戦国小町苦労譚
1572年 十二月下旬
十二月二十二日。這一早晨,將成為後世所稱為「戰國時代終焉」端緒的歷史性轉捩點。
十二月二十二日。後の世に『戦国時代の終焉』端緒と呼ばれることになる歴史的変換点の朝。
靜子在行禊。以冷水淨身完畢後,她換上了白裝束。
静子は禊を行っていた。冷水で己を清め終えると白装束に身を包んだ。
所謂白裝束,又稱「死裝束」,古時在產室佩戴,後來成為在切腹等不祥之事中所穿的服飾。
白装束とは別名『死に装束』とも呼ばれ、古くは産室で着用され、後に切腹など凶事に於いて纏う服装として定着した。
也有逸聞稱伊達政宗在向秀吉為小田原城攻遲到作釋明時披上此衣,帶著赴死之決心陳述,因而免於切腹。
伊達政宗が秀吉に対して小田原城攻め遅参の釈明をする際に纏い、死を覚悟した上で釈明をすることで切腹を免れたという逸話もある。
不論如何,白裝束象徵決死的覺悟,因此靜子親自穿上白裝束,對所有人而言都是明顯的決心宣言。
いずれにせよ、白装束は決死の覚悟を体現する。ゆえに静子自らが白装束を纏うことは、誰の目にも明らかな決意表明となった。
「總有一天這日會到來。我早有此預感。」
「今日という日がいつかは訪れる。私にはそんな予感がありました」
穿著白裝束的靜子站在士兵們面前。雖然服裝不同,但她的態度絲毫未變,那泰然自若的姿態帶給士兵們安心。
白装束の静子は兵たちの前に立つ。彼女は服装こそ違えど、その態度にはなんら変化が無かった。泰然自若たる態度は、兵たちに安心を齎していた。
「武田軍即將逼近濱松城。那麼,我們的使命只有一件:讓那些人知道他們向誰露出了獠牙,徹底擊潰他們,使他們永不再自大!」
「間もなく武田が浜松城へ迫るでしょう。ならば、我らが使命は唯一つ。誰に対して牙を剥いたのか彼奴等に思い知らせ、二度と思い上がらぬよう叩きのめすのみ!」
一邊做著驅逐假想敵人的手勢,靜子高聲激勵士氣。
仮想の敵を討ち払うような手ぶりをしつつ、静子は檄を飛ばす。
「此地雖屬德川領,但他們必定也會攻入織田領!若任由他們侵入我們本土織田領,將在各處行劫、屠戮、施行無道的亂妨取(亂暴之舉)。絕不可容忍那等暴行!從今起我們不退轉,即使此身腐朽,也要死而成為護國之鬼!」
「ここは徳川領なれど、彼奴等は必ず織田領へも攻め込もう! 我らが本土たる織田領へ彼奴等の侵入を許せば、至る所で略奪、殺戮、非道なる乱妨取(らんぼうど)りを行うであろう。決してそのような狼藉を許してはならぬ! これより我らは不退転。たとえこの身が朽ち果てようとも、死して護国の鬼とならん!」
「應!」
「応!」
「我們不退!為守護我們的父母、妻子與未來而戰!對那些不自量力、以為我們會唯唯諾諾服從之人的驕慢,絕不可饒恕!那些以為憑藉武田威光就可為所欲為的山猿,不足為懼;真正能在絕地中爬行、啜泥水、咬石頭而存活下來的勇士,才值得敬畏!勝利已經──在我手中!諸位!發出鬨聲!叫他們睜大眼看看!」
「我らは退かぬ! 我らの両親を! 妻子を! 未来を守るために戦うのだ! 己が分を弁えず、我らが唯々諾々と従うと考えるその増上慢! 決して許してはならぬ! 武田の威光を振りかざせば恣(ほしいまま)になると思い上がった山猿など、死地を這い、泥水を啜り、石に齧りついてでも耐えのびた兵(つわもの)ならば恐るるに足らず! 勝利は既に(・・)我が手にある! 皆の者! 鬨の声を上げよ! 彼奴等に目に物見せてくれようぞ!」
「嗚啊啊啊啊啊!!」
「うおおおおおおおおおおっ!!」
靜子吼叫著鼓舞士兵,最後一句話一出,響起如地鳴般的同聲怒吼。
静子が吼えて兵士たちを鼓舞する。最後の台詞に唱和するよう、地鳴りのような雄叫びが上がった。
因為清晨即已大動員,原本觀望以為有異狀的德川家臣們被那一聲大號令震驚了。
早朝より大動員を掛けていたため、何事かと見守っていた徳川家家臣たちは、その大号令に驚愕した。
撕破寂靜的巨聲固然驚人,但更顯著的是士兵們的神色已然不同。宴席上的鬆弛神情蕩然無存,取而代之的是怒濤洶湧的武士容顏。
しじまを切り裂く大音声もそうだが、何よりも兵士の顔つきが違ってみえた。宴での弛緩した面影はなく、猛り逸る武士(もののふ)の顔となっていた。
「命令所有人換上弐號裝備。玄朗爺,請召集射擊精準的兩百人來,我要給他們別的任務。」
「全員に弐号装備を命じます。それから玄朗爺、射撃精度の高い者を200人集めて頂戴。別任務を与えます」
「是!」
「はっ!」
弐號裝備並非重武裝,而是重視機動性的配備。數字僅為型式編號,並不表示壱號裝備更優越。
弐号装備とは重武装ではなく、機動力に重きをおいた装備である。数字は型式番号に過ぎず、壱号装備の方が優れているという訳ではない。
「需要你們的時刻很快就會到來。在此之前,各自養精蓄銳。」
「貴方達を必要とする刻はすぐに来ます。それまで各々鋭気を養っておくように」
背對著高聲激昂的士兵們,靜子向作為部隊長的玄朗等人下達指示。接到靜子命令的他們,各自奔向完成使命的崗位。
気炎を吐く兵士たちに背を向け、静子は部隊長たる玄朗たちに指示を出す。静子より指示を受けた彼らは、それぞれの使命を果たすため駆け出していった。
德川家家臣們對於士兵的士氣與整然行軍所展現出的高度統率力始終感到壓倒性的震撼。
兵の士気や、整然と行軍する統率力の高さに、徳川家家臣たちは終始圧倒されていた。
籠城戰往往處於被動,隨著戰況惡化士氣會下滑,武將們長久以來都為如何維持士氣而苦心。
籠城戦は受け身になり、戦況の悪化と共に士気は下がっていく。武将たちは如何に士気を保つかに腐心してきたのだ。
然而靜子軍即便剛參戰也還能高昂士氣,差距之處究竟在哪,成了擺在眼前的疑問。
しかるに静子軍は参戦直後という事を差し引いても、桁違いに士気が高い。自軍との差は何なのかと言う疑問が横たわっていた。
「她在謀劃著什麼。」
「彼女は何かを企んでいるな」
遠遠觀望靜子演說的康政心中湧起一種近乎確信的預感。
静子の演説を遠巻きに見ていた康政は、確信めいた予感を抱いた。
武田軍正朝濱松城進軍,但他們根本無意進行攻城戰。濱松城堅固,信玄在與織田的決戰前不願徒然消耗兵力。
武田軍は浜松城を目指して進軍していた。しかし彼らには攻城戦をする気など毛頭ない。浜松城は堅牢な城だ。信玄は織田との決戦を控え、徒(いたずら)に兵を消耗させたくなかった。
對武田而言,上策是用計將德川從城中誘出,將戰鬥帶到三方原的野戰場上,速戰速決將其粉碎。
策を用いて徳川を城から引きずり出し、三方ヶ原での野戦に持ち込み、早期決戦ですり潰すのが武田にとっては上策。
使緊閉城門固守的敵人自動出戰。通常並不容易,但此次情況並非難事。
固く門を閉ざし籠城している敵を、自ら打って出させる。通常ならば容易ではないが、今回に限れば難しいことではない。
答案很簡單:繞過濱松城,直取下一座城池。
答えは単純。浜松城を迂回して次の城を目指す。
若在城中坐視武田進軍,將被視為在獲援之際拋棄織田的叛徒,名聲被後世唾棄。
武田の進軍を城に籠って見逃せば、援軍を送って貰いながら織田を見捨てた裏切り者として末代まで語り継がれよう。
沒有人會願與那等人結盟,家臣也會因恐懼而以自身安危為念離去。
そのような相手と手を結ぶものはおらず、また家臣も明日は我が身と去っていく。
結果家康只能明知不利仍出戰,武田便獲得能自行選擇戰場的優勢。
結果的に家康は不利を承知で打って出るしかなく、武田は戦場を己で設定できるという優位を得る。
信玄認為最佳之策不是直指濱松城,而是朝三方原方向前進,於祝田之坂前佈陣。
信玄は浜松城を目指さず、三方ヶ原方面へと向かい、祝田の坂手前で陣を構えるのが最良だと考えていた。
祝田之坂向出口方向愈來愈狹窄。
祝田の坂は出口に向かうほどに狭くなる。
那地形是襲擊大軍的絕佳之處,信玄推測若家康為彌補寡兵之劣勢而出動取小勝,便會落入圈套。
大軍を相手に襲撃するにはうってつけの地形であり、寡兵の不利を補って小さな勝利を取りに家康が動くと、信玄は読んでいた。
為了壓縮家康的選擇,信玄又加了一計。
家康の選択肢を狭めるために、信玄は更にもう一つ策を重ねる。
「小山田,來這裡。」
「小山田をここに」
被信玄召喚的是小山田信茂。他是譜代家老之一,亦為信玄的從甥(即堂兄弟的兒子)。
信玄に呼ばれた人物は小山田信茂だった。彼は譜代家老衆の一人で、信玄の従甥(じゅうせい)(いとこの息子)だ。
「靠近點,主上有一件事要交付你去辦。」
「ちこう寄れ。主に一つ、仕事を任せる」
小山田走近信玄耳邊豎起耳朵。信玄對他低聲耳語,聲量小到連在旁待命的小姓都聽不見。
信玄の傍に寄り、小山田は耳をそばだてる。信玄は彼に向かって何事か囁くが、側に控えている小姓にすら届かない声量であった。
聽完信玄的指示後,小山田露出不懷好意的微笑,輕輕點頭。
信玄の指示を聞き終えると、小山田は不敵な笑みを浮かべ、小さく頷いた。
「主君的一手便可困住德川,輪到我等出手吧」
「主の一手で徳川は詰む。我らの手番を進めようぞ」
把計策授予小山田後,信玄再度命令原本停下的軍隊前進。
小山田へ策を授けた後、信玄は停止させていた軍を再び進めさせた。
另一方面,身在濱松城的家康為信玄的行動惴惴不安。
一方、浜松城にいる家康は信玄の行動に気を揉んでいた。
「武田朝濱松城進發,正如我方所料。然而在三方原附近停軍。接下來是從此猛攻城池,還是分兵先行,需觀察對方動向。」
「武田が浜松城を目指すまでは思惑通り。しかし、三方ヶ原付近で行軍を止めた。ここから城を攻めるのか、それとも兵を分けて先を急ぐのか、相手の出方を見る必要がある」
家康從清晨起就召開軍議,對信玄的行動變得格外敏感。畢竟這是大戰一役,國家正處於存亡邊緣。
家康は朝から軍議を開き、信玄の行動に過敏になっていた。何しろこれは大一番。国が滅ぶか生き残るかの瀬戸際に立たされている。
為免遺漏絲毫情報而緊盯不放也不足為奇。那股緊張傳染給家臣,整個營內籠罩著異常的緊張感。
些細な情報も見落とすまいと血眼になるのも無理はない。その緊張は家臣へと伝播し、陣内は異様な緊張感に包まれていた。
然而只有靜子悠然自得地用扇子搧風冷靜。若被氛圍吞噬而緊張、視野狹隘,原本能勝的戰也會敗。
そんな中、静子だけは己を扇子で煽いで寛いでいた。空気に飲まれて緊張し、視野が狭くなれば、勝てるいくさも勝てなくなるからだ。
「武田恐怕會因不願被織田與德川兩面夾擊而撤退。」
「織田と徳川の挟撃を嫌い、武田が撤退するやもしれませぬ」
「過於樂觀。若撤退,先前降服的諸地恐怕會起兵反抗。對方採取某些計策來討伐我們,是合情合理的推斷。」
「楽観に過ぎる。もし撤退すれば、今まで降伏させた領地は反旗を翻す。何らかの策を講じて、我らを叩くと考えるが道理」
德川家臣們陷入原地打轉的爭論,靜子想,他們若不做點什麼,恐怕會被不安壓垮。
徳川家家臣たちは、堂々巡りの議論を繰り返していた。何かをしていなければ不安に押し潰されてしまうのだろうと、静子は考えていた。
不被他們喧囂所動,靜子靜候時機成熟。武田軍即將發起攻擊,從那時起,靜子針對武田的作戰計策便要展開。
彼らの喧噪を意に介さず、静子はじっと刻が満ちるのを待った。もう少しで武田軍が攻めてくる。その時から、静子の武田戦の策が始まる。
「報告!武田軍開始進軍!據說同時分兵了!」
「ご注進! 武田軍が進軍を開始! その際、兵を分けたとの事です!」
「第二個賭注也是我方勝利!」
「2つめの賭けも我らの勝ちぞ!」
聽到消息的家康情不自禁拍掌叫好。對他而言,武田軍分兵並非壞事;若採極為謹慎策略的武田選擇不攻濱松城而撤退,反而更不利於他。
報せを耳にした家康は思わず膝を打った。家康にとって武田軍の分割は問題ではなかった。非常に慎重な策を取る武田が、浜松城を攻めずに撤退する方が都合が悪かった。
畢竟若只看結果,家康也只是放棄二俣城而已。固然撤退對信玄也會造成損失,但不如對家康那般重大。武田選擇撤退的可能性並非沒有。
何しろ結果だけを見れば、家康は二俣城を見捨てただけになるからだ。無論信玄にとっても撤退は損失を生むが、家康ほどではない。撤退を選ぶ可能性は少なからずあった。
「從今起進入守城戰。諸將戒慎!」
「これより籠城戦となる。皆の者、気を引き締めよ!」
全副甲冑的家康向部將發號施令。此時他被夢寐以求的勝機所迷,竟未注意到在斥候回報之後靜子的身影已消失。
甲冑に身を包んだ家康が、配下の武将へ発破をかける。この時彼は待望の勝機に目が眩み、斥候の報より後に静子の姿が消えていることに気が付かなかった。
其他人亦因免於面對武田全軍而鬆了口氣,於是把注意力放在眼前準備,疏忽了警戒,連忠勝也未留意到靜子的存在。
他の者も武田全軍を相手取らずに済んだ安堵から、目先の準備で注意が疎かになり、忠勝ですら静子の存在に思い至らなかった。
(咦,未見靜子殿的身影)
(ぬ、静子殿の姿が見えぬ)
最先發覺的是半藏。他召來一名可信賴的部下,暗地裡命其尋找靜子。
最初に気が付いたのは半蔵だった。彼は信頼出来る部下の一人を呼び寄せ、静子を探すよう密かに命じた。
半藏不認為她會此時逃跑,但也想不出為何在此情況下會消失,於是命令部下調查靜子的動向。
この期に及んで逃げたとは考えなかった。しかし、この状況で姿を消す理由も思いつけなかった半蔵は、静子の動向を探るべく、部下に捜査を命じた。
「啊──差不多了吧」
「あー、そろそろかな」
擅自從軍議中消失的靜子率領玄朗及二百名精銳銃兵,佔據了某處陣地。除靜子外,眾人不明白該處的利便,雖困惑仍依命而行。
軍議から無断で姿を消した静子は、玄朗と精鋭銃兵200を率いて、とある場所に陣取っていた。静子以外、陣を構えた場所の利点が分からず、困惑しつつも従っていた。
負責監視與護衛的德川兵亦是如此,但靜子只是微笑,並未向他們說明理由。
監視と護衛を任されている徳川兵も同様だったが、静子はにこやかに笑むだけで、彼らにも説明はしなかった。
等候不久,有人喊見到武田軍。玄朗差點不由自主地起身,但靜子的纖手(せんしゅ)伸向他肩頭將他制住。
そうして暫く待つほどに、誰かが武田軍の発見を叫ぶ。思わず腰を浮かしそうになった玄朗だが、静子の繊手(せんしゅ)が彼の肩に伸びて制止していた。
「還不是時候。你們的出場要再晚一點。」
「まだだよ。貴方たちの出番はもう少し後」
「不、但是面對敵人若不戰鬥,藏在這裡就失去意義了」
「し、しかし敵を前にして戦わねば、ここで伏せている意味がございませぬ」
在這般問答間,武田軍的攻城部隊開始向濱松城投石。靜子靠在盾上,探察投石的間隔。
そんな問答をするうちに、武田軍の攻城部隊が浜松城へと投石を開始した。盾に背を預けて、静子は投石の間隔を探っていた。
「你們會有出場的時機,但還不是。投石威力不可小覷。等彈藥與體力稍微消耗後,正是良機。」
「出番はあるよ。でも、まだだめ。投石は威力が馬鹿にならないからね。弾も体力も、もう少し消耗した頃が好機よ」
自古以來投石便與劍、槍、弓齊名,是重要兵器。若只是拋擲,不需太多技巧,成本低且有相當威力,石彈哪裡都能找到。
古来より投石は剣や槍、弓と並ぶ立派な兵器だった。ただ飛ばすだけなら技術も要らず、安価でそれなりに威力があり、弾はどこにでも転がっている。
熟練者操作時,投石有時能比弓射得更遠。
熟練者が扱えば、弓よりも遠くへ石を届かせることもあった。
在日本投石稱為印地(いんじ),有以手投、以投石機、或用手巾投擲等各種投石形式的技術。
日本では投石の事を印地(いんじ)と呼び、手で投げたり、投石機を使ったり、手ぬぐいで投げたりするなど、様々な投石の形態に対する技術があった。
據說在三方原之戰,小山田信茂曾率領投石衆攻打濱松城。
三方ヶ原の戦いでは小山田信茂が投石衆を率いて、浜松城を攻めたと言われている。
然而在《信長公記》或《三河物語》中雖有記載如「水役之者」等關於投石部隊的事,卻無小山田信茂率領投石部隊攻濱松城的記述。
だが、信長公記や三河物語では「水役之者」など投石部隊の事に関する記載はあっても、小山田信茂が投石部隊を率いて浜松城を攻めたという記載はない。
由於江戶時代的一次誤讀,直至今日仍未出現能明確證明小山田信茂未率投石部隊的證據,故今人認為此事已成為通俗說法而定型。
江戸時代に誤読されたのをきっかけに、今日(こんにち)まで小山田信茂が投石部隊を率いていないという明確な証拠がでなかったため、今では俗説として定着したと考えられている。
「哼哼,竟然用這種石頭啊」
「ほほぅ、こんな石を使っているのね」
靜子揀起幾塊被拋出的石頭,躲在盾後檢視。石頭擊中盾面發出劇烈聲響,但盾經過特殊加工,毫髮無傷。
投げ込まれた石を幾つか拾い上げ、静子は盾に隠れて検分する。石が盾を打つ激しい音が響くが、盾には特別な加工を施してあるため、びくともしなかった。
「殿下!現在不是悠哉觀察的時候,德川軍大概也要起疑了」
「殿! 暢気に観察している場合ではござりませぬ。そろそろ徳川軍も不審に思いましょう」
「是嗎?那就開始吧。我倒是想再讓對方『留點面子』才好呢」
「そう? じゃあ始めようか。私としてはもうちょっと相手に『華を持たせてあげたかった』けどね」
將石頭集中到一處後,靜子拿起那把看起來像大振長刀、可當作指揮棒的クーゼ。
石を一ヶ所に集め終えると、静子は采配代わりに大振りの長刀にも見えるクーゼを手に取った。
「投石的間隔越來越拉長了。對方的彈藥在減少,請等待下一波投石,狙擊投石兵。」
「だんだん投石の間隔が伸びています。相手の弾が少なくなっていますから、次の投石を待って投石兵を狙撃して下さい」
「哈、哈哈。明白了。」
「は、ははっ。承知しました」
「首先一百人齊射,立刻換防下一百人射擊。其間最先的那一百人裝填待命。重複這個,最後全員再來一波齊射,這就是作戰。快了……好,投石快結束了……現在!」
「まず100人が斉射し、即座に交替して次の100人が撃つ。その間に最初の100人は装填して待機。これを繰り返して、最後に全員で一斉射をするのが作戦よ。もうすぐ……よし、投石がもうすぐ終わる……今よ!」
宣佈的同時靜子用力站起身,玄朗等人也跟著站起,將武田軍的投石衆納入視線。
宣言すると同時に静子は力強く立ち上がる。玄朗たちも続いて立ち上がり、武田軍の投石衆を視界に捉えた。
「開火!」
「撃てぇ!」
靜子將クーゼ的矛尖向武田軍揮下,整齊排列的一百把槍口同時噴出火光。
静子がクーゼの矛先を武田軍へと振り下ろすと、ずらりと並んだ100丁の銃口が一斉に火を噴いた。
雖是百人齊射,但射擊節奏並未完全一致。斷斷續續的槍聲如同機關槍般,在濱松城一隅響起。
100人による一斉射だが、その射撃タイミングは完全には揃わなかった。さながら機関銃のように断続的な銃声が、浜松城の一角に鳴り響く。
突如其來的槍擊讓德川兵震驚,但不久那份驚愕被另一種情緒取代。武田軍的投石衆中,前線的那一百名有四成倒下了。
突然の銃撃に驚いた徳川兵だったが、間もなくその驚愕は別の色で塗り替えられた。武田軍の投石衆のうち、前線を担っていた100名の4割が倒れ伏していた。
斥候報告的投石衆總數約三百,代表一次射擊就損耗了部隊一成。
物見から告げられた投石衆の総数はおよそ300。一回の射撃で部隊の一割が損耗したことになる。
一百發中命中四十雖超過半數未擊中,但因為是首輪射擊且並未視認目標,靜子不以為意便下達下一個號令。
100発中40命中では半分以上外れているが、初回の射撃であることと、相手を視認していなかったことが原因であるため、静子は気にせず次の号令を発する。
「下一輪,開火!」
「次、撃てぇ!」
「哈……哈哈!」
「は……ははぁっ!」
首次投入實戰的新式火槍的威力讓火槍手們目瞪口呆,但在靜子的聲音中回過神來後讓出位置,後排迅速架起槍發射。
初めて実戦投入された新式銃の威力を認識した鉄砲衆は、あまりの威力に口を開いて呆然としていた。しかし静子の声で我に返るとその場を譲り、後列が素早く銃を構えて発砲する。
面對過於迅速的連射,武田的投石衆無法反應甚至來不及閃避,損失更多士兵。
あまりにも早すぎる次射に対応できなかった武田の投石衆は、身を躱すことすらできずに更に多くの兵を失った。
隨即第三波射擊襲來,部隊根本無法整頓,多數投石衆喪命。
そこに追い打ちをかけるように第三射が襲い掛かる。結局部隊を立て直すことすらできず、殆どの投石衆は命を散らせた。
「你們並非軟弱,只是沒能順應時代潮流。僅此而已。」
「貴方たちは弱くない。ただ時流に乗れなかった。それだけよ」
同時說話間靜子揮下クーゼ,第四輪成為總攻擊,兩百發子彈射穿了僅十幾名的武田兵。
言葉と同時に静子はクーゼを振り下ろした。第四射は総攻撃となり、200もの銃弾が、僅か10数名の武田兵を撃ち抜いた。
被同伴的屍體阻擋,既無法退也無法進,面對鉛雨的武田兵如同蜂窩般倒下斷氣。
味方の死体に阻まれ退くも進むもならず、鉛の嵐を前に武田兵は蜂の巣となって息絶えた。
他們倒下的同時,靜子吹了犬哨。認為一定會有人在旁監視戰況,靜子已配置兵力去襲擊那些人。
彼らが倒れると同時に、静子は犬笛を吹いた。必ず戦況を見守る軍監がいると考え、静子は彼らを襲撃するための兵を配置していた。
「哇啊!」
「ぎゃあ!」
遠處傳來沙啞的慘叫。躲藏著的是ヴィットマン家族與受其訓練、服從命令的犬群。
遠くからかすれた悲鳴のような音が耳に届く。伏せていたのはヴィットマンファミリーと、彼らの命令に従うよう調教された犬軍団だ。
即便躲在濃密的灌木或視野無法穿透的林間,狼與犬也無法被欺瞞。
深く濃い茂みや、見通すことの適わない木立に隠れようとも狼や犬は欺けない。
無論多麼小心隱藏,體味會揭露藏身之處。無論人體速多快,遠不及狼犬,能持續以全速奔跑的極限也有著令人悲哀的差距。
どれほど注意深く隠れようとも、体臭で居場所を暴き出す。どれほど足の速い人間であろうと、狼や犬のそれには遠く及ばず、全速力で走り続けられる限界も悲しい程に差があった。
作為獵犬訓練的犬群會不停追逐,直到獵物——人類體力耗盡,露出破綻為止。
猟犬として教育された犬達は、獲物となる人間が弱るまで追い続け、隙が出来るまで追い立てる。
當人類因疲勞無法再跑時,牠們會群起撲向,直到對方喪命都不鬆懈。
疲労から走れなくなった人間に集団で襲い掛かり、相手の息の根が止まるまで油断することが無い。
只要行蹤曝光,武田軍的軍監們的死運便已註定。
存在が露見した時点で、武田軍の軍監たちの命運は決していた。
「若能拿到首級會更有說服力……不過能從那堆裡找到首級嗎?」
「首があれば説得力あったけど……あの中から首を探せるかな?」
「我覺得不可能。」
「無理だと思います」
靜子帶著乾笑指向武田軍的屍體,玄朗看了她手指一眼,嘆了口氣搖頭。
乾いた笑みを浮かべつつ、静子は武田軍の死体を指さす。玄朗はその指先を一瞥すると、溜息とともに首を振った。
因為未確認領導投石衆的將領就發動攻擊,誰也不知將帥們究竟身在何處。
投石衆を率いていた将を確認せずに攻撃したため、何処に将兵が居たのか誰にも分らない。
再加上堆積的屍體接近三百,若膽大妄為走出去取首級是不可能的。
おまけに積み重なった死体は300近くある。のこのこ外に出て行って、目的の首級を上げるのは不可能だ。
靜子雙手抱臂沉思,最終判斷不值得這等力氣便放棄了尋找首級。
腕を組んで唸った静子だが、結局労力にあわないと判断して首を諦めた。
「那麼,開始這一世一次的演技吧。」
「さて、一世一代の演技、やりますか」
伸了個懶腰後,靜子重新扛好クーゼ向家康處走去。
ぐいっと背伸びをした後、静子はクーゼを担ぎ直して家康の許へ向かった。
時間稍微回溯,正在軍議中的家康一片混亂。
刻は少し遡り、軍議の場にいる家康は混乱していた。
「再問一次。敵方人數是三百,沒錯吧?」
「もう一度問う。敵の数は300、で間違いないか?」
「是、是的。那些人斷斷續續地發動投石攻擊。接下來該怎麼做?」
「は、はい。奴らは断続的に投石を仕掛けてきています。いかがいたしましょうか」
家康再次確認,但斥候的回報與先前無異,家康抱臂沈思。
再度確認した家康だが、斥候からの返答は前と変わらなかった。家康は腕を組んで熟考する。
(武田軍只有300?這是怎麼回事,300實在太少了。以那等兵力根本無法對濱松城造成傷害。信玄坊主的目的為何?僅僅300想幹什麼?)
(武田軍が300だと? どういう事だ、300は幾ら何でも少なすぎる。その程度の兵力では浜松城に痛手すら与えられぬ。信玄坊主の狙いは何だ? 僅か300で何をしたい?)
無論如何繞著腦袋想也想不出敵人的意圖。家康因此焦躁,冷汗直冒,越陷越深。
どれほど頭を捻ろうとも敵の狙いが分からなかった。そのことに家康は焦り、脂汗を浮かべながら深みにはまっていく。
漸漸地,家康想到或許目的正是要製造混亂。
やがて家康は混乱させることにこそ狙いがあるのではと思い立つ。
「胡鬧!我率兵前去將他們擊散!只有約三百人,輕而易舉。」
「ふざけおって! わしが兵を率いて蹴散らして参ろう! 僅か300程度、鎧袖一触よ」
「等等。未必只有300。若被當作棄子引出去,若主力在後,將徒然消耗兵力。」
「待て。300だけとは限らぬ。捨て駒に釣られて出ていけば、本隊が控えていた場合、いたずらに兵を消耗するだけだぞ」
「但就這樣袖手旁觀,關乎我等的顏面。」
「だがこのまま見ているだけは、我らの沽券に関わる」
德川家的家臣們也弄不清敵人意圖,意見分歧無法定下方針;一方織田家的家臣只是默默看著這場紛亂,並不積極參與討論。
徳川家家臣たちも敵の狙いが分からず、意見が割れて方針を纏められずにいた。一方織田家家臣は、その紛糾振りを黙って眺めるのみで、積極的に議論に参加しようとはしなかった。
「咳咳,德川大人。當然要出擊吧?否則支城的守軍撐不住。莫非忘了武田若去他處,我方會從背後突襲的計策嗎?」
「コホン、徳川殿。勿論、打って出ましょうな? さもなくば支城を支えている者が保(も)ちませぬ。よもや武田が他所へ行った際に、我らが背後を突く作戦をお忘れか?」
對於德川家臣間無法達成結論,漸漸焦躁的佐久間向家康進言。佐久間也理解在三百人後方可能有大軍待命。
徳川家家臣の間で結論が出ないことに、徐々に焦りを覚えた佐久間が家康に進言する。佐久間も300の後ろに大軍が控えている可能性は理解していた。
但既然等不到確證,除了將那三百人擊潰之外別無他法。
しかし待ったところで確証は得られない以上、300の兵を蹴散らす以外に手はない。
若主力確有埋伏則需即刻撤退,屆時產生的犧牲他們認為無可避免。
大軍が控えていた場合は即座に撤退する必要があるが、その時に出る犠牲はやむを得ないと考えていた。
「等一等。無論如何也讀不透武田的手段。守著萬人之濱松城,為何只派約三百……我知道了!」
「待たれよ。どうにも武田の手の内が読めぬ。万の兵が守る浜松城に、なにゆえ300程度を派遣したのか……そうかっ!」
家康終於察覺到武田的意圖。並在察覺的同時,明白勝負已然決定。
ようやく家康は武田の狙いに気付いた。そして気付くと同時に、既に勝敗は決してしまった事を悟った。
若就此固守,會因懼怕約三百人而退縮,背負拋棄同伴的汙名,世代難以洗刷。
このまま籠城すれば300程度に怯えて引きこもり、味方を見捨てたという汚名が末代までついて回る。
在家康猶豫不決之際,武田會悠然侵入三河。如此一來三河與遠江將被切斷,奪回三河將變得絕望。
家康が判断に迷っている間、武田は悠々と三河を侵略する。そうなれば三河と遠江は分断され、三河の奪回は絶望的になる。
若被武田支配三河,意味著德川將失去根據地,並與織田家分道揚鑣。
武田に三河を支配される。それは徳川が本拠地を失うと同時に、織田家とも分断される事を意味する。
但若就此出擊,若三百人背後有主力,那將被蹂躪。武田已算計家康會出兵,不會輕易許可撤退。
しかし、このまま討って出て、もし300の背後に本隊が控えていれば蹂躙される。武田は家康が打って出る事を計算にいれ、簡単に撤退を許さないだろう。
如此家康一時將無法以軍事行動,武田便會趁機把兵進入三河。
そうなれば家康は暫く軍として動く事が出来なくなる。その間に武田は三河へと兵を進めるだろう。
無論選擇哪個都沒有勝算,家康明白自己已經錯失良機。
どちらを選んでも勝利はない。その事に家康は遅きに失したことを理解した。
而且若德川與織田分裂,未來只有先被一方滅亡,接著另一方也被滅的結局。
そして徳川と織田が分断されれば、どちらかが先に滅ぼされ、その後に残り一方が滅ぼされる未来しかない事も。
「德川大人,還在猶豫什麼!這樣下去我們必然敗北!速下出陣命令!」
「徳川殿、何を迷われます! このままでは我らの敗北は必定! 早急に出陣の命を!」
「等、等一等,佐久間大人。我就是不知所措。看不透武田的心思,只覺得我們在按武田的棋譜在動。」
「お、お待ち下され、佐久間殿。分からぬのです。武田の腹の内が読めず、我らは武田の棋譜通り動いているのでは、としか思えぬのです」
「但沒有閒工夫猶豫。雖讀不透武田的心思,若繼續被約三百人圍城,必然被世人笑談至遺臭萬年。」
「しかし迷っている暇はありませぬ。武田の腹は読めませぬが、300程度に籠城を続ければ末代まで笑われるのは必定」
「不可再猶豫。若在此處遲疑犧牲,便無法前進!」
「迷われる事はありませぬ。ここで犠牲を躊躇われては前に進めませぬぞ!」
「是……可是,到底發生了什麼……」
「そう……だが、何が起きて……」
家康陷入無法作答的窘境,佐久間與平手的焦躁日益積累。等了好一會仍得不到答覆,佐久間的怒氣達到頂點。
答えに窮する家康に佐久間や平手が苛立ちを募らせる。暫く待ったが答えを出せない家康に、佐久間の苛立ちが頂点に達する。
「為何還在猶豫。莫非……從一開始就知道武田的動向嗎!」
「何故、迷われる。もしや……最初から武田の動きを知っていたのではなかろうな!」
佐久間話一出口,原本紛亂的場面瞬間緊繃起來。德川的家臣們因為覺得主君被侮弄而勃然大怒,瞪向佐久間。
佐久間が言葉を発した瞬間。それまで紛糾していた場の空気が、一瞬にして張り詰めたものに変化した。徳川家家臣たちは主君を愚弄されたことに逆上し、佐久間を睨み付ける。
「別胡鬧!你以為我們為織田付出多少!」
「ふざけるな! 我らがどれだけ織田の為に尽くしてきたと思っておる!」
憤怒是理所當然的反應。佐久間的話等同斷定德川背叛織田。
激昂も当然の反応だ。佐久間の台詞は、徳川が織田を裏切ったと断じていた。
被罵為叛徒誰能不憤怒。況且在拼命奮戰的當下被懷疑,更是難以容忍。
裏切り者と罵られて怒りを覚えない人間はいない。ましてや命を懸けて戦っているその場で疑われたなら猶更だ。
面對無數敵意的佐久間並未退縮,還想繼續發言。但就在此時佐久間突然向前傾倒,重重在地上滾落。
無数の敵意に晒された佐久間だが、怯むことなく更に言葉を重ねようとした。しかし、その前に突然佐久間が前のめりになり、勢いよく床を転がった。
「吵死了,笨蛋別囉嗦。」
「うるさい、馬鹿が囀(さえず)るな」
佐久間之所以被撞倒,是因為足滿悄無聲息地從後面靠近,一腳毫不客氣地踢飛了他。沒來得及護身的佐久間額頭重重撞到地板,捂著痛處。
佐久間が転がった理由は、音もなく佐久間の背後に忍び寄った足満が、遠慮なく蹴り飛ばしたからだ。受け身も何も取れず額を床にぶつけた佐久間は、痛む箇所を手で押さえる。
「足滿大人,此行何意!即便是靜子殿的家臣,這種暴行也不可饒恕!」
「足満殿、何をされる! いかに静子殿の家臣とはいえ、このような狼藉は許されぬぞ!」
「不過是因為那傢伙說了愚蠢之言才制止他。若想留下愚人的名聲,到別處去吧!」
「馬鹿が馬鹿な事を言っているから止めたまでだ。愚か者として名を残したいのであれば他所でやれ!」
平手的怒斥也被足滿冷冷置之不理。眼看織田家臣間將要起衝突,靜子走進了軍議現場。
平手の激昂も足満は涼しい顔で聞き流す。今度は織田家家臣同士で諍いが起きそうになったが、その前に静子が軍議の場に入ってくる。
「哎呀哎呀,各位久等了……這是怎麼回事,這氣氛是怎樣?」
「やーやー、皆さんお待たせ……って何ですこの空気は」
德川家的家臣正怒目相視。佐久間捂著額頭,與平手一道向足滿指責,但足滿面不改色地置若罔聞。
徳川家家臣たちは自分たちを睨んでいる。佐久間が額を手で押さえつつ、平手とともに足満に食ってかかっているが、足満は涼しい顔で聞き流す。
在這一觸即發的氛圍中,靜子對這混亂而又弄不清楚狀況的場面感到困惑,歪著頭。
一触即発の空気でありながら、何がどうなっているのか分からない混沌とした状況に静子は首を傾げる。
「狀況還不太清楚,但先把這個給佐久間大人、平手大人、水野大人,這是館主的指示書」
「状況は良く分かりませんが、ひとまず佐久間様や平手様、水野様、はいこれ。お館様からの指示書です」
靜子判斷與其弄清狀況,不如按計畫行事更為重要,於是把信長交給她的朱印狀交給佐久間等人。
状況を理解するよりも、作戦通りに進める方が優先と判断した静子は、信長から預かった朱印状を佐久間たちに渡す。
內容非常明白:「服從靜子的命令,不然就斬草除根」,大家知道內容後雖然驚訝,但既是信長的命令,無從不從,佐久間等人沉默不語。
内容は『静子の命令に従え、さもなくば根切りだ』と非常に分かりやすい。内容を知って驚いたが、信長の命とあれば従わない訳にはいかず、佐久間たちは押し黙った。
「那麼,先報告。來到濱松城的武田兵三百已經處理了。且後方沒有大軍蹲伏」
「さて、まず報告を。浜松城に来た武田兵300は始末しました。そして後ろに大軍は控えていません」
「……在那之前,可以問一句嗎」
「……その前に一つよろしいかな」
「可以,沒關係」
「はい、構いません」
面對從未見過的那般認真的家康,靜子心裡有些退縮,但不露聲色,仍保持平靜的態度。
今まで見たこともないほどに真剣な表情の家康に、内心腰が引けた静子だが顔には出さず、平然とした態度をとる。
「剛才佐久間大人質問說,是不是我們德川家把織田出賣給武田。我想聽聽妳的看法,請直率地說」
「先ほど、佐久間殿に徳川家(われら)が織田を武田に売ったのか、と問い質された。貴女はどう思っているか、率直な意見を聞きたい」
「我根本不認為德川大人會背叛」
「私は徳川様の裏切りなど、毛頭考えておりません」
「為何能如此斷言?」
「何故そう断言出来ます」
「因為我相信──相信那位決定派後援的館主。如果德川大人背叛,館主就不會決定派後援。正因為館主信任德川大人,才會派後援。那麼,作為家臣的我去相信館主,不也是理所當然的嗎」
「信じているからです、後詰めを送ると決断したお館様を。もし徳川様が裏切っているのなら、お館様は後詰めを送ると考えません。徳川様を信じたからこそ、お館様は後詰めを送られた。ならば、家臣の私がお館様を信じるのは、当然の道理ではありませんか」
對於靜子的回答,家康沒有說話。不,說不出口。既然信長信任家康,靜子便信任家康。
静子の返答に家康は何も言わなかった。否、何も言えなかった。信長が家康を信じたのだから、静子は家康を信じる。
在下剋上的時代,父賣子、子賣父司空見慣,家康對於如此信任信長的靜子既感驚訝,同時又羨慕那個能獲得如此信任的信長。
下克上が当たり前、親が子を、子が親を売る時代において、家康はそこまで信長を信用している静子に驚くと同時に、そこまで信じて貰える信長が羨ましかった。
「能被妳如此看重的織田大人,令我稍生嫉妒。咳……我就信任妳那誠實不假的雙眼吧」
「貴女にそこまで思われる織田殿に、少しだけ嫉妬しました。コホン……嘘偽りない貴女の目を、わしは信じましょう」
「感謝。雖然很倉促,但現在要施行一個計策。我只說一次,請用心聽好」
「ありがとうございます。早速で申し訳ありませんが、これからある策を行います。一度しか言いませんので、心して聞いて下さい」
於是靜子說出那個她以年為單位醞釀的計策。起初半信半疑的家康,從中途開始便被靜子的計策逐步吸引。
そして静子は年単位で温めてきた策を語る。最初は半信半疑だった家康も、途中から静子の策にぐいぐい引き込まれた。
或許因為家康變成那樣,家臣們也被感染,這點很容易看出來。
家康がそうなっているからか、家臣たちも引き込まれているのは簡単に分かる。
「……真的可能嗎?」
「……本当に可能なのか?」
聽到最後,家康低聲吐出疑問。他理解到,過去信長和靜子的行動在聽了這計策後,終於全部串連了起來。
最後まで聞いた家康はポツリと疑問を口にする。今まで信長や静子の行動が、策を聞いてようやく全てが繋がった事を家康は理解した。
但對於最終能否達成目標、作戰是否能成功,他仍無法確信。
だが、最終的な到達地点が、作戦が成功するかは未だ確信を持てずにいた。
「不是能不能的問題,而是要去做。若感不安,德川大人可以固守城池不動。就算只有織田軍……不,是只有我軍也會執行這個作戰」
「出来る、出来ないではありません。やるのです。不安でしたら徳川様は籠城していても構いません。織田軍だけ……いえ、我が軍だけでも作戦を実行します」
沉思片刻後,家康看向靜子的眼。那是一雙毫不猶豫、直線前進的眼。即便此刻他不參與,靜子也會憑自己的軍隊去執行。她的目光已說明一切。
少し思案した後、家康は静子の目を見る。迷いなく、一直線に進む目だ。ここで自分が策に乗らなくても、静子は自分の軍だけで実行する。言葉にしなくとも目が如実に語っていた。
家康抬頭望向天花板,閉上雙眼。約十秒後,他睜開眼,轉向靜子。
天井へ顔を上げると家康は目を瞑る。10秒ほど経った頃に、家康は目を開けて静子へ顔を向ける。
「明白了。我將德川家的命運託付給妳!」
「分かりました。徳川家の命運、貴女に託します!」
拍了自己的臉頰一把振奮精神後,家康宣告接受靜子的計策。
頬を思い切り叩いて気合いを入れた後、家康は静子の策に乗ると宣言した。
「諸君!準備!讓我們展示三河武士的驕傲吧!」
「皆の者! 準備せよ! 我ら三河武士の意地を見せてくれようぞ!」
「殿下……哈哈!!」
「殿……ははっ!!」
原本愣住的德川家家臣,聽到家康的宣言瞬間表情改變。變成戰士面孔的他們,以震得空氣顫動般的音量喊出氣勢。
呆気にとられていた徳川家家臣たちだが、家康の宣言を聞くやいなや顔つきが変わる。いくさ人の顔になった徳川家家臣たちは、空気がビリビリ震えるほどの声量で気合いを入れる。
家康也不示弱地高聲吶喊。他一喊,家臣們的士氣便被帶起。
家康も負けじと声を上げる。彼が声を上げるたびに、家臣たちの士気が上がる。
「策馬出陣!讓我們德川的力量烙印在你們眼中!」
「馬をひけい! 我ら徳川の力、その目に焼き付けてくれよう!」
整備完戰備後,織田・德川聯軍兩萬自濱松城出陣。全軍登上三方原台地,沿著幾條道路,朝北端的根洗松一帶前進。
いくさの準備を終えると、織田・徳川連合軍2万は浜松城から出陣する。全軍は三方ヶ原台地を上り、幾つもの道を通り、北端の根洗松付近へ向かう。
尚未抵達前,靜子等人便感到異常的壓迫感。無需言說也能明白:山縣昌景會合後的信玄本隊二萬七千正埋伏待命。
到着する前から静子たちは、異様な圧迫感を覚えていた。言葉にしなくても分かる。山県昌景が合流した信玄の本隊2万7000が待ち構えている事を。
途中沒有遭遇伏兵襲擊,是自信的表現,還是因為考量到若有伏兵織田・德川軍可能會撤退而沒有設伏?總之,在看到武田軍旗幟前並未受到攻擊。
途中で伏兵の襲撃がなかったのは自信の表れか、それとも伏兵を知って織田・徳川軍が引き返す可能性を考慮したか、ともかく武田軍の旗が見えるまで襲撃は受けなかった。
「到了呢」
「到着しましたね」
正如靜子預料,武田軍就在她從地形推斷出的地點埋伏等待。
静子の予想通り、そして地形から割り出した地点に武田軍は待ち構えていた。
「這就是……武田軍嗎」
「これが……武田軍か」
面對武田軍所放出的威壓,長可咽了一口唾沫。但他立刻拍打臉頰提振精神,讓幾乎被壓倒的心重新理出一條線。
武田軍から放たれる威圧に、長可はつばを飲み込む。だがすぐに顔を叩いて活を入れて、威圧感に飲まれそうになった心に一本の筋を通す。
「好啊!就讓我們幹一場!!」
「おっしゃあ! やってやるぜぇ!!」
「振作很好,但別太用力繃緊了」
「気合を入れるのは良いが、入れすぎて力みすぎないようにな」
「接下來會是場有趣的戰鬥,別再說些掃興的話吧」
「これから楽しいいくさが始まるのだ。野暮な事は言いっこなしだろう」
「……這大概會是我一生中最為嚴酷的一天」
「……我が生涯の中で、もっとも過酷な一日となろう」
長可、才蔵、慶次、高虎各自打起精神,離開靜子,回到既定的陣位。
長可、才蔵、慶次、高虎がそれぞれ自分なりに活を入れつつ、静子の許を離れて決められた配置につく。
確認他們的背影後,靜子發出信號,命各部隊迅速就位。
彼らの背中を見届けた後、静子は合図を送って各部隊に素早く配置につくよう命じた。
中樞由靜子軍擔任,左右由佐久間、平手、水野負責,後方由德川軍守護。
中核は静子軍、左右に佐久間、平手、水野、後方を徳川軍が担った。
陣形近似鋒矢陣,但在箭頭尖端配置了鐵砲衆,且在箭矢中央的是靜子,這點與傳統鋒矢陣不同。
陣形は鋒矢(ほうし)の陣に近いが、矢印の先端に鉄砲衆が配置され、さらに矢印の中央に静子がいる点が、従来の鋒矢の陣と違っている。
「今天可沒餘力再說長道短了呢」
「今日ばかりは、四の五の言っていられる余裕はないね」
雖然在馬上,靜子輕輕活動身體放鬆,並深呼吸數次。靜子有義務以高聲鼓舞士兵,為了讓手勢顯眼,她戴著白手套。
馬上だが静子は体を軽く動かしてほぐした後、何度か深呼吸をする。静子には兵を鼓舞するために声を張り上げる義務がある。手振りの動きが目立つよう白手袋を着用した。
「聽著!!我的士兵們!!」
「聞けぃ!! 我が兵たちよ!!」
士兵們齊刷刷轉向靜子。稍作停頓後,靜子繼續開口。
兵たちが一斉に静子の方へ体を向ける。一瞬だけ間を置いた後、静子は言葉を続けた。
「在我們前方的,正是被譽為日本最強的武田軍!而且眾多名將齊聚!可以說武田軍已將全軍之力集合於此!」
「我らが前にいるは、日ノ本最強と名高い武田軍なり! さらに名高き武将が勢揃いしている! まさに武田軍の総力が結集していると言えよう!」
聽到「總力結集」這句話,士兵們的表情變了。對面是日本最強的軍隊,整個軍隊都已集結,看不見的恐懼悄然籠罩士兵們。
総力が結集という言葉に、兵たちの顔つきが変わる。相手は日本最強の軍隊、その軍隊の全てが結集しているのだ。目に見えない不安が兵たちに忍び寄る。
「但在他們面前我仍要說!他們不過是到昨天為止運氣較佳罷了!!」
「だが彼らを前にしてあえて言おう! 奴らは昨日まで相手に恵まれていたに過ぎないと!!」
話音未落,靜子便將クーゼ高舉向天。
言い終えると同時に、静子はクーゼを天高く掲げる。
「我相信!我們是絲毫不遜於武田的精銳!讓他們看看吧!讓全日本的人都看看吧!我們真正的力量!!」
「私は信じる! 我らは武田に劣らぬ精鋭である事を! 連中に見せてやろうではないか! 日ノ本にいる全ての者に見せてやろうではないか! 我らの本当の力を!!」
「喔、喔喔喔!!」
「お、おおおっ!!」
士兵們大聲呼喊,彷彿要吹散不安。他們舉起手中武器高呼,後方見狀的士兵便跟著放聲喊叫。
不安を吹き飛ばすかのように兵たちが声を上げる。手に持った武器を掲げつつ声を上げると、それを見た後ろの兵が続くように声を張り上げる。
「不要輕視他們!但也別懼怕!他們並非強者。我們才是武功之基!諸君!立下武功,揚名吧!」
「奴らを侮るな! だが怖れるな! 奴らは強者ではない。我らが武功の礎なり! 者ども! 武功を上げ、名を上げよ!」
「嗚啊啊啊啊啊啊啊啊啊啊啊啊啊!!!」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」
「這場戰,勝利(……)屬於我們!!」
「このいくさ、勝った(・・・)のは我らだ!!」
「嗚喔喔喔喔喔喔!!!」
「うおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
大多數士兵都發出喊聲,聲音甚至傳到遠處武田軍、信玄所在之處。
殆どの兵士たちが声を上げる。それは離れた武田軍の、信玄がいる場所まで届くほどだった。
武田軍之中流露出竊笑,似乎把織田・德川軍的吶喊視為虛張聲勢。
織田・徳川軍の声を虚勢とみたのか、武田軍の間には忍び笑いが漏れる。
「相當虛張聲勢」
「随分な虚勢をはる」
「在我們赤備前仍能鼓舞士氣,應當讚許。讚美織田・德川聯合軍吧!」
「我らが赤備えを前にして、なお気炎を上げたところは褒めるべきであろう。織田・徳川連合軍を褒め称えよう!」
「若以為只靠士氣就能勝我們,那就太天真了!」
「士気だけで我らに勝てると思っているのなら、甘いという他にない!」
鼓舞的內容並未傳入武田軍,因此出於近乎疏忽的輕視,甚至流傳起蔑視的言語。
武田軍には鼓舞の内容まで届いていなかった。それゆえ油断にも似た侮りから、中には侮蔑の言葉まで飛び交っていた。
武田軍布陣為魚鱗陣。
武田軍は魚鱗の陣を敷いていた。
先鋒為小山田信茂,其後有山縣昌景的二軍,構成第一陣。
先鋒に小山田信茂、その背後に山県昌景の二軍が第一陣。
第二陣:左翼為馬場信春,中央為內藤昌豐,右翼為真田信綱、昌輝、昌幸兄弟三軍。
左翼に馬場信春、中央に内藤昌豊、右翼に真田信綱・昌輝・昌幸兄弟の三軍が第二陣。
第三陣:左翼為諏訪勝頼(後為武田勝頼),中央為武田信豐,右翼為米倉丹後守。
左翼に諏訪勝頼(後の武田勝頼)、中央に武田信豊、右翼に米倉(よねくら) 丹後守(たんごのかみ)の三軍が第三陣。
而在最末端則有武田家一族與高坂昌信,以及由武田信玄率領的本陣。
そして一番後ろに武田家一族や高坂昌信と武田信玄率いる本陣がある。
由四陣構成的武田家最強布陣已如烈火般蓄勢待發,唯等待武田信玄下達攻擊命令。
計四陣からなる武田家最強の布陣は、火の如く攻める準備が出来ていた。待つのは武田信玄の下す攻撃命令のみ。
(果然胸中的不安只是錯覺嗎。不過,士氣高昂的敵人不可掉以輕心)
(やはり胸騒ぎは気の迷いであったか。しかし、士気が高い相手は油断ならぬ)
在多數侮視織田・德川軍喊聲的武田軍中,唯有信玄聽了之後反而收斂了心神。敵人把一度快要崩潰的士氣重新振作起來,保持警惕是重要的。
織田・徳川軍の声を侮る人間が多い武田軍の中で、信玄のみ声を聞いて逆に気持ちを引き締めた。敵は一度萎えかけた士気を高めたのだ。気を引き締める事は大事だ。
然而這僅是些許阻礙,信玄並不懷疑勝利。畢竟織田・德川捨棄有利守城,反而出現在信玄最擅長的野戰之場。
しかし、多少の障害になるだけで信玄は勝利を疑っていなかった。何しろ織田・徳川軍は有利な籠城を捨て、信玄がもっとも得意とする野戦に現れたからだ。
自古野戰向來以兵多為勝,織田・德川聯軍最多估計也不過兩萬多一點,相對地武田軍布陣兵力已近三萬。
古来より野戦は兵の数が多い方が優勢だ。織田・徳川連合軍は多く見積もっても2万数千程度。対して武田軍は3万に届く兵数で布陣している。
數字上差距是數千之多,而數千的差距並非輕易能填補。確信勝利的信玄將胸中的不安斷定為錯覺,拿起軍配。
数字の上では数千の差だが、数千の差は簡単に埋められる差ではない。勝利を確信した信玄は、胸騒ぎは気の迷いと断じ、軍配を手に取った。
攻擊命令下達。這消息即便信玄未親口宣告,也瞬間傳遍整個武田軍。四處響起騷動聲,但信玄不為所動,高舉軍配向天。
攻撃命令が下る。その情報は信玄が口にせずとも、瞬く間に武田軍全体に広まった。あちこちでざわつく声が上がるが、信玄は気にせず軍配を天高く掲げる。
「勝負已成」
「詰みなり」
說罷信玄將軍配指向織田・德川軍,而就在眾人理解那即為攻擊命令的瞬間,吹貝手吹響法螺,鼓手用力擊打陣太鼓。
言いつつ信玄は軍配を織田・徳川軍へ向ける。それが攻撃命令だと理解した瞬間、貝役が法螺貝を吹き、太鼓役が陣太鼓を力強く叩く。
聽到那聲音的武田士兵一邊發出震撼空氣的咆哮,朝織田・德川軍突擊。
その音を聞いた武田兵は空気をふるわす咆哮を上げながら、織田・徳川軍に突撃した。