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戦国小町苦労譚

一五七四年 三月上旬

二月。忍受那種彷彿使空氣澄淨的寒冷,期待作為萌芽季節的春天到來。靜子宅邸的廚房裡升起了炊煙。

二月。空気が澄みわたるような寒さを耐え、芽吹きの季節たる春を待ち望む頃。静子邸の厨からは炊事の煙が立ち上っていた。

一般認為魚類在較低的水溫下更加美味。為了耐受低溫而在體內蓄積較多脂肪,但這並非只限於魚類。

一般的に魚は水温が低い方が美味しいとされる。低い水温に耐えられるよう、体に多くの脂を蓄えるためだが、これは魚だけに限った話ではない。

據說冬季採收的蘿蔔會變甜,也是因為為了耐寒而減少水分,轉而蓄積糖分。純水在0度會結冰,但糖水則不會結冰。

冬に収穫する大根が甘いのも、寒さに耐えるため水分を減らし、代わりに糖分を蓄えるからだと言われている。真水は0度で凍結するが、砂糖水は凍結しない。

這就是所謂的『沸點上升、凝固點下降』現象。順帶一提,位於地中深處不易受氣溫影響的根尖部分,據說為了防禦害蟲會變得較辛辣。

いわゆる『沸点上昇・凝固点降下』という現象である。因みに気温の影響を受けにくい、地中深くにある先端部分は、害虫などから身を守るため辛くなるとも言われている。

「呼呼……冬天還是鰤魚蘿蔔最棒了呢」

「ほっほっ……冬はブリ大根に限るね」

一邊從口中吹出熱氣,靜子自言自語道。

口から熱気を逃がしながら、静子がひとりごちた。

鰤魚蘿蔔是日本各地流傳的鄉土料理,使用富山縣寒鰤的做法尤為有名。雖然有各種變體,但將鰤魚與蘿蔔以醬油燉煮這一點是共通的。

ブリ大根とは日本全国に伝わる郷土料理だが、富山県の寒ブリを使ったそれが有名だ。色々なバリエーションが存在するが、ブリと大根を醤油で煮つけるところは共通している。

即便在流通發達的現代,來自日本海側與太平洋側的鰤魚價格有時也會差到兩倍以上。

流通の発達した現代であっても、日本海側と太平洋側で獲れたブリの値段に倍以上の差がつくことがある。

從北海道南下、越過日本海的洶湧海浪到達富山灣的「氷見的寒鰤」,被稱為冬季味覺之王者。

北海道から南下し、日本海の荒波を乗り越え、富山湾まで辿り着いた『氷見の寒ブリ』と言えば、冬の味覚の王者とも呼ばれる。

在流通尚未發達的戰國時代,自然不可能期望吃到新鮮的「氷見(ひみ)的寒鰤」,靜子用來烹調的也是在尾張捕獲到的稍小型鰤魚。

当然流通の発達していない戦国時代で、新鮮な『氷見(ひみ)の寒ブリ』など望めるはずもなく、静子が調理に使用した物も尾張で獲れたやや小ぶりなブリである。

「好久沒吃到魚了。我以為魚不是有泥腥味,就是會非常鹹,但這實在令人難以抗拒!」

「魚を口にするのは久方ぶりです。魚などは泥臭いか、極端に塩辛いかのどちらかと思っておりましたが、これは堪りませぬ!」

昌幸像少年般眼睛發亮地大加讚賞。今宵的晚餐是招待真田昌幸和他的兒子們信之、幸村(信繁)。

少年のように目を輝かせながら昌幸が絶賛する。今宵は真田昌幸と彼の息子たち、信之、幸村(信繁)を招待しての夕餉となっていた。

作為山國的甲斐,自然無法奢望海魚。只能是帶泥腥味的河魚,或為了長途運輸而被重鹽醃製的漬物。

山国である甲斐では、海の魚など望むべくもない。泥臭い川魚か、長期間の運搬に耐えるよう、きつく塩蔵されたものに限定される。

毫不吝惜地使用昂貴的砂糖,連同醬油與味醂,並以薑去腥一起燉煮的鰤魚,足以把昌幸的心喚回成為少年。

高級品である砂糖を惜しげもなく使い、醤油とみりんに加えて、臭みけしに生姜と共に煮込まれたブリは、昌幸の心を少年に戻す程のものであった。

「今天剛在港口上岸的鰤魚送來了。雖然不及越中的鰤,但尾張的鰤也相當不錯」

「今日港で上がったばっかりのブリが届いてね。越中のブリには劣るけど、尾張のブリも中々のものだよ」

「什麼! 竟然還有更好的……」

「なんと! まだこの上があると仰るのか……」

昌幸面露驚愕,難以掩飾心中的震撼。與興奮中的昌幸形成對比的是,他的兒子們緊張而拘謹地用膳。

昌幸は正に愕然と言った面持ちで、戦慄を隠せずにいた。興奮する昌幸とは対照的に、彼の息子たちは緊張し、遠慮しながら飯を食べていた。

「孩子不該客氣。你看看那邊的大人們?能把好吃的東西吃得飽就是幸福。儘管吃,快長大吧」

「子供が遠慮なんてするもんじゃないよ。あそこの大人を見てごらん? 美味しい物をお腹一杯食べられるってのは幸せなんだよ。どんどん食べて、大きくおなり」

靜子溫柔地望著孩子們,同時指向慶次等人的座敷。從掀開的襖門可見,隔壁房間裡慶次他們正從飯櫃裡大口扒飯。

子供たちを優しい目で見つめながら、静子は慶次たちの座敷を指さした。開け放たれた襖から見える、続きの座敷では慶次達がお櫃(ひつ)から飯を掻きこんでいた。

起初他們還用與膳一起送來的碗吃飯,但覺得麻煩便把整個飯櫃端來,一插起飯杓就豪爽地大吃起來。

最初こそは膳と一緒に運ばれた椀で食べていたが、まどろっこしいとばかりにお櫃ごと持ってこさせると、しゃもじを突っ込んで豪快に食べている。

不知不覺還把酒拿出來,儘管有客人在場也照常開始宴會。

いつの間にか酒まで持ち出し、客人が居るにも関わらず宴会を始める始末であった。

雖然是壞大人的榜樣,但他們吃相豪爽、與拘謹無緣,故被靜子拿來作比較。

悪い大人の見本ではあるが、食べっぷりも豪快で、遠慮などとは無縁であるため静子が引き合いに出した。

本來主人應該責備他們,但昌幸說沒關係,因此便放任不管。

本来ならば主人として叱責すべきなのだが、昌幸自身が構わないと言ったため、放置してあった。

靜子也認為飯應該熱鬧地吃才更美味,所以讓他們隨意一些。

静子としても食事は楽しく、賑やかに取った方が美味しいと思っており、好きにさせることにしていた。

另一方面,信之與幸村感到困惑。雖然受到靜子勸誘,但身為武家子弟的他們自小被嚴格教養,覺得在父親與父親的上司靜子面前不能失禮,因此躊躇不前。

一方、信之と幸村は困惑していた。静子から勧められはしたものの、彼らは武家の男児として厳しく躾けられてきた。父親や、父親の上司たる静子の前で失礼があってはならないと、二の足を踏んでいた。

「孩子不必去在意大人的事情。多吃、多玩、多學,那就是孩子的職責。」

「子供が大人の事情なんて気にしなくて良いよ。よく食べて、よく遊び、よく学ぶ。それが子供の仕事なんだから」

在再次被催促後,兩人終於有勁地開始吃飯。甘鹹燉煮的鰤魚風味也征服了孩子們敏銳的味覺。

再度促され、ようやく二人は勢いよく、ご飯を食べ始めた。甘辛く煮つけられたブリの味は、子供の鋭敏な味覚をも魅了した。

話雖如此,兩人都尚未滿十歲,能吃的量自然有限。

とは言え、二人とも未だ十にも満たない子供であり、食べられる量も知れていた。

飯已經吃完,昌幸含著笑看著孩子們眼睛發亮吃飯的模樣,等兩人吃完便開口說道。

既に食事を食べ終わり、子供たちが目を輝かせながら食事をするさまを、口元を緩めながら眺めていた昌幸が、二人が食べ終わったのを見計らって口にした。

「承蒙款待,享用了美好的餐點,衷心感謝。」

「素晴らしい食事をご馳走になりました。心よりお礼申し上げます」

聽見父親的致詞,信之也慌忙低頭,稍遲的幸村也跟著行禮。

父の口上を耳にし、信之も慌てて頭を下げ、やや遅れて幸村も続く。

「不才之處,還請見諒。兩位都吃飽了嗎?」

「お粗末様でした。二人とも満腹になったかな?」

飯後正喝茶的靜子含笑回答。被她招呼的兩人不由自主地上下點頭。

食事を終えて茶を飲んでいた静子が、にこやかな笑みを浮かべて返事する。静子から声を掛けられた二人は、思わず頭を上下させていた。

「靜子大人,承蒙如此款待,且有件厚顏的請求,不知可否容我一言?」

「静子様、このように歓待して頂いた上に、厚かましいことを申しますが、一つお願いがございます」

「沒關係。能否做到另當別論,但我會一直保持傾聽的心。」

「構わないよ。出来る出来ないは別にして、いつでも聞く耳だけは持っているつもりだから」

「那我就不客氣了。想請求借用名聞遐邇的靜子大人的圖書室。」

「はっ。では、遠慮なく申し上げまする。噂に名高い静子様の図書室を利用させて頂きたく存じます」

所謂靜子的圖書室,是指她蒐集來自東西方、古今書籍彙聚一堂的建築。

静子の図書室とは、彼女が集めた洋の東西を問わず、古今の書物が一堂に会する建物を指す。

最初僅字面上是一間房室,但隨著藏書增加成為藏庫,在新宅甚至成了獨立的建築。

最初は文字通り一室だったのだが、蔵書数が増えるに従って蔵となり、新居では独立した建物とすらなっていた。

然而稱呼從未改變,大家依舊稱之為圖書室。

しかし、呼び名は昔から変わることなく、誰もが図書室と呼んでいた。

這座圖書室對在靜子宅邸工作的人廣為開放,像景勝與兼續這類在屋內起居者也被允許閱覽。

この図書室は静子邸で働く者には広く開陳されており、景勝や兼続のように屋敷で起居するものにも閲覧の許可を与えていた。

然而,像昌幸這樣的外部人士要使用並不容易。並非靜子禁止,而是進出靜子宅邸所需的手續過於繁瑣。

しかし、昌幸のように外部の者が利用するのは難しい。静子が禁じている訳ではなく、単純に静子邸へと出入りするのに必要とされる手続きが面倒なためである。

「嗯……從安全面考量也不能許可將書籍帶出。這樣吧,允許每七日中有一天進入圖書室。既然如此,也讓孩子們能接觸書籍,這不是很好嗎?」

「うーん。安全面からも、本の持ち出しは許可出来ないなあ。そうだ、7日に1日のみ図書室への立ち入りを許可しましょう。折角だから子供たちも書物に触れられるようにすると良いんじゃないかな?」

「不僅是我,連愚兒們也受到關照,深表感謝。」

「私のみならず、愚息達にまでご配慮頂き、ありがたく存じます」

就連統轄情報工作的昌幸也對能進出那引人垂涎的圖書室垂涎三尺,而雖然僅限於每七日一天,但獲准進入仍是意外的喜悅。

諜報を統べる昌幸としても垂涎の的であった図書室への出入りを、7日に1日とは言え許されたことは望外の喜びであった。

已將文書交到書庫的老管家手中,並轉交給彩。到了明天應會立刻進行審查與手續。

司書の爺(じい)へと文を認(したた)め、彩へと手渡しておいた。明日になれば早速、審査と手続きをしてくれることだろう。

靜子本來也曾考慮過借出圖書,但因帶出外界可能導致遺失或資訊外洩,決定限於在圖書室內閱覽。

静子としては図書の貸出を考えないでもなかったが、外部へと持ち出すことは紛失や、情報の漏出の可能性が考えられるため、図書室内での閲覧に限定することとした。

「許可證一旦發行會再聯絡您。」

「許可証が発行されたら、追って連絡しますね」

「承蒙厚恩。」

「ありがたき幸せ」

父子齊聲行了恭敬的禮。與因日常工作忙得不可開交而無法常使用圖書室的昌幸相反,每七日必定前來的信之,很快便與景勝一同被稱為圖書室的主人,幾乎不費多時。

親子揃って見事な礼を示した。通常の仕事に忙殺され、それほど図書室を利用できない昌幸とは対照的に、7日ごとに必ず訪れる信之が、景勝と並んで図書室の主(ぬし)と呼ばれるようになるまでに、それほどの時を必要とはしなかった。

進入三月,按靜子所定的新曆已是春天。平日出入稀少的靜子宅邸一角忽然變得慌忙起來。

3月に入り、静子の定めた新暦では春となった。日頃は人の出入りも少ない、静子邸の一角が俄(にわ)かに慌ただしくなっていた。

那裡是服侍靜子的文官們的辦公室。相當於現代的決算報告書,彩為首的下屬們正全力在製作中。

そこは静子に仕える文官たちの仕事部屋。現代で言うところの決算報告書に相当するものを、彩を筆頭とした彼女の部下たちが総出で作成しているのだった。

「損益計算表已完成!」

「損益計算書が仕上がりました!」

「我來確認。接下來拜託這份。」

「確認する。次はこちらをお願いする」

房內包括彩在內約有二十人擠在一起。雖然拆掉襖子成了大房間,但仍覺得奇怪地狹窄。

部屋には彩を含め、総勢で20名ほどが詰めていた。襖を取り払い、大部屋にしてあるが、それでも妙に手狭に感じてしまう。

原因是大量文件堆到走廊。大家一手拿著算盤,有的驗算資料、有的製作新文件,各自埋頭工作。

その原因は、廊下にまではみ出している書類の山にあった。全員が算盤を片手に、資料を検算したり、新たな書類を作成したりと、各々が作業に掛かり切りになっていた。

每月的結算日本就相當忙碌,但這次是全部門的年度總決算,忙得連貓的手都想借來幫忙。

毎月の締め日も、それなりに忙しいのだが、今回は全部署の通年総決算とあって、猫の手を借りたいほどの状況になっていた。

向來即便多忙也不失冷靜的彩,此刻也失去餘裕努力奮戰。

どれほど忙しくとも冷静さを失わない彩も、この時ばかりは余裕を失って奮闘していた。

「內容確認已完成。若獲核准,便交付清稿。」

「内容確認が終わりました。ご決裁頂ければ、清書に回します」

文官們將各自的負責文件拿來,堆放在彩座位上放著等待核批的文箱中。

文官たちがそれぞれの担当分を持ち寄り、彩の席に置かれた決裁待ちの文箱に書類を重ねていく。

因為不像現代有影印機,需要多份的文件仍由誊清班在另室拼命抄寫。

現代のようにコピー機など存在しないため、複数部必要となる書類は今も清書班が別室で必死に書き写している。

房內除了文官們報告進度的聲音外,只有大家彈算盤的聲響、紙與筆摩擦聲,以及幫忙晾乾文件、補充墨與水的雜役忙碌聲。

部屋には文官たちが経過を報告する声の他は、皆が算盤を弾く音や、紙や筆が擦れる音、書類を乾かしたり、墨や水を補充したりする小間使いが立ち働く音しかしない。

統括各部門的彩逐一確認堆積的文件,反覆交叉檢查以確保無誤。

各部署を総括する彩は、積み重なった書類を確認し、クロスチェックを繰り返して間違いがない事を確認する。

只有獲得彩承認的文件才會送交靜子,最終到達信長手中。

彩の承認を得た書類のみが静子へと送られ、最終的には信長の手に届くことになる。

靜子所經營的事業繁多,反之文官人手嚴重不足。

静子が手掛けた事業は多く、反面文官の数は圧倒的に足りていない。

在房內忙碌的人們表情嚴峻,平日常做我行我素四處走動的ヴィットマン一族這幾日也沒出現。

部屋に詰める面々の表情は鬼気迫るものがあり、普段は我が物顔で歩き回るヴィットマンたちも、ここ数日は姿を見せていない。

「年度總決算書已完成,請查閱。」

「通期決算書が完成いたしました。ご確認をお願い致します」

與文件纏鬥了十四天。手持終於完成的文件,彩走到靜子面前。

書類と格闘すること14日。ようやく仕上がった書類を手に、彩は静子の前に進み出た。

或許是極為辛苦的工作,平日不顯疲態的彩眼下浮現濃重的黑眼圈,髮色與光澤也失去。

余程過酷な作業だったのか、隙を見せない彩の目の下には濃いくまが浮かび、髪も色艶を失っていた。

「好的,已收下。如有問題會聯絡,今天的工作就到此為止。待文件精査完畢後,將給予五天特別休假。請部內協調好,讓各自能夠休假。」

「はい、受け取りました。問題があれば連絡しますが、本日の仕事は終わりにして下さい。書類精査が完了したのち、5日間の特別休暇を支給します。部署内で調整し合って、各自が取れるよう取り計らって下さいね」

特別休假是指與年假分開,適時給予的有薪假。簡單來說就是有薪日數增加。

特別休暇とは、有給休暇とは別に適宜支給される有給の休暇である。単純に有給日数が増えたと思えば判り易い。

「謝謝您。」

「ありがとうございます」

「只是特別休假只能在三月和四月兩個月內使用,雖然難度較高但請協調安排。」

「ただ、特別休暇は3月、4月の二ヶ月間しか使えないから、難しいとは思うけど調整をお願いします」

「交給我處理。那麼,失陪了。」

「お任せ下さい。それでは、これにて失礼します」

「好,辛苦了。今天好好休息吧。」

「はい、お疲れ様。今日はゆっくり休んでくださいね」

因為有他人在場而保持公事公辦的態度,但靜子仍希望疲憊不堪的彩能早些休息。

他人の目があるため、事務的な態度に徹しているが、静子は疲労困憊の彩に早く休んでほしかった。

總愛逞強的彩也顯然沒有力氣再撐,微微搖晃著離開了房間。

何かと強がることの多い彩も、流石に取り繕う余裕もないのか、若干ふらつきながら部屋を後にした。

說是要靜子確認決算書,並非要她即刻動手。若靜子親自確認,文件的製作者彩等人就無法休息。

決算書の確認と言っても、今すぐ静子が作業することは無い。静子が確認していては、書類作成者たる彩たちが休息出来ないためである。

不過,靜子所經營的事業皆屬無借貸經營,因此確認相對容易。

とは言え、静子の手掛ける事業はいずれも借入金の無い、いわゆる無借金経営であるため確認は容易だ。

只要能從文件確實追蹤人、物、金的流向,並確認本期收益及資產狀況即可。

人・物・金の流れが書類だけで確実に追え、今期にどの程度の利益があり、資産状況が把握できる事さえ確認できれば良い。

其餘只需檢查各文件間數值的相關性,並附上提交信長用的摘要書,便算完成。

それ以外は、各書類間の数値に関する関連性チェックをすれば、信長へと提出するための要約書を添えて完成となる。

「好,先把決算書收好,然後去把之前借的書還回去吧」

「さて決算書は仕舞って、先に借りていた本を返しに行こう」

靜子把決算書收進上鎖的抽屜,拿著從圖書室借來的書離開了房間。

静子は決算書を鍵のかかる引き出しにしまうと、図書室から借りてきていた本を片手に部屋を後にした。

進入圖書室時,映入眼簾的是兩個背影在閱覽席上把書堆成了一座小山。較小的兩個背影,一個是景勝,另一個是信之。

図書室に入ると、閲覧席に陣取って本を山と積んでいる後姿が目に飛び込んできた。小さな二つの後ろ姿は、片方が景勝、もう一人が信之であった。

想起今天是信之的使用日,靜子便走向櫃檯請司書辦理還書手續。

そう言えば、今日が信之の利用日だったなと思いつつ、静子はカウンターへ向かって司書に返却手続きを頼む。

還書結束後,靜子穿梭在書架間尋覓下一本要借的書。

返却を終えた静子は、次に借りる本を物色するため本棚の間を巡る。

使用者都知道書的價值,會小心對待,但受歡迎的書籍還是免不了因手汗和手油而顯得殘舊。

利用者は皆、本の価値を知っているため、大切に扱ってはいるが、人気の書籍は手汗や手油でどうしてもくたびれてきていた。

(俗話說「與其讀十遍不如抄一次」,要不要推薦抄寫並買下抄本呢?)

(『十遍読むより一遍写せ』って言うし、写本を推奨して買い取りもしようかな?)

這句諺語所指的是讀書的要旨:與其反覆讀同一本書,不如親手抄寫一次,能更深入理解內容。

この諺(ことわざ)が意味するところは、読書の要諦である。書物を何度も読み返すより、内容を一度書き写した方が、内容を良く理解できると説いている。

雖然有專門負責抄寫的部門,但藏書數量龐大,根本追不上書籍增加的速度。

写本をするための専門部署はあるものの、蔵書の数は膨大であり、本の増える速度に到底追い付いていない。

因此,即使是已印刷過的書,也難以輕易請求再版。

それゆえ、一度印刷した本とは言え、気軽に再度印刷して欲しいとは言いにくかった。

(因紙質關係,恐怕得再從ガリ切り(製作ガリ版印刷原版)重新做一次……)

(紙質の関係で、もう一回ガリ切り(ガリ版印刷の原版を作ること)からやり直して貰わないといけないね……)

與硬質纖維紙不同,因為用的是在和紙上塗蠟後作為ガリ切り的材料,耐久性有問題,所以無法靈活地只印一冊之類。

硬質なパルプ紙とは違い、和紙に蝋引きしたものをガリ切りに使用しているため、耐久性にも難があり、一冊だけ印刷するなどと言う小回りが利かないと言う背景もあった。

正當靜子苦惱時,側邊有人喚住她。

静子が思い悩んでいると、横合いから声が掛かった。

「這是,靜子大人。打招呼遲了十分抱歉,完全沉浸於書中,失禮了」

「これは、静子様。ご挨拶が遅れて申し訳ございませぬ。すっかり書にかまけて、失礼いたしました」

從這點看,抄本只要有紙和筆,靠本人勞力就能增加書籍。開架書庫的書保密性低,即便內容被記住也沒問題;若把抄本買下,也不會有外流的問題。

その点、写本ならば紙と筆さえあれば本人の労力だけで本が増える。開架書庫にある本は機密性も低いため、内容を覚えられても問題ないし、写本自体を買い取れば流出する事も無い。

因為這樣對雙方都有利,正要陷入要不要製作抄本套件的思考泥沼時,她回過頭去看聲音的方向。

これなら双方にメリットがあるから、写本キットでも作ろうかと思考が深みにはまりつつあったところから抜け出して、声の方を振り返った。

臉頰微紅、向她搭話的正是信之。

頬を紅潮させながら声をかけてきたのは信之であった。

年幼的信之聲音高亢且洪亮,引得其他使用者側目觀望,但景勝似乎習慣了,絲毫不為所動,沒有把目光從書上移開。

まだ幼い信之の声は高く、良く通るため利用者が何事かと注視したが、景勝は慣れているのか気にすることもなく本から目を離さなかった。

「每次我來都不必特地打招呼啦。不過看起來你讀得很投入呢?閱覽席上的書堆了一大堆,是從早上就這樣嗎?」

「私が来るたび挨拶する必要なんてないよ。それにしても随分と読み込んでいるみたいだね? 閲覧席に本が山積みだったよ、朝からずっと?」

靜子咯咯笑著問,信之眼睛一亮地回答。

静子がくすくすと笑いながら問うと、信之は目を輝かせながら返答した。

「是、是的。這裡超出想像。彷彿天下萬事都收在這裡一般。按領域分類整理,照著指引就能輕易找到想要的書,真是令人驚訝!」

「は、はい。ここは想像以上でした。天下の全てがここに収まっているかと思うほどです。分野ごとに本も整理され、案内に従えば容易に目当ての本が探せるというのも驚きです!」

覺得最近好像也聽過類似的誇讚話語,她把視線投向景勝。也許是長時間維持同一姿勢造成痠痛,景勝正靠在有靠背的椅子上伸了個懶腰。

最近似たような絶賛の台詞を聞いたなと、景勝の方へ目線を送る。同じ姿勢を続けて体がこったのか、景勝は背もたれ付きの椅子に体重を預けて伸びをしている最中だった。

被靜子的視線發現後,景勝下意識用手上的書遮住臉,轉向閱覽席。雖然聰穎且顯得成熟,但他還不到二十歲。

静子の視線に気づいた景勝は、思わず手にした本で自分の顔を隠し、閲覧席に向き直った。利発で大人びてはいるものの、彼は二十歳に満たない若者だ。

沉浸在喜愛的事物中難免會疏忽,他整理堆成一堆的書,努力讓雜亂的印象消退一些。

好きな事に没頭していれば、隙も出来ようというものだった。彼は山積みになった本を整理し、少しでも雑然とした印象を払拭しようと努力していた。

靜子帶著微笑看著,覺得他就像被母親叮囑整理的孩子。

まるで母親に片づけを言いつけられた子供のようだと、静子は微笑ましく見守る。

「你對很多不同的領域都很感興趣呢?」

「随分と色々な分野に興味があるんだね?」

信之手上的書從實用書到娛樂讀物都有,沒有一致的類型。他既看武士子弟喜愛的戰記,也涉獵農業和園藝相關的書籍。

信之が手にしている本は、実用書から娯楽本まであり、ジャンルに一貫性が見えなかった。武士の子が好む戦記もあれば、農業や園芸に関する本にも手を出していた。

「是。我並不會讀到要專精某一門才算,我打算先看目錄,把有興趣的書都讀完再來決定。」

「はい。某は、これを究(きわ)めると定める程に本を読んではおりませぬ。まずは目録を見て、興味のある本を全て読んでから決めようと思っておりまする」

「對各種事物都感興趣是好事。但光讀完就算了很可惜,要拓展視野,讓讀到的內容真正成為自己的東西。」

「色んな事に興味を持つのは良いことだよ。でも読むだけで終わるんじゃ勿体ないね。読んだ内容をしっかり自分の物に出来るよう見分を広めなさい」

「是,我會銘記在心。」

「はい、肝に銘じます」

「很好。啊,說起來快到午餐時間了,要不要一起吃午飯?喜平次君也會一起來吧?」

「よろしい。あ、そう言えばもうすぐ昼時だけど、一緒に昼餉でもどうかな? 喜平次君も一緒に来るよね?」

「我也願同去用餐。」

「ご相伴に与(あずか)ります」

景勝毫不遲疑地接受了靜子的邀請。既無拒絕的理由,而且他的小姓兼續和慶次結伴出城,也是他答應的重要原因。

静子の誘いに景勝は迷わず応じた。折角の誘いを断る理由もないし、自身の小姓である兼続が慶次と連れ立って街へと繰り出しているというのも大きかった。

也許會被認為讓小姓放任主人自行外出遊玩是極不可取的,但景勝並不在意。

小姓が主人を放置して遊びに出かけるなど言語道断だと思われそうだが、景勝自身は気にしていなかった。

他認為身為遠離親人的人質生活,偶爾的自由應該可以被允許。

親元から遠く離れての人質生活であり、たまの自由ぐらい許されるべきだと彼は考えていた。

「我、我也一同前往!」

「そ、某もご一緒致します!」

與立即回應的景勝相反,稍遲疑的信之似乎受景勝激勵,於是也有些競相地回答說要一同前往。

即応した景勝とは対照的に、少し躊躇った信之は、それでも景勝に触発されたのか、張り合うように応じた。

「好好。那我等會去接你們。在那之前自由閱讀吧。」

「よしよし。それじゃあ、後で迎えを送るよ。それまで自由に読書していてね」

再久留下去會妨礙閱讀,尤其信之一週一次的珍貴機會更是如此。靜子如此一想,便結束談話,向兩人揮手後離開了圖書室。

これ以上の長居は読書の邪魔になる。特に信之は7日に1度の貴重な機会である。そう考えた静子は、話を切り上げると、二人に手を振って図書室から去っていった。

午餐是鰻魚飯(ひつまぶし)。兩人真的吃得飽到不行,下午對抗睡意時頗為吃力。

昼餉はひつまぶしだった。文字通り鱈腹(たらふく)になった二人は、午後の睡魔と戦うのに苦労した。

在靜子等人安穩度日之際,近衛前久在京中不斷擴張勢力,並未稍懈。儘管如此,他既不濫施強權,也不以賄賂取人心。

静子達が穏やかに過ごしている中、近衛前久は京での勢力拡大に余念が無かった。とは言え、強権を振るうでもなく、賄賂を渡す訳でもない。

他積極傳播文化,振興藝術與娛樂,常常招待公家,展現從尾張帶來的珍奇文物。

積極的に文化を発信し、芸術や遊興を振興した。彼は頻繁に公家達を招いては、尾張由来の珍しい文物を振る舞った。

對於那些因京中治安惡化而遷往地方荘園的人來說,這成為他們重返京都的充分理由之一。

それは治安が悪化した京を捨て、地方の荘園へと移り住んでいた者にとって、再び京へと舞い戻るに十分な理由となった。

此外,自信長上洛後,徹底的取締使治安恢復穩定,曾一度荒廢的京城也重現昔日光彩,這亦是重要因素。

信長の上洛以降、徹底した取り締まりにより治安が安定し、荒廃していた京が、かつての輝きを取り戻した事も大きい。

再者,前久的宅邸有別於他處的巧思。京都位於盆地,入冬時冷空氣滯留,會出現所謂的徹骨寒冷現象。

更に前久の邸宅には他所とは違う工夫が凝らしてあった。京都は盆地であり、冬ともなれば冷たい空気が停滞し、いわゆる底冷えと呼ばれる現象が発生する。

當時的建築樣式講求通風,無法期待氣密性,夏季或許舒適,但冬天只能抱著火鉢忍耐。

気密など望むべくもない当時の建築様式では、夏は快適であっても、冬は火鉢を抱えて我慢するより他に無かった。

話雖如此,寒冷仍會降低人的活動力。現代有保溫性佳的衣物,即便戶外多重著裝也能抵禦相當寒冷。

そうは言っても寒ければ人の活動性は下がってしまう。現代では断熱性に優れる衣服が多くあり、野外に於いても重ね着などをすれば相当の寒さに耐えることが出来る。

戰國時代並無此類衣料,前久認為單靠疊穿也有失雅致,必須想出既優雅又能抵禦寒冷的手段。

戦国時代ではそういった衣服は存在しないし、ただ衣類を重ねるだけでは雅が無いと前久は考えた。優雅であり、それでいて寒さを凌げる手段を講じる必要があった。

因此前久採取的對策,是從尾張招來匠人,在自宅敷地內建造一座氣密性高的別邸。

そこで前久が取った対策とは、尾張から職人を招いて、自宅の敷地内に気密性の高い別邸を築くことだった。

外牆塗以灰泥白壁,內部採中空構造,夾層填入毛氈作為斷熱材料。

外壁を漆喰塗りの白壁に仕上げ、内部を中空構造とし、間に断熱材としてフェルトを仕込んだ。

眼尖者或許能看出別邸外觀與內部空間有所差異,但能窺見其用意者卻無幾。

目端の利く者が見れば、別邸の外観と内部の空間に差があることに気が付けるかも知れない。しかし、その意図までをも見抜ける者はいない。

前久的巧思並不止於此。憑靜子的見識,他了解到濕度對體感溫度影響甚鉅,於是還安裝了加濕裝置。

前久の工夫は、これだけに留まらない。静子の知識を元に、体感温度に湿度が大きく影響することを知り、加湿器をも仕込んでいた。

當然不是電力式的加濕器,而是將盛水容器自下方加熱送出蒸氣的原始加濕器,但能提供遠勝乾燥冬季空氣的環境。

無論、電気式の加湿器などではなく、水を入れた容器を下部から熱して蒸気を送る、原始的な加湿器だ。しかし、乾燥した冬の空気とは比べ物にならない環境を提供してくれる。

問題在於要保有雅致,不能讓人看出過於露骨的取暖與保濕措施。

難点は優雅であることにあった。露骨に対策をしていることが見えては雅ではない。

因此加濕器安置於地板下空間,蒸氣經毛氈包裹的保溫管道秘密送入室內。

そのため加湿器は床下の空間に設置され、フェルトで巻かれた断熱パイプを通って、密かに空気を送り込む。

送風口則以欄間覆蓋,肉眼難以察覺孔洞的存在。

送風口は欄間(らんま)で蓋をされ、一見して穴が見えないようになっていた。

為阻隔自地板下湧上的寒氣,榻榻米下亦鋪有毛氈,別邸內部因此成為出奇舒適的環境。

床下からせり上がってくる冷気を遮断するため、畳の下にもフェルトを敷き、別邸の室内は驚くほど快適な環境となっていた。

「果然不愧為近衛大人。玻璃障子真是美麗。能在溫暖室內眺望冬景,別有一番風味啊」

「流石は近衛様。玻璃(はり)(ガラス)の障子とは美しい。温かい室内から、冬景色を臨めるとは格別ですな」

「哪裡哪裡,此離座只是我能勉強準備的極限。自被逐離京後,我等這些鄙人能否盡善盡美地款待諸位,內心實在心懷忐忑」

「いえいえ、私ではこの離れを用意するので精一杯。京を追われた鄙(ひな)もの(田舎者の意味)が、皆様を十分におもてなし出来ているのかと内心恐れております」

眾公家一邊品嘗靜子親傳的茶碗蒸,一邊讚不絕口;前久則在謙遜中觀察他們的反應。

静子直伝の茶碗蒸しに舌鼓を打ちつつ、招かれた公家達が口々に前久を褒め称えた。前久は謙遜しながらも、公家達の様子を観察していた。

今日是由前久主辦的歌會,之後正好到了適宜的時刻,便款待了晚餐。

今日は前久が主催した歌会があり、その後に調度良い頃合いという事で夕餉を振る舞っているところだった。

享用能從內裡溫暖身心的菜肴與名聞遐邇的尾張清酒後,公家們為前久的財力與最先端的文化所傾倒。

体を芯から温める食事と、絶品と名高い尾張の清酒を口にした公家達は、前久の財力と最先端の文化に酔いしれた。

順帶一提,天皇所舉辦的歌會稱為歌御會,年初的歌會稱為歌御會始(後於大正改稱歌會始)。

余談だが天皇が催しする歌会は歌御会(うたごかい)と言い、年の初めの歌会を歌御会始(うたごかいはじめ)(大正に歌会始(うたかいはじめ)に改称される)と呼ぶ。

這類廷內的權力鬥爭表面上似乎與信長等人無益,但實際上對投資而言有諸多利點。

こうした朝廷内の権力闘争は、一見信長たちに何の利益も齎さないように思えるが、投資をするに十分な利点があった。

雖然世道漸成武家社會,表面上凡事仍需朝廷權威背書之姿態不改。

世の中は武家の社会になっているとはいえ、建前上は何をするにも朝廷の権威が必要となる。

若以親近前久為中心建立派閥,便能在各項事務上取得便利。公家雖無軍事力,然其悠久歷史與權威極具利用價值。

こうして前久を中心に派閥を作り上げれば、何かと融通が利くようになる。公家達に軍事力など存在しないが、彼らが営々と紡いできた歴史と権威は利用価値が高かった。

而此時多數公家已失去荘園收入,亦有公家以土地或財產為抵押,向商人籌措資金。

そして今は多くの公家が荘園からの収入を失い、土地や財産を担保に商人たちから金を都合する公家もいる。

其中不乏連日常生活皆難維持、祖傳土地與屋宅被奪,遷入破敗空屋、拮据到借錢度日的公家。

中には日常生活すらままならず、先祖伝来の土地や屋敷すらも奪われ、粗末な空き家に移り住み、生活資金を借りながら爪に火を点すような暮らしぶりの公家すら居た。

前久若廣邀諸多公家宴會,自能掌握他們的經濟狀況等情報。

前久が多くの公家達を招いて宴を開けば、そうした公家達の経済状況などを知ることが出来る。

正如『溺者亦抓稻草』,只需些微經濟援助便能讓人投向前久派閥,並進一步提升在朝廷的發言力。

『溺れる者は藁をもつかむ』の言葉通り、僅かな経済援助で前久の派閥へ転び、一層朝廷への発言力が高まっていく。

不過,若由信長親自以此類鉤稽手段行事,則會傷及公家的自尊;透過深悉貴族微妙之處的前久來周旋,成功率反倒較高。

とは言え、こういった搦め手を信長がやれば公家達の矜持を傷つける。貴族たちの機微を知る、前久を通して工作する方が、成功率も高かった。

「別這麼客氣。對了,關於貴府令千金的傳聞,連麻呂也耳聞了」

「ご謙遜を。そうそう、ご息女のお噂。麻呂の耳にも届いておりますぞ」

「此言恐辱我耳。自離京以來,我長期與武家諸人交好,多虧此緣,令千金雖年輕卻涉足諸多事務,至今尚無嫁娶之相」

「これはお耳汚しを。私は京を離れて以来、長らく武家の者たちと懇意にして参りました。お陰で娘も女だてらに、あれやこれやと手を広げ、未だに嫁ぐ気配もございませぬ」

「然而,承蒙令千金相助,諸人方能重返京中。她作為公家與武家之橋樑,展現了難得的才幹」

「しかし、ご息女のお力添えあって、皆が京へと戻ることが出来たのです。我ら公家と武家との架け橋として、稀有な才を示しておいでだとか」

公家遮掩口邊以扇微笑。從此展開的心機試探,正是前久展現手腕之處;他一面報以應酬的笑,一面虎視眈眈伺機。

扇子で口元を隠しつつも公家は笑う。ここからの腹の探り合いは前久の腕の見せどころとなる。前久は愛想笑いを返しつつも、虎視眈々と機会を窺っていた。

進入三月後,信長頒布了多項令制,範圍廣及曆法、度量衡、新貨幣等多方面。

三月に入ると、信長は多くの令を発布した。暦法(れきほう)、度量衡(どりょうこう)、新貨幣などを始め、内容は多岐に亘った。

其中有透過前久影響天子,頒發針對公家田地的德政令。德政令實為債務赦免,債權人當然不歡迎。

中には前久を通して帝を動かし、公家の土地に対する徳政令をも出した。徳政令は借金の踏み倒しであり、債権者には無論歓迎されない。

雖有商人聯合會向信長陳情,但他回絕道:此令只適用於那些趁人困境高收利息、詐奪祖產者,故不予採納其主張。

商人たちの組合を通して信長へと陳情が届いたが、彼は「苦境に付けこんで法外な利子を取り、先祖伝来の土地屋敷を騙し取った悪辣な者にしか適用されていない」として取り合わなかった。

部分商人感到不滿,然而此德政令大體上仍被好意接受。

一部の商人たちは不満を抱いたが、この徳政令は概ね好意的に受け入れられた。

因為與其長期持有正在復興中的京地而招致怨恨,不如速將土地退還以討好公家,反而更有利可圖。

復興しつつある京の土地を抱え続けて恨みを買うよりも、さっさと返して公家に取り入った方が儲けも期待できるからだ。

制定曆法與度量衡是統治者的證明。住在日之本的幾乎所有人,被迫理解到信長時代已經到來。

暦法や度量衡を制定する事は支配者の証。日ノ本に住むほぼ全ての人間が、信長の時代が来たと否応なく理解させられた。

與此同時,信長被朝廷任命為従三位参議。参議是僅次於大臣與納言的重要職位,也是朝廷最高機關太政官的官職之一。

時を同じくして信長は朝廷より従三位(じゅさんみ)参議(さんぎ)に任ぜられた。参議とは大臣や納言(なごん)に次ぐ、重要な役職であり、朝廷の最高機関たる太政官の官職の一つだ。

顧名思義,這是能參與朝廷政務議事的職位。因為是參與國政的高官,因此就任時有一定條件。

名前通り、朝廷の政務に関する議事に参与できる役職である。国政に携わる高官ゆえに、就任するに当たって条件が存在する。

以信長而言,因同時獲賜従三位,故被列為参議。

信長の場合は、同時に従三位を賜っているため、参議に列せられた。

「真是一帆風順啊」

「とんとん拍子で物事が進むね」

信長在京停留期間的警備,由即便人數少但對有事能迅速應對的靜子軍擔當。主力由才蔵率領隨軍,慶次與長可則被編為遊擊隊。

信長が京に滞在中の警備は、少数でも有事への即応力が高い静子の軍が担う事となった。主力は才蔵が率いて従軍しており、慶次と長可は遊撃隊とされた。

慶次不喜守候,一抵達京城便留下部隊,獨自一人悠然消失。

慶次は待ちの姿勢を良しとせず、京へと着いた途端に隊を残して一人でふらりと消えた。

雖然長可率著部隊,但與慶次差不多,自稱警邏,帶隊在京城街頭活動。

長可は部隊こそ率いてはいるものの、慶次と大差なく、警邏(けいら)と称して京の街へと繰り出していた。

留在駐所的只剩靜子直屬的龍騎兵隊(銃騎兵)與才蔵軍。

詰所に残っているのは静子直卒の竜騎兵部隊(銃騎兵)と、才蔵軍だけとなっていた。

靜子本人也不了解慶次與長可的動向,對敵方來說無法預測何時會遇到他們,因而無意間製造出令人緊繃的局面。

静子自身も慶次と長可の動向を把握していないため、敵からすればいつ慶次や長可と遭遇するか判らず、緊張を強いられる状況を期せずして生み出していた。

「与吉君單獨在安土周邊做環境調查。足滿叔叔在尾張代我行事。總覺得自己好像成了用來留住軍隊的擺設。」

「与吉君は、単独で安土周辺の環境調査。足満おじさんは尾張で私の名代。なんか、私って軍を留めるための置物になっている気がするよ」

「那就代表靜子大人具有相當的凝聚力。僅有靜子大人在場,京都的民眾便能安心。請務必慎守,不要輕舉妄動,在這邊穩穩撐著就好。」

「それだけ静子様に求心力があるという事です。静子様が居られるだけで、京の民は安心するというものでしょう。どうか、軽挙妄動は謹んで頂き、こちらでどっしりと構えていて下され」

才蔵責備了靜子的喃喃自語。或許是受信長影響,靜子也養成了突然單騎衝動行動的習性。

静子の呟きに才蔵が窘(たしな)める。信長の影響か、静子にも突然単騎で突っ走る癖がついてしまっていた。

不過,現今的靜子是公家首席近衛家的女兒,在織田家也占有被稱為重鎮的地位。

ただし、現在の静子は公家筆頭である近衛家の娘であり、織田家でも重鎮と呼ばれる地位を占めていた。

與頭銜相對,她在身體上相當纖弱,若一人捲入麻煩甚至有喪命之危,部下們提心吊膽。

肩書とは対照的に、肉体的にはか弱い女性であり、一人で厄介ごとに巻き込まれようものなら、命を落とす危険すらあり、部下たちは生きた心地がしないのだ。

「啊啊……那次給各位添了麻煩。雖然可能會抱怨幾句,但果然不會再做那種事了。」

「いやあ……あの時はご迷惑をおかけしました。まあ愚痴は出るかもしれないけど、流石にあんな真似はもうしないよ」

差點演變成責任問題,警備負責人才蔵竟提出要切腹,於是靜子不再單獨出行。

あわや責任問題となり、警備の責任者である才蔵が腹を切ると言い出したため、静子一人でのお忍びはなくなった。

值得一提的是,最接近天下人的信長即便地位改變,仍以單獨出遊自稱偷偷行動。

なお、天下人に最も近い信長は、立場が変わっても一人でお忍びと称して動いている。

「要是只是抱怨的話,這才蔵可以陪你說多久都行。」

「愚痴程度ならば、この才蔵がいくらでもお付き合い致します」

「又被敘任為従四位下。果然不能再輕率行動了。」

「従四位(じゅしい)下(げ)に叙任されちゃったしね。流石に軽率な行動は出来ません」

被朝廷委任為藝事守護的靜子,同時獲賜従四位下的位階,然而未被授予官職,成為無官。

芸事の守護を朝廷より任された静子は、併せて従四位下の位を賜っていた。ただし、官職は与えられず無官となっている。

原本並無意安排位階,但既然採取朝廷要求的形式,不給任何東西也不妥。

元々は位階を任ずる予定では無かったが、朝廷側から依頼した形式をとる以上、何も与えないのでは具合が悪い。

但又不能突然委以高位,因此作為所謂的名譽職被任為従四位下。

さりとて、いきなり高位に任ずるわけにもいかないため、いわゆる名誉職として従四位下に任ずることとなった。

順帶一提,官方不為人知的靜子別名『仁比売(ニヒメ)』曾獲當時天皇賜予従四位上。

余談ではあるが、公式には知られていない静子の別名『仁比売(ニヒメ)』は、時の帝より従四位上(じょう)を賜っている。

靜子的敘任使朝廷陷入紛爭,但靜子本人完全置身事外,她只收到一份通知,稱信長已代她接受此事,連選擇權都未給她。

朝廷を紛糾させた静子の叙任だが、当の静子は完全に蚊帳の外におり、彼女の許には信長が静子に代わって引き受けたという通知のみが齎され、彼女には選択肢すら与えられなかった。

對信長而言,於朝廷內擴張勢力並增強發言權,毫無理由拒絕。靜子已成為天下聞名的女傑,如今再掩飾也無多大意義。

信長としては朝廷内に、自分の勢力が増えて発言力が大きくなるため、断る理由はない。既に静子は天下に名の知れた女傑となっており、今更隠し立てする意味は薄かった。

「嘛,既然拿到官位也不會改變要做的事,還是得為明天做準備才行。」

「まあ、官位を貰ったところでやることに変わりはないんだし、明日の準備をしておかないとね」

靜子一邊拍著手中的一疊文件一邊開口說道。

手にした紙の山を叩きながら静子は口を開いた。

就算得了官位,成為允許昇殿的殿上人,靜子要做的事也不會改變。

官位を得て、昇殿を許される殿上人(でんじょうびと)となろうとも、静子のやることは変わらない。

她認為利用高位從政的是信長,自己又不擅心機,根本無法從事政治。

高位を利用して政治をするのは信長であり、腹芸の出来ない自分が政治などやれるはずもないと考えていた。

她認為現在是為信長統一日之本而潛伏的時機,於是決定乖乖扮演擺飾般的角色。

今は信長の日ノ本統一に向けて雌伏の時と考え、静子は大人しく置物としての役割を果たすことにした。

話雖如此,她既然已來到接近日之本門戶堺的京城,覺得稍微沉溺興趣也無妨,於是積極與外界交流。

そうは言っても日ノ本の玄関口たる堺にほど近い、京まで来たのだ。少しぐらい趣味に走っても罰は当たらないと考え、彼女は精力的に外部との交流を持っていた。

她不問出身或背景,無論是京城百姓、遠道而來的行商,或平日無交往的寺社人士,皆成為她了解此時代歷史與風土的訊息來源。

出自や背景などは問わず、京の民であったり、遠方から訪れた行商だったり、普段関りの無い寺社関係の人間だったりと、この時代の歴史や風土を知る情報源を求めていた。

靜子特別喜歡的是耶穌會帶來的奴隸們。不僅僅是黑人,各式各樣的人種都被當作奴隸。

特に静子が好んだのが、イエズス会が連れてきた奴隷たちだった。黒人だけに限らず、実に様々な人種が奴隷として扱われていた。

可能是從西班牙人那裡來的,像是阿茲特克人與印地安人,也有阿拉伯系與亞洲系的人種,光是外貌就呈現混亂多樣的景象。

恐らくスペイン人から得たのであろう、アステカ人やインディアン。アラブ系、アジア系の人種もおり、外見だけでも混沌とした様相を見せていた。

談到奴隸,首當其衝的是黑人奴隸,但不論何種人種都有被奴役的人,這也是活生生的證據。

奴隷と言えば、真っ先に黒人奴隷が挙げられるが、どんな人種であろうとも奴隷となった人々はいたという生きた証拠でもあった。

靜子付錢給奴隸商,直接向奴隸們傾聽。他們的成長背景、成為奴隸前的生活習俗、文化、風俗,以及宗教與思想等,她盡可能詳盡打聽。

静子は奴隷商に金を払い、奴隷たちから直接話を聞いていた。奴隷たちの生い立ちや、奴隷になる前の生活習慣、文化、風習に宗教や思想などについても時間が許す限り聞き出した。

對被訪者而言,只要講述過去的故事就能免除勞役,甚至還能得到一點報酬。大家興高采烈地陳述自己的見聞。

聞かれる方にとっては昔話をするだけで労役を免除され、更には少しばかりの報酬さえも得られる。皆が嬉々として己の知識を開陳してくれた。

當然,對非日本人的奴隸需由奴隸商提供通譯,費用不小,但能接觸到書本無法得知的第一手資訊,靜子感到滿足。

勿論日本人以外の奴隷については、奴隷商の通訳を付けて貰う必要があり、それなりの費用が嵩んだが、書物では知り得ない生の情報に触れられた静子は満足していた。

靜子把那些談話摘要記錄,打算日後編纂成了解當時風物的書籍。

静子はそれらの話を要約して書き取り、後で当時の風物を知る書物として編纂するつもりでいた。

現在靜子執著的是印第安奴隸所述的原住民文化。

現在静子がご執心なのは、インディアンの奴隷が話す先住民の文化についてだった。

阿茲特克人的奴隸甚至拒絕交談,但她卻能與印第安奴隸建立友好關係。

アステカ人奴隷には会話すら拒絶されたが、インディアンの奴隷とは友好な関係を構築出来ていた。

這差異產生的原因很單純,源於印第安人的價值觀。印第安奴隸所屬的部族將鷲視為神聖的動物,馴服者會受到一定的敬重。

この差が生まれた理由は単純であり、インディアンの価値観にあった。インディアン奴隷の属する部族は、ワシを神聖な動物として崇めており、手なずけた者には一定の敬意が払われる。

靜子所持的鷲羽也是重要物品,他們佩戴的羽飾稱為「ウォー・ボンネット」,作為在戰鬥中英勇立功者的勳章,一根一根地頒給那些人。

静子が持っていたワシの羽根も重要なアイテムであり、彼らが被る羽根飾りは『ウォー・ボンネット』と呼ばれ、戦闘で勇敢に戦って手柄を立てた者への勲章として、一本ずつ与えられるものだった。

當然一開始是被警戒的。然而在他們談判時進行的菸斗傳遞儀式中,他宣稱「只有對勇敢者才會回答」,於是靜子便讓印第安奴隸見到了オウギワシ的シロガネ。

無論、最初は警戒されていた。しかし、彼らが交渉時に行うパイプ煙草の回し飲みの際に「勇敢な者になら答える」と彼が宣言したため、静子はオウギワシのシロガネをインディアン奴隷に引き合わせた。

對他們印第安人而言,菸草具有重要意義。以菸斗吸菸這一行為,被認為是透過從菸斗升起的煙與居於天上的偉大存在對話。

彼らインディアンにとって煙草は重要な意味を持つ。パイプで煙草を吸うという行為は、パイプから立ち上る煙によって、天上に住まう大いなる存在と会話することとされた。

因此在和平談判或交易時會傳遞菸斗並向偉大存在發誓。以偉大存在為證所發的誓言,是絕對不可違背的。

このことから和平交渉や取引の際には、パイプ煙草を回し飲みし、約束を大いなる存在に誓った。大いなる存在が証人となって誓った内容は、絶対に破ることを許されない。

「人死後你認為會怎樣?」

「人が死んだらどうなると思う?」

「勇敢之人啊。我們不把死亡視為特別的事。只是捨棄肉體,只剩下靈魂。靈魂是不滅的,生命會延續。」

「勇敢なる者よ。我らは死を特別な事とは考えない。肉の体を捨て、魂だけとなるだけだ。魂は不滅であり、命は続いていく」

「你們吃些什麼?」

「どんな物を食べていたの?」

「有時也會狩獵野牛或馴鹿等,但大多以穀物為主。也吃豆類、玉米、南瓜。豆與玉米會曬乾、風乾後儲藏。」

「バイソンやカリブーなどを狩猟する事もあったが、多くは穀物だ。豆やトウモロコシ、カボチャも食べた。豆やトウモロコシは乾して乾燥させて貯蔵した」

由於透過翻譯,話語被濃縮成短句,但靜子並不在意。她將印第安奴隸的話記錄下來,然後重複提出下一個問題。

通訳を通しているため、短いセンテンスに集約されてしまっていたが、静子は気にしなかった。インディアン奴隷の言葉を書き取り、次の質問をすると言う事を繰り返した。

到了午時,便用夏天收成並保存的甜玉米做成適合他們食性的玉米粥,一起吃午飯。

昼時を迎え、彼らの食生活にあったトウモロコシのポリッジを、夏に収穫して保存しておいたスイートコーンで作り、一緒に昼餉を取ることにした。

只稍微汆燙回溫就很甜的甜玉米令印第安奴隸驚訝,但看來與他所想的粥的味道不同。

茹で戻しただけでも甘いスイートコーンにインディアン奴隷は驚いていたが、彼の思うポリッジの味とは違っていたようだった。

他說下次有機會會親自下廚大顯身手。

次に機会があれば、彼自身が腕を振るってくれると言っていた。

「勇敢之人啊,我們再會。」

「勇敢なる者よ、また会おう」

告別時,印第安奴隸的態度也是簡潔淡然。明明不知道何時會被誰賣掉,他卻連悲觀的神情都沒有。

別れの際も、インディアン奴隷の態度はあっさりとしたものだった。何時誰に売られるともわからない身の上だと言うのに、彼はそれを悲観している様子すらなかった。

其中有他自己的哲學,靜子甚至羨慕他那順其自然的生活態度。

そこには彼なりの哲学があり、あるがままに生きるその姿を羨ましいとさえ思った。

「積了不少呢」

「随分とたまったね」

看著自家倉庫裡字面上堆成山的紙,靜子喃喃道。紙的原料使用楮(コウゾ)、三椏(ミツマタ)、雁皮(ガンピ)、麻(アサ)這四種。

自宅の倉庫に文字通り山積みにされている紙を見て、静子は呟いた。紙の原料には楮(コウゾ)、三椏(ミツマタ)、雁皮(ガンピ)、麻(アサ)の4種類を使っている。

迄今為止是採收自生的或向商人購買的原料,但靜子為了大量生產紙張,決定大規模展開原料生產。

今までは自生しているものを収穫したり、商人から買い求めたりしていたが、静子は紙を大量生産するため、大々的な原材料生産に乗り出すことにした。

考慮到成紙的品質,栽培雁皮是理想的選擇,然而雁皮生長緩慢且栽培困難。

出来上がる紙の品質を考えれば、雁皮を栽培するのが理想なのだが、雁皮は生育が遅く、更に栽培が困難であった。

因此改以栽培容易、每年能穩定收成的楮為主,並將三椏作為副材料栽種。

そこで栽培が容易であり、毎年安定した収穫が期待できる楮を主とし、三椏を副材料として育てることにした。

「果然是越前和紙,做得很好。美濃和紙也不遜色,但果然還是適合用於紙格窗或包裝紙。」

「しかし、流石は越前和紙。良いものを作るね。美濃和紙も負けていないけど、やっぱり障子とか包み紙用だね」

靜子一邊撫摸為抄寫準備的越前和紙那光滑的表面,一邊喃喃自語。

清書用に用意した越前和紙の、滑らかな表面を撫でながら静子は呟く。

越前被制伏後,靜子收攬了越前的工匠,當中當然有和紙職人。

越前制圧後、静子は越前の職人たちを抱え込んだ。その中には当然、和紙職人もいた。

為了增加和紙的生產量,靜子設立了和紙生產據點,將和紙職人們安排進去。

和紙の生産量を増やす為、静子は和紙生産の拠点を立ち上げ、和紙職人たちをそこに放り込んだ。

對環境差異感到困惑的越前和紙職人們,當他們知道若不介意習慣用具和設備的缺乏,待遇其實很好時,就開始勤奮地造紙。

環境の違いに戸惑った越前の和紙職人たちも、使い慣れた道具や設備がない事に目を瞑れば好待遇であると知ると、せっせと和紙を作り始めた。

在他們開始積極投入後,靜子像對待美濃和紙職人一樣,挑選技藝優秀的職人,授予『名人』或『達人』等稱號。

彼らが意欲的に取り組むようになったところで、静子は美濃和紙の職人たちと同じく、腕の良い職人を選んで『名人』や『達人』などの称号を与えた。

然而對被授予稱號的職人來說,除了自己漉的紙被與他人的區別對待、報酬略有差別外,待遇並沒有改變。

しかし称号を与えられた職人からすれば、自分が漉いた紙を他の職人のものとは別扱いにされるのと、若干報酬に色が付く以外には待遇も変わらない。

職人們不理解也不足為奇,這對販售方來說具有品質保證的意味。

職人たちが判らないのも当然であり、これは売る側にとっての品質保証という意味合いを持っている。

由『名人』或『達人』所漉的紙品質上乘是理所當然的,故其商品價值自然也有所不同。

『名人』や『達人』が漉いた紙が上質なのは当然であり、従ってその商品価値も自然と違うものとなる。

「以好東西廉價供應」的思維,是大量生產大量消費時代的價值觀;在尚未工業化的戰國時代,優良物品會有相對應的價格。

良い物を安く提供するという考え方は、大量生産大量消費が当たり前の時代の価値観であり、工業化の為されていない戦国時代では良い物には相応の値が付いた。

因為成品的售價不同,逐漸地持有『名人』或『達人』稱號的職人所獲得的還原報酬也增加。

出来上がった商品の売価が異なるため、徐々に『名人』や『達人』の称号を持つ職人に還元される報酬は増えていく。

若承諾給予與成果相稱的報酬,職人們便會互相切磋,開始致力製造更好的產品,整體上也提升了美濃和紙的品質。

成果に見合った報酬が約束されるとなれば、職人たちは互いに切磋琢磨をしあい、より良い物を作り出そうと取り組みはじめ、総体として美濃和紙の品質も底上げされる。

不過,品質好並不代表就一定能賣。更好的物品需要相應的包裝,並需要與價格相符的宣傳。

ただ、品質が良ければ売れるというものではない。より良い物には然るべき装いがあり、値段に見合った宣伝が必要となる。

即便價格高到一般人無法負擔,只要是昂貴但優良的產品,仍然有人會購買,產品的價值會在使用者的周遭逐漸傳開。

たとえ一般人の手に届かない値段であろうとも、高いが良い製品であるならば、値が張ろうとも買い求める人はおり、使用者の周辺にその商品価値が広まっていく。

當然,不僅止於宣傳,在定價上也要費心。採用了稱為心理的價格設定(しんりてきかかくせってい)的定價法。

無論、宣伝だけに留まらず価格設定にも工夫を凝らす。心理的(しんりてき)価格設定(かかくせってい)と呼ばれる値付けを行った。

購買者認為價格高的東西有價值、價格低的東西就沒有價值,這稱為名聲價格。

購買者は価格が高いものには価値があり、低いものには価値がないと考える。これを名声価格と呼ぶ。

此外,當提供多種選擇,將高級品、中級品與普及品並列時,多數人較容易選擇中級品,這稱為階梯價格。

また複数の選択肢が提示され、高級品、中級品、普及品と並べると、多くの人々は中級品を選択し易い。これを段階価格と呼ぶ。

靜子提出了切中購買者心理的價格,對購買群體進行了區隔。

これらの購買者心理を突いた値段を提示し、静子は購買者層の棲み分けを行った。

也就是說,把越前和紙當作高級品牌商品,將美濃和紙中較上等的視為中級品,一般品質的作為普及品。

即ち、越前和紙を高級ブランド商品とし、美濃和紙の中でも上質なものを中級品、一般的な品質のものを普及品として扱った。

這些工夫奏效,各種和紙逐漸普及開來。

こうした工夫の甲斐もあって、それぞれの和紙は徐々に浸透していった。

「趁還記得,趕快把它誊清楚吧」

「覚えている内に、はやく清書しちゃおうっと」

靜子一邊哼著小曲,一邊把白天收集到的內容誊寫到越前和紙上。

静子は鼻歌を歌いながら、昼間に収集した話の内容を越前和紙へと清書していく。

原本習慣用硬筆的靜子,起初對毛筆寫作感到吃力,但到現在已經反而用毛筆寫得比硬筆還快。

硬筆に慣れていた静子は、当初毛筆に苦労したものだが、今となっては筆の方が早く書けるほどになっていた。

「靜子大人,明智大人的使者來了」

「静子様、明智様の使いがお越しになりました」

正當整理快要結束時,小姓告知使者來訪。雖然重要的部分已經完成,但靜子還是想盡快收拾完畢。

もう少しで整理が終わろうかと言う時になって、小姓が使者の来訪を告げた。重要な部分は終わっているとはいえ、静子としてははやく片付けたい気持ちがあった。

「天快要黑了,請告訴他們改天再來吧」

「もうすぐ日も沈むし、明日にして欲しいって伝えて」

她從房內照進的日光推估了大概時刻。靜子覺得天色將晚,因為目前脫身不開,便命人傳達希望另擇他日的意思。

部屋に入る日の光から、おおよその時刻を推測する。もうすぐ日が暮れると思った静子は、現状は手が離せないから、また日を改めて欲しい旨を伝えるように命じた。

小姓簡短回應後離去去轉告。還沒等他走遠,靜子便繼續動筆。

小姓は短く返事をした後、言づてをするために去る。小姓が立ち去るのを待たず、静子は作業を再開した。

「非常抱歉,靜子大人。對方說有某些緊急要事,希望能在今天之內把話說成……」

「大変申し訳ありません、静子様。何やら火急のご用と仰せで、本日中に話を通したいと……」

剩下幾張的時候,小姓回來了。即便不看臉,也立刻能看出他帶著困惑的神情。靜子輕輕嘆了口氣,數了數草稿的張數。

残り数枚というところで、小姓が戻ってきた。顔を見ずとも、彼が困惑の表情を浮かべている事はすぐに分かった。静子は小さくため息を吐くと、下書きの書き付けの枚数を数えた。

「……請告訴他們要稍候片刻。先把他們帶到房裡,端上茶和茶點。還有慶次先生……大概不在吧,就先叫才蔵他們來。」

「……少し待って頂く事になると伝えて。先に部屋へ案内し、お茶とお茶請けを出しておいてね。それから慶次さん……は多分いないね。才蔵さんとかを呼んでおいて」

「明白了」

「承知しました」

決定大約十分鐘內收拾完畢,靜子再次拿起毛筆。

10分ほどで片付ける、そう決意して静子は再度筆を手に取った。