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戦国小町苦労譚

千五百七十年 十二月下旬

年末將至,寒意更甚之時,一位意想不到的人物拜訪了前久。

年の瀬が迫り寒さが一段と厳しくなるころ、前久の許(もと)を意外な人物が訪ねてきた。

「請先讓那些無粋之輩退下。不了解風雅的粗人就讓他們在外頭等候。這裡沒有放置任何武器,我這赤手空拳的人也不會比你遜色」

「まずは無粋な輩(やから)を下がらせては貰えまいか。風流を解さぬ無骨者には外で待って貰ってくれ。ここには武器一つ置いては居らぬ、無手の私に後れを取る貴殿ではなかろう」

對這突如其來的稀客感到驚訝的前久,仍帶笑地諷刺了幾句。來客不加鋒利諷刺,只是露出一抹微笑,便讓周圍的人退下。

予想外の珍客に驚いた前久だが、にこやかに毒を吐く。訪問客は痛烈な皮肉を介することなくニヤリと笑みを浮かべると周囲の者を下がらせた。

「相當匆忙又突如其來的造訪啊,越後之龍殿」

「随分と急で、そして突然の訪問だな、越後の龍殿」

「哈哈哈,誰會想到我會以雲水的打扮上街呢」

「ふぁっふぁっふぁっ、わしが雲水の格好をして出歩くなど、誰も思わぬからな」

越後之龍、上杉謙信像個玩弄成功的孩子般笑著,回答了前久的質問。

悪戯が成功した子供のように笑いながら、越後の龍、上杉謙信が前久の質問に答える。

正如他所料,誰也沒想到謙信會去岐阜拜訪前久。就連武田的忍者們也堅信謙信仍在春日山城,毫不懷疑。

彼の思惑どおり、謙信が岐阜にいる前久を訪ねるなど、誰も予想できなかった。武田の忍びたちも、謙信は春日山城にいると信じて疑わなかった。

「今宵月色甚好,不如以庭為伴,來場賞月小酌如何?」

「今宵は良き月じゃ。ひとつ庭を肴に月見としゃれ込まぬか」

「……好吧。但如今我依附於織田家。此事切勿忘記」

「……良かろう。だが今の私は織田家に身を寄せている。そのこと、ゆめゆめお忘れなきよう」

在向謙信提出警告後,前久將他引至緣側。雖說是十二月下旬、正值隆冬,謙信生於比岐阜更為嚴寒的越後,對這種寒冷已習以為常。

謙信に警告した後、前久は彼を縁側に案内する。十二月下旬と言えば冬の真っ只中だが、謙信は岐阜すら凌ぐ酷寒の越後生まれであり、この程度の寒さには慣れていた。

但前久覺得有些寒意,便披上了以絹絲雙層織成的角袖外衣。

しかし前久には少し肌寒いと感じたので、絹糸を二重に編み込んだ角袖コートを羽織る。

「今宵寒冷,先讓我喝燗酒吧」

「今宵は冷える。最初から燗(かん)にさせてもらう」

「燗?」

「燗?」

聽到不常聽見的詞語謙信皺起眉頭,然而前久沒回答他的疑問,只是命僕役準備熱燗。過了一會,僕役端來燗酒和盛有下酒菜的盤子。

聞き慣れぬ言葉に謙信は眉をひそめる。しかし、前久は彼の疑問に答えず小間使いに熱燗(あつかん)の用意を命じる。しばらくして小間使いが燗酒(かんざけ)、そして肴を載せた皿を運んできた。

前久取起一只德利,將酒斟入杯中遞給謙信。稍顯不解的謙信接過杯,垂下了視線。

とっくりの一つを手に取ると、前久は杯に酒を注いで謙信に差し出す。多少戸惑った謙信だが、前久から杯を受け取り視線を落とす。

除了杯底繪有青色的蛇目紋外,杯身為白地。人以白地觀其色,以藍與白的分界察其透明度。

底に青の蛇の目模様が描かれている以外は白地の杯だ。白地の部分で色を見、藍色と白地の境目で透明度を見る。

月光反射下,熱燗泛起青色光澤,謙信一時凝視。隨後他露出不遜的笑容,與前久交杯。

月光りの反射で青く煌(きら)めく熱燗に謙信はしばし見とれる。やがて、不敵な笑みを浮かべると前久と杯を交わす。

「首先敬我們的重逢」

「まずはわれらの再会に」

「啊,敬我們的重逢」

「ああ、われらの再会に」

兩人傾杯,一飲而盡。熟練的前久自不待說,初嘗燗酒的謙信雖驚訝,但很快調適心情,享受其滋味。

互いの杯を傾けて酒を一気にあおる。慣れている前久はともかく、初めての燗酒(かんざけ)の味に驚いた謙信だが、すぐに気持ちを持ち直して味を楽しむ。

「好喝啊」

「うまいな」

「果然如此。此乃連織田家家臣也難以得手的逸品,正適合在今日這等日子飲用」

「そうであろう。これは織田家家臣でもなかなか手に入らぬ逸品。今日のような日に呑むのにふさわしい」

說著前久將臉轉向庭院,謙信亦跟著望去。

言いながら前久は庭へ顔を向ける。謙信も彼に倣いそちらに目をやる。

夜色中清晰浮現的月亮,冷冽照亮的庭院,撫弄耳畔的葉擦聲。

夜闇にくっきりと浮かぶ月、冴え冴えと照らし出される庭、耳をくすぐる葉擦れの音。

那裡是嚴峻卻美麗的冬景。冬日特有的澄澈空氣中浮現的枯寂風情,讓謙信明白了為何要厭棄護衛。

厳しくも美しい冬の景色がそこにはあった。冬特有の澄み渡る空気に浮かび上がる枯れた風情に、謙信は護衛を嫌った理由を悟る。

謙信覺得,靜靜地、無言地凝視眼前的庭院、飲著酒,實屬一種極致的奢侈。他也想著自己不會以粗魯之行蹂躪這等脆弱而美麗之地。

静かに、ただ無言で目の前の庭を眺めながら酒を呑むことが、とても贅沢なものだと謙信は思えた。そして、自分でも儚く美しい場所を土足で踏み荒らす無粋はすまいと考えた。

「何等短暫的美。終於明白主上為何厭惡軒猿了」

「何という儚い美。主が軒猿(のきざる)を嫌った理由が分かったわ」

「這庭是我的自信之作。熱氣騰騰的粗人無用」

「この庭は私の自信作だ。暑苦しい無骨者は無用」

前久望著庭院傾杯,謙信也同樣續杯。

庭を眺めながら前久は杯を傾ける。謙信も同じく杯を重ねる。

兩人無言地望著庭院享受酒興,忽然謙信開口。

無言で庭を眺めながら酒を楽しんでいた2人だが、ふいに謙信が口を開く。

「你不問我來訪的理由嗎?」

「わしが訪ねてきた理由を聞かぬのか」

「非得勉強問出來我才回答嗎?」

「無理に尋ねて答えるのかね」

對謙信的提問,前久帶笑回答。對於謙信的目的,前久幾乎不感興趣,只要能與舊友對酌便心滿意足。

謙信の問いに前久は笑みを浮かべて答える。謙信が何を目的としているか、前久はほとんど興味がなかった。ただ、旧友と酒を酌み交わすだけで満足だった。

曾經他們結盟欲恢復朝廷與足利政權的權威,後來被武田與北條粉碎野望而決裂,然而友情並未因此消失。

かつて朝廷と足利政権の権威復活の盟約を結び、武田と北条に野望を打ち砕かれて決別した2人だが、友情まで消えたわけではない。

「哼,如此一來恐怕會被認為我只是來嚇你一跳。那麼……直截了當問吧。我來訪的理由,和你女兒有關」

「ふっ、このままでは単に肝を潰させるために訪れたと思われそうだ。そうだな……では単刀直入に尋ねよう。わしが訪ねた理由は、お主の娘が関係しておる」

「女兒……? 不會吧……」

「娘……? まさか……」

此時前久第一次露出驚愕的表情。露出不遜笑容的謙信把杯中酒飲盡,接著說下去。

このとき初めて前久は仰天の表情を浮かべる。不敵な笑みを浮かべた謙信は、杯の酒を飲み干すと言葉を続ける。

「即便在與武田交戰之時,也從未如此吃驚。以女子從事政務,實在令人難以置信。因此大家才會被蒙蔽。武田的忍者、北條的忍者都完全沒有察覺。因為外人看來,只覺得像是織田家或森家在行動罷了」

「武田と合戦をしたときでも、これほど驚いたことはない。政に女子を使うなど、な。だから、みなだまされる。武田の忍びも、北条の忍びもまるで気付かない。そうであろう、はた目には織田か森家が行っているようにしか見えぬからな」

「……」

「……」

「就連我若不親見她,也曾把間者的報告一笑置之。但若見過那女孩、聽她說話,就會知道間者並非胡言」

「わしとて彼女に会わねば、間者の報告を一笑に付したわ。だが、あの娘に会い、話を聞けば間者が馬鹿を申しているのではないと分かる」

說完話,乾了杯中的酒後,謙信吐了口氣。

そこで言葉を切り、杯の酒を飲み干すと謙信は一息吐く。

「國之根基在於民,我等武士不過是向民眾安堵領地,換取收穫罷了。正因為理解這點,那姑娘使民眾繁榮。並且獲得自己的利得而壯大。間諜們都驚訝了。那姑娘所持有的力量可堪比120萬石的國人。」

「国の基は民、われら武士は民から領地を安堵する代わりに収穫を拝借しているに過ぎぬ。それを理解しておるから、あの娘は民を栄えさせる。そして、自らの利も得て力を付ける。間者が目を回しておったぞ。あの娘が持つ力は120万石の国人に匹敵するとな」

「……你來我這裡的理由,莫非是要我說情搭橋之類的戲言?那姑娘是近衛家的至寶,不能那麼容易地送往他處。而且,現在她正於織田大人麾下盡心工作。只要她不厭棄,便無法把她從織田大人那裡帶走。」

「……私の許を訪れた理由は、まさか口利きをしてくれという戯れ言ではなかろうな。あの娘は近衛家の至宝。そう簡単に余所(よそ)へは遣(や)れぬ。それに、今は織田殿の下で存分に働かせておる。あの娘が厭わぬ限り、織田殿の許から引き離すことなどできぬ」

這是複雜的事,前久在心中嘆道。武田與北條因關注織田家的軍事面向,對農業與漁業等仍多所忽略。

ややこしい話だ、と前久は心の中でうなった。武田や北条は織田家の軍事方面に注視している関係で、農業や漁業などにはなおざりのままである。

但謙信不同。他認為武士是被託付民眾領地的人。與武田或北條不同,可認為他重視靜子的生產技術。

しかし、謙信は違う。彼は民の領地を預かっているのが武士と考えている。武田や北条と違い、静子の生産技術を重視していると考えて良い。

「等等。你……今日來訪的理由難道是──」

「待て。貴様……今日、訪ねた理由はまさか」

前久思索著謙信的意圖,察覺謙信今日來訪並非一時興起,而是經過算計。

謙信の思惑を考えていた前久は、謙信が今日訪ねてきた理由は、単なる気まぐれではなく計算されていることに気付く。

得出答案的前久,謙信露出狡黠的笑容告知他。

答えにたどり着いた前久を、謙信はあくどい笑みを浮かべて告げた。

「別誤會,我並不打算把人拿去吃掉。只是想再談一次,是關於你的女兒,近衛靜子殿。」

「なに、取って食おうとは思わぬ。ただ、もう一度話したいだけだ。そなたの娘、近衛 静子殿にな」

為了年末年始,前久向靜子購買了各式各樣的物品。那些貨物送達的日子,恰好是謙信來訪的隔日。

年末年始に備え、前久は静子から多種多様の商品を購入していた。それらの商品が届く日が、まさに謙信が訪問した翌日だ。

雖然有時信長會親自應對,但基本上前久的應對事務由靜子處理。

ときどき、信長が対応することはあるものの、基本的に前久の対応は静子が行う。

若平時只是送貨,靜子本人不會造訪,但因年末緣故,她會順道來表示問候。

平時に商品を届けるだけなら静子自身は訪れないが、年末の関係から彼女はあいさつもかねて訪問することとなっていた。

謙信藉此時機取得了與靜子會面的場合——即便是織田家家臣,也非上級武將難以見她。既然不能輕易將她趕走,前久為此感到胃痛也並非無理。

謙信はその時流に合わせて織田家家臣でも上級武将でなければ会いづらい静子との会談の場を手に入れた。簡単に追い出せぬ以上、前久が胃を痛めるのも無理はない。

「靜子大人到了。」

「静子様がお越しになりました」

「……放她進來。」

「……通せ」

前久在心中咕噥著,命人引靜子進來。謙信則在一旁帶著愉悅的笑容等著她到來。

腹の中でうなりながら前久は、静子を案内するよう命じる。その横で謙信は楽しげな笑みを浮かべて、静子が来るのを待った。

他越顯得興高采烈,前久便越覺得胃痛加劇。

彼が楽しそうにすればするほど、前久は胃の痛みが増したように感じた。

「(別做多餘的事)」

「(余計なことはするなよ)」

「(放心)」

「(安心しろ)」

儘管謙信如此說,前久看了謙信的表情卻完全無法安心。前久預感必定會有一番波折,於是重重地嘆了一口氣。

そう語る謙信だが、前久は謙信の表情を見て全く安心できなかった。確実に一悶着が起こる予感を抱いた前久は、重いものをはき出すようにため息を吐く。

「久等了。」

「お待たせしました」

話音剛落,入口悄然被打開。先是穿著厚衣的靜子,接著カイザー與ケーニッヒ進入房內。看見毫無防備卻巨大的獸,謙信不由自主地往後退了一步。

言葉と共に静かに入り口が開けられる。最初に厚着をした静子が、続いてカイザーとケーニッヒが部屋に入る。何の構えもなく巨大な獣を見たことに、謙信は思わず腰が引けた。

也許覺得有趣,前久輕輕一笑。慢慢反應過來的謙信面頰泛紅,咳嗽掩飾自己的窘態。

それが面白かったのか、前久はくすりと笑う。頭の理解が追いついた謙信は、頬を赤らめながら咳払いをしてごまかす。

「啊,抱歉。這些孩子就是不肯離開……嗯,牠們並不可怕喔?」

「いや、すみません。この子たちが離れなくって……えっと、怖くないですよ?」

靜子抓了抓後腦勺,乾笑一聲。謙信整理坐姿,再次注視カイザー與ケーニッヒ。

後頭部をかきながら静子は乾いた笑いをする。謙信は居住まいを正すと、あらためてカイザーとケーニッヒを見る。

牠們龐大的身軀前所未見,但並不顯得粗暴,反而有種接近神聖的美感,謙信如此想道。

見たこともないほど巨躯(きょく)だが、決して粗暴な感じはなく、神々しいまでの美しさがあると彼はおもった。

「我並不介意。不過一開始確實被嚇到,但越看越覺得端正的容貌。」

「気にしておらぬ。しかし、最初は驚いたが見れば見るほど端正な容姿だ」

靜子對眼前這位僧人(謙信)所言苦笑。自從志賀之陣結束後,ヴィットマン等人便寸步不離地守在靜子身邊。

静子は目の前の僧(謙信)の言葉に苦笑いを浮かべる。志賀の陣が終わって以降、ヴィットマンたちは静子の元を片時も離れない。

因應情形,牠們會在不能入內之處乖乖退去,但會在入口處持續待命。尤其是カイザー,幼獸時期的撒嬌癖復甦,整日黏得緊緊的。

都合上、獣が立ち入れない場所ではおとなしく離れるものの、入り口でずっと待機している。特にカイザーは幼獣のころの甘え癖が復活し、四六時中べったり引っ付いてきた。

靜子想或許是因為到處遷徙造成愛情不足,於是決定任由牠們為所欲為。

あちこち移動した関係で愛情不足を感じたのか、と静子は考え彼らの好きにさせることにした。

「抱歉,近衛大人。我要確認目錄……可以嗎?」

「すみません、近衛様。目録の確認なのですが……よろしいでしょうか?」

靜子向前久詢問,既是要確認內容,也是詢問在有外人時是否會有問題。前久瞥了謙信一眼後,嘆了口沉重的氣並點頭同意。

内容の確認と、部外者がいる状態でも問題ないかの二つの意味を込めて、静子は前久に尋ねる。彼は謙信を一瞥した後、重いため息を吐きつつうなずいた。

雖對前久的態度感到疑惑,但靜子想若深究會讓他為難,便沒有再追問。她從包袱布中取出書類,最終確認內容後交給前久。

前久の態度に疑問を感じた静子だが、深く突っ込むと彼が困ると思い、それ以上質問を口にしなかった。静子は風呂敷から書類を取り出すと、内容を最終確認してから前久に手渡す。

「鹽、糖、味噌、醬油、味醂、酒、綠茶、烏龍茶、紅茶、岐阜米、尾張米……總之數量頗多。廚房可能會稍微變得狹窄。」

「塩、砂糖、味噌、醤油、味醂、酒、緑茶、烏龍茶、紅茶、岐阜米、尾張米……とまぁかなりの量です。多少、台所が狭くなると思います」

「無妨。年初計畫邀請知己作宴。過了正月三日,恐怕連一半也不會剩下。」

「構わぬ。年始は知己を招いて宴会の予定だ。正月三が日を過ぎれば、半分も残るまい」

若是個人份量足以維持數月,卻會在數日內消耗完。雖然有些好奇會請多少人,但她認為沒必要多事,便把心中湧起的疑問吞下。

個人なら数ヶ月分生活できる量を数日で消費する。どれほど人を呼ぶのか少し気になったが、やぶをつついて蛇を出す必要もないと考え、静子はわき上がった疑問を飲み込んだ。

之後她表示想確認行李後,前久未等她回話便領她出去。謙信對這迅速的行動頗感驚愕,但反應過來後微微一笑。

その後、荷物を確認したいと静子に告げると、前久は彼女の返答を待たず静子を連れ出す。素早い動きに謙信も呆気にとられたが、頭の理解が追いつくと小さく笑った。

「那個……可以嗎?」

「あのー、よろしいので?」

把朋友留在房內就出來讓靜子有些不安,然而前久抱臂沉吟後,背向她清了清喉嚨。

友人を部屋に放置したまま外に出たことに、静子は若干不安を感じた。しかし、前久は腕を組んでうなった後、彼女に背を向けて咳払いをする。

「聽著,靜子殿。我的第二個難題,是將妳收為我的猶子。但此事僅在我與織田大人之間商談過。」

「良いか静子殿。私の第二の難題は、そなたを私の猶子にすることだ。だが、このことは織田殿との間しか話し合っておらぬ」

「欸、啊、是、咦?」

「え、あ、はい、え?」

靜子聽到這等驚人言論,但還沒等她思考,前久轉頭望向靜子,帶著迫切的表情繼續說道。

とんでもない爆弾発言を耳にした静子だが、彼女がそれについて考える前に、前久は静子の方を振り返ると切羽詰まった表情をして言葉を続けた。

「那個比傾奇者還要陰險的大惡人,不知何故知道這件事。就是那個男人。他肯定在圖謀不軌。因此,這裡──」

「それを、傾奇者よりたちが悪い大悪党は、どういうわけか知っておる。あの男のことだ。きっとよからぬことを企んでおる。ゆえに、ここは――」

「別這麼冷淡地說」

「そうつれない事を申すな」

對話途中忽然有聲音從旁傳來的瞬間,前久頓時警覺起來。然而發話之人並不在意,步伐自然地朝前久等人走來。

会話の途中に横から声が飛んできた瞬間、前久が身を固める。しかし、声をかけた人物はさして気にする様子もなく、極めて自然な足取りで前久たちに近づく。

「失禮,我只是想聊聊而已,這傢伙就是個多心的人啊」

「失礼、わしは単に話がしたかっただけなのに、どうにも此奴(こやつ)は心配性でな」

謙信站到靜子面前恭敬地低頭。仍未弄清狀況的靜子本能地也低頭回禮。

謙信は静子の前に立つと恭しく頭を下げた。いまだ状況を飲み込めない静子だが、条件反射的に頭を下げる。

前久似乎有話想說,但終於嘆了口氣,坐到縁側上。

何か言いたげな表情の前久だが、やがて嘆息すると縁側に腰を下ろす。

「不識庵殿。這姑娘身子忙碌,不能耽擱太久,請簡短些。」

「不識庵殿。この娘は忙しい身ゆえ、あまり時間を取らせるわけにはいかぬ。手短に済ませてくれ」

前久理解到即便採取對策也會被突破,他決定在讓謙信如願的同時監視並引導,避免越過界線。

対策をしても破られることを理解した前久は、謙信の望むことをさせつつ、一線を越えぬよう監視しつつ誘導した方が良いと結論付けた。

察覺到前久意圖的謙信,向前久行了一禮並帶著歉意低頭,然後轉身面向靜子。

前久の思惑を察した謙信は、一度前久に礼と謝罪を込めて頭を下げると、あらためて静子の方へ身体を向ける。

「以前也見過面,容我再次自我介紹,貧僧名為不識庵。」

「以前にも会ったが、あらためて名を名乗ろう。拙僧は不識庵と申す」

「我是靜子。那個……您的名字,加上您又是近衛大人的朋友……是被稱為『越後之龍』的人物嗎?」

「静子、です。あの……そのお名前、と近衛様のご友人ということは……越後の龍、と呼ばれているお方でしょうか?」

聽到越後之龍這詞謙信表情一僵。之前沒有露出識破之意的靜子,這次竟立刻看穿了謙信的真實身分。

越後の龍という言葉に謙信の表情がこわばる。以前は正体を見破るそぶりも見せなかった静子が、今回はすぐさま謙信の正体を看破した。

謙信只把臉朝向前久。他似乎覺得謙信的驚訝甚為有趣,咧嘴傻笑。再把臉轉回靜子那邊的謙信清了清喉嚨開口說道。

謙信は顔だけ前久の方へ向ける。彼は謙信の驚きがよほど楽しいのか、にやにやと笑っていた。再び静子の方へ顔を向けた謙信は、一つ咳払いをして言葉を口にする。

「假如我真是越後之龍,你會怎麼做?」

「仮にわしが越後の龍だとしたら、そなたはどうするのじゃ?」

「我不會做什麼。只是,既然您要暗中來到岐阜,現在又正值下雪的季節,恐怕會有許多不便。」

「別に何もいたしません。ただ、岐阜にお忍びでお越しになるにしても今は雪が降る季節ですので、色々とご不便が多いのではと思いました」

靜子的回答讓謙信與前久都愣住。被稱作越後之龍、聖將、軍神的上杉謙信,與武田、北條齊名,是名將;想要取他首級的人不計其數。

静子の回答に謙信と前久は絶句した。越後の龍、聖将、軍神という渾名がつくように、上杉謙信は武田や北条と並ぶ名将だ。彼の首を欲しがる人間は星の数ほどいる。

在能殺謙信的千載一遇機會面前,靜子毫無奪首的野心,反倒擔心他回程安危,連老練的前久也覺得出乎預料。

その謙信を殺れる千載一遇の機会を前に、首を取る野心が一つも感じられず、逆に彼の帰る道を心配する静子には、さすがの前久も予想の範疇を超える回答だった。

謙信直視那毫無殺氣、以困惑表情看著他們的靜子,直覺上他明白她眼中的神色能讓人確信剛才的話並非虛言。

殺気が一つも感じられず、謙信たちの驚きを不思議そうな表情で見ている静子を謙信は直視する。先ほどの言葉がうそ偽りではないと確信できる目だと謙信は直感的に理解した。

「哇哈哈哈,多麼痛快啊」

「ふぁっふぁっふぁっ、なんと小気味の良いことよ」

「哈、哈」

「は、はぁ」

對謙信豪爽的笑聲,靜子困惑不已。笑過一會兒,謙信露出討人喜愛的微笑。

豪快に笑う謙信に静子は困惑する。ひとしきり笑った後、謙信は人好きのする笑みを浮かべる。

「我在你身上感受到一股不是只求利益者所具的氣息,十分爽朗,讓人心曠神怡的風。」

「そなたには利ばかり求める者にはない風を感じる。なんとも爽やかで、すがすがしい気持ちにさせてくれる風じゃ」

靜子不明白話中之意,歪著頭。但她記起他是個屢次顛覆戰國常識的異士。

言葉の意味が分からない静子は首をかしげる。しかし、彼は戦国時代の常識を何度も覆す考えの持ち主であることを、彼女は思い出す。

在收取意見箱時,靜子沒認出眼前之人是謙信。雖然對不識庵這名有所懷疑,但她無法想像越後國人謙信會沒帶護衛就來岐阜。

目安箱を回収するとき、静子は目の前の人物が謙信だと気付かなかった。不識庵という名前は引っかかったものの、越後の国人である謙信が、護衛もつけず岐阜に来るとは思えなかった。

正因如此,眾人皆被謙信的盤算所迷惑,無人能識破他的真實身分。

だからこそ、誰もが謙信の思惑に引っかかり、誰一人彼の正体を見破れなかった。

「但願你能一直保持這樣。」

「願わくば、ずっとそのままでいてほしいものじゃ」

「啊、啊。謝、謝謝?」

「は、はい。ありがとう、ございます?」

「哄哄,久違地從心底讓我笑了一回。想以一杯酒表謝意,但聽說你不嗜酒,所以就奉上一杯茶,當然會依這傢伙所推廣的近衛流煎茶道作法。」

「ふぁっふぁっ、久々に心の底から笑わせて貰った。お礼に一献と言いたい所だが、そなたは酒は嗜まぬと聞いておる。よって一杯茶を進ぜよう、無論此奴が広めておる近衛流煎茶道の作法での」

近衛流煎茶道是前久依照煎茶道改良而成的一種流派。與抹茶道不同,道具只需急須、茶杯、湯冷まし與茶葉這四樣即可。

近衛流煎茶道は、茶道の一種である煎茶道を前久なりに改良した茶道の一種だ。抹茶道と違い道具は急須、湯飲み、湯冷まし、茶葉の四つがあれば良い。

雖然有推薦的飲法,但沒有嚴格的禮法。可以相對盤腿而坐共飲,也可並排坐在縁側飲用,或站著交飲,沒有細緻的規定。

飲み方に推奨する方法はあるものの、厳格な作法はない。対面で胡座(あぐら)をかいて飲みあうもよし、縁側に並んで座って飲むもよし、立ったまま飲みあうもよし、細かい規定は一つもない。

前久的煎茶道重在心構與待客之哲學,並提供推薦的步驟。

前久の煎茶道は心構えともてなしに対する哲学、そして推奨する手順だけだ。

對心態與待客之哲學與抹茶道大抵相同。雖然步驟繁多,前久推薦如下方法。

心構えやもてなしに対する哲学は抹茶道と大差ない。手順はいくつもあるが前久は以下の方法を推奨している。

首先,茶會的主人會先為遠道而來的客人以潤喉為目的奉上微溫的茶;接著待客人喝過、冷靜下來後,再奉上稍熱的茶與點心。

まず、茶会を開く主は遠路はるばる訪ねてきた者たちに対し、のどを潤す目的でぬるま湯の茶を出す。次に茶を飲んで落ち着いた者たちに、少し熱めの茶と菓子を出す。

之後可閒聊、可悠然賞景,各自度過想要的時光;最後再以適溫泡一杯茶作為結束。

後はお喋(しゃべ)りをするもよし、ゆったりと景色を眺めるもよし、思い思いの時間を過ごす。最後にその場に適度な温度で入れた茶を出しておしまいだ。

茶可用綠茶、烏龍茶、紅茶、焙茶等任何一種,出茶的順序與種類可自由搭配,甚至先上綠茶、最後上烏龍茶亦可。

茶は緑茶、烏龍茶、紅茶、ほうじ茶と何でも良い。出す順番も種類もばらばらでも良い。最初に緑茶を出し、最後に烏龍茶を出すことも許される。

只要每個人用自己覺得合適的飲法即可。由於這寬鬆的規矩和茶具的低廉,近衛流煎茶道在武家、公家,特別是婦人之間大為流行。

それぞれが自分たちに合っていると思う飲み方で良かった。この緩やかな決まりと、茶道具の安さが受け、近衛流煎茶道は武家や公家、主に婦人たちへ大流行した。

順帶一提,綠茶、烏龍茶、紅茶皆來自名為カメリアシネンシス的茶樹,屬於山茶科。三者的差別在於茶葉的製作方式。

余談だが緑茶、烏龍茶、紅茶は全てカメリアシネンシスというツバキ科の茶の樹からできている。三種類の違いは茶葉の作り方だ。

採摘樹上鮮葉後在乾燥與發酵製程上的差異,不發酵的是綠茶、弱發酵的是黃茶或白茶、強發酵的是烏龍茶、完全發酵的是紅茶;由麴菌進行的後發酵茶則稱為黑茶。

樹の生葉を乾燥・発酵させて作る際、不発酵茶を緑茶、弱発酵茶を黄茶・白茶、強発酵茶を烏龍茶、完全発酵茶を紅茶と呼ぶ。麹菌による後発酵茶は黒茶と呼ばれている。

因此,現代有從日本茶樹製成的國產紅茶。

ゆえに、現代では日本の茶の木から作られる国産紅茶がある。

對喜歡印度或斯里蘭卡紅茶的人來說可能不夠,但其特徵是柔和的甜香、澀味少且口感清爽,帶有一絲淡淡的甜味。

インド・スリランカの紅茶が好きな者には物足りないものの、ふんわりとした甘い香り、渋みが少なくさっぱりとした口当たり、ほんの僅かな甘い味が特徴だ。

「哎呀哎呀,依舊是個堅持己見的男人。」

「やれやれ、相も変わらず我を通す男じゃ」

聽了謙信的話,前久無奈地聳了聳肩,表情帶著驚訝。

謙信の言葉に前久はあきれた表情で肩をすくめた。

足滿忍受著冬日的寒冷,在櫻信之社的一角耕作著。

冬の寒さに耐えながら足満は櫻信之社の一角を耕していた。

他親自耕種的理由是:接下來要栽種的東西極其危險,不想輕易交給他人。

彼自身が耕している理由は、これから育てるものが非常に危険でおいそれと人に任せたくないのが理由だ。

(靜子若知道了可能會發動焚燒討伐。盡量想辦法掩飾。)

(静子が知れば焼き討ちに遭いそうだな。なるべく、誤魔化せるようにしよう)

雖然要種植是在五月,還很久,但因為不知道何時會忙,足滿想趁有空時勤快地耕作。

植えるのは5月と随分先だが、いつ忙しくなるか不明ゆえに時間があるときに、こまめに耕しておこうと足満は考えた。

因為只用了一塊小得像貓額般的土地,足滿不到一刻就耕完了。他拭去額頭的汗,坐在附近的石頭上。

猫の額ほどの土地しか使わないため、1刻もかからず足満は耕し終えた。額の汗をぬぐいながら彼は近くの石に腰掛ける。

(真是件稀奇的事)

(物珍しいことをなされる)

「因為春天要栽培的東西很特殊。」

「春に育てるものが特殊なものだからな」

不知從哪裡傳來鳶加藤的聲音。然而,足滿並未特別在意,一邊擦汗一邊回答。擦完後他活動身體,放鬆肌肉。

どこからともなく鳶加藤の声が聞こえる。しかし、足満はさして気にもとめず汗をぬぐいながら答える。ぬぐい終えると彼は身体を動かして筋肉をほぐす。

(那是之前用於武田間諜的東西有關嗎?)

(それは以前、武田の間者に使ったものが関係しているのでございましょうか)

「……知道得太多會喪命的,鳶加藤。罷了,你也看到我使用的地方。特別告訴你。我種的是用來洗腦的毒草。在南蠻被稱為エンジェル・トランペット或ダチュラ。」

「……知りすぎると命を落とすぞ、鳶加藤。まぁ良い、貴様は使う場所を見ていたからな。特別に教えてやろう。わしが育てるのは洗脳のための毒草じゃ。南蛮ではエンジェル・トランペットやダチュラと呼ばれている」

被稱為エンジェル・トランペット、ダチュラ、ダツラ、マンダラゲ等多名的チョウセンアサガオ(以下稱為ダツラ),是一種具有極度危險毒性的,一年生草本或高木。

エンジェル・トランペット、ダチュラ、ダツラ、マンダラゲなど複数の名を持つチョウセンアサガオ(以下ダツラ)は、非常に危険な毒を持つ一年草、または高木である。

ダツラ可分為キダチチョウセンアサガオ屬與チョウセンアサガオ屬兩類。兩者的差別在於是否為木本或草本,以及花朵的生長方式。

ダツラにはキダチチョウセンアサガオ属とチョウセンアサガオ属が存在する。両者の違いは木になるか草になるかと、花の付き方だ。

キダチチョウセンアサガオ屬為高木或低木,花朵向下;相對地,チョウセンアサガオ屬為一年草或多年草,花朵向上。

キダチチョウセンアサガオ属は高木または低木で、下向きの花をつける。対してチョウセンアサガオ属は一年草または多年草で、上向きの花をつける。

通常被稱為エンジェル・トランペット的種類屬於キダチチョウセンアサガオ屬,而被稱為ダツラ的種類屬於チョウセンアサガオ屬。

通称エンジェル・トランペットと呼ばれる種がキダチチョウセンアサガオ属、ダツラと呼ばれる種がチョウセンアサガオ属だ。

兩者的共同點是都是有毒植物,極為危險。

共通している点はどちらも有毒植物で、大変危険な植物という点だ。

順帶一提,チョウセンアサガオ的「チョウセン」並非指特定地區,而是單純表示來自海外之物。

余談だがチョウセンアサガオのチョウセンは特定の地域を指す言葉ではなく、単に海外から入ってきたもの、という意味だ。

此外,雖然冠以牽牛花的名,但ダツラ屬茄科,與旋花科的牽牛花為不同物種。

また、アサガオの名を冠してはいるが、ダツラはナス科に属し、ヒルガオ科のアサガオとは別種である。

而於1804年進行世界首例全身麻醉下乳癌摘除手術的華岡青洲所使用的ダツラ,是一種被稱為メテル、原產印度的草本型ダツラ。

そして、1804年に世界初の全身麻酔下で乳癌摘出手術を行った華岡青洲が使ったダツラは、メテルと呼ばれるインド原産の草タイプのダツラだ。

(與使用ハシリドコロ的毒草同種嗎?)

(ハシリドコロを使った毒草と同種でございますか)

「用來洗腦的還是這個比較好。」

「洗脳に使うのはこちらが良い」

足滿進口的ダツラ,是非常危險的毒草。

足満が輸入したダツラは、非常に危険な毒草だ。

在印度曾有一個名為ダツレアス的犯罪組織,利用ダツラ使對方陷入醺醉狀態後行搶等罪行,而據說該組織所用的ダツラ就是足滿所栽種的那種。

インドではダツラを用いて相手を酩酊状態にしたうえで強盗などを働くダツレアスという犯罪組織が存在したが、その組織が用いたと言われるダツラが足満の育てているダツラだ。

毒性效果極強,曾讓人無法承受而喪命,但那些對象是武田或北條的間諜。因此,足滿一點罪惡感也沒有。

毒の効果が強すぎて相手が耐えきれず命を落とすこともあったが、相手は武田や北条の間者だ。ゆえに、足満は一片たりとも罪悪感も抱かなかった。

當然,對他而言除了靜子之外的性命,價值連路邊一塊石頭都不如。

もっとも、彼にとって静子以外の命は路傍の石ほどの価値もないのだが。

「用哈希什(ハシシ)無法如願控制思考的問題無法解決,但這個較易控制,也不用擔心外洩。」

「ハシシでは思うように思考制御できないという問題が解決できなかったが、こちらなら制御しやすいし、よそへ漏れる心配もない」

(難道……那三十人是……)

(まさか……例の30人は……)

「以上就是我的話,鳶加藤。再多打探就準備好喪命吧。」

「話は以上だ、鳶加藤。これ以上、探るのなら首を覚悟しろ」

話被單方面打斷後,足滿收拾工具離開了。鳶加藤沉默地注視著足滿耕過的田地片刻,然後彷彿要將胸中的黑暗吐出般低聲自語。

一方的に会話を打ち切ると、足満は道具を片付けてその場を去った。しばらく無言で足満が耕した畑を見ていた鳶加藤だが、やがて胸の奥にある黒いものをはき出すように呟(つぶや)いた。

(捨命的兵士……嗎。這段期間雜賀衆周遭會一片動盪。)

(命を捨てた兵……か。ここしばらく雑賀衆の周辺は荒れるな)

某年十二月的某日,志賀之陣的論功行賞在信長的居城岐阜城舉行。

一二月のとある日、志賀の陣における論功行賞が信長の居城・岐阜城で行われることとなった。

在可說是信長最大危機的志賀之陣中,正因每人的努力充分發揮,他才勉強逃過滅亡的危機。

信長最大の危機とも言える志賀の陣において、各自の働きが存分になされたからこそ、彼は辛くも滅亡の危機を免れた。

「第一功! 森三左衛門可成!」

「第一功! 森三左衛門可成!」

雖然很難為各人的功勞排出順位,但若硬要排第一位,非森可成莫屬。正因他的作為,信長未被奪取京城,也未遭到背後的襲擊。

働きの順位を付けにくい状況だが、あえて一位をつけるのなら森可成以外にない。彼の働きによって信長は京を奪われることなく、さらに背後から襲撃を受けることがなかったからだ。

此外,即便不能上戰場,他也以人脈從事外交,策反反織田聯合的一部分,誰都看得出他在志賀之陣的表現最為突出。

また、戦場(いくさば)に立てずとも人脈を使った外交で、反織田連合の一部を調略するなど、誰が見ても彼が志賀の陣で一番の働きをしたことは明白だ。

「可成,化解亡國之危的表現,實乃大義所在。」

「可成、亡国の危機を凌ぎ切った働き、誠に大義であった」

「是!」

「はっ!」

可成獲得了兩件名茶具、金子,以及知行地。之後柴田、佐々、前田利家、木下藤吉郎秀吉、丹羽長秀、明智光秀等多名武將也各自獲得了褒賞。

可成には名茶器二つ、金子、そして知行地が与えられた。その後も柴田や佐々、前田利家、木下藤吉郎秀吉、丹羽長秀、明智光秀と多くの武将に褒美が与えられた。

「(喂喂,我看起來好像沒什麼褒賞要發給我們?)」

「(なぁなぁ、俺らには褒美なしの気配がするのだが?)」

坐在旁邊的慶次低聲對靜子說。

隣にいる慶次が静子に小声で話しかける。

「(那當然。這次我們無視了命令。不是和阻止宇佐山城陷落抵消了嗎?)」

「(そりゃそうでしょう。今回、私らは命令を無視したのだから。宇佐山城陥落阻止で相殺(そうさい)じゃないの?)」

「(……嘛,原本是要參陣野田・福島,也沒辦法了吧)」

「(……まぁ本来は野田・福島への参陣だから仕方ないか)」

慶次似乎對褒賞也不怎麼感興趣,乾脆點頭認了並聳了聳肩。

慶次も褒美には然して興味がないのか、あっさり納得して肩をすくめていた。

本來靜子就對論功行賞沒興趣。所贈的是寶物、茶具、刀、馬,對靜子而言多是難以打理之物,即使得到了也多半會直接賜給他人。

もとより静子は論功行賞に興味がなかった。与えられるものは宝物、茶器、刀、馬だが、静子にとっては扱いづらいものばかりで、授かってもそのまま他人に下賜するのが落ちだ。

她更想快點結束回家,查看山葵的栽培狀況。

早く終わって帰宅し、わさびの栽培状況を確認したい気持ちの方が強かった。

「以上。此次除了上述者外,還有兩項表彰武功的特別武功。」

「以上だ。そして此度(こたび)は、彼らの他に武功をたたえる二つの特別武功がある」

靜子以為論功行賞已經結束,但主持人說還有後續,讓她感到不耐。

論功行賞は終わりと思った静子だが、進行役はまだ続きがあると語ったことに静子は辟易とした。

「第一項是守護宇佐山城到底的士兵們。若無他們獅子般奮戰的作為,無法守住宇佐山城。捨命而戰的武士們理應被刻入特別武功。」

「一つ目は宇佐山城を守り抜いた兵たちだ。彼らの獅子奮闘の働きなくして、宇佐山城を守りきることは叶わず。命を捨てて戦った武士たちは、特別武功に刻まれて然(しか)るべきである」

信長以近乎默禱的氛圍發言。是否由他親自頒授特別武功,主持人閉口不言。信長閉上雙眼,皺起眉心繼續說道。

黙とうを捧げるような雰囲気で信長が語る。特別武功は彼自身が語るのか、進行役は口を閉ざしていた。信長は目をつむり、眉間にしわを作りながら言葉を続けた。

「以性命為祖國奠基的英靈們,請安歇吧。」

「その命を以て祖国の礎(いしずえ)となった御霊(みたま)よ、安らかに眠れ」

聽了信長的話,家臣們不待命令便合掌祈禱,為那些無墓碑埋於土中士兵的英靈慰靈。

信長の言葉を聞いた家臣たちが、誰に言われるまでもなく合掌して祈った。墓標なき土に眠った兵たちの御霊を慰めるために。

當眾人合掌結束時,信長睜開眼述說第二項特別武功。

やがて全員の合掌が終わったころ、信長は目を開いて二つ目の特別武功について語り出した。

「第二項也與宇佐山城有關。那些人在宇佐山城竭盡全力戰鬥到底,徹底擊潰反叛的六角,促成近江國的安定,並使甲賀眾的策反工作更加容易。我欲將第二項特別武功授予那些不在臺面上、不求武功、僅作陰中工作者的諸人。」

「二つ目も宇佐山城に関係する。その者たちは宇佐山城で死力を尽くして戦い抜き、反逆した六角を徹底的につぶして近江国の安定に寄与し、甲賀衆の調略を容易にした。表舞台に立たず、武功を求めず、ただ陰の働き手として尽力した者たちに、わしは二つ目の特別武功を与えたい」

(啊,總覺得有不好的預感)

(あ、なんか嫌な予感がする)

「靜子軍總大將・靜子!前田慶次、可兒才藏、森勝藏!諸位的功勞,實在是大義凜然。」

「静子軍総大将・静子! 前田慶次、可児才蔵、森勝蔵! 主らの働き、真に大儀であった」

靜子頭痛加劇,但既然被點名,還是得上前。織田家臣投來讚許的目光,隨之而來的則是嫉妒與反感等惡意。

頭が痛くなった静子だが、名前を呼ばれたからには前へ出ないわけには行かない。織田家家臣からの賞賛の眼差し、それと同時についてまわる嫉妬や反感といった悪意。

面對正負情緒同時襲來,不知是因多次征戰而變得強悍,抑或精神上變得厚實,靜子輕輕化解家臣們的惡意,移到信長前方。

正と負の感情を同時に受けるも数多の合戦で逞(たくま)しくなったのか、それとも精神的にずぶとくなったのか、静子は家臣たちの悪意を軽く受け流して信長の眼前に移動する。

「哦……戰爭竟能讓人長成這般剛強。剛會走路的嬰兒都變成一副樣貌十足的男子了呢。」

「ほぅ……いくさとは人をこれほど逞しく成長させるのか。歩き始めの赤子が、いっぱしの面がまえをするをのこに変わりおったわ」

信長自言自語,露出不懷好意的笑。靜子坐到面前時,信長的表情變得凝重。

誰に語るわけでもなく、信長は独り言を呟いて不敵な笑みを浮かべた。静子が目の前に座ると信長は表情を引き締める。

「靜子、前田慶次、可兒才藏、森勝藏,諸君的作為,實屬大義。」

「静子、前田慶次、可児才蔵、森勝蔵、その方らの働き、大儀であった」

俸祿大家同樣獲得刀、馬、金子,但只有靜子額外得到一件名茶具與永樂錢紋旗。

俸禄は全員共通に刀、馬、金子が与えられたが、静子にだけ名茶器一つと永楽銭紋旗が追加で与えられた。

永樂銭紋旗是信長用作旗紋的圖樣。不過此旗紋僅曾賜予水野氏、黑田氏、仙石氏等寥寥數人,很少下賜給家臣,因此極為殊榮。

永楽銭紋旗は信長が旗紋として使用していた。しかし、この旗紋は水野氏、黒田氏、仙石氏が拝領した程度で、家臣に下賜されることは少なく、ゆえに大変名誉なことである。

「以上論功行賞到此結束,但有一件事要告知諸位。」

「以上で論功行賞は終わるが、一つだけ皆に知らせておく話がある」

信長輕拍手示意小姓,入口的襖靜靜被開啟。走進房內的,是近衛前久。

信長が軽く手をたたいて小姓へ合図を送ると、入り口の襖が静かに開けられた。そこから部屋へ入ってきたのは近衛前久だった。

看到他的身影那瞬間,靜子就明白接下來會發生什麼。頭痛更甚,但她認為這是信長深思熟慮的舉動,便抓了抓後腦以分散心神。

彼の姿を見た瞬間、静子は次に何が起きるか理解した。一層頭痛が激しさを増したが、信長が考えた上での行動と思い、気分を紛らわすように後頭部をかいた。

前久帶著柔和的笑容走到靜子身旁,然後坐了下來。

前久は柔らかい笑みを浮かべながら静子の横まで移動すると、その場に腰を下ろした。

「大家也都好奇吧,差不多該揭露靜子的身分了。」

「皆も気になっておるだろうし、そろそろ静子の正体を明かそう」

那話一出周遭一陣騷動。靜子的姓氏是綾小路,卻無論如何查證都找不到她生於綾小路家的證據。

その言葉に周囲がざわつく。静子の名字は綾小路だが、どれだけ調べても静子が綾小路家に生まれたという証拠はない。

上洛後信長還暗中讓滝川一益調查,但關於她的訊息一件也沒查到。

上洛後も信長は隠れて滝川一益に調べさせたが、彼女に関する情報は一つも出てこなかった。

已知的只有有一天信長從不知何處撿到她,如今覺得她十分有用。

分かっている事はある日突然、信長がどこからともなく拾い、今では重宝しているという事だけだ。

「事情的開端是現將軍之兄、那位劍豪將軍與織田殿密會之時。我在與上杉家分道揚鑣後,便尋找能託付夢想的武家。在那時遇上織田殿與劍豪將軍的會談,我視其為良機,硬是要求參加會談,並在那裡向織田殿承諾協助。那位就是她。」

「事の始まりは現将軍の兄であられる剣豪将軍と織田殿が密会した時の事です。私は上杉家と袂を分かった後、夢を託せる武家の方を探しておりました。そこに織田殿と剣豪将軍の会談。私はこれを好機ととらえ、無理を言って会談に参加させて頂き、そこで織田殿に力を貸す約束をしました。それが彼女です」

(真能把那種謊話說得理直氣壯啊……我做不到)

(よくもまぁその手の嘘を平然と言えるなぁ……私には無理だ)

前久滔滔不絕地說著滿篇謊言。對不知真相者而言,他的話就成了事實。

前久は嘘八百を詰まることなく語る。真相を知らない者にとっては、前久の言葉が事実だ。

「諸位大概也多少有所察覺,我曾禁止她使用近衛家的名號。一則為防間諜,二則若要顯露才能,身分不明反而更為方便。」

「皆さんも薄々感づいておられると思いますが、彼女には近衛家の名を使う事を禁じておりました。一つは間者対策、もう一つは才を見せるには、身元不詳の方が都合が良かったからです」

(隨你們便吧……)

(もう好きにしてぇ……)

前久那九成是謊言的言辭仍在繼續。對此,靜子放棄了思考。

なおも前久の9割が嘘の話は続く。それに対し、静子は考える事を放棄した。

綾小路靜子確實是她的本名,但在織田家家臣間,近衛靜子的名號反而被視為事實。武將們對她被視為近衛家的人感到驚訝,並對她生出某種畏懼。

綾小路静子が彼女の本名だが、織田家家臣の間では近衛静子の名が事実として定着した。静子が近衛家の者という事に武将たちは驚き、彼女に一定の畏怖を抱いた。

但是,慶次、才蔵和長可的態度毫無改變;慶次甚至說「人一天有三合米就能活下去,比起那個我更想喝酒」,比起靜子的姓氏更重視酒。

しかし、慶次や才蔵、長可は態度が変わらず、慶次に至っては「人は一日米が三合あれば生きていける。それよりお酒が呑みたい」と静子の姓より酒の方が大事だった。

結果,靜子就是近衛家的人這件事對周遭來說並不重要,反倒是她的見識與那不合場所的勇氣讓人覺得說得通而已。

結局、静子が近衛家の人間であろうと周囲にとっては大した事ではなく、むしろ彼女の知識と場違いな胆力に納得がゆくだけの話だった。

雖然有波瀾,但在迅速進行的論功行賞數日後,靜子從信長那裡緊急獲得了100名足輕。

波乱はあれど速やかに為された論功行賞から数日後、静子は信長より100名の足軽が緊急で与えられた。

她為如何處理兵力而煩惱。過去兵員增減常有,但像這次被給予約一百人的情況還是頭一次。

彼女は兵の扱いに頭を悩ませる。今までも兵の増減はよくあることだったが、100人程度を与えられたことは初めてだからだ。

「啊—嗯,怎麼辦好呢。暫時讓新兵接受訓練應該可以吧」

「あーうん、どうしよっかなぁ。暫く新兵訓練させれば良いかな」

「和往常一樣,應該從體力測定開始吧」

「いつものように体力測定からだろ」

長可對為難的靜子這樣插話。

頭を悩ませる静子に長可が突っ込む。

靜子軍對兵員採取一開始以體力測定名義的篩選。體力測定落選的人會被分配到靜子擬定的兵站隊訓練,通過體力測定的人則要接受長可親身體驗過的特別訓練。

静子軍は兵に対し、最初は体力測定という名のふるい落としをしていた。体力測定で脱落した人間は兵站隊向けの静子立案の訓練を、体力測定に合格した人は長可自身が身を以て体験した特別訓練を課す。

不管哪一方,訓練都在長可的監督下進行;他的訓練在其他軍隊間也頗受好評,有時還會有外部人員參加訓練。

どちらにせよ長可の監督の下で訓練を受ける事になるが、彼の訓練は他の軍隊でも好評でたまに外部から訓練に参加する者もいる。

靜子軍分為參與合戰的戰鬥軍與負責後方支援的兵站軍兩部分。

静子軍は合戦に関わる戦闘軍と、後方支援を担う兵站軍の二つに別れている。

兵站軍除了從事土木工程的黑鍬衆外,還有負責將領伙食的台所衆、治療負傷兵的金瘡醫衆、處理衛生防疫與疾病治療的衛生衆、護衛與運送武器及糧食的物流衆、擔任斥候的斥候衆、負責傳令與早馬等通信工作的通信衆、以及扱軍用犬的警備衆等。

兵站軍は土木工事を行う黒鍬衆の他に武将の食事を担当する台所衆、負傷兵を治療する金瘡医衆、衛生や防疫、病の治療を行う衛生衆、武器や食料を警護・運搬する物流衆、斥候を担う斥候衆、伝令や早馬などの通信関係を担う通信衆、軍用犬を扱う警備衆などがいる。

要順利執行軍事行動,充實的後方支援比什麼都重要,但他們常被賭上性命作戰的人罵成膽小鬼而遭輕視。

円滑に軍事作戦を行うには、後方支援の充実が何よりも大事だが、彼らは命を賭けて戦う人間から腰抜け呼ばわりされ、軽んじられる事が多かった。

然而,常說羅馬軍的強大在於兵站,可見兵站對軍隊有多重要。此外,劉邦有蕭何、曹操有荀彧等名將背後,總有負責兵站的專家存在。

しかし、ローマ軍の強さは兵站にあり、と言われるほど軍にとって兵站は大事な存在だ。また、劉邦に蕭何、曹操に荀彧と有名な人物には、兵站を担うエキスパートが必ず存在した。

信長雖不常掛在嘴上,但他認為合戰重在進入戰鬥前做了什麼。因此,他對靜子充實後方支援感到滿意,有時也會暗中採用她的計畫。

信長も口には出さないが、合戦はそれに至るまで何をしたかが重要と考えている。ゆえに、静子が後方支援を充実させている事に満足し、時には彼女の案をこっそり採用していたりもした。

能利用的東西,就算是敵方擅長的戰術、戰略或理論也會納為己用。這種果斷也是信長的強項之一。

利用できるものなら、例え敵が得意とする戦術・戦略、理論ですら自軍に採用する。この思い切りの良さが信長の強みでもあった。

靜子聽完長可的意見稍作思考後,轉向他並說出結論。

静子は長可の意見を聞いて少し考えた後、彼の方を向いて結論を口にした。

「這次由我跑。最近忙,訓練有點偷懶嘛」

「今回は私が走るよ。最近忙しくて訓練をさぼり気味だしね」

「是嗎。這次會有多少人能活下來呢」

「そうか。今回は何人生き残るのだろうな」

邊聊著兩人整備好裝備,收拾完便移向等待著一百名兵士的廣場。

そんな会話をしつつ2人は準備を整える。支度を終えると100人の兵が待つ広場まで移動する。

因為事先已讓他們列好隊,靜子與長可站到一百人面前時並沒有花太多力氣。

あらかじめ整列させていたおかげで、大した労力もなく静子と長可は100人の前に立つ。

「欸——注意。事前的說明想必已聽過了,所以我沒什麼要多說。接下來各位要接受體力測定。」

「えー、はい注目ー。話は事前に聞いていると思うので、私から言うことはありません。さて、皆さんにはこれから体力測定を行って貰います」

靜子踏上木製的足台,拿著木製的大喇叭對一百名兵士說話。果不其然,新兵們開始以輕視的態度對待她,這幾乎已成為慣例。

木製の足台に乗り、木製のメガホンを使って静子は100人の兵に話しかける。やはり、というか最早お決まりとなりつつあるように新兵たちは静子を侮った態度を取る。

不過,遠處觀看的慶次與才蔵,以及站在靜子旁邊的長可,對於他們的態度能維持多久暗自高興地笑了起來。

しかし、遠目に見ている慶次や才蔵、そして静子の横にいる長可は、彼らの態度がいつまで保(も)つか楽しみだとほくそ笑んだ。

至今為止能撐最久的人大約是五十分鐘。其他人多在進入體力測定前的熱身就喊不住,大概能撐二十分鐘就算不錯了。

今までに一番長く保った者でおよそ50分だ。他は体力測定に入る前の準備運動で音(ね)を上げる、だいたい20分も保てば良い方だ。

「本來應該說要穿便於活動的衣著,但這次請就保持原樣吧」

「本来なら動きやすい格好で、と言いたいところですが今回はそのままの格好でお願いします」

大約十分鐘後,體力測定,也就是單純的跑步,開始了。領頭的不必說是靜子,後面則是一百名新兵排成隊伍跟著跑。

それから10分ほどして体力測定、もとい単純なランニングが始まった。先頭は言うまでもなく静子、その後ろを100人の新兵たちが並んで走るだけだ。

規則很簡單:靜子跑到體力極限為止、全員放棄、或是除了靜子之外已經沒有人能跑為止,三者擇一即結束。

規則は単純、静子が体力の限界に達するまで走る、全員がギブアップする、走れる人間が静子を除いていなくなるのどれかだ。

「喔,真拼呢。大概在不到兩圈內,會有一半脫落吧」

「おー、頑張るねぇ。多分、2周しない内に、半分は脱落するだろうがな」

原本在遠處圍觀的慶次,不知為何覺得近看比較有趣,已經不知不覺站到長可旁邊了。

遠巻きに見ていた慶次だが、間近で見る方が面白いと思ったのか、いつの間にか長可の隣に立っていた。

慶次把手擋在額前開心地看著,長可則是一臉不太高興的表情。

手をかざして楽しそうに見ている慶次に対し、長可は面白くないといった表情をしている。

「能撐一圈的人就算不錯了。跑在沙地上,看起來與實際不同,會消耗很多體力。對沒經驗的新兵來說會很嚴苛。」

「半分は一周出来れば良い方だ。砂の上を走るってのは、見た目に反して体力を多く消耗する。この手の訓練を経験したことのない新兵では厳しいだろうな」

長可的判斷是正確的。雖然只是跑一圈五百公尺的跑道,但因為是沙地,無法用力蹬地,必然比硬地消耗更多力氣。

長可の考えは正しかった。一周500メートルのレーンを走るだけだが、砂ゆえに地面を強く蹴ることができない。必然的に硬い地面より力を多く使う。

單憑一步的差異或許微小,但累積起來就有差別。果不其然,跑完兩圈時差不多有八成的人已疲憊不堪,拖著腳步走著。

一歩だけなら小さな違いだが、それが積み重なれば話は別だ。案の定、二周を回り終えるころには、8割近くが疲労困憊して足を引きずっていた。

「兩圈完成——。看吧,低頭會更容易疲勞喔」

「二周完了ー。ほら、下を向いていると余計疲れるよ」

相較之下靜子還顯得綽綽有餘。她維持與最初相同的節奏,進入第三圈。還沒跑完一半,就已有七成的人喊出體力到極限而停下來。

対して静子はまだまだ余裕といった表情だ。最初と変わらないペースを維持し、三周目に突入する。半分も走り終える前に7割が体力の限界を訴えて足を止めた。

第三圈抵達終點的,除靜子外只剩一人。那人看起來也無法跑完第四圈,於是靜子在那裡終止了體力測定。

三周目のゴールに到着したのは、静子を除けばたった1人だった。その人物も四周目を走りきれる様には見えなかったので、静子はそこで体力測定を止めた。

「看來大家都脫落了,結束。」

「全員脱落みたいなので終了」

靜子宣布結束時,新兵們鬆了一口氣。然而,他們很快就知道絕望還沒結束。

静子の終了宣言に新兵たちはホッと胸をなで下ろす。しかし、すぐに彼らは絶望を知る。

「那麼休息十分鐘之後,接下來進行引體向上。」

「では10分の休憩の後、次は懸垂を行うよ」

得知體力測定後面還有項目的新兵們,眼前真的像是一下子變得一片漆黑。

体力測定に続きがあることを知った新兵たちは、文字通り目の前が真っ暗になった。

有個人在遠處環顧著那群人。

そんな彼らを遠巻きに見ている人物がいた。

「哼,果然不習慣的話,義弟也會吃不消吧」

「ふっ、流石に慣れていなければ義弟も厳しいか」

是信長。當他從長政那裡聽到「從新兵重新開始」的商議時,第一個想到的就是把他丟進靜子軍裡。

信長である。彼は長政から「新兵からやり直す」と相談を受けたとき、真っ先に静子軍へ放り込むことを思いついた。

在其他地方因為出身可能會引發麻煩。就這點而言,靜子軍全是古怪的人物,即使混進幾個人也不會太在意。

他では素性から面倒なことが発生する可能性がある。その点、静子軍はくせ者揃いの軍であるため、多少の人物が入っても特に気にならない。

而且靜子軍不以身分或血統來評斷人。只要有才能與運氣,就能升到更高的地位。

そして静子軍は身分や血で人を判断しない。才能と運があれば上の立場に上がることができる。

「與命運抗爭吧,義弟。若你有讓命運屈服的力量,必能東山再起」

「運命と戦え義弟よ。もし、貴様に運命を屈服させる力があるなら、必ず返り咲くことができようぞ」

信長估計滅掉淺井家大約需要兩年左右的時間。

信長は浅井家を滅ぼすのにかかる時間は、約2年程度と考えている。

小谷城(おだにじょう)以堅固著稱的城堡。然而,不管是哪種城池,都不可能單靠一座城而存活。若把水與糧食的補給路線全部斷絕,從內部崩壞是自明之理。

小谷城(おだにじょう)は堅牢を誇る城だ。しかし、どの様な城も単独で生き残ることは不可能だ。水と食料の補給ルートを全て潰せば、内側から崩壊し始めるのは自明の理だ。

「從現在起兩年,在那之前要增強實力」

「今より2年、それまでに力を付けよ」

信長沒對任何人說,只低聲喃喃。還沒等馬廻衆反應,信長便回頭策馬離去。

誰に言うのでもなく信長は小さく呟く。馬廻衆が反応する前に信長は馬首を返すと、その場を後にした。

療養結束的森可成帶著年末的問候拜訪了靜子的家。此事本身並無大礙,氛圍也平和地結束了。

療養を終えた森可成が、年末の挨拶を兼ねて静子の家を訪問した。それ自体は特に問題もなく、穏やかな雰囲気のまま終わった。

但不知為何,可成竟然提出想和長可切磋一番。

しかし、何を思ったか分からぬが、可成が長可と手合わせしたいと言い出した。

靜子覺得,可成左臂留有殘疾,現在還有些麻木,這樣可能有點勉強。然而知道長可充滿幹勁後,靜子明白自己無法阻止他。

左腕に障害が残り、今も若干しびれがある可成では、少々厳しいのではないかと静子は思った。しかし、長可がやる気を出している事を知り、静子は止める事が出来ないと悟る。

畢竟若以槍互擊發生殺傷事件,所有人都得負責,因此改以長棒較妥。可成揮動棒子數次確認手感後,轉向長可。

流石に槍での手合わせで殺傷沙汰になれば、全員が責任を取らねばならぬため、長棒での手合わせとした。可成は棒を何度か振って感触を確かめた後、長可の方を向く。

「不必客氣,就當我是敵人,全力來吧」

「遠慮はいらん。わしを敵だと思って本気で来るが良い」

長可一邊點頭,一邊朝可成跑去。

その言葉に頷くと同時、長可が可成に向かって走り出す。

起初遠遠觀戰的靜子、慶次與才藏以為可成會處於劣勢。然而揭開結果卻是長可的徹底敗北。

最初は可成が劣勢になるのではないか、と遠巻きに観戦していた静子や慶次、才蔵は思った。しかし、蓋を開けてみれば長可の完敗だった。

兩人周圍布滿了踏入時留下的足跡,但大多是長可的。可成以最小的動作化解長可的攻擊,並順勢借力攻擊長可。

二人の周囲は踏み込んだときに出来た足跡だらけだが、その殆どが長可の足跡だ。可成は最小限の動きで長可の攻撃を流すと、そのまま勢いをつけて長可を攻撃していた。

那動作不像是個五十歲上下、又左臂有障礙的人所為。

五十路手前の、それも左腕に障害を抱えている人間とは思えない動きだった。

「可惡! 可惡!」

「くそっ! くそっ!」

長可一邊提高聲量一邊揮舞長棒。或許因為焦躁與從未能正面交鋒的惱怒,他只是盲目亂揮。那種攻擊根本難以命中可成,輕易被閃避。

声を荒げながら長可は長棒を振り回す。焦りと一度も打ち合えぬ苛立ちからか、ただがむしゃら振り回すだけだった。その様な攻撃が可成にあたるはずもなく、簡単に避けられていた。

「嗚哇!」

「ぐおっ!」

在暴露出漏洞的長可軀幹上,可成的長棒狠狠地砸了下去。痛得跪地的長可,可成毫不留情地打擊他握棒的手。

隙だらけの姿をさらした長可の胴に、可成の長棒がぞんぶんに叩きつけられる。痛みの余り膝をついた長可だが、可成は容赦せず長棒を持つ長可の手を打擲(ちょうちゃく)する。

比賽結果誰看都知道是可成的壓倒性勝利。長可本人自不必說,為了鍛鍊他而安排訓練的靜子也難掩震驚。

勝負の結果は誰が見ても可成の圧勝だった。長可本人は勿論、彼を鍛えるために訓練を課した静子本人もショックを隠せなかった。

「武藝不錯,但狡猾還半調子。」

「腕は良いが、狡猾さは半人前だな」

撿起長可掉落的長棒後,可成說出了對這場切磋的感想。

長可の落とした長棒を拾った後、可成は手合わせの感想を口にする。

雖然呼吸有些紊亂,但仍能感覺到他還有餘力。相反地,長可喘著粗氣,體力被嚴重消耗,可見端倪。

多少、呼吸の乱れがあるものの、まだまだ余裕が感じられた。反面、長可は肩で息をし、体力を酷く消耗している事が伺える。

「而且你太依賴花招了。勝蔵,你太輕視基本功。就算再怎麼互打,也無法把我打倒。」

「そして技に頼りすぎだ。勝蔵、貴様は基本を蔑ろにし過ぎておる。それではいくら打ち合おうとも、わしを倒すことは出来ぬ」

可成的話讓長可驚覺。他理解到如同對方所指出的,自己從中途開始過度使用技巧,因為那些沒命中而接著使出下一招,結果越陷越深。

可成の言葉に長可はハッとなる。彼の指摘通り、途中から技を多用し、それがあたらなかったが為に次の技を、と泥沼にはまっていた事を長可は悟る。

對於他僅憑些微指點便找到答案,可成微微露出笑容。

彼が僅かな指摘で答えにたどり着いた事に、可成は小さく笑みを浮かべる。

「聽著,勝蔵。不要用花招去嚇唬士兵。只用一刺──普通無奇的一刺──就讓士兵畏懼。能做到那點才算成熟。」

「良いか、勝蔵。技で兵を怯えさせるな。一突き、何の変哲も無いただの突きだけで兵を怯えさせろ。それが出来れば一人前だ」

「……是」

「……はい」

聽見長可的回答,可成滿意地笑了,然後扶他起身。一邊拂去長可衣上的泥土,他為長可的成長感到高興。

長可の返事に満足げな笑みを浮かべると、可成は彼を助け起こす。長可の服に付いた土汚れを払いつつ、彼は長可の成長を喜んだ。

但可成不會把這些說出口。他口拙,而且長可一被誇獎就容易得意。儘管如此,不用言語,透過可成的動作,那份心意已傳到長可身上。

しかし、可成がその事を口にすることはない。口べたである上に、長可は褒めると調子に乗りやすい。だが、言葉に出さずとも、可成の手を介して想いは長可に伝わっていた。

不久把污垢全部拂去後,可成拍了長可的肩好幾下。

やがて汚れを全て落とした可成は、長可の肩を何度か叩く。

「超越我的背吧,勝蔵。以你是做得到的。」

「わしの背を越えろ、勝蔵。貴様になら出来る」

「老爸……嗯,不知道要到什麼時候,但我一定會超越你的背!」

「親父……おう、いつになるか分からねぇが、きっと親父の背を越えてみせるぜ!」

聽到長可的回應,可成微微笑著連連點頭。

長可の返事に可成は小さく微笑んで何度も頷いた。

鍛鍊完長可之後,森可成去拜見了信長。

長可を鍛えた後、森可成は信長の元を訪れた。

即便他從前線撤退,將家督讓給長子,他依然是信長的得力助手,也是最被信賴的人,這點沒有改變。

例え前線から身を引き、長男に家督を引き継がせても彼が信長の右腕であり、最も信頼されている人物に変わりはない。

仍然忙於政務與外交的協助,運用人脈進行交涉,以及培育下一代,與受傷前沒有太大改變。

政や外交の補助、人脈を生かしての交渉、次世代の育成など、負傷前と変わらず多忙の日々を過ごしている。

靜子也沒有改變。

それは静子も変わらない。

她似乎想在年末前完成委託的物品,各式各樣的東西被運來。年末最後送達的是三樣。

彼女が依頼した品物を年末までに終わらせようとしたのか、色々なものが届けられる。年末最後に届いたものは3つだった。

第一樣是玻璃製的培養皿。

一つ目はガラス製のシャーレだ。

培養皿是用於微生物培養實驗的玻璃平盤,為了將瓊脂培地當作平板培地使用而被發明出來的。

シャーレとは微生物の培養実験で用いられるガラス製の平皿の事で、寒天培地を平板培地として使用するために考案されたものだ。

自德國細菌學家尤利烏斯·理查爾特·培特里發明以來,便作為一般容器在科學實驗中廣泛使用。

ドイツの細菌学者ユリウス・リヒャルト・ペトリが発明して以降、一般的な容器として科学実験で広く使われるようになった。

需要這種容器的原因與盤尼西林的製造有關;雖然製造所規模不大,但盤尼西林的生產已經開始。

この容器が必要な理由はペニシリンの製造が関わってくる。製造所は小さいながらも、ペニシリンの製造は始まっている。

確認所製盤尼西林效果時,於培養皿上製備瓊脂培地是最簡單的方法。

製造されたペニシリンの効果を確認するには、シャーレに寒天培地を作るのが一番簡単だ。

然而培養皿為玻璃製,生產跟不上;為了湊足所需數量,靜子多次要求生產。

しかし、シャーレはガラス製であるため生産が追いつかなかった。それでも必要数を揃えるため、静子は何度も生産を依頼している。

目前是盤尼西林溶出液,但若純化度提高,靜子也考慮利用酒精的脫水作用使之結晶化,製成粉末。

今はペニシリン溶出液だが精製度が上がれば、アルコールの脱水作用で結晶化させ、粉末にする事も静子は考えていた。

這種天然盤尼西林,現代稱為盤尼西林G(苄青黴素),基本上用於對付革蘭氏陽性球菌。

この天然ペニシリン、現代ではペニシリンG(ベンジルペニシリン)と呼ばれる抗生物質は基本的にはグラム陽性球菌に活用する。

其中第一適應症為梅毒;治療梅毒螺旋體時,盤尼西林G比其他抗菌藥更有效。

だがその中で第一適応になるのが梅毒だ。梅毒スピロヘータを治療するとき、ペニシリンGが他の抗菌薬より効果的だ。

梅毒的主要傳染途徑是性行為,但也有懷孕中或出生時的母子垂直感染,導致先天性梅毒。

梅毒は第一感染経路が性行為だが、妊娠中、出生時の母子感染による先天性梅毒もある。

因為無法培養,雖於1998年完成全基因組序列,但至今致病機制仍幾乎未解明;不過不知為何可在兔的睾丸內培養。

培養が不可能のため、1998年に全ゲノムのDNA配列が決定したものの、現代でも病原性の機構は殆ど解明されていない。ただし、ウサギの睾丸内では何故か培養できる。

日本在1512年首次有梅毒的記錄。

日本では1512年に初めて梅毒が記録上に登場している。

若考慮梅毒出現在西方史料為15世紀末(但有諸說,並非定論),那麼僅數十年便傳入日本。

梅毒が西洋の歴史上に現れたのが15世紀末(ただし諸説あるので確定ではない)という事を考えれば、僅か数十年で日本へ到達した事になる。

梅毒以驚人速度蔓延,在盤尼西林發現之前無有效治療;日本有加藤清正、結城秀康、前田利長、淺野幸長等名人死於梅毒。

恐ろしい勢いで広まった梅毒はペニシリンが発見されるまで治療薬はなく、日本では加藤清正、結城秀康、前田利長、浅野幸長などの著名人が梅毒で死亡している。

在盤尼西林被發現之前,曾有用水銀療法或刻意感染瘧疾使其發燒,確認體內梅毒螺旋體死亡後再施用奎寧以取締瘧原蟲的方式,這種治療極度危險。

ペニシリンが発見されるまで梅毒には水銀療法や、意図的にマラリアに感染させて高熱状態にし、体内の梅毒トレポネーマの死滅を確認した後、キニーネを投与してマラリア原虫を死滅させるという、非常に危険きわまりない治療法も行われていた。

然而盤尼西林被發現後,這類治療便消失了。

だが、ペニシリンが発見されて以降、その様な治療法は姿を消した。

現代梅毒螺旋體尚未獲得對抗生素的耐藥性,依病期而異,但最多約以十二週左右的盤尼西林G給藥即可治癒。

現代でも抗生物質への耐性を梅毒トレポネーマは獲得していないため、段階にもよるが最高で十二週間程度ペニシリンGを投与することで治癒する。

題外話,美國阿拉巴馬州的塔斯基吉有一項政府機關自1932年起對當地貧困黑人400至600人進行長達40年的梅毒人體實驗。

余談だがアメリカ合衆国・アラバマ州のタスキーギで貧困層の黒人400から600人を対象に、政府機関が梅毒の生体実験を1932年から40年間にわたり実施した。

世所謂塔斯基吉梅毒實驗為研究梅毒晚期各種嚴重併發症而進行,研究者未告知受試者病情,讓其未接受治療而放任病程。

世に言うタスキーギ梅毒人体実験は、梅毒末期に起こる種々の重篤な合併症を研究する目的で行われ、患者に病気を告げず、未治療のまま放置した。

此外,對健康者在健康檢查後謊稱其血液有惡性疾病,並以「治療」之名注射梅毒,使其故意感染。

なお、健康体の人間は健康診断後、血液に悪性の病気があると嘘を告げ、「治療」の名の下に梅毒を注射し、意図的に感染させた。

此外在2010年揭露,同一保險機構於1946年7月至1948年12月間在中美洲瓜地馬拉也進行了梅毒人體實驗(即所謂瓜地馬拉梅毒實驗)。

更に1946年7月から1948年12月にかけて、同じ保険機関が中米のグアテマラでも梅毒の人体実験(世に言うグアテマラ梅毒人体実験)を行っていた事が2010年明らかになった。

此人體實驗駭人之處在於,當時已知病如何傳播且已有確立的治療方法,仍然進行此等實驗。

この人体実験の恐ろしい所は、病気がどの様に感染するかが判明している上に、治療法が確立している時代に行われた事だ。

培養皿是為盤尼西林所用,但送來的第二樣是苦艾(クソニンジン),學名為艾屬(Artemisia)。

シャーレはペニシリン用だが、届いたもの2つ目はクソニンジンだ。学名はアルテミシアという。

雖然日文名令人不便以口,但並非惡臭,而帶有艾草與薰衣草特有的氣味。

口に出すことが憚られるような和名だが、悪臭の類いではなく、ヨモギとラベンダー独特の匂いがする。

乾燥後香氣更濃,因此英文名稱為 sweet wormwood(意即「甜苦艾」)。

乾かすと更に香りが強くなるため、英名はスゥイート・ワームウッド(甘いニガヨモギ)と言われている。

不過苦艾的繁殖力旺盛,足以歸類為香草類。為一年生植物,但若地下莖殘存,仍可由此繁衍。

ただし、クソニンジンの繁殖力はハーブに分類されるに相応しいほど旺盛だ。1年草だが地下茎が残っていれば、そこから繁殖する事もある。

這種苦艾的乙醚萃取物(青蒿素)對甚至對奎寧耐藥的瘧疾都具有驚人的效果。栽培容易,在天然藥物中是相對簡便的特效藥。

このクソニンジンのエーテル抽出物(アルテミシニン)は、キニーネ耐性のマラリアであろうと驚異的な効果をもたらす。栽培は容易であり、自然由来の薬の中で比較的お手軽な特効薬だ。

說到瘧疾特效藥,奎寧最為人所知,但在日本無法栽培金雞納樹。

マラリアの特効薬と言えば、キニーネが最も有名だが、日本ではキナの栽培が不可能だ。

在透過東南亞來到日本的戰國時代,帶有對抗瘧疾的藥物是必要的。

東南アジアを経由して欧州商人が日本へ来訪する戦国時代、マラリア対策の薬を持つ必要性があった。

最早確認有瘧疾感染的時期可回溯至公元前八千至一萬年左右;在土耳其的一座古代城市出土了疑似罹患瘧疾的人類遺骨。

最初にマラリアの感染が確認される時期は紀元前八千年から一万年ころに遡る。トルコの古代都市からマラリアにかかったと思われる人骨が発掘されたのだ。

約公元前一世紀,古埃及女王克麗奧佩脫拉也受瘧疾所苦,且出土有相關浮雕;該浮雕被視為人類史上最早的瘧疾流行紀錄。

紀元前一世紀ごろ、古代エジプトの女王クレオパトラもマラリアに悩まされて、その事に関するレリーフも発掘されている。このレリーフは人類史上、最古のマラリア流行の記録と言われている。

此外,瘧疾並非熱帶獨有的疾病。

更にマラリアは熱帯地域特有の病気ではない。

在接近北極圈的芬蘭,二十世紀初也有數千人感染;美國與加拿大亦有感染記錄,日本也不能斷然說明不在感染範圍外。

北極圏に近いフィンランドでも二十世紀初頭に数千人が感染した。アメリカやカナダでも感染の記録が残っており、日本も感染範囲外とは言い切れない。

長年成因不明的瘧疾,在1880年由駐阿爾及利亞的法國陸軍軍醫沙爾·拉瓦蘭在病患血液中發現了瘧原蟲。

長年、原因が不明だったマラリアだが、1880年にアルジェリア駐在のフランス陸軍軍医シャルル・ラヴァランが患者の血液からマラリア原病虫を発見した。

而英國醫師羅納德·羅斯於1897年證明瘧疾病由蚊子媒介,這是相對近期的發現。

そしてイギリスの医師、ロナルド・ロスがマラリアを媒介するのは蚊であると証明したのは1897年と、比較的最近の事だ。

最後到達的那樣對靜子而言最為重要,那是一套防寒衣物。

最後に届いたものが、静子に取って最も重要なものだった。それは防寒着セットである。

具體而言是手套、襪子、腹帶與陶製暖水袋四件套;使用者不是靜子,而是守衛她據點的士兵們。

具体的には手袋、靴下、腹巻き、陶器製の湯たんぽの4点セットだ。これらを使うのは静子ではなく、彼女の拠点を防衛している兵たちだ。

靜子居住的地方由於信長的照顧,總是有兵士駐守。

静子の住む場所は信長の配慮により、常に兵が配備されている。

然而,他們同時承受著夏日的酷熱與冬天的寒冷。就算是工作,這樣會把身體弄壞。

しかし、彼らは夏の暑さも冬の寒さも一身に受けている。幾ら仕事とはいえ、これでは身体を壊してしまう。

除了夏天的暑熱之外,防寒也是必要。護衛的兵士如果因寒冷手僵而在緊要時刻無法動彈,那就糟了。

夏の暑さと共に冬の寒さ対策は必須だ。護衛している兵たちが、寒さで手がかじかんで肝心な時に動けないでは話にならない。

因此,即便在寒冷中,也要盡量採取措施讓士兵維持最佳狀態,這點很重要。

ゆえに、寒い中でも兵が可能な限り、万全の状態でいられるよう対策する事は大事だ。

「嗯——注意!現在每次發放防寒四件組,請依次領取並先行穿上。本次也兼作實地檢驗,會蒐集使用感想。」

「えー、注目! これより防寒4点を2つずつ配りますので、受け取った人から着込むように。なお、今回は実地検証も兼ねていますので、使い勝手の感想を聞き取りします」

「是!」

「はっ!」

靜子的宣告一響,包著四件套的風呂敷開始兩包兩包地分發給兵士們。大家立刻穿上腹帶、手套、襪子,並把熱水注入陶瓷製暖水袋。

静子の宣言を合図に、4点セットを纏めた風呂敷が2つずつ兵士に渡されていく。すぐさま腹巻き、手袋、靴下を着込み、陶器製の湯たんぽに湯を入れていた。

「好暖……我這個時期常會拉肚子,但有了這個應該能撐得住。」

「あったけぇ……俺、この時期は腹を下す事が多かったけど、これがあれば何とかなりそうだ」

「要是有酒就完美了,對吧?」

「これで酒があれば完璧、てか?」

「別鬧了。要是那樣做,織田大人的雷霆會落下的。」

「よせやい。そんな事したら、織田様の雷が落ちるぜ」

或許是因為寒意緩和,士兵們開始在各處閒聊。要是能配備防寒靴就完美了,但現狀成本太高,無法分給一線士兵。

寒さが緩和されて余裕が出たのか、あちこちで兵は雑談を交わす。防寒靴を配備出来れば完璧だったが、現状はコストがかかりすぎて兵士に回す余裕はない。

只能發給慶次、才藏、長可、彩等側近。其性能有保證,走在水地或融雪道路上也不會像深靴(ふかぐつ)那樣滲水。

慶次、才蔵、長可、彩など側近に渡せる程度だ。その分性能は折り紙付きで、水や雪解け道を歩いても深靴(ふかぐつ)のように水がしみこむ事はない。

「好,閒聊可以,但領到的人請依序回去工作。冬天期間請穿著這四件套。我會不時來詢問使用感受,請事先準備好能立即回答。」

「はい、雑談も良いですが受け取った人から順次仕事に戻って下さい。冬の間は4点を着用して貰います。時々、使い心地を聞きに行きますので、すぐに答えられるよう準備してて下さい」

「啊、是!」

「あ、はい!」

原本鬆懈的士兵們聽到靜子的催促慌忙回應,神情立刻嚴肅起來。

緩んだ空気に包まれていた兵士たちが、静子の発破に慌てて返事を返し表情を引き締める。

穿戴完畢的士兵一手拿著備用的風呂敷,各自回到指定位置。大家全都領完後,靜子大大地伸了個懶腰。

着込み終えた兵士たちは予備の風呂敷を片手に、それぞれ所定の位置へ戻っていく。全員が受け取り終えると、静子は大きく伸びをした。

「好——年末前要做的事已經做完了。雖然明年年初還有事要做,但能好好休息幾天。」

「よーし、年末までにやる事は終わったぁー。まぁ来年早々、やる事があるけど数日はゆっくり出来る」

靜子轉動著手臂,舒緩僵硬的肩膀。然而,新年一過又會有工作出現,忙碌的日子何時才會安定下來,靜子有時這麼想。

腕をぐるぐる回して、静子は凝り固まった肩をほぐす。しかし、新年を過ぎればまた仕事が出てくる。忙しい身はいつ落ち着くのか、と時々思う静子だった。

「明年一定要過上左團扇(うちわ)的生活。」

「来年こそ左団扇(うちわ)生活してやる」

喃喃自語這番話的靜子忘了,她去年年末也曾做過同樣的決心。

そんな事を呟く静子は忘れている。去年の年末も、同じような事を決意した事に。

可惜的是,世局並未給她休息的機會。原本無名的靜子軍在宇佐山城之戰完成了震撼的初陣。

そして残念な事に世の情勢は彼女に安息を与えない。今まで無名だった静子軍は、宇佐山城の戦いで衝撃の初陣を果たした。

名聲一出,立刻毀滅了近江國的霸主六角氏,各國驚訝之餘紛紛派出大量間諜想蒐集情報。

世に名が出てすぐ近江国の覇者・六角氏を壊滅させた事に各国は驚き、情報を得ようと多くの間者を放った。

過去寂靜的她周遭也逐漸熱鬧起來。無論她多麼渴望平靜生活,靜子的波瀾人生還會持續一陣子。

今まで静かだった彼女の周囲も、徐々に騒がしくなっていく。いかに彼女が静かな生活を望もうとも、静子の波乱に満ちた生活はこれから暫く続くのだった。