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戦国小町苦労譚

千五百七十四年 三月下旬

靜子迅速完成中斷的清稿,立刻換衣赴見。小姓報到後靜子入室,光秀的遣者已伏地等待。

静子は中断していた清書を手早く済ませると、すぐに着替えて謁見に臨んだ。小姓が到着を告げて静子が入室すると、光秀の遣いは平伏して待っていた。

「久等了。無需寒暄與致詞,馬上切入正題。」

「お待たせしました。挨拶や口上は無用です。早速本題と参りましょう」

因為是傍晚前來、又無法改期,靜子為節省時間便催促速進。

夕暮れ時に訪れ、日を改めることも出来ぬという用件だけに、静子は少しでも時間を節約すべく先を促した。

帶著歉意的光秀遣者所陳述的內容如下。

恐縮しつつも光秀の遣いが語った内容は次の通りであった。

自京城治安恢復以來,商人帶來的各種物品開始流通,公家以至庶民都廣為親睞。

京の治安が回復して以降、商人たちが持ち込む様々な物が流通し、公家達はおろか庶民にまで幅広く親しまれ始めた。

大街上大店(おおだな)連綿,販賣稀奇物品。

大通りには大店(おおだな)が軒を連ね、珍しいものを商(あきな)っている。

其中專供歌會與茶會不可或缺的菓子店,已成為公家遣者爭相購買的目標。

中でも歌会や茶会に欠かせぬ菓子を扱う商店は、公家達の遣いが競うように商品を購入するようになっていた。

在天皇主辦的歌御會(うたごかい)席上,反近衛派的公家對所供的茶請表示不滿。

そして帝主催の歌御会(うたごかい)の席で、反近衛派の公家達が供された茶請けにケチをつけた。

他們言道,近年朝廷所興的流行皆由近衛家發出,天皇的威光也因此失色。

曰く、近年朝廷に齎される流行はいずれも近衛家から発されるものであり、帝のご威光も翳(かげ)ってしまった。

他們主張不應只讓近衛家獨大,應示現天皇權勢未曾衰落,如何?

近衛家だけに大きな顔をさせるのではなく、帝の権勢が衰えぬことを示されてはいかがかと。

此等挑釁言論易被視為不敬,但被如此辱弄,天皇也不能坐視不理。

ともすれば不敬に問われかねない挑発的な発言だが、こうまでコケにされては帝も引き下がるわけにはいかなかった。

於是天皇託付與朝廷關係密切的光秀,不經近衛家而尋求一款能令公家驚艷的菓子。

そこで帝は朝廷に近い光秀を頼り、近衛家を通さず公家達をあっと言わせる菓子を求めた。

「……要有格調,且為人未見之美味菓子嗎……」

「……格式高く、それでいて誰も目にしたことのない美味なる菓子ですか……」

在聽到需求之前便已生不祥預感;惡感往往言中。向來平民化、不與格調結緣的靜子心中黯然。

用件を聞く前から嫌な予感はしていたのだが、悪い予感ほど良く当たる。格調などとは縁遠い、庶民派の静子としては暗澹たる思いだった。

「我等亦遍尋各處,卻終未找到所謂的那個……然而我等的主以為若是靜子大人,或能賜良策……」

「我らも方々手を尽くしましたが、ついぞこれだと言うものを見出せませなんだ……。されど、我らが主は静子様ならば良いお知恵をお貸し下さるのではと……」

「嗯……」

「ふむ……」

靜子以扇掩口,思緒飛轉。大致情形可知,從使者所帶光秀的文書亦能掌握公家們的意圖。

静子は扇子で口元を隠しながら、目まぐるしく思考を巡らせた。おおよその事情は理解でき、使者が持参した光秀の文より、公家達の狙いどころも把握できた。

這是朝廷內權力鬥爭的一環。有人不滿朝廷權力被近衛家壟斷,便利用手下挑釁天皇,背後有此盤算。

これは朝廷内の権力闘争の一環なのだ。朝廷での力学が近衛家の独壇場であるのを面白く思わない勢力がおり、彼らが手勢を使って帝を挑発したという背景があった。

事實上,天皇未倚靠近衛家,反而向光秀徵求協力。排除近衛家勢力的第一步雖然成功,但天皇選錯了合作對象。

事実、帝は近衛家を頼らず光秀に協力を打診した。近衛家一派外しの第一歩は成功したが、帝が頼った相手が悪かった。

通曉朝廷事務的光秀準確看穿公家們的盤算,遂將白羽之矢射向靜子,作為最善一著。

朝廷の事情にも明るい光秀は、正確に公家達の思惑を見抜き、最善の一手として静子に白羽の矢を立てた。

見到使者滿是歉意的模樣,靜子忽然想到一件事:現代靜子的祖父在受頒黃綬褒章時,曾由當時天皇賜下過一件紀念品。

静子は恐縮しきりといった遣いの様子を見て、ふと思いついたものがあった。それは現代に於いて静子の祖父が黄綬褒章を賜ったおり、時の天皇陛下より下賜された記念品の存在であった。

「(那個既有格調,又能彰顯天皇權威)既是天皇親自之請,不能回絕。請稍許時日,我已承接關於能示帝威的菓子之事。」

「(あれなら格式高く、帝の権威を示せるね)帝直々のご依頼とあれば断ることもできませんね。少し時間を頂戴しますが、帝のご威光を示す菓子については承りました」

雖曾考慮向信長詢問,但既然已洞悉黑幕目的,信長也只會命她接受,這點顯而易見。

信長に問い合わせようかとも考えたが、黒幕の狙いが読めている以上、受けろとしか言われないのは明白だった。

光秀的遣者辭去後,靜子再度盤算何為合乎天皇的菓子。

光秀の遣いが辞去(じきょ)した後、静子は改めて帝に相応しい菓子について思いを巡らせた。

呈現手法已有可借鏡之處,無大問題;關鍵在於內裡如何處理,靜子開始絞盡心思。

演出については参考に出来るものがあるため問題ない。肝心な中身をどうするかについて、静子は知恵を絞ることとなった。

「確實是只有我能做到的委託吧。恐怕是要防範近衛大人權勢過盛吧。」

「確かに私にしか出来ない依頼かな。近衛様が力を持ちすぎる事を警戒しているんだろうね」

靜子覺得相當棘手。若僅是準備珍奇菓子,光秀也能辦到。

中々に難しい問題だと静子は思っていた。単に珍しい菓子を用意するだけなら光秀にも出来る話だ。

動用他的關係網,動員尾張、美濃的職人準備稀奇菓子並非難事;但為何必須牽涉靜子,才是問題所在。

彼の伝手を駆使すれば、尾張・美濃の職人たちを動員して、珍しい菓子を用意することも難しい話ではない。しかし、そこに静子を絡ませねばならない理由。

「天皇自發向非織田家勢力求助。有人想借此扶植他們,將朝廷勢力一分為二……嗎」

「帝が自発的に求めた織田家に属さない勢力。それを担ぎ上げて朝廷での勢力を二分しようとする者たちが居る……か」

近衛前久與織田家親近為公開事實,信長亦是朝廷最大贊助者。但朝廷並非一體,並非人人樂見信長的影響無所不在。

近衛前久が織田家と親しいのは公然の事実であり、朝廷にとって信長は最大のスポンサーでもあった。しかし、朝廷も一枚岩ではなく、全員が信長の影響下にあることを良しとしている訳ではなかった。

其中有些公家倚靠寺社勢力為基礎,對織田家抱持反抗;武家與佛門亦有類似狀況,公家之中自不可能例外。

中には勢力基盤に寺社勢力を抱える、織田家に反抗的な公家も存在する。武家や仏家でも同じことが起こっているのだ。公家内で起きないはずがない。

然而自前久就任關白以降,這種權力平衡恐已大幅崩壞。

しかし、前久の関白就任以降、このパワーバランスが大きく崩れたのだろう。

迄今各方忙於維持勢力,無人公開反抗;但此次他們不惜將手下當作棄子,放手一搏發動大賭局。

今までは勢力維持に汲々としており、表立って反抗することは無かった。しかし、この度は手勢を捨て駒として切り捨てでも、大きく博打を仕掛けてきていた。

如此推斷,對方或可視為已被逼入絕境。

考えようによっては、相手はそれほど追い詰められているとも見られる。

「一下子殲滅黑幕恐不可能,但既被挑釁,至少得拿走他的一根手腳才行。」

「黒幕まで一気に潰すのは無理だけど、噛みついてきた以上は手足の一本も貰わないとね」

不直接沾手,以天皇之威為後盾行大賭,靜子覺得此手不壞;可惜在謀略高明的光秀眼中,那番盤算早已看破,成了他們的敗筆。

直接自分達の手を汚さず、帝の威を借りて博打を打つ。悪くない手だと静子は思った。しかし、知略に優れる光秀の目にはその思惑が透けて見えていたというのが運の尽きだった。

在好不容易來到的平和時光中,被這些無謂陰謀奪去閒暇,靜子心中難平,非得讓他們受點教訓不可。

ようやく訪れた平和な時間に、要らぬことを企んで余暇を奪ったからには、相応の報いを受けてもらわねば静子の腹の虫は収まらない。

靜子認為應藉此機會將刀架至黑幕咽喉,方為要務。

これを機に、黒幕の喉元まで刃を突き付けることが肝要だと静子は考えた。

「好!內容先放一邊,外型製作也需時,立刻動手吧!」

「よし! 中身はともかく、外側を造るにも時間が掛かる。早速取り掛かろう」

想到好計策的靜子提筆,開始寫信向各處求助。

良い作戦を思いついた静子は、各所に協力を求める文をしたためるべく筆を取った。

在各處分發文書數日後,寄往靜子下榻的京邸的收件人們已聚集一堂。是近衛前久、明智光秀與細川藤孝三人。

各所に文を飛ばしてから数日が経ち、静子が滞在する京屋敷に文を送られた相手が集まっていた。近衛前久、明智光秀、細川藤孝の三人であった。

靜子一邊出示試作品,一邊向他們說明了安排。

静子は試作品を見せつつ、彼らに手筈を説明した。

「不錯的點子呢」

「悪くない趣向ですね」

細川一邊端詳試作的容器一邊發表感想。靜子參考的是ボンボニエール(法語,意為盛放糖果的小容器),即皇室慶事宴會中常作為引出物贈送的「菓子器」。

試作された容器を眺め、細川が感想を述べた。静子が参考にしたのはボンボニエール(ボンボン容器という意味のフランス語)。皇室の慶事の祝宴などで引き出物として配られてきた『菓子器』であった。

這個攤開如扇、以硫化銀拋光的掌心大小ボンボニエール,既典雅又沉穩。

開いた扇を象(かたど)り、いぶし銀で表面を仕上げた手のひらサイズのボンボニエールは、雅かつ重厚であった。

它散發出一眼即可識別的高級感,同時不失端莊的風範。

誰の目にも一目で高級品と判る存在感を示しつつも、決して下品にならない風格を備えていた。

內裝的點心可稱為日本酒ボンボン,是讓尾張某釀酒廠特製、將特濃濁酒封入其中的點心。

中に込められた菓子は、尾張の酒蔵に特別に作らせた特濃の濁り酒を閉じ込めた日本酒ボンボンとでも呼ぶべき菓子だった。

咬碎模作菊花的ボンボン,濃稠的糖液就會緩緩溢出——特別將完成發酵的醪砸碎加入,使用未蒸餾、在不蒸餾範圍內盡可能提高濃度的濁酒,調製成可嗅到米香的糖漿。

菊の花を模したボンボンを噛み砕けば、中からトロリと濃厚な糖液が広がる。特別に発酵の終わった醪(もろみ)を砕いて入れ、蒸留しない範囲で最大限濃度を上げた濁り酒を用い、米の香りを感じられるシロップに仕上げていた。

「所以,這款點心的發案者就定為『仁比売(ニヒメ)』嗎?」

「それで、この菓子の発案者を『仁比売(ニヒメ)』とするわけですか」

靜子向光秀點了點頭。對方的目的是離間,即挑撥信長與光秀之間的關係。

光秀の言葉に静子が頷いて見せる。相手の狙いとしては信長と光秀の関係を悪くする、いわゆる離間工作にある。

讓信長擁立近衛家的女子靜子為旗,而光秀則擁護獲帝極為信任的『仁比売』。反織田的公家們會以為自己成功插入楔子,但實際上兩者是同一人,受矇騙的只有敵人。

信長が近衛家の娘である静子を担ぎ、対する光秀は帝の親任篤い『仁比売』を奉じる。反織田家の公家達としては、織田家に楔を打ち込めた気になるだろうが、現実は同一人物である。知らぬは敵ばかりとなっていた。

藉此機會,反織田勢力的公家會接近光秀,但這一切都會被信長徹底掌握。

これを機に光秀には反織田勢力の公家達が接触を図ってくるだろうが、全てが信長に筒抜けとなる手筈となっている。

「然後我再裝出後悔的樣子,對方就會以為計策得逞而露出馬腳嗎」

「そして私が後で悔しがってみせれば、相手は策が成ったと馬脚を露(あらわ)すわけか」

前久撫著下顎表示讚賞。重要的歌會是針對狩野松栄的畫作作歌,並競較其成果。

前久が顎を撫でながら感心する。肝心の歌会は狩野(かのう) 松栄(しょうえい)の絵に対して歌を作り、その出来栄えを競うというものだ。

畫作由前久挑選,細川構思歌題,與光秀交好的公家則吟詠並受賜賞。表面上是預設好的比賽,但只要舞台幕後看不見,敵方的前久混入其中也不會被發覺。

絵の選定は前久が行い、細川が歌を考え、光秀が懇意にしている公家がそれを歌って賞を賜る。いわゆる出来レースだが、舞台裏を覗けぬ限り、敵方である前久が混じっているため露見することは無い。

「這種時候最好混入第三者來作掩護。若在某處找碴,就會向各方挑起爭端。」

「こういう時は第三者を混ぜておくと良い。どこかにケチを付ければ、色々な方面に喧嘩を売る事になる」

靜子對這些心機深沉之人的周旋安排感到佩服。畫屬狩野派,關於歌方面則由細川與著名歌人密謀,取得作為當選合理之口供。

静子は腹黒い男達の駆け引きに感心していた。絵は狩野派(かのうは)の物であり、歌については細川が著名な歌人と謀(はか)り、賞を得るに相応しいと言質を求める。

而能彰顯帝王威光的點心,即便在眼光苛刻的前久看來也出色不凡。畫與歌都無從挑剔,恩賜品的發案者成了帝的寵愛。

そして帝の威光を示す菓子は、目の肥えた前久からしても出色の出来であった。絵も歌にも文句を付けられず、恩賜品の発案者は帝のお気に入りである。

反織田的公家們或許會士氣大振,但那正是致命陷阱。他們會吞下名為光秀的毒藥,揭露底牌而走向失勢的未來。

反織田家の公家達は勢いづくであろうが、それこそが致命の罠となる。光秀という毒を飲み、手の内を晒して失脚するという未来へ、自ら進むこととなるだろう。

「幸蒙承認,感激不盡。那麼,還請諸位多多協力。」

「承認を頂けたようで幸いです。では、皆様よろしくお願いします」

眾人對靜子的話紛紛點頭。計策成果立竿見影:光秀討好反織田的公家們,將所獲信息流向前久,逐步瓦解反織田勢力的勢力與人手。

静子の言葉に各々が頷いた。作戦の成果は覿面(てきめん)であった。光秀は反織田の公家達に取り入り、知り得た情報を前久に流す事により、反織田勢力の手足を潰していった。

他們尋求靠山而依附光秀,卻因光秀與前久共謀而被束縛失去行動能力。

彼らは拠り所を求めて光秀に傾倒し、光秀と前久が共謀しているが故に飼い殺しとなった。

「順利,順利」

「順調順調」

在歌會上亮相的ボンボニエール充分彰顯了帝王權威,之後也成為有時機會賜下的常備品。容器上刻有十六八重表菊,也就是所謂的菊紋,僅供皇室專用。

歌御会でお披露目されたボンボニエールは帝の権威を充分に示し、以降も折に触れて下賜される品として定着した。容器には十六八重表菊、いわゆる菊のご紋が刻まれ、皇室のみに卸されることとなる。

當正安排持續向皇室納貢ボンボニエール時,靜子收到了信長寄來的文書。

継続して皇室にボンボニエールを納める手配をしている頃、静子の許に信長からの文が届いた。

判斷無需親自留守即可處理的事務後,他將後事託付給三人,離開了京城。

自分が居なくては出来ない仕事は無いと判断し、三人に後を託して京を離れた。

抵達岐阜城的靜子前往信長指定的茶室,輕鬆鑽過茶室的躙口,進入已清空人員的室內。

岐阜城に着いた静子は、信長が指定した彼の茶室へと向かった。茶室の躙(にじ)り口を難なく潜り抜け、人払いの済んだ室内に上がった。

雖然室外有護衛駐守,但室內的談話不會外洩。靜子領悟這是連護衛都得排除的談話,便自然而然挺直背脊坐下。

室外に護衛こそ立つものの、内部の会話は外には漏れない。護衛すら排する必要のある話題なのだと静子は悟り、自ずと背筋を伸ばして座った。

「看這個」

「これを見よ」

信長在慰勞靜子到來之前,便把折疊好的文書拋過去交給她。

信長は静子の到着を労う前に、折りたたまれた文を投げ渡す。

從對面坐著的信長越過爐邊拋來的書信沿著榻榻米滑到靜子跟前,她接過打開閱讀。

対面に座す信長から炉を跳び越えて飛来した文が、畳を滑って静子の許へ届いた。彼女はそれを受け取り、中身に目を通す。

內容是一份關於北條動向的報告,由滲透入北條家的間諜帶回,越讀越使靜子的眉間起了皺。

内容は北条の動向に関する報告書であった。北条家に潜り込ませている間者が齎した情報だが、読み進むにつれて静子の眉間に皺が刻まれる。

「這個……麻煩了」

「これは……厄介ですね」

「曾輕視他為無法下定決心的遲鈍之人,但情勢竟如此緊密,我得改變評價。」

「決断できぬ愚図と侮っておったが、こうも状況が嵌(はま)ると評価を改めねばならぬ」

北條家當主北條氏政不願投降織田家的理由之一,是北條家長期統御關東的自負與驕氣。

北条家の当主、北条氏政が織田家に降(くだ)らぬ理由として、連綿と関東を支配し続けてきた北条家の自負があった。

即便投降織田,北條家也將面臨與武田的決戰,那不是割讓些許領地的小戰,而是為雙方存亡而戰的全面戰爭先鋒。

仮に織田家に降ったとして、北条家を待ち受けるのは武田との合戦となる。領土を多少切り取るいくさではなく、双方の存亡をかけた総力戦の先鋒を務めることとなる。

如此一來將給領民帶來沉重負擔,北條家會被織田家利用至耗盡的未來也在所難免。

そうなれば領民にも多大な負担を強いることとなり、織田家にとって都合の良いよう使い潰される未来が予想される。

不能再繼續拖延決斷:是投向織田,還是與武田聯手對抗?即便到了必須決斷之際,北條氏政仍保持猶豫。

これ以上決断を先延ばしにすることは出来ない。織田家に降るか、それとも武田と手を取り合って牙を剥くか。決断の場面に至っても、なお北条氏政は決断を保留していた。

「看了這個,你覺得如何?」

「これを見て、貴様はどう思う?」

「可能會影響到東國征伐。武田在三方原之戰敗後,出於對上杉南下的憂慮與北條結盟;雖然結果證明是多餘擔心……但如今同盟仍在延續,這正是問題所在。若進行武田征伐,也勢必與北條發生衝突。」

「東国征伐に影響が出るやも知れません。武田は三方ヶ原で敗北を喫して以降、上杉の南下を危惧して北条と同盟を結びました。結果的には杞憂に過ぎませんでしたが……今もなお、同盟が継続しているということが問題です。武田征伐に向かえば北条とも矛を交えることになるでしょう」

潛在的敵人還有其他存在。那是盟友上杉家所擁有的北條氏康第七子(上杉景虎)。上杉謙信曾收養他的勢力在北條遭遇危機時會如何行動尚不明朗。

潜在的な敵は他にも存在した。それは味方である上杉家が抱える北条氏康の七男(上杉景虎)の存在だ。上杉謙信がかつて養子に取った彼の陣営が、北条の危機に際してどのように動くかが不透明であった。

「呼……唐(此處非指中國唐朝,而是籠統指外國)的故事中,有以箭譬喻面對艱難之姿態的逸話。一支箭容易折斷,但若將多支箭綑在一起就難以折斷。人亦如是……武田、北條、上杉這些反骨若緊密結合,即便是我等也將被迫陷入不易的苦戰」

「ふっ……唐(から)(ここでは中国の唐(とう)王朝ではなく、漠然と外国を指す)の故事に、難事に立ち向かう姿勢を矢に喩(たと)えた逸話がある。一本の矢は容易く折れるが、幾本もの矢を束ねれば折ることは適わぬ。人もまた同じ……武田、北条、上杉の跳ねっ返り。これら三者が強固に結託すれば、如何に我らとて容易ならざる苦戦を強いられる」

聽到信長的話,靜子便聯想到毛利元就的『三矢之教』。

信長の言葉を耳にし、静子は毛利元就(もとなり)の『三矢の教え』を想像していた。

然而,據說毛利元就傳授給三子的『三矢之教』被後世視為創作。

しかし、毛利元就が息子三人に伝えたとされる『三矢の教え』は、後世での創作と見做(みな)されている。

信長所舉的中國『西秦錄』的故事、建立蒙古帝國的成吉思汗逸話、以及伊索寓言等,在世界各地都能見到類似的型式。

信長が挙げた中国の『西秦録』の故事や、モンゴル帝国を築いたチンギスハーンの逸話、イソップ物語など世界各地でその類型が見られる。

「但亦可視為良機。藉此可為奇妙打造一處學習敗戰之場」

「しかし好機ともとれる。これで奇妙にいくさの負け方(・・・)を学ばせる場が作れる」

只差一步便會在關東為反織田勢力築起橋頭堡,情勢近在眉睫,然而信長口中卻脫出意想不到的話語。

一歩間違えば関東に反織田の橋頭保を築かれるという瀬戸際だと言うのに、信長の口からは予想外の言葉が漏れた。

靜子不由得盯著他的臉看,信長卻甚至浮現愉悅的笑容。

静子が思わず彼の顔を見つめるが、信長は楽しげに笑みすら浮かべていた。

「敗戰的方式……嗎? 但那樣的話……」

「いくさの負け方……ですか? しかしそれでは……」

「勝敗是兵家的常事。然而,奇妙不知敗績。常勝無敗是不可能的,遲早會迎來敗北。但敗戰亦有上手的敗法。若判定無法取勝,及早斷然放棄,在有利於再起的情勢中敗北是關鍵。不知敗績者,無法接受自身的失敗。圍繞佞臣(諂媚主君的臣下),甚至不再探究敗因。那等人無資格治理天下」

「勝敗は兵家の常。しかし、奇妙は負けを知らぬ。常勝無敗などという事はあり得ぬ。いつか必ず敗北を喫するときがくる。だが、負けいくさにも上手な負け方というものが存在する。勝てぬと踏んだなら、早期に見切りをつけ、再起に繋がる有利な状況で負けることが肝要。負け知らずでは、己が失敗を受け入れられぬ。佞臣(ねいしん)(主君に媚び諂(へつら)う家来)を囲い、己の敗因を探りすらしなくなろう。そのような輩に天下を差配する資格はない」

打斷靜子的話,信長談起了信忠那不甚理想的未來。

静子の言葉を遮り、信長は信忠の望ましくない未来を語った。

「能承認自身不足、並為追求更高之境而反省、努力者會變強。趁我還能替他擦屁股之際,必須讓奇妙學會『自己並非特別』。當面對自身的弱點時,方能接受那些曾被自己輕視的人,竟比自己更強的現實」

「己が至らなさを認め、より高みを目指して反省・努力出来る者は強くなる。わしが尻を拭ってやれるうちに、奇妙には『自分が特別ではない』事を学ばせる必要がある。己の弱さと向き合った時、自分が見下してきた者たちが、自分よりも強いと言う現実を受け入れることが出来るようになる」

「為此即便武田、北條、上杉三國結盟亦可嗎?」

「それがために武田・北条、上杉の三国同盟が成立しても良いと仰るのですか?」

「正是如此。年輕的奇妙,若向老謀深算的北條屈服,也無須以為恥」

「そうじゃ。若い奇妙ならば、老獪な北条に屈したとて、恥とはならぬ」

「北條不敵對而降服的可能……」

「北条が敵対せず、軍門に下る可能性は……」

「沒有。縱使北條多麼荒唐,絕不會在未交鋒之下就投降。若不讓他覺得北條不可小覷,他就看不見勝機。其根源或是北條家的自尊,或是出於對受苦領民的憐憫,但北條必然會向我露出獠牙」

「ない。北条がどれほどのうつけ者であろうとも、一度たりとも矛を交えず降りはせぬ。北条侮り難(がた)しと思わせねば、彼奴(きゃつ)には勝ち目が見えてこぬ。根底にあるのが北条家の矜持か、それとも苦難を受ける領民を想っての慈悲やもしれぬが、北条は必ずわしに牙を剥く」

「既然都料及如此,還要故意敗北嗎?」

「そこまで見越して、なお負けますか?」

北條並非因優柔寡斷而不表明旗幟。他把自己作為不確定因素來運作,藉此為東國征討爭取些微優勢。

北条は優柔不断から旗幟を鮮明にしないのではない。自身が不確定要素となることで、少しでも東国征伐に対して優位を得られるよう動いている。

就算已料及至此,仍敢拿作繼承人信忠的學習之場。這是常人無法做出的冷酷而合理的判斷。

そこまで見越していながら、敢えて後継者たる信忠の学びの場とする。並みの国人では到底下せぬ非情かつ合理的な判断であった。

若成為敗戰,必然會付出不少損失。然而,信長連這點也自信能收回來,還口出狂言。

負けいくさとなれば少なからず損害が出る。しかし、信長はそれすらも取り返せると嘯(うそぶ)いてみせているのだ。

換言之,北條、武田、上杉皆在信長預想之內,只不過在他手掌上被玩弄罷了。信長能看透敗後局面,靜子不禁為此感到一陣憂懼。

つまり、北条も武田も上杉も信長の予想の範疇(はんちゅう)を超えず、手のひらで転がされているに過ぎない。負けた後の局面までをも見通す信長の眼力に、静子は空恐ろしいものを感じずにはいられなかった。

「然則亦非毫無不安。故此靜子,命你為奇妙的監視役」

「然(さ)りとて、不安がないわけでもない。そこで静子、貴様には奇妙の目付役を申し付ける」

「監視役嗎?」

「目付役ですか?」

「不知敗績的奇妙,縱被逼入劣勢也會尋求逆轉之策。但那將留下後患,演成拙劣的敗戰。由你目光如炬,掣肘那欲冒不該賭注的奇妙。能真心敬重奇妙的人並不多,身為為數不多者的你之言語,能夠抵達即便是衝動的奇妙心中」

「負けを知らぬ奇妙は、劣勢に追い込まれようと逆転の手を模索しよう。しかしそれでは将来に禍根を残す、下手な負けいくさを演ずることとなる。貴様が目を光らせ、分の無い賭けに出ようとする奇妙を掣肘(せいちゅう)するのだ。奇妙が心から敬意を抱く人物は、そう多くない。数少ない存在である貴様の言葉なら、逆上した奇妙にも届こう」

「雖微力,願盡職」

「微力ながら務めさせて頂きます」

靜子一面答應,一面向信長低頭。雖有各種懸念,但這次以信忠之事為最優先。

承諾の言葉と共に静子は信長に頭を下げた。色々と懸念事項は存在するが、今回ばかりは信忠の件が最優先と考えた。

「嗯……敗戰之後,我想要一句立志再起的話」

「ふむ……負けいくさの後、再起を誓う言葉が欲しいな」

「是要振奮士氣的話嗎?」

「景気づけですか?」

「要能從敗戰中學習,並表現出願將人生投注於再起的氣概之語。不要把敗北當成單純的失敗就結束,要簡潔且有力」

「負けいくさから学び、そして再起に懸ける奇妙の意気込みを示せる言葉が良い。敗北を単なる失敗で終わらせぬ、単純で力強い言葉が良い」

「是呢……」

「そうですね……」

靜子把手放到下巴陷入沉思。不論如何修飾,敗就是敗,必須吞下它並強烈展現向前的姿態。雖覺得頗為困難,但剛才的故事讓她靈光一閃。

静子は頤(おとがい)に手をやって考え込む。どう言い繕おうとも負けは負け、それを呑んだ上で前向きの姿勢を強く示す。中々に難しいと思ったが、先ほどの故事に閃くものがあった。

「那麼,這句如何? 束在一起的箭雖不會折斷,但束在一起的稻草卻容易折斷。把纖細的稻草錯看成粗大的箭,正是敗因!」

「では、こういうのは如何でしょう? 束ねた矢は折れずとも、束ねた藁なら容易く折れる。か細い藁を、太い矢と見紛うたのが敗因よ!」

「……呼、咯咯咯、哈哈哈! 敗了還妄言被高估了!? 若不顯示相當的勝算,絕難令人接受這句話,但也正因如此有趣!」

「……ふっ、くっくっくっ、はっはっはっ! 負けてなお、過大評価をしたと嘯くか! 余程の勝算を示さねば、到底受け入れられぬ言葉だが、だからこそ面白い!」

信長對靜子的提案大聲笑了出來。

静子の提案に信長は声を大にして笑った。

靜子與信長謁見後原打算折返京城。然而天皇透過光秀提出希望繼續訂購恩賜品的請求,需在尾張與美濃籌備食材與職人等事宜。

静子は信長との謁見後、京へととんぼ返りする予定だった。しかし、帝から継続的に恩賜品の注文をしたいと言う申し入れが光秀を通じて届き、食材や職人の手配を尾張と美濃で行う必要がでてきた。

於是決定派急馬回報不會在諸事安排完畢前回京,自己則直接返回私邸。

諸々の手配が終わるまで京へは戻らない旨を早馬で伝えることにし、そのまま自邸へと向かうことにした。

此次獻給天皇的糖果盒從材料起即嚴選,由最頂尖的職人仕上げ。為免尾張最優秀的職人被隨意挖角,已安排將徒弟派往京城。

今回帝に献上したボンボニエールは材料から厳選し、最高の職人の手により仕上げられている。尾張最高の職人をほいほいと引き抜かれては堪らないため、徒弟を京へと派遣するよう手筈を整えた。

關於日本酒糖果,原材料雖只有尾張能生產,但只要帶去材料便能在當地生產,於是打算在京城設立一間御用的菓子店。

日本酒ボンボンについても、原材料こそ尾張でしか生産できないが、材料さえ持ち込めば現地で生産できるよう、皇室御用達(ごようたし)の菓子店を京に構えることにした。

靜子對職人們的移動及機械設備的搬運格外謹慎。

静子は職人たちの移動や、機械設備などの搬送に過剰なまでの配慮をした。

或許正因如此,前往京城的途中未發生任何事。不,正確地說,是什麼事也沒能發生。

その甲斐あってか、京までの道中では何事も起こらなかった。否、起こせなかったというのが正しい。

反織田派的公家們密謀阻撓,雇用流氓,偽裝成山賊發起襲擊。然而,倒楣的是(……)同日周邊有人出山狩獵,讓他們在襲擊前就陣腳大亂四散逃跑。

反織田派の公家達は妨害を企み、荒くれものたちを雇い、野盗を装って襲撃を試みた。しかし、運の悪い(・・・・)ことに同日、周辺の山狩りが行われ、彼らは襲撃前に算を乱して逃げ散ることとなった。

得知襲擊失敗後,公家們準備採取下一步行動。但不知為何(…)那位雇用流氓的公家差役被拘留,隨之牽連出他們的所作所為。

襲撃の失敗を知った公家達は、次なる一手を講じようとした。しかし、何故か(・・・)荒くれもの達を雇った公家の遣いが拘束され、芋づる式に彼らの行いが明らかになった。

與其說是割尾求生,不如說反織田的公家被拔去四肢,只剩頭與軀幹,他們被迫度過漫長而痛苦的隱忍歲月。

トカゲの尻尾切りどころか、頭と胴体を残して手足の全てをもがれた反織田の公家達は、長く苦しい雌伏の時を強いられることとなる。

其後萬事順利進行,抵京數週後得以獻上作為下一件恩賜品容器的糖果盒(ボンボニエール)。最後的仕上只在尾張能作,花了些時間,但做出了令天皇與公家們讚嘆的器物。

その後は滞りなく万事が進み、京に到着後数週間を経て、次なる恩賜品の容器となるボンボニエールを献上することが出来た。最終の仕上げに関しては、尾張でしかできなかったため、多少の時間を要したが帝や公家達を唸らせる品が出来上がった。

獻上天皇的事由受命的光秀執行,但發案者「仁比売」卻獲得天皇的恩賜。這是對她振彰天威、維護面子的回謝。

帝への献上は、依頼を受けた光秀が行ったが、発案者たる『仁比売』に帝より恩賜品が届いた。帝の威光を発揚(はつよう)させ、面目を保ったことに対するお礼であった。

靜子打開桐盒,確認內容。裡面是一把以香木白檀(びゃくだん)木片鏤空雕成的美麗扇子。

静子は桐の箱を開け、中身を確認した。そこには香木である白檀(びゃくだん)の木片を透かし彫りにした美麗な扇子が入っていた。

那不是用來納涼的扇子,而是為了享受優雅香氣的扇子。雖然身在療養中,卻為維護天皇的面子費心的「仁比売」,從中可見對她的體貼。

それは涼を得るための物ではなく、上品な香りを楽しむための扇子であった。療養中の身でありながら、帝の面目を保つため骨を折った『仁比売』への気遣いが窺える品であった。

把天皇的恩賜珍藏於懷的靜子堅決抬頭開口道。

帝からの恩賜品を大事に懐へしまった静子は、決然と顔を上げて声を発した。

「那麼回去吧」

「それじゃあ帰りましょう」

完成在京的交接與善後事務後,靜子回國至尾張。

京での引継ぎや残務処理を終わらせた静子は、尾張へと帰国する。

回到府邸的靜子確認待批的文件;彩體貼地將優先度高的文件置於上方,靜子粗略翻閱。

自邸へと戻った静子は、決裁待ちの書類を確認した。彩が気を利かせて優先順位の高いものから上に置かれた書類にざっと目を通す。

不出所料,可以看出針對黑鍬眾的請求特別多。

やはりと言うか黒鍬衆に対する要請が多いのが判る。

近江有治水工程、越前則有敦賀港的港灣整備,還有可供通往近江的商用需求的道路整備,接連佈滿了大型基礎建設項目。

近江では治水工事、越前では敦賀港の港湾整備、近江へと通じる商用利用に耐える街道整備と大規模なインフラ事業が目白押しとなっていた。

此外雖未公開,但信長決定將據點遷往安土,作為前期準備,安土的調查正熱烈進行。

更には公にこそなっていないが、信長が拠点を安土へと移すことが決定しており、その下準備として安土での調査が盛んになっていた。

其餘不是決裁文件,而是一疊關於東國策反的報告書。內容顯示與其說是勝頼,倒不如說是整個武田家陷入了惡性循環。

他は決裁書類ではなく、東国の調略に対する報告書が並んでいた。内容を確認すると、勝頼というより武田家が悪循環に陥っていることが記されている。

武田家的重臣輕視勝頼,勝頼對此反感並採取強硬政策。這樣一來,必須承擔領主間紛爭代價的,終究是領民。

武田家の重臣が勝頼を侮り、その態度に反発する勝頼は強硬な政策を講じる。こうなると領主同士の不和からくるツケを払わされることになるのは領民である。

透過滲入甲斐國的間諜,武田家的內訌與醜聞傳得很廣,連下層也知曉。民眾被引導不僅對勝頼這個暴君不滿,也對無法制衡暴君的武田家本身生出怨懟。

甲斐の国に潜り込ませた間者の手により、武田家の不和や醜聞は下々に至るまで広く知られるようになっていた。民は勝頼という暗君はもとより、暗君を制することの出来ない武田家自体にも不満を抱くように仕向けられていた。

即便有重臣因而受損,若有人支持勝頼為當主並團結一致,民衆的不滿或許能稍微緩和;然而,雙方的關係已冷到無法修復的地步。

重臣の誰かが不利益を被(こうむ)ってでも、勝頼を当主として支え、一致団結すれば民の不満はいくらかでも和らいだであろう。しかし、既に双方の関係は修復不可能なまでに冷え切っていた。

「這真出乎意料。比起勝頼,整個武田家比預想中更失去民心。上様雖預期會打敗仗,但在開戰前武田家似乎會先自我瓦解。」

「これは予想外だなあ。想定以上に勝頼というより、武田家全体が民の信用を失っている。上様は負けいくさを見込んでいるけど、戦端を開く前に武田家が自壊しそう」

歷史事實上從甲斐侵攻起一個月內局勢已定。照此情勢,未必等上一年就會與武田開戰;若勝頼的凝聚力持續衰落,可能很快擊敗武田,乘勝追擊甚至攻到北條,取得勝利也非不可能。

史実でも甲斐侵攻から一月で大勢は決している。この様子だと一年を待たずに武田との開戦となる可能性も出てきた。このまま勝頼の求心力が落ち続ければ、早々に武田を下し、余勢を駆って北条まで攻め込み、勝ちを拾う可能性すらある。

「呼——畿內政務已經忙得不可開交,還要做東國征伐的監督,真頭痛……」

「ふー、畿内の政務でも忙しいのに、更に東国征伐のお目付け役かあ。頭が痛い……」

面對一堆令人頭疼的問題堆積如山的現實,靜子無法掩飾心情的沮喪。

悩ましい問題が山積している現実を前に、静子は気分が滅入るのを隠せなかった。

進入三月下旬,靜子檢視領內分發之秧苗的生長狀況,同時命人整備用於插秧的各種器具。

三月下旬に差し掛かり、静子は自領に配布する苗の生育状況を確認していた。同時に苗植えに使用する各種道具の整備をも命じていた。

尾張、美濃的領民不自行播種。每年由織田家育苗後發放秧苗,由民眾直接栽種。

尾張・美濃の領民は自身で種籾(もみ)を撒いたりしない。毎年、織田家によって育苗(いくびょう)された苗を支給され、これを植え付ける。

因為苗已育成至秧苗階段,不必擔心發芽率,且對環境變化較有韌性。織田家代為育苗時,農民則進行稱為荒起的整地作業。

種籾ではなく苗の状態まで生育しているため、発芽率を気にする必要もなく、環境の変化にも強い。織田家が育苗を代行する間、百姓たちは荒起(あらおこ)しと呼ばれる田の整備を行う。

早的會從一二月就開始荒起,但田地不多的農戶則在氣溫回暖的三月左右才著手。

早い者は1月や2月から荒起しを始めるが、それほど多くの田を抱えていない百姓は、気温の緩む3月ごろから着手する。

由織田家管理秧苗,使農民無需自行備種,織田家供苗也可期待穩定收成。

織田家が苗を管理することで、百姓は種籾を自前で確保する必要がない。織田家は苗を支給することで、安定した収穫を期待できる。

作為秧苗來源的種籾取自徵收的稅賦,農民無需負擔;若秧苗發病也可被一方強制廢棄,以防疫病蔓延。

苗の元となる種籾は、税として徴収した中から賄われているため百姓側に負担はなく、苗に病気が発生したとしても一方的に破棄を命じることができ、病気が蔓延することを防止できる。

雙方皆得利的制度,但缺點是能備多少秧苗直接決定產量;且分配到尾張、美濃的秧苗全由靜子的領地生產,亦成為問題。

双方にとってメリットのある制度だが、苗をどれだけ用意できたかが収穫量に直結するという欠点を抱える。そして尾張・美濃に配られる苗は、静子の領内で全て作られているという点も問題であった。

「各地的報告看來,目前似乎沒有問題呢」

「各地からの報告では、今のところ問題ないようね」

「是。生長持續順利。去年篩選出的籾種也很穩定。」

「はい。順調に生育を続けております。昨年、選別されました籾種も順調です」

一邊確認文件,靜子聽取彩的報告。秧苗生長良好,意謂今年可望達到預期收成。

書類を確認しつつ、静子は彩から報告を受ける。植え付けた苗が順調に生育しているという事は、今年も期待通りの収穫量が見込める事になる。

因開墾也順利,預計明年即可向越前與近江供應秧苗。不過無論哪方領地,比起石高,先穩定地方更為當務之急。

開墾も順調に進んでいるため、来年からは越前や近江にも苗を配れるだろう。もっとも、どちらの領土も石高より、まずは地域の安定化を図る方が先決ではあるのだが。

「近江治水工程一件接一件,難怪屢次來請求減稅。」

「近江は治水工事が目白押しだね。何度も税の軽減を陳情されるだけはあるね」

從現代的滋賀縣或許難以想像,但近江曾是多災水害的地區,尤其姉川與野洲川流域,洪患頻仍。

現代の滋賀県からは想像しにくいが、近江は水害の多い地域であった。特に姉川や野洲川流域は、水害が絶えない地域でもあった。

翻開史冊可見,野洲川約十年一遇洪患。對居民而言雖非稀鬆平常,但活個五十年大概會碰上好幾次。

歴史を紐解いてみれば、野洲川は10年に一度の割合で水害が起きている。住民にとっては日常茶飯事とは言わないまでも、50年も生きれば数回は遭遇するイベントだ。

「首先有河川的拓寬工程,並且在修築通往京城的水道。」

「まずは河川の拡張工事があり、更に京への水路を作っております」

琵琶湖蓄水龐大,但排水出口僅有淀川(亦稱瀬田川)一條。因此一旦淀川被土石等堵塞,湖水無處可去便會氾濫。

琵琶湖は膨大な水量を湛えるが、その水を排出する出口は淀川(瀬田川とも言う)ただ一つしかない。それゆえ、淀川が土砂などで堰き止められると、行き場を失った湖水が氾濫することとなる。

現代有為治水與利水而建的瀬田川洗堰(せたがわあらいぜき),但在戰國時代尚無其影。順帶一提,明治時代曾建有名為南郷洗堰的舊洗堰。

現代には治水や利水目的で造られた瀬田川洗堰(せたがわあらいぜき)が存在するが、戦国時代には影も形もない。余談だが明治時代には南郷洗堰という旧洗堰が建造されていた。

若無洗堰等設施,史書記載會招致何等悲劇:明治二十九年的洪水中,氾濫的琵琶湖水曾超過兩個月不退。

洗堰のような設備が無ければ、どのような悲劇を招くかが記録には残されている。明治29年に発生した洪水では、氾濫した琵琶湖の水が2ヶ月以上に亘って引かなかった。

在彦根有超過八成的地區被水淹沒,到了大津,市中心的所有地方都沉入水中。野洲川也決堤,流域內的居住區因此數月遭受淹水。

彦根では八割以上の地域が水没し、大津に至っては中心部の全てが水に沈んだ。野洲川も決壊し、流域に存在した居住区は数か月に亘って水没することとなった。

琵琶湖在畿內是重要的水源,但一旦露出獠牙,也會化身為將一切沖刷而去的兇猛龍類。

琵琶湖は畿内における重要な水源だが、ひとたび牙を剥けば全てを押し流す荒ぶる龍と化す存在でもあった。

「川浚(かわざら)的稅會多付一些呢」

「川浚(かわざら)えの税が余分にかかるね」

所謂川浚え,是指清除河底堆積的土砂與汙物。近江的治水史,可說也是對淀川進行川浚え的歷史。

川浚えとは川底にたまった土砂や汚物を取り除くことを言う。近江の治水の歴史は、淀川に対する川浚えの歴史と言い換えても良い。

史實上的江戶時代,大阪有一種稱為川浚冥加金(かわざらえみょうがきん)的費用,作為享受水利利益的代價。這同時具備積立的性質,並以此為原資實施川浚え。

史実の江戸時代では大阪に川浚冥加金(かわざらえみょうがきん)と呼ばれる、水利の恩恵を受ける対価が存在した。これは積み立ての側面も持ち、これを原資に川浚えが実施された。

無論如何,根本問題在於入水量大而出水受限所導致的氾濫。除了整備洗堰之外,還需擴張淀川,提升疏通能力。

いずれにせよ、根幹にあるのは流入量に対して流出量が制限されることに起因する氾濫だ。洗堰の整備に留まらず、淀川を拡張し、疎通能力を拡大する必要があった。

「直接受惠的京與堺當然如此,利用水運的越前等地也會被徵收臨時稅。制度穩定後,徵收額會被壓低」

「直接的な恩恵を受ける京や堺は勿論、水運を利用する越前などからも臨時の税を徴収するようです。制度が安定すれば徴収額自体は低く抑えるようです」

「那麼,可以向加賀國也請求嗎? 原來如此……嗯」

「となると、加賀の国に対しても請求できるかな? なるほど……ふむ」

「從水運的使用情況來看,請求應該沒問題」

「水運の利用状況を見る限りでは、請求しても問題ないかと」

靜子認為這是個巧妙的制度,要求利用琵琶湖的各地平均分擔稅負,既能確保川浚え的資金,剩餘部分還可用於河川擴張。

琵琶湖を利用する地域に等しく税の負担を求める。川浚えの資金を確保でき、余剰分で河川拡張も行える上手い制度だと静子は思った。

在交通網發達的現代,陸運與海運為主,幾乎看不到以河川為主的水運,但在戰國時代,水運佔了很大比例。

交通網の発達した現代では陸運と海運が主役であり、河川を利用した水運などは殆ど見る事が出来ないが、戦国時代に於いては大きな割合を占めていた。

史實上,信長死後秀吉掌握了琵琶湖的湖上利權,可見琵琶湖作為輸送路也極為重要。

史実に於いて、信長の死後、秀吉が琵琶湖の湖上利権を支配したように、輸送路としても重要な存在であった。

近江國的街道整備落後,支撐加賀與京、堺間交易的,主要仰賴琵琶湖的水上運輸。

近江の国は街道整備が遅れており、加賀の国と京や堺との交易を支えるのは、ひとえに琵琶湖の水上運輸に懸かっていた。

與能大幅捷徑中央的水運不同,陸路因被迫大幅繞道,運輸時間與成本往往較高。

中央を大幅にショートカット出来る水運と異なり、大きく迂回することを余儀なくされる陸路は運送時間も、それに掛かる費用も嵩む傾向にあった。

既然琵琶湖的湖上權由信長掌握,拒絕納稅便會招致輸送路被封閉的明顯後果。加賀的一向宗面對痛恨的信長,唯一的路就是繳稅。

琵琶湖の湖上権を信長が握っている以上、税の支払いを拒否すれば、輸送路が閉ざされるのは目に見えている。加賀一向宗は憎い信長に対して、税を納めるしか道はない。

「那麼,一向宗會乖乖就範嗎? 若接受,支出會逐漸加重,反抗的話則會遭到武力鎮壓。嗯,只是早晚的差別罷了」

「さて、一向宗たちは大人しく言う事を聞くかな? まあ、応じたら出費が嵩んでじわじわと首が締まる。反抗すれば武力による制圧が待っている。うん、遅いか早いかの違いしかないね」

「就算開新陸路,近江是被織田家家臣所掌控。不管怎麼轉,都沒有加賀一向宗的前途。看起來只是最後一推的局面」

「新しい陸路を開こうにも、近江を支配しているのは織田家の家臣。どう転んでも加賀の一向宗に先はありません。後一押しという状況かと思われます」

「剩下就看柴田大人了。若在此處努力,整個北陸地帶就會落入柴田大人統治之下。那樣一來佐々大人或前田大人也會成為北陸的大名吧」

「後は柴田様次第かな。ここで頑張れば北陸一帯が柴田様の支配下になるね。そうなると佐々様や前田様も北陸の大名か」

「若成功,家中便能領先一步。然而,明智大人與羽柴大人也不容小覷。尤其明智大人掌握著畿內多數的輸送路權益。另外,靜子大人提供的輸送船成效超出預期,坂本更被稱為通往京的門戶,熱鬧非凡」

「成功すれば家中で一歩先んじることになります。しかし、明智様や羽柴様も負けてはおられません。特に明智様は畿内にある輸送路の権益を殆ど握っておられます。また、静子様が提供された輸送船が予想以上の成果を上げており、坂本は京への玄関とまで言われるほどに賑わっております」

在海上被判定為失敗的中型輸送船,在琵琶湖卻大放異彩。即便遇到些許天候突變,也能在一天內從長濱航行到坂本,速度令人稱道。

海洋では失敗と断じられた中型の輸送船が、琵琶湖では脚光を浴びた。多少の天候崩れなどものともせず、一日あれば長浜から坂本までを航行する速度を誇った。

此外採用螺旋槳推進,船隻無需以槳划行,因此節省下來的空間可以改作貨艙使用,這也是優點之一。

また、スクリュー推進であるため、船の移動に櫂(かい)を必要としない。これにより、節約できた空間を貨物スペースに転用できるという利点もあった。

缺點在於採用蒸汽機,需要木炭或石炭等燃料,且吃水淺,對可運載的重量有限制。

欠点は蒸気機関であるため、木炭や石炭と言った燃料を必要とすることや、喫水が浅いため、運搬する重量に制限があることだった。

因此運送容易腐敗的貨物的商人,需要調度多艘船來運送貨物。若是載運超出船隻可載重量的重物,或大量貨物時,只能選擇陸路,而考量護衛與人力安排,費用反而更高。

この為、日持ちしない積荷などを運ぶ商人は、何艘もの船を手配して積荷を運ぶこととなる。船に積載出来ない程の重量物や、多くの積荷を運ぶ場合は陸路を選ばざるを得ず、護衛や人足の手配を考えると余計に高くつくようになっていた。

「啊——就是那個啊。能有發揮的場所真是太好了,職人們也都很高興」

「あー、あれね。活躍の場が出来て良かったよ。職人たちも喜んでいたしね」

「也有要求增加班次的聲音」

「便を増やして欲しいという要望がありますが」

「那部分就看羽柴大人與明智大人了吧──反正對雙方都是增加商機,應該不會拒絕的……不過可能又會為了主導權吵起來……」

「その辺りは羽柴様と明智様次第かなー。まあ、どっちも商売の機会が増えるから、嫌とは言わないだろうけど……また主導権を巡って争いになるかも……」

琵琶湖的湖上權由織田家掌握,但就琵琶湖上商船航線的主導權,秀吉與光秀互相對峙。

琵琶湖の湖上権は織田家が握っているが、琵琶湖で使われる商船ルートの主導権を巡って秀吉と光秀がにらみ合っていた。

目前因為持續戰亂優先復舊荒廢的近江,秀吉掌握主導權;但光秀一有機會便伺機奪回。

現在はいくさ続きで荒廃した近江の復旧を優先しているため、秀吉が主導権を握っている。しかし、機会があれば主導権を奪い返そうと光秀は機会を窺っていた。

隨著商業繁榮,水運的重要性增強,伴隨而生的利權也越發龐大,二人的宿怨因而更深。

商業が盛んになるにつれ、水運の重要度は増していく。それに比例して産み落とされる権益も巨大となるため、彼らの因縁は深まっていった。

「主要目的雖是營造厭戰的風氣,但做得這麼明顯恐怕也得好好考慮一下」

「まあ、主目的は厭戦(えんせん)の気運を作りだすことだけど、こうも露骨だと流石に考えないといけないかも」

所謂厭戰,是指討厭戰爭的思想。

厭戦とは戦争を嫌う考えをさす言葉だ。

政治若長期不穩,可能會出現因短慮而發動戰事的愚者。因此至少在畿內,也需營造討厭戰爭的氛圍。

いつまでも政治が不安定では、短慮からいくさに走る馬鹿者が現れる可能性がある。そこで、畿内だけでもいくさを毛嫌いする空気を作る必要があった。

兵農尚未完全分離的當下,多數兵士仍是百姓。若百姓討厭戰爭,即便想發動戰事也難以徵集到兵力,且更容易實行刀狩。

まだ兵農分離が完全ではない以上、兵士の大半は百姓たちだ。その百姓たちがいくさを嫌うようになれば、いくさをしたくとも兵が集まらない。また、刀狩りもし易くなる。

透過刀狩解除武裝、商人的活躍、治水等公共工程做災害對策、提升稻米與蔬菜等生產力,藉此安定民生。

刀狩りによる武装解除、商人たちの活発な活動、治水などの公共事業による災害対策、米や野菜などの生産力向上、これらを行う事で民の生活を安定させていく。

民生越穩定,願意冒生命危險去打仗的人就越少。若在農閒期安排開墾等工作,想去從軍的意願便會更加消退。

生活が安定すればするほど、命を懸けてまでいくさに出掛ける者は少なくなる。農閑期に開墾などの仕事を作れば、より一層いくさへ出掛ける気持ちは萎える。

多數人會認為,比起一場可能喪命的戰爭,踏實工作能確保穩定收益的工作更為可取。

多くの者は一つ間違えば命を落とすいくさよりも、堅実に働けば確実に利益を得られる仕事の方が良いと考える。

「伊勢雖然不在管轄內,但關於近江與越前,要穩定還需數年吧」

「伊勢は管轄外だけど、近江や越前に関しては、安定するまでに数年は必要かな」

「在那段期間會討伐本願寺嗎?」

「その間に本願寺を征伐されるのでしょうか?」

「不,並不會討伐本願寺。有些細節條件,但大方向上會允許一向宗存續,換取他們從石山撤退」

「いや、本願寺の征伐はしないよ。細かい条件はあるけれど、一向宗の存続を認める代わりに、石山から退去するのが大筋かな」

「那是……」

「それは……」

彩想道:這不會和至今勢在必毀的信長的行動相牴觸嗎。似乎注意到彩這樣的想法,靜子補充了話語。

今まで滅ぼす勢いの信長の行動と食い違わないか、と彩は思った。そんな彩の考えに気付いたのか、静子は言葉を付け足した。

「現在主要在努力讓顯如坐到談判桌上……而且若是把本願寺徹底摧毀,反而會讓形勢更加不穩,所以留著比較好」

「今は顕如を交渉の席に(・・・・・)着かせる事(・・・・・)に力を注いでいるからね。それに本願寺を完全に潰せば、かえって情勢を不安定にさせちゃうから、生かしておく方が良いの」

「是這樣嗎?」

「そうなのですか?」

「嗯……那麼由靜子姊姊來跟彩醬講講政治吧」

「ふむ……では静子お姉さんが、彩ちゃんに政治のお話をして上げましょう」

對於要教彩政治這件事似乎感到愉快,靜子自信滿滿地挺起胸膛說道。

彩に政治を教えるという状況が楽しいのか、静子は自信満々に胸を反らして言い放った。

彩倒是並未顯得特別感興趣,而是等待著靜子接下來的話。

対する彩は、然して興味がある風でもなく、静子の次の言葉を待った。

「假設本願寺被消滅了的話,那麼信徒會怎麼做呢?」

「仮に本願寺が潰(つい)えたとしましょう。その場合、信者はどうするかな?」

「會改宗嗎?」

「改宗でしょうか?」

「對啊。但信仰是內心的事。有人跟你說從明天起改信別的宗派,你會覺得如何?如果有人說從明天起要信奉伴天連,彩醬會怎麼想?」

「そうだね。でも信仰は内面の問題。明日から別の宗派に鞍替えしてね、と言われても困るでしょう? 明日から伴天連を信仰して、と言われたら彩ちゃんはどう思う?」

「那個……」

「それは……」

「沒錯,會感到困惑而無法接受。若強制執行就會成為迫害……被壓迫的信徒會團結起來反抗統治者,對他們露出獠牙。那樣一來,就會爆發血腥的宗教戰爭。」

「そう、戸惑うし受け入れられる訳がない。それを強制すれば弾圧となり……抑圧された信徒は一致団結して立ち上がり、為政者に対して牙を剥く。そうなれば、血みどろの宗教戦争が始まってしまう」

「是為了防止那種事嗎?」

「それを防ぐ為ですか?」

「沒錯。給敵人一條最後的退路很重要。如果他們有『為了本願寺』這樣能說服自己的藉口,下頭就會心甘情願認輸。相反地若沒有退路,就會戰到命盡為止。而且……」

「そうよ。敵に最後の逃げ道を用意しておくのは大事。『本願寺の為に』という自分を納得させる言い訳があれば、下は素直に負けを認める。逆に逃げ道がなければ、命尽きるまで抗い続ける。それに……」

「而且呢?」

「それに?」

「本願寺的經濟力和與其他勢力的聯繫很可貴。與其徹底毀滅,不如保持在既不活也不死、可以作為自己棋子利用的程度,反而更方便。」

「本願寺の経済力や他勢力との繋がりは惜しい。完全に潰すよりも、生かさず殺さず、自分の持ち駒として利用出来る程度の状態にしておく方が便利だよ」

彩雖然勉強上接受了,但並非沒有疑問。

一応の納得はした彩だった。しかし、疑問点がない訳でもない。

「不過那是靜子大人的想法,並不是上樣的想法,對吧?」

「ですがそれは静子様の考えであって、上様の考えではないですよね」

「喔,注意得好,彩醬。確實在細節上可能會有差異,但我覺得我和上樣的想法並沒有很大的抵觸。」

「お、良い処に気付いたね、彩ちゃん。確かに細かい点で差が出ているでしょうけど、でも私と上様の考えに、大きな食い違いは起きてないと思うよ」

「是嗎。想起上樣的言行,實在難以相信會有和解這種事。」

「そうでしょうか。上様の言動を思えば、和睦などあり得ないと思えますが」

「那部分就由妳自己思考,得出答案就好。放心,聽了我的話自己思考、會生疑問的彩醬一定能找到的。」

「そこは自分なりに考えて、答えを導きだせば良いよ。大丈夫、私の言葉を聞いて自分で考え、疑問を持った彩ちゃんならきっと辿り着けるよ」

「受您稱讚實在過慮,不過總覺得好像被迴避了答案。」

「お褒め頂き恐縮ですが、なにやら答えをはぐらかされたように思います」

「欸——那不是應該高興的地方嗎?」

「えー、そこは喜ぶところじゃないかなー?」

「被過高評價了。」

「過大評価です」

靜子不滿地說著,但彩聽了靜子的話也沒改變表情,回過話來。

不満げに言う静子だが、彩は静子の言葉を聞いても表情を変えず返答した。