戦国小町苦労譚
一五七三年 六月上旬
「哈啾! 嗚……,難道有人在議論我嗎?」
「へくちっ! うう……、誰か噂しているのかな?」
慶次正在和虎太郎喝酒作樂的時候,帶著猶太少女「紅葉」前往信長那裡。拜訪的目的是因為芒果到了收成期,因此決定先獻給信長。
慶次が虎太郎と酒盛りをしている頃、ユダヤ人の少女『紅葉』を伴って信長の許へと向かっていた。訪問の目的はマンゴーが収穫期を迎えたため、まず信長に献上することにしたのだ。
芒果是相對容易腐壞的果實。即使在現代環境,冷藏也只能保持數日,冷凍也只約能保鮮兩個月左右。
マンゴーは比較的足の速い果実である。現代の環境であっても冷蔵で数日、冷凍であっても二ヶ月程度しか鮮度を保つことが出来ない。
因為在無法輕易使用冷藏設施的戰國時代,便會錯開栽種時期,想辦法讓收穫期分散。
気軽に冷蔵施設を使用できない戦国時代だけに、作付け時期をずらして実施し、収穫時期がばらけるように工夫をしていた。
然而,今年因為靜子被三方ヶ原之戰的準備忙得不可開交,無法下達細部指示,結果一次性全部栽種了。
しかし、今年は静子が三方ヶ原の戦いの準備に忙殺されたため、細かい指示を出すことが出来ずに一括で作付けをしてしまった。
因此在同一時期大量芒果同時成熟,出現供給量超過需求的情況。
そのため同時期に大量のマンゴーが登熟することとなり、需要量を供給量が上回る現象が発生していた。
由於價值尚未明朗,不能輕易流通,另一方面也捨不得讓它腐壞。
価値が未知数であるため、安易に流通させるわけにもいかず、かと言って腐らせるのも勿体ない。
思索良好的處理方法時,想到以新居慶賀為藉口,招待來客品嘗。
何か良い処分方法を考えたところ、思いついたのが新築祝いにかこつけて招待客たちへの振る舞いだった。
在現代除了生食之外,還可以加工成芒果酸辣醬(チャツネ)或果醬來長期保存,但無論哪種都要大量使用砂糖,且製作酸辣醬還需要珍貴的胡椒和其他香辛料。
現代ならば生食以外にもマンゴーチャツネやジャムなどに加工することで長期保存も可能だが、いずれも大量に砂糖を使用する上に、チャツネに至っては貴重な胡椒や他の香辛料なども必要となる。
在砂糖與香辛料仍極為珍貴的戰國時代,成本上只能放棄加工,於是在多人聚集的新居慶祝上讓大家生食,是最有效的消費方式。
まだまだ砂糖や香辛料が貴重な戦国時代ではコスト的に諦めるほかなく、多くの人が集まる新築祝いで生食して貰うのが最も有用な消費方法だと考えた。
「對不起,要你幫忙搬運。大家面對上樣都會畏縮……」
「ごめんね、運ぶのを手伝って貰って。皆、上様相手だと萎縮しちゃってね……」
「沒、沒事的」
「だ、大丈夫、です」
紅葉硬是鼓起勇氣向靜子豎起小小的握拳,表示自己有幹勁。
紅葉は気丈にも小さな握り拳を静子に見せて、やる気がある事をアピールする。
她看起來是鼓足了幹勁,然而在靜子眼中,更多的是孩童特有的可愛,而非可靠感。
本人は気合を入れているようだが、静子には頼もしさよりも子供特有の愛らしさしか感じることが出来なかった。
「喔,那一隊人馬是……」
「おや、あの一団は」
在轉過彎的地方,靜子發現了三個面熟的人物:德川家家臣忠勝、半藏與康政。對方尚未注意到這裡,正攙著醉倒的忠勝走著。
曲がり角を曲がった所で、静子は見覚えのある三人を見つけた。徳川家家臣の忠勝、半蔵、康政だ。相手はこちらに気付いておらず、酔い潰れている忠勝に肩を貸して歩いていた。
「這間房可以吧。那麼走吧」
「この部屋で良かろう。では行くぞ」
「嗯,一、二、三」
「うむ。せーの」
隨著號子聲,半藏與康政又一次把酩酊大醉的忠勝扔進了房間。
かけ声とともに半蔵と康政が、またしても酔い潰れて酩酊状態の忠勝を部屋に投げ入れた。
那動作熟練得恰如其分地稱得上是「拋下」,而且缺乏對被丟擲的忠勝的顧慮。
正に放り捨てるという表現がぴったりくるほどに手慣れた所作であり、投げられる忠勝への配慮に欠けていた。
半藏確認忠勝安穩睡著後嘆了口氣,兩人才注意到正凝視著他們的靜子等人的存在。
一応、忠勝が無事に寝ているのを確認し、半蔵がため息を吐いた時、二人はこちらを眺める静子たちの存在に気付いた。
「哎呀哎呀,靜子殿。讓您見到難堪的模樣,真是失禮了。咦,妳帶來了些奇妙的東西呢。」
「これはこれは、静子殿。お見苦しいところをお見せしていしまいましたな。はて、何やら奇妙な物をお持ちですな」
「什麼——!」
「なんですとー!」
半藏剛向靜子說話,忽然清醒的忠勝一聲喊叫便衝了出來。
半蔵が静子へ声を掛けた途端、突如覚醒した忠勝が一声叫んで飛び出した。
把忠勝拋入的房間外是一條面向緣側的走廊,背對房間的兩人正好迎上忠勝的衝撞。
忠勝を放り投げた部屋の外は、縁側を臨む廊下になっており、部屋に背を向けていた二人は忠勝の突進をまともに食らった。
突如其來兩人甚至來不及接住,就被推得連人帶臉從緣側飛入庭院。
いきなりの事に二人とも受け身すら取れず、突き飛ばされた勢いのまま縁側から庭へと顔面からダイブした。
不止於此,忠勝因為意外的猛烈碰撞絆了腳,向前撲倒在廊上。
それだけに留(とど)まらず、忠勝は予想外の激突に足がもつれ、前のめりに廊下を舐める。
半藏與康政臉朝下摔入庭中,身體拗成弓形,而忠勝因以臉部當煞車而痛得直捶。
顔から庭に落ちて海老反りに倒れる半蔵と康政、顔でブレーキを掛けたことにより悶絶している忠勝。
原本平常的廊上閒聊,一瞬間被改寫成阿鼻叫喚的地獄畫面。
ごくありふれた廊下での立ち話が、阿鼻叫喚の地獄絵図に塗り替わった瞬間だった。
對重視體面的武士而言,這實在太不名譽,靜子便悄悄用手覆住紅葉的眼睛。
体面を重視する武士にとって、余りにも不名誉な惨状を見て、静子はそっと紅葉の目を手で覆う。
「大家都是有地位的人,所以剛剛看到的事就忘了吧。」
「皆、立場のあるお方だから、今見たことは忘れるように」
「是、是的」
「は、はい」
紅葉乖乖接受靜子的話,靜子放開手後,她便用自己的手覆住眼睛,不去看周遭的景象。
静子の言葉を素直に聞き入れた紅葉は、静子が手を離すと自身の手で己の目を覆い、周囲の光景を見ないようにした。
靜子再度將視線轉向忠勝等人時,那兩個被忠勝推倒的人已經起身,開始和忠勝扭打起來。
静子が再び忠勝達の方へと視線を向けると、忠勝に突き飛ばされた二人が立ち上がり、忠勝と取っ組み合いの喧嘩を始めていた。
「那個,真的沒辦法阻止呢。」
「あれは、止められないよねえ」
雖說是醉漢,但這是三名猛將的扭打。
酔漢とは言え、猛将三名の取っ組み合いだ。
像靜子這樣的女子要是上前阻止,很容易被一把推開。靜子想這事何時才會結束,但結局卻意外地很快到來。
静子のような女が止めに入っても、簡単に吹っ飛ばされるのは目に見えている。いつ終わるのだろうか、と静子は思ったが、決着の時は意外にも早く訪れた。
雖然稱不上忠勝那般,但兩人也喝了不少酒。若在那樣的狀態下進行激烈運動,結果比看火還明顯。
忠勝程ではないとはいえ、二人ともそれなりに酒を飲んでいる。その状態で激しい運動などしようものなら、結果は火を見るよりも明らかだ。
「等一下!你們兩個……噗,糟了……」
「待て! 二人とも……うぷっ、まずいぞ……」
「唔……先、先暫時休戰吧……」
「ぬう……こ、ここは一時休戦……」
「是啊……呢」
「そうじゃ……な」
等到那股噁心感退去、理智回來時已經太遲。三人臉色從醉意的通紅轉為青灰,然後帶著土色,捂著嘴跑了出去。
込み上げる吐き気に理性が戻った頃には既に遅かった。三人とも酔漢の赤ら顔から青を越えて土気色に変じるや、口を押えて駆けだした。
靜子一看就知道他們大概是往廁所去,便對仍然捂著眼睛的紅葉說話。
向かう先は恐らく厠であろう、と静子は理解すると目を覆い続けている紅葉に声を掛けた。
「可以張開眼了。那我們走吧,紅葉醬」
「もう目を開けて良いよ。それじゃあ行こうか、紅葉ちゃん」
靜子想,還是當作什麼都沒看見比較好,對任何人來說這都是最妥當的結果。
全て見なかったことにしよう、誰にとってもそれが一番穏当な結果になると静子は思った。
不知紅葉如何想,但很難想像她會到處宣揚今日的事,就這樣他們保住了顏面。
紅葉がどう考えたか不明だが、今日の事を吹聴するとは思い難い、こうして彼らの面目は保たれた。
雖然被捲入了突如其來的騷動,但把一切都當作沒有發生過的靜子,抱著一大籃芒果前往信長處。
思い掛けない騒動に巻き込まれたが、それら全てを無かったことにした静子は、大量のマンゴーを抱えて信長の許へと向かった。
正當快到時,意外地遇上了信長。
間もなく到着というところで、不意に信長と鉢合わせしてしまった。
「那就是他最近僱來的南蠻女子嗎?」
「そやつがこの程雇い入れたという南蛮の娘か」
信長注意到靜子身後有個陌生的女子,指著紅葉問道。被突如其來的搭話嚇到的紅葉仍然抱著行李俯伏行禮。
静子の後ろに見慣れぬ娘が控えていることに気付いた信長が、紅葉を指さしながら訊ねる。突然の声掛けに驚いた紅葉は、それでも荷物を持ったまま平伏する。
「是的。她是個乖孩子」
「はい。良い子ですよ」
「不用伏著,抬起臉來。嗯,髮是黑的,但眼睛和我們不同,呈翡翠般的碧色,竟然也有這樣的南蠻人嗎?」
「伏せずとも良い、面を上げよ。ふむ、髪は黒いが目が我らと違うな。翡翠のような碧色をしておる、このような南蛮人もおるのか」
紅葉的髮色是略有捲曲的黑髮,瞳色帶有青意的綠色。
紅葉の髪は少しくせ毛の黒髪であり、瞳は青みがかった緑色をしていた。
信長仔細端詳紅葉,似乎覺得她的相貌與那些傳教士有些不同,或是對西洋人的骨格感到好奇。
宣教師たちとはやや面持ちの異なる紅葉の風貌が珍しいのか、それとも西洋人の骨格に興味を抱いたのか、信長はまじまじと紅葉を観察する。
被這無所顧忌的目光盯著而縮成一團的紅葉,再次低下了頭。
無遠慮な視線に晒されて萎縮した紅葉は、再び顔を伏せてしまった。
「上樣,紅葉很害怕,請到此為止饒了她吧」
「上様、紅葉が怖がっております。その辺りでお許しください」
「並沒有敵意。我只是覺得她的眼睛很少見。光線一變就會閃動,像寶石一樣美麗。」
「別に敵意など向けておらぬ。珍しい目をしておるなと、思うただけじゃ。光の加減で揺らぐ様が宝石のように美しいな」
信長一手托著下巴稱讚紅葉的眼睛。向來不會說奉承話的信長這番話,讓畏懼他的紅葉再次抬起臉。
顎に手を当てながら、信長は紅葉の目を褒めた。お世辞など言うはずもない信長の言葉に、勘気を恐れた紅葉も再び顔を上げる。
「關於納異人入府可能會有人說三道四,但我允許。只要你為我工作,不會讓人有機會抱怨。」
「異人を懐に入れることについて何事か言う者も出るじゃろうが、わしが許す。貴様がわしの為に働く限りは文句を言わせぬ」
「承蒙關照,十分感謝」
「ご配慮痛み入ります」
「那麼,靜子。你拿著的是什麼?啊,是甘珠(あまたま)嗎?」
「して、静子よ。何を持っておる? ああ、甘珠(あまたま)か」
信長指著靜子抱著的籠子問。靜子從籠中取出一個給他看,他便脫口說出芒果的綽號。
信長は静子が抱える籠を指して訊ねる。静子が籠の中より一つ取り出して見せると、彼はマンゴーのあだ名を口にした。
最近才知道,信長有個習慣,會給他喜歡的東西取綽號。他的命名感非常離奇,旁人難以理解,卻簡潔地抓住了特徵。
最近判ったことだが、信長は自分が気に入った物に対してあだ名を付ける癖があった。彼のネーミングセンスは突飛過ぎて、余人には理解し難いが、簡潔に特徴を捉えていた。
「是的,剛好到了收成,所以先獻給上様,作為餐後的甜點如何?」
「ええ、このほど収穫を迎えましたので、まずは上様に献上がてら、食後の甘味として如何かと思いまして」
「不錯。我正打算順手摘些甜果來吃。那什麼南蠻蛋糕雖甜,但太膩了,讓人覺得過於甜膩。」
「悪くない。ちょうど甘い果実でも摘まもうかと思うておったところじゃ。南蛮のケーキとやらは甘かったが、甘すぎてくどく感じた」
聽了這句話,芒果的處理方式便決定了。靜子把芒果送到廚房,命人快把果切好擺上盤子。
その一言でマンゴーの処理方法が確定した。静子はマンゴーを厨(くりや)へと運び、急ぎ皿に載せて出すよう命じた。
生食芒果時,和現代一樣要避開中央的核,將果實切成三片。
マンゴーを生食する場合、現代と同様に中央にある種を避けて、果実を3つに切る。
除去有核的中央部分後,對兩側的果肉在皮邊緣劃格子狀切口,最後從皮的背面推壓使果肉翻起,就成了好入口的形狀。
種のある中央部を除き、両側の果実に対して皮ギリギリまでさいの目に包丁を入れ、最後に皮を裏側から押して反り返らせれば食べやすい形となる。
未獻給信長、帶著核的那部分會被分為果肉與種子。果肉作為額外之好處進入廚人的胃中,而種子在去除外殼與薄膜後會被用於栽培。
信長に供されない種が付いた部分は、果肉と種子に分けられる。果肉部分は役得として厨の者たちの胃に収まるが、種子は外殻と渋皮を剥がした後、栽培へと回される。
這些芒果種子需另行培育(非插枝),要開花結果至少需要六年左右。
このマンゴーの種子は、挿し木とは別に育てるため、開花結実に至るまでは最低でも六年ほどかかる。
這也適用於靜子自海外帶來的各種品種,若不是以插枝或分株複製,而是從種子栽培,因遺傳或突變可能會出現與親株不同的性狀。
これは静子が海外より持ち込んだ様々な品種にも言えることだが、挿し木や株分けに拠るコピーではなく種子から栽培すると、遺伝や突然変異によって親とは異なる性質を持つことがある。
為了培育出更甜、更多汁的優良品種而進行品種改良,採用從種子栽培的方式。
より甘く、より瑞々しい優良品種を求めて品種改良すべく、種からの栽培を行っている。
「啊,差點忘了,也請把一些拿給後室的諸位。」
「ああ、忘れるところだった。奥方たちにもお出ししておいてね」
靜子命人也把芒果端給濃姬等人後,與紅葉一同離開了廚房。
静子は濃姫たちにもマンゴーを出すよう命じた後、紅葉とともに厨を後にした。
靜子宅的新居祝宴熱鬧而圓滿結束。
静子邸の新築祝いはにぎにぎしくもつつがなく終了した。
儘管喝盡了準備許久的酒,竟然沒有一人醉得前後不省,令人佩服越後人果然多酒量豪邁。
あれほど準備した酒を飲み尽くしたと言うのに、前後不覚に陥る人間がいないのだから、越後人に酒豪が多いと言うのは本当なのだと感心した。
果然如預料,靜子沒有機會與謙信好好交談,但這在政治上是理所當然的。
予想通り、静子が謙信とじっくり会話する機会は設けられなかった。しかし、これは政治的に当然の話であった。
即便已成為臣下,若在沒有分寸的情況下與信長或在織田家中備受矚目的靜子親近,外界會認為上杉家在巴結織田家。
いくら臣下になったとは言え、即座に信長や、織田家家中でも注目の重鎮である静子に気安く接すれば、上杉家は織田家におもねっていると捉えられてしまう。
若是如此,織田家與上杉家各自的家臣之間勢必會起爭端,因此謙信在有旁人在場時也被要求採取謹慎的態度。
そうなれば織田家と上杉家それぞれの家臣同士が諍いを始めるのは目に見えているため、謙信としても人目がある状態では慎重な対応を求められた。
或許是看穿了那層盤算,信長也對謙信的態度沒有多說什麼。
その辺りの思惑を察しているのか、信長も謙信の態度に対して何も言わなかった。
(國人的悲哀啊。心裡有話想敞開說也有吧,但表面上無法行動。那麼,差不多可以了吧?)
(国人の悲哀かな。腹を割って話したい事もあるだろうけど、表立っては動けないもんね。さて、そろそろ大丈夫かな?)
組織間交疊時難免出現緊張。即便是織田家內部彼此也在牽制,靜子帶著彩一邊感到一絲寂寞,一邊前往牢房。
組織同士が交われば、どうしても緊張状態が発生する。織田家家中同士ですら牽制し合っている現状に、一抹の寂しさを感じつつも静子は彩を伴って牢屋へと向かった。
靜子宅邸所備的地下牢,是利用堅硬岩盤被侵蝕形成的天然穴洞打造而成的。
静子邸に備えらえている地下牢は、硬い岩盤が削れて出来た天然の穴を利用して作られていた。
出入口被堅固的鐵柵欄隔開,若只憑一人之力被關在裡頭,根本不可能逃出。那牢房的囚者,是為真田家效力的間諜。
出入り口は頑丈な鉄格子で隔てられ、その身一つで閉じ込められれば、抜け出すことなど不可能だ。そんな牢屋の入居者は、真田家に仕える間者であった。
「醒著嗎?」
「起きているかな?」
「醒著」
「起きている」
靜子輕敲牢房的鐵柵,向黑暗喊話。稍作停頓後,從牢內感到有人微微動了動的徵兆。
牢屋の鉄格子を軽く叩きながら静子が闇へと声を投げかける。少し間を置いて、牢の中から人が身じろぎする気配が感じられた。
令人驚訝的是,回應的是一個年輕女性的聲音。但靜子很快就明白了:武田家大量使用行走巫女,間諜為女性並不罕見。
驚いたことに、返ってきたのは若い女性の声だった。しかしすぐに静子は理解した。武田家は歩き巫女を多用しており、間者が女であることは珍しくないという事を。
「抱歉,雖然不方便,但請再忍耐一下。因為不這樣做的話,可能會遭到封口處置。」
「ごめんね、不自由だろうけどもう少し我慢してね。こうしておかないと口封じをされる可能性があるから」
「我理解自己的立場。若要奢求的話,希望能把手腳的枷鎖解開。」
「自分の立場は理解している。贅沢を言えば、手足の枷を外して欲しいのだが」
「那東西一方面剝奪妳的自由,另一方面也保護妳的安全。現在不能解開,總之能不能把話說給我聽?」
「それは貴女の自由を奪うと同時に、貴女の身を守るものでもあるの。今は外せないんだ、ともかく話を聞かせて貰えるかな?」
「除了我交出的信之外,沒被告知其他事情。」
「私は渡した文以外の事は知らされていない」
「從信裡大致已掌握狀況,但難道還有想告知的其他情報嗎?」
「文から大よその事情は把握したけれど、あれ以外に知らせたい情報があるんじゃない?」
對靜子的質問,間者沉默了。靜子察覺那不是閉口不言而是猶豫,便試圖引導她開口。
静子の問いに間者は沈黙した。これは黙秘ではなく、躊躇していると察した静子は呼び水をさす。
「(現在強行逼問也沒用吧)算了。總之先再忍耐一下。啊,最好不要想要逃脫。畢竟就算是我也沒辦法庇護那樣的事。」
「(今、無理やり聞き出しても仕方ないかな)ま、いいか。取りあえず後少しだけ我慢していてね。ああ、脱出しようとはしない方が良いよ。流石に私でもそれは庇えないからね」
「……知道了。有一件事想告訴你。主上心意已定。不會馬上來,但必定會趕赴到你身邊。」
「……承知している。一つだけお伝えしたい。主の心は既に決まっている。すぐにとは参らぬが、必ずや貴女の許へと馳せ参じると」
「我明白。為了把我所理解的事告訴他,請乖乖待著。忍耐幾天就好,那麼再見。」
「判ってる。私が理解していることを彼に伝えるためにも、大人しくしていてね。数日の辛抱だよ、それじゃあね」
該問的事都問到了。明白那件事後,靜子帶著彩離開了牢房。
聞くべきことは聞いた。その事を理解した静子は彩を連れて牢を後にした。
如同靜子所說,真田家的間者在數日後以適當理由被釋放。
静子が言ったように、真田家の間者は数日後、適当な理由を付けて解放した。
當時沒有交付回信。由於途中可能會被人抓住,只簡單口頭傳達了回覆。
その際に返事の文は預けなかった。道中、誰かに捕まる可能性があるため、簡単に口頭で返事を伝えるのみとした。
「那麼,這次應該會迎來和平了吧」
「さて、今度こそ平和になるはずだ」
靜子踮起腳伸展身體,但她不知道每次說出那句話時,和平就越來越遠。
背伸びをして体をほぐす静子だが、その言葉を口にする度に平和から遠ざかっている事を彼女は知らない。
釋放真田家的間者已過一週。正值季節轉入梅雨、日漸炎熱之際,靜子正前往信長所在的岐阜城。
真田家の間者を解放してから一週間。季節は梅雨へと移り変わり、日増しに暑くなっていく最中(さなか)、静子は信長のいる岐阜城へ向かっていた。
目的在於向信長報告靜子負責的基礎建設整備事業之進度。自與本願寺和睦成立後,信長就積極致力於基礎建設整備。
目的は静子が担当しているインフラ整備事業の状況を報告するためだ。信長は本願寺との和睦が成立して以降、精力的にインフラ整備に取り組んでいた。
這是個大工程,不僅整治京周邊,還經由近江與伊勢連接至美濃、尾張的交通大動脈。
京周辺は勿論のこと、近江や伊勢を経由して美濃、尾張へと至る大動脈を整備する大事業だった。
雖然三河與越後尚未納入,但因家康對基礎建設積極,近來將作為第二期基礎建設計畫納入規劃。
三河や越後は含まれていないが、家康がインフラ整備に乗り気であるため、近く第二次インフラ整備事業として計画に組み込まれることとなる。
「今天是晴天啊」
「本日は晴天なり、ってね」
雖然是梅雨時期的遠行,但前往岐阜城當日卻幸逢晴朗。
梅雨時での遠出となったが、岐阜城へと向かう日は晴天に恵まれた。
因為不需準備雨具,行程變得輕鬆,但靜子仍憂慮天氣何時會轉壞。幸好抵達岐阜後也沒有天候惡化的跡象。
雨具の準備が不要となるため道行は容易いが、いつ天気が崩れるのかと静子は危惧していた。幸いにして、岐阜に到着しても天候が悪化する気配は無かった。
「請在這裡等候」
「こちらでお待ち下さい」
被擔任引導的堀帶入的房間內,靜子等候信長的召見。計畫進展相當順利,既無重大問題,報告上也毫無不安。
案内役を務める堀に通された部屋で、静子は信長からのお召しを待つ。計画は順調そのもので、大きな問題も無いことから報告に不安を抱いていなかった。
因此這次行程估得很短,護衛兵也只留了包括才藏在內的少數隊伍。
それ故に今回の旅程を短く見積もり、警備の兵も才蔵を含めた僅かな手勢のみとしていた。
「這次的報告沒有特別需擔憂的事項啊。最初提議導入休假制度時,說明就花了半天……」
「今回の報告には特に懸念事項は無いなあ。当初、休日制度を導入するって申し入れた時は、説明に半日を要したけど……」
在日本直到明治時代之前,並沒有明確的休假概念。大多數人的休息僅限於盂蘭盆、年末年初以及節慶等特殊日子。
日本では明治時代に入るまで、明確に休日という概念が無かった。大多数の者が休むのは盆暮れ正月と、祝祭日などの特別な日に限定されていた。
不過在朝廷任職的官吏則有稱為『假』的固定休假日。
ただし朝廷に勤める官吏には假(か)と呼ばれる定休日があった。
認為每天勞作、連照顧身體的時間都沒有對健康不利,靜子於是制定了上述的休假制度。
毎日が労働であり、体を労わる暇もないのでは健康に良くないと考えた静子は前述の休日を制定した。
她向信長主張,與其無意義地每天工作,不如設置假日以調節節奏,讓勞動者能健康且有起伏地工作,從而提高效率,最終利於整個社會。
漫然と毎日働くよりも、休日を設けて緩急をつけ、労働者が健康でメリハリを付けて働くことで効率が上がり、最終的には社会全体の利益となると静子は信長に説いた。
由於星期制度僅在尾張普及,決定先對從事基礎建設的勞工試行簡易的休假制度。
曜日の制定は尾張にしか浸透していないため、インフラ整備事業に従事する労働者たちを対象に、簡易的な休日制度を試験的に導入することにした。
制度非常簡單明瞭:每日勞動訂下目標,達成的日子累積到六天,翌日即為整天休假。反過來說,若未達標的日子持續,假期將永遠不會到來。
制度は至って単純明快だ。日々の労働に目標を定め、達成できた日が六日貯まれば翌日は丸一日休日とした。逆を言えば、目標未達が続けば永遠に休日は巡ってこない。
這個假日不僅免除勞動,還會發給相當於勞動日的薪資,所謂的『有薪休假』。對於假日的過法沒有限制,只要不違法,做任何事都可以。
この休日は労働が免除されるだけでなく、労働日相当の給金が支給される所謂『有給休暇』であった。休日の過ごし方に規定はなく、法を犯さない限りは何をしていても良いとされた。
只要不影響工作日,就可以自由地喝酒或外出遊玩。
労働日に影響を及ぼさない限り、酒を飲もうが行楽へ行こうが自由だった。
雖然是未知的制度,但對勞工不但無損,反而有利,理解了「休日」的勞工們都拼命爭取休假。
未知の制度ではあるものの、労働者にとって不利益どころか有利な制度であり、休日というものを理解した労働者たちは皆、躍起になって休日を得ようと奮闘した。
以往的工作方式若因天候沒工作就不發薪,所以能不勞而獲的待遇當然令人振奮。
従来の働き方では、天候が理由で仕事が無くても給金は出ないのだから、働かずとも給金を貰える特典に奮起しないはずがなかった。
「今天召見得晚啊……說是要聽休日制度的成果,差不多該有人來招呼了才對……」
「今日はお召しが遅いなあ……。休日制度の成果を聞きたいと言う話だったから、そろそろお呼びがかかっても良いはずなんだけど……」
就這樣隨口嘟囔時,靜子的耳朵傳來了什麼東西破裂的聲音。她想了想,轉向站在旁邊的才藏。
そんな事を誰にともなく呟いていると、静子の耳に何かが壊れる音が届いた。少し考えて、傍(かたわ)らに控える才蔵へと顔を向ける。
「不是聽錯吧?」
「気のせいじゃないよね?」
「某也聽到了。那是襖被破開的聲音嗎?」
「某の耳にも届いております。あれは襖が破れる音でしょうか?」
「嗯……不太像是有壞人混入,不過還是去確認一下吧。」
「うーん、曲者が紛れ込んだ……とは考えにくいけど、取りあえず確認しにいこう」
靜子想著到時再叫人也行,便提醒才藏與隨從的兵士注意,朝著噪音持續的地方走去。小心接近時,聲音並未停止。
いざとなったら人を呼べば良いと、軽く考えた静子は才蔵と手勢の兵に注意を促し、騒音が続く現場へと足を向けた。注意しながら近寄るが、物音が絶えることは無かった。
騷動竟然連休息之間都能聽到且未曾中斷,靜子重新認為情勢嚴重,繃緊了神經。
控えの間にまで届く程の騒音が途切れもしないことに、静子はのっぴきならない状況だと考えを改めて気を引き締めた。
「這些愚蠢之人!!」
「この愚か者がっ!!」
「父、父上!等等……嗚咳!」
「ち、父上! お待ちを……げふっ!」
聽到信長的怒吼瞬間,所有人立刻進入戰鬥態勢,但理解到怒聲的內容後,全身放鬆了。
信長の怒声が聞こえた瞬間、全員が荒事に備えて戦闘態勢に入るが、続く怒声の内容を理解するや全身から力を抜いた。
從聽到的內容推測,並非生命受威脅,而是信長對親族某人勃然大怒,眾人皆如此察覺。
漏れ聞こえる内容から信長の生命が脅かされるような事態ではなく、信長自身が親族の誰かに激怒しているのだと全員が察した。
靜子示意一眼,才藏為首的所有兵士低頭轉向。信長怒不可遏到不顧周遭,最好別與之牽扯上。
静子が目配せをすると、才蔵を筆頭に全ての兵士が頭を下げて回頭した。周囲を憚らぬ程に激怒している信長が居るのだ、関わり合いにならない方が良いに決まっている。
「這次真叫人受不了!我親自斬下他的首!!」
「今度という今度は我慢がならぬ! わし自らが、その首刎ねてくれよう!!」
見信長怒意不消,靜子感到一絲不安,既對自己的性子無奈,仍決定踏入現場調停。
信長の怒気が収まらないことに一抹の不安を覚えた静子は、我ながら損な性格だと呆れつつも仲裁をすべく現場へと足を踏み入れた。
室內一片慘狀。信長怒容滿面高舉出鞘之刀,正要向兩個跌坐在地的男子斬去。
室内は惨憺(さんたん)たる有様だった。信長は憤怒の表情で抜き身の刀を振り上げており、床に尻もちをついている二人の男性に斬りかからんとしていた。
對面的兩人臉色不只蒼白而近乎白,鼻口角有血流出,看來無疑是遭到信長毆打。
対する二人は、顔色が青色を通り越して白くなっており、鼻や口の端から流血しているところを見ると、信長から殴る蹴るの仕打ちを受けたであろうことは間違いない。
最近連連有好事,平日不輕易發怒的信長這般暴露怒氣也罕見,堀與蘭丸正拼命安撫,他們便走近信長。
ここしばらくは良い事が続き、滅多な事では声を荒げなかった信長が、これほどに怒りを露わにしているのも珍しいと思いつつ、堀や蘭丸が必死に宥めている信長へと近づいた。
「上様,過度的怒氣會傷身。」
「上様。過度なお怒りはお体に障ります」
「何人?!啊,是靜子。你在那裡等著,待我處置這些廢物之後,再聽你的報告。」
「何奴じゃ! む、静子か。お前はそこで待っておれ、この屑共に引導を渡した後に、貴様の報告を聞くとしよう」
「上様,雖知冒犯仍敢諫言。若任怒斬家臣,必為後世恥辱。請您收刀,將事由與上様的本意告訴在下靜子,可否?」
「上様、無礼を承知で諫言致します。怒りに任せて家臣を斬れば、後世に恥として伝わりましょう。ここは一つ刀をお納めいただき、事の次第と上様の思惑を、この静子めにお聞かせ願えませんか?」
不清楚信長為何如此激昂,但若任性斬殺家臣,且是親族,無疑會成為恥辱。
何が原因で信長がこれほどまでに激昂しているのか不明だが、勘気に任せて家臣、それも親族の首を刎ねたとあらば不名誉となるのは間違いない。
靜子罕見的長篇力言似乎讓信長稍微冷靜,信長厭惡地打了個嘴,將刀納入鞘後拋給蘭丸。
静子の珍しい長広舌(ちょうこうぜつ)が信長に幾分か冷静さを取り戻させたのか、忌々し気に舌打ちをすると、信長は刀を鞘に納めて蘭丸へと放り投げた。
「給他半年。若在半年內仍無法擺脫現狀,便斬斷父子之緣!這是最後的慈悲!」
「半年じゃ。半年の猶予を与えてなお、今の状況を脱せぬのであれば、親子の縁を切る! これが最後の慈悲と知れ!」
向仍倒在地上無法起身的兩人吐出話後,信長怒氣沖沖地走開。能避免刀劍之事,眾人不禁鬆了一口氣。
床に倒れ伏したまま起き上がれずにいる二人に吐き捨てた後、信長は肩を怒らせて歩く。何とか刃傷沙汰を避けられたことに、全員が安堵の息を漏らしたのは言うまでもない。
「多虧了。老實說,我沒想到能阻止上様怒到那樣的程度。」
「助かり申した。正直なところ、あそこまでお怒りになった上様を止められるとは思っておりませんでした」
臉色發青的堀向靜子鞠躬道謝。被罵為廢物的兩人呆愣著仍無法起身,堀拍了拍抱著信長之刀而呆滯的蘭丸肩膀。
顔色を青くした堀が静子に礼を述べる。屑扱いされた二人は呆然としており、未だに立ち上がれずにいた。堀は信長の刀を受け止めたまま固まっている蘭丸の肩を叩く。
被拍醒的蘭丸被堀命令去叫醫生。應是為了治療被稱作廢物的兩人,蘭丸放下刀便急忙跑去。
それで我に返った蘭丸に、堀は医者を呼んでくるよう命じた。屑と呼ばれた二人を治療するためだろう、蘭丸は刀を据え置くと急いで駆け出していく。
雖然情況危急如走鋼索,靜子總算避免了一場慘劇,但尚有難關等待著她。
危うい綱渡りではあったが、何とか惨劇を回避した静子には、未だ難関が待ち構えていた。
「在做什麼!靜子,你不跟來嗎!其他人退下!傳令讓那愚蠢的兒子去工作!」
「何をしておる! 静子、貴様は付いて参らぬか! 他の者は下がれ! 馬鹿息子には仕事に掛かるよう伝えよ!」
「(啊,果然會變成這樣)那麼各位,失陪了。」
「(ああ、やっぱりこうなるよね)それでは皆様、失礼いたします」
信長推開襖後怒聲傳來。除了自己的進度報告外,還多了陪信長抱怨的工作。靜子叫才藏他們先回去,追上信長。
信長が押し開けた襖の向こうから怒声が飛んでくる。自身の進捗報告に加えて、信長の愚痴に付き合うという仕事が追加された。才蔵たちには先に戻るよう伝えて、静子は信長を追った。
「真是的,一群無可救藥的愚兒!」
「全く、箸にも棒にもかからぬ愚息どもよ!」
信長從靜子遞來的罐中抓了一把金平糖塞進嘴裡,粗暴地咬碎後吐出怨言。
静子が差し出した壺から金平糖を一掴み口に放り込み、荒々しく噛み砕きながら信長は吐き捨てた。
「您之所以生氣,是因為伊勢的開發進度落後嗎?」
「お怒りの原因は、伊勢の開発が遅れている事でしょうか?」
「正是如此。如今長島既已陷落,尾張與伊勢之間的海運由我掌握。因此從尾張與伊勢延伸的街道整備至關重要。港口輸出的貨品及往來的商人越多,織田領便越繁榮。陸路整備講求速度,可那些愚蠢的兒子們不懂情勢,反而被本願寺的人暗算!」
「その通りじゃ。長島を陥落させた今、尾張と伊勢との海運はわしが掌握した。ゆえにこそ、尾張と伊勢から伸びる街道整備は重要となる。港から運ばれる品々と、それを運ぶ商人の往来が活発になればなるほど織田領は潤う。陸路の整備は早さが肝心だと言うのに、馬鹿息子どもは状況を理解できず、それどころか本願寺の手の者に足を掬われる始末じゃ!」
(雖然從商人那裡零星聽聞,但道路整備進度果然不多啊)
(商人たちから漏れ聞こえてきていたけれど、あんまり進んでいないのね、道路整備)
靜子從信長的抱怨中,大致推測出事情的來龍去脈。
静子は信長の愚痴から、事の次第について大よその推測を立てた。
伊勢位於紀伊半島的東側。現在掌握了伊勢灣的信長,打算承接全國的海運並接駁至陸路。
伊勢は紀伊半島の東側に位置する。伊勢湾を掌握した今、信長は全国からの海運を引き受け、陸路へと繋げようと考えていた。
希望通往京師的路線能有複數,即便再度構築織田包圍網實施海上封鎖,只要陸路健在,要封鎖信長便困難。
京へと繋がる経路は複数あることが望ましい。たとえ再び織田包囲網を構築して海上封鎖をされようとも、陸路が健在であれば信長を封じ込める事は困難となる。
只要能維持其中一方,就能運送兵員與物資。
どちらか片方だけでも維持できれば、兵員輸送も物資運搬もできるのだから。
「包含伊勢在內的地域屬於陡峭山地,交通不便。因此曾有開山闢路的計畫,但那沒有進展嗎?」
「伊勢を含む地域は、急峻な山岳地帯であるため、交通の便は思わしくない。その為、山を切り開いて道を通そうという計画でしたが、それが進んでいないという事でしょうか?」
「稍微的延誤無妨。從失敗中學習並運用於下一次即可。問題在於他們試圖逃避責任。」
「少しぐらいの遅延ならば問題にせぬ。失敗から学び、次に生かせばよい。問題は奴らが責任を逃れようとしたことじゃ」
「……明白了」
「……納得致しました」
若非無法挽回的失敗,信長雖會處罰,亦會給予彌補的機會。能挽回則好,失敗則罷了。
挽回不可能な失敗でなければ、信長は失敗に対する処罰を下せど、挽回する機会もまた与えている。挽回できれば良し、失敗すればそこまでだ。
這就是信長對工作的基本態度;當然若屢次犯錯便另當別論。
信長の仕事に対する基本的な姿勢はこれに尽きる。無論、何度も失敗を繰り返すようなら、その限りでないのだが。
「若是領先他人開路,我也會對失敗抱持寬容。研究那些失敗可以成為後人借鏡。然而那些愚孫不從失敗學習,徒然浪費時間,一再重蹈覆轍,而且還比收拾殘局後更使情況惡化。」
「誰にも先んじて歩む道ならば、わしも失敗に対して考慮する。その失敗を研究することで、後に続く者たちへの手本となるゆえに。しかし、愚息どもは失敗から何も学ぼうとせず、徒(いたずら)に時間を浪費し、同じ失敗を繰り返しておる。それも尻拭いをした後よりも状況を悪化させるというおまけ付きでな」
「新增半年猶予作為最後通牒,是這個意思嗎?確實,聽君如此一說已算相當寬厚。若連這樣還失敗,縱然斬首也無人會反對吧。」
「新たに半年の猶予を以て最後、という訳ですか。確かに、そのお話を伺えば十分に温情を掛けておられますね。これでも失敗するのなら、斬首となっても誰も異論は唱えぬでしょう」
「現在也有想斬首的心情。不過,討厭的話到此為止,來說說你的報告吧。」
「今からでも首を刎ねたい気持ちもあるがな。さて、不愉快な話はここまでじゃ。貴様の報告を聞こうか」
信長清了清喉,把話題轉開。靜子也進入正題,神情緊繃。不過並無需正式報告的事,想到這樣可以早點回家,她暗自竊喜。
信長は咳払いをすると、話題を変えた。静子も本題に入り、表情を引き締める。とは言え、改まって報告するような事は殆どない。これは早く帰宅できると、彼女は内心でほくそ笑む。
「雖稱為報告,現狀已順利完成第二階段至第五十四工程,進度比計畫提前。」
「報告と申しましても、現状は第二段階、第五十四工程まで滞りなく終わりました。計画よりも前倒しで進めているところです」
「比預期早了不少。說到第五十四工程,本不是預定下月才開始嗎?超出計畫真是太好了,今後更要努力。」
「思っていたよりも随分と早いな。第五十四工程と言えば、来月から開始する予定(・・・・・・・・)だったではないか。予定以上とは素晴らしい。これからも一層励むが良い」
「感謝您的恩言。我命令給工人少許休假與獎勵以養精蓄銳。接下來是天氣易變之時,必須留意勞動與衛生環境。」
「有りがたきお言葉。労働者には少しの休暇と褒賞を与え、鋭気を養うよう命じました。これからは天候が崩れやすくなる時期ですゆえ、労働環境や衛生環境にも気を配らなければなりません」
梅雨時若遇雨只能中止工事,若工期已延誤則可能逼迫勞工超負荷趕工。
梅雨の時期は雨天となれば工事を中止せざるを得ず、工期が遅れていれば、それを取り戻すべく無理な労働を強いる可能性が出る。
基礎建設專案將持續進行,不可耗損積累了經驗的老手。
インフラ事業は今後も続く大事業であるため、ノウハウを蓄積したベテランの労働者を使い潰したくはない。
「說起來,除基礎建設外還有件注意到的事,現在可以說嗎?」
「そう言えば、インフラ事業とは別に気付いたことがございます。今、お話してもよろしいでしょうか?」
「無妨,說來聽聽。」
「構わぬ、申してみよ」
「感覺貨幣流通量在減少。據手下所言,在京師與近江等地以物易物的市集正復活,亟需儘速增加貨幣。」
「貨幣の流通量が減っているように感じられます。手の者に拠れば京や近江などでは、物々交換の市が復活しているとのこと。早急に貨幣を増やさねばならないと存じます」
一說到增加貨幣,信長臉色一變。
貨幣を増やす、という言葉で信長の表情が変わった。
從表情判斷,信長也掌握貨幣流通量在減的事實,但對此想不出有效回應。
顔色から察するに、信長も貨幣の流通量が減っていることは把握していたのだろう。しかし信長は、それに対して有効打を思いつけなかった。
然而不能因此嘲笑信長無知;在沒有經濟學的時代,想到要增加貨幣,即便是思維再靈活的信長也不易達到此點。
だからと言って信長を無知と笑う事は出来ない。経済学など存在しない時代に、貨幣を増やすという考えに辿り着くのは、いかに思考が柔軟な信長と言えど難しいのだから。
「……你也這麼認為?果然是貨幣的問題嗎?」
「……そう思うか。やはり、貨幣が問題か」
「關於通貨發行的權限,織田家由朝廷承領。最佳策是以不換紙幣來控制經濟,但有諸多限制。現階段急務是鑄造銀幣、金幣,以確保與市場交易規模相稱的貨幣量。」
「通貨発行に関する権限は、朝廷より織田家が拝領しました。最上の策は不換紙幣を以て経済をコントロールする事ですが、それには色々と制約がございます。今は銀貨、金貨を鋳造し、市場の取引規模に相応しい貨幣量を担保することが急務かと思われます」
「金子不足就造出來。哼……說起來簡單,但沒人能想出這答案。果然無法一蹴而就嗎。」
「金が足りぬのなら、作れば良い。ふっ……口にすれば簡単だが、誰もその答えに辿り着けなかった。やはり一足飛びには進められぬか」
信長帶著自嘲笑。若貨幣短缺,就製造新貨投入,這是非常簡單的對策,但連自己也未想到這答案。
自嘲気味に信長は笑う。貨幣が不足しているのなら、新たな貨幣を製造して投入する。非常に簡単な対策だが、その答えにすら自分は辿り着けなかった。
信長理解靜子至今仍集結智者進行大量研究,因為她認為開創新事物需踏實的累積。
静子が今も尚、知恵者を集めて数多くの研究を進めているのも、新しい事を始めるには地道な積み重ねが必要だと判断しているからだと、信長は理解する。
「最終目標雖可見,但現狀恐難達成。我以為應先驅除鐚銭,並以金、銀、銅錢作為新貨幣流通為當務之急。」
「最終的に目指す地点は見えていますが、現状では不可能だと思われます。まずは鐚銭(びたせん)を駆逐し、新たな貨幣として金・銀・銅銭を流通させるのが先決だと思います」
「根本問題是,為何貨幣會減少?不明白這點就無法推進計畫。」
「そもそもの話だが、何故に貨幣が減るのじゃ? そこを理解せずに、話を進めることは出来ぬ」
「嗯……假設日本全境銅錢有一千萬枚。發行時即有一千萬文的銭。但經過流通,銅錢會磨損,或被熔碎混入雜質以減少銅含量,於是開始產生鐚銭。鐚銭的存在以及精銭條文會改變通用的貨幣數量。舉例半數為精銭、半數為鐚銭,若鐚銭五枚合一精銭,銭本體雖仍有一千萬枚,卻只有精銭五百万文與鐚銭一百万文合計六百万文能通用。這比最初流入的銭數還要少。如此一來貨幣價值上升,反而物價下降。」
「そうですね……仮に日ノ本全体で銅銭が一千万枚あるとします。発行当時は日ノ本に一千万文の銭があります。ですが流通を経ることで銅銭は摩滅したり、鋳つぶして混ぜ物をすることで銅の割合を減らしたりして鐚銭が生まれ始めます。この鐚銭があることと、精銭条文によって通用する貨幣の数が変わります。判りやすく半分が精銭、半分が鐚銭となったとします。鐚銭は五枚で精銭一枚とすると、銭自体は一千万枚あるのに、精銭五百万文と鐚銭百万文の合計六百万文しか通用しないことになります。当初流入された銭の数よりも貨幣が減っている状態です。こうなると貨幣の価値が上がり、逆に物価が下がります」
永樂錢是自明朝進口的錢。在貨幣供給為零的現狀下,市面上的貨幣只會減少。
永楽銭は明から輸入している銭だ。貨幣供給量がゼロの現状では、市場に存在する貨幣は減る一方である。
即便現在是精銭,終有一日會變為鐚銭,進一步推高貨幣價值,導致物價持續下跌的通縮經濟。
今は精銭であっても、いつしか鐚銭に変わり、更に貨幣価値を押し上げ、物価が下がり続けるデフレ経済に陥る。
正是當下處於通縮經濟。為解此問題,擴大內需被認為是良策。
正に今がデフレ経済状態だ。これを解消するには内需の拡大が良いとされる。
但要擴大內需,需有與交易量相稱的貨幣。因此靜子依循既有史例,進言不僅投入銅錢,亦投入金銀貨幣。
しかし内需を拡大しようにも、取引量に相応しいだけの貨幣が必要となる。そこで静子は既存の歴史に倣い、銅銭だけではなく金や銀の貨幣も投入するよう進言した。
「上様所定的精銭條文,決定了可依金的重量(・・)兌換的金子(・・)。如此下去貨幣會持續減少。我認為應加工金銀流通為貨幣,之後再以公共投資擴大內需。」
「上様の定められた精銭条文は、金の重さ(・・)に対して交換できる金子(・・)を決定しています。これでは貨幣は減り続けます。金や銀を加工して、貨幣として流通させ、しかるのちに公共投資を行って内需の拡大を目指すのが良いと私は考えます」
「嗯……金銀原用於與南蠻的交易,現在也要在我國使用嗎?當務之急是增加市面上貨幣的數量,須速收集金銀並鑄造新貨。」
「ふむ……金や銀は南蛮との取引に使用していたが、それを我が国でも使用するという事か。当面は市場に存在する貨幣の枚数を増やすのじゃな。ならば早急に金や銀を集め、新たな貨幣を鋳造する必要があるな」
「新貨幣的形制已有決定嗎?」
「新たな貨幣の形などはお決まりですか?」
「太過奇特反而難用。可仿永樂錢形制,並設法防止偽造。當然,偽造者將面臨根切之刑。」
「奇抜過ぎても使いづらかろう。永楽銭に似せた形でありながら、偽造を封じるようにすれば良い。無論、偽造した者には根切りが待っておる」
「我以為如此適宜。古來通貨偽造為重罪……根切,即是一族郎黨皆殺之刑,無異議。」
「それが宜しいかと存じます。古来より通貨偽造は重罪……根切り、即ち一族郎党皆殺しにするぐらいで妥当です」
「事情已經決定了。立刻召集技師。對技師本身也要嚴加監視。要從金銀中製造出金子。不能排除有人心懷歹念的可能性」
「話は決まったな。早速技師を集めよ。技師自体にも厳しい監視を敷け。金銀から金子を生み出すのだ。よこしまな考えを持つ可能性は有り得る」
「遵命」
「承知しております」
自古以來,從事貨幣製造的人都被置於嚴格的監視之下。
古来より通貨製造に従事するものは、厳しい監視下に置かれた。
在江戶時代,江戶幕府設立了金座、銀座、銅座等鑄幣機關,並讓各座負責製造貨幣。
江戸時代に於いては、江戸幕府が通貨を製造する金座、銀座、銅座という貨幣鋳造機関を設立し、それぞれの座に通貨を製造させた。
尤其是鑄造最有價值金幣的金座,受幕府嚴密監視。
特に最も価値の高い金貨を鋳造する金座は、幕府から厳しい監視を受けていた。
不僅限制能擔任高位職務的家系,當招募為職員時還需簽署誓約書,實施作業者相互監視制度,並接受奉行所的巡視。
高位の役職に就ける家柄を限定するのは勿論、職員として採用される時には誓約書の義務づけ、作業者による相互監視体制、奉行所からの巡視などだ。
並非只有江戶幕府特別嚴格。即便在現代,紙幣製造的技術也被視為極機密,相關職員的私生活受限是理所當然的。
特別江戸幕府が厳しい訳ではない。現代でも紙幣製造に関する技術は極秘扱いが基本であり、関わる職員が私生活に至るまで制限を受けるのは至極当然の話だ。
「需要訂立誓約書義務、職員互相監視、第三方巡視等規定。對職員宣告,只要檢舉任何一點可疑行動就給予報酬,這樣也較不會出現叛徒」
「誓約書の義務づけ、職員の相互監視、第三者による巡視などの取り決めが必要ですね。職員には少しでも怪しげな動きをした者を密告すれば、報奨金を渡すと各々に言い渡せば裏切り者も出にくいでしょう」
「果然不愧」
「流石じゃ」
信長聽了靜子的說明,露出一抹笑意。
静子の説明に信長はニヤリと笑った。
雖然上杉謙信向信長行了臣下之禮,但僅憑此事並不能保證臣服;首先決定要以人質作為臣下的證明,送往信長處。
上杉謙信が信長に臣下の礼を取ったが、その一事を以て臣従が担保されるかと言えば、そうではない。まず臣下の証として人質が信長へと送られることが決まった。
選擇送誰出人意外地沒花太多時間。
誰を送るかという選別は、意外にも時間を要さなかった。
被送往信長處做人質的是上杉景勝。這與上杉景虎出自北條家、而景勝出自上田長尾家的事實有關。
信長への人質となるのは上杉景勝であった。これは上杉景虎が北条家の出であるのに対し、景勝は上田長尾家の出であったことが影響している。
而越後長尾氏多年來一直在一門之間持續權力鬥爭。
そして越後長尾氏は長年一門同士の権力争いを続けていた。
尤其上田長尾家與古志長尾家仍然相互對立,對古志長尾家而言,人質之事是不容錯過的逐出景勝的絕佳機會。
特に上田長尾家と古志長尾家は現状も敵対しており、古志長尾家からすれば人質の件は景勝追放のまたとないチャンスだった。
景勝只帶著兼續等少數側近離開越後,途中平安無事抵達岐阜,並向信長行禮問候。
景勝は兼続などの僅かな側近のみを連れて越後を出立する。道中何事も無く岐阜へと到着し、信長へと挨拶を済ませた。
信長並未對景勝被送來這件事特別在意,便以人質身份接納了他。
信長は景勝が送られてきたことを然して気にすることなく、人質として迎え入れた。
本來景勝應在岐阜城下生活,但因美濃與越後地理接近、聯繫容易,令人不安,故景勝被安排在尾張做人質生活。
本来ならば岐阜の城下町で生活をするのだが、美濃と越後は地理的に近く、連絡も取りやすいという不安があったため、景勝は尾張での人質生活を送ることとなった。
而一旦到尾張,照顧景勝的人就只有一位。
そして尾張となれば、景勝の面倒を見る人物は一人しかいない。
「啊—嘛—我就覺得會是這樣吧」
「あー、まー、そーなるんじゃないかなーと思っていたよ」
靜子讀完信長的命令書後以有些無奈的態度接受了。若將景勝留在美濃,謙信想方設法還是可以聯絡上的。
信長からの命令書を読み終えた静子は、投げやりな態度で受け入れた。美濃に景勝を留め置けば、謙信ならばいかようにしてでも連絡を取ることが可能である。
然而一旦到尾張,物理距離介在其中。即便派間諜,也更易被發現,謙信也不易輕易聯絡上。
しかし、尾張までとなると物理的な距離が間に横たわる。間者を遣わそうにも発見される可能性は高くなり、謙信もおいそれと連絡を取ることが出来ない。
「這是上樣的命令。請務必穩妥執行」
「上様のご命令です。堅実に実行をお願い致します」
「人質啊。那麼,蘭丸,你能回答靜子的問題嗎?」
「人質か。で、蘭丸よ。お前、静子の質問に答えられるのか?」
當蘭丸以嚴肅的表情開口時,長可一邊咧嘴笑一邊插嘴挑釁;但蘭丸對長可的話置若罔聞。
凛とした表情で言葉を発する蘭丸に、長可がニヤニヤと笑いながら茶々を入れる。だが、蘭丸は長可の言葉を聞き流す。
「對上樣的命令,應該不會有異議吧。還有兄長,在這裡我是上樣的使者,那種粗暴的口氣如何說得過去?」
「上様のご命令に異論などありはしないでしょう。それから兄上、この場では私は上様の使者。そのような粗暴な口調は如何かと思います」
「嘴巴倒是開始裝模作樣了呢」
「口だけは一人前を気取るようになったな」
「好啦別每件事都找碴。接受並沒問題。細節指示都寫好了。那麼,上杉家的做人質之事,可以視為已委由我方全權處理嗎?」
「はいそこ、いちいち突っかからないの。別に受け入れは問題ないよ。細かい指示は全部書かれているしね。で、上杉家の人質の扱いは、こちらに一任されていると考えて良いのですね?」
「是的。上樣傳話說『要好好疼愛他』」
「はい。上様からは『可愛がってやれ』との伝言を承っております」
「知道了。辛苦你們了」
「承知しました。お勤め、ご苦労様です」
靜子沒再提出其他問題,於是結束了談話。之後蘭丸返回岐阜,按指示景勝等人進入其中一座側殿。
特に質問がなかった静子は、そこで会話を終了させた。その後、蘭丸が岐阜へ戻り、こちらの指示に従って景勝たちが側殿の一つに入る。
那些事辦妥後,景勝與兼續請求觸謁靜子。靜子理解是來行到訪禮,便命小姓立刻召入兩人。
それらが終わると景勝と兼続が、静子へ謁見を申し出た。到着の挨拶だろうと理解した静子は、二人をすぐに呼ぶよう小姓に命じる。
「吾名長尾喜平次。不知將長留或短留,但今後還請多多關照」
「長尾喜平次と申す。長くなるか、それとも短くなるかは判らぬが、それまでよろしくお願い申し上げる」
「我叫樋口与六,亦是,今後還請多多關照」
「樋口与六です。同じく、これからお世話になり申す」
「我知道了。我會對行動設幾項限制,但你們可以比較自由地生活,沒問題」
「話は聞いているよ。いくつか行動に制限は設けるけど、比較的自由に過ごして貰って構わないよ」
靜子並不打算對兩人施以繁複的限制。若設定過多限制導致監視人手不足,那就本末倒置了。
静子は二人に細かな制限を課す気はなかった。過剰な制限を設けた結果、監視側の人員不足に陥ったのでは元も子もない。
此外,即便決定謙信成為信長的臣下,仍會有人心存不滿。為了不給那類人可乘之機,對人質的待遇也不打算過於嚴苛。
また、幾ら謙信が信長の臣下になると決定しても、不満を持っている人間は必ずいる。そういった連中につけいる隙を与えないためにも、人質の扱いは厳しくする気はなかった。
也有一層私心,若不滿者以恩報仇,則可成為信長或謙信進行肅清時的正當理由。
不満を持つ人間が恩を仇で返すような真似をすれば、信長や謙信が粛正する際に大義名分となるのでは、という下心もあった。
「在目前的宅內可以自由行動,但外出時會有人陪同,只有這點要注意」
「今いる家の中なら自由に行動して構わないけれど、外出時はこちらの人間がつくから、そこだけ注意してね」
「多謝您的過分厚待,衷心感謝」
「過分なご温情、心より感謝いたす」
「省去細節,大概就是這樣吧?剩下的請每次向監視者慶次先生詢問。」
「細かい話を省くと、大体こんなところかな? 後は監視役の慶次さんに都度尋ねて下さい」
之後景勝與兼續在慶次帶領下離開。臨出門前,聽到慶次和兼續有關酒的對話,靜子感到有些不安。
その後、景勝と兼続は慶次に連れられて退出した。出て行く直前、お酒がどうのこうの、という慶次と兼続の会話が耳に届いたため、静子は若干不安を感じた。
擔心酒會被大量消耗。
お酒の減りが激しくなるのでは、という不安に。
正當靜子模糊地想著應該很快就是淺井·朝倉之攻時,收到從事金屬加工的前奴隸彌一和瑠璃來訪的通知。
もうすぐ浅井・朝倉攻めかな、と静子がぼんやり考えていると、金属加工に従事している元奴隷の弥一と瑠璃が訪ねてきたとの連絡を受けた。
因為沒記得有召喚,靜子想可能有事要商量,於是決定會見兩人。即便麻煩也移到謁見之間。
呼び出した覚えがないため、何か相談事かなと考えた静子は二人と面会することにした。面倒でも謁見の間まで移動する。
果然,與其說是來商量,不如說是來請求靜子的幫忙。
案の定、二人は相談事、というよりは頼み事を願いに静子との面会を求めていた。
「想要有自己的家嗎?」
「家を持ちたい?」
相談內容是想要一間兩人一起住的房子。由於工作地點不同,目前彌一和瑠璃分開居住。
それは二人で暮らす家が欲しい、という相談だった。それぞれ働く場所が違うため、現在弥一と瑠璃は別々に暮らしている。
因為以前沒有分開生活的經驗,這成了看不見的壓力。
今まで離れて暮らした経験がないため、これが見えないストレスとなっていたとの事だ。
所以想兩人一起住。但彌一認為若未經許可改變待遇會被責備,便來向靜子取得許可。
そこで二人で一緒に住みたい。しかし許可なく待遇を変えては叱責される、と弥一が考え、静子に許可を取りに来たという話だった。
「嗯,沒關係。如果那樣能提高工作的效率,我也沒有理由拒絕。」
「うん、別にいいよ。それで仕事の効率が上がるなら、こちらとしても断る理由はないよ」
得到靜子的許可後,彌一和瑠璃鬆了口氣。
静子の許可を得られて弥一と瑠璃はホッと胸をなで下ろす。
靜子心想是否必須這麼在意,但理解到因為長期的奴隸生活,他們已養成習慣總要取得雇主的許可。
そこまで気にするものかな、と思ったが奴隷生活が長かったために、彼らは雇い主の許可を得るのが癖になっているのではと静子は理解した。
「對了,工作順利嗎?」
「ところで仕事は順調かな?」
「是的。一開始關係很僵硬,但現在大家都對我們很好。不過,職人們的認真程度我到現在還不擅長,有點跟不上。」
「はい。最初はぎこちない関係でしたが、今では皆さんに、とても良くして貰っています。ただ、職人さんたちの真面目さ、だけは今も苦手です。ちょっと、ついていけないです」
「年輕人或熱情的人喊我們老師或師傅我很高興。但大家太過一本正經,反而讓我們感到不好意思。」
「若い人や、情熱的な人からは先生や師匠って呼ばれて嬉しいです。でも、みんな生真面目過ぎて、こっちが逆に恐縮しちゃいます」
「是喔,那就好。嘛我們這裡的職人都很好勝,他們想學習你們的技術,總有一天想超越它吧。」
「そっか、それは良かった。まぁうちの職人たちは負けず嫌いだからね。二人の技術を学んで、いつかそれを超えたいって思っているのでしょう」
從聽來,彌一和瑠璃與職人街的職人們關係良好。他們做的商品雖還不到熱賣的程度,但漸漸受到注目。
話を聞く限り、弥一や瑠璃と職人街の職人たちの関係は良好だった。彼らが作る商品も飛ぶように売れる、とまでは行かないが徐々に注目されるようになっていた。
特別是用約一毫米細的銀或金細線製成的帶飾,在平時不戴裝飾品的武家婦人之間,成了暗中的人氣商品。
特に1ミリ程度の細い針金状の銀や金で細工した帯飾りは、普段装飾品を身に付けない武家の婦人の間で、密かな人気商品となっていた。
「真是令人感激的事。但想到同胞依然受到不遇對待,我無法由衷地高興。」
「有り難い話、です。ですが、同胞が今も不遇な扱いを受けている、と思うと、心から喜べない自分がいます」
也許本性認真,彌一無法接受只有自己得到救助的現狀。瑠璃撫著彌一的背安慰,但效果不大。
根が真面目なのか、弥一は自分だけが救われた現状を受け入れられずにいた。瑠璃が弥一の背中をさすって慰めるが、いまいち効果はなかった。
「哼,你從什麼時候開始有資格替別人操心了?」
「はん、お前はいつから他人(ひと)様の心配が出来る身分になったのだ」
正當靜子思索該說什麼時,不知何時虎太郎已站到彌一身後。驚訝的彌一回頭,虎太郎看他哼了一聲。
静子が掛ける言葉を考えていると、いつの間にか虎太郎が弥一の背後に立っていた。驚いた弥一が振り返るが、そんな彼を見て虎太郎は鼻を鳴らす。
「別以為稍有餘裕就驕傲自大。你連自己都照顧不好,竟還妄想為別人擔心,真是自不量力。」
「少しばかり余裕が出来たからと言って、若造が思い上がるな。我が身すら思い通りにならぬお前が、他人の身を案じようなど烏滸(おこ)がましいわ」
「……是。」
「……はい」
「現在要先穩固自己的立足點,優先讓自己能獨立。照顧他人的事以後再說。」
「今は自分の足場を固め、自分が独り立ちできるようになるのを優先しろ。他人の面倒などはそれからだ」
與其說由為主的靜子說,不如說同為猶太人的虎太郎之言更容易讓人信服,原本愁眉不展的彌一如今臉上已消除了迷惘。
主である静子が何か言うよりも、同じユダヤ人である虎太郎の言葉が納得し易かったのか、先ほどまで思い詰めていた弥一だが、今は迷いの晴れた顔をしていた。
似乎對彌一的表情感到滿意,虎太郎露出一抹笑容坐下。
弥一の表情に満足したのか、虎太郎はニヤリと笑いながら座った。
「抱歉,主人。今天是來請求一件事的。」
「済まない、御主人。今日は頼み事があって来たのだが」
「這事有些遲了吧。這次就算了,但下次請務必按程序來。」
「今さらな話ですね。今回は良いですが、次回からはちゃんと手順を守って下さいよ」
「我會善處。那麼,事情是想釀造葡萄酒,希望能準備好那個環境。」
「善処しよう。それで、話というのはワインを作りたいから、その環境を揃えて欲しい」
靜子心裡暗自吐槽他那既客氣又無禮的說法像是學來的,但一聽到葡萄酒這個詞就開始思考。
誰から教えられたのかと思うような慇懃無礼な言い様に、心の中で突っ込んでいた静子だったが、ワインという単語を聞いて考える。
在基督教中葡萄酒被視為「神的血」,是非常重要的物品。但事實上在猶太教中,葡萄酒也是喜樂的象徵,在安息日獻禮等也很重要。
キリスト教においてワインとは『神の血』であり、非常に重要なアイテムだ。だが実はユダヤ教においてもワインは喜びの象徴、安息日にお祈りを捧げるなど重要なものである。
額外一提,猶太教有稱為卡舒路特(也稱可舍爾)的飲食規定。
余談だが、ユダヤ教には戒律に適合したカシュルート(コーシェルとも言う)という食事規定がある。
若嚴格遵守卡舒路特,葡萄酒必須由猶太教徒按規程栽培葡萄、釀造並裝瓶,其他的都不被承認。
カシュルートを厳格に守るならば、ワインはユダヤ教徒が手順に従ってぶどうを栽培し、ワインを作り、瓶詰めしたもの以外は認められない。
當然,即便是符合卡舒路特的葡萄酒,若被異教徒接觸也同樣會被視為不潔淨。
無論、カシュルートに適合したワインを異教徒が触れても同様に穢れたものと見做される。
「那是說想釀製遵守戒律的葡萄酒嗎?」
「それは戒律に則ったぶどう酒を作りたいという事でしょうか?」
「嗯?啊哈哈哈哈,我根本沒想到戒律之類的。純粹只是想喝葡萄酒。但收集葡萄是我現在做不到的事,所以才來依靠主人。」
「ん? あっはっはっは、戒律など考えもしなかった。純粋にワインが飲みたくなったというだけだ。だがブドウを集めるのは、今のわしに出来ぬ事だからな。御主人に縋っている訳だ」
「那麼幾個月後甲州葡萄就要到收穫期了,屆時把不適合生食的葡萄拿來釀酒吧。」
「それなら後数か月で甲州ぶどうが収穫時期を迎えます。その時に、生食に向かないものをワイン用にしましょう」
「拜託了。」
「よろしく頼みます」
話一說完,虎太郎立刻轉身而去,彷彿在說一切已經辦妥似的,離開了謁見室。周圍的人都被他的隨性嚇愣了,但只有慶次和靜子在笑。
言い終えると同時に虎太郎は踵を返し、用は済んだと言わんばかりに謁見の間を後にした。自由すぎて周りは呆気にとられていたが、慶次と静子だけは笑っていた。