戦国小町苦労譚
一五七二年 八月中旬
七月十九日,信長召集幾乎所有家臣,為信忠(奇妙丸)舉行具足始之儀。
七月十九日、信長はほぼ全ての家臣を集めて信忠(奇妙丸)の具足始(ぐそくはじめ)の儀を執り行った。
又稱鎧着初,乃武家男子首次穿戴盔甲之儀式。通常多與元服同時舉行,然無固定規矩,像奇妙丸般亦可在元服前舉行。
別名鎧着初(よろいきぞめ)とも言われ、武家の男子が初めて鎧を着用する儀式の事だ。通常は元服と重なる事が多いが正式な決まりはなく、奇妙丸のように元服前でも行う事がある。
相反地,也有像武田義信那樣,十三歲元服後二年,於十五歲時舉行的例子。
反対に武田義信のように、十三歳で元服してから二年後の十五歳で執り行うケースもある。
因此具足始常被視為與元服相同,但實為不同儀式。
ゆえに具足始と元服は同一視されがちだが別物である。
具足始結束後,接著為討伐退守小谷城之淺井久政,信長率約五萬大軍出陣。
具足始が終われば、次は小谷城にこもる浅井久政を討つべく、信長はおよそ5万もの軍勢を率いて出陣した。
到達北近江後,為信忠舉行初陣式。至此關於信忠的一連儀式告一段落。
北近江に到着し、信忠の初陣式を執り行った。これで信忠に関する一連の儀式は終了したことになる。
「在此情勢下,諸多名將竟仍聚集於此,實在難能可貴」
「この情勢において、よくぞ名だたる武将たちが集(つど)ってくれた」
信長在初陣式上向眾人發話。
信長が初陣式に際して皆へと声を掛ける。
「我等眾臣當密切團結,守護奇妙大人到底,誅滅淺井家,讓諸君目睹成果」
「我ら臣下一同、堅く結束し、奇妙様を守り通し、浅井家を討ち果たしてご覧にいれます」
由於尚未元服,仍以幼名奇妙稱之,但其盔甲姿已具一方武將之風範。
未だ元服していないため、幼名の奇妙で呼ばれているが、甲冑姿は既に一端の武将であった。
平時常帶嚴肅表情的信長,似因後繼者奇妙丸的初陣式順利平和而感到欣慰,面容稍顯緩和。
いつもは厳しい表情の信長も、後継者である奇妙丸の初陣式が穏やかに行われた事が嬉しかったのか、幾分表情が和らいでいた。
「諸位,盡可暢飲」
「みな、呑むがよい」
隨著信長之言,武將們飲下祝酒。接下來將討淺井,但彼等無顯露逞強之色,淺井家已不復昔日勢力,形同風前殘燭。
信長の言葉で武将たちは祝い酒を口にする。これから浅井攻めになるが、彼らに気負いは見られない。もはや浅井家にかつての力はなく、今にも吹き消される風前の灯火となっていた。
朝倉因過去逃避之態度反受其害,在織田家家臣間的評價已由名門墮至孱弱之流。
朝倉もこれまでの逃げ姿勢が災いし、織田家家臣内では名を馳せた名家ではなく、ただの腰抜けにまで評価が下がっていた。
信長認為與敵對國人及本願寺、延曆寺形成之包圍網已解,得以專注於討伐淺井。
信長は敵対する国人たちと本願寺・延暦寺による包囲網も解け、浅井攻めに集中できると考えていた。
當然也明白第二波包圍網正逐步成形,故有必要將淺井與朝倉重創至短期內無法動彈。
無論、第二次包囲網が着々と形成されている事は理解している。それゆえ、浅井と朝倉を暫く動けないほどに叩いておく必要があった。
「館主大人,諸國送來的祝品已到」
「お館様、諸国より祝いの品が届いております」
從小姓手中接過贈答目錄,信長瀏覽一遍後輕輕一笑。
小姓から贈答品の目録を受け取ると、信長はそれに目を通す。全て見終えると信長は小さく笑った。
「顯如與武田都是難以對付的狸」
「顕如も武田も食えぬ狸よの」
向欲以包圍壓制之對手送上祝儀,或是顯示隨時可追回的自信,或示外交禮節與政治態度可分,總之對信長而言頗為有趣。
包囲網で押しつぶそうとしている相手に祝儀を送ってみせる。それはいつでも取り返せるという自信の表れか、はたまた外交儀礼と政治姿勢は別だということか、ともかく信長にとっては面白い話だった。
(要從高處搖落那等自居高位者的立足點,讓我們得以俯視麼。果然,小濃所言也有一理。全部結束時,弄其面目定是好看)
(高見より睥睨している者の足場を崩し、こちらが見下ろしてやる、か。なるほど、確かにお濃の言う事も一理ある。全てが終わった時、奴らの顔が見物よ)
「館主大人,是否有何不便之處?」
「お館様、何か不都合でもございましょうか?」
望著祝儀目錄上的名單,見信長露出奸詐笑容的堀,戰戰兢兢地提出質問。
祝儀の目録にある名前を眺めて、信長があくどい顔で笑みを浮かべている事が気になった堀が、おそるおそる質問を口にする。
「顯如與武田都是難以對付的狸」
「顕如も武田も食えぬ狸よの」
信長將紙卷起投向堀,並再度說出相同話語。接過卷紙的堀不明信長之真意,感到困惑。
対して信長は紙を丸めて堀へと投げ渡すと、先ほどと同じ言葉を口にした。丸められた紙を受け取った堀だが、信長の真意が分からず困惑する。
然而信長對此並未多言。
が、それに対して信長が何か言葉を口にする事はなかった。
「……明明是如此大的杯盞,底下卻只剩少量酒,未免索然無味吧」
「……こんなに大きい盃なのに底に僅かに溜まってる程度しかお酒がないんじゃ味気ないよね」
另一方面,參加信忠初陣式的靜子,正飲著杯中如雀淚般少量的酒。
一方、信忠の初陣式にいた静子は、盃に雀の涙ほど注がれた酒を飲んでいた。
禁酒令尚未解除之她,即便形式上被奉酒,所出之非酒而是水;然因水盞不吉,份量被限制至絕對不會醉之程度,靜子並不知情。
禁酒令が未だ解けない彼女は、形上は酒を出される場でも、酒ではなく水を出されていた。しかし水盃は縁起が悪いため、絶対に酔わない量に制限されていることを静子は知らない。
對信長堅持不讓她飲酒之理由稍感好奇,但亦無特別想飲之念,僅停留在好奇而已。
信長がかたくなに酒を呑ませない理由が若干気になったが、特に酒が呑みたい理由もないゆえ、気になるだけに留まっていた。
「呼呼,既然包圍網已解,實在太好了」
「ふふっ、しかし包囲網も解けて良かったのぅ」
「正是。否則恐難以這般安然舉行」
「左様。でなければこれほど穏やかに行えなかったであろう」
「但不可鬆懈。淺井與朝倉仍健在,一旦放鬆便可能瞬間失地」
「だが油断は禁物。浅井も朝倉も未だ健在。気を緩めれば一気に領土を失う」
武將們的談話傳入靜子耳中。就現狀而言,織田家並無迫近之危機,故此等語氣欠缺緊張感亦屬自然。
武将たちの会話が静子の耳に届く。現状を見る限り、織田家に危機は迫っていないゆえ、彼らの声が幾分緊張感にかけるのは当然の事だ。
她甚至認為,此等緩和的表情與口氣更能欺瞞各方間諜,反而有利。
むしろこの緩やかな表情と口調の方が、各方面の間者を騙せてよいとさえ思った。
(是該認真找出間者了啊。但就算由我出面也難成……誰才適任呢)
(そろそろ真剣に間者の目星をつけておかないとなぁ。でも私がやっても無理だろうし……誰が適任だろうか)
足滿最為適任,然軍事事務已多仰賴他,靜子擔心負擔會不會過重。
足満が一番適任だが、軍事方面は彼に丸投げしているだけに足満の負担が高くなりすぎないか、と静子は懸念していた。
足滿本人有不行就直言之性格,故無需過分擔心,但對靜子而言他是無可取代的家人,故盼盡量避免其負荷集中。
足満本人は無理ならば無理と口にする気性であるため、気遣いは必要ないのだが、静子にとってはかけがえのない家族であり、彼に負荷が集中する事はなるべく避けたいという想いがあった。
(稍後再商議吧。以此決定今後方針)
(後で相談するか。それで今後の方針を決めよう)
下定決心的靜子,只需等待初陣式結束。初陣式一結束,她並非參加討淺井,而是需要返回尾張。
結論を出した静子は、後は初陣式が終わるのを待つだけとなった。初陣式が終われば、彼女は浅井攻めに参加、ではなく尾張に帰還する必要がある。
當然是為了準備與武田作戰。已有幾樣物資聚集在她的倉庫裡。
もちろん武田戦の為の準備に取りかかるからだ。既に幾つかの物資が彼女の蔵に集まっていた。
裡面甚至有新型火繩銃的零件,但那些對慶次等人也是保密的。負責分配行李的彩也不知道裡面是什麼。
中には新型火縄銃の部品まで入っていたが、それらは慶次たちにすら秘密にしていた。荷物の差配をする彩も、中身が何かまでは把握していない。
外人看起來不過是鐵棒和木模而已。就連製造那些的人也沒被告知最終會成為什麼樣子。
何しろ傍目には鉄の棒や木の型にしか見えないからだ。それらを製造している者ですら、最終的な形が何になるかを知らされていない。
(不能掉以輕心,但畢竟是經過數百年研發、洗練出的技術與研究成果。即使是不知道其來龍去脈的人看了,也無法判斷這究竟是什麼。)
(油断は禁物だけど流石に何百年もかけて編み出した技術や研究の末に洗練された到達点だからね。その足がかりすら知らない人達が見ても、何がどういうものか分からないでしょう)
本來把火繩銃按功能拆成部件,並以部件為單位大量生產這種想法,在戰國時代實在太異端,沒有人會想到。
そもそもの話として火縄銃を機能ごとに部品に分解し、それぞれ部品単位で大量に製造する、という考えすら異端過ぎて戦国時代の人間は誰も思いつかない事だった。
當時製造技術是機密中的機密,結構也不為人知。看不到完成形的話,很容易被認為只是某種工具而已。
製造技術は秘中の秘、構造も簡単には知られていない時代だ。完成形が見つからなければ、それは何かの道具程度だと思われやすい。
(很多人就是怕間諜有學識。也正因如此,才無法想到這些看似簡單的事。)
(間者に教養があると困る人が多いのよね。だからこそ、簡単な事に思い至れないのだけど)
想著那些事的同時,靜子把杯中的酒一飲而盡。雖說是酒,僅僅潤潤嘴並不能讓人覺得喝過了似的。
そんな事を思いながら、静子は盃に入っている酒を飲み干す。酒とは言え僅かに口を湿らせる程度では飲んだ気にもならない。
發呆沉思時,賀禮被搬了進來。敵對的顯如、武田信玄的六女松姬、德川等等,各方面送來了各式各樣的東西。
ぼんやりしながら考え事をしていると、祝いの品が運び込まれていた。敵対している顕如や武田信玄の六女・松姫、徳川などなど、各方面から色々なものが贈られていた。
這些贈品無論國內外都價值不菲,但作為受贈者的奇妙丸卻不怎麼高興。
贈り物は国内・国外問わず非常に高価な品々だが、贈られた本人である奇妙丸はあまり喜んではいなかった。
「奇妙,別把心裡話表露出來。」
「奇妙、腹の中は見せるな」
「父上……是、非常抱歉。」
「父上……はっ、申し訳ございません」
旁邊觀望的信長認為他或許把這當成敵方的施捨,於是責備道他還太年輕。被指出後似乎領會了,自此奇妙丸不再在表情上流露心思。
敵からの施しと思ったのだろうか、まだまだ若いなと側で見ていた信長が苦言を呈する。指摘されて理解が及んだのか、それ以降奇妙丸は心中を表情に出さなかった。
初陣儀式結束,正要展開淺井之戰時,靜子接到信長命令,召集全軍不是去攻城,而是返回尾張。
初陣式が終わり、いよいよ浅井攻めという状況になった頃、静子は全軍を集めて城攻め、ではなく尾張帰還を信長より命じられた。
原因是東面形勢不妙,要她去鎮守。這對其他武將來說等於被剝奪了建功的機會,但靜子並未多言便開始收拾返回的準備。
理由は東側がきな臭いので抑え役になれ、である。他の武将から見れば武功を挙げられる機会を奪われている状況だが、静子は特に何も言わずそのまま帰り支度に取り掛かる。
不過因為計畫在虎御前山築城,後方支援部隊中只留下黑鍬衆和部分部隊。
ただし、虎御前山に築城予定があるため、後方支援部隊の内、黒鍬衆と一部の部隊のみ残すこととなった。
「啊─,什麼都不做就回家真讓人提不起勁。」
「あー、何もせず帰宅とか気持ちが萎える」
「沒辦法。織田殿想用我們,但總是只用我們、搶了別人立功的機會也不妥。」
「仕方なかろう。織田の殿様は俺たちを使いたいが、俺たちばっかり使って他の者の武功の場を奪うのも問題だからな」
「我懂啦。好不容易以為能大展拳腳,結果要當鎮壓的角色,心情真提不起來。」
「わかるけどさ。せっかく暴れられると思ったのに、抑え役とか気力がわかん」
慶次安慰著抱怨不滿的長可。既然決定已定,說再多也沒用,不過對長可來說吐槽應該是紓壓方式,靜子便讓他盡情發牢騷。
不平不満を口にする長可を慶次が慰める。今さら何を言っても決定は覆らないのだが、彼としては口に出す事がストレス発散なのだろう、静子は長可に愚痴をとことん言わせる事にした。
這種時候,男人比女人更懂得互相理解心情的時候也有。
こういう時、女より男の方が気持ちの理解が良いという事もある。
「那麼,準備一結束就返回尾張。之後我們照常訓練。雖然日子沒什麼變化,但這些訓練總有一天會派上用場,大家加油努力。」
「さって、準備が終わったら尾張に帰還。その後、私らはいつもの様に訓練。代わり映えしない日々になるけど、この訓練がいつか役立つので頑張ってやっていきましょう」
「是!」
「はっ!」
長可與慶次以外的武將們回應。靜子軍自宇佐山城之戰已大幅恢復,現在已成為數萬之眾。
長可と慶次以外の武将格の面々が返事をする。静子軍も宇佐山城の戦いからだいぶ回復し、今では万を数える軍となった。
不過靜子親自指揮的兵力約二到三千,長可、慶次、才藏、高虎、足滿這五人各自帶領一到二千兵。
とはいえ静子本人が動かす軍は2から3000程度で、長可、慶次、才蔵、高虎、足満の5人がそれぞれ1、2000の兵を動かしている。
加上後方支援部隊,整體實力與其他有力武將不相上下。信長要把建功機會讓給別人的說法也可理解。
それに後方支援部隊を足せば、他の有力武将と同等の勢力となる。信長が武功の場を他に譲るよう言ったのも納得できる勢力だ。
「喂,靜子。我來送行了喔。」
「よぅ、静子。見送りに来てやったぞ」
會議一結束,奇妙丸便來到靜子面前。
会議が終わると同時、静子の元に奇妙丸がやってきた。
「這是奇妙大人。來送行真是過意不去。不過獨自一人不帶隨從,實在不妥。」
「これは奇妙様。お見送りとは恐れ入ります。しかし、伴を連れずとは不用心でございます」
「別這麼客套,別拘謹。被你那樣說……那個,感覺怪怪的。」
「やめろ、畏まるな。お前にそう言われても……その、なんだ。気味が悪い」
「說得也太過分了。不過至少要帶上護衛。咱們會派幾個人,回程就有護衛陪同回去。」
「酷い言われようだ。でも護衛ぐらいつけて来なさい。うちから何人か出すから、帰りは護衛をつけて帰りなさい」
說完靜子便指示玄朗挑選幾名護衛。聽到這話的奇妙丸露出沮喪的表情。
言うやいなや静子は玄朗に護衛の兵を何人か見繕うよう指示した。それを聞いていた奇妙丸はげんなりした顔をする。
「護衛那麼拘謹。我想好好放鬆一下啊。」
「護衛とか堅苦しい。俺はゆっくりしたいぞ」
「如果當館主的繼承人在初陣就倒下,不只是館主,周圍的武將也會被罵得沒臉,背上不名譽,你知道嗎?」
「お館様の後継者に初陣で倒れられでもしたら、お館様はもちろんの事、周りの武将も不甲斐ないと謗(そし)られ不名誉をかぶるのよ?」
初陣儀式舉行得很隆重,因此信長的敵對者密謀暗殺奇妙丸也不足為奇。
初陣式は派手に行われたゆえ、信長に敵対する面々が奇妙丸の暗殺を企てても不思議ではない。
畢竟奇妙丸從出生起就已被內定為信長的繼承人,而今天則首次正式確定。
何しろ奇妙丸は生まれた時から、信長の後継者になる事が内定していたが、今日初めて確定したのだ。
失去繼承人在戰國時代是生死攸關的問題。就算信長子女眾多,說句不中聽的,沒有人能勝任奇妙丸的位置。
後継者を失う事は、戦国時代において死活問題になる。いくら信長が子沢山でも、言っては悪いが奇妙丸の代わりが務まる人間はいない。
「知道了、知道了。真是的,難道連我的武藝都不被信任嗎。這副甲冑有導入你的新技術(……)吧?」
「わーかった、わーかった。ったく、そこまで俺の腕は信用ないかね。この甲冑、お前の新技術(・・・・・・)が導入されているのだろう?」
「……嗯,大概是這樣。不過不要過於自信。人要死的時候真的會很乾脆地死去。」
「……まぁそうだけどね。でも、過信は禁物だよ。死ぬときはほんっとにあっさり死ぬからね」
若照史實,奇妙丸能活到本能寺之變。然而,現在的歷史已經開始與靜子所學的史實不同了。
史実通りならば、奇妙丸は本能寺の変まで生きる。しかし、今の歴史は既に静子が学んだ歴史から変わってきている。
有時因為一個意外的契機,本應死去的人活了,而本該活著的人卻會死去。
ふとしたきっかけで本来死ぬはずだった人が生き、生きるはずの人が死ぬ場合もあり得る。
想到這一點,奇妙丸為所欲為的行為,對靜子來說也不可能輕易置之不理。
それを考えれば奇妙丸が好き勝手動くのも、静子にとっては容易に看過出来ることではなかった。
「嘛,我也不想在初次出陣就傻乎乎地死掉。這次還是聽靜子的建議吧」
「ま、俺も初陣で間抜けに死にたくはない。ここは静子の助言を聞き入れよう」
因為少見地靜子再三叮嚀,奇妙丸便接受了她的意見。之後他收斂了隨性的態度,在玄朗帶來的護衛包圍下返回本陣。
珍しく静子が念を押す事が気になり、奇妙丸は静子の意見を聞き入れた。彼はその後、自由気ままな態度をやめ、玄朗が連れてきた護衛に囲まれて本陣へと戻っていった。
「好了,我這邊要回尾張了」
「さて、こちらは尾張へ戻るよ」
「在那之前,能否稍微占用您一些時間,靜子殿?」
「その前に、少しばかりお時間を頂けませんか、静子殿」
正要回家,卻又被打斷。帶著些許無奈轉頭望向聲音來源,見到的是微笑的竹中半兵衛。
今度こそ帰宅、という所でまた邪魔が入った。呆れ気味に声のした方へ顔を向けると、そこにはにっこり笑顔の竹中半兵衛がいた。
「有一件小事讓我有點放心不下」
「少しばかり気に掛かることがございまして」
不顧靜子的視線,竹中半兵衛一邊把手中的紙張晃動,一邊低聲說道。
静子の視線を気にせず、竹中半兵衛は手に持っている紙をひらひらさせながら呟いた。
因為與竹中半兵衛進行了「交談」,靜子回尾張的行程晚了約半天。不過如今武田與本願寺並未有明顯動作,所以並無太大影響。
竹中半兵衛と「話し合い」をしたため、静子は尾張への帰還が半日ほど遅れた。しかし、今は大きく目立って武田や本願寺が動いていないため、特に影響はなかった。
七月二十一日,信長一旦整備完畢,便命柴田、佐久間、丹羽與秀吉進攻雲雀山(ひばりやま)與虎御前山(とらごぜやま)。他們焚毀城鎮,如火一般猛攻。
七月二十一日、信長は準備が整うと柴田や佐久間、丹羽、秀吉に雲雀山(ひばりやま)と虎御前山(とらごぜやま)を攻めるよう命じる。彼らは町を焼き払い、火のように攻め立てた。
也向阿閉貞征守衛的山本山城派兵,但阿閉貞征已經通敵於織田,這不過是為了不讓內通之事被揭穿而做的欺瞞伎倆。
阿閉貞征が守る山本山城にも兵を差し向けたが、すでに阿閉貞征は織田側に内通しているため、これは内通を悟られないための欺瞞工作に過ぎなかった。
二十三、二十四日,於靠近越前的邊境一帶,將策劃一向一揆的寺社與村落悉數焚燒。在這場戰鬥中,附近的居民與僧侶被織田軍討伐。
二十三、二十四日には越前との国境付近を中心に、一向一揆を企てた寺社や村々をすべて焼き払った。この戦いで近隣の住民や僧が、織田軍によって討ち取られる。
同時以光秀為中心,從琵琶湖方向向上進攻,阻斷一向宗等人的增援。
同時に光秀が中心となり、琵琶湖方面から攻め上がり一向宗たちの増援を阻む。
順利擊潰敵勢的信長在二十七日命人於虎御前山築城。迅速完成周邊偵察後,黑鍬衆進入虎御前山開始築城作業。
順調に敵勢力を討ち取っていった信長は、二十七日に虎御前山へ築城を命じる。手早く周辺の探索を済ませると、黒鍬衆たちが虎御前山に入り築城作業を始める。
看著城池每日成形,久政只能乾瞪眼地旁觀。
一日経つごとに城が形作られていく様を見ても、久政には指を咥えて見守ることしか出来なかった。
因為他已無力驅逐織田軍,攻擊只會被反擊取勝,這點昭然若揭。
すでに織田軍を追い払える兵力はなく、攻めても返り討ちにされるのが目に見えているからだ。
他與其他勢力被隔斷陷入孤立,認為無可奈何,遂向朝倉散佈假情報以求援軍。
他勢力とも分断されて孤立状態の彼は、ここに至ってはやむなしと判断し、朝倉に偽の情報を流して援軍要請をした。
被久政偽情報所騙的朝倉義景誤以為信長正因長島一向一揆之起而陷入危機,於是親自率領一萬五千兵出發往越前。
信長は長島一向一揆の蜂起で危機に陥っている、という久政の偽情報に騙された朝倉義景は自ら1万5000の軍を率いて越前を出発する。
然而,一到近江得知織田軍仍然健在後,他們便在大嶽山(おおずくやま)佈陣,隨即固守不出。
しかし、近江に到着し織田軍が健在な事を知るや否や、大嶽山(おおずくやま)に陣をはってそのまま引きこもってしまった。
在他們浪費時間之際,虎御前山的築城仍然順利進行。雖有數處設施尚未完工,但堅固的防禦城牆等主要設備已經投入運作。
彼らが時間を浪費している間にも、虎御前山の築城は順調に進んでいた。幾つかの施設が完成していないが、堅牢な防御壁など主要な設備は既に機能していた。
看到黑鍬衆既迅速又紮實的手腕,信長頗為滿意;反觀淺井與朝倉為找不到可乘之機而焦躁不安。
手早く、されど着実に仕上げていく黒鍬衆の手際を見て信長はご満悦だ。一方、浅井も朝倉も付け入る隙が見当たらない事に地団駄を踏む。
對峙持續之際,朝倉一方出現變動。或許因看不下去八月仍不阻撓築城的朝倉義景,朝倉家家臣前波長俊父子倒戈投向織田。
睨み合いが続く中、朝倉側に動きが出た。八月に入っても築城の妨害・阻止をしない朝倉義景を見限ったのか、朝倉家家臣の前波長俊父子が織田へ寝返る。
前波長俊投降的翌日,不知是因看不慣朝倉義景的搖擺態度而憤怒,還是利用倒戈的前波長俊策動,富田長繁、戶田與次、毛屋猪介等朝倉家家臣接連投向織田。
前波長俊が寝返った翌日、日和見な態度の朝倉義景に業を煮やしたのか、それとも寝返った前波長俊を使って調略したのか、富田長繁や戸田与次、毛屋猪介など朝倉家家臣たちが次々と織田方へ寝返った。
「如此多的倒戈,反而沒什麼趣味了呢,父上」
「こうも寝返りが多くなると、面白みがないものですな、父上」
自初陣典禮後雖無顯著出擊,奇妙丸仍為按計畫的順利進軍感到得意;然而信長聽到他的話只是淡淡一笑。
初陣式以降、目立った出撃はないものの、予定通りの快進撃を続けている事に奇妙丸は気を良くしていた。しかし、信長は奇妙丸の発言を聞いて小さく笑みを浮かべた。
「你真年輕,奇妙。正當對手被逼入絕境時最是危險,窮鼠會咬貓的。」
「若いな、奇妙。相手が追い詰められた時こそ危ういのだ、窮鼠は猫を噛むものよ」
「不過朝倉仍然固守不出,淺井也沒顯著動作。難道不能認為這是一場單方面的勝利嗎?」
「しかし、朝倉は引きこもったまま、浅井も目立った動きは見せません。一方的な勝利と考えてもよろしいのではないでしょうか」
「正因為如此。」
「だからこそじゃ」
奇妙丸不懂信長話中之意,歪了歪頭;信長苦笑道:此等要訣非積累實戰經驗無法磨練。
信長の言葉の意味がわからず、奇妙丸は首を傾げる。この辺りの勘所は実戦経験を積まねば磨かれぬか、と信長は苦笑する。
「淺井與朝倉固然會有逃跑的士兵,但留下來的士兵已是背水一戰,變為死兵向我等撲來。你也知道死兵的可怕;從前我軍中也有化為死兵奮戰之人。」
「浅井も朝倉も逃げる兵は出よう。だが、残った兵はもはや背水の陣、死兵となりて我らに襲いかかる。死兵の強さは貴様も知っていよう。かつて、我が軍にも死兵となり戦った者たちがいるのだからな」
「啊……」
「あ……」
這時奇妙丸終於領會信長的真意。若過度將對手逼入絕境,對方就會只在前方尋找生路而不擇手段,可能因此遭受沉重的反撲。
そこでようやく奇妙丸は信長の真意に気付く。相手を不用意に追い詰めすぎれば、ただ前方のみに活路を見出し必死になるため手痛いしっぺ返しを食らうこともある。
古今中外,死兵若為己方則可倚賴,若成為敵方則極其棘手。
古今東西、死兵というものは味方であれば頼もしいが、敵となれば厄介極まりない存在だ。
「正是。朝倉或淺井的士兵一旦成為死兵,便可能襲擊我等。敵人越少越令人生畏。這種畏懼並非懦弱的證明,反而會成為帶來勝利的力量。」
「そうじゃ。朝倉や浅井の兵が死兵となりて、我らに襲いかかる可能性がある。敵が少なくなればなるほど、敵を恐れるのじゃ。その恐れは臆病者の証ではない。その恐れが勝利をもたらすものになる」
「佩服父上深謀遠慮,淺學非才的我自愧不如,今後當更加努力。」
「お父上の深謀遠慮には恐れ入ります、浅学非才な己を恥じて一層励みまする」
「好,誰都會犯錯。重要的是承認錯誤,知道自己的未熟,並以此為養分成長。那些隱瞞失誤,甚至推諉於人的傢伙,一生也不會成長,這種人早點斬除為上。」
「よい、間違いは誰にでもある。大事なのは間違いを認め、己の未熟さを知り、それを糧に成長する事じゃ。己の失態を隠し、あまつさえ他人に押し付けるような輩は、一生かかっても成長せん。そんな奴は早々に斬り捨てる方がよい」
說罷斷了話,信長召集武將們向他們宣告。
そこで話を打ち切ると、信長は武将たちを集め、彼らに宣言した。
「對峙還會持續一陣子,不要擔心。機會很快就會來臨。」
「しばし睨み合いが続くが心配するな。すぐに機会はやってくる」
進入八月後情勢稍有動搖,但織田與淺井、朝倉之間仍陷入膠著狀態。
八月に入って少し状況が動いたが、相変わらず織田と浅井・朝倉の間は膠着状態に陥っていた。
信長多次向朝倉挑戰決戰,但義景完全不應戰。信長一邊嘲弄他的膽怯,一邊留下秀吉後轉往橫山城。
信長は何度か朝倉に決戦を申し込むが、義景は全く応じなかった。その臆病っぷりを揶揄しながら、信長は秀吉を残して横山城に移動する。
即便只剩下秀吉的軍隊,淺井與朝倉仍然沒有任何動靜。
秀吉軍のみになっても、相変わらず浅井・朝倉に動きはない。
「哎呀哎呀,淺井也好朝倉也好,整天閉門不出,真無聊」
「やれやれ、浅井も朝倉も、引きこもってばかりでつまらぬ事です」
收到定時報告的秀長聳了聳肩抱怨道。他覺得光是互相盯著看已經有些膩了。當然,並不只有他一人這麼想。
定時報告を受け取った秀長が、肩をすくめながらぼやく。単なる睨み合いも飽きてきたと彼は思っていた。無論、そう思っているのは彼だけではない。
「主公怎麼說?」
「お館様は何と」
「仍舊只吩咐監視,切勿鬆懈。真不知為何不乾脆一舉攻下呢」
「変わらず監視だけに留め、注意を怠るな、ですよ。どうして、一気に攻め落とさないのでしょうかねぇ」
秀長看向同樣收到定時報告的竹中半兵衛,雙臂交叉。他看起來像是想問點什麼,但竹中半兵衛沒有作聲。
同じく定時報告を受けた竹中半兵衛を見ながら、秀長は腕を組む。何かを聞きたがっている風に見えたが、竹中半兵衛はそれに対して何も答えなかった。
信長在將有大事發生之前,不願輕易減少兵力。正因為明白這點,竹中半兵衛才故意採取看似消極的戰略。
信長としてはこれから起こる大事を前に、可能な限り兵を減らしたくなかった。それがわかっているからこそ、竹中半兵衛はあえて消極的に見える作戦を取り続けた。
「本以為若我們示弱,他們會藐視而出……但出乎意料,朝倉似乎根本沒看清周遭情勢」
「こちらが弱気を見せれば、彼らは侮って出てくると思ったのですが……思いの外、朝倉は周りが見えていないようです」
「哈哈,這評語很嚴厲。不過,多虧他那弱腰,已經有好些人倒向我們。希望他們能一直維持這樣。當然,作為武將也想立點功名」
「ははっ、これは手厳しい。ですが、彼の弱腰のおかげで、こちらに寝返った人間は何人もいる。ここは一つ、ずっとそのままでいてほしいものですな。無論、武将としての手柄は立てたい所ですが」
「你的心情我很理解,但——」
「お気持ちはよくわかります。ですが――」
當竹中半兵衛正要說話時,粗重的腳步聲傳入他的耳中。秀長也同樣注意到了腳步聲。
竹中半兵衛が何か言おうとした時、荒々しい足音が彼の耳に届く。彼だけではない、秀長の方も足音に気付いた。
在這個地方,能發出讓人清楚聽見那種粗重腳步聲的,只有一人。
今いる場所で、誰かの耳に届くほど荒い足音を立てられる人間は一人だ。
「我回來了——真是,跑去打招呼真累人啊」
「今戻ったぞー。全く、挨拶まわりは疲れるのぅ」
「歡迎回來,兄長」
「おかえりですぞ、兄者」
是秀吉。他隨便找處坐下,命小姓去端茶來。
秀吉である。彼は適当な場所に腰を下ろすと、小姓へ茶を持ってくるよう命じた。
「那麼,淺井、朝倉有動靜嗎?」
「で、浅井・朝倉に動きはなしか?」
秀吉苦笑著問,彷彿不問也知道答案。秀長點頭回應,秀吉看了便故意嘆了口氣。
問わずともわかっているのだろうか、秀吉は苦笑しながら質問する。その問いに秀長が頷いて答えた。それを見た秀吉はこれみよがしにため息を吐く。
「淺井還可以理解,可朝倉到底來幹嘛?他們就這樣閉門不出,等到冬天是不是就打算回越前?」
「浅井はわかるが、朝倉は何しに来たって話だ。あいつら、このまま引きこもって、冬になれば越前へ戻るつもりか?」
「那是最有可能的。冬天道路會被雪封住,屆時他們就無法返國,得等到雪融才能回去」
「その可能性が一番高いかと。冬になれば道が雪で塞がりますからね。そうなれば、彼らは雪解けを迎えるまで帰国できなくなります」
「真叫人受不了。哦,辛苦了。把茶放下就可以退下了」
「やっておれんのぅ。お、ご苦労。茶をおいたら下がってよいぞ」
談話正中,小姓端了茶進來。秀吉從飯桌上取過杯器,一口喝下。雖談不上涼,但對四處奔走的身子來說,微溫的茶也是款待。
話の途中で小姓が茶を持ってきた。秀吉はお膳から器を手に取ると、そのまま一口飲む。冷えているとは言い難いが、あちこち歩き回った体にはぬるい茶でも馳走だった。
「總之,館主囑咐不可疏忽監視。我等便依命行事。身體或許會懈怠,那也無妨,要適度運動保持」
「ま、お館様は監視だけは怠るな、と仰ったのだ。我々は、その命令に従って動くのみ。体がなまるかもしれぬが、それはそれ。適度に運動をするようにしておけ」
「知道了」
「承知しました」
「知道了,兄長」
「承知した、兄者」
「好,話到此為止。說說今晚的晚餐吧。久違地有靜子的廚房幫手在,按理說難免會有期待,不是嗎?」
「よぅし、話はこれでお終いだ。さて、今日の夕餉は何かの。久々に静子の台所衆がおるのだ。期待してしまうのも、無理はなかろう?」
對秀吉的話,秀長與竹中半兵衛只能無奈苦笑。
秀吉の言葉に、秀長と竹中半兵衛は苦笑するしかなかった。
另一方面,被排除在淺井與朝倉攻擊之外的靜子回到尾張後解散了部隊。八月天氣炎熱,訓練雖然較為緩和,但也談不上輕鬆。
一方、浅井・朝倉攻めから外された静子は、尾張に帰国すると軍を解散させた。八月は暑い時期なので、訓練自体は緩やかだが軽いとは言い難い。
然而,像慶次與長可這類身為武將的人就不同了。他們肩負責任,必須常受嚴格訓練,內容更像是折磨而非單純訓練。
しかし、慶次や長可たち武将格は別だ。彼らは責任ある立場なので、常に厳しい訓練を受けておく必要がある。だが内容は訓練というよりシゴキに近かった。
特別是長可由森可成親自指導,那猛烈程度連旁觀者都感到不安。
特に長可は森可成が直接稽古をつけていた。その凄まじさは見ている方が不安になるほどだった。
「什麼,那懦弱的姿勢是怎樣!以那種姿勢還想斬敵人嗎!!」
「なんだ、そのへっぴり腰は! そんなもので敵を討ち取れると思っているのか!!」
「會、會死……不,才不會死!」
「し、死ぬ……いや、死んでたまるか!」
「防守太鬆了!」
「脇が甘い!」
「嗚哇!」
「ぐえっ!」
長可拼命迎上,但可成毫不留情地把他擊倒。長可發出像青蛙被壓扁般的慘叫,倒在地上。
必死で食らいつく長可だが、可成は容赦なく彼を叩き伏せる。カエルが潰れたような声を上げながら、長可は地面に倒れ伏す。
「你屢屢犯同樣的錯,但你並非能用腦子記住的巧手。全部用身體記住。放心吧,不論你忘幾次,我都會一次次把它打進你身體裡」
「何度も同じ失敗をしているが、貴様は頭で覚えるような器用な真似はできぬ。すべて体で覚えよ。安心しろ、何度忘れようとも、そのたびにわしが体に叩き込んでやる」
「哪、哪裡有什麼安心的要素……可惡! 既然如此就憑氣勢也要從老子那拿下一招!」
「ど、どこに安心できる要素が……こなくそ! こうなったら意地でも親父から一本取ってやる!」
「好大的氣勢,但身體跟不上啊!!」
「よい気迫だ。だが体がついてきておらんぞ!!」
「咳!」
「げほ!」
長可的攻擊被可成輕巧避開後,可成便對那個漏洞百出的身體狠狠出了一擊。是否致命不明,但長可不顧旁人的目光,在地上翻滾哀嚎。
長可の攻撃を軽くかわすと、可成は隙だらけになった彼の体に痛烈な一撃を叩き込む。致命的な打撃だったのか、長可は周囲の目も気にせず地面でのたうち回る。
但可成並不太在意,發動追擊。長可雖然在千鈞一髮之際躲開,但誰看都知道他滿身創痍。
だが可成はさして気にせず追撃を仕掛ける。すんでのところで回避した長可だが、誰が見ても満身創痍なのは明らかだった。
可成肩膀受傷已退出前線,但看了眼前景象,仍讓人覺得他或許可以被託付戰場重任。
可成は肩を負傷して一線からは退いた身だが、今の光景を見れば今でも戦場を任せられるのではと思えた。
「怎麼了,若連個老糊塗一人都打不倒,你連一名士兵都當不上啊」
「どうした、耄碌爺一人倒せぬようでは、貴様は一兵卒にすらなれんぞ」
「哪、哪裡糊塗了我倒想知道。但現在再哭喊也沒用……今天一定要給你一擊啊啊啊啊啊!!!」
「ど、どこが耄碌しているのか聞きたい。が、今は泣き言言っても仕方ねぇ……今日こそ一本取ってやらぁぁぁぁぁ!!!」
長可把口裡的血吐出,衝向可成。雖然只是逐漸能與可成較長時間交鋒,但在單挑的攻防上,可成更勝一籌。
口の中にある血を吐き捨てると、長可は可成に突撃する。少しずつではあるが、可成と長く打ち合えてはいた。しかし一騎打ちの駆け引きにおいては可成が一枚上手だった。
「太天真!!」
「甘いっ!!」
「嗚哇!」
「ぐえぇ!」
結果,今天長可還是沒從可成手中拿下一招,訓練就此結束。
結局、今日も長可は可成から一本も取れず訓練を終えた。
當信長攻打淺井・朝倉時,武田正熱心蒐集情報。不只是敵方織田軍,連本願寺以及淺井、朝倉這些一方也都在調查之列。
信長が浅井・朝倉攻めをしている頃、武田は熱心に情報収集を行っていた。敵の織田軍はもちろん、味方側の本願寺や浅井・朝倉も同様に調べていた。
「一切都如御屋形大人的預見在運行,佩服您的慧眼」
「全て御屋形様の読み通りに動いております。ご慧眼、恐れ入ります」
「他們對我不過是將棋上的棋子罷了」
「奴らはわしにとって将棋の駒に過ぎん」
說著信玄把報告書往旁邊一丟。那些他已知的報告,他覺得沒有再次確認的必要。
言いながら信玄は報告書をその辺へ捨てていく。すでに分かっている報告を、彼は改めて確認する必要を感じなかった。
對於信玄一份接一份地讀完就丟,家臣們既懼且畏。無論調查得多麼徹底,彷彿那樣的報告內容上來就是注定的。
次々と報告書を読み捨てる信玄に、家臣たちは恐れ慄いていた。どれほど調べ上げた内容も、「その内容で報告が上がってくる事」が、まるで決まっているかのように見えるからだ。
正當大家以為一切都會被丟掉時,信玄在拿起其中一份報告書時停下了動作,打開報告開始確認內容。
全て捨てられると思っていた矢先、信玄は一つの報告書を手に取った所で動きを止めた。そのまま報告書を広げて中身を確認する。
信玄罕見的舉動在家臣間引起動搖,但信玄無視周遭反應開口道。
信玄の珍しい行動に家臣たちの間に動揺が広がる。だが、信玄は周りの反応を無視して言葉を口にする。
「回國了」
「帰国した、と」
「哈?哈,這次織田攻淺井,近衛的女兒被撤下了。雖然她參加了嫡男的初陣儀式,但一結束就……」
「は? はっ、此度の織田の浅井攻め、近衛の娘は外されました。嫡男の初陣式には参じましたが、それが終わると同時に……」
「讓她回國的理由是什麼?」
「帰国させた理由はなんだ」
「據說是因為近衛的女兒建功太多,為了消除周圍的不滿才如此處置」
「近衛の娘は武功を立てすぎたため、周りの不満を解消するためと言われております」
信玄對家臣說的理由並不滿意。以信長的性格,反而會讓靜子多建些武功,以激勵周圍的將領們。
家臣が言った理由に信玄は納得しなかった。信長の性格なら逆に静子にもっと武功を挙げさせて、周囲の武将たちに発破をかける方だ。
信玄認為理所當然的是,『因建功過多而被撤出前線』只是表面說法,本音一定隱藏在其他地方。
武功の立て過ぎで前線から外した、など建前で本音がどこかに隠れていると考えて当然、と信玄は思っていた。
(又是近衛的女兒啊,織田這傢伙……在想些什麼。那女孩究竟隱藏著什麼力量)
(また近衛の娘か、織田め……何を考えておる。そしてその娘に、どんな力が隠されているのだ)
催促間者去收集靜子的情報,卻收穫不佳。不論從哪裡探聽,關鍵資訊都無法取得。
間者たちに発破をかけて静子の情報収集をさせたが、集まりは芳しくなかった。どこへ探りを入れても、どこからも肝心の情報が手に入らなかった。
周遭有人低語她是仁比売 (ニヒメ)的繼承者等說法,但信玄看穿仁比売的存在本身就是信長的調略。
周囲は仁比売 (ニヒメ)の後継者、などと呟いていたが、仁比売の存在そのものが信長の調略だと信玄は見抜いていた。
「(織田那小子還真能幹。但若做多餘之事,反而會擴大周遭的疑慮)那個所謂的足滿怎麼樣了?」
「(織田の小僧にしてはやる。だが、余計な事をすれば、それは逆に周囲へと疑惑を広げる)足満とやらの方はどうなっておる」
「哈……這人真是無法對付,完全不肯聽從。他技藝超群,曾試圖以武力拉攏,卻反被擊退。」
「はっ……これがどうにもならぬ男で、全く話を聞こうとしません。卓越した技の持ち主で、力ずくで取り込もうとして返り討ちにあいもうした」
「快點解決。若足滿真是例那人,棋子的價值會提升」
「早く片付けろ。足満が例の者ならば駒の価値が上がる」
說完信玄便把家臣打發走。家臣匆匆離去,隨即又有另一名家臣前來信玄面前。
それだけ言うと信玄は家臣を追い払う。家臣はそそくさと立ち去り、それと入れ替わるように別の家臣が信玄の元へやってきた。
「向御屋形大人報告!」
「御屋形様にご報告!」
「不要多說,我已經知道了」
「みなまで言うな、分かっておる」
「是、是!」
「は、はっ!」
在還沒說出報告前就被看穿,家臣露出驚愕的表情。但很快伏地後把報告書放在膳上,匆匆離開房間。
報告を言う前に全てが見抜かれた事に、家臣は驚愕の表情を浮かべる。だがすぐに平伏すると、報告書を膳においてそそくさと部屋から出ていった。
信玄連放著的報告書都不看,陷入沉思。
置かれた報告書を見向きもせず信玄は思案にふける。
(一切本該都如棋譜所示。那這份胸中的不安到底是什麼)
(何もかも棋譜通りのはずじゃ。なのになんだ、この胸騒ぎは)
信玄感到喉間像卡著魚骨般的不適,為了消除那感覺他四處尋找原因。然而再怎麼思考,胸中的迷霧依然無法散去。
喉に引っかかる魚の骨のような違和感を信玄は感じていた。それを消そうと彼は原因を探る。しかし、いくら考えても胸のもやもやが晴れる事はなかった。
足滿獨自一人行走,不帶同伴。近來就連自己周遭也有間諜徘徊,獨自處理那些人反而更方便。
伴も連れず足満は一人歩いていた。最近では自分の周りですら間者がうろついているため、連中を処分するのは一人の方が手軽だからだ。
走在一段整修過的路上,前方看到人影。眯眼細看,是一名女子獨自哭倒在地。
しばらく整備された道を歩いていると、前方に人影が見えた。目を細めて詳しく見ると、女が一人泣き崩れていた。
在足滿眼裡她不過是路邊的一塊石子。他面色不變,步伐不緩,從啜泣的女子旁冷漠走過。
が、足満から見れば道端に転がる石ころレベルだ。顔色一つ変えず彼は歩調を緩めず歩く。そしてシクシクと泣く女の横を素通りする。
走了十步後,女子的哭聲消失了。確切地說,她停止了假哭。
10歩歩いた所で女の鳴き声が消えた。正確には嘘泣きをやめた、という事だ。
「連女人的淚水都視若無睹啊。真如傳言所說的男人呢」
「女の涙にすら素通りか。噂通りの男だね」
足滿停下腳步卻沒有回頭,卻察覺到在身後坐在地上的女子慢慢站了起來。那女子對不回頭的足滿並無特別不滿,繼續說話。
足満は足を止めるが振り返りはしない。だが背後で地面に座っていた女が、ゆっくり立ち上がるのを察する。女は振り返らない足満に、とくに不満もなく言葉を続ける。
「我等從御屋形那裡有話要說。該是你收下這封信的時候了吧」
「我らが御屋形様から話がある。いい加減、文を受け取って欲しいものだね」
足滿終於回頭。女子對回頭的足滿露出滿意的笑容,從懷中掏出那封信,遞給他。
そこでようやく足満は振り返る。女は振り返った足満に満足げな笑みを浮かべながら、懐に入れていた文を取り出し、彼に差し出した。
足滿像搶奪似地抓過信,毫不遲疑地撕碎丟棄。把撕成碎片的信扔掉後,他一拳打向愣在那裡的女子臉。
奪うようにして文を手にとると、足満は間をおかず文を破り捨てる。ビリビリに破った文の破片を捨てると、呆然としている女の顔に拳を叩き込む。
「你是什麼垃圾。垃圾也配說人話嗎」
「何だ、このゴミは。ゴミの分際で人の言葉を喋るのか」
他抓住被打飛、因疼痛發出呻吟的女子的頭髮,拖向附近的一棵樹幹。
殴り飛ばされ、痛みで苦悶の声を上げる女の髪を掴むと、近くにあった木の幹まで引きずる。
女子牙齒斷裂、鼻中流血、被拽髮的痛楚仍在,但當她看到眼前的樹幹,似乎理解了接下來會發生什麼,臉色瞬間變得蒼白。
歯が折れ、鼻から血を流し、髪を引っ張られる痛みを味わっていた女だが、視界に入った木の幹で、これから彼が何をするか理解したのか、顔色が一気に青くなる。
「停、停下……」
「や、やめ……」
女子說不出最後一句話,因為足滿已把她的臉摔向樹幹。不只一次,兩次、三次地把她的臉撞向樹幹。
女は最後まで言い切れなかった。その前に、足満が女の顔を木の幹に叩きつける。1回だけではない、二度、三度と女の顔を木の幹に叩きつける。
當破裂聲變得濕潤時,他鬆開了抓著的女子頭髮。女子面朝下撲在混有血液、體液與肉片的水窪中。
砕ける音が水っぽい音に変わったころ、掴んでいた女の髪を離す。血と体液と肉片の混ざった水たまりに女は顔から突っ伏す。
足滿冷冷地俯視著只能在地上抽搐的女子。等她的抽搐停止時,他對她失去興趣,就那樣把屍體放著離開了。
その場で痙攣するだけの女を、足満は冷たい目で見下ろす。やがて女の痙攣が止まったころ、足満は女に興味を失い、そのまま放置してその場を去った。
足滿離開後過了一會兒,兩名男子不知從何處出現,悄悄走向女子的遺體。
足満が立ち去ってからしばらく時間が経った頃、どこからともなく男が二人姿を現した。男たちは静かに女の元まで歩み寄る。
其中一人把手按在女子的脖子上,然後搖了搖頭。
一人が女の首に手を当て、そして首を横にふった。
「不行啊」
「駄目だな」
「比聽說的還要冷酷。就算是女人,只要是敵人也無所謂,是嗎」
「聞きしに勝る冷酷さ。女であれ敵ならば関係なし、か」
兩人互看點頭後,把女子的屍體移到不顯眼的地方。雖然她身上沒帶任何能顯示身分的物件,但也不能就那樣把屍體放著不理。
男たちは互いに顔を見て頷くと、女の死体を目立たない位置に移動させる。身分を示すものは何ひとつ持たせていないが、死体を放置する訳にもいかなかった。
「得想下一步的辦法啊」
「次の方法を考えなくてはな」
清理好屍體的一人喃喃道,但另一人沒回話。疑惑的那人轉頭看向同伴,眼前展開了驚愕的景象。
死体を片付け終えた男の一人が呟いた。しかし、その言葉にもう一人の男は答えなかった。疑問に思った男が、片割れの方へ顔を向けると、そこには驚愕の光景が広がっていた。
「若計畫失敗,能多快從現場撤離就是生存的關鍵」
「作戦が失敗した場合、どれだけ素早く現場から逃げられるかが生存の秘訣だ」
對著露出驚愕表情的男子,足滿面不改色地說話。那人的同伴的脖子已被扭到非正常的方向。
驚愕の表情を浮かべる男に、足満は顔色一つ変えず言葉を発する。男の片割れは首が普通では曲がらない方へ曲がっていた。
「是武田的垃圾,還是北條的渣滓。不管是哪方,敢在我周圍打探的人——」
「武田のゴミか、それとも北条のクズか。どちらにせよ、わしの周りを嗅ぎ回っている者は」
話音未落,足滿便斬殺了那人。迅雷不及掩耳的一擊把還在愣神的男子連骨帶肉斬開。
言い終えると同時、足満は男を斬り捨てる。電光石火の抜き打ちが、未だ呆然としている男の体を骨ごと斬り裂いた。
「無一例外全數殺光,早晚你們的同夥也會跟來。安心去死吧」
「例外なく殺す、いずれ仲間も後を追おう。安心して死ね」
男子的屍體像間歇泉般噴出鮮血,但足滿默默收刀,平靜地離去。留下的只有三具屍體。
男の体から血が間欠泉のように噴き出すが、足満は無言で刀を仕舞うと静かに立ち去った。後に残されたのは3つの死体だけだった。
靜子軍的人們順利完成訓練。她知道間者在遠處監視,但靜子認為即使訓練內容被知曉,也不會造成太大問題。
静子軍の面々は順調に訓練をこなしていた。遠巻きに間者が監視している事は知っているが、訓練内容自体が知られても、大して問題にはならないと静子は考えていた。
說到底,間者無法理解靜子對士兵所施加的訓練究竟為了什麼。把不理解的事回報上去只會引起更多混亂,無法掌握重點。
そもそもの話になるが、間者は静子が兵士に課している訓練が、一体何を目的としているか理解できない。理解できないものを上に報告されても、余計に混乱するだけで要領を得ない。
這類似於預言者使用含糊模糊、可被任意解讀的表述。
これは予言者が何とでも受け取れるあやふやな表現を用いるのと似ている。
即便他們能窺見未來,要表達未曾見聞的新事物,也必然得用已知之物作類比,結果仍然難以明白易懂。
彼らが仮に未来を覗き見られたとしても、見たことも聞いたこともないものを表現するには、既知の物を喩えに使った要領を得ないものにならざるを得ないのだ。
「是個好趨勢。照這樣到十二月前會趕得上」
「良い傾向だね。これなら十二月までには間に合う」
靜子查看了士兵的體能測試數據,確信在十二月前能達到足夠的成果;其他數據也沒問題,士兵們的基礎體力提升進展順利。
兵士の体力測定データを確認した静子は、十二月までに十分な手応えがあることを確信した。他のデータも問題なく、兵士たちの基礎体力向上は順調に進んでいた。
對士兵而言雖有些不解,但每天只要鍛鍊就能領到金子,他們無從抱怨。
兵士側からすれば多少謎でもあったが、毎日鍛錬するだけで金子が貰えるのだから、不満を口にするような事はなかった。
這時的靜子並不像士兵那樣進行強度訓練。當然她也有做些保持不鬆懈的鍛鍊,但沒有做武將們那種艱苦的訓練。
この頃、静子は兵士のように鍛錬は行っていなかった。無論、なまってしまわない程度には鍛錬を行ってはいるが、武将たちが行っているハードな訓練は受けていない。
士兵與武將們認為靜子站到最前線對心臟不好,寧可她在後方指揮,這是他們的期望。
兵士や武将たちからすれば、静子が前に出るのは心臓に悪く、できれば後方で指揮をとって欲しいという希望があったためだ。
雖然分不清是好是壞,但既然大多數武將都希望如此,靜子便調整為在後方發號施令。
良いのか悪いのか判断がつかなかったが、ともかく大半の武将たちが望むなら、と静子は後方で指示を出す方向で調整した。
「嘛雖然是謎,還是別想太深好了」
「まぁ謎だけど、深く考えるのはよしておこう」
靜子還有其他工作要做,其中一項是處理堆積的文件。雖然她有花押,但用印章還是比較快,因此大多採用蓋章。
静子が行う仕事は他にもあり、そのうちの一つである溜まっていた書類を片付ける。花押を持っている静子だが、やはり印鑑の方が手早いため、もっぱら押印を利用していた。
但與國人或公家不同,靜子使用的是以墨蓋押的黑印狀。雖稱印判狀,仍被當作正式文件處理。
しかし国人や公家と違い、静子は墨で押印する黒印状の方だった。印判状とはいえ正式な書類として扱われる。
她仔細檢查文件內容,無問題就蓋章,有問題則寫下疑點退回。大量文件很快就被處理完畢。
書類の中身を精査し、問題なければ押印、問題があれば疑問点を記載して返していく。大量にあった書類があっという間に処理される。
她吩咐小姓們把辦好的文件移交到下一個流程。
終わった書類を小姓たちに命じて、書類を次の工程に移させた。
「啊——終於弄好了。辦公事真是累人啊」
「あーっ、終わった終わった。事務仕事って疲れるのよね」
靜子一邊輕拍肩膀,舒展僵硬的身體。工作一結束,維特曼他們熟練地把入口打開衝了進來。
肩をトントンと叩きながら、静子は凝り固まった体をほぐす。仕事が終わった途端、入り口を器用にあけてヴィットマンたちが入ってくる。
他們在靜子工作時不會打擾,但一旦結束便毫不客氣、任性地黏著靜子。
静子が仕事中は邪魔をしないが、終われば遠慮は無用と、思うさま静子に甘えるヴィットマンたちだった。
就算在工作時間也我行我素的馬努爾貓丸太,正如往常一樣在固定的位置張開四肢大字形睡著。
仕事中であろうと我が道を行くマヌルネコの丸太は、いつもの定位置で大の字になって寝ていた。
土耳其安哥拉的タマ和ハナ、雪豹的ゆっきー、以及しろちょこ像貓科動物一樣,是否要進來全憑心情。今天難得是しろちょこ進來了。
ターキッシュアンゴラのタマやハナ、ユキヒョウのゆっきー、しろちょこはネコ科らしく、入るも入らぬも気分次第である。今日は珍しくしろちょこが入ってきた。
雖然進來了,牠們找個隨意的地方坐下後便自由自在地休息著。
入ってきたとはいえ、適当な所に座ると自由気ままに休んでいるが。
「我的房間不是休息室喔」
「私の部屋は休憩所じゃないんだぞ」
一邊這麼說著,靜子卻撲到カイザー的背上,盡情享受那毛茸茸的觸感。
言いながらもカイザーの背中に覆いかぶさって、もふもふを堪能する静子だった。