我等不捨信心,御佛必將引我等回歸本願!只要心不折,我等便不會敗!」

「我らが信心を捨てぬ限り、御仏は必ずや本願へと導いて下さる! 心折れぬ限り、我らに負けはない!」

「……即便因此能往生,留在現世的也將是屍山。我等每失一名門徒,力量便削弱;當我等衰弱,不僅織田,其他寺社也會成為敵人。」

「……それで往生出来たとしても、現世に残るのは屍の山でしょう。我らが門徒を失う度に、我らの力は弱まります。我らが弱れば織田だけでなく、他の寺社どもまでが敵に回りましょうぞ」

聽了頼廉的指摘,教如無言。本願寺的敵人並不僅限於織田,過去被本願寺欺壓的寺社勢力正虎視眈眈等待反叛機會。

頼廉の指摘に教如は言葉を無くした。本願寺の敵は織田だけに限らない。今まで本願寺が虐(しいた)げてきた寺社勢力が、反逆の機会を虎視眈々と狙っていた。

本願寺若失勢,寺社勢力可能向織田迎合,甚至對一向宗展開徹底剿滅與敵對。

本願寺が勢力を失えば、寺社勢力は織田に迎合し、一向宗を徹底的に潰さんと敵対する可能性すらあった。

因此頼廉主張,正處於窮地時更應謹慎行事。只要稍有差錯,連先前的協力者也會為保全自身而倒向織田。

それ故に頼廉は、窮地にある今こそ慎重を期するべきだと主張していた。ここからは一歩間違うだけで、今までの協力者までが我が身可愛さから、織田へと寝返ることになる。

「然而,若失去本願寺,就無法向為教義殉道者交代。」

「しかし、本願寺を失っては、教義に殉じた者への面目が立たぬ」

教如仍緊咬不放,但頼廉已在考量戰事的落腳點,教如的反駁難以入耳。

尚も食い下がる教如だが、頼廉は既にいくさの落としどころを考えていたため、彼の耳には届かなかった。

「若在現狀無法下決斷,且讓我增一項判斷材料。」

「現状で決断できぬというのであれば、私が一つ判断材料を増やしましょう」

「究竟要做何事?」

「一体何を?」

「我親自會見一位人士,帶回能占我等前途的情報。以此為判斷,決定是繼續徹底抗戰,或捨名取實、尋求保命之路。」

「私自らがとある人物と会い、我らの行く末を占う情報を持ち帰りましょう。それを以て、尚も徹底抗戦するか、名を捨ててでも実を取り、生き延びる道を模索するかをご判断願いたい」

「所謂那位人物是?」

「とある人物とは?」

教如屏息詢問,頼廉停頓一拍後開口回答。

教如が息を飲んで訊ねると、頼廉は一拍おいて答えを口にした。

「織田所倚重的懷刀。織田大人的最大理解者、使武田敗北的功臣。五攝家筆頭近衛家的女兒,靜子。」

「織田が懐刀と恃(たの)む者。織田殿の最大の理解者にして、武田敗北の立役者。五摂家筆頭近衛家が娘、静子です」

「什——!」

「なっ!」

靜默的軍議瞬間喧囂起來。說到靜子,她是織田家的重臣,亦是毀滅本願寺所呼籲圍繞織田之要角武田軍的宿敵。

静まり返った軍議の場が俄かに喧噪に沸いた。静子と言えば織田家の重臣であり、本願寺が呼びかけた織田包囲網の要(かなめ)たる武田軍を壊滅させた怨敵であった。

她仍是將本願寺逼入經濟困境的首魁,與信長相表裡,成為織田家的門面。頼廉宣稱要與那位靜子直接會面。

今も尚、本願寺を経済的に追い詰めつつある首魁(しゅかい)。信長と表裏を成す、織田家の顔となる人物であった。その静子と直接会うと、頼廉は宣言したのだ。

此話甚至令一向冷靜的顯如震驚,他緊盯著頼廉的眼睛。

これには、いつも冷静な顕如も驚愕し、頼廉の目をじっと見つめる。

「當然,不見得能成行。縱然會面成行,前後亦可能落入敵方圈套而喪命。但若能藉此揭示織田之惡行,便可為本願寺的大義宣傳。」

「無論、面会が叶うとは限りませぬ。よしんば面会が叶ったとて、その前後で敵の罠に掛かり命を落とすやもしれませぬ。しかし、それを以て織田の悪行とし、本願寺の大義を喧伝出来ましょう」

「織田或會推說是部下擅自行事,藉此推脫。」

「織田は配下が勝手にやったことと、言い逃れをするやもしれぬぞ」

「那做不到。靜子是深植於織田家的大樹;若為保全自身而砍倒她,織田的根基將動搖。只要我這位本願寺重臣以性命相搏,織田必須排除萬難保護我,直到會談結束前不得不停止行動。若會談成功並得情報,日後的判斷材料便增;無論結果如何,對我等皆無損。」

「それは出来ませぬ。静子は織田家に深く根を張った大樹。それを我が身可愛さに切り倒せば、織田の屋台骨が揺らぎます。本願寺の重臣である私が命を懸けるだけで、他ならぬ織田が万難を排して私を守らねばならず、会談を終えるまで織田は動きを止めざるを得なくなる。会談が成って情報を得られれば、今後の判断材料が増える。どちらに転んだとて、我らに損はありません」

「唔……」

「むぅ……」

教如聽著頼廉陳述的策略,不由得低聲呻唏。頼廉打算單獨直赴敵陣,帶回情報以再次決策;既然已做到此等地步,帶回的情報不可能輕率對待,軍議必將朝向降伏傾斜。

教如は頼廉が語る策を聞いて思わず唸った。頼廉が単独で直接敵陣へ乗り込み、そこで得た情報を以て再度方針を決める。そこまでして持ち帰った情報を軽々に扱うことなど出来ず、軍議は必ずや降伏へと流れるだろう。

教如確信頼廉打算捨棄本願寺,即便解散作為武裝勢力的本願寺,也要保留作為宗教的一向宗。

頼廉は本願寺を捨て、武装勢力としての本願寺を解散してでも、宗教としての一向宗を残す腹積もりなのだ。そう教如は確信した。

(絕不允許!若失去作為據點的本願寺,便會喪失向心力,組織將無法維持)

(そうはさせん! 拠点としての本願寺を失えば、求心力を失って組織を保てなくなる)

「當然,對方並非我等稍加意願便能立即見面的對象。在安排手續期間,當先商議欲向靜子詢問何事、欲告之何語。」

「無論、こちらが会いたいと望んで、すぐに会える相手ではございませぬ。その手筈を整える間、静子に何を問い、何を告げるかを相談いたしましょう」

教如心中暗罵其虛偽,明知對方早有定見卻仍裝腔作勢。

本心は最初から決めておる癖に、白々しい事をと教如は心の中で吐き捨てた。

進入二月,收下自織田家的養子四六與器的靜子生活逐漸穩定。雖被禁外交,但作為領主仍須處理領地事務,積累了許多非靜子不可裁決的案件。

二月に入り、織田家からの養子である四六(しろく)や器(うつわ)を受け入れた静子の生活も落ち着きを見せる。外交を禁じられたとは言え、領主である以上は領地運営に関する仕事が発生し、静子でなければ判断できない事案も溜まってきた。

為讓靜子得以稍作休息,家臣盡量代辦事務,但終究不得不讓靜子回到現場復職。

静子に休息を取らせるため、家臣達で極力作業を代行していたが、ついに静子が現場復帰せざるを得なくなった。

復工後公開事務增多,與四六和器接觸的時間明顯減少;然而為了讓四六與器無虞生活,工作不可疏忽。

仕事を再開すれば、公(おおやけ)の時間が多くなり、覿面(てきめん)に四六や器と接する時間が削られる。しかし、四六や器が何不自由なく暮らすためにも、仕事を疎かにするわけにはいかない。

靜子感受到如同父親般被工作與家庭撕扯的苦惱心情。

仕事と家庭の板挟みとなり苦悩する父親の気分を味わいつつある静子であった。

「……好,這樣應該沒問題了」

「……よし、これで良いでしょう」

她花了一上午整理堆積的決裁文書,回房簡單吃了午餐,匆匆完食後整理衣容前往應接間。

午前一杯を使って、溜まっていた決裁文書を片付け終えると、自室で簡単な昼餉を取った。流し込むようにして食べ終えると、服装を改めて応接間へと向かう。

「我剛回來了。」

「ただいま戻りましてございます」

「辛苦了。請立即報告。」

「ご苦労様です。早速ですが報告をお願いします」

在會客室裡,長期前往東國蒐集情報的真田昌幸正在等候。眼下,靜子麾下的將領們除了才藏之外,全部外出去了。

応接間では、長らく東国へ情報取集に向かっていた真田昌幸が待っていた。現在、静子配下の将たちは、才蔵を残して全て出払っている。

長可奉信長之命,奔走於近江一帶維持治安;慶次則一人在靜子領地內巡視,因無其他差事而閒置;高虎如往常為築安土城,率黑鍬眾留守近江;足滿則忙於西國的諜報活動與和上杉家的聯絡交涉。

長可は信長の命を受け、近江一円の治安維持活動に駆り出され、慶次は手隙となっている静子の領内を一人で見回っていた。高虎は相変わらず安土城築城のため、黒鍬衆を率いて近江に留まり、足満は西国への諜報活動と上杉家に対する顔つなぎとして忙しく立ち回っていた。

令人驚訝的是,除了長可以外所有人都不是因靜子的命令而行動,而是各自自發訂定行動方針,並在取得靜子的許可後動身。

驚くべきことに長可以外の全員が、静子が命じての行動ではなく、自発的に行動指針を定め、静子の許可を受けて動いていた。

因此,不論靜子如何探查自身周遭,也無法掌握分散各地將領們的真正打算。

それ故に、いくら静子の身辺を探ったところで、各地に散らばった将たちの思惑は掴めない。

「果然在尾張與美濃影響範圍外的市場,正有縮小的傾向嗎……」

「やはり尾張と美濃の影響範囲外の市場は、縮小傾向にありますか……」

「是的。三河雖然採取較為節省的消費,但以東的市場連物流量都在減少,處於緊縮狀態」

「はい。三河は節約気味で済みますが、以東の市場は物流自体が減り、緊縮状態にあります」

靜子命昌幸調查位於東國的各地市場。結果顯示,各國的市場規模正在逐步縮小。

静子は昌幸に東国に位置する各市場の調査を命じていた。その結果として、各国の市場規模が徐々に縮小していっていることが判明した。

這意味著兩件事。其一,長期戰事造成壯年男子喪失,物資生產力及購買力本身都下降了。

これが意味するところは二つ。一つは長く続いたいくさによって、働き盛りの男手が失われ、物資の生産力及び購買能力自体が落ちたこと。

另一點是,各國的經濟狀況惡化,可流向市場的金錢逐漸枯竭。雖可解釋為戰時統制下的緊縮財政,以備下一場戰爭,但昌幸的調查顯示軍需物資的流通本身也在減少,顯見真實上並無餘裕。

もう一つは、各国ともに経済状況が悪化し、市場へ回せる金が枯渇しつつあるということだ。これは戦時統制による緊縮財政をとりつつ、次なるいくさの準備をしているとも考えられるが、昌幸の調査によると軍需物資の流通自体が減っているため、本当に余裕がないのだということが窺えた。

若市場中的金流消失,商業便無法成立,市集根本不會形成。既然市集不再有人潮,精於利益的商人也不會冒著危險特意前來。

市場から金が失われれば、商売は成立しなくなり、そもそも市が立たなくなる。市が立たないのであれば、利に敏(さと)い商人たちがわざわざ危険を冒してまで足を伸ばす筈がない。

如同沈船上老鼠爭先逃竄般,大家紛紛撤退,之後便不再靠近。

沈みゆく船から鼠が逃げ出すように、先を争うように撤退し、以降は寄り付かなくなってしまっていた。

「請繼續委託真田殿做調查。下一步要更深入,調查民眾的生活到底如何」

「真田殿には引き続き調査をお願いします。次はもう一歩踏み込んで、民草の生活がどのようになっているか調べて下さい」

「哈哈」

「ははっ」

「還有,執行任務的間諜要讓他們充分休息。若疲勞未消致判斷力下降,露出破綻被追查到就麻煩了」

「それから任務にあたった間者には、十分な休息をとらせるようにしてください。疲労を残して判断力が落ち、ボロを出して足がついても困ります」

「是。遵命」

「はっ。仰せのままに」

完成報告並接受下一項任務後,昌幸自會客室退下。彷彿替換般,足滿現身會客室。靜子對於如此湊巧的時機感到驚訝,但便應了下來。

報告を終え、次なる任務を受けた昌幸は応接間から退出する。そして入れ替わるかのように、足満が応接間へ姿を見せた。狙いすましたかのようなタイミングに静子は驚くが、そのまま応じることにした。

「首先辛苦了。那麼,有抓到什麼線索嗎?」

「まずはご苦労様でした。それで、何か手がかりは掴めましたか?」

「本願寺有動靜。顯如尚未決定方針,以下間(しもつま)頼廉為首的投降派與教如主導的抗戰派正互相對立。而在軍議之中,聽說頼廉說了件有趣的事」

「本願寺に動きがあった。顕如は未だ方針を決定してはおらぬが、下間(しもつま)頼廉を筆頭とする降伏派と、教如が主導する抗戦派が対立をしている。そして軍議の場で、頼廉が面白い話をしたそうだ」

「什麼有趣的事?」

「面白い話とは?」

靜子歪著頭向足滿反問。足滿微微一笑回答道。

静子は首を傾げて足満に問い返す。足満は小さく笑みを浮かべて応えた。

「靜子,他想和妳會見,並藉此決定今後方針」

「静子、お前と会見して今後の方針を決定するようだ」

「喔——? 欸? 什麼!?

「ふーん……え? はい!?」

靜子差點置之不理,慌忙上前靠近足滿,壓低聲音耳語。

静子は一瞬聞き流しそうなり、慌てて足満に近寄ると、声を落として耳打ちする。

「我被禁絕從事外交,本來就無法自行決定要不要見面。更何況我已遠離政治,他們見我能做什麼?」

「私は外交を禁じられているから、そもそも会う会わないの判断ができないよ。第一、政治から遠ざかっている私に会ってどうしようっていうの?」

「這個嘛。我不知他心中所想,但他或許認為和你會面能獲得某種利益。也有可能單純把與靜子會見這件事本身當作目的」

「さてな。奴ならぬわしには判らぬが、奴には貴様と会うことによって得るものがあると踏んだのやもしれぬ。もしくは静子と会うということ自体が目的であるという見方もある」

「啊啊!他想把與我會談這件事當作政治籌碼利用,真是礙眼啊……」

「ああ! 私と会談をすること自体を政治的駆け引きに利用するつもりか、迷惑な話だなあ……」

聽了足滿的話,靜子一時凝視半空思索,隨後理解對方的企圖而嘆息。即便不知對方內情,只要掌握其立場與目標,對方的盤算便自會顯露。

足満の言葉を受け、しばし宙を睨んだまま考え込んでいた静子だが、相手の狙いを理解して嘆息した。相手の内情はわからずとも、相手の立場と目指すところが判れば、その思惑は自ずと透けて見える。

「也就是說,頼廉寧可早早投降保全性命,也不願繼續無望的戰爭吧」

「つまり頼廉は、勝ち目のないいくさを継続するよりも、早期に降伏して生き残りを図っているんだね」

頼廉大概絕不會想到自己內心被看透,但絕不可小看身為女性的靜子。

頼廉は己の胸の裡(うち)を読まれているなどとは夢にも思わないだろうが、静子を女だと侮ってはならない。

靜子在現代可被歸類為歷女(喜愛歷史的女性)。正如「歷史會重演」這句話所言,從長期視角俯瞰歷史,類似事件屢屢重複可見端倪。

静子は現代に於いて歴女(歴史好きの女性)に分類される。『歴史は繰り返す』という言葉があるように、長期的視点で歴史を俯瞰(ふかん)すると度々似たような出来事が繰り返されているのが判る。

她不僅熟知日本史,對世界歷史也有系統性的知識。從類似案例推測對方意圖,對她來說是輕而易舉之事。

日本はおろか、世界の歴史についても体系化した知識として身に着けているのだ。類似の事例から相手の狙いを推測するなど容易いことであった。

靜子的判斷是,頼廉的目標在於議和。他已不再視織田為單純的敵對者,主要在於瓦解本願寺內部的抗戰派。

静子の読みでは、頼廉の狙いは講和にある。彼は既に織田を敵対者とみておらず、本願寺内部の抗戦派を切り崩すことを主眼に置いているだろう。

因此無論與靜子會談是否成功,頼廉應會為促成講和而行動。對教如等抗戰派而言,在不利情況下接受講和難以接受,但頼廉判斷情勢不會再好轉。

ゆえに頼廉は静子との会談が成功しようがしまいが、講和への道筋をつけるべく行動すると思われる。教如をはじめとする抗戦派にとって不利な状況での講和は受け入れがたいが、頼廉はこれ以上状況が改善することはないと判断していた。

即便是織田家,也無法徹底根絕如本願寺般龐大的宗教組織。信仰是個人內心之事,縱然信長也不得逾越的領域。

如何に織田家とて、本願寺程の巨大宗教組織を完全に根絶やしにする事など出来はしない。信心は個々人の内心の問題であるため、如何に信長とて踏み込むことの出来ない領分だ。

故與宗教組織的對立會長期存在,反過來也能在講和上取得條件。本願寺方面若能整合信徒並達成武裝解除,將是最和平且理想的終戰方式。

故に宗教組織との対立は長く続く、そしてそれ故に講和に条件を取り付けることも可能となる。本願寺側が信徒を纏めつつ、武装解除に至るのが最も穏便かつ、理想的な終戦方法となるからだ。

在此處便見頼廉的生路。即使與教如等抗戰派對立、宗派分裂爭鬥,即便只有其中一方能存活,亦是可選之路。

ここにこそ頼廉の活路が存在した。たとえ教如達抗戦派と対立し、宗派を二つに割って相争うことになったとしても、どちらか片方だけでも生き残る道を選ぶ。

那將是一條被昔日同胞罵作叛徒、即使達成講和也無人稱讚的血淚之路。頼廉已做好覺悟,準備與靜子進行會談。

それはかつての同胞から裏切り者と罵られ、仮に講和が出来たとしても誰からも褒められない修羅の道であった。頼廉はそれらを覚悟した上で、静子との会談に挑もうとしていた。

「我若不與頼廉會面,戰事將拖長;若會面,便會捲入政治鬥爭。若會前頼廉出了什麼事,我們反而得為了避免被追究而保護他,防止內部爭鬥的兇刃……」

「私が頼廉に会わなければいくさが長引き、会えば政治の駆け引きに巻き込まれる。会談前に頼廉の身に何かあれば、我々が痛くもない腹を探られるため、内部抗争の凶刃から頼廉を守らなければならないか……」

他果然出招讓人厭惡。不管怎麼算,頼廉本身並無可失去之物,但若贏了這場賭注,便能換取相當或超出代價的成果。

全く以て嫌らしい策を講じてくれる。どう転んでも頼廉は自らの命以上に失うものはないが、賭けに勝てば相応以上の成果を引き出せてしまう。

「就算是我,也實在感到不愉快。被本願寺利用令人作嘔,必須讓他們選擇第三種選項才行」

「いくら私でも、流石に不愉快だね。本願寺に利用されるのも癪に障るし、ここは第三の選択肢を選ばせる必要があるね」

靜子笑著說話,足滿點頭,彷彿在說交給我吧。

静子が笑いながら語ると、足満は任せろと言わんばかりに頷いた。

日子已入二月。信長搬往安土已近一月,表面上一切平靜。本願寺似乎也在觀望頼廉的動向,經由朝廷向靜子打診會面,現正等候信長的裁斷。

暦は二月に入った。信長が安土へと居を移して一月が経とうとしていたが、表面上は何事もなく過ぎていった。本願寺も頼廉の行動を見守るつもりなのか、朝廷経由で静子との会談の打診が届き、信長の判断を待つ状態となった。

信長本人則一邊調整諸方勢力關係以避免形成第三次織田包圍網,一邊積極整備他的大本營安土。

信長自身は第三次織田包囲網が形成されないよう、方々の力関係を調整しながらお膝元である安土の整備に力を入れていた。

二月下旬,信長被朝廷賜予正三位的位階與右近衛大將的職務。

二月下旬になると、信長は朝廷より正三位(しょうさんみ)の位と、右近衛(うこんのえの)大将(だいしょう)の職を賜った。

朝廷中傳言說信長不久將被叙為従二位,並兼任內大臣。

信長は遠からず従二位に叙せられ、内大臣を兼務することになるだろうと朝廷内でまことしやかに噂されていた。

與此同時,仁比売被叙為従三位,靜子也因勤勉而獲授従三位。

時を同じくして仁比売(ニヒメ)が従三位(じゅさんみ)に叙せられ、静子も精勤が評価され従三位を賜ることになった。

仁比売同時被任為權中納言,靜子則未被授予官職。

仁比売には併せて権中納言に任ぜられたが、静子には官職が与えられなかった。

「朝廷是不是在兩邊秤著,想從雙方擷取利益呢?」

「朝廷が両天秤に掛けて、双方から利益を引き出そうとしているのかな?」

靜子凝視著信長送來的朱印狀,低聲自語。

静子は信長から送られてきた朱印状を眺めて呟いた。

仁比売仍未在公眾場合露面,但據說在信長的安排下,與帝的書信往來仍在斷斷續續地進行中。

未だ公の場に姿を見せない仁比売だが、信長の手により折に触れては帝との文のやり取りが続けられているとのことだった。

靜子擔心那些來往終有露餡的一天。

そろそろそのような人物はいないと露見するのではないかと、静子は危ぶんでいた。

(嘛,要是快被發現,大概就說她病死,盛大火葬一番來掩飾過去吧……)

(まあ露見しそうになったら病死したことにして、盛大に荼毘に付して誤魔化すんだろうな……)

原本設為體弱、不能外出的仁比売,即便突然逝世也不會讓人覺得奇怪。

元々病弱で、外にも出られぬ設定の仁比売である、急逝したとしても不思議に思われることは無い。

若監護人信長親自主持葬儀,誰也不敢提出異議。

後見人である信長が葬儀を執り行えば、これに異を唱えられるものなどいはしない。

「好啦好啦,該是開始做領主的事了。不只是尾張,還得照顧奇妙大人的美濃,真是麻煩。」

「さてさて、そろそろ領主のお仕事をしないとね。尾張だけじゃなく、奇妙様の美濃の面倒も見ないといけないから大変だ」

接替自信長承接美濃的信忠命令靜子處理美濃的仕置(作為領主的治理全般)。這對信忠的直臣們來說如晴天霹靂,紛紛勸諫信忠撤回命令。

信長から美濃を引き継いだ信忠は、静子に美濃の仕置き(領主としての統治全般)を命じた。信忠の直臣達にとっても寝耳に水の出来事だったようであり、揃って信忠に命を覆すよう諫言した。

然而,信忠不接受他們的諫言,反而向眾人闡明自己的想法。

しかし、信忠は彼らの諫言を聞き入れず、彼らに向かって語ってみせた。

「你們似乎有些誤會,我並沒命靜子成為美濃的國主。我過去鮮少親理實務,對美濃事務並不熟悉。再加上由父上繼承下來現場恐怕混亂,因此向那些熟悉既有做法者請求協助是理所當然。你們的話我也能理解,但若沒有靜子便要自理美濃或尾張,那不過是白日夢。如果有人能提出比靜子更能讓領地繁榮的計策,就拿出來說明吧。」

「何か勘違いをしているようだが、わしは静子に美濃の国主となれと命じた訳ではない。わしは今まで実務に携わってこなかったゆえ、美濃の事情に通じておらぬ。それでなくとも父上からの引継ぎで現場は混乱しておろう、ならばこそ従来のやり方を心得ているものに助力を請うのは当然のこと。皆の言い分も判るが、静子抜きで美濃や尾張を回すことなど夢物語に過ぎぬ。先達のやり方を間近で学べる機会をふいにしてまで、静子以上に自領を繁栄させ得る手立てがあるなら申して見よ」

強調靜子僅是領路的嚮導,最終判斷仍由信忠決定;視情況也可能讓她隨行出席外交場合,但僅以信長或信忠的名代身份出面。

あくまで静子は水先案内人であり、最終的な判断は全て信忠が行う。場合によっては外交の場にも同行させることもあり得るが、それはあくまでも信長や信忠の名代とすると言い切った。

既被主君如此要求,家臣也只能遵從。靜子本性無關野心,亦毫無擅自行動的打算,這點不言自明。

主君にこうまで言われては、家臣としては従う他なかった。静子自身としても野心とは無縁の性格であり、勝手に動くつもりなどサラサラないのは言うまでもない。

「無法拖延的大事大概是愛知用水和木曽三川的整治吧?」

「滞らせることが出来ない大事業は愛知用水(あいちようすい)と木曽三川の整備かな?」

愛知用水是灌溉與上下水道用,潤澤知多半島全域,其用途不只限於農業,對工業與商業也有廣泛預期。工程已施行數年,卻仍像遙不可及的夢想。

愛知用水は知多半島全土を潤す上下水道用の用水だ。その用途は農業だけに限らず、工業や商業まで幅広く見積もられている。事業に着手して既に数年が経過したが、まだまだ見果てぬ夢と言った状態だった。

即便如此,這是天下人推動的大型公共工程,若可望帶來龐大利益,資金雄厚的有力者便紛紛投入此事。

それでも天下人の行う一大公共事業であり、今後の莫大な利益が見込めるとあれば、資金力のある有力者は挙(こぞ)ってこの事業に投資した。

工程本身的基礎技術已被證明,之後只需大量人力,因此被視為可望帶來穩定利益的事業。

工事自体の基礎的な技術は実証されており、後は単純に労力を必要とするだけであるため、安定した利益が見込める事業となっていた。

問題在於木曽三川的整治。木曽川、長良川與揖斐川三川在下游錯綜交織,河床相較流量過淺,常引發水害。

問題となっているのは木曽三川の整備であった。木曽川と長良川、そして揖斐川(いびがわ)の三川は下流部で複雑に絡み合っており、流量に対して川底が浅いため度々水害を起こしていた。

即便在上游或中游設置貯水池,若不採取根本性對策,水害仍難以根除。

上流部や中流域に貯水池を設けようとも、抜本的な解決を図らない限り、水害の根絶は叶わない。

「嗯,整個流域大致落入織田家支配之下這點倒是值得肯定。」

「まあ、流域全土が織田家の支配下に収まっているのは評価できるかな」

史實上因治水技術未臻成熟,加上各地領主利害對立、為水利爭端相互爭執,致使治水策略進展緩慢。

史実では治水技術の未熟さからくる工事自体の難易度に加え、各地域を治める領主の利害が対立し、水利を巡って争ったため治水対策は遅々として進まなかった。

但如今美濃、尾張、伊勢三國佔據流域大部分,利害一致,在信長這位領袖的號令下一致著手治水對策。

しかし、今や美濃、尾張、伊勢と流域の大部分を占める三国の利害が一致しており、信長というカリスマの号令一下、皆が一丸となって治水対策に取り組んでいた。

對美濃與尾張而言,優點是能確保穩定的事業用水並減輕洪災損害;而伊勢所能獲得的最大利益,則是與商工重鎮尾張之間開通陸路。

美濃や尾張の利点としては、安定した事業用水が確保できること、洪水による被害を軽減できることが挙げられる。残す伊勢が受ける利益としては、商工業の中心地である尾張との陸路が開通することが大きかった。

僅就這一點而言,北伊勢已有足夠理由推動針對木曽三川的治水工程。現況下下流域難以渡河,雖在直線距離上接近尾張,卻無法享受其利。

この一点に於いてだけでも、北伊勢が木曽三川に対する治水工事を推進するには十分であった。現状では木曽三川の下流域を渡河するのは難しく、直線距離では尾張に近いというのにその恩恵に与(あずか)れないでいた。

事實上,信長在進攻伊勢時也並未走最短路,而是先出到美濃繞道再赴伊勢。

実際に信長も伊勢侵攻の際に、最短距離を取らずに一度美濃へ出て大回りして伊勢へ向かうルートを選択している。

海路雖可與尾張通商,但若無法開通陸路,便難以成為交通要衝。為了不被起於尾張的繁榮浪潮所拋下,務必從尾張直通伊勢的幹線必須打通。

海路を使えば尾張とも交易出来るとは言え、陸路が使えないようでは交通の要衝とはなり得ない。尾張に端を発した隆盛の波に取り残されないためには、是が非でも尾張から伊勢への大動脈を通す必要があった。

「大家都朝著目標努力,結果卻被兄弟間的爭執給牽連,真是倒楣啊……」

「皆が目的に向かって邁進しているって言うのに、兄弟喧嘩に巻き込まれて災難だったよ……」

靜子不知不覺間被捲入了信長直系兄弟的糾紛中。

静子は図らずとも信長の直系兄弟の確執に巻き込まれることとなった。