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戦国小町苦労譚

一五七二年 十二月下旬

見到武田軍的突擊,織田、德川軍也不甘示弱地吶喊著,衝鋒迎擊武田軍。

武田軍の突撃を見た織田・徳川軍も負けじと咆哮を上げ、武田軍を迎え撃たんと突撃した。

武田的騎兵隊雖然有名,但騎兵隊並非僅由騎馬兵構成。騎兵的優勢在於突破力與機動性。

武田の騎馬隊は有名だが、騎馬隊とは騎馬兵だけで構成される訳ではない。騎馬の利点はその突破力と機動力にある。

快速接近對手、給予一擊後脫離,這才有意義。當然僅靠騎兵單獨突擊並無實效。

相手に素早く迫り、一撃を加えて離脱することに意味がある。勿論騎馬隊だけで突撃するのでは意味がない。

好不容易打進的楔如果不能向外擴張就無法發揮效果;當後續部隊推開已經崩潰的敵陣,方能獲得戰果。

折角打ち込んだ楔(くさび)は押し開かない事には本領が発揮されない。後続の部隊が崩れたところを押し広げてこそ戦果が上がる。

而在日本,馬並不施行閹割手術也不戴目罩,因此馬匹無法密集並排奔馳。

また日本では馬に去勢手術を施さず、目隠しもしないため、馬が密集して並走することが不可能となる。

馬的視野約有350度,天性膽小,故不喜密集。如今在賽馬等場合會裝上稱為「ブリンカー」的目罩。

馬は視界が350度ほどもあり、生来臆病な性質であるため密集を嫌うのだ。今日の競馬などではブリンカーと呼ばれる目隠しを装着することがある。

即便武田能使馬匹並行,即使在像三方ヶ原台地那樣障礙物稀少的地形,也不會只以騎馬來運用。

仮に武田が馬を並走させられたとしても、三方ヶ原台地のような障害物の少ない場所ですら騎馬だけの運用はしないだろう。

彷彿證明此點,在武田的軍學書《甲陽軍鑑》亦有關於騎兵運用的記載。

それを証明するかの如く、武田の軍学書である甲陽軍鑑(こうようぐんかん)にも、騎兵運用に関する記載がある。

省略細節,馬匹與少數騎兵足以護衛大將,戰爭的主力還是步兵。

詳細については割愛するが、馬は大将と少数の騎兵だけで問題なく、いくさの主力は歩兵である。

書中甚至記載,把大量馬匹並列衝向敵陣之類的是不懂戰事的愚人之言。

馬を数多く並べて相手へ突進など、いくさを知らぬ愚か者の戯言に過ぎない、といった記述が見られる。

因此不論敵我,軍隊的主力都是步兵。

それゆえ敵味方を問わず、軍の主力は歩兵となる。

原以為衝鋒會一路推進至白兵戰,但雙方一旦進入弓箭射程便排起盾牌進入箭雨互射的對峙。

突撃の勢いのままに白兵戦へと雪崩れ込むかと思われたが、両軍とも弓の射程に入ると盾を並べて射撃の応酬となった。

當擔任先陣的人互相射箭、局面看似膠著時,忽然一聲乾澀的槍響切破空氣。

先陣を務める者たちが互いに矢を撃ち合い、膠着状態に陥るかと思われた頃、ふいに乾いた銃声が空気を切り裂いた。

武田軍被突如的槍聲震驚,但發現子彈射程不足後便轉而瘋射箭矢。其後也響起數次槍聲,武田軍已不再理會。

突然の銃声に驚いた武田軍だったが、銃弾が届かない事を知ると、猛然と矢を射かけてきた。それ以降も数度銃声がこだましたが、もはや武田軍も構いはしなかった。

「好跡象呢」

「良い傾向だね」

正用雙眼鏡觀察武田軍動向的靜子斷定他們誤判了聲音,接著反覆比對自軍與武田軍的狀況。

双眼鏡で武田軍の動きを確認していた静子は、彼らが音の認識を誤ったと判断した。続いて自軍と武田軍を交互に見比べる。

「沒錯沒錯,首先要讓彼此拮抗(……)這點很重要。其實一開始就能贏(…),但那樣會讓對方警戒。先不要讓武田軍覺得我們在佔上風。」

「そうそう、まずは拮抗している(・・・・・・)事が大事だよ。最初から勝てる(・・・)けど、それをすると相手が警戒するからね。まずは武田軍に勝っているように思わせないとね」

過了一會兒,靜子仍以雙眼鏡確認最前線。

それから暫く、静子は双眼鏡で最前線を確認していた。

織田軍與武田軍的小衝突膠著了約四十分鐘左右時,靜子放下雙眼鏡環顧周遭。發現目標人物後,她喚道。

織田軍と武田軍の小競り合いが膠着している状況が四半刻程も続いたころ、静子は双眼鏡を下ろして周囲を見回した。目当ての人物を見つけると、彼女は声を掛ける。

「結束了嗎?」

「終わった?」

「是,殿下。新式火槍的校正已完成。命中精度將會飛躍提升。」

「はい、殿。新式銃の較正は完了しました。これで命中精度は飛躍的に向上するでしょう」

「很好。通知各自,準備就緒後立即前往最前線。全員到齊時我也會上前。」

「よろしい。各自に通達、準備が済み次第最前線に出なさいと。全員揃えば私も前に出ます」

「那、那樣會很危險的吧」

「そ、それは危険かと」

在最前線仍持續激烈的箭雨互射。再怎麼說靜子的甲冑是特製的,仍有未被護住的部分。

最前線では今なお、激しい矢の応酬が繰り広げられている。いくら静子の甲冑が特別製であっても、鎧の無い部分は存在する。

「無妨。將領若不以命相搏,士兵又豈會跟隨。」

「構いません。将が命をかけないで、兵がついてくるでしょうか」

「殿……是! 我必以此命誓守護您。」

「殿……はっ! 御身(おんみ)はこの命に代えても必ずやお守りいたします」

「拜託了。」

「頼みます」

簡短交談後靜子發出號令。確認號令的將士令屬下移至預定位置。鐵炮衆前移,長可隊則列在其後。

短い会話を終えると静子は合図を送った。静子の合図を確認した将兵は配下の兵を所定の位置へと移動させる。鉄砲衆が前へ、そしてその後ろに長可隊が移動した。

靜子駐守在鐵炮衆與長可隊之間。火槍隊將盾舉於頭頂,已處於箭雨射到的位置。靜子所處的位置一個差錯便可能遭箭擊,是危險之地。

静子は鉄砲衆と長可隊の間に陣取っていた。鉄砲隊たちは頭上に盾を掲げており、既に矢が飛んでくる位置にいる。静子の位置も一つ間違えば矢が飛んでくる危険な場所だと言える。

靜子仰望天空確認太陽位置,大致在預定(……)的位置。計畫順利進行,靜子浮現一抹淡笑。

静子は空を見上げて太陽の位置を確認する。おおよそ予定通り(・・・・)の位置にあった。順調に計画が進んでいる事に、静子は薄く笑みを浮かべる。

「鐵砲衆們!你們忍受了艱辛的訓練,做得好!」

「鉄砲衆たちよ! 辛く苦しい訓練によくぞ耐えた!」

靜子轉換心情,鼓舞正裝填彈藥、進入射擊準備的鐵炮衆。

気持ちを切り替え、静子は銃弾を装填し射撃準備に入っている鉄砲衆を鼓舞する。

「好好自豪吧!經得住訓練的你們,正站在光榮史上的分岐點!此後千千萬萬的人將追隨你們的腳步!正是撕裂黑暗的光明!」

「誇るが良い! 訓練に耐えた君たちは今、栄えある史の岐路(きろ)に立っている! この後何千、何万という人間が、諸君らの背中を追うであろう! まさに闇を切り裂く光明なり!」

靜子高舉代替軍配的「クーゼ」向天,繼續發話。

軍配代わりのクーゼを天高く掲げ、静子は更に言葉を続ける。

「踏出開端的一步吧,精銳們!向武田,向日之本在此的人們,展示你們全身的怒擊!全員預備……齊射——!!」

「始まりの一歩を踏みし精鋭たちよ! 武田に、この日ノ本にいる者たちに、渾身の一撃を見せてやろうぞ! 全員構えぇ!……斉射ァーーーーーー!!」

靜子將「クーゼ」向武田軍揮下的同時,列於最前線的鐵炮衆一齊開火。

静子がクーゼを武田軍に向けて振り下ろすと同時に、最前線に並んでいた鉄砲衆が一斉に射撃した。

不到片刻,構成武田軍前線的小山田信茂軍的盾持們被打成蜂窩。

間を置かず、武田軍の最前線を構成する小山田信茂軍の盾持ちたちが蜂の巣と化した。

那一幕令武田軍當然如此,連開槍的鐵炮衆也屏息凝視。

その光景は武田軍は勿論、射撃をした鉄砲衆たちですら息をのむほどであった。

只聽到因微微偏移而放大的爆裂聲響起,支撐前線的盾持們一齊倒伏。

僅かにずれたため増幅された破裂音が響いたかと思うと、前線を支えていた盾持ち達が一斉に倒れ伏した。

聲音像燃燒的嫩竹般劈啪作響,而原本應以盾自保的士兵連同盾牌一同倒下的景象,映入眾人眼中皆覺異常。

若竹を燃やしたかのような音がしたかと思えば、盾で身を守っていたはずの兵が盾ごと倒れる光景は、誰の目にも異常に映った。

鐵炮兵驚訝也不足為奇。他們不知道自己使用的槍竟然有數百公尺的命中潛力。

鉄砲衆が驚くのも無理はない。彼らは自身が使う銃に数百メートルを狙えるポテンシャルがある事を知らなかった。

訓練時只是在近距離對小型靶反覆射擊,因此根本沒想到這種距離也在殺傷範圍內。

訓練では近距離で小さい的を狙って射撃を繰り返していたため、これほどの距離でも殺傷範囲にあるとは思っていなかったのだ。

「裝填下一發!」

「次弾装填!」

在靜子的號令下,鐵炮衆的身體本能地動了。比起受創的武田軍,受過訓練、動作先於思考的鐵炮衆們回復得要快得多。

静子の号令により鉄砲衆の体は反射的に動いた。被害を受けた武田軍よりも訓練を積み重ね、頭よりも先に体が動くようになった鉄砲衆達が立ち直る方がはるかに早かった。

本能地填彈的鐵炮兵一邊瞄準,一邊進入射擊姿勢。

反射的に銃弾を込めた鉄砲衆は、そのまま狙いをつけると射撃体勢を取った。

「齊射──!」

「斉射ァーー!」

這次齊整的槍聲如雷貫耳,武田軍又大缺。第三次裝填已恢復鎮定,射擊後立即完成裝填,立刻再次準備就緒。

今度は揃った銃声が雷鳴の如く鳴り響いた。またしても武田軍が大きく欠けた。三度目の装填は落ち着きを取り戻し、射撃後すぐに行っており、すぐさま射撃体勢が整った。

「齊射!」

「斉射せよ!」

隨著靜子的聲音,小山田信茂軍的士兵像梳子齒一顆顆被折斷般紛紛倒下。

静子の声とともに小山田信茂軍の兵は櫛の歯が欠けるようにバタバタと倒れていった。

攻守勢均、只成小規模衝突的局面一瞬間傾向於織田軍優勢。

攻撃力と防御力が均衡し、小競り合いが続いていた状況が、あっという間に織田軍優勢へと傾いた。

然而小山田信茂軍根本沒空察覺劣勢,槍聲每響便大量屍體被製造。從槍聲可以判斷出是使用火繩銃。

しかし、小山田信茂軍が劣勢を認識する暇はなかった。銃声が轟く度に無数の屍が量産されるのだ。火縄銃が使われているというのは銃声で理解出来た。

但並非舊式火繩銃有能穿透盾牌的威力,而那不合常理的射擊間隔之快更加劇了混亂。

しかし従来の火縄銃に盾を撃ち抜く程の威力はなかった。そしてあり得ない発射間隔の早さが、混乱に拍車をかけた。

然而武田軍是歷戰部隊,雖不知原因,仍能從結果判斷情勢。

だが武田軍は歴戦の部隊。原因は分からずとも結果から判断することは出来た。

「啊、啊啊啊啊啊啊啊!! 我不想死──!!」

「う、うわあああああああああ!! 死にたくねぇーー!!」

那是槍聲伴隨著士兵倒下的聲響,是聽到時已遲的恐懼。盾與鎧在那死亡面前毫無用處,像割草般被收割的事實令人心膽俱裂。

それは銃声とともに兵が死ぬ。聞こえた時にはもう遅いという恐怖だった。そしてその死には盾も鎧も役に立たず、草のようにただ刈られるのみだという事実が心胆を凍らせた。

即便背向敵方逃跑,因為人群擁擠無法順利移動,子彈仍一發接一發奪走性命。

しかし敵に背を向けて逃げようとも、密集しているために満足に動けず、銃弾は次々に命を刈り取っていく。

(──看見了!)

(――見えた!)

正用雙筒望遠鏡觀察的靜子眼中,小山田信茂軍已完全瓦解,而在其後方進入陣列的是武田軍最強的赤備——山縣昌景的軍隊。

双眼鏡で様子を確認していた静子の目に、小山田信茂軍が完全に瓦解した事、そして背後にいる武田軍最強の赤備え、山県昌景軍が入る。

靜子迅速收起望遠鏡,轉向充滿幹勁的長可軍。

素早く双眼鏡から目を離すと、静子はやる気に満ちあふれている長可軍に体を向ける。

「讓你們久等了,猛者們!小山田軍已崩潰!再無阻擋你們討取山縣昌景的障礙!現在換你們上場!高喊鬨聲!然後光榮地討取山縣昌景!若能討取赤備,將名垂後世的榮譽!!」

「待たせたな、猛者たちよ! 小山田軍は崩壊した! もはや山県昌景を討ち取る障害はない! さぁ貴様らの出番だ! 鬨の声を上げよ! そして見事、山県昌景を討ち取ってまいれ! 赤備えを討ち取らば、末代までの誉(ほまれ)ぞ!!」

「嗚喔喔喔喔喔喔喔喔喔──!!!」

「うおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

站在最前頭的長可比靜子更大聲吼叫,那是直透腹地的兇獸咆哮,同時也是長可的激勵。

一番先頭にいる長可が静子以上に吠える。それは腹の底にまで響く獰猛な獣の咆哮だった。そして長可なりの督励でもあった。

聽到長可咆哮的士兵們一面呼喊一面士氣高昂。當咆哮達到最高潮時,長可將武器指向武田軍。

長可の咆哮に聞いた兵たちが、声を上げるとともに士気を上げる。やがて咆哮が最高潮に達した時、長可は武器を武田軍に向けた。

「全員,突擊──!!!」

「全員、突撃だぁーー!!!」

長可軍奔騰而出。靜子和鐵炮衆在長可他們咆哮時退到一邊,為他們開出通道。

長可軍が走り出す。静子と鉄砲衆たちは長可たちが咆哮を上げている間、彼らが通る道を空けるため脇によけていた。

伴隨地響與喝聲,長可軍向成為最前線的山縣昌景軍衝鋒。

地響きを立て、喊声(かんせい)を上げて長可軍は武田軍の最前線となった山県昌景軍へと突撃した。

見到以鬼氣逼人的氣勢衝來的長可隊,殘存不多的小山田信茂軍士兵狼狽爬行逃竄。

鬼気迫る勢いで突進してくる長可隊を見て、僅かに残っていた小山田信茂軍の兵が這う這うの体で逃げ出す。

山縣昌景在小山田軍背後,對前衛突然崩潰不明原因。但見敵人近在眼前,他立刻命士兵結成小規模的鶴翼陣迎擊。

小山田信茂軍の背後にいた山県昌景は、突然前衛が崩れた理由を理解していなかった。しかし目前に迫った敵を見て、彼は咄嗟に小さな鶴翼の陣を構えて迎え撃つよう兵に命じた。

他的判斷無誤。鶴翼陣能在面對突出之兵時發揮大軍優勢,合圍痛擊,步兵突擊便不值一提。

彼の判断は誤りではない。突出した兵に対して大軍の有利を活かせる鶴翼の陣は理に適っている。包囲して袋叩きにすれば歩兵の突撃などたかが知れている。

但此判斷僅在長可隊為一般步兵時才成立。

その判断は長可隊が通常の歩兵であった場合に限れば正しかった。

然而可惜的是,靜子準備的對武田用兵器並非只有新式火槍。不久,他們將目睹令人難以置信的景象。

しかし残念なことに、静子が用意した対武田用兵器は新式銃だけではなかった。間もなく、彼らは信じられない光景を目にする事になる。

「那、那些人是什麼東西!?」

「何だ、あいつらは!」

往山縣鶴翼陣中央衝去的長可隊,旁觀者看來只像豬武者的自殺行為。

山県の鶴翼の陣中央目がけて突き進む長可隊は、傍目には猪武者の自殺行動にしか見えなかった。

赤備的士兵確信,他們會被左右兩翼如雨的箭矢擊潰,在抵達中央前就力竭而亡。

左右の翼にあたる部隊から矢の雨が降り注ぎ、中央へ辿り着く前に力尽きると赤備えは確信していた。

然而長可隊不顧傾瀉而下的箭雨,仍保持衝力跑了過去。

しかして長可隊は降り注ぐ矢をものともせず、勢いを保ったまま走り抜けた。

眼力好的人可能察覺到:射向長可隊的箭幾乎都被彈開,插入甲胄之箭極為罕見。

目の良い者は気づいただろう。長可隊へと降り注いだ矢は、殆どが弾かれ鎧に刺さっている矢すら稀であったことを。

「哈!這甲冑真是驚人,像柳枝隨風般把箭都撥開了。」

「はっ! 凄まじいな、この甲冑は。柳に風とばかり矢を受け流すのだからな」

在最前方騎馬疾馳的長可輕口調笑道。話音未落,右臂的護手就中了一箭;但那帶尖鏃的箭在曲面上滑落,未曾刺入而被偏開。

先頭を馬で疾走する長可が軽口を叩いた。彼が言葉を発している間にも、右腕の篭手に矢が当たる。しかし鋭い鏃が付いたはずの矢は、曲面を滑ると刺さることなく逸らされた。

並非只有長可這樣的隊長例外,連最末端的足輕也在各處出現相同光景。

隊長格である長可だけが特別なのではない。末端の足軽に至るまで同じような光景が、あちらこちらで繰り広げられていた。

這正是採用於信忠(奇妙丸)甲冑上的二號裝備:將石英玻璃高溫處理,再拉伸成纖維編織而成的玻璃纖維甲冑。

これこそが信忠(奇妙丸)の甲冑にも採用されている弐号装備。石英ガラスを高熱で処理し、繊維になるまで引き伸ばしたガラス繊維を編みこんだ甲冑だった。

現代用於FRP(玻璃纖維強化塑膠)的玻璃纖維,在戰國時代無法取得強化塑膠。

現代ではFRP(ガラス繊維強化プラスチック)にも用いられているガラス繊維だが、戦国時代では強化プラスチックが手に入らない。

用米和麻製成的生物塑膠已可實用化,但其強度不足以製作鎧甲。

米と麻を使ったバイオプラスチックは実用化出来ているが、鎧を作る程の強度は持ちえなかった。

因此交互編織金屬纖維與玻璃纖維以形成鎧甲表面,並在穿於鎧下的帷子部分也編入玻璃纖維,實現了輕量且強韌的甲冑。

そこで金属繊維とガラス繊維を交互に編み込むことで鎧の表面を形成し、鎧の下に着る帷子部分にもガラス繊維を編みこんだ軽量かつ強靭な甲冑を実現した。

然而因以傳統製法製作玻璃纖維,不純物多且為優先強度而犧牲壽命,壽命較短。

ただ古典的な製法でガラス繊維を作成しているため、不純物も多く強度を優先したために寿命が短い。

以戰國時代標準而言,雖擁有驚人的防護力,卻會在兩到三年內劣化,成為可說是拋棄式的裝備。

戦国時代基準では恐ろしい防御力を誇る反面、2〜3年で劣化してしまう使い捨てとも言える装備となった。

單靠高剛性會傳導衝擊,使士兵受到傷害。

無論剛性が高いだけでは衝撃が浸透し、兵士がダメージを受けることになる。

但透過夾入ファクチス作為吸震材,或將纖維編成網狀以提高韌性,終於達成能抵擋箭矢等的強度。

しかしファクチスを衝撃吸収材として挟んだり、メッシュ状に繊維を編みこんだりすることで靭性を伸ばし、やっと矢程度ならば寄せ付けない強度を実現出来ている。

「可惡,難道是妖術一類!?我不知道你們在做什麼,但不會就此罷休!」

「おのれ、妖術の類か!? 何をしているのか分からぬが、このままでは終わらせぬ!」

他一邊喊叫一邊按特定花樣揮動指揮棒,發出信號。

叫ぶと同時に山県昌景は指揮棒を特定のパターンで振り、合図を送った。

這一信號既通報第二陣待命的武田軍諸將前線異常,也示意某項作戰開始實行。

それは第二陣に控える武田軍の諸将に前線の異常を報せるとともに、ある作戦の実行を報せる合図でもあった。

「那是……各位,撤退!」

「あれは……皆の者、下がるぞ!」

理解山縣昌景命令的赤備軍齊刷刷後退,那受控且精彩的撤離行動也向長可等人通報了戰局變化,但他們根本無意停步。

山県昌景の命令が何かを理解した赤備えは、一斉に後ろへ下がる。その統制の取れた見事な撤収行動は長可たちにも戦局の変化を報せた。しかし足を止めるつもりは毛頭なかった。

在長可看來,山縣昌景佈陣成鶴翼,或因弐號裝備而驚退隊伍,都是預料中的展開。

長可からすれば山県昌景が鶴翼の陣を敷くことも、弐号装備に驚いて隊を下げることも想定通りの展開なのだから。

赤備軍遵命退後,只留下左右兩翼而中央撤退。中央退後會怎樣呢?

赤備えたちが山県昌景の命令に従い、左右の翼を残しつつ中央だけが後退してゆく。中央が後退するとどうなるのか。

敵軍戰線隨著後退而縱向拉長,被誘入V字形的谷地,從張開的左右兩翼會遭受長時間的攻擊。

敵の戦線は後退と共に縦に伸び、Vの字の谷へと誘い込まれ、懐が広がった左右両翼から長時間の攻撃に晒されることとなる。

在長時間猛攻下,趁著敵人試圖向後或左右逃竄以脫離險境時加以殲擊。事實上作為援軍的第二陣馬場信春與內藤昌豐等人已趕到,欲將長可隊包圍。

長時間の猛攻に晒され、窮地を脱しようと後方や左右へと逃れる連中を叩く。現に加勢として第二陣の馬場信春や内藤昌豊などが駆けつけて、長可隊を包み込もうとしていた。

「好吶!被套住了,那些傢伙!龍騎兵們,拜託你們了!」

「よっしゃ! 引っかかったぞ、連中! 竜騎兵ども、頼んだぞ!」

然而對長可而言,包圍網即將形成正是良機,他向同行的龍騎兵仁助與四吉等下達號令。

だが長可には包囲網が閉じようとしている今こそが好機であった。彼は一緒についてきた竜騎兵、仁助や四吉たちに号令を出す。

在長可號令下,他們齊齊架起複合弓,射穿鶴翼陣左右兩翼負責者密集的區域。

彼らは長可の号令の下、一斉にコンパウンドボウを構えると、鶴翼の陣の左右の翼を担う兵たちの密集した地帯を射抜いた。

飛出呈拋物線並直擊敵方核心的箭約三十支。與敵兵數量相比即便每支箭都取一命也只是杯水車薪。

放物線を描き相手の中心に飛び込んだ矢の数はおよそ30本。敵兵の数に比べれば一本一殺が為ったところで雀の涙であっただろう。

箭如笛般鳴叫飛翔,隨重力落下。一般箭失去勢能即止,但那些箭另有後續。

矢は笛のような音を鳴らして飛翔し、重力に従って落下した。通常の矢であれば勢いを失えば終わりだが、その矢には続きがあった。

隨著震耳欲聾的轟鳴,士兵們被震得飛離地面。

耳を劈(つんざ)く轟音とともに兵士たちが空を舞った。

位於爆心附近的赤備們承受了前所未聞的轟音與超出理解範疇的衝擊。

爆心地付近にいた赤備えは今まで経験したことのない轟音と、理解の範疇を越えた衝撃をその身に受けた。

過度的衝擊讓他們無力站穩被吹飛,濃重的土煙與伴隨頭痛的耳鳴奪走了赤備的視覺與聽覺。

余りの衝撃に踏ん張ることもかなわず吹き飛ばされ、もうもうと立ち込める土煙と頭痛を伴う耳鳴りが赤備えの視覚と聴覚を奪っていた。

當視線恢復時,他們再次受到今日數不清的衝擊,衝擊起源處成了呈臼狀的大洞。

視界が晴れた頃、彼らは本日何度目になるか判らない衝撃を受ける。衝撃の発生源と思わしき場所は、すり鉢状に大きな穴となっていた。

在劇烈耳鳴的間隙逐漸能聽到的是士兵們的慘叫,周遭已變成阿鼻叫喚的地獄畫面。

酷い耳鳴りの合間にようやく聞こえるようになってきた耳に届くのは兵士たちの絶叫であった。周囲は阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。

直擊造成身軀離裂者、被碎片擊中全身血流者、從眼耳流血一邊嘔吐虛弱扭動者。

直撃を受けて体を欠いた者、破片を受けて体中から血を流す者、目や耳から血を流し、嘔吐しながら弱弱しく蠢くもの。

連馬匹也被撕裂,赤黑的內臟裸露橫臥,周圍幾乎找不到倖存者般的慘狀展開。

馬ですら引き裂かれ、赤黒い腸(はらわた)を晒して横たわっていた。およそ周囲に無事な者が見当たらない惨状が展開されていた。

無法理解發生何事,唯一刻印在腦中的,是笛聲一響地獄之蓋便被掀開。

何が起きているのか理解できない。ただ一つ刻み込んだのは、笛の音と共に地獄の蓋は開く。

然後傳入他們耳中的,是宣告無情死亡的笛聲。在將「逃跑」的念頭化為行動前,僥倖僅受輕傷的赤備便成為肉塊。

そして彼らの耳に、無慈悲な死を告げる笛の音が届いた。逃げる、という考えを行動に移す前に、幸運にも軽傷だった赤備えが肉片となった。

隨爆風被捲起,曾是赤備者的手臂與腿經過長時間滯空後落回地面。

爆風と共に巻き上げられ、かつて赤備えだった者の腕や足が、長い滞空時間を終えて地面に落ちた。

隨後血與內臟糞尿如雨般灑落,停滯的思考被猛烈臭氣強行喚回,像心臟被鷲握般的恐懼讓人尖叫。

遅れて血と臓物と糞尿の雨が降り注ぐ、停止した思考が激烈な臭気に晒され強制的に戻り、心臓を鷲掴みにされたかのような恐怖に絶叫した。

「那、那個炸裂筒真不是蓋的。確實能理解為何靜子多次叮囑不要誤用。」

「は、半端ねぇな、あの炸裂筒。確かに静子が使い途を誤るなって何度も念を押すのも納得だわ」

所謂炸裂筒,是指在箭身綁上封入ダイナマイト筒狀物的特殊箭矢。

炸裂筒とは、ダイナマイトを封入した筒を括りつけた特殊な矢を指す。

本來像ダイナマイト這種爆炸物宜於密閉空間使用,因為密閉處能避免衝擊擴散,可期待較高的威力。

本来ダイナマイトのような爆発物は、密閉した空間で使う事が望ましい。密閉空間の方が衝撃を分散させずに、高い威力が期待できるからだ。

在開放空間使用時,大部分衝擊會釋放到開放空間,效果大幅減弱。

開放空間で使用した場合、衝撃の殆どが開放空間に放たれ効果が激減する。

舉個易懂的例子,掌心內爆炸只會造成燒傷的鞭炮,若緊握爆發則能把手指從根部炸飛那樣的威力。

判り易い例を挙げるのなら、掌で爆発すれば火傷で済む爆竹も、握り込んだ状態で爆発すれば指を根元から吹き飛ばす威力となる。

然而它本是用來破碎岩石、崩山的ダイナマイト,近距離炸裂不論威力如何衰減,人類也難有倖免可想而知。

しかし本来は岩を破砕し、山を崩すダイナマイトである。至近距離で炸裂すれば如何に威力が減衰しようと、人間程度なら一溜まりも無いのは想像に難くない。

但比爆風更可怕的是聲音的效果。新式火槍亦然,炸裂筒也是以聲音效應為設計考量。

だが爆風よりも大きな効果を上げるのが音だ。新式銃もそうだが、炸裂筒も音の効果を計算して設計されている。

隨著特徵性的「聲音」,「有人」死亡。若將此深植對方心中,聲音本身便成為恐懼的對象。

特徴的な『音』と共に『誰かが』死ぬ。相手にそう刷り込めば、音そのものが恐怖の対象となる。

只要有聲音響起,身體就會僵住,根本無法安心作戰。若是未知的聲響,效果還會更強。

音がするだけで体が竦み、戦闘などとても覚束なくなる。そしてそれが未知の物ならば効果は更に高くなる。

若能理解以何種原理致死便能對應,但面對未知之物往往難以處置。

どういう原理で死ぬのか理解出来れば対処もできようが、未知の物への対処は往々にして難しい。

恐懼會進一步鈍化判斷。以至於有「聲音恐懼症」這種病名,來源不明的聲響會帶來恐懼感與不安。有人僅僅聽到來歷不明的聲音就會發狂或昏厥。

そこに恐怖が更に判断を鈍らせる。音恐怖症という病名もあるほど、正体不明の音は恐怖感や不安感を与える。人によっては正体不明の音を聞くだけで発狂し、失神する事もある。

「好啦……總算看見你了,山縣昌景ェェェェェェ!!!!」

「さて……ようやく見えたぜ、山県昌景ェェェェェェ!!!!」

布下鶴翼之陣,並加厚兩翼,導致正面防禦變薄。這正是長可所期盼的局面。長可一聲吠叫,無視身後步兵的行進速度,加快馬蹄。

鶴翼の陣を敷き、更に両翼を厚くしたため正面の防御が薄くなっていた。これこそ長可が待ち望んでいた状態である。長可は吠えると後ろの歩兵の速度を無視して、馬の足を早める。

隨從兵見長可突然突出,也慌忙提速卻反應遲了。另一方面,赤備え尚未從兩翼潰散中恢復過來。

急に長可が突出したことに気づいた随伴兵たちも、慌てて速度を上げるが反応が遅れた。一方、赤備え達は両翼の壊滅から立ち直れていなかった。

即使長可在此期間迫近,直到進入交戰圈內,赤備え們的思考仍然麻痺。

その間にも長可は迫り、ついに交戦圏内に入っても、赤備えたちは思考が麻痺していた。

「山縣昌景ェェェェェェ!!!! 我要來拿你的首級啦ぁぁぁ!! 快把頭交給我啊ぁぁぁ!!!」

「山県昌景ェェェェェェ!!!! テメェの首を貰いに来たぜぇぇぇ!! とっとと首を俺に寄越せぇぇぇぇ!!!」

從未見過的巨大武器——巴爾迪什——掃蕩了最前列的赤備え。長可如同擴張鑽孔一般推開被穿透的空隙,後續士兵也跟著衝鋒。

今までに見た事もない巨大武器——バルディッシュ——が最前列にいる赤備えたちを薙ぎ払った。長可が錐と呼ぶには些か広範囲に穿った穴を押し広げるようにして、後続の兵たちも突撃する。

被吹飛在地、拖著身體爬行,赤備え們終於意識到險境,但心已經崩潰。

吹き飛ばされて大地を這い、ようやく窮地を悟った赤備えたちだが、既に心が折れていた。

心神萎縮之下無法發揮原有戰力的一半,被稱為精強無比的赤備え接連被討取。

萎縮した心では本来の力を半分も出せず、精強無比と言われた赤備えたちが次々と討ち取られていった。

「就像金子在地上滾啊——!」

「金子が転がっているようなものだぜー!」

「殺了赤備え!就算倒在地上也是武田的赤備え,首級價值高!」

「赤備えを殺せ! 地に落ちようとも武田の赤備えだ。首の価値は高い!」

長可隊的足輕和雜兵齊聲怒喊,逐一討取赤備え。眼神閃爍著獵殺赤備え的景象近乎異常。然他們有充分理由這麼做。

長可隊の足軽や雑兵たちが口々に叫びながら、赤備えを討ち取っていく。目をぎらつかせて赤備えを狙う光景は異常とも言えた。だが彼らが赤備えを狙う理由はきちんと訳があった。

因為就算是末端的足輕,赤備え的首級也能獲得相當的賞金。不論穿多麼優秀的盔甲,或有炸裂筒這種廣域破壞武器,面對死亡的恐懼仍難以消除。

赤備えの首は末端の足軽でも、それなりの報償が出るからだ。幾ら防御力に優れた甲冑を身にまとおうが、炸裂筒という広範囲破壊兵器があろうが、死の恐怖は簡単にぬぐえない。

僅靠榮譽無法克服那份恐懼。長可以身先士卒牽引先陣,與討取可獲大量賞金的欲望,使他們能壓服對死亡的恐懼。

その恐怖を克服するには名誉だけでは無理がある。長可という先陣を走り牽引する存在、そして討ち取れば多くの報償を得られるという欲が、彼らに死の恐怖を克服させていた。

被討取的赤備え或許會氣憤地問:難道沒有榮譽與體面嗎?但對足輕與雜兵而言,榮譽填不飽肚子。

討ち取られている赤備えからすれば、名誉や面子はないのか、と憤慨するかもしれないが、足軽や雑兵からすれば、名誉で腹は膨れない。

「拿頭來!把首級交出來啊ぁぁぁぁ!!!!」

「首だ! 首を寄越せぇぇぇぇ!!!!」

「為了恩賞,把首級交出來啊ぁぁぁぁ!!!!!」

「恩賞のために首を寄越せぇぇぇぇ!!!!!」

各種心思混合交錯,長可與隨從部隊直指山縣昌景的首級突擊,而其他人則討取眼前可見的赤備え,於是出現一片混沌的戰場。

こうして色々な思惑が混ざり合い、長可と彼に従う兵たちは山県昌景の首を狙って突撃し、それ以外の者たちは目に入る赤備えを討ち取るという混沌とした戦場が出現した。

「相當地……熱鬧呢」

「随分とまぁ……派手だね」

對斥候的情況回報,靜子只能發出乾澀的笑。即便只是說每取一顆首級就給步輕較高的恩賞,效果竟超出預期。

様子見をしてきた斥候の報告に、静子は乾いた笑いしか出なかった。足軽でも首一つにつき、割高な恩賞を出すと言ったが、予想以上に効果があった。

用望遠鏡看向其他處,才藏與足滿的軍隊在與馬場信春交戰,慶次與高虎的軍則與內藤昌豐及真田兄弟作戰。

双眼鏡で他の場所を見ると、才蔵と足満の軍が馬場信春軍に、慶次と高虎の軍が内藤昌豊と真田兄弟と戦っていた。

如同山縣昌景請求第二陣援助一樣,靜子也命剩下四人協助長可。炸裂筒成功牽制住第二陣,眾人從側翼各自穿出缺口突擊。

山県昌景が第二陣の補佐を求めたように、静子も残り四人に長可の補佐を命じた。炸裂筒で第二陣連中の足止めが成功し、その横腹にそれぞれが穴を穿つ形で突撃した。

由於各自還帶著約三百名鐵砲衆,武田軍第二陣無法投入協助山縣昌景。甚至光是與慶次、才藏、足滿、高虎交戰便已力不從心。

鉄砲衆もそれぞれ300ずつ連れているため、武田軍第二陣は山県昌景の補佐に参加出来なかった。それどころか慶次や才蔵、足満、高虎と戦うだけで精一杯だった。

特別是足滿的部隊異常。即便身上插滿箭矢,仍有人發出非人類的聲音向敵陣衝鋒。

特に足満の部隊が異質だった。全身に矢が刺さっている状態でも、声にならない声を上げながら敵陣に突撃する兵がいた。

口中流著口水,眼神渙散看不清目標,以非人之力揮舞鐵棍。那樣的傢伙接近百人。

口からよだれを垂らし、どこを見ているか分からない虚ろな目で、人間とは思えぬ力で鉄の棒を振り回す。そんな連中が100人近くいた。

「殺」

「殺れ」

在足滿的命令下,鐵砲衆齊發。連同揮舞鐵棍的人,馬場信春的兵被掃蕩。但那些目光空洞者又踉蹌站起,再次揮起鐵棍。

足満の命令で鉄砲衆が一斉射撃する。鉄の棒を振り回す連中ごと、馬場信春の兵が薙ぎ払われる。だが虚ろな目をする者たちは、ふらふらと立ち上がるとまた鉄の棒を振り回していた。

異常的景象令馬場信春的兵顫慄。連誤射友軍也非尋常,更無法理解那些揮舞鐵棍者的存在。

異常な光景に馬場信春の兵は震え上がった。味方ごと敵を撃つのも異常だが、何よりも鉄の棒を振り回す輩が全く理解出来なかった。

「他們不是我方,是武田的間者。連同他們一起殺掉馬場信春的兵」

「奴らは味方ではない。武田の間者だ。連中ごと馬場信春の兵を殺せ」

揮舞鐵棍者的真相,是信長所擒的武田間者。而足滿對他們所做的事極其駭人。

鉄の棒を振り回す連中の正体、それは信長が捕縛した武田の間者だった。そして彼らに足満は恐るべき事を行っていた。

以曼陀羅草(ダチュラ)提取的麻藥成分為基礎,改良出能強烈誘發意識混濁與譫妄的藥物,投與間者以施行心靈控制。

ダチュラから抽出した麻薬成分を元に、意識混濁やせん妄状態が強く出るよう改良した薬を精製し、間者たちに投与してマインドコントロールを施した。

經過反覆投藥與洗腦,間者的人格崩壞,徹底淪為只會照命令殺戮的機器人。

度重なる薬剤の投与と洗脳により、間者たちは人格が崩壊し、ただ命じられるままに戦う殺戮マシーンへと変わり果てていた。

現在襲擊馬場信春軍的那些人,因藥物帶來的狂喜感而感覺不到疼痛,即便被槍擊也不會震撼致死。

今、馬場信春軍に襲いかかっている連中も、薬物投与による恍惚感から痛みを感じていないため、銃撃されてもショック死することは無い。

然而失血確實奪去他們的體力,肉體的破壞也在縮短他們的壽命。

しかし出血は確実に体の力を奪い、肉体の損壊はその寿命を縮めていた。

在足滿看來這雖是不人道的作戰,但他只是把這些一次性使用的間者再利用而已。

非道な作戦だが足満から見れば、使い捨ての間者を再利用しているぐらいの意識だった。

「好,衝鋒」

「よし、突撃だ」

大致收拾殆盡後,足滿向士兵發出號令。士兵一瞬猶豫,但見足滿率先奔出便慌忙追上。

おおよそ片付いたところで足満は、兵たちに号令を出す。一瞬躊躇した兵たちだが、足満が走り出すのを見て慌てて後を追いかける。

屬下士兵因恐懼顫抖,無論馬場信春如何高聲呼喊都沒有人回應。結果對來襲的織田軍無能為力,士兵接連被蹂躪。

配下の兵たちが恐怖に震え上がり、馬場信春がいくら声を張り上げようとも誰も応じなかった。ゆえに突撃してくる織田軍に為す術なく、次々と兵が蹂躙されていく。

「哼!竟然用上那種邪道的手段!」

「ちい! あそこまで外道な策を使うとは!」

軍隊的重整看似已無可能,然而馬場信春仍然堅守並催促振作。只是他的生命之燈此刻正要熄滅。

軍の立て直しはもはや不可能に思えたが、馬場信春はそれでも踏みとどまり奮起を促した。しかし彼の命の灯火は今まさに消えようとしていた。

「徒勞無功。這場戰,應該已被宣稱為我方勝利了吧」

「無駄だ。このいくさ、勝ったのは我らと宣言したであろう」

足滿阻在馬場信春面前。僕從試圖阻擋足滿,卻在一擊下被斬殺。

馬場信春の前に足満が立ち塞がった。子飼いが足満の足止めをしようとするが、一撃の下に斬り捨てられた。

「不愧是馬場信春,能撐到這一步值得稱讚」

「だが流石は馬場信春、ここまで耐えた事は褒めよう」

「你……竟然做到這種地步也要取勝嗎。你難道沒有武士的矜持嗎!」

「貴様……こうまでして勝ちたいのか。貴様には武士の矜持というものがないのか!」

馬場心想:讓被藥物迷亂的士兵衝鋒,然後在其後將我方與敵方一併掃除,活脫是惡鬼羅剎的所行。

薬物で狂わせた兵を突撃させ、その背後で味方ごと敵を薙ぎ払う。まさに悪鬼羅刹の所行だと馬場は思った。

「哼,你還在說那種話嗎。聽著,馬場信春。我曾是征夷大將軍。但當京中的那些人認為我成了障礙時,他們就採取了暗殺的手段」

「ふん、貴様はまだそんな事を言っているのか。良いか、馬場信春。わしは征夷大将軍だった。だが京の連中はわしが邪魔だと考えた時、暗殺という手段を取った」

「那跟現在有什麼關係!」

「それと今の何が関係ある!」

「不懂嗎,愚蠢之人。哪怕暫且說你們暗殺了作為武家棟樑的征夷大將軍。暗殺哪裡是正道?然而那次暗殺沒有人譴責,甚至還立了下一任征夷大將軍。回答我吧,馬場信春,如果你要論正道,為何在我被暗殺時不去糾正這條道!」

「分からぬか、愚か者。仮にも武家の棟梁たる征夷大将軍を暗殺したのだ。暗殺のどこに正道がある。だが暗殺された事を誰も非難せず、あまつさえ次の征夷大将軍を据えた。さぁ答えろ馬場信春、正道を説くならば、何故わしが暗殺された時に道を正そうとしなかった!」

「ッ!」

「ッ!」

「懂了嗎。你的正道不過是對你方便的正道!我在被暗殺時才懂得,這世上既無正道也無邪道。若硬要說──」

「理解したか。貴様の正道は、貴様の都合の良い正道に過ぎぬ! わしは暗殺された時に理解した。この世に正道も邪道もない。強いて言えばーーーー」

足滿將刀尖指向馬場信春,吐出毫無情感的冷言冷語。

刀の先端を馬場信春に向けると、足満は感情が感じられない冷たい言葉を紡いだ。

「只有勝者才有正道,敗者沒有資格談論正道」

「勝者にのみ正道があり、敗者には正道を口にする資格はない」

「你這不收斂的嘴……ッ!」

「この、減らず口を……ッ!」

馬場信春怒目欲回擊時,察覺到了異狀。足滿在笑。

何とか言い返そうと馬場信春が足満をにらみ返した時、彼は異常に気が付いた。足満は笑っていた。

那笑容並非因確信勝利而嘲弄敗者馬場信春的冷笑。

それは勝利を確信し、敗者たる馬場信春を嘲笑う笑みではなかった。

馬場信春因足滿異常的態度而疑惑,這時耳邊傳來馬蹄馳過的聲音。他正要四處尋找聲源,眼前卻映出才蔵持槍衝來的場景。

異様な足満の態度を訝る馬場信春の耳に馬が駆ける音が届いた。音源を探して周囲を見回そうとした瞬間、彼の目には才蔵が槍を構えて突撃してくる光景が映った。

「馬場信春!!那顆頭,由我取走!」

「馬場信春!! その首、貰い受ける!」

周圍士兵的注意力都放在足滿身上,因而遲遲未察覺到才蔵的存在。

周囲の兵たちも足満に意識を向けていたため、才蔵の存在に気付くのが遅れた。

足滿從一開始就不打算親自討取馬場信春,才蔵則徹底扮演誘餌的角色來討取馬場。

最初から足満は馬場信春を討ち取る気はなかった。才蔵が馬場を討ち取るための囮役に徹していた。

足滿多次踢倒武田談話,是為了等待馬場信春出場的時機。

武田の話を足満が何度も蹴り続けたのは、馬場信春が出てくる時期まで待っていたからだ。

在與馬場信春會談時過度挑釁與侮蔑,也是因為足滿判斷只要看見他,馬場信春必定會挑起戰鬥。

馬場信春と会談した時、必要以上に彼を挑発し侮蔑したのも、自分を見れば馬場信春が必ず戦いを挑むと足満が判断したからだ。

無論多麼努力保持冷靜,在那麼多人面前被羞辱到極點,仍會湧起想要將對方擊潰的情緒。

どれだけ冷静になろうと努めても、あれだけの人がいる前でこれ以上ない程に面罵されれば、叩き潰したいという感情がわく。

於是把內心怒火顫抖的馬場信春推到最前線,當他深深切入之時,由才蔵討取馬場的計畫就完成了。

そうして内心怒りに震えた馬場信春を最前線に出し、深く食い込んできた所で馬場信春を才蔵が討ち取る作戦だ。

才蔵的軍隊在途中一直不顯眼、扮演隱蔽角色,也是為了讓馬場信春與其兵將放鬆戒心,認為才蔵軍不足為懼。

途中まで才蔵の軍が全く目立たず陰役に徹していたのも、馬場信春と彼の兵たちに才蔵の軍は恐るるに足らずと油断させるためだ。

之所以要如此早早討取馬場信春,並不是因為他一開始就處於容易被討取的位置。

こうまでして早くに馬場信春を討ち取ろうと考えたのは、何も最初に討ち取りやすい位置に彼がいたからではない。

他在指揮能力與戰局分析方面出類拔萃。正因如此數十年來在戰場上能橫掃無傷。

彼は指揮能力や戦局の分析能力に優れている。だからこそ何十年もの間、かすり傷一つ負わずいくさ場で暴れられた。

而擅長分析戰局的人,一旦到了戰事後期便會愈發成為麻煩。

そして戦局の分析能力に優れた人間は、いくさの後半になればなるほど厄介な存在になる。

不管討取多少武田四天王或武田二十四將,若不能討取關鍵的武田信玄便毫無意義。

武田四天王や武田二十四将をどれだけ討ち取ろうとも、肝心の武田信玄を討ち取れなくては意味がない。

反過來說,不管武田軍還能活多久,只要斬下信玄的首級便綽綽有餘。

逆を言えば武田軍がどれほど生き残ろうとも、信玄の首さえ上げればお釣りがくる。

信玄之首重要至此,而阻礙此事的最大人物就是馬場信春。在緒戰就想討取他,於戰略上實屬理所當然。

それほどに信玄の首は重要であり、その最大の障害となる人物が馬場信春だった。緒戦で彼を討ち取ろうと考えるのは、戦略上至極当然の判断だ。

但若發動常規戰鬥,頂多造成些許損害,對方便會重整旗鼓並回復局勢。

だが通常の戦闘を仕掛けても、多少損害を与えるだけで立て直しを図られるのが落ちだ。

因此不畏被罵作外道、非道,為了討取對方首級而不擇手段的足滿被採用。

だからこそ外道・非道の誹りを恐れず、相手の首を討ち取るために何でもする足満が採用された。

執行足滿那毫無心理動搖、將人視若棄物的策略後,馬場信春才陷入不知敵人真意而戰的境地。

心理的な揺らぎが一つもなく、人を当然のように使い捨てる足満の作戦を実行して、初めて馬場信春は敵の真意に気付かず戦う状況に陥った。

再者,因為將各種怒火都集中在足滿身上,才產生了這個既是首次亦可能是最後的討取馬場信春的良機。

そして様々な怒りを覚えて足満に意識を集中したため、最初にして最後ともいえる馬場信春を討ち取る好機が生まれたのだ。

馬場信春瞬間察覺到至今足滿的一切言行都是為了討取自己,但等他察覺時已為時已晚。

瞬時に今までの足満の言動は自分を討ち取るための策だった、と馬場信春は気付いた。だが気付いた時には手遅れだった。

他想用刀格擋才蔵的攻擊,但為時已晚,才蔵的槍比馬場信春拔刀還要迅速刺出。

刀で才蔵の攻撃を防ごうとしたが時既に遅し、馬場信春が刀を抜くより早く才蔵の槍が疾走(はし)った。

馬場信春的首級在空中飛舞。被斬下的頭顱不知已與軀體分離,在空中仍帶著鬼似的表情。

馬場信春の首が宙を舞う。刎ねられた首は胴体と離れた事を知らず、空中でまだ鬼の形相を浮かべていた。

最終落地,滾動在地上。撞到什麼才停下來。馬場的頭撞上的,正是才蔵的腳。

やがて地面に落ち、ころころと地面を転がる。何かにぶつかってようやく馬場の頭は転がるのを止めた。馬場の頭がぶつかったのは才蔵の足だった。

他抓住馬場的頭顱,高高舉起並宣告。

彼は馬場の頭を掴むと、天高く掲げて宣言した。

「馬場美濃守的首級,可兒才藏所取!!」

「馬場美濃守が首、可児才蔵が討ち取ったりぃ!!」

時間倒回一點,在馬場信春與足滿、才藏交戰之際,長可直直朝山県昌景衝去。如今只有大約30名隨從跟隨,但那已足夠。

刻は少し戻り、馬場信春と足満・才蔵が戦っている中、長可は一直線に山県昌景を目指していた。今や随伴兵が30ほどしかついてきていないが、それで十分だった。

他們是長可嫡近的手下,乃精英中的精英。即便心志未碎,也絕非會在赤備面前落後之輩。

彼らは長可の子飼いであり、精鋭中の精鋭だ。たとえ心が折れていなくとも、赤備えに後れを取るような連中ではない。

每當這些嫡近一揮,赤備便被斬倒。理智想來以人數壓上或許能成,但已喪失鬥志的赤備連靠近長可都不願意。

子飼いたちが一薙ぎするたびに、赤備えが斬り伏せられていく。冷静に考えれば数で押せばどうにかなるものの、心が負けてしまった赤備えは長可に近づこうとすらしない。

「山県昌景啊啊啊啊啊!!!!」

「山県昌景ェェェェェェ!!!!」

長可大喊。也許那成了對嫡近的助威,他每喊一次,嫡近們的氣勢便充盈一分。

長可は叫ぶ。それが子飼いたちにとって助勢なのか、彼が叫ぶたびに子飼いたちに気力が満ちあふれていく。

揮舞著巴爾迪什,將阻擋的敵兵一一掃倒。不知過了多久,終於長可衝破了赤備的包圍。

バルディッシュを振るい、障害となる敵兵を薙ぎ倒していく。そうしてどれほどの時間が経ったのか判らなくなったころ、ついに長可は赤備えの囲みを突き破った。

當他在視野中捕捉到位於赤備後方的山県昌景,長可重新握緊巴爾迪什。到了這種地步,腦中已無餘地去打量退路或周遭。

赤備えの後方にいた山県昌景を視界に捉えると、長可はバルディッシュを持ち直す。ことここに至れば、もはや退路や周囲を窺う余裕など頭の片隅にも過りはしなかった。

他只是直直朝山県昌景衝去。山県也確認到長可,但他沒有選擇撤退。

ただ一直線に山県昌景を目指す。山県昌景の方も長可を確認したが、彼は撤退という選択をしなかった。

眼前已然露出後方駐紮的狼狽,若再被敵人刺中喉嚨而落荒而逃,赤備之名將被踩到塵埃。且不止於此。

今でさえ後方に陣取るという無様を晒している。その上、敵に喉元を突かれて逃げ出したとあれば、赤備えの名は地に落ちる。それだけではない。

兵士當然會受辱,其家屬也將被迫忍受羞辱;而且會被後世傳為在大戰之際怯懦逃遁之人。

兵は勿論、その家族まで肩身の狭い思いをすることを強いられる。そして大一番で臆病風に吹かれて逃げ出したと末代まで語り継がれる。

這已不只是山県昌景一人的事。他雙肩承載著赤備以往的榮譽、宗族的名譽,以及所有與赤備相關之人的名譽。

もはや山県昌景だけの話では済まない。彼の両肩にはこれまでの赤備えの名誉と、一族の名誉、そして赤備えに関わる全ての者の名誉がのしかかっていた。

因此他不撤退,連逃跑的念頭都未曾浮現。即便毀滅在前。

ゆえに彼は撤退しない。逃げるという考えすら浮かばないのだ。たとえ破滅が待っていようとも。

「小子!叫我名字還早了十年!」

「小僧がぁ! わしの名を呼ぶなど十年早いわ!」

山県不甘示弱回喊,操縱韁繩衝擊。出乎意料的單騎突擊讓身邊侍從先是愣住,隨即慌忙追上。

長可に負けじと叫び返すと、山県昌景は手綱を操って突撃する。まさかの単騎突撃に山県昌景の側仕えたちは唖然とした後、慌てて彼を追いかけた。

「我不是小子!我的名號是勝蔵!森勝蔵長可(もりかつぞうながよし)!記清楚了再下地獄去吧!!」

「小僧じゃねぇ! 俺の名は勝蔵! 森勝蔵長可(もりかつぞうながよし)だ! よぉく覚えてから地獄に落ちやがれ!!」

「少囉嗦!吾名山県三郎(やまがたさぶろう)兵衛尉(ひょうえのじょう)昌景(まさかげ)!!我便是要送你入冥府之人!!」

「減らず口を! 我が名は山県三郎(やまがたさぶろう)兵衛尉(ひょうえのじょう)昌景(まさかげ)!! 貴様を冥府へ送る者の名よ!!」

兩人轉入一對一的決鬥。雙方嫡近自不待言,懂得讓開以免妨礙決鬥。

一騎打ちになる。双方の子飼いは誰が言うまでもなくその事を理解すると、一騎打ちの邪魔にならないよう離れる。

其他趕來的武田赤備與長可的兵亦在判知為一騎打時,各自退居兩側後方。

その他、駆けつけた武田の赤備えや長可の兵も、一騎打ちが始まると理解すると、それぞれの背後に陣取った。

『聽著勝蔵。你與山県相對時,當知己方壓倒性不利。山県走過無數戰場,與你的經驗天差地遠。時間愈久愈不利,經驗將決定一切』

『良いか勝蔵。貴様が山県と相対するとき、圧倒的に不利と心得よ。幾つものいくさ場を渡り歩いてきた山県と、貴様とでは圧倒的に経験が違う。刻が経てば経つほど不利になり、経験がものを言うようになる』

長可回想起父親森可成的話。當時聽不懂,直到如今與山県昌景對峙,才第一次體會。

長可は父親である森可成の言葉を思い出す。言われた時は分からなかったが、こうして山県昌景と相対して初めて気付く。

山県昌景是個剛毅的武士。僅是對峙便令人感到壓迫欲碎,氣勢刺得皮膚發麻,各項都是現在長可所欠缺的。

山県昌景は大剛なる武士である事を。相対するだけで押し潰されそうな重圧、肌がヒリヒリするほどの気迫、何もかも今の長可にはないものばかりだった。

『年輕的氣勢在歷戰猛者面前如風中燭火,毫無用處。況且山県此刻是被逼到絕境,切記他非僅是將領,而是一騎當千的死兵。』

『若さに任せた気勢など、歴戦の猛者の前では風前の灯火、何の役にも立たぬ。更に山県は追い詰められた状態だ。単なる将ではない、一騎当千の死兵である事を心得よ』

(懂了,父親……是那種至今未曾遭遇過的……真正強敵啊!!)

(分かったよ、親父……今まで経験した事のない……本当の強敵って奴をよ!!)

他在握巴爾迪什的手上用力,長可將所有寄於首擊。若成功可斬殺山県昌景,若失敗則長可必死無疑。

バルディッシュを持つ手に力を込める。長可は最初の一撃に全てを込める。成功すれば山県昌景を討ち取れるが、失敗すれば長可が討ち死にする事は確定だ。

對已取得大戰功的長可來說,這是一場不利的賭注。

既に大戦果を挙げている長可にとっては分の悪い賭けになる。

然而不擒得山県昌景之首便無法獲勝。到了這一步才好不容易把名聞一時的武田赤備逼到自己的場子上。

しかし山県昌景の首を挙げないことには勝利はない。ここまでしてようやく長可たちは、名にし負う武田の赤備えを自分の土俵に立たせることが出来たのだ。

若長可敗北,迄今的努力全成泡影。即使一時勝利,若放走山県昌景,敵方立刻能恢復陣腳。

もし長可が破れれば、今までの苦労は全て水泡に帰する。一時の勝利など山県昌景を逃せば、すぐに立て直されてしまう。

「山県昌景啊啊!!那顆頭顱,拿走了啊啊啊啊!!!」

「山県昌景ェェェ!! その首、貰ったァァァァ!!!」

(哼,年輕人。好好體會馬上長槍之難,去死吧!)

(ふん、若造が。馬上槍の難しさを噛みしめて死ぬが良い!)

操作馬上長槍需相當修練。即便在武田軍,多數武將也不以馬上長槍為主,突擊後通常下馬以步兵身分作戰。

馬上槍を扱うには相当な修練が必要となる。武田軍ですら殆ど武将は馬上槍を用いず、突撃後は下馬して歩兵として戦うのが常である。

馬本就是於戰場上快速移動之手段,藉由高位與勢能發起突擊,或利用機動性從步兵無法達成的迂迴側擊進行後方攪亂,為其主要用途。

そもそも馬はいくさ場を素早く移動するための手段であり、高い位置にあることや勢いの有利を以ての突撃や、機動力を生かした歩兵では取りえない迂回からの側撃という後方攪乱が主要な運用となる。

因此雖成戰場之花,馬若停蹄便瞬間失去優勢。一旦勢頭斷去,所有動作皆成破綻,馬上長槍有此致命缺陷。

それゆえに戦場の華となるものの、馬の足が止まれば一気に優位性を失う。一度勢いが死ねば、全ての行動が隙となる致命的な欠点が馬上槍にはあった。

「把這條手臂,送給你吧!」

「この腕、貴様にくれてやろう!」

以單臂為代價擋下長可的攻擊,在馬匹操作紊亂之際將長可斬殺。

片腕を犠牲にして長可の攻撃を防ぎ、馬の操作が乱れた所で長可を討つ。

這便是山県昌景採取的策略。雖談不上最佳,卻極為有效。換作誰人也會如此行事。

それが山県昌景のとった作戦だ。最上とは言えずとも極めて有効な戦法だった。山県昌景でなくとも誰しもそうしたであろう。

「啊啊啊啊啊啊啊啊啊啊啊啊啊啊啊!!!」

「ああああああああああああああああああっ!!!」

長可一邊呼喊一邊揮舞巴爾迪什。山県昌景以單臂欲接住長可的攻勢。巴爾迪什一擊命中瞬間,他聽到連籠手一起被震碎的聲音。

叫びながら長可がバルディッシュを振るう。山県昌景は片腕で長可の攻撃を受け止めようとした。バルディッシュの攻撃を受けた瞬間、彼は篭手ごと己の腕が粉砕される音を聞いた。

(骨頭碎了嗎。但……什麼?!)

(骨が砕けたか。だが……何ぃ!)

骨頭被打碎了,但手臂本身完好,他是這麼想的。然而山縣昌景犯下了致命錯誤:長可的膂力遠非他所認識的年輕人可比,強得不可同日而語。

骨が砕けたが腕自体は無事、そう思っていた。だが山県昌景は致命的な間違いを犯した。長可の膂力は彼が知る若者とは、比較にならないほど強いという事を。

「別小看我啊啊啊啊啊!!!!」

「俺を、なめるなぁぁぁぁぁ!!!!」

伴隨著吶喊,長可爆發出超越極限的力量。

叫び声とともに、長可は限界を超えた力を発揮する。

巴爾迪什的勢頭未止,斬斷了山縣昌景的手臂後,刀鋒逼向他的頸部。自下向上揮起的刀勢將連盔甲與手臂一併斬斷,這突如其來的情況讓山縣昌景無法防禦而遭到長可的攻擊。

バルディッシュの勢いは止まらず、山県昌景の腕を両断すると、その刃は彼の首へと迫った。下から振り上げる刃で鎧ごと腕が断ち切られるという予想外の事象に、山県昌景は防御出来ないまま長可の攻撃を受けた。

「嗚啊喔!」

「うあおっ!」

勢力過猛的長可在斬中山縣昌景的同時被震落馬下。馬順勢奔去,跑了不遠便停下;長可則強行支撐疼痛的身軀起身,確認山縣昌景的狀況。

勢い余った長可は、山県昌景を斬ると同時に落馬した。馬は勢いのまま駆けると、少し走ったところで足を止めた。対して長可は痛む体を無理矢理起こして、山県昌景の姿を確認する。

「不、不可能……咳……這樣的小鬼……哪裡來這等力量……」

「ば、馬鹿な……ごぼっ……こんな餓鬼の……どこにこんな力が……」

山縣昌景從頸部噴出鮮血,口中也流著血,帶着驚愕的表情盯著長可。長可的一擊連同他的手臂一併穿過左側腋下,甚至把被斜移的脖子也劃裂了。

首から血を噴き、口からも血を流す山県昌景が、驚愕の表情で長可を見つめていた。長可の一撃は山県昌景の腕諸共、左脇腹を通り抜け逸らした首すらも切り裂いていた。

那是誰看了都知道無法獲救的傷。察覺自身情況的山縣昌景露出一抹粗獷的笑,用尚能動的右臂握住刀。

誰が見ても助からないと判る傷だった。己の状況を察した山県昌景は、ニヤリと太い笑みを浮かべ、無事な右腕で刀を握った。

「餓鬼……不,森勝蔵長可啊!真是了不起。然則此山縣昌景非汝之手可及,來好好見證我之死狀吧!」

「餓鬼……いや、森勝蔵長可よ! 見事なり。だがこの山県昌景は貴様の手には掛からぬ。我が死に様を……とくと見届けよ!」

話音未落,山縣昌景便自行割下了自己的首級。被切落的頭顱噴出鮮血。長可調整呼吸,對着山縣昌景的首級合掌。

言うやいなや山県昌景は自分で自分の首を切り落とした。切り落とされた首から鮮血がほとばしる。長可は呼吸を整え、山県昌景の首に手を合わせる。

「山縣三郎兵衛尉之死狀,天晴般壯麗。所謂大剛之武士(もののふ),正為此人而生。」

「山県三郎兵衛尉の死に様、天晴見事なり。大剛なる武士(もののふ)とは、彼のためにある言葉なり」

長可讚頌山縣昌景。若非自己的攻擊命中,落首的恐怕反而會是自己。合掌完畢,長可看見山縣彷彿露出一絲陰笑。

長可は山県昌景を褒め称える。自分の攻撃が届かなければ、首を落としていたのは自分の方だった。手を合わせ終えると、長可は山県昌景がニヤリと笑ったように見えた。

那笑容彷彿在說要為討取我而自豪。長可帶著笑意,將山縣昌景的首級高高舉起。

我を討ち取った事を誇れ、そんな事を言っているような笑みだった。長可は笑みを浮かべると山県昌景の首を天高く掲げる。

「山縣三郎兵衛尉之首,為森勝蔵長可所討取!!」

「山県三郎兵衛尉が首、森勝蔵長可が討ち取ったりぃ!!」

長可討取山縣昌景、才蔵討取馬場信春的時間幾乎相同。只是向靜子那邊的報告稍早到達,這成了勝負的分水嶺。

長可が山県昌景を、才蔵が馬場信春を討ち取った時間は殆ど同じだった。僅かに静子の方へ報告が届くのが早かった。それが勝負の分かれ目となった。

「敲起戰鼓!!」

「太鼓を鳴らせぇ!!」

「是!!」

「はっ!!」

陣鼓咚咚作響,不只一次,三拍節奏接連敲響兩次、三次。

陣太鼓がドンドンドンと鳴り響く。一度だけではなく、三拍子が二度、三度と続けられる。

聽見聲響的除了靜子軍外,左右的佐久間、平手、水野,以及後方的德川軍都發生了變化。

それを聞いた静子軍は勿論、左右にいる佐久間、平手、水野、そして後方の徳川軍に変化が起きた。

「久等了,諸君!明明武功就在眼前,直到現在還能忍住,感謝你們!!但如今已無需再忍耐!!」

「待たせたな、者ども! 目の前に武功が転がっていながら、今まで抑えてくれた事を感謝する!! だがもう耐える必要はない!!」

「嗚哦啊啊啊啊啊啊啊啊啊!!!」

「うおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

「喔哦哦哦哦哦哦哦哦哦哦哦!!!」

「おおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

靜子的怒吼引發士兵們的嘶吼。靜子滿意點頭,將クーゼ高舉於天,士兵們稍遲一步跟上。

静子の声に兵士たちが雄叫びを上げる。静子は満足げに頷くと、クーゼを天高く掲げる。少し遅れて兵士たちが続く。

因為高舉軍旗等各種標示,武田一方反而難以看清織田·德川軍的後方,因而沒注意到後方發生的事。

軍旗など色々なものを掲げたため、武田側からは織田・徳川軍の後方が見えにくくなった。ゆえに後方で起きている事に気付けなかった。

——德川連一面軍旗也不見了的情況。

徳川の軍旗が一つもない、という状況を。

德川軍的旗雖消失,但士兵仍在陣中,他們所插的旗幟已完全換成了別樣的標記。

徳川軍の軍旗はなくなったが兵はそのままだった。そして兵たちが差している軍旗は、全くの別物だった。

「哎呀哎呀,終於該出場了呢。」

「やれやれ、ようやく出番ですね」

一邊抱怨一邊用羽扇搧自己的,正是竹中半兵衛。他並非獨自行動,周遭的士兵都插起了秀吉的軍旗。

そんな事をぼやきつつ、羽扇で自分を仰ぐ人物は竹中半兵衛だった。彼だけが参加したのではなく、周囲にいる兵たちは秀吉の軍旗を掲げていた。

無疑是秀吉的軍隊。不僅秀吉一支,離他們稍遠處列陣的則是柴田軍的旗幟。

まごう事なき秀吉の軍である。そして秀吉の軍だけではない。彼らから少し離れた場所に陣取る軍は、柴田軍の軍旗が掲げられていた。

「竟然真的討取了,諸位!!別輸給女子啊!!」

「まさか本当に討ち取るとはな。皆の者!! 女子に負けておられぬぞ!!」

率隊的竟是柴田勝家。除此之外,佐佐成政、明智光秀、丹羽長秀、前田利家等多位織田家家臣的旗幟也一同揚起。

率いる武将はまさかの柴田勝家だった。彼らの他にも佐々成政、明智光秀、丹羽長秀、前田利家など、様々な織田家家臣たちの軍旗が掲げられていた。

「起初覺得荒唐,但若不這般,恐怕無法戰勝武田。」

「最初は滅茶苦茶な話と思ったが、それぐらいでなければ武田には勝てぬか」

「諸君!!若能討取武田,名譽流芳萬代!斬啊斬啊不停地斬!」

「皆の者!! 武田を討ち取れば末代までの誉じゃ! 斬って斬って斬りまくれぇ!」

各處武將紛紛煽動士氣。已傳遍全軍的是:討取了武田的最側近,因此聽到『武田』二字再無人膽怯。

あちらこちらで武将による鼓舞が行われる。武田の側近中の側近を討ち取った事は、既に全軍に知れ渡っているので、武田と聞いて怯える兵は一人もいなかった。

「竟然真的討取山縣,實在可稱天晴。」

「本当に山県を討ち取るとはな。天晴れとしか言えぬ」

在後方的織田軍中出現了森可成的身影。他披著一貫的甲冑,握著那把已不知斬過多少敵人的心愛十文字槍。

そして後方の織田軍の中に、森可成の姿があった。彼はいつもの甲冑を纏い、これまで何度敵を討ち取ったか分からない愛用の十文字槍を握っていた。

「父上。您若胡來,會傷身的。」

「父上。無茶をされては体に毒でございます」

長子森可隆(よしたか)關切森可成的身體,但他搖了搖頭。

長男の森可隆(よしたか)が森可成の体を労る。だが、彼は首を横に振る。

「讓你們擔心了。但血……我的血在沸騰。肩傷曾令我多次想要放棄,但對這滾動的血性無法抗拒。放心吧,這次就是最後一次了。」

「心配をかけてすまぬ。だが、血が……わしの血が騒ぐのじゃ。肩の負傷で諦めようと何度も思った。じゃが血の滾りには抗えぬ。安心せよ、これで最後じゃ」

「父上……明白了。某不再多言。請盡情作戰吧」

「父上……わかり申した。某はもう何も申しませぬ。存分に、戦い下さいませ」

「為了讓我有個有終之美,武田實在太過奢侈了。不過我這次真的將是最後一次作戰。把我的武勇好好地烙印在你們眼中」

「わしが有終の美を飾るのに、武田は贅沢すぎじゃがの。だがわしが戦うのは本当にこれで最後となる。しかして我が武勇、その目にしかと焼き付けよ」

「哈哈!父上的英姿,必將深深烙印在我的眼中!」

「ははっ! 父上の雄姿、我が眼(まなこ)にしっかり焼き付けます!」

可隆的回應讓森可成滿意地點頭。全軍的士氣如熱浪般溢出,看起來像陽炎般搖曳。剩下的只等靜子下令全軍突擊,眾人都迫不及待地等待著那一刻。

可隆の返事に森可成は満足そうに頷く。全軍の士気は熱気のように溢れだし、陽炎のように揺らめいて見えた。後は静子が全軍突撃を命じるのみ、それを今か今かと待ちわびていた。

「諸君!!跟隨我!!全軍,衝鋒ーーーーーー!!!」

「皆の者!! 我に続け!! 全軍、突撃ーーーーーー!!!」

於是時刻到來了。隨著靜子的號令,織田軍伴隨著怒吼向武田軍衝去。

そしてその時はやってきた。静子の号令とともに、織田軍は雄叫びを上げながら、武田軍へ突撃した。

只有織田軍在突擊,那麼德川軍在哪裡?那支忽然消失的德川軍究竟身在何處、圖謀何事,信玄要等到稍後才能得知。

突撃するのは織田軍のみ、では徳川軍はどこへいるのか。忽然と消えた徳川軍が、一体どこにいて何をしようとしているのか、その事を信玄が知るのはもう少し後の事である。