戦国小町苦労譚
一五七二年 十二月下旬
馬場信春、山縣昌景戰死。這個消息傳到信玄那裡時,正好在靜子下達對武田軍突擊命令的前一刻。
馬場信春、山県昌景の討ち死に。その報せが信玄の許に届いたのは、静子が武田軍への突撃命令を下す直前であった。
沒有人能理解傳令帶來的事實。不,情感拒絕了理解,但隨着時日流逝,他們不得不接受這一局面。
誰もが伝令の齎した事実を理解しなかった。否、感情が理解を拒んだ。しかし時と共に事態を受け入れざるを得なかった。
武田在這一戰中遭受了巨大的傷亡。
武田はこの一戦で甚大な被害を出したという事を。
素有「武田家最強」之名的山縣昌景率領的赤備,與在戰場上征戰四十年、未曾受過一絲擦傷的「不死身」馬場信春,二人俱失,對武田而言猶如雙臂被斬。
武田家最強との呼び名も高い山県昌景率いる赤備え、四十年もの長きを戦場で過ごし、かすり傷一つ負わなかった不死身の馬場信春。両名を失った武田は両腕をもがれたに等しい。
「主公!若不回敬他們一箭,武田之名將不保!請命令我突擊!」
「お屋形様! 奴らに一矢報いねば武田の名が廃りまする! 某に突撃の命を!」
此時武田有兩個選擇,即持續戰鬥或撤退。然而即便失去主力,武田與織田・德川聯軍的戰力仍相當接近。
この時点ならば武田には二つの選択肢があった。即ち、継戦か撤退かである。しかし主力を欠いて尚、武田と織田・徳川連合軍との戦力は拮抗していた。
在還有勝機時撤退的選擇,傲氣不允許。他們更顧忌的是,若此刻撤退,先前得來的戰果將化為泡影,付出的犧牲亦成徒然。
勝利の目があるうちに退却するという選択は彼らの矜持が許さなかった。何よりもここで撤退すれば、これまでに得た戦果が全て水の泡となる上に、払った犠牲が無駄となってしまう。
曾向武田示以恭順的遠江國人,也顯然會為追求能再度倒戈的籌碼而向武田發起追擊。
武田に恭順を示した遠江の国人たちも、再び寝返る手土産を求めて、武田へと追撃を放つ事は目に見えていた。
若僅為名譽,或可忍受屈辱,待捲土重來之機。然而動員全軍撤退卻無功,判斷上將比繼續與織田・德川聯軍作戰造成更大損失。
名誉のためだけならば屈辱に耐え、捲土重来の時を待つ事も出来た。しかし全軍を動員して戦果の無い撤退は、織田・徳川連合軍との継戦よりも損害が大きいと判断された。
「派出第三陣。不要讓他們再得意忘形。」
「第三陣を向かわせよ。奴らをこれ以上、調子づかせるな」
決定繼戰的信玄向本陣以外的全軍下達攻擊指示。此號令令全軍振奮。雖小山田信茂、山縣昌景、馬場信春的軍隊遭到殲滅,武田仍不乏勇猛武將。
継戦を決定した信玄は、本陣を除く全軍へと攻撃指示を下す。その号令に全軍が活気づいた。小山田信茂、山県昌景、馬場信春の軍は壊滅したが、武田は勇猛な武将に事欠かない。
若內藤昌豐、真田信綱與昌幸兄弟、諏訪勝頼、武田信豐、米倉丹後守等加入,似可將氣勢正盛的織田・德川聯軍逼退。
内藤昌豊、真田信綱・昌幸兄弟に諏訪勝頼、武田信豊、米倉丹後守が加われば、勢いづく織田・徳川連合軍を押し返す事も容易いと思えた。
然而信玄在此犯下致命錯誤。他認為織田・德川聯軍已用全力攻向赤備與馬場軍,勉強討取了兩人。
しかし信玄はここで致命的な失敗を犯す。彼は織田・徳川連合軍は全軍を以て赤備えや馬場軍に当たり、辛くも両名を討ち取ったと考えた。
使信玄判斷錯亂的是資訊不足。戰場極為混亂,不論敗因為何,能將有力武將戰死的消息視為最重要;新式火槍與炸裂筒的威脅尚未傳到信玄耳中。
信玄の判断を狂わせたのは情報不足であった。戦場は混迷を極め、敗因はともかく有力武将討ち死にの報が何よりも大事と優先され、新式銃や炸裂筒の脅威は未だ信玄まで届いていなかった。
而當信玄理解到自身失策時,一切已為時過晚。傳令帶來了急報。
そして信玄が己の失策を理解したときには、全てが遅きに失していた。伝令より急報が告げられる。
「稟報!!增援……織田的增援出現了!其數約八千!」
「ご注進!! 増援が……織田の増援が現れました! その数、およそ8000!」
「什麼!」
「何だと!」
面對在最糟時機出現的增援,連信玄也勃然大怒。信長應已把防備削減到極限派出後援,不可能還有更多增援出現。
最悪のタイミングで現れた増援に、流石の信玄も声を荒げた。信長は防備をギリギリまで削って後詰めを送り出したはず、更なる増援など逆さに振っても出てこない。
或曾猜測他們捨棄尾張趕來救援,但若如此,縱使此處得勝,織田與德川也將同歸於盡。
尾張を捨てて救援に駆け付けたとも考えたが、それをすればこの場で勝利を収めようとも織田・徳川は共倒れとなる。
究竟從何處湊出約八千兵力?就連信玄也無法找到頭緒。
どこから8000もの戦力を捻り出したのか。信玄の目を以てしても、その糸口すら掴めずにいた。
「主公!援軍所揚之軍旗有柴田、明智、丹羽等名將的旗印!照此情勢,第二陣無法支撐!!」
「お屋形様! 援軍が掲げる軍旗に柴田に明智、丹羽と名だたる武将の旗印がございます! このままでは第二陣が保(も)ちませぬ!!」
「稟報!!此外已確認佐佐、前田、羽柴、森的旗幟!」
「ご注進!! 更に佐々に前田、羽柴、森の旗が確認されました!」
「主公!遭到織田猛攻,內藤大人的軍隊已遭殲滅!內藤大人疑似戰死!」
「お屋形様! 織田の猛攻を受け、内藤様の軍は壊滅! 内藤様は討ち死にの模様!」
「真田大人的軍隊也被擊潰!真田左衛門尉殉死!未有人見到武藤喜兵衛(真田昌幸)大人的身影!恐怕也是已戰死!」
「真田様の軍も破れました! 真田左衛門尉様討ち死に! 武藤喜兵衛(真田昌幸)様のお姿を見た者おらず! おそらく討ち死にされたかと!」
「先前退守的一線的森三左衛門出現了!!繼續怒濤般推進,士兵們已慌亂起來!!」
「一線を退いていた森三左衛門が現れました!! 怒涛の進撃を続け、兵たちが浮足立っております!!」
接連不斷的訃聞傳到信玄處。隨著增援出現,原本相持的天秤大幅傾斜。可以肯定的是,若繼續袖手旁觀,武田將敗北。
信玄の許へ矢継ぎ早に訃報が齎される。増援の出現と共に釣り合っていた天秤は大きく傾いた。ただ一つ言える事は、このまま手を拱(こまね)いていれば、武田は敗北する。
(這到底是怎麼回事!)
(何が、一体どうなっておる!)
信玄停止思索那難解的增援,轉而專注現場應對。此情況猶如雙方同時開戰,而敵方卻暗藏大量底牌。
信玄は不可解な増援について考えるのを止め、その場の対処へと注力する。この状況は揃って打ち始めた局面に、相手だけが多くの持ち駒を隠し持っていたようなものだ。
然戰事自相見之前即已展開。他為未能識破那盤算而感到羞愧。
しかし戦場にて相(あ)い見(まみ)える前からいくさは始まっている。その絡繰りを見抜けなかった己の不明を恥じた。
作為歷戰老將的信玄壓抑動搖,端正儀容,下令召高坂昌信。
歴戦の強者たる信玄は、動揺を押し殺すと居住まいを正し、高坂昌信を呼ぶよう命じた。
不久高坂昌信到達,信玄招手令其近前。雖感奇異,高坂昌信仍跪至信玄膝前。
間をおかず高坂昌信が現れると、信玄は彼に近くに寄るよう招いた。不思議に思いながらも高坂昌信は信玄の間近に跪く。
信玄低聲說了些話,高坂昌信驚得瞪大雙眼。凝視信玄之際,信玄堅定點頭。
信玄が何事かを囁いたところで、高坂昌信が驚きに目を見開いた。そのまま信玄の顔を凝視する高坂に、信玄は決然と頷いた。
「主公……明白了!」
「お屋形様……心得ましてございまする!」
高坂昌信似乎略有遲疑,閉目凝視信玄後深深低頭轉身離去。信玄默然送行,面無表情。
何かを逡巡するように高坂昌信は瞑目し、信玄を見つめ返すと深々と頭を下げてその場を去った。信玄はその後ろ姿を、感情を殺し無言で見送った。
時間稍稍回溯,當織田方為慶次與高虎對陣,而武田方則有內藤昌豐及真田信綱、昌輝、昌幸兄弟交鋒之時,慶次已將戰局帶入與真田信綱的一對一決鬥。
刻は少し遡り、織田方は慶次と高虎。武田方は内藤昌豊に真田信綱・昌輝・昌幸兄弟とがぶつかり合っているころ、慶次は真田信綱と一騎打ちへと持ち込んでいた。
「嗚呀呀呀呀啊!!」
「おりゃりゃりゃりゃあああ!!」
伴隨輕快的喊聲,慶次化解了真田信綱的所有猛攻。
軽妙な掛け声と共に、慶次は真田信綱の猛攻を全て捌いて見せた。
即便在戰場上,那傾奇者耀眼的身姿也難以想像其武威。能與被信玄寄予厚望的猛將真田信綱勢均力敵交手的慶次,令真田軍難以掩飾動搖。
戦場にあって尚、目を引く傾奇者の姿からは想像できない武威。信玄から将来を嘱望された猛将、真田信綱と互角に打ち合う慶次に真田軍は動揺を隠せなかった。
「哈哈——!你弟弟有些不夠看,但若是和你交手,倒是有趣的對決可期待。」
「はっはー! お前さんの弟はちと物足りなかったが、あんたとなら面白い勝負が出来そうだ」
所謂弟並非昌幸,而是指真田昌輝(まさてる)。被慶次討取的真田昌輝之後,改由兄長真田信綱持名匠青江貞次鍛造的一公尺陣太刀與慶次交戰。
弟とは昌幸ではなく、真田 昌輝(まさてる)の方だ。慶次に討ち取られた真田昌輝に代わり、今は兄の真田信綱が名工・青江貞次が鍛えた一メートルもの陣太刀で慶次と戦っていた。
「化け物……竟能如此輕易化解我的一擊」
「化け物め……わしの打ち込みをこうも易々と捌くとは」
「並非易如反掌。因為你的攻勢一旦失手便無法承受,所以我才拼命應對」
「易々とではないのだがな。お前さんの攻撃は、受け損ねることが許されないから必死になってるんだよ」
慶次握著長戟稱讚真田信綱。能遇到如此強敵的幸運,加上自己能與之匹敵的現實,慶次的心怎能不雀躍。
ハルバードを構えながら慶次は真田信綱を称えた。これほどの強敵に出会えた幸運、それに己の力が伍するという現実。慶次の心が躍らない訳がなかった。
「以置身死地為樂麼。我不能理解」
「死線を潜ることを楽しむか。理解できぬな」
「正因面對死亡才更能感受生的存在。這不正好嗎!」
「死を前にしてこそ生が実感できる。だから良いんじゃないか!」
信綱無法理解,然而慶次卻從心底享受這場一騎決鬥。面帶彷彿在說『瞬間交錯生死的對決最有趣』的笑容,真田信綱不禁苦笑。
信綱には理解し得ないことだが、慶次はこの一騎打ちを心底楽しんでいた。刹那の間に交わされる命のやり取りほど面白きことは無し、と言わんばかりの笑みに、真田信綱は苦笑を浮かべた。
「傾奇者嗎……作為武士的我無法理解」
「傾奇者か……武士たるわしには分からぬわ」
「簡單。不用去理解,只要把你的一切都砸過來就好」
「簡単さ。理解なんてしなくていい、あんたの全てをぶつけてくれりゃ良い」
話音一落,刺耳的金屬聲響起。刃鳴呼嘶,長戟與陣太刀相碰的擊刃聲回蕩,究竟回響了多少次無人知曉。
会話の終わりとともに甲高い音が響く。ひゅうっという刃鳴りの音を響かせて、ハルバードと陣太刀がぶつかり合う撃刃の音だ。幾度こだましたか誰にもわからない。
可以肯定的是,當這聲響止息之時,就是決勝之刻。
一つ言えるのは、この音が絶えた時が決着の時だという事だ。
「真不懂。若有那等武勇,應該能在任何地方仕官。若投靠武田,定能以剛勇之士聞名吧」
「分からんな。それだけの武勇があれば、どこへでも仕官出来たはず。武田にくれば、剛勇たる武士として名を馳せられたものを」
「我生性倔強。我想自由地活,在自己選定的死地結束生命。死板的近習我才不幹」
「俺は生来のへそ曲がりなんでね。俺は自由に生き、己が定めた死地で生を終えたいのさ。堅苦しい近習なんてまっぴらご免だ」
「明明侍奉近衛的女子,卻說討厭近習?真是矛盾」
「近衛の娘に仕えていながら、近習は嫌だというのか。全く矛盾しておる」
兩人在交鋒間互相喊話,這幾乎是常人無法做到的技藝。能輕鬆應對的慶次令人驚嘆,而能無所費力地與之相應的真田信綱更是可怕的武士。
打ち合いの合間に互いに声を掛け合う。およそ常人には成し得ぬ芸当だった。難なくこなす慶次も驚嘆に値するが、それに苦も無く付き合える真田信綱も恐ろしい武士だ。
「哈哈!從外人看確實像近習。今的主不會束縛我。當然需要做最低限的事,但只要通過那關,他就尊重我的作風。雖無任何英姿,卻莫名吸人不放。大概跟我很合得來吧」
「ははっ! 確かに外から見れば近習か。今の主は俺を縛ろうとはしない。無論最低限の働きは必要だが、そこさえ通せば俺の流儀を重んじてくれる。勇ましさは一切ないが、どうにも人を惹きつけて放さない。俺と相性が良かったんだろうな」
「哼,胡說!不束縛部下的主君,與即便不被束縛也不離去的部下。既然雙方互為矛盾,反而相性良好吧」
「はっ、ぬかしおる! 配下を縛らぬ主に、縛られずとも離れぬ配下。双方が矛盾しておるのだから相性は良かろう」
刀鋒交錯的衝擊讓雙方大幅退開。雖然距離拉開,卻是一旦踏出一步即落入對方斬擊範圍、充滿緊張感的立場。
刃を交えた衝撃で、双方とも大きく身を離した。間合いは開いたが、一歩踏み込めば互いの斬撃の間合いとなる、緊張感を孕んだ立ち位置だった。
下一合便決勝負。周圍的人從兩人之間瀰漫的氣氛中不由得理解到這一點。
次の一合が勝負を決める。二人の間に漂う空気から、周囲の者は否応なくそれを理解した。
即便在生死搏鬥中仍帶笑的慶次,此刻也呈現出連靜子都未曾見過的認真表情。
死合の中でも笑みを浮かべ続けた慶次も、静子ですら目にしたことのない真剣な表情となっていた。
忽然一陣突風襲來,將原本橫躺在地、可能曾是旗幟的布片捲上半空,在兩人之間翻飛舞動。
不意に突風が吹いた。それは地面に横たわっていた、元が旗だったであろう布切れを宙に舞わせ、二人の間でその身を翻して踊らせた。
當翻飛的布片遮住彼此的瞬間,兩人同時動了。雙方在一個舉動中縮短距離,將手中兵刃朝對方揮下。
翻った布で互いが隠れた瞬間、二人は動いた。双方が一挙動で間合いを詰め、手にした得物を相手目がけて振り下ろした。
慶次的長戟與真田信綱的陣太刀卻未交錯,而是各自揮過。雙方的斬擊勢頭劈入地面,並以那姿勢凝止不動。
慶次のハルバードと、真田信綱の陣太刀は、しかし交差せずに振り切られた。双方とも斬撃の勢いのままに地面を穿ち、その姿勢のまま静止した。
寂靜主宰全場,沒有人發出聲響。隨後慶次屈膝,過了一會兒真田信綱倒臥於地。
静寂が場を支配し、誰一人として物音を立てなかった。やがて慶次が膝を屈し、少し間を置いて真田信綱が地面に倒れ伏した。
「比我……一生之最還要高嗎」
「わしの……生涯最高を超えるか」
真田信綱以插在地上的刀當拐杖起身。他從左肩到右腰一帶被斜劈一道傷痕。
地に刺した刀を杖に、真田信綱が身を起こす。彼は左肩から右腰辺りまでを袈裟掛けに斬られていた。
慶次的鎧甲亦被破碎,從右肩到鎖骨一路留下刀傷,微微滲血。
対する慶次も、身に纏った鎧が砕け、右肩から鎖骨にかけて一直線に刃傷が走り、僅かに出血していた。
「呵呵,真叫人受不了。被那種伎倆對付,武士的面子全沒了」
「くくっ、たまらんよな。そんな芸当……されては、武士の面目丸つぶれじゃ」
踏步與斬擊方面真田信綱更勝一籌。慶次比真田信綱慢了一拍才動。
踏み込みと斬撃は真田信綱の方が上だった。慶次は真田信綱より一拍置いて動いた。
真田信綱放棄閃避,揮出渾身一擊。慶次為躲避迫近的斬擊而發出反擊。
真田信綱は回避を捨て、渾身の一撃を見舞った。対して慶次は迫る斬撃を回避し様に、逆撃を放った。
即便是慶次也極少能做到這等事。
慶次でも滅多に出来る事ではない。
那是一擊,只有在慶次超常的反應速度、將沉重長戟當作細枝般揮舞的驚人臂力、即便全力踏進仍能閃避的瞬發力,以及置身生死邊際時的極端專注力全數到位,才得以成就。
慶次の常軌を逸した反応速度、重いハルバードを小枝のように扱う驚異的な膂力、全力の踏み込みでありながら身を躱せる瞬発力、生と死の狭間という極限状態での集中力が揃って初めて為せる一撃であった。
真田信綱從自己身上的傷痕中理解了這一點,露出滿足的笑容。
わが身に刻んだ傷痕から、その事を理解した真田信綱は、満ち足りた笑みを浮かべた。
「我想問一件事。你明知道這是場敗戰吧?為何不想逃?」
「一つ聞きたい。あんた、これが負け戦だと判っていただろう? 何で逃げようとしなかった」
真田信綱吐出口中積血,回答道。
口中に溜まった血を吐き捨て、真田信綱は答えた。
「……在這場戰中我深刻體會。從今以後將是鐵炮的時代。只會用弓、刀、槍的武士終將被時流推倒。以一生磨練的技藝會成為無用之物。此事我無法忍受!!因此我賭上此身抵抗!」
「……このいくさで思い知った。これからは鉄砲の時代となる。弓や刀、槍しか能のない武士は、いずれ時流に押し流される。己が生涯を懸けて磨き上げた技量が、無用の長物となる。わしにはそれが我慢ならなかった!! ゆえにこの身を賭して抗ったのだ!」
真田信綱在此一戰察覺戰事形態已變,鐵炮的數量將決定勝負。他理解那意味著個人武勇不再被需要,武士的時代將走向終焉。
真田信綱はこの一戦で、いくさの在り様が変わり、鉄砲の数が勝敗を決する事を察した。それは個人の武勇が必要とされない、武士の時代の終焉であると理解した。
雖然理解,真田信綱卻無法接受。當想到自己無法接受變化的未來時,他覺悟三方ヶ原台地(此地)會是自己的死所。
理解はしたが、真田信綱は納得できなかった。変化を受け入れられない己の未来を想った時、彼は三方ヶ原台地(ここ)が己の死に場所だと悟った。
「我不能忍受被鐵炮奪去性命!我是武士!末了要在戰場上,在與我認可之人的戰鬥中終結!」
「鉄砲で死ぬなど我慢ならぬ! わしは武士ぞ! 最期はいくさ場で、わしが認めた男との戦いの末に果てたい!」
真田信綱劇烈咳嗽,口角滲出鮮血。近習們欲靠近,他揮手制止。他最清楚自己已無生還可能。
真田信綱は激しく咳込み、口の端から血を溢す。近習たちが近寄ろうとするが、彼はそれを手で制した。もう己が助からない事は、彼自身が一番理解していた。
「若你是個在生法與死法上執著之人便會明白。我已了卻我的夙願」
「生き方、死に方に拘る貴様なら分かろう。わしは己の本懐を果たした」
慶次露出不敵的笑容,緊緊握住哈爾巴德。
慶次は不敵な笑みを浮かべると、ハルバードをきつく握りしめた。
「先走吧。沒事的,很快就會再相見,到時候我們一起喝酒吧」
「先に行ってな。何、すぐ会えるさ。そしたら酒でも酌み交わそう」
「嗯!在那個世界我會看著你活著的樣子,等著你」
「応! 貴様の生き様、あの世で眺めて待つとしよう」
那成了真田信綱的遺言。慶次用哈爾巴德斬下真田信綱的首級;真田信綱的臨終面容平靜,帶著彷彿在訴說對此生無所遺憾的冷靜表情。
それが真田信綱の最期の言葉となった。慶次はハルバードで真田信綱の首を落とした。真田信綱の死に顔は穏やかで、この世に後悔なしと語りかけるような涼しげな表情だった。
向真田信綱的首級合掌後,慶次喃喃低語。
真田信綱の首に手を合わせると、慶次はポツリと呟いた。
「真田左衛門尉,是真正的武士」
「真田左衛門尉、真の武士(もののふ)なり」
繼真田昌輝之後連真田信綱也被討取,真田軍的士氣瓦解。士兵們跪倒在地,拋下武器,追思已逝的主君。
真田昌輝に続き真田信綱まで討ち取られた事に、真田軍の士気は瓦解した。膝から崩れ落ち、武器を捨てて亡き主人を偲んだ。
「可以嗎?」
「宜しいか」
慶次撥開那些士兵,一名騎在馬上的武將走上前。
そんな兵をかき分け、馬に跨がった一人の武将が前に出る。
「要做嗎?」
「やるかい?」
從氣勢看出是武士的慶次輕抬哈爾巴德詢問,但那武將搖頭,將腰間佩刀拋向地面。
雰囲気から武士と分かった慶次は、ハルバードを軽く持ち上げて問う。だが武将は首を横に振ると、腰に佩いた刀を地面に投げ捨てた。
「以吾之命,乞求取回兩位兄上之首,並請饒恕士兵之性命」
「我が命で兄上二人の首、そして兵の助命を乞う」
「……你叫什麼名字?」
「……あんた、名は?」
「武藤喜兵衛。我雖被送去武藤家為養子,實為被你討取的真田左衛門尉之弟」
「武藤喜兵衛。武藤家へ養子に出た身だが、そなたに討ち取られた真田左衛門尉の弟なり」
一邊說著話的武藤喜兵衛,亦即後來的真田昌幸,脫下甲冑;只剩籠手與脛當時,他再度看向慶次,那雙眼在詢問答案如何。
語りながら武藤喜兵衛、後の真田昌幸は甲冑を脱いだ。籠手と臑当(すねあて)のみになると、再度慶次の顔を見やる。返答はいかに、と彼の目が問いかけていた。
「知道了。我接受你的提案」
「分かった。あんたの提案、受け入れよう」
慶次想了片刻便點頭。從一開始他並不需要真田的首級;比現有更高的地位反而只會成為枷鎖,即便沒有大將首也已獲得足夠的報酬。
少し考えて慶次は頷いた。元より慶次は真田の首を必要としていなかった。今以上の地位など足枷にしかならない。大将首など無くとも十分な報酬を得ている。
但若在此處說出此事,便會讓以性命相賭、乞求饒恕士兵的武藤喜兵衛丟臉。
だが、この場でそれを口にすれば、一命を賭して兵の助命を乞うた武藤喜兵衛に恥をかかせることになる。
慶次心想把他帶回靜子的府上,待時機適當再釋放便可。
静子の許へと連れ帰り、適当な時に解放すればそれで良いと考えた。
「多謝。諸位好好聽著,此戰至此已終,請為兩位兄上好生哀悼,拜託了」
「感謝いたす。皆の者、よく聞け。もはやこのいくさは終わりじゃ。兄上たちをどうか弔ってくれ。よろしく頼むぞ」
「哈、哈哈!」
「は、ははっ!」
真田的士兵們帶著滂沱的淚水堅定應聲,迅速以陣羽織包起真田昌輝與真田信綱的首級,然後展現出不似敗軍的紀律有序地離去。
真田の兵たちは滂沱と流れる涙をそのままに、力強く応じた。手早く真田昌輝と真田信綱の首を陣羽織で包むと、敗軍の兵とは思えぬ統率を見せて去って行った。
對士兵行動滿意點頭的武藤喜兵衛,以那種死志已決者特有的澄澈目光送走撤退隊伍。
兵たちの動きに満足げに頷いた武藤喜兵衛は、死を覚悟した者特有の澄んだ目で撤退を見送った。
不久真田家士兵全數離去,留下的空隙中慶次向武藤喜兵衛開口。
やがて真田家の兵が全て立ち去り、訪れた空隙に慶次が武藤喜兵衛に声をかけた。
「話說,那個首級……不過在那之前,你要不要見一見我方的大將?」
「さて、その首を……と言うところだが、その前にあんた、うちの大将にあってみないか?」
「何?」
「何だと?」
武藤喜兵衛對慶次奇怪的提議歪頭,但慶次不管,自顧繼續說下去。
慶次の奇妙な提案に武藤喜兵衛は首を傾げる。だが慶次は気にせず言葉を続ける。
「我的直覺低語,比起殺了你,讓你和我們的大將見面會更有趣」
「あんたを殺すよりも、うちの大将と引き合わせた方が面白いと、俺の勘が囁くのさ」
「那有什麼意義?取我首級,作為武功的證明呈上不就好了」
「それに何の意味がある。わしの首を取り、武功の証として突きだせば良かろう」
「好啦好啦,暫時陪我這句戲言吧」
「まーまー、暫く俺の戯れ言に付き合ってくれ」
「知道了。我本就把性命託付於你,陪你這一齣娯樂」
「分かった。元よりわが命はお主に預けておる。お主の余興に付き合おう」
「就該這樣。既然如此決定,馬上出發吧」
「そうこなくっちゃ。さて、そうと決まれば早速行くぞ」
「等一下,現在就去?你眼前是戰場,到處都是立功機會,為了這事要放棄那些嗎?」
「待て。今からか? お主の前には戦場があり、武功を立てる機会がそこら中にあるのだぞ? それをふいにしてまですべきことなのか?」
若是追擊潰敗中的武田軍,立功極為容易;尤其討取名震一時的武將或智將,恩賞自是不在話下。
敗走している武田軍ならば容易く武功を立てられよう。特に勇名を響かせた武将や智将を討ち取れば、恩賞は思うがままだ。
不明白為何要放棄這些機會,反而想把武藤喜兵衛引見給靜子。
その機会を捨てて、武藤喜兵衛を静子に引き合わせようとする意味が分からなかった。
「這場戰事,起初無從預料走向,正因此有趣。但如今如你所言,勝機在我方;追擊可交給其他人。我不想為了恩賞而卑劣地搜集首級。我會做我想做的事」
「このいくさ、最初はどう転ぶか分からなかった。だからこそ面白い。が、今はあんたの言う通り、勝機はこちらにある。追撃は他の連中に任せれば良い。俺は恩賞欲しさに首級を掻き集めるような浅ましい真似をしたくない。俺は俺のやりたい事をする」
「你這個……倔脾氣的傢伙」
「この……へそ曲がりが」
「常被這麼說。好了各位,我要回本陣,你們就隨意行事吧」
「よく言われるよ。さて兵たちよ、俺は本陣に戻る。お前たちは好きにすれば良いさ」
慶次的士兵們被這話問到後苦笑著聳肩。
問われた慶次の兵たちは、苦笑して肩をすくめる。
「大將,被丟下實在太過分了喔」
「大将(たいしょう)、置いてけぼりは酷いですよ」
「是是,大將要回去的話我就跟去。」
「そうそう、大将が戻るってなら付いていきますよ」
「而且,跟著大將回去,就有了不用再參與更多戰鬥的理由啊!」
「何より、大将について戻れば、これ以上いくさに参加しなくて良い理由になるしな!」
「喂喂,要是被玄朗爺知道會被罵的喔」
「おいおい、玄朗爺に知れたらどやされるぞ」
兵士們哄然大笑。沒有人去追擊武田軍、想要立功。慶次露出難以言喻的表情後,浮起一個寬厚的笑容,環視士兵大聲喊道。
兵たちはどっと笑った。誰一人として武田軍へ追いすがり、手柄を立てようとしなかった。慶次はなんとも言えぬ表情をした後、一つ太い笑みを浮かべると兵を見回して声を張った。
「好啊,不比我差的笨蛋們,回去靜醬那裡吧——!」
「よぅし、俺に劣らぬ馬鹿どもよ。静っちの許へ戻るぞー!」
「喔—!」
「おー!」
慶次的喊聲讓士兵們舉起武器回應。
慶次の声に兵たちが武器を掲げて応える。
就這樣,當其他部隊為勝利之戰高聲叫囂時,慶次隊卻堂堂正正地回到本陣,採取了常人難以理解的行動。
こうして、慶次隊は他の軍が勝ちいくさに気炎を上げるなか、堂々と本陣へ戻るという常人には理解しがたい行動をとった。
更不用說,後世史家對慶次的舉動無不感到頭疼。
無論、慶次の行動に後の歴史家が揃って頭を悩ませたのは語るまでもない。
靜子用雙眼鏡監視武田軍動向時,感到一絲奇怪的不對勁。原先布陣於第三陣的諏訪勝頼的軍隊後撤,取而代之的是本陣另一支軍隊欲前出。
双眼鏡で武田軍の動きを監視していると、静子は奇妙な違和感を抱いた。第三陣に布陣していた諏訪勝頼の軍が下がり、代わりに本陣から別の軍が前に出ようとしていた。
靜子苦思為何在此時讓勝頼退下,但很快想到原因:信玄接受敗局,決心發動最後一擊。
この場で勝頼を下げる狙いは何かと悩む静子だが、すぐさま理由に思い至った。信玄は敗北を受け入れ、最後の一撃を繰り出そうと覚悟を決めたのだ。
「鐵砲衆向前!武田要發動最後攻勢了!」
「鉄砲衆は前へ! 武田が最後の攻勢に出るぞ!」
「哈哈!」
「ははっ!」
兵鼓敲響,鐵砲衆拔寨突出。靜子將綁有爆竹的箭搭上弦,朝天射去。
陣太鼓が打ち鳴らされ、鉄砲衆が突出する。静子は爆竹が括り付けられた矢を番えると、それを天に向かって放った。
空中多處爆竹炸裂。聽見鼓聲與爆竹信號的織田軍開始撤退。有些衝得太猛不願後退的部隊,則被靜子軍介入強行逼退。
空中で幾つもの爆竹が破裂する。太鼓と爆竹の合図を聞いた織田軍が後退する。熱が入って下がらない部隊もいたが、静子軍が介入して無理矢理後退させた。
就這樣織田軍移動到了預定位置(……)。暴露在織田猛攻下的武田軍,對於突然放鬆的壓力感到訝異。
そうして織田軍は所定の位置(・・・・・)まで移動した(・・・・・・)。織田軍の猛攻に晒されていた武田軍は、突如として緩んだ圧力に訝しんだ。
在戰場短暫的喘息中,武田軍優先重整陣形,而非反擊。
戦場に訪れた束の間の休息に、武田軍は反撃をするのではなく、自軍の陣形を立て直す方を優先した。
織田軍一邊後撤一邊向左右展開,彷彿要將武田軍吞沒般。
織田軍が下がりながらも左右へと広がっていく様は、まるで武田軍を飲み込まんとするかのようだった。
若有人從空中俯瞰,就會看出織田軍正轉換成鶴翼陣形。
その動きを上空から俯瞰するものが居れば、織田軍が鶴翼の陣形へと切り替えていることが判る。
然而非神的武田軍以為此刻是良機,優先保存戰力,卻疏忽了確認織田軍的動向。
しかし神ならぬ武田軍は、今こそが好機と戦力を温存することを優先し、織田軍の行動について確認を怠った。
這正是使武田軍最後一擊遲緩,並導向決定性敗北的前兆。
それこそが武田軍最後の一撃を鈍らせ、決定的な敗北へと導く道しるべとなった。
「通知鐵砲衆更換彈種!彈藥為弐式カ彈與弐式サ彈!以彈頭顏色區分,徹底避免搞錯!」
「鉄砲衆に弾種切り替えを伝達! 弾丸は弐式カ弾と弐式サ弾! 弾頭の色で区別して、間違わないよう徹底して!」
「收到!立刻傳達指示!」
「了解! ご指示を伝達いたします!」
傳令復述靜子的命令後,立刻策馬向前線奔去。再次以雙眼鏡確認武田軍,正如靜子的預料,周邊軍隊已聚集。
伝令が静子の命令を復唱した後、すぐさま馬を操って最前線へ向かう。再び双眼鏡で武田軍を確認すると、静子の予想通り周囲の軍が集結していた。
武田原本盤算在敵軍敗走、追擊使織田·德川聯合軍陣線縱向拉長時,發動痛擊反攻;但因織田·德川聯合軍退至後方,反而落了空。
武田軍が敗走し下がったところを深追いした織田・徳川連合軍の陣が縦に伸びたところで、手痛いカウンター攻撃を仕掛けて反撃するという武田の目論見だったが、織田・徳川連合軍が後方へと退いたため肩透かしを食った形となった。
然而未見轉變戰術,不久武田軍先鋒發動行動,後續部隊也陸續衝鋒。
しかし作戦を変更する様子はなく、ほどなくして武田軍の先駈けが動いた。それに続く形で後続も次々に突撃してくる。
「殿,彈種切換完畢。」
「殿、弾種切り替えが終わりました」
「辛苦了。剩下就等他們進入殺戮地帶。高見,武田的先鋒越過目標時(……)通知我。」
「ご苦労様。後は連中が殺しの間に達するまで時を待つ。高見は、武田の先駈けが目印を越えたら(・・・・・・・)知らせよ」
「是!」
「はっ!」
為了確認敵情,豎立起用粗木製成的梯子,周圍人扶持,由人攀至最頂端,從那裡用雙眼鏡觀測敵情的人稱為高見。
敵の動きを確認するため、太い木で作られたはしごを立てる。それを周囲の人間が支えて、一番上まで上り、そこから双眼鏡で敵の状況を確認する役目を負った者が高見だ。
除了視力,還需在高處仍能精確觀測的平衡感與不畏不穩腳下的膽識。高見的報告決定戰況,擔負著極重要的角色。
視力は勿論、高所でも正確な観測が出来るバランス感覚と、不確かな足場に臆さぬ胆力が求められた。高見の報告次第で戦況が判断されるため、非常に重要な役目を担っていた。
「殿!他們越過目標了!」
「殿! 連中、目印を超えました!」
「發出號令!以弐式カ彈齊射,阻止先鋒的衝勢!」
「合図を送れ! 弐式カ弾一斉射撃にて、先駆けの勢いを止めるのだ!」
鼓聲一響,左右各五百丁、合計一千丁的槍聲齊鳴。已進入殺戮區的武田先鋒連同手中的木盾一併被射穿,紛紛倒地。
陣太鼓で合図が送られると同時、左右五百丁、合計千丁もの銃声が鳴り響く。殺しの間に入っていた武田の先駈けは、手にしていた木製の盾ごと撃ち抜かれ、次々と地に伏した。
「繼續射!盾手一旦不在,就以弐式サ彈壓制對面。別在意命中精度!」
「どんどん撃て! 盾持ちが居なくなれば弐式サ弾にて面制圧をする。命中精度は気にするな!」
「是!」
「はっ!」
鐵砲衆接連開火,每次都像看戲般讓武田兵倒下。不同於傳統火繩槍,這種新式槍具備優良直進性,無需密集齊射。
鉄砲衆は次々と発砲した。その度に武田軍の兵たちが面白いように倒れていく。従来の火縄銃と異なり直進性に優れた新式銃であるため、固まって射撃をする必要がない。
一裝填完畢,各自便分頭射擊,導致射擊間隔出現不均。
装填が終わり次第、各自がそれぞれに撃つため、射撃間隔にばらつきが発生していた。
通常齊射能獲更高制壓力,但如今首要是挫敗武田勢頭,因此不中斷地交替射擊反而更合適。
通常であれば一斉射撃をした方が制圧力も高く効果的だが、今は武田の勢いを挫くことが最優先であるため、途切れることなく銃弾が飛び交う随時射撃の方が都合がよかった。
而弐式サ彈正是用來補償撤退後密度減弱之用。
そして下がった密度を補うための弐式サ弾であった。
弐式彈是現代所稱的雙重裝填彈的一種。粗略來說,就是在藥莢內縱向疊放兩發彈頭裝填的子彈。
弐式弾とは、現代で言う二重装填弾に分類される弾丸だ。酷く乱暴に言えば薬莢の中に弾頭を二発縦に重ねて装填した弾丸だ。
為了發射兩發彈頭需增加裝藥量,子彈也因此更重,無法準備太多。但值得一提的是其壓倒性的貫穿性能。
二発の弾頭を飛ばすため装薬量は多くなり、弾丸も重くなるため数は用意できない。しかし特筆すべきはその圧倒的貫通性能にあった。
爆炸的火藥先把能量傳給後方的彈頭,推動前方的彈頭先出膛,接著後方彈頭也飛出,後方彈頭會鑽入前方彈頭所穿出的孔洞,進一步將該孔掘深。
激発した火薬がまず後ろの弾頭にエネルギーを伝え、手前の弾頭を押し出し、次いで後ろの弾頭も飛び出すため、前の弾頭が穿った穴に後ろの弾頭が突入して更にその穴を深く掘り進む。
專門強化貫穿力、連木製盾也不在話下的彈種。那就是弐式カ彈,カ代表貫通彈的カ。
木製の盾など物ともしない貫通性に特化した弾種。それが弐式カ弾、カは貫通弾のカである。
然而隨著貫穿力提高,打擊力會集中到一點,因此在制壓範圍上多少有所不及。
しかし貫通力が高くなる反面、打撃力が一点に集中するため、どうしても制圧範囲に劣ってしまう。
為了補足這點而開發的就是弐式サ彈。這種彈把位於前方的二重裝填彈後側的彈頭稍微傾斜,使得一次射擊能對兩處造成攻擊。
それを補うべく開発されたのが弐式サ弾だ。これは前(さき)の二重装填弾の後ろ側に位置する弾頭を少し傾斜させておくことで、一回の射撃で二ヶ所への攻撃を可能とした弾丸である。
直線飛行的只有前方彈頭,後方彈頭會落在與瞄準點上下左右稍有偏差的地點。當然射程越長,第二發的偏差也越大。
直進するのは前の弾頭のみで、後ろ側の弾頭は狙点から上下左右に僅かにずれた地点へと着弾する。当然到達距離が伸びれば伸びる程に、二発目のずれは大きくなる。
因此即便躲開射線,仍有許多武田兵被子彈射中。順帶一提,弐式サ彈的サ是散彈的サ。
これにより射線上から身を躱しているのに、その身に銃弾を受ける武田兵が続出した。因みに弐式サ弾のサは散弾のサである。
這些雙重裝填彈是在越南戰爭時期開發的,但在連發槍普遍的近代戰鬥裡,未能取得足以抵消重量增加這種缺點的戰果。
これらの二重装填弾はベトナム戦争の頃に開発されたが、連発銃が当たり前の近代戦闘に於いて、重量増加というデメリットを覆す程の戦果を挙げることが叶わなかった。
但若是單發式的槍,評價就不同。一次動作能打出兩發,能依貫穿力與攻擊範圍各自應對,優勢頗大。
しかし単発式の銃ならば評価は変わる。一挙動で二発撃て、貫通力と攻撃範囲のそれぞれに応じて対応できるという利点は大きかった。
而那種比槍聲更能散布子彈的制壓力驚人,武田的氣勢明顯地衰落下來。
そして銃声以上の弾丸をばら撒く制圧力は凄まじく、目に見えて武田の勢いは落ちていった。
「殿! 武田的勢頭已停下!雜兵開始向後逃竄!」
「殿! 武田の勢いが止まりました! 雑兵から後ろへ逃げ始めています!」
「殿! 成功了!」
「殿! やりましたな!」
高見興奮地上報。聽見消息,站在一旁的玄朗也發出歡喜之聲。
高見が興奮しながら報告を上げる。その報を耳にし、傍に控えていた玄朗も歓喜の声を上げる。
但靜子聽了報告仍神色不變,繼續觀察戰況的變化。
だが静子は報告を聞いても表情を変えず、戦況の変化を観察し続けた。
「先取勝,然後再行戰事;勝了之後仍要繫緊盔帶。」
「まず勝利を得て、それからいくさをせよ。しかる後、勝って尚、兜の緒を締めよ」
「蛤? 您說了什麼?」
「は? なんと仰いました?」
玄朗不解地歪著頭。其他人也不明白靜子想表達何意,露出困惑的表情。
意味が分からず玄朗が首を傾げる。他の者も静子が何を言いたいのか分からず、困惑した表情を浮かべた。
「若要省去細節,一言以蔽之,我的策是把對手逼入恐慌,使其失去組織化的統御,從而取得優勢。接二連三把他們推入意想不到的局面,以初見殺的方式壓倒對方,使情勢惡化。被無端驅趕、身處一刻刻惡化的情況之下,任何人都會陷入錯亂。恐懼與焦慮會傳播,恐慌的兵力會呈倍數增加,當越過某一臨界點,兵士便脫離統率,軍的指揮系統就會崩壞。那樣一來,剩下的只是人多的烏合之眾。」
「いくさとは、相手に勝てる準備を整え、尚且つ勝機が来るまで待つ。二つが揃って初めていくさをし、勝利を己が手中に収めるのです。しかし勝利の美酒は、勝者に増長を齎す毒でもあります。ゆえに勝利しても油断せず、次のいくさへと備えるために兜の緒を締め直して用心せよ、という格言です。まあ私なりの、いくさへの哲学でしょうか」
「啊、原來如此。常能洞察先機,令我敬佩。能在擊敗武田這樣的大功績時仍不鬆懈、自我約束,令人肅然起敬。不過能否請您大致說明那是怎樣的作戰,讓我們也能明白概要?」
「な、なるほど。常に先を見通すご慧眼恐れ入ります。武田に勝利するという大金星にも気を緩めず、己を律しておられるお姿に頭が下がりまする。それよりも、そろそろどの様な作戦だったのか、我々にも分かるよう概要をお聞かせ願えませぬか?」
玄朗連聲稱讚,但靜子只是露出微妙的表情。玄朗慌張地擔心是否惹惱了她,急忙轉換話題。
玄朗は褒め称えたが、静子は微妙な表情を浮かべるだけだった。機嫌を損ねたか、と焦った玄朗は、慌てながら話題を変える。
意識到自己無法坦然接受屬下讚美的失態後,靜子收斂表情,回應玄朗的提問。
配下の称賛を素直に喜べないでいる己の失態を悟った静子は、表情を引き締めてから玄朗の問いに答えた。
「省去細節一言以概之,是把對方逼入恐慌狀態,使其失去組織化的統率從而取得優勢。接連將其推入想定外的情況,以初見殺壓倒對手,使情勢惡化。被不明原因驅趕、置身於逐刻惡化的境地之下,誰都會陷入錯亂。恐懼與焦慮會傳播,恐慌的兵力會相乘增加,當超過某一點時,兵士會脫離統率,軍的指揮系統亦會崩壞。那麼剩下的就只是人多的一群烏合之眾。」
「細かい点は省いて一口で言うならば、相手を恐慌状態へと追い込み、組織立った統率を失わせて優位を得る。それが私が今回使った策の概要です。次々に想定外の状況へと追い込み、初見殺しで圧倒して状況を悪化させる。訳も分からず追い立てられ、刻一刻と悪化する状況に身を置けば、誰しも錯乱状態へと陥ります。恐怖や焦慮は伝播し、恐慌した兵は相乗的に増え続け、ある一点を越えると兵は統率から離れ、軍の指揮系統は崩壊します。そうなれば、後は数が多いだけの烏合の衆です」
「啊、是這樣……但是其中難道不會有察覺敏銳或膽氣過人的人嗎?僅僅因為士兵害怕,天下聞名的武田軍就會崩潰嗎?」
「は、はぁ……ですが中には察しの良い者や、肝の太い者もいるのでは? 兵が怖気づいただけで天下の武田軍が崩壊するものなのでしょうか?」
仍不太理解情況的玄朗歪著頭,不斷把想到的疑問丟給靜子。
いまいち状況を理解しかねる玄朗は首を傾げた。自分が思いついた疑問を次々と静子へ投げかける。
「對於最初的問題,即便有這些人也無濟於事。在生死交鋒的戰場上,能保持理性的人有多少?千人中,大概一隻手就數得完。他們選擇了總力戰。即便三萬的龐大軍隊中有數十名聰明人,若多數兵士陷入恐慌,那些聲音也會被淹沒。他們以精銳無比的大軍為強,但這次反倒成了禍根。」
「最初の問いへの答えですが、それは居ても問題ありません。命がやり取りされる戦場で、理性を保てる人間がどれほどいますか? 千人のうち、片手で足りる程度でしょう。彼らは総力戦を挑みました。三万もの大軍に、数十人程度智(さと)い者がいても、多くの兵が恐慌状態なら、その声はかき消されます。彼らは精鋭無比の大軍が強みでしたが、今回はそれが仇となりました」
大軍往往在勝勢時極為強大,但這次多次使用初見殺,以局部勝利粉碎了他們的那股強勢。
大軍というのは往々にして勝っている間は非常に強い。しかし今回は初見殺しを多用し、その強さを局所的な勝利で挫いて見せた。
一旦指揮系統瓦解,無論兵力是三萬還是十萬都無太大差別。反而瘋狂逃竄的兵力絕對數更多,指揮者和智者的聲音無法傳達到士兵那裡。
指揮系統が瓦解すれば、兵の数が三万だろうが十万だろうが大差はない。むしろ狂騒する兵の絶対数が多くなり、指揮する者や智い者の声は兵に届かなくなる。
「至於下一點,若只是一次敗北,武田軍會迅速整頓並挽回大勢。即便第一陣失利,武田也可能把那當作織田軍僥倖取勝而振作,誓圖洗刷汙名。」
「次の答えですが、一度のみの敗北ならば武田軍はすぐに立て直し、大勢を挽回するでしょう。第一陣の敗北も、織田軍が奇跡的に勝ったとして汚名返上を狙って奮起さえするかもしれません」
靜子把替代指揮刀的クーゼ指向戰場。勝負已定,所謂的武田軍團已在三方原台地任何地方不復存在。
静子は指揮刀代わりのクーゼを戦場へと差し向ける。既に勝敗は決しており、武田軍と呼べるような集団は、三方ヶ原台地のどこにも存在していなかった。
「然而他們接連遭遇敗北。第二陣的敗北會讓人覺得織田軍的實力並非偶然,並在武田兵心中植下猜疑的種子。若不久之後第三陣也敗北,種子便會發芽,疑惑會開出名為敗北恐懼的花朵。對死亡的恐懼會侵蝕士兵,使身體萎縮,最終心志必定崩折。」
「しかし彼らは、立て続けに敗北を喫した。第二陣の敗北は織田軍の実力がまぐれではないと思わせ、武田兵の心に猜疑の種を植え付ける。間を置かずに第三陣までが敗北すれば、種は芽吹いて疑惑は敗北の恐怖という花を咲かせる。死の恐怖は兵を蝕み、体を萎縮させ、最後には必ず心が折れます」
一群狼狽逃跑的武田兵映入靜子的眼簾:脫下甲冑,拋棄懸於腰間的刀,不回頭地朝外逃去。
ほうほうの体で逃げる武田兵が、静子の目に入った。甲冑を脱ぎ捨て、腰に下げた刀を投げ捨て、後ろを振り返らず一目散に逃げる姿が。
即便見到武田兵那可憐的模樣,靜子的心仍如平靜之海。因為只要差一點,那狼狽的景象就會落在自己身上。
武田兵の無様な姿を見ても、静子の心は凪いでいた。一つ間違えれば、あの姿を晒していたのは自分だったからだ。
想到那情況隨時可能降臨到自己,便無法嘲笑武田兵。她甚至想趕快從戰場引退,過著只務農的餘生。
いつ自分に訪れるとも限らない、と思えば武田兵の姿を笑うことなど出来なかった。とっとといくさ場から引退して、農業をするだけの余生を送りたいとさえ思った。
「在心志崩折的狀態下,能繼續奮戰的人並不多。大多會顧惜性命,為了自保而選擇逃跑。一旦指揮系統崩壞,士兵的心被求生本能所充斥,即便是信玄本人也無法扭轉局勢。」
「心が折れた状態で、なおも奮戦できる者は、それほど多くありません。多くは命を惜しみ、わが身可愛さに逃走を選びます。指揮系統が崩壊し、兵の心が死から逃れることに塗りつぶされたなら、たとえ信玄その人であっても流れを変えることなど出来ないでしょう」
當勝敗對誰都一目了然時,雜兵會走向保身,這是理所當然。除非有非常特殊的情況,雜兵不會選擇為武將殉死。
誰の目にも分かりやすく勝敗が決した場合、雑兵たちは保身に走る。それは当然の考えであった。よほどの事情がない限り、雑兵たちは武将のために殉死するという選択はしない。
被恐懼驅使的雜兵爭先逃跑,見狀的人也紛紛跟著逃。若連足輕都在雜兵之後開始逃跑,崩潰就已無可避免。
恐怖に駆られた雑兵は我先にと逃げ出し、それを目にした者たちも我も我もと逃げ始める。雑兵に続いて足軽たちすら逃げ始めれば、崩壊は決定的となる。
那樣一來已不能稱為軍隊,武將也不得不接受敗北。
そうなればもはや軍とは呼べず、武将は否応なく敗北を受け入れる。
「原來如此……啊! 殿! 德川的軍旗出現在武田後方了!」
「なるほど……あ! 殿! 徳川の軍旗が武田の後方に現れました!」
在武田軍後方,先前消失蹤影的德川軍八千人突然現身。正在逃竄的前武田士兵難掩動搖。
武田軍の背後に、今まで姿を消していた徳川軍8000が突如として現れた。逃走中の元武田軍は動揺を隠せなかった。
被封住唯一退路的事實,摧毀了他們那僅存的理智。雜兵們朝敵兵較少的方向四散逃去,武田一族也不例外。
唯一の退路である背後を塞がれたということが、彼らの中でギリギリ保っていた理性を崩壊させた。雑兵たちは少しでも敵兵の少ない方へと、散り散りになって逃げていく。それは武田一族の者とて例外ではなかった。
「比預定稍微晚了些,但沒什麼大問題」
「予定より少し遅れていますが、さしたる問題はありません」
這正是靜子花了一年調查三方ヶ原台地地形的理由。
これこそが一年かけて、静子が三方ヶ原台地の地形を調査した理由だ。
調查是為了掌握德川軍從「某處」繞到武田軍後方所需的時間,以及織田軍應駐守何處才能完成包圍,還有該把武田軍誘至何處。
徳川軍が『ある場所』から武田軍の背後に回り込む時間。その時に織田軍がどこに居れば包囲が完成するか、武田軍をどこにおびき寄せれば良いか、それを知る為の調査だった。
投入大量成本看似內容平淡,然而有無這次包圍意義重大,故此調查是絕對必要的。
多くの費用を投じた割には地味な内容に思えるが、この包囲の有無が非常に重要な意味を持つ。そのため絶対に必要な調査であった。
織田軍佈下鶴翼之陣,武田軍企圖從中央一點突破;雙翼不動,僅以中央牽制擊退武田的衝勢,當武田的進攻停下時,德川軍就封堵其唯一路線——後方。
織田軍が鶴翼の陣を敷き、武田軍が中央の一点突破を図る。そこで両翼の軍は用いず、中央だけで武田軍を受け止め、その勢いを挫く。武田軍の進撃が止まった時、唯一の退路である後方に徳川軍が蓋をする。
從空中看,武田軍被困在以織田軍中央為頂點的等腰三角形內,無論朝哪個方向都會被密集敵兵阻擋,已無逃路。
上空から見れば織田軍の中央を頂点とした二等辺三角形の中に、武田軍が閉じ込められたことになる。どの方向を目指そうとも分厚い敵兵に阻まれ、もはや逃走も叶わない。
像信玄這樣的人物,不可能不了解自己所處的處境。
信玄ほどの人物が、己の置かれた状況を把握できていない訳がない。
正因察覺局勢,武田軍才停止行動;他們明白無論怎麼應對,都沒有活命的未來。
状況を察したからこそ武田軍は動きを止めた。どんな手を講じようとも、自分達が生き残る未来はないと理解していた。
「不只是雜兵、足輕,連武將們也承認了他們的敗北」
「雑兵や足軽だけではなく、武将たちも認めました、自分たちの敗北を」
他們認識到武田軍不是被擊退,而是首次遭受了徹底無可挽回的敗北。
武田軍は撃退されたのではなく、初めての完膚無き敗北を喫したのだと認識した。
武田本人承認敗北的事實,將對反織田聯盟造成劇烈震撼;聚集在武田旗下的反織田勢力的盤算,已被徹底顛覆。
武田自らが負けを認めたという事実は、反織田連合の諸氏へと激震を齎すだろう。武田の御旗に集っていた反織田連合の思惑は、根底から覆されたのだ。
「至此已是絕境,再戰亦不會有武田的勝利。為免徒增犧牲,向武田呼籲投降」
「これにて詰みです。これ以上戦っても武田に勝利はありません。無駄な犠牲を出さないためにも、投降するよう武田へと呼びかけなさい」
「哈哈!」
「ははっ!」
隊鼓以四拍敲響,這是勝利已定、向敵兵呼籲投降的暗號。織田・德川聯軍對仍在抵抗的武田軍呼喊投降。
四拍子で陣太鼓が叩かれる。それは勝利が確定し、敵兵に投降を呼びかけろという符丁であった。囲まれながらも抵抗する武田軍に、織田・徳川連合軍が投降を呼びかける。
有一部分仍想抵抗,但大多數接受勸告解除武裝。曾激烈抵抗的隊伍在新式火銃口對準並在腳邊打下槍彈後,也帶著放棄一切的神情投降。
一部は尚も抵抗しようとしたが、大部分は勧告に応じて武装解除した。強く抵抗していた集団も、新式銃の銃口を向けられ、足元に銃弾を叩き込まれると、何もかもを諦めた表情で投降した。
「各位!高聲喝采!我等勝利了!!」
「皆の者! 声を上げよ! 我らの勝利だ!!」
靜子發出勝鬨,四處士兵跟著叫好。武田軍紛紛將武器丟於地面,未發生大規模混亂,名垂史冊的三方ヶ原之戰宣告結束。
静子が勝ち鬨を上げると、あちらこちらの兵が続く。武田軍は次々と武器を地面に落とし、たいした混乱も生まず、歴史に名高い三方ヶ原の戦いは終わりを告げた。
因德川軍抵達稍晚,遺憾讓諏訪勝頼與高坂昌信逃脫;但既已確保信玄人身,靜子斷定他們的逃亡是枝節之事。
徳川軍の到着が若干遅れたため、おしくも諏訪勝頼と高坂昌信を取り逃がした。だが信玄の身柄を確保できたため、彼らの逃亡は些末事だと静子は断じた。
接獲信玄被捕的報告後,靜子一度懷疑被捕者是否為影武者武田信廉。
信玄捕縛の報を受け、静子は捕縛されたのは影武者の武田(たけだ) 信廉(のぶかど)では、と少し疑った。
但間諜(鳶加藤)取得的武田信玄衣物與被捕者身上的氣味相符,遂斷定確為武田信玄本人。
だが間者(鳶加藤)が入手した武田信玄の衣類と、捕縛した武田信玄の臭いが一致した事で、武田信玄本人であると断定した。
不久影武者信廉也被捕。因其如甲陽軍鑑所述與信玄極為相似,為辨別而以色布綁其手臂,並將他單獨移往與信玄及近侍不同的地點。
程なくして影武者の信廉も捕縛した。甲陽軍鑑どおり信玄と非常に似ているため、区別をつけるため影武者の方には色布で腕を縛り、彼だけを信玄や近習とは違う場所へ移動させた。
事實上靜子直到最後也難以決斷是斬殺信玄或拘捕,原因在於信長與家康的政治盤算參雜其中。
実は静子には信玄を討つか、それとも捕縛するのか最後まで判断できずにいた。これは信長や家康の政治的な思惑が絡んだのが原因だ。
信玄所侵的地區是遠江,那是家康的領地而非信長的。
信玄が攻め込んだのは、あくまで遠江であり、そこは信長ではなく家康の領土である。
若織田軍在信玄與家康的爭端中過度活躍,即便對家康有利,也會在德川家臣中留下不滿。
信玄と家康との争いに織田軍が必要以上に活躍すれば、家康はよくとも徳川家家臣の間に不満が残る。
因此最妥當的判斷是由織田軍處理武田家臣,但信玄的首級由家康決定。至於家康會選哪一種做法,在計策傳達前不得而知。
ゆえに武田家家臣は織田軍が討ち取るが、信玄の首級は家康に一任するというのが、最も妥当な判断だった。家康がどちらを選ぶかは、策が伝えられるまで不明だった。
家康選擇了拘捕。
そして家康が選んだ選択肢は捕縛だった。
不將信玄斬殺而拘捕的理由,仍然是出於政治考量;若斬殺逃去的信玄,世人或會認為真正的信玄已全身而退。
信玄を討ち取らずに捕縛した理由は、やはり政治的な思惑からだった。逃げる信玄を討ち取れば、本物の信玄は逃げおおせた可能性があると、世に思われる。
再者,武田軍崩潰的佈局由織田軍整備,恐怕會讓世人認為家康只是信長的附庸。
そして武田軍壊滅のお膳立ては、織田軍が整えたため、家康は信長の添え物であると思われる可能性もあった。
為了打破那種判斷,有必要活捉信玄,讓他親口承認敗北。
それらの判断を潰すためにも、生きた信玄を捕縛し、自らに敗北を語らせる必要があった。
如此一來,便可強辯說從始至終這一連串行動是織田與德川共同策劃的。
そして捕縛までの一連の流れは、最初から最後まで織田と徳川双方で織りあげた策だったと強弁できる。
乍看之下家康似乎將兵力保存到最後,佔盡最有利的位置,但沒有哪位國人會甘心白白讓出如此肥美的利益。
誰が見ても家康は最後の最後まで兵を温存し、一番美味しいところだけを掻っ攫う形だが、そんな美味しい立場をみすみすくれてやる国人はいない。
世人會評斷誰為取得好處貢獻最大,只有勝者才有權書寫歷史。縱使武田一方大聲喊冤,也會被視為敗者的哀嚎。
美味しいところを取れるだけの貢献があったと世は判断する。勝者だけが歴史を紡ぐ権利を得る。幾ら武田側が違うと叫んでも、負け犬の遠吠えと断じられてしまうのだ。
因此不會簡單得出只需在戰場上斬殺信玄的結論;之後的外交籌碼與國內政治盤算等各種因素,必然會牽扯進來。
ゆえに信玄だけはいくさで単純に討ち取る、という結論にはならない。その後の外交カード、国内での政治的な思惑など、様々な事が否応なしに絡んでくるのだ。
當然這不僅限於信玄,對信長或家康亦同。
もっともこれは信玄に限らず、信長や家康でも同様だが。
無論如何,信玄被捕後,武田的戰力幾近喪盡。即便諏訪勝頼繼承家督,最終也會被逐步收縮的包圍網所瓦解。
ともあれ信玄が捕縛された事で、武田に戦う力は殆どなくなった。諏訪勝頼が武田家の家督を継いでも、じわじわと包囲網を狭めて潰されるのが落ちだ。
勝頼將陷入兩難。要恢復武田的勢力需要金錢,然而先前過度苛徵已使甲斐幾乎不再有金子。
何より勝頼はこれからジレンマに陥る。武田の力を取り戻すには金子がいる。だが、今まで無茶な徴収をしたせいで、もはや甲斐に金子は殆ど無い。
沒有金子便無法恢復實力;但若以比現在更為粗暴的方式搜刮金子,武田家又會崩潰。這種無解的兩難將撲向勝頼。
金子がなければ力は取り戻せない。だが、金子を今以上に無茶な方法で集めれば武田家は崩壊する。どうしようもない二律背反が、これから勝頼に襲いかかる。
「呼,結束了。雖然全程如走鋼索般驚險,但總算依照我們的預想順利進行了呢」
「ふぃ、終わった。全部綱渡りだったけど、何とかこちらの予想通りに進んだね」
如同把疲憊吐出來般,靜子長長吐了一口氣,放鬆了肩膀。表面看似進展順利,實際上從頭到尾都是一場走鋼索的行動。
疲れをはき出すかのように、静子は盛大に息を吐いて肩の力を抜く。傍目には順調に進んでいるように見えたが、実際は最初から最後まで綱渡りの作戦だった。
首先,武田必須在祝田之坂的入口駐紮,這是絕對的條件。若未達成,能否出現現在這種局面則極為令人懷疑。
まず武田が祝田の坂の入り口で陣取る事が絶対的な条件だった。これに失敗した場合、今の状況になっていたかはなはだ疑問である。
因為德川軍假裝一同行軍,實際上從濱松城大幅繞過三方原台地移到祝田之坂的出口,然後以靜子的信號突入入口。
何しろ徳川軍は一緒に出陣したふりをして、その実浜松城から三方ヶ原台地を大きく迂回して祝田の坂の出口に移動し、静子の合図を機に入り口へ突入していたからだ。
靜子等人詳細調查了德川軍的行軍路線與時間,但德川軍抵達祝田之坂出口的時刻與織田軍與武田軍對峙的時刻若不幾乎同時,就有被信玄識破計策的危險。
徳川軍の移動ルート、及び行軍時間までを静子たちは入念に調査していたが、徳川軍が祝田の坂の出口に到着する時刻と、織田軍が武田軍と相対する時刻は、ほぼ同時刻でなければ信玄に策を見破られる危険があった。
因此,若武田軍在祝田之坂的出口埋伏等待,冒失出現的德川軍會瞬間被擊潰,雖然可能耗時,但靜子的計策也有被識破的可能。
そのため、もしも祝田の坂の出口に武田軍が待ち構えていたら、のこのこ現れた徳川軍はあっという間に蹴散らされ、時間はかかるものの静子の策も見破られた可能性がある。
若如此一來,靜子的計策將被徹底顛覆。為保萬無一失,靜子把祝田之坂弄得狼藉,使武田軍難以進軍。
そうなれば静子の策は根底から覆された。念のため、静子は祝田の坂を荒らして、武田軍が進軍しにくくしておいた。
不過因為信玄有可能無視此狀而繼續進軍,當聽到武田軍已在祝田之坂入口駐守的報告時,靜子暗自大快人心。
だが、信玄がそれを無視して進軍する可能性があったため、祝田の坂の入り口で武田軍が陣取ったと報告を聞いたとき、静子は内心快哉を上げていた。
只是,因為把祝田之坂弄亂,也造成德川軍的到達稍有延誤,這也是失誤。
ただし、祝田の坂を荒らした事で、徳川軍の到着が若干遅れた、という失敗も引き起こした。
那麼,突然現身的織田軍武將們,是從哪裡、怎麼被調動過來的呢?
次に突如現れた織田軍の武将たちは、どこからどうやって移動させたか。
答案很簡單明瞭:是在足満於戰前做物資往返輸送時,作為護衛兵混進了濱松城。
それは単純明快な話で足満がいくさ前に物資をピストン輸送した時に、輸送の護衛兵として浜松城に入りこんでいた。
之後只要把靜子軍中原來負責物資輸送的人換成這些護衛,僅是人數有些增減,外人看不出差異。
後は静子の軍にいる本来の物資輸送を護衛兵と入れ替えれば、多少人数が増減した程度で傍目には差が分からない。
更何況進行的是往返輸送,人員出入頻繁,進來時與出去時面孔不同之類的事,很難察覺。
何よりピストン輸送して人の出入りが頻繁に行われていたのだ。入ってきた時と出て行く時の面子が違うなど、中々気付けるものではない。
就這樣,織田軍的精銳悄悄在濱松城集結布陣。
こうして密かに浜松城へ織田軍の精鋭たちが布陣する事となった。
當然,他們並非臨時召來,而是靜子早已事先交涉借調兵力。
勿論、彼らは急遽呼ばれたのではなく、静子が兵を融通して貰うよう前々から掛け合っていたからだ。
靜子倒也沒想到像柴田勝家或明智光秀這種名將本人也會出面。
流石に柴田勝家や明智光秀など武将本人が出てくるとは、静子も思っていなかったが。
招他們來的首要理由是給武田軍一個驚喜。在戰事中因混亂而喪失判斷,有時會導致致命的敗北。
彼らを呼んだ第一の理由は、武田軍に驚きを与えるためだ。いくさにおいて混乱で思考が停止する事は、時として致命的な敗北を招くことがある。
對於像武田信玄這樣依靠理論而非直覺來掌握戰局的人,意想不到的變故容易讓他的思路陷入泥沼。
特に武田信玄のように、直感ではなく理論でいくさの流れを組む者にとって、想定外の状況が舞い込む事は思考の深みにはまりやすい。
事實上,馬場信春與山縣昌景被討取、織田軍援兵突如出現,令混亂中的信玄無法應對軍隊接連瓦解的情勢。
実際、馬場信春と山県昌景が討ち取られ、突如として織田軍の増援が現れた事で混乱した信玄は、次々と軍が瓦解していく事に対処しきれなかった。
終於信玄的思路回正並整頓武田軍,但欲以一處突破改變局勢的企圖,在新式火槍的面制壓前不幸瓦解。
ようやく信玄の思考が立ち戻り、武田軍を立て直したものの、状況を変えようとした一点突破は、新式銃による面制圧を前にあえなく崩れ去った。
但信玄並非任人宰割,他亦命高坂昌信若一處突破失敗便帶諏訪勝頼撤退,因此織田・德川聯軍沒能擒獲諏訪勝頼。
だが信玄もやられっぱなしではなかった。高坂昌信に一点突破が失敗した場合、諏訪勝頼を連れて撤退しろと命じていた。そのため、織田・徳川連合軍は諏訪勝頼を逃すこととなった。
信長原欲在三方原之戰徹底殲滅武田的計劃未能達成,但從此以後武田再勝過織田已不可能。
三方ヶ原の戦いで完全に武田を壊滅させるという信長の思惑は、達成する事が出来なかったが、それでもこれ以降、武田が織田に勝つ事は不可能となった。
然而武田的滅亡對信長而言是宿願,即便武田只剩少量兵力可動,他仍會徹底滅絕。
ただし武田の滅亡は信長にとっての悲願であるため、たとえ武田が僅かな兵しか動かせなくなっても、完璧に滅ぼし尽くすだろう。
「真是精彩。計策順利奏效,竟能如此美妙,實在出乎意料。」
「お見事です。策が綺麗に決まると、こうも美しいとは思いもよりませんでした」
處理完投降兵的竹中半兵衛向靜子致意慰勞。
投降兵の処理を終えた竹中半兵衛が静子を労る。
「辛苦了。請問,傷亡人數大概多少?」
「お疲れ様です。あの、死傷者はどれほどでしょうか?」
武田軍的傷亡難以想像,而織田・德川聯軍究竟傷亡多少,靜子也沒掌握。
武田軍の死傷者は想像も付かないが、織田・徳川連合軍にどれだけの死傷者が出たか、それは静子も把握していなかった。
因為在掌握這些數字之前就得匆忙實施下一步計策。如今局勢平定,經竹中半兵衛調查後總算查明了傷亡人數。
何しろそのような事を把握する前に、次々と策を実行しなければならなかったからだ。落ち着いた今、竹中半兵衛が調べてようやく死傷者の数が判明した。
「呵呵,真是驚人。我方傷亡大約一百人。若加上德川,約三百到四百,但那是因為高坂與諏訪的抵抗比預期猛烈。不過面對武田的全力一戰,這個數字只能說令人驚訝。」
「ふふっ、驚くべき事です。我らの死傷者は100ほどです。徳川と合わせれば300から400になりましょうが、これは高坂や諏訪の抵抗が予想以上に激しかったためでしょう。ですが武田の総力戦を相手にして、この数は驚きとしか言いようがありません」
竹中半兵衛誇張地做出手勢顯得驚訝,但縱然冷靜如他也被這次的傷亡數震驚,同時他亦理解新式火槍決定戰局並增加傷亡人數的事實。
大げさな手振り身振りをして驚く竹中半兵衛だが、冷静な彼でも今回の死傷者の数は驚くべき結果だった。同時に、新式銃がいくさの勝敗を決め、負傷者の数を増やす事も理解した。
「嘎哈哈哈,武田落荒而逃之景,怕是今生難再見!連那上杉也未曾見過的光景,實在快意!」
「がっはっはっはっ、武田が尻尾を巻いて逃げる様は、二度とお目にかかれないであろうな! かの上杉ですら見たことのない光景、まっこと小気味よいわ!」
「我贊同這是罕見景象,但不要如此下流地喧嘩。」
「二度と見られぬ光景というのは賛同いたすが、あまり下品にわめくものではないぞ」
「有何不可。遇到這種時候,越喧鬧越能讓大家真切感受。」
「良いではないか。こういう時は、派手に騒いだ方が、みな実感がわくものよ」
收拾完畢的柴田、光秀、佐佐等織田家將領回到靜子所在的本陣,森可成與前田利家則遲些返回。
後片付けを終えた柴田や光秀、佐々など織田家の武将たちが、静子のいる本陣へ戻ってくる。遅れて森可成や前田利家が戻ってくる。
當部署於武田後方的德川軍回歸時,織田・德川聯軍終於會合。
そして武田の背後に陣取っていた徳川軍が戻ってきたところで、ようやく織田・徳川連合軍が集結した。
長可與慶次比他們先回,但長可因受森可成讚賞而激動不已,正被安撫中,因此目前不在靜子身邊。
長可や慶次は彼らより先に戻っていたが、森可成に褒められた事で感極まった長可を落ち着かせているため、現在静子の許にはいない。
「辛苦了,靜子大人。首先要感謝您救我德川於危難,無以為報。」
「お疲れ様です、静子殿。まずは我が徳川の危機を救って頂き、感謝の念に堪えませぬ」
回來的家康一見到靜子便低頭致謝,身後的忠勝與半藏也跟著行禮。
戻ってきた家康が静子を見るやいなや、頭を下げて礼を述べる。後ろにいた忠勝や半蔵も、家康に続いた。
不僅如此,那些與靜子不太熟識的德川家家臣、近侍甚至士兵們也都如此。
彼らだけではない。あまり面識がない徳川家家臣たちや、彼らの近習、さらには兵たちまで同じだった。
「請、請抬起頭,德川大人。這樣向我這等人低頭實在有失身份。」
「お、お顔をお上げ下さい、徳川様。そんな、私ごときに下げられて良い頭ではございません」
「不,若非有您,我國早已被武田蹂躪。若這家康的頭可為您所受,願意再多次低頭相謝。」
「いいえ、貴女がいなければ我が国は武田に蹂躙されておりました。この家康の頭で良ければ如何ほどにも下げさせて頂きます」
靜子覺得有點為難,目光游移,但大家紛紛避開她的視線。心中暗罵背叛者,忍著想哭的情緒等待家康抬頭。
困ったな、と思った静子は視線を彷徨わせるが、見事に全員から視線を外された。裏切り者、と内心泣きつつ家康が頭を上げるのを待つ。
「德川殿」
「徳川殿」
終於家康抬起頭時,佐久間、平手和水野上前一步,他們脫下兜帽,向家康低頭行禮。
ようやく家康が頭を上げた時、佐久間と平手、水野が一歩前に出た。彼らは兜を脱ぐと、家康に対して頭を下げた。
「向德川殿懷疑與武田內通之無禮,謹此由衷道歉」
「徳川殿へ武田と内通という疑心を向けた我らの無礼、心よりお詫び申し上げたい」
「未能理解德川殿之立場,因我等淺慮而侮辱了德川殿與家臣,特此致歉」
「徳川殿の立場を理解せず、己の浅慮で徳川殿と家臣の方々を侮辱した我らの罪、平にお詫び申し上げます」
「願遵從德川殿之裁決,甘受一切處分」
「徳川殿のご裁定に従い、いかなる処分も甘んじて受ける所存でございます」
「在那種情況也沒辦法。結局好就一切好,諸事就此一筆勾銷吧」
「あの状況では仕方ありません。終わりよければすべてよし、です。何もかも水に流しましょうぞ」
「感謝德川殿之寬大之心」
「徳川殿の寛大なお心、ありがたく存じます」
靜子覺得織田與德川之間的芥蒂已消,同盟更加鞏固。抬頭望去,天空被晚霞染成赤褐色。
織田と徳川の間にあったわだかまりが消え、同盟が強固になったと静子は思った。空を見上げると空はあかね色に染まっていた。
因為戰鬥始於白天,靜子這時才意識到已經打了好幾個小時。
いくさを始めたのが昼間辺りだから、かれこれ数時間は戦っていた事を、静子は今さらながら認識する。
但靜子在與武田之戰後,還有一件事要做。不過她認為現在就先忘掉那件事,盡情沉醉於勝利喧鬧一番。
だが静子には武田とのいくさの後に、もう一つやる仕事が残っていた。とはいえ、今はその事を忘れ、勝利に酔いしれて騒ぐ時間だと思った。
「那麼回濱松城吧?」
「では浜松城に戻りましょうか」
「啊,在那之前有件事要商量」
「あ、その前に一つご相談、というお話があります」
「嗯? 有什麼事嗎?」
「はい? 何かありましたでしょうか?」
靜子歪著小腦袋想,不會是有什麼非得現在談的事吧。
すぐに話し合わねばならない事があったかな、と静子は小首を傾げた。
忠勝因那異常可愛的舉止而悶絕,但半藏和康政面露暖笑,迅速把她遮住,免得出現在靜子的視線中。
いつになく可愛げのある仕草に忠勝が悶絶していたが、生暖かい表情を浮かべた半蔵と康政が素早く静子の視界に入らないよう隠す。
未察覺家康身後正上演一場詭異攻防的靜子,等待著家康接下來的話語。
家康の後ろで謎の攻防が繰り広げられている事に気付かない静子は、家康の次の言葉を待った。
「被俘的信玄一直囉唆地說要見您」
「捕縛した信玄が貴女に会わせろと五月蠅くてですね」
「啊? 我?」
「ああ、え? 私に?」
「是的。不過此事非我等一人可決,故特來請示您裁斷」
「はい。なにぶん、我らの一存では決められないため、判断を伺いに参りました」
家康說信玄即便口吐鮮血,仍喊著要見靜子。靜子身為信長家臣,不能因家康之意向隨便答應會面。
家康曰く、信玄は口から血を吐きながらも、静子に会わせろと言っているとの事だ。静子はあくまで信長の家臣であり、家康の意向で会わせる訳にもいかなかった。
「沒必要見面。他無非會說些敗戰的怨言,沒必要陪他胡言亂語」
「会う必要はない。どうせ敗戦の恨みごとを口にするだけだ。そんな戯れ言に付き合う必要はなかろう」
靜子思考前,足滿已迅速決斷表示拒絕。眾人猶豫之際能瞬間定奪,實在不愧。
静子が考える前に足満が即断で拒絶の意思を示した。誰もが判断に迷う中、一瞬で結論を出すのは流石と言えた。
「嗯,我倒覺得沒問題,但若最後見面的是我,日後會不會成為不名譽?」
「うーん、別に良い気がするけど、最期に会うのが私とか後々不名誉にならないのかな?」
靜子想到若有人傳出『他被斬之前曾與女子會面』,恐會損及信玄名譽,她不願因自己讓信玄成為笑柄。
首を取られる直前に女子と会っていました、などと言われれば信玄の名誉が傷つかないかと静子は考えた。流石に自分のせいで信玄が笑い者になるのは勘弁願いたかった。
「應該沒問題。那是他自己選的路,結果不該由他自己承擔嗎?」
「問題なかろう。本人が選んだ道だ。その結果を本人が甘んじて受けなくてどうする」
「是嗎。若他希望如此,對我來說倒也無妨」
「そうかな。まあ向こうが望んでいるのなら、私としては別に問題ないけども」
在靜子一句話下,會面得以成行。但不能就這樣把最重要的主角放任不管,雖有數人留守處理後事,絕大多數人則作為護衛隨行靜子。
静子の一言で面会は実現した。だが仮にも一番の立役者をそのまま、という訳にはいかなかった。事後処理に数名残ったものの、大半の者が護衛として静子に付いていく事となった。
(真是出大事了啊)
(とんでもない事になったなぁ)
看到周圍比平常更加嚴密守護,靜子只能苦笑。但此時若她出洋相,會牽連他人名譽,故接受護衛。
いつも以上に周囲ががっちり固められている事に、静子は笑うしかなかった。しかし、この期に及んで自分が間抜けをすれば、それは他の者の不名誉になるため護衛を受け入れた。
移動並不遠。信玄雖被擒,因病無法挪動,暫時安置於三方ヶ原台地所紮的臨時陣中。
移動といってもたいした距離は歩かない。信玄は捕獲されている身だが、病気が理由で動かせないゆえ、三方ヶ原台地に仮で立てた陣の中にいた。
不僅他,侍從們也同樣被俘。
彼だけでなく、近習たちもまた同じように捕獲されていた。
考量立場,家康居中,左側為忠勝等德川家家臣,右側則由靜子、才藏、足滿,以及柴田、佐佐等織田家家臣列陣。
立場のことも考え中央に家康、左側に忠勝などの徳川家家臣、右側に静子と才蔵、足満、そして柴田や佐々などの織田家家臣が陣取る事となった。
眾人就位後,家康命士兵把信玄帶來。不久,被反手綁著的信玄被士兵押了過來。
各自が所定の位置に就くと家康は兵に信玄を連れてくるよう命じた。少しして後ろ手に縛られた信玄が兵に連れられてくる。
信玄未著招牌般的甲冑與兜,反而穿著令人聯想起剃髮僧人的衣裳。呼吸粗重,一看就知病情不妙。
信玄はトレードマークとも言える甲冑や兜は身につけておらず、坊主を彷彿とさせる服装の姿だった。呼吸音は荒く、一目で容態が悪い事が窺えた。
「久等了。依您所願,將近衛殿之女帶來」
「お待たせしました。貴方の望み通り、近衛殿の娘をお連れしました」
信玄的眼睛猛地一轉,盯上靜子。那像要看穿一切的目光讓靜子差點往後縮,但在她後退之前,足滿上前擋在她前面,將她從信玄面前遮住。
ギョロリと信玄の目が動き、静子を捉える。全てを見透かそうとするその目に、静子は思わず腰が引けそうになった。だが腰が引けるより前に、足満が前に出て信玄から静子を隠す。
「若放殺氣過來,決不寬饒」
「殺気を向けるなら容赦はせぬ」
「不,沒關係啦。倒是你擋住視線了,請往後退一下」
「いや、大丈夫だよ。それより見えないから退いて頂戴」
足滿瞪回信玄,卻被靜子冷待,悻悻退開。給自己打氣後,靜子深吸一口氣,回望信玄。
信玄を睨み返す足満だが、静子から邪険に扱われて悄然としながら身を退いた。自分に活を入れた後、静子は一呼吸置いて信玄を見つめ返す。
兩人默默對望了一會兒,忽然間信玄露出笑容。
暫く無言で見つめ合っていたが、ふいに信玄が笑みを浮かべる。
「哼,竟然輸給了這般愚笨的女子嗎。不過,真是說不出的心情啊」
「ふっ、このような間抜けな女子にわしは負けたのか。しかし、何とも言えぬ心地じゃ」
那是信玄式的讚賞語,然而靜子每次與人相對,都被稱作「間抜け」,幾乎要哭出來。
それは信玄なりの褒め言葉だが、静子は誰と顔を合わせても、毎度間抜けと言われる事に泣きそうになっていた。
靜子對為何會被如此評價感到不解,但她自己沒察覺到,因為不像其他武將那般帶有氣勢,反而有種看起來會被恫嚇而退縮的外表與氛圍,才導致這種結果。
どうしてその評価になるのか不思議に思う静子だが、他の武将のように気迫がなく、ともすれば恫喝で日和りそうな見た目と雰囲気を漂わせている事が原因と本人は気付いていない。
「近衛家的姑娘,名諱為何?」
「近衛の娘よ、名は何という」
「嗯、啊、是。我叫靜子。」
「え、あ、はい。静子と申します」
「不必如此拘謹。汝擊倒了我。若不光明正大一些,會有損我之名聲。」
「そう畏まる必要はない。そなたはこのわしを打ち倒したのだ。堂々としてくれねば、わしの名が廃る」
如此說著信玄笑了。他感到極為舒暢。人生中第一次也是最後一次的大敗績,竟被像靜子這樣的人創造出來。
そう言って信玄は笑う。彼はただただ心地よかった。人生に於いて最初で最後の大黒星、それが静子のような者に付けられたのだ。
信玄模糊地認為,若是其他人不會有這種心情。
他の者ではこういった気持ちにはならなかったと、信玄は漠然と思った。
「不,不只是我,大家都跟著來了,我只是在後面指指點點罷了。」
「いや、私だけじゃなく、みんなが付いてきてくれたからで、私は後ろであれこれ言うだけでした」
「哇哈哈哈!居然不為能戰勝天下的武田而驕傲。一直不願出頭,是嗎。汝無論做何事都不欲自我誇示。正因如此周遭才會忽視。連我也只是憑著一股不祥的預感、無法明說所以選擇忽略。呵呵,『完敗』了。」
「ふはははっ! 天下の武田との勝ちを驕らぬとはな。あくまで目立つのが嫌、か。貴様は何をしていても己を誇示しようとしなかった。だからこそ周りも見落としてしまった。わし自身も、嫌な予感だけで説明がつかなかったから無視してしまった。ふふっ、完敗じゃ」
那是讓所有人難以置信的話語。信玄明白地承認了敗北,而且還用了「完敗」一詞。比起說出這話的信玄,織田與德川的將領們更為動搖。
それは誰もが耳を疑う言葉だった。信玄が明確に敗北を認めた。それも完敗という言葉で。言葉を紡いだ信玄よりも、織田・徳川の武将たちの方が動揺した。
忽視周遭的驚愕,信玄喃喃自語。每說出一句話,彷彿都在與自己和解。信玄的表情逐漸轉為堅定的神色。
周囲の驚きを無視し、信玄は独り言を呟く。言葉を吐くたびに彼は自分の中で折り合いをつけているようだ。信玄の表情が徐々に毅然とした面持ちに変わっていった。
「德川的少爺,將從我這裡搶來的軍配團扇交給靜子殿。那物不是像你這等應該持有的。」
「徳川の坊ちゃん、わしから盗った軍配団扇を静子殿に渡せ。あれは貴様如きが持って良いものではない」
信玄以傲然態度命令家康。面對信玄那堂堂之姿,身為勝方的家康也顯得惶恐。
不遜たる態度で信玄は家康に命じる。信玄の堂々たる態度に、勝った側にいる家康が狼狽していた。
被場面氣氛所影響,家康命士兵取來信玄的軍配團扇。不久士兵將軍配團扇置於膳上回來了。
場の雰囲気に飲まれた家康は兵に命じて、信玄の軍配団扇を持ってくるよう命じる。少しして兵が信玄の軍配団扇をお膳に載せて戻ってきた。
「那麼,沒錯。快把它交來。」
「それじゃ、間違いない。はよう渡せ」
「那個——打擾大家熱鬧的時候,不過,與其要軍配團扇,來國長(らいくになが)或和泉守兼定(いずみのかみかねさだ)會比較好……」
「あのー、盛り上がっている所すみませんが、軍配団扇より来國長(らいくになが)とか和泉守兼定(いずみのかみかねさだ)の方が良いのですが……」
靜子小小地舉起手,戰戰兢兢地向信玄開口。來國長是武田信玄慣用的佩刀。
静子が小さく手を上げながら、おそるおそる信玄に声をかけた。来国長とは武田信玄が愛用した佩刀だ。
史實上信玄亡故後,經過曲折,在江戶時代由柳澤美濃守吉保奉納於信玄的菩提寺惠林寺。此外還有一把名為(二代)和泉守兼定的信玄所用愛刀。
史実では信玄亡き後、紆余曲折を得て江戸時代に柳沢美濃守吉保が、信玄菩提寺の恵林寺に奉納した。他にも(2代)和泉守兼定という信玄所用の愛刀がある。
對靜子而言,即便得到信玄的軍配團扇也無從利用,若要轉讓,倒不如給她他慣用的刀更好。
静子にとっては信玄の軍配団扇を貰っても使い道がないため、譲られるなら彼が愛用した刀の方が良かった。
「……咳、咳咳咳、哈哈哈哈!果然如傳聞所說是刀劍收藏家嗎。不妨,拿去吧。若由你持有就安心了。」
「……く、くっくっくっ、はっはっはっはっ! 噂通り刀の蒐集家か。構わん、持って行け。貴様が持つなら安泰だ」
為何對靜子有好感已不可考,但信玄大方地把刀也讓給了靜子。就這樣,信玄所用的軍配團扇與愛刀被置於靜子之側。
何が理由で静子を気に入ったのか不明だが、信玄は気前よく刀も静子に譲った。こうして静子の許に信玄が使った軍配団扇と愛刀が置かれる。
靜子目光在刀上閃了一瞬,但一旦明白自己身在何處,立刻收起表情變得嚴肅。
一瞬だけ刀に目を輝かせた静子だが、自分がどこにいるか理解するとすぐに表情を引き締めた。
「下次就在泉下(せんか)(あの世)再較量吧」
「次は泉下(せんか)(あの世)にてやり合おう」
完成了此生應做之事的信玄,臉上浮現出一種平和而泰然的表情,讓人難以想像他即將遭到斬首。
この世でするべき事は終えた信玄は、これから斬首されるとは思えないほど穏やかで、泰然とした表情を浮かべていた。
「再也不想做這種令人疲憊的事了。」
「もうこんな疲れる事はご免です」
「別胡扯,勝利溜走之事休想。到泉下與家臣們切磋琢磨,這次輪到我令你大吃一驚。」
「ぬかせ、勝ち逃げなどゆるさんぞ。泉下で家臣たちと切磋琢磨し、今度はわしが貴様の度肝を抜いてやる」
信玄對靜子的回應露出狡黠一笑,但臉色突變,劇烈咳嗽起來。第三次咳嗽時,他從口中吐出鮮血。
静子の返答にニヤリと笑った信玄だが、急にその顔が歪み強く咳き込んだ。三回目の咳き込みで、彼は口から血を吐いた。
據說信玄罹患胃癌,但真相未明。靜子以為病情惡化,想去喊衛生兵。
信玄は胃ガンを患っていたと言われているが真相は不明だ。その病状が悪化したと思った静子は、衛生兵を呼ぼうとした。
「無需,這關於我的身體,我最明白。」
「良い、わしの体の事じゃ。わしが一番よく知っておる」
他將口中的血吐掉後,整頓呼吸。恢復鎮定之後,他不顧周遭的驚愕站了起來。
口の中の血を吐き捨てると、信玄は呼吸を整える。落ち着きを取り戻したところで、彼は周囲の驚きを無視して立ち上がる。
「再會吧。」
「また会おう」
那成了信玄的遺言。日落之前,他被忠勝斬下了首級。
それが信玄の最期の言葉となった。日が沈む前、彼は忠勝の手によって首を斬り落とされる。
忠勝斬下信玄首級的理由,是為了向信玄致敬——即便被俘亦不失鎮定,展現了配得上戰國最強之名的最後風範,作為織田・德川聯軍將領們的一種獻禮。
忠勝が信玄の首を落とした理由は、信玄が捕縛されても一切うろたえる事なく、戦国最強の名に相応しい最期を見せてくれた事への、織田・徳川連合軍の武将たちなりの手向けだった。
然後信玄的首級未被公諸於衆目,而由信玄的近習們帶回甲斐歸國。
そして信玄の首は衆人の目に晒される事なく、信玄の近習たちの手によって甲斐へと帰国した。
武田(たけだ)德榮軒(とくえいけん)信玄(しんげん),於三方原之戰戰死(・・・・)。
武田(たけだ)徳栄軒(とくえいけん)信玄(しんげん)、三方ヶ原の戦いにて討ち死に(・・・・)。