戦国小町苦労譚
一五七四年 九月下旬
「咯咯咯,號稱當代第一的曜變天目,全都落入我手中了」
「くっくっく。当代随一と名高い曜変天目が、全て我が手中に収まった」
信長高興地喃喃自語。曜變天目茶碗以鐵質黑釉燒成、呈現獨特的天目形,是天目茶碗中被視為最高峰的。
信長は上機嫌で呟いた。曜変天目茶碗は、鉄質黒釉を用いて特徴的な天目形に焼き上げられた天目茶碗の中でも最高峰のものとされる。
在南宋時期的一段時間裡,建窯只燒製了極少數的曜變天目茶碗。作者不詳,後也不再燒製,窯址所在的中國只剩陶片。
南宋時代の一時期に、建窯でごく少数だけ焼かれたという曜変天目茶碗。作者も不明であり、二度と焼かれることもなく、窯元である中国には陶片しか残されていない。
完整保存下來的器物全都只存在於隔海的日本,諸多疑點縈繞不去,但器內彷彿可見星空的雄偉造形,讓當時的權貴為之瘋狂。
完全な形を保っている物は、全て海を隔てた日本にしか存在しないなど、色々と不可解な点を持つが、器の中に星空を見出す雄大な造形は、当時の権力者を夢中にさせた。
即使對茶器不感興趣的靜子,也被那依角度而變的神秘光澤所吸引。
茶器に興味を持たない静子ですら、見る角度によって色合いが変わる神秘的な輝きに魅せられた。
「正如『君台観左右帳記』的記載一樣呢」
「君台観左右(くんだいかんそう)帳記(ちょうき)の記述通りですね」
足利將軍家蒐集的寶物台帳『君台観左右帳記』中,對各件寶物分門別類,甚至記載其形貌、來歷以及實際交易時的價格。
足利将軍家が蒐集した宝物の台帳である「君台観左右帳記」には、それぞれの宝物が格付けされ、その姿形や来歴から実際に取引された際の価格に至るまでが記載されていた。
為了在蒐集曜變天目茶碗時不買到贗品,靜子將『君台観左右帳記』的內容牢記於心,面對實物時更感受到記述之精確。
曜変天目茶碗を集めるに当たり、偽物を掴まされないためにも君台観左右帳記の内容を頭に叩き込んだ静子は、現物を前にして記述が的確であったことを実感していた。
「嗯……津田(堺的豪商,指津田宗及)的那只曜變比起其他來說樸素些,但仍放射出其他茶器無法及的光輝」
「ふむ……津田(堺の豪商、津田宗及のこと)の曜変は他と比べて地味だな。それでも他の茶器にはない輝きを放っておる」
「不過,貪婪的商人竟然放手賣掉。雖然我對茶器不熟,但光是擁有曜變就能作為財力與權勢的保證,商人們都會垂涎三尺,渴望得到的逸品吧」
「しかし、強欲な商人が良く手放しましたね。茶器には詳しくないですが、曜変を所有しているというだけで、その財力や権勢を担保してくれる、商人なら誰もが喉から手が出るほど欲しい逸品だとか」
「那份財力與權勢也是要靠命換來的。果然是名聞遐邇的豪商,懂得看清時局不會錯判時流」
「その財や権勢も命あっての物種よ。流石は名うての豪商よな、時流を読み違(たが)わぬ」
信長故作大言,暗示是以威脅奪得;卻在口頭上反而稱讚對方,真是讓人無可奈何。
信長は暗に脅して奪ったと嘯(うそぶ)いてみせた。それでいて、口に出すときには相手を褒めて見せるのだから始末が悪い。
大概各處都會說津田為保護文物而自願出讓,稱讚他是有先見之明、胸襟深廣的人物吧。
恐らくは方々でも、津田が文物保護の為に進んで供出したと話し、先見の明がある懐の深い人物だと褒めそやしているのだろう。
即便被奪去作為財力擔保的名物,但只要得了被視為最接近天下人的信長的青睞,便能產生替代性的信用。
自分の財力を担保する名物を奪われたとは言え、天下人に最も近いと目される信長の覚えが目出度いとなれば、それが代わりの信用を生み出してくれる。
信長準確理解自身地位,並巧妙利用以周旋,作為政治家也展現出一流才幹,真不愧是信長。
自分の立場を正確に理解し、それを利用して器用に立ち回る、政治家としても一流の才覚を見せる信長は流石としか言いようがなかった。
更甚者,這些並非信長為私利私欲而蒐集,而是以朝廷委託的文物保護名義,並由靜子代為保管的形式呈現。
更に言えば、これらは信長が私利私欲の為に集めている訳ではない。朝廷から任された文物保護の名目を掲げ、静子が預かっているという形をとっている。
雖然看似空手形,但並非完全不可能歸還,因此只能抱持一線希望而保持沉默。
空手形とは言え、いずれ返却される可能性もない訳ではないため、一縷(いちる)の望みを抱きつつ沈黙を保つ他なかった。
已經有散落各處的藝術品與大量書籍匯集到靜子手中,她甚至著手將其彙整,編纂國文學與國史。
既に静子の許には散逸した芸術品や、数多くの書物が集まってきており、それらを集約して国文学や国史の編纂すらも手掛けていた。
作為搶奪名物的名目,已經太過知名,似乎沒有人會當面提出反對。
名物を強奪するための名目としては、有名になり過ぎており、面と向かって否を突き付けられる者など居はしないと思われた。
「……明白了」
「……察しました」
「喔?連你也到了學習腹藝初步的時候了嗎」
「ほう? 貴様にも『腹芸のいろは』を手ほどきする時が来たか」
「這是多年來隱匿真意、執行上樣命令所積累的結果」
「真意を隠して伝えられる、上様のご命令を何年も遂行してきた賜物です」
「哈哈哈,你也會這麼說了。那也是因為我信賴靜子會看穿其中的弦外之音」
「はっはっは、貴様も言うようになったな。それも静子ならば裏を察してくれると恃(たの)んでのことよ」
信長爽朗地大笑。口中說著高尚之語,但那不想改變舊有做法的心思顯而易見。
からからと信長が笑う。口では殊勝な事を言ってみせるが、従来のやり方を変えるつもりがないというのがありありと窺えた。
信長則在一旁比對並把並列的曜變天目茶碗一一把玩,始終心情愉快。
当の信長は、並んだ曜変天目茶碗を見比べ、手に取って掌(たなごころ)で遊ばせるなど、終始上機嫌であった。
「嗯,已盡情欣賞。但有價值的東西若不示於世,便毫無意義」
「ふむ、存分に堪能したわ。だが、価値のある物は、世に出なければ意味がない」
「上樣打算將曜變天目茶碗用於政治目的嗎?」
「上様は、曜変天目茶碗を政治に用いられるおつもりですか?」
靜子察覺信長話中的含意,提出質問。滿意於靜子的機智回應,信長撐開扇子為自己搧風。
信長の言葉が意味するところを察し、静子が問いを投げ掛ける。当意即妙の対応を見せる静子を満足気に見やると、信長は扇子を広げて自身を扇いでみせた。
「我並非如此說。若把所有曜變天目茶碗集中於一處,遇大火或盜竊或許會全數遺失。若交給可信賴的手下分散管理,反而更為安全,不是嗎?」
「そうは言っておらぬ。しかし、一所(ひとところ)に全ての曜変天目茶碗が揃っておれば、大火や盗難で全てが遺失してしまうやもしれぬ。信用の出来る配下に、分散して管理させればより安全となろう、違うか?」
「我明白了,是打算讓我做目錄,然後以實物已分散各地保存為由行賜予之事吧」
「私が目録を作り、現物は各地で分散して保管しているという体で、下賜されるおつもりだという事は理解しました」
「太會看穿也無趣呢」
「察しが良すぎるのも詰まらんな」
「承蒙讚賞,十分榮幸。我了解上樣的方針是有價值的東西要使用,閒置無用,但若立刻如此行事恐怕名聲不佳」
「お褒めに与(あずか)り恐悦です。価値あるものは使ってこそ、死蔵しては意味がないという上様の方針は判りましたが、流石に即座にというのは外聞が悪いかと」
「我不是要馬上行事。東國征伐成功之時,需給予相應的賞賜。直到那時由你管理,並用你執著的「写真」去製作超越「君台観左右帳記」的資料給我看」
「今すぐにとは言わぬ。東国征伐が成った暁には、それ相応の褒美が必要となろう。それまでは貴様が管理し、貴様が執心しておる『写真』とやらで『君台観左右帳記』を超える資料を作ってみせよ」
信長不僅看重實物,還洞悉了能如實記錄其形貌之「写真」的效用及利用價值。
信長は現物だけに留まらず、それらの姿をありのままに記録するという写真の有用性や、その利用価値をも正確に見抜いていた。
他並非厭惡這項耗資巨大的攝影技術,而是鼓勵更進一步推動,縱然開發艱難且需如流水般耗費昂貴試劑。
開発が難航しており、高価な様々な試薬を湯水のように使う写真という金食い虫を厭(いと)うのではなく、より推し進めよと背中を押した。
「哈,定必回應您的期待,讓您看到成果」
「はっ、必ずやご期待にお応えしてお見せ致します」
「不必過於勉強。縱使是複製,能掌握當代第一的美術品,願意不吝金錢的收藏家並不少」
「そう気負わずとも良い。写しとは言え、当代随一の美術品を手中に出来るとあらば、金に糸目を付けぬ好事家は少なくない」
信長豪爽地笑了笑靜子的決心,接著呼來小姓整理這些曜變天目茶碗。
静子の覚悟を信長は豪快に笑い飛ばした。続いて小姓を呼び寄せると、曜変天目茶碗を片付けさせる。
「近來事事順利,不,過於順利了」
「近頃は物事が上手く進む、否、進み過ぎておる」
信長換成毫無特色的茶杯,啜著綠茶喃喃自語。雖有些計畫上的偏差,但大體上他的計劃順利推進。
曜変天目茶碗に変わって、何の変哲もない湯呑で緑茶を楽しみつつ信長が呟いた。多少の目論見違いはあれど、大筋では信長の計画は順調に推移していた。
對加賀一向宗的領地也在穩步割取,預計到積雪的冬季前能奪取整體約三分之二。誠然若要維持而言,三分之二是太多,但在對方尚未恢復之前,盡可能多割是常理。
加賀一向宗の領土についても着実に切り取っており、雪の積もる冬までには全体の三分の二ほどを奪える計算だった。尤も維持を考えるなら、三分の二という数字は多すぎるのだが、相手が立ち直る前に可能な限り切り取るのは定石であった。
「之前也說過了,近來本據要遷到安土。以新年臨時御殿落成為期,屆時遷入。你就代管尾張,向尾張以東施以威嚇。」
「以前にも伝えたが、近く本拠を安土へと移す。新年の仮御殿落成を以て、移り住む予定じゃ。貴様には尾張を任せる、尾張以東へ睨みをきかせよ」
「若奇妙大人能征討東國,根本不就沒有需要盯著的對手了嗎?」
「奇妙様が東国征伐を成されれば、そもそも睨む相手が居なくなりませんか?」
「目光所及之外,便有叛意萌生。歷來不肖之徒從未絕絕,你要在他們長大之前將其剷除。」
「目が届かぬところに叛意の萌芽あり。いつの世にも不心得者は絶えぬもの、大きくなる前に貴様が刈り取るのだ」
「遵命。」
「承りました」
「若首要之本願寺被摧毀,寺社便會成為烏合之衆。本來武裝的名義是為對抗統治者的暴行。既然統治者不以武力,而以人人應守之法來束縛,彼等便失去武裝的正當性。正因有武力,才會起爭端;非武裝者之間勝負難以預測,自然也難以冒進行動。」
「首魁たる本願寺が潰えれば、寺社どもは烏合の衆となろう。元来、統治者の無法に対抗するというのが、武装の建前だったのだ。統治者が武力ではなく、万人が守るべき法で縛る以上、奴らが武装する正当性はなくなる。武力を持つから争いをしたくなるのだ、非武装同士では勝負が読めぬゆえ、下手な動きも出来なくなろう」
像在陳述已確定的未來般淡然說完,信長以茶濕了喉嚨。歇了一口又續了話頭。
確定した未来を話すように淡々と言い終えると、信長は茶で喉を潤した。一息入れると言葉を続ける。
「剩下的便是朝廷中盤踞的那些殘存勢力。那些不以織田崛起為好、想保住既得權益的公家們暗中活動。不知是不是因此,最近常聽人說『織田終有一日會高處跌落』這樣的評語。大概是說我這驕傲自負之人,終有被掏空腳下的一天吧。」
「残るは朝廷に巣くう、うらなり共よ。織田の台頭を良しとせぬ公家共が、既得権益を奪われまいと暗躍しておる。それが故かはわからぬが、近頃は『織田はいずれ、高転びに転ぶ』という評を耳にする。驕り高ぶったわしが、足元を掬われると言いたいのであろう」
所謂『高転びに転ぶ』這句話,是被認為出自曾任毛利家外交的僧侶安國寺惠瓊,寫給山縣越前守井上春忠的書信中著名的一句話(亦有人稱之為預言)。
この『高転びに転ぶ』という言は、毛利家の外交役を務めた僧侶、安国寺恵瓊(えけい)が山県越前守井上春忠に宛てたとされる書内の有名な言葉(予言とも言われている)である。
不顧他人情感、以苛烈的政事行事的信長,是取不到天下的。他預見信長的天下終將早逝,秀吉的時代將會到來。
他者の心情を顧みず、苛烈な政(まつりごと)を為す信長では天下は取れない。早晩に信長の天下は終わり、秀吉の世が来ると予見していたという。
無論惠瓊心懷何種算計,史實上信長確實遭遇光秀的叛變,在本能寺橫死。正如他所預見,秀吉繼承其後成為天下人,惠瓊也迅速投合,為毛利家贏得安穩的成果。
恵瓊の思惑がどうであれ、史実にて信長は光秀の裏切りに合い、本能寺で横死している。彼が予見した通り、秀吉がその跡を継いで天下人となり、恵瓊は素早く取り入って毛利家の安泰を勝ち取るという成果を上げた。
本應秘而不宣的惠瓊之言會在朝廷內流傳,理所當然應當認為是對信長不滿的勢力所為之工作。
本来ならば秘されるべき恵瓊の言葉が、朝廷内で流布(るふ)されている状況というのは、信長を良く思わない勢力が工作していると考えるのが自然だ。
「是啊。上樣過度追求合理性,有輕忽人心的傾向。想法也過於尖銳,難以培養與他人的共感;又言語不多,難以讓人看透其胸中所思,還常常任性。」
「そうですね。上様は合理性を求める余り、心情を軽視するきらいがあります。他にも考え方が先鋭的過ぎて、他者との共感を育み辛いのに、言葉足らずから己の胸の裡(うち)を明らかにされませんし、あと我儘が多い気がします」
「當面對本人,你竟敢這麼說!」
「本人を前にして、よくぞ申したものよ!」
「然而,若論得為天下人之器,除了上樣之外適任者無二。能親自站在最前線推動變革,並有承擔其責任的國人,非上樣莫屬。只是,上樣的治世恐怕不會長久。上樣無論好壞都是變革者,而民衆渴望太平,厭惡變革。」
「されど、天下人の器と言えるのは上様を措いて適任者は居りませぬ。自らが先頭に立って変革を推し進め、またその責を負う覚悟を持つ国人など、上様以外には居られません。しかし、上様の治世は長くはないでしょう。上様は良くも悪くも変革者、民衆は泰平を望み、変革を嫌いますゆえ」
「哼,我的格局以日ノ本來說太窄。若世道太平,將奇妙託以後事,出海見世面也未嘗不可。」
「ふっ、わしの器には日ノ本は狭い。世が泰平とならば、奇妙に跡を託して、世界に出るのも一興」
「哎呀!」
「いたっ!」
信長笑著,輕輕戳了靜子的頭。雖說輕,但作為武人的一擊,靜子一時間視野暗了一下。
信長は笑いながら、静子の頭を軽く小突いた。軽くとは言え、武人の一撃に静子は一瞬視界が暗くなった。
「再者,我的任性還算可愛的罷了。」
「それに、わしの我儘など可愛いものよ」
「欸!? 但那個想吃、這個想要的那種突發性的……不,沒什麼。」
「え!? でもアレが食べたい、コレが欲しいって発作的に……いえ、何でもありません」
語得越多信長的視線越顯嚴峻,靜子的話便越發收斂變小。信長似乎也意識到自己說了許多無理之事,輕輕嘆了口氣。
語る程に険しくなる信長の視線を受け、静子の言葉は尻すぼみに小さくなった。信長も色々と無茶を言った自覚はあるようで、小さく息を吐いた。
「若不能貫徹己所欲,何為權力者。好了,差不多到午膳時了,準備飯菜。你應該知道,飯要用尾張的新米。味噌湯宜有豆腐與油揚。菜的話,上回吃了鴕鳥,這回就用尾張九斤黃(コーチン)為佳。飯後甜點要時令水果。」
「己が欲するところを通せずして、何が権力者か。さて、そろそろ昼餉時よな、飯の支度を整えよ。心得ているとは思うが、飯は尾張米の新米だ。味噌汁には豆腐と油揚げが望ましい。菜は、そうよな、先日はダチョウを食したゆえ、此度は尾張九斤黄(コーチン)が良かろう。食後の甘味は、季節の果物を所望する」
信長若是故意開脫,也提出了直截了當的任性要求。無自覺的任性很棘手,但若是態度轉為理直氣壯就更難收拾,靜子為自己的失言懊悔不已。
信長は開き直ったのか、清々しいまでに我儘な要求を出してきた。無自覚な我儘も厄介だが、開き直られると尚始末に負えないと、己の失言を悔いる静子であった。
九月下旬已至,尾張・美濃的年貢徵收告一段落。今年的收成在預測值範圍內,能確保不至於出現冬季餓死者的情況。
九月も下旬を迎え、尾張・美濃では年貢の徴収が一段落した。今年も予測数値から大きく外れない程度の収穫量を確保でき、冬を越せない餓死者が出る可能性は低い。
繳納了納稅義務後,民眾前往神社,感謝神明讓他們順利迎來收穫,並祈願來年豐收。
納税の義務を果たしたことで、民たちは神社に赴き、無事収穫を迎えられたことを神々に感謝し、来年の豊作を祈念する。
尾張・美濃除稻作外其他產業也興盛,因此也會舉行慰靈祭來供養在屠宰等過程中失去性命的動物。不僅家畜與家禽,養蠶養蜂所犧牲的昆蟲或魚貝類也一併被祭祀。
尾張・美濃では稲作以外の産業も盛んであるため、屠畜などで命を奪った動物たちを供養する慰霊祭も営まれる。家畜や家禽は言うに及ばず、養蚕や養蜂による昆虫や、魚介類などについても一緒に祀る。
即便在現今,農業學校等處也存在供奉實習中犧牲動物的供養塔,並每年舉行慰靈祭。
現代に於いても、農業学校などでは実習で犠牲となる動物たちを祀る供養塔が存在し、毎年慰霊祭が行われている。
「今年也很順利。病害與蟲害在擴大前就處理了,損失還在可容忍範圍內。」
「今年も順調だね。病害や虫害は、拡大前に対処してるから、損害は許容範囲内に収まってる」
靜子將由往年收穫實績推算出的預測值與彩達剛彙整好的稅收實績對照,簡單計算了預實差異的精準度。
例年の収穫実績から弾き出した予測数値と、彩達が纏め上げたばかりの税収の実績とを見比べ、静子は予実の精度を軽く計算する。
雖有些許偏差,但尚未發生需要採取何種應變措施的程度;然而若只是堆放在靜子的倉內,收穫物不會產生商品價值。
多少のずれは発生するものの、何らかの対処が必要となる程の誤差は発生していない。しかし、静子の蔵に収まっているだけでは、収穫物に商品価値が発生しない。
當然,這類事非庶民所需操心,身為治政者的靜子才該去處理。按石高只算稻米為五萬石,但若將各式產品整合計算,收益可逼近百萬石。
無論、そのようなことは民が考える事ではなく、曲がりなりにも為政者たる静子が為すべき仕事である。石高上では五万石となっているが、それは米に限った話であり、多種多様な産物を統合すれば百万石にも迫ろうかという収益となっていた。
自港街整備以來,尾張成為東國經濟的門戶,除收穫期外亦能穩定帶來稅收,這點相當重要。
港街の整備以来、東国経済の玄関口となっている尾張では、収穫期以外にも常に税収があるというのが大きい。
「該如何處理尾張米呢?」
「尾張米をどう扱ったものかな?」
靜子在手中帳冊的一處以筆劃下底線,嘆了口氣。說到尾張米,它以供奉朝廷之御用米聞名,堪稱天下一品的美譽。
手にした帳面上の一ヶ所に、筆で下線を引きながら静子はため息を吐いた。尾張米と言えば、帝の御用米として名を馳せ、天下一品の誉れ高い米となっている。
能吃到尾張米本身就是一種身分象徵,作為贈禮與慶典席上不可或缺。可是,如其名所示僅能在尾張栽培,流通量有限因此生出稀有價值。
口に出来ること自体がステータスシンボルであり、贈答用や祝い事の席には欠かせぬものとなっていた。しかし、名前の通り尾張でしか栽培されず、流通量が限られていることが希少価値を産んでいた。
對庶民而言即便一碗也是會瞠目結舌的價格,然而靜子的倉中卻堆得如山。今歲產量偏多是一因,最大原因是播種面積增加所致。
庶民からすれば一膳ですら目を剥くような値段となる尾張米が、静子の蔵には山と保管されていた。今年の収量が多かったのも一因だが、最大の原因は作付け量を増やしたことにある。
依信長方針,尾張米原本僅限以靜子村為中心的極小範圍生產。然而尾張米的需求遠超出信長的預期。
信長の方針により、尾張米は静子の村を中心とした、ごく限られた範囲でしか生産されていなかった。しかし、尾張米の需要は信長の予想をはるかに上回った。
結果是,尾張米不再純粹為食用而存在,作為具有投機價值的商品被商人囤積、抬價或閒置不售。
その結果、尾張米は食料としてではなく、投機的価値を持つ商品として商人たちが買い占め、値を釣り上げたり、死蔵されたりするようになった。
信長看不慣辛苦培育出的尾張名產被當成牟利工具,遂決定提高先前限制的供給量。
苦心して作り上げた尾張の名産品を金儲けの道具にされては業腹だと、信長は限定していた供給量を増やすことした。
然而經過改良的尾張米,相較於一般品種需要更多肥料,株高也低於傳統品種,因此在水位管理上需更加用心。
しかし、品種改良を施された尾張米は、通常の品種よりも多くの施肥を必要とし、従来の品種に比べて背丈が低いため、水位管理にも気を配る必要がある。
信長覺得這並非說要做就能馬上完成的事。於是命人種植大約為預估流通量兩倍的作物,並讓靜子的村民負責指導。
作れと言われて、すぐに作れるほど簡単なものではないと信長は考えた。そこで必要と見込まれる流通量の倍程度を作付けさせ、静子の村人たちに指導にあたらせた。
村民們出色地回應了信長的期望。本來估計只有一半的收成,結果一開蓋竟超過八成,出現尾張米供過於求的奇妙現象。
そして村人たちは信長の期待に見事応えてみせた。半分を見込んだ収穫量は、蓋を開ければ八割以上の収量となり、尾張米がダブつくという珍妙な現象が発生してしまった。
信長本意是想以投機商品打破其投機價值,但並不希望尾張米價格暴跌。原本打算以少量長期供應來維持市況的策略反而弄巧成拙。
信長としては投機的商品として価値を崩したいだけであり、尾張米の価格が暴落するという事態は望ましくない。少量ずつ長期的に供給し続ける量を確保する作戦が裏目に出た形となった。
對於多出的尾張米,信長便將全部處理交由靜子一手負責。雖說一任聽起來體面,但因為無法投放市面,使用途徑十分有限。
尾張米を持て余した信長は、余った尾張米の処理の一切を静子に一任した。一任したと言えば聞こえは良いが、市場に出すことが適わない品であるため、用途は限られる。
「……先把它們撒給家裡的人吧?親族內部消耗的分量應該不會影響市場價值。」
「……ひとまず家中にばら撒くかな? 身内で消費する分には、市場価値に影響するとは思えないしね」
經過一番考量,靜子決定以自己的家臣和織田家舊臣為主贈送尾張米。即便仍有剩餘,也可以加工成其他商品處理。
悩んだ末に、静子は自身の家臣や、織田家譜代の臣を中心に尾張米を贈ることに決めた。それでも尚、余るようであれば加工して別の商品とすれば良い。
平日對政治性贈答極為節制的靜子,若大張旗鼓散發尾張米,恐怕會被視為有野心。於是她以「豐收分贈」為名,向各處分送。
普段、政治的な贈答に関しては最低限で済ませている静子が、大々的に尾張米を振りまけば野心ありと見做されかねない。そこで、静子は『豊作のお裾分け』という体をとり、各所へと贈る方針を立てた。
「其實酒比較好用……但我覺得酒不會留下來。你們覺得如何?偷聽的酒鬼們」
「本当ならお酒の方が使い勝手は良いんだけど……残らない気がするなあ。どう思う? 聞き耳を立てている呑兵衛さんたち」
靜子沒從帳冊抬頭就開口詢問,襖後便探出幾張臉。慶次與才蔵面露尷尬,走入房間。
静子が帳面から視線を上げないまま声を掛ける、すると襖の影から数名が顔を覗かせた。慶次と才蔵がばつの悪い表情を浮かべつつ、部屋に入ってくる。
「奇怪,本該已經消掉氣息了……」
「おかしいな、気配は消したはずだったが……」
「因為我們每年都這麼周旋啊。別擔心,慶次你們要喝的份量早就備妥了。令人頭疼的是以我名義收到的酒該怎麼處理。」
「毎年同じやり取りをしているからだよ。心配しなくても慶次さん達が呑む分量は確保してあるよ。悩ましいのは、私の名義になっているお酒の処理だね」
身為釀酒事業總管的靜子,會以實物形式收到酒作為稅賦。酒粕或甘酒尚有用途,但成桶的清酒因禁酒令而無法在靜子處飲用,除非用於烹調,否則無從消費,因而她的藏庫常有數年熟成的清酒靜放。
酒造事業の元締めである静子には、税として酒の現物が納付される。酒粕や甘酒などは使いようもあるのだが、樽酒となると禁酒令もあって、静子では調理以外では一切消費することが出来ない。ゆえに静子の蔵には、数年の熟成を経た清酒が眠っていたりする。
「上樣不太喝酒,而且近衛大人已經分了不少,繼續下去恐怕會導致價值暴落。若送給其他人,又會被猜測政治上的用意……而且存放空間也快成問題了。」
「上様はそれほどお酒を召されないし、かと言って近衛様には既にかなりの量を回してるから、これ以上は価値の暴落を招いちゃう。他の人に贈ると、また政治的な意味を勘繰られるし……そろそろ置き場所も問題なんだよね」
一邊思量,靜子在桌上彈指。雖然會在慶祝席上分給大家,或送給忙碌的黑鍬眾,但減少的速度仍比不上增加的量。
思案しつつ、静子は机の上で指を弾ませる。祝いの席で皆に振る舞ったり、多忙を極める黒鍬衆へ差し入れたりもしているが、それでも減るよりも増える量が上回っていた。
尾張米與尾張的清酒,在上流階級間早已贏得作為時令進貢的珍貴地位。因為在京城稀有才有其意義,若大量從地方放出並不適宜。
尾張米や尾張の清酒と言えば、上流階級の間で折々の進物として重宝される程の地位を勝ち得ていた。京に於いて希少であることに意味があるため、地方とは言え大量に放出しては具合が悪い。
「沒必要想太複雜吧?靜子想怎麼做就怎麼做。若真有政治問題,保護者會出面處理的。」
「難しく考える必要はないんじゃないか? 静っちが『こうしたい』と思ったことをすれば良いのさ。政治的に問題があるようなら、保護者が出張ってくるさ」
「……嗯,目前最妥當的應該是送到加賀攻め的陣中。以陣中慰問的形式,消耗上不成問題。」
「……そうだねえ。今のところ無難なのは、加賀攻めの陣へ差し入れかな。陣中見舞いって形なら、消費するあてには困らないし」
「那就為柴田殿備一匹早馬吧」
「では、柴田殿へ早馬を仕立てましょう」
「啊,已經經由上樣打過招呼了。上樣對於消費沒意見,柴田大人也回了『承蒙關照,十分感激』,現在只剩調整規模。只是明智殿的陣地較為分離、孤立,運送時或需考量護衛人數。」
「あ、打診は上様経由でしてあるの。上様も消費する分には構わぬと仰っていたし、柴田様からも『お心遣い、痛み入る』って返事を頂いているから、後は規模の調整をしている段階。ただ、明智様だけ陣が離れて、孤立しておられるから、輸送する際に護衛の数を考える必要があるかなって思ってね」
「啊對了,說到加賀一向宗與柴田軍開戰時,越前那邊好像從背後發動奇襲?雖然初手獲得大勝,但之後因無法協調而有孤立之虞。」
「ああ、そう言えば加賀一向宗が柴田軍と戦端を開いた時に、越前側から背後を奇襲したんだっけ? 初手で大きな戦果を攫ったけれど、その後は連携が取れずに孤立気味って話だな」
靜子點頭贊同慶次的說法。起初光秀打算觀望,固守國境附近,等柴田軍與羽柴軍把加賀一向宗逼走再行動。
慶次の言葉に静子は首肯する。当初、光秀は柴田軍や羽柴軍が加賀一向宗を追い立てるまで、国境付近を固めて静観を決め込んでいた。
開戰後仍未見動向,加賀一向宗高層便認定明智軍是封鎖退路的部隊,將兵力集中於前線。趁其忽視後方之際,明智軍的伏兵突然發動急襲。
開戦後も動く気配のない様子を見た、加賀一向宗の首脳部は、明智軍は退路封鎖の部隊と断じて戦力を前線に集中させた。後方への注意が疎かになった機を逃さず、突如として明智軍の伏兵部隊が急襲を掛けた。
光秀的這番用兵並未告知柴田等人,作為一次徹底的奇襲發揮了效果,差點將二曲城攻至崩潰邊緣。
この光秀の用兵は、柴田達にも伝えておらず、完全な不意打ちとして機能し、あわや二曲(ふとげ)城を陥落寸前まで追い込んだ。
不過明智軍畢竟非本隊而是遊擊隊,人數不足;判斷無法攻下後,立即轉為破壞防禦設施,放火燒毀櫓與武器庫、堵使城門無法閉合,然後俐落撤退。
とは言え、明智軍も本隊ではなく、遊撃隊であるため数で劣る。攻め落とすのが無理だと判断すると、即座に防衛設備の破壊へと方針転換し、櫓や武器庫に火を掛け、城門を閉じられないよう工作すると、鮮やかに引き上げてみせた。
因為這一連串行動,柴田軍得以一口氣深入攻入,籠守二曲城的加賀一向宗只能仰賴堀與郭,陷入絕望性的堅守。
この一連の動きのお陰で、柴田軍は一気に深くまで攻め入り、二曲城に籠る加賀一向宗は、堀と廓を恃みに絶望的な籠城を強いられていた。
奇妙地,光秀的奇襲使加賀一向宗從主動出擊改為固守;柴田軍也避開深追,並試圖切斷與鳥越城的聯繫,局勢陷入膠著。
奇しくも光秀の奇襲により、加賀一向宗は打って出る方針から籠城へと舵を切った。柴田軍としても深追いを避け、鳥越(とりごえ)城との連携を断つよう動いており、膠着状態に陥っていた。
然而經過這番攻防,加賀一向宗的主力部隊大幅減員,光秀的戰功已不可否認。
しかし、この一連の攻防によって、加賀一向宗の主力部隊は大きく数を減らしており、光秀の戦功は誰もが認めざるを得なくなった。
「表面上看起來像是夾擊,但明智殿的部隊人數很少。而且他利用柴田殿與羽柴殿作誘餌偷偷行動,根本指望不上援軍。可又不能撤兵,實在是個難以抉擇的局面。」
「一応挟撃の形になっているけれど、明智様の部隊は数が少ない。おまけに、柴田様や羽柴様を囮に、抜け駆けした形になっているから、とても応援は望めない。かといって兵を下げる訳にもいかないから、難しい判断を迫られるね」
「他應該是明知如此還是選擇先行。我個人認為,戰爭並非做什麼都無所謂,只要能贏就好。」
「それを承知で抜け駆けしたのだろう。私見だが、いくさってのは何をやっても勝てば良いってもんじゃないと思うがな」
「同感。以明智殿的做法,令人擔心何時會被出其不意,無法放心將側翼或後方交給他們。也不會天真到認為只有我們不會被拋棄。」
「同感だ。明智殿のやり様では、何時(いつ)出し抜かれるかと不安になり、とても隣や背後を任せられない。自分達だけは見捨てられぬと、無根拠に思い込めるほど能天気にはなれぬ」
(雖然預料到了,但果然明智殿的名聲很差啊……)
(予想していたけれど、やっぱり明智様の評判は悪いなあ……)
因為頭腦過於靈活,容易陷入獨斷專行,並非說他是個冷嘲熱諷的人,但總會說出不合時宜的話。憑藉突出能力被重用,卻不得不認為其缺乏協調性。
頭が切れすぎるが故に、独断専行に陥り易く、皮肉屋という訳ではないのだが、どうにも空気を読まない発言が目立つ。抜きん出た能力故に重用されているが、協調性に欠けると思わざるを得ない。
雖然理解其背景,靜子既無能為力也無意對光秀如何處置。
背景を理解しているとはいえ、静子では光秀をどうこうすることは出来ないし、する気もない。
「嗯,這不是我們該介入的事,還是別深陷其中。那麼,誰應該前往明智殿那裡?」
「まあ、私たちが口出しするようなことじゃないし、深入りしないようにしましょう。さて、明智様の処へは、誰が赴くべきかな?」
「我去吧。」
「俺が行こう」
正在考慮由誰擔任護衛護送物資至最危險的光秀陣地時,一向不能說是特別勤勉的慶次舉手了。
差し当たっては、最も危険が予想される光秀の陣へ荷を運ぶ隊の護衛役を思案していると、お世辞にも仕事熱心とは言えない慶次が手を挙げた。
「……只是護衛輸送部隊而已喔?」
「……輸送部隊を護衛するだけだよ?」
「這點我知道。即便大將是個討厭的人,末端的士兵也在拼命,那些想回報那股漢氣的傻瓜總該存在吧?」
「そこは、理解しているさ。大将が嫌われ者でも、末端の兵たちは命を張っているんだ、その漢気に報いてやろうって言う馬鹿が居ても良いだろう?」
「嗯,那種傻瓜我不討厭。那就請慶次去護衛前往明智殿的輸送隊吧。」
「んー、そう言う馬鹿は嫌いじゃないかな。では、明智様への輸送部隊の護衛を、慶次さんにお願いします」
「交給我吧。」
「任せろ」
靜子喜好傾奇者的作風,於是決定尊重慶次的意見。
傾奇者の流儀を好む静子は、慶次の意見を尊重することにした。
「馬廻衆的工作是……不,還是別說了。你真是這樣的人啊,混蛋」
「馬廻衆の仕事は……いや、言うまい。そういう奴だな、貴様は」
正因為光秀的部隊陷於孤立,才敢去激勵他們。無論上頭有何盤算,前線的將士都在拿命硬撐。部隊人數少、兵力薄弱,也意味著更容易遭受敵軍突襲。
光秀の部隊が孤立しているからこそ、敢えて激励に向かう。上の思惑はどうであれ、現場の兵たちは命懸けで踏みとどまっているのだ。部隊の数が少なく、手薄だということは敵からの襲撃を受けやすい事も意味する。
在逆境中衝去增援,若能順便給敵人一記出乎意料的回擊,豈不痛快。才蔵感受到那種傾奇者無可救藥的本性,便沉默地送行了。
逆境の中、応援に駆け付け、あわよくば敵に一泡吹かせてやれれば痛快というものだろう。そんな傾奇者のどうしようもない性(さが)を感じ取った才蔵は、黙って見送ることにした。
「果然還是得我親自去柴田大人的陣吧。把危險推給部下、自己藏在後方可就失了體面了」
「流石に柴田様の陣へは私自身が赴かないと駄目かな。部下に危険を押し付けて、本人は後方に引っ込んでいるってのは外聞が悪いよね」
「靜子大人不是也能做到麼。避開無謂的危險是為上之責。某可代為出任名代」
「静子様でなければ出来ぬ仕事ではありますまい。無用の危険を避けるのは上に立つ者の義務でございます。某が名代をお務めいたしましょう」
「嗯——是這樣嗎?」
「うーん、そうかなあ?」
若不是特別急迫的事,自己親自前往似乎比較妥當?正在這麼想時,侍童報告足滿已經返回。
特に急ぐ用事があるわけでもないのなら、自身が出向いた方が良いのでは? と思っていると、小姓が足満の帰還を告げた。
命侍童立刻引見後,便轉向才蔵。
すぐにこちらへ通すよう、小姓に命じると才蔵へと向き直った。
靜子稍微移開視線的那一瞬間,不知何時慶次已從房內消失。大概是在有危險的任務前,去花街壯聲勢了吧。
静子が僅かに視線を外した間に、いつの間にやら慶次が室内から消えていた。危険の伴う任務の前に、景気づけとして花街にでも行ったのだろう。
雖未事先商量,靜子與才蔵互相聳肩苦笑。不久只聽走廊上有腳步聲,穿著略顯厚重的足滿走了進來。
示し合わせた訳でもないのに、静子と才蔵は互いに肩を竦(すく)めて苦笑した。やがて廊下から足音と共に、やや着ぶくれた出で立ちの足満が入ってきた。
「首先,辛苦了。剛回來就很抱歉,先請你口頭報告一下概要好了」
「まずは、お役目ご苦労様でした。帰還早々で申し訳ないんだけれど、取り急ぎ概要だけでも口頭で報告お願いします」
「基礎建設方面因為對方是自然,多少前後也在所難免,剩下的只是時間問題。問題在於上杉家的內亂,正如靜子的判斷,已變得不穩。目前是不識庵在壓著形勢,但景虎(北條氏康的嫡子)一方有些可疑的動作。若不識庵長期離開越後,武裝起義也不是不可能」
「インフラ整備に関しては、自然が相手ゆえ多少前後もしようが、後は時間の問題だろう。問題は上杉家のお家騒動よ、静子の読み通り不穏な事態になっておる。今は不識庵が睨みを利かせておるが、景虎(北条氏康の実子)陣営がきな臭い動きをみせていた。不識庵が長く越後を空けるような事になれば、武装蜂起もあり得る」
「嗯嗯。那麼,織田家正專注於東國征伐時最危險嗎?上樣或許會故意誘發起義再一舉剿滅……唔,應該還是要商量一下比較好」
「ふむふむ。となると、織田家が東国征伐に注力している時が危ないかな? 上様なら敢えて蜂起を誘って潰すかも……うーん、一度相談をした方が良さそうだね」
失去曾是反織田旗手的武田家後,對本願寺而言能依靠的,除了東國雄豪北條之外別無他人。到了這時候,顯如給各方的文書語氣也趨於軟化,曾經振臂高呼的氣勢已不復以往。
反織田の旗頭であった武田家を失った今、本願寺にとっての頼みの綱は、東国の雄である北条を措いて他にない。この頃になると、顕如が各方面に送る文面も弱含みとなり、かつての檄を飛ばす勢いは鳴りを潜めていた。
倘若萬一連北條也降服於織田家,本願寺的命運便已走到盡頭。顯如即便採取低姿態,也必須想方設法把北條圈住。
万が一、北条までもが織田家に降れば、本願寺の命運は尽きてしまう。顕如としては下手(したて)に出てでも、北条を囲い込む必要があった。
「……真是麻煩的事。反過來說,若除去北條,東國就算平定了嗎」
「……面倒な話だね。逆を返せば、北条を除けば東国は平定したことになるのかな」
「應該會是如此。不過我有件事需稍微先說一聲。我在岐阜報告時,替織田殿代收了一封文書」
「そうなるだろう。それよりも、少し耳に入れておかねばならぬ話が出来た。報告に寄った岐阜で、織田殿より文を預かっている」
足滿說著便從懷中取出封著的文書。靜子檢視內容後,發現上頭記載了同行信長前往大和的日程與行路順序。
そう言うと足満は、懐より封が施された文を取り出した。静子が内容を検(あらた)めると、信長の大和行きに同行するようにと、日程と順路が記されていた。
從文面看來,似乎要先在京合流後再向大和進發。但現下信長為何要往大和去,目的並不明朗。
文面から見て、一度京で合流してから大和へ向かうということが読み取れた。しかし、今の時期に信長が大和へ向かう狙いが判らない。
靜子無特別理由地把文書反覆端詳,忽然想到一件事。
特に意味もなく文を矯(た)めつ眇(すが)めつしていた静子だが、ふとあることに思い至った。
「是跟筒井和松永之間的糾紛有關嗎?」
「筒井と松永との確執の件かな?」
所謂筒井,是被稱為『大和四家』之一的筒井氏,當代為筒井順慶。這位順慶與松永久秀之間有著不小的恩怨。
筒井とは『大和四家』に数えられた筒井氏を指し、当代は筒井(つつい) 順慶(じゅんけい)が立っていた。この順慶と松永久秀には少なからず因縁が存在する。
順慶曾被松永逐出居城筒井城,曾有一段潛伏時期。後來順慶聯合三好三人眾,從松永久秀手中奪回了筒井城,留有這樣的經過。
順慶はかつて松永によって居城の筒井城を追われ、暫し雌伏の時を過ごした。その後、三好三人衆と結託した順慶は、松永久秀から筒井城を奪還したという経緯を持っていた。
簡單來說,兩人曾互相殘殺,而如今竟同以織田為主君。這可不是能輕易和解的關係。
端的に言えば、互いに殺し合った二人が、共に織田を主君と仰ぐようになったのだ。そう易々とは手を取り合える仲では無かった。
一方的松永久秀向信長臣服後,依命放棄了多聞山城。多聞山由光秀、柴田等輪班駐守,向大和的民眾宣示織田家的勢力已及於此地。
一方の松永久秀は信長に臣従すると、彼の命に従って多聞山城(たもんやまじょう)を明け渡していた。多聞山城には光秀や柴田などが当番制で入ることになり、大和の民に織田家の勢力下となった事を知らしめていた。
不過松永並非失去居城就會安分守己的人。只要略見織田有破綻,便虎視眈眈地等待機會,準備撕咬其要害。
とは言え、松永は居城を奪われたまま大人しくしているような人物ではない。少しでも織田に綻びが見えれば、その喉笛に噛みつくべく虎視眈々(こしたんたん)と機会を窺っていた。
如此交錯的盤算彼此糾結,使得大和至今仍瀰漫著一股不安的戰亂氣息。
こうして、互いの思惑が絡み合った結果、未だに大和にはきな臭い戦乱の気配が漂っているのであった。
「織田殿的目的,想必是要向大和的權力者乃至庶民明示『統治者是織田』。嗯……關於松永,似乎可以由我去說說情」
「織田殿の狙いは、大和の権力者から民草に至るまで、支配者は織田であると示すつもりであろう。ふむ……松永については、わしから話をつけてやれそうだな」
「欸?足滿大叔你和松永久秀有往來?」
「え? 足満おじさん、松永久秀と交流があったの?」
「嗯。我受他很多照顧(……),這邊也多有照應(……),可說是非同一般的交誼,並不為過」
「うむ。わしは、あ奴に『とても世話になった(・・・・・・・・・)』し、こちらも何かと『世話をしてやった(・・・・・・・・)』仲だ。一方(ひとかた)ならぬ交誼を結んでいると言っても過言ではなかろう」
足滿面帶頗為愉悅的笑容點頭。向來難以稱為善於社交的足滿竟與人如此懇意,令靜子難以置信,但也不便憑空猜測其交際圈,便把疑問吞了回去。
実に楽し気な笑みすら浮かべて足満が頷いた。凡(およ)そ社交的とは言い難い足満が、それほど懇意にしているとは信じがたい静子であったが、あて推量で交友関係に口を挟むわけにもいかず、疑問を飲み込んだ。
「那麼,上樣抵達大和時,能否安排他們去上門問候一番?筒井家甚至把母親作為人質交給上樣,理所當然會來……不過還是先發一封文書以防萬一」
「それじゃあ、上様が大和へ着かれた折に、挨拶に参じるように手配をお願いできるかな? 筒井氏は上様に母親を人質に出しているぐらいだから、言われるまでもなく来るだろうけど……念のため文を出しておこう」
信長率軍進入大和,當地有力者又齊聚前來問候,這樣的構圖對於將士與庶民而言,會是一個明顯展示統治結構的機會。
信長が一軍を率いて大和入りし、同時に当地の有力者たちが挙(こぞ)って挨拶に赴くという構図は、将兵や民草にも判り易く支配構造をアピールする機会となるだろう。
「那麼,慶次先生與勝蔵君去加賀,與吉君繼續留在安土。這樣的話,才蔵先生一從柴田大人的陣回來,我就會隨上樣同行吧?」
「それじゃあ、慶次さんと勝蔵君は加賀へ、与吉君は引き続き安土に残留。となると、私は才蔵さんが柴田様の陣から戻り次第、上様に同行することになるかな?」
「若是去大和,我也會同行。正因為牽扯到松永,需我親自前去與他稍作『談話』,不可免」
「大和へならば、わしも同行しよう。他ならぬ松永が絡んでおるのだ。わしが直接出向いて、少し奴と『話し合い』をする必要があるだろう」
「沒錯。若在上樣面前與筒井一方起爭執就麻煩了,那部分就交給與之有交情的足滿大叔處理吧」
「そうだね。上様の前で筒井側と揉められても困るから、その辺りは交友のある足満おじさんにお任せするよ」
「喪失居城又身陷困境的松永,對他來說也未必是壞事。我這位可當作知己的人入手調停,想必不會被輕易『敷衍』」
「居城も失い、弱り目の松永にとっては悪い話ではなかろう。知己にも等しいわしが仲裁に入るのだ、よもや『無下にされる』ことはあるまい」
對松永而言此等情況無非是雪上加霜,但沒有人當場懷疑足滿那副興高采烈的說詞。
松永からすれば弱り目に祟り目という災難でしかないのだが、実に上機嫌に話す足満の言葉を疑うものはその場にいなかった。
「上樣在大和停留期間若惹出事端,可就大條了。筒井那邊也不得不收斂,松永那邊會被足滿大叔壓住不是嗎?要是在上樣面前起一場風波,會遭到什麼懲罰誰也說不準」
「上様が大和滞在中に問題を起こしたら大事(おおごと)になるからね。筒井側も大人しくせざるを得ないし、松永側は足満おじさんが抑えてくれるんでしょ? 上様の前でひと悶着起こそうものなら、どんな処罰が下されるか判らないからね」
松永擁有信長一向垂涎的茶釜古天明平蜘蛛(以下稱為平蜘蛛)。松永在向信長臣服時獻上名物「九十九髮茄子」,但不論信長幾度索求,對於平蜘蛛始終不肯讓出。
松永は信長が欲してやまない茶釜である古天明(こてんみょう)平蜘蛛(ひらぐも)(以降、平蜘蛛と呼ぶ)を所有していた。松永は信長に臣従する際に、名物『九十九髪(つくもかみ)茄子(なす)』を献上したが、平蜘蛛に関しては幾度所望されようとも、決して譲ろうとはしなかった。
因此,若交出平蜘蛛,即便雙方互懲,松永一方也很可能會被從寬處理。筒井一方若先動手,形勢必敗;只要能壓制住松永,就不會發生大問題,這是筒井方的預期。
こうした経緯もあって、平蜘蛛を差し出せば喧嘩両成敗となっても松永側には手心が加えられる可能性が高い。筒井側としては先に手を出せば必敗の状況となり、松永さえ抑えられれば大きな問題は起こらないと予想できた。
「總有一天平蜘蛛會作為名物調查的一環被暫時保管,但現在這時期它具有威懾力,還是別動比較好吧」
「いつかは平蜘蛛も名物調査の一環で預かることになるだろうけど、今の時期は抑止力になるから手を出さない方が良いかな」
「喔……對了,靜子也曾蒐集東山御物啊」
「ほう……そう言えば、静子は東山御物も蒐集していたのだったな」
「並不是因為有金錢價值才想要。若能將被認為在我們時代遺失之物留給後世,我覺得那麼我活在這個時代就有了意義」
「別に金銭的価値があるから欲しい訳じゃないんだけどね。私達の時代に遺失したとされるものを後世に残せるなら、私がこの時代に生きた意味があるのかなって」
「沒必要這麼勉強自己。嗯,關於松永就交給我吧,不會對他不好」
「そう気負う必要もあるまい。まあ、松永についてはわしに任せてくれ。悪いようにはせん」
「嗯,拜託你了。我這邊會籌劃前往大和的計畫」
「うん、お願いするね。こっちは大和行きの計画を練るよ」
「交給你了。(倒要看他會擺出什麼表情)」
「任された。(奴がどの様な顔をするかが見物だな)」
只要想像松永收到足滿來信會露出什麼表情,足滿便不由自主地微微笑了起來。
松永が足満からの手紙を受け取って、どのような表情を浮かべるかを想像するだけで、薄っすらと笑みが込み上げてくる足満であった。
在信長前往大和的行動穩步進行之際,石山本願寺內部已開始浮現內亂的徵兆。
信長の大和行きが着々と進む中、石山本願寺では内紛の兆しが見えつつあった。
原因有很多,其中一大要因是信長新開闢的街道。經由伊勢,連接尾張與堺的陸路整備街道,活絡了中小型商人的交易。
原因は幾つもあるが、大きなものとしては信長が新たに拓(ひら)いた街道の存在があった。伊勢を経由して、尾張と堺を陸路で結ぶ整備された街道は、中小規模の商人たちの交易を盛んにした。
將伊勢置於支配之下的信長,將在尾張培養出的海產養殖技術引入伊勢。養殖尚未完全穩定,先行的加工設施已開始運轉,使得干鮑與乾海參開始以相對低廉的價格流通。
伊勢を支配下に置いた信長は、尾張で培った海産物の養殖技術を伊勢にも持ち込ませた。養殖が軌道に乗るのに先んじて、加工施設が稼働を始め、干しアワビや干しナマコが比較的安価で流通するようになった。
乾鮑與乾海參在鄰國明被稱為乾貨(ガンフォ),與乾香菇並列為熱門商品。雖然以重量計算利潤率高,但向來只有擁有商船的大商人才能經營,是令人嚮往的貨品。
干しアワビや干しナマコは、隣国明(みん)に於いて乾貨(ガンフォ)と呼ばれ、干し椎茸と並んで人気が高い商品だ。重量当たりの利益率が高い商品として知られながらも、従来は商船を擁する大商人でなければ商(あきな)う事が出来ない憧れの商材でもあった。
然而因為是信長開闢的街道,就連那些稱不上大店的小商人也獲得了暴富的機會。
しかし、信長が拓いた街道ならば、大店(おおだな)と呼べないような小さな商人たちにも一攫千金(いっかくせんきん)のチャンスが与えられた。
結果如同美國西部的淘金熱一般的繁盛,在以伊勢為中心的地區展開。
その結果、さながらゴールドラッシュに沸き立つアメリカ西部のような盛況が、伊勢を中心として繰り広げられることとなった。
懷抱暴富夢的商人從全國匯聚,進貨後又分散到全國各地;大商人仍如往常靠海運進行海外貿易,其餘商人則靠陸路承擔國內流通,彼此自然分工。
一攫千金を夢見て、野心を抱いた商人たちが全国から集まり、商品を仕入れて全国へと散っていく。大商人たちは従来通り、海運での海外貿易を行い、それ以外の商人たちは陸路で国内の流通を担って自然と棲み分けが出来た。
人潮聚集之處催生需求,市集因此形成。為了市集更多人再度湧入,周邊區域的金錢流動達到前所未有的程度。
人が集まるところには需要が生まれ、それを商機として市が立つ。市を目当てに更なる人々が集まり、周辺の一帯にはかつてない程の金が落ちることとなった。
在完成這一切舖路後,信長將這個龐大利益結構的一部分分配給了與石山本願寺結盟的勢力,並分予根來衆與雜賀衆(太田黨)。
こうしてお膳立てを整えた信長は、この巨大な権益構造の一部を石山本願寺に与(くみ)する勢力、それも根来(ねごろ)衆や雑賀(さいか)衆(太田党)に分け与えた。
因這看似只會幫助敵人的舉動,起初根來衆與雜賀衆等人懷疑是陷阱,但面對前所未有暴增的財貨,他們無法再忍耐。
敵を利するだけの行為だけに、最初は罠を疑った根来衆や雑賀衆たちだったが、かつてない勢いで膨れ上がる財貨に我慢が出来なくなった。
雜賀衆本來也有作為商人集團的一面,有說法指商人為了保障交易安全而武裝,最終成為傭兵集團。
雑賀衆は元々商人集団としての側面も持っており、商人たちが交易の安全を担保するために武装した結果、傭兵集団になったという説もある。
他們憑藉作為商人建立的人脈,從西邊的九州到東邊的北關東都有聯絡網。若能靠經商賺錢而不用冒生命危險出戰,自然會有人回歸商人身分。
そして彼らは商人として培った縁故により、西は九州から東は北関東までをもカバーする伝手を持っていた。命懸けのいくさに出ずとも、商(あきな)いで金が得られるとなれば、商人に立ち返る者も当然出てくる。
正是在這一連串變化中,隱含著信長埋伏的毒計。
この一連の流れにこそ、信長の埋伏の毒が込められていた。
雜賀衆的決策採合議制,由各勢力代表共同決定。雖有雜賀黨與太田黨兩大派閥,但據說還有其他有力勢力群雄割據,代表採輪班制擔任。
雑賀衆は意思決定を、各勢力の代表たちによる合議制に委ねていた。雑賀党と太田党の二大派閥こそあるものの、他にも有力な勢力が群雄割拠し、勢力の代表を輪番制で務めていたと言われている。
迄今為止專注於傭兵營利可帶來豐厚利益,因此在某種程度上能追求多數人的最大幸福。但到此刻勢力內部的權力平衡已被嚴重動搖。
今までは傭兵稼業に特化することで大きな利益を出していたため、一応の最大多数の最大幸福を追求することが出来ていた。しかし、ここにきて勢力内部のパワーバランスが大きく揺らいでしまった。
「對那些投靠織田的孬種予以制裁!」
「織田に与(くみ)する腰抜け共に制裁を!」
「錢無論從哪裡來都是錢!先抓住這個商機積蓄實力最要緊!」
「何処から流れてこようと金は金よ! この商機を逃さず力を蓄えることが先決ぞ!」
「竟淪為織田的走狗,真是玷污了雜賀衆的名聲!」
「織田の走狗に成り下がったか、雑賀衆の面汚しめ!」
「沒武器就打不了仗!要集齊武器就需要錢。理想和榮譽填不飽肚子!」
「武器が無ければいくさは出来ぬ! そして武器を揃えるには金が要る。理想や誇りでは、腹は膨れぬ!」
他們為保護自身財貨而武裝。可是只要遵守信長訂下的商業約定,信長會保護商人,即便商人站在敵方一邊也一樣。
彼らは己の財貨を守るために武装した。しかし、信長は彼が定めた商取引の約束事を守る限り、敵方に与していようとも商人を庇護(ひご)してくれる。
因此開始有人放棄冒生命危險但利潤少的傭兵行業,分成追求安定生活的派閥,以及堅守自主獨立、不依賴權力者生活的派閥,衝突由此展開。
こうして命懸けの割に儲けの少ない傭兵稼業を捨てて、安定した生活を求める派閥と、あくまでも自主独立を貫き、権力者に依存しない生活を続ける派閥に分かれて争いが始まった。
「中了招啊」
「やられたな」
雜賀孫一察覺到信長策反雜賀衆的計謀,但為時已晚。即使召開合議,會議也只會陷入紛亂,無法做出任何決定。
信長が仕掛けた雑賀衆切り崩しの策に気が付いた雑賀孫一だったが、既に遅きに失していた。最早合議を開こうとも、会議が紛糾するだけで何一つ決定することが出来なくなっていた。
一旦成為如此,聚合體制的脆弱性便顯露無遺,各派閥開始自行整合所屬群體並擅自行動。
こうなってしまえば寄り合い所帯の脆さが露呈してしまう。それぞれの派閥が、自分達に属する集団を纏めて勝手に行動するようになってしまった。
「要整頓回來很困難嗎?」
「立て直しは厳しいか」
面容嚴峻的孫一面前,下間頼廉提出疑問。
険しい表情の孫一に対して、下間(しもつま)頼廉(らいれん)が疑問を口にする。
「聽說本願寺內部也接連有僧兵逃亡。與此時期同時發生的雜賀衆內部崩壞,若斷定純屬偶然,實在有些太巧合了」
「本願寺内部でも僧兵の逃亡が相次いでいると聞き及んでいます。時期を同じくして、雑賀衆の内部崩壊。これを偶然と決めつけるには、些(いささ)か状況が揃い過ぎておりまする」
不只頼廉,他身旁還坐著一名僧形男子。該男子名為恵瓊,是曾預言信長失勢的毛利家外交僧,就是他本人。
頼廉だけではない。彼の傍に僧形の男が座していた。男の名は恵瓊、信長の失墜を予言した毛利家の外交僧、その人であった。
三人圍著篝火相對而坐;這種由各自擔任要職的人,在非室內之處低聲交談的情景,顯得頗為奇特。
三人は焚き火を囲んで向かい合っていた。それぞれに重要な地位を担う人間が、屋内ですらない場所で語り合うという、ある種奇妙な状況が生まれていた。
頼廉所屬的石山本願寺與織田和睦,而孫一率領的雜賀衆一派表面上也服從織田。雖未直接交鋒,但對恵瓊所事奉的毛利而言,織田仍是潛在敵人。
頼廉の属する石山本願寺は織田と和睦しており、孫一が率いる雑賀衆の一派も表面上は織田に服従している。直接刃を交えてはいないが、恵瓊の仕える毛利にとって織田は潜在的な敵である。
他們聚在一起本身就是危險舉動,於是便在熱鬧的商人聚集的野外,假裝閒聊,進行秘密會合。
彼らが一堂に会すること自体が危険な行為であり、幾人もの商人たちで賑わう野外で世間話を装い、秘密の会合を持っていた。
「被織田高出一籌呢」
「織田に一枚上をいかれましたな」
「明明在武力上佔優,竟還用了側面手段,正中合議制的弱點啊」
「武力で上回っておきながら、搦め手まで用いるとは、合議制の弱点を突かれたわ」
「戰爭不只是刀劍相交而已吧。把金錢當作箭矢,射穿慾望的戰術也存在,讓人深刻體會到。所謂武勇之人的傳聞並不可靠呢」
「刃を交えるだけがいくさではないという事でしょう。金を矢として、欲を撃ち抜くいくさもあるのだと思い知らされました。武辺者という噂は当てになりませぬな」
恵瓊低聲嘟囔,頼廉抱臂沉思。主導談話的他沉默後,場面被寂靜籠罩,只有偶爾的蟲鳴和營火的噼啪聲回蕩著。
恵瓊が漏らした呟きに、頼廉は腕を組んで黙考する。会話を主導していた彼が黙ったことで、場を静寂が支配する。時折聞こえる虫の音と、焚き火が爆ぜる音だけが響く。
頼廉一邊用手指敲打自己的手臂,一邊思緒飛轉。若無法預測信長接下來的行動,想要挽回石山本願寺將是絕望的。
頼廉は己の腕を指で叩きながら、目まぐるしく考えを巡らせていた。これから信長が取る行動を予測出来ねば、石山本願寺の挽回は絶望的となる。
經過熟慮,頼廉想到了一個假設。
熟考の末に頼廉は一つの仮説を思いついた。
「難道織田把自己當作囮(誘餌)了嗎!?」
「もしや、織田は自身を囮にしたのか!?」