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戦国小町苦労譚

1569年 五月上旬

會談之後,靜子作為伴手禮,給了前久約一週份的醬油、出汁味噌和梅干。

会談の後に、静子は前久にお土産として醤油、出汁味噌、梅干しを一週間分ほど渡した。

不知道那是最後一個陷阱的前久,對於從靜子那裡收到的土產,微笑著接下了它。

それが最後の罠である事を知らない前久は、静子から渡された土産を顔を綻ばせて受け取ってしまった。

那些伴手禮正是遲效性的毒藥,當禮物用盡後,他無法忍受冷掉、索然無味的粗食,反而數著日子、期待下一次會談,前久為此感到震驚。

このお土産こそが遅効性の毒であり、お土産を使い切った後の冷めきった味気のない粗食に耐えられず次の会談を指折り数えて心待ちにしている自分に、前久は愕然とするのであった。

在靜子提出的兩個要求中,較為重視的並非要拉攏前久。

静子が提示した二つの要求のうち、より重きを置いていたのは前久の取り込みではない。

真正的目的,是解除本願寺第十一世宗主顕如的長子教如與前久之間的猶子關係。

本当の目的は、本願寺第十一世宗主顕如の長男・教如(きょうにょ)と前久の猶子(ゆうし)関係の解消だ。

要理解靜子為何以此為目的,就必須梳理本願寺的歷史。

これを静子が目的とした理由は、本願寺の歴史を紐解く必要がある。

不用多說,信長的宿敵是名為石山本願寺的宗教勢力。長達十一年的石山合戰,成為阻擋信長天下布武的最大障礙。

語るまでもなく信長の宿敵は石山本願寺という宗教勢力だ。十一年にも及ぶ石山合戦は、信長の天下布武を阻む最大の障害となった。

問題的石山合戰開始於元龜元年(1570年)九月十二日。

問題の石山合戦が始まった日は、元亀元年(1570年)九月十二日だ。

自那天起,原本保持中立的石山本願寺與一向一揆眾,便明確地舉起反信長的旗幟。

その日を境に中立を保っていた石山本願寺と一向一揆衆が、反信長の旗幟を鮮明にした。

而其背後牽扯到的,是前關白・近衛前久。

その裏に前関白・近衛前久がいた。

當畿內出現包圍信長的第一次聯盟動向時,三好三人衆向前久請求,勸顕如起兵。

畿内で第一次信長包囲網の動きが出てくると、前久は三好三人衆より顕如に決起を促す説得を依頼をされた。

作為朝廷實力者的前久,如何說服看似與俗世權力無涉的石山本願寺宗主顕如行動。

朝廷の実力者である前久が、俗世の権力と無縁と思える石山本願寺の顕如をいかに動かしたか。

為此,首先要了解本願寺的內部情況。

それにはまず本願寺の裏事情を知る必要がある。

本願寺宣揚親鸞聖人的教義,成功獲得下層民眾的支持。

本願寺は親鸞聖人の教えを説いて、下層の民の支持を集める事に成功した。

然而之後,本願寺面臨重大問題。組織龐大化、領地廣闊與大量的門徒,那時的本願寺並沒有守護這一切的力量。

しかしその後、本願寺は大きな問題に当たる。巨大化した組織、広大な所領と膨大な数の門徒、それらを守り抜く力が、当時の本願寺にはなかったのだ。

但並非沒有解決方法。若能取得某種東西,就能實現防護。

だが解決策がない訳ではない。あるものを手に入れれば、それが可能になる。

那就是由朝廷賜予的『守護使不入権(しゅごしふにゅうけん)』。

それは朝廷から与えられる『守護使不入権(しゅごしふにゅうけん)』だ。

守護使不入(しゅごしふにゅう)亦被稱為守護不入(しゅごふにゅう)。

守護使不入(しゅごしふにゅう)は守護不入(しゅごふにゅう)とも呼ばれている。

這是幕府所規定、特定公領或荘園可行使的權利,一旦被認定,即使以徵收段銭或追查犯罪者為名,也可以拒絕守護(守護大名)或守護使(守護大名派遣的官員)入內。

これは幕府が定める特定の公領や荘園が行使可能な権利であり、これに認定されると段銭徴収や犯罪者追跡という名目を以てしても、守護(守護大名)や守護使(守護大名が派遣した役人)の立ち入りを拒否する事が出来る。

原本『守護使不入権(しゅごしふにゅうけん)』是在鎌倉幕府成立時,為了保護朝廷與寺社的所領不受守護或地頭的暴虐而設置的。

元々、『守護使不入権(しゅごしふにゅうけん)』は鎌倉幕府が成立した時、守護や地頭の横暴から朝廷や寺社の所領を守るために設定されたものだ。

然而在畿內,向有力寺社捐獻田地的動向逐漸活躍起來,這些行為多以免除租稅為目的。

だが畿内ではいつしか、有力寺社へ田地を寄進する動きが活発になっていった。これはいずれも租税免除を目的とした動きである。

多虧這種運動,不僅出現可拒絕國家徵稅的『不輸の権(ふゆのけん)』,也開始出現能拒絕庄園外使者進入的『不入の権(ふにゅうのけん)』荘園。

この動きのお陰で、国家への租税を拒否出来る『不輸の権(ふゆのけん)』だけでなく、荘園外からの使者の立ち入りを拒否する事が出来る『不入の権(ふにゅうのけん)』を得る荘園が現れ始めた。

這些權利的擴散,使得寺社勢力對土地與民眾的私有支配開始形成。

こうした権利の広がりによって、寺社勢力の土地や民衆の私的支配が開始されていった。

想要獲得那個『守護使不入権(しゅごしふにゅうけん)』,就必須成為『門跡寺院(もんせきじいん)』。

その『守護使不入権(しゅごしふにゅうけん)』を獲得するには『門跡寺院(もんせきじいん)』になる必要がある。

『門跡寺院(もんせきじいん)』指的是由親王或五摂家出身者擔任住持的寺院,這些寺院會從朝廷得到包含『守護使不入権(しゅごしふにゅうけん)』在內的各種特權。

『門跡寺院(もんせきじいん)』とは、親王か五摂家の出身者が住職を務める寺院で、それらの寺院には朝廷から『守護使不入権(しゅごしふにゅうけん)』を含む様々な特権が与えられていた。

當然,本願寺宗主既非親王也非五摂家出身。

当然、本願寺宗主は親王でも五摂家の出身者でもない。

一般情況下無法成為『門跡寺院(もんせきじいん)』,但若採用『猶子(ゆうし)』這個方法,則可成為可能。

通常では『門跡寺院(もんせきじいん)』となる事は不可能だが、『猶子(ゆうし)』という方法を使えばそれが可能となる。

猶子(ゆうし)是與兄弟、親戚或他人的子嗣建立名義上親子關係的制度。

猶子(ゆうし)とは、兄弟や親類、他人の子と仮の親子関係を結ぶ制度だ。

與養子不同,猶子帶有較強的擬制性,且若情勢不利,關係也可輕易解消。

養子と違って擬制的な要素が強く、また都合が悪ければ関係を解消する事が簡単に行える。

以大內義長(よしなが)為例來說明。

例として大内(おおうち) 義長(よしなが)の場合を紹介しよう。

義長生為豐後大友氏第20代當主大友義鑑(よしあき)的次子。

義長は豊後大友氏の第20代当主・大友(おおとも) 義鑑(よしあき)の次男として生まれる。

在尼子氏與大內氏之戰中失去繼承人的大內義隆(よしたか)請求,與義長締結猶子關係。

尼子氏と大内氏との戦いに於いて後継者を失った、大内(おおうち) 義隆(よしたか)に請われて猶子関係を結ぶ。

然而後來於義隆生下實子義尊時,猶子關係被解除,義長返回豐後。

しかし、後に義隆に実子の義尊が誕生した際に猶子関係を解消され豊後へと帰国している。

無疑這種單方面解除的聯盟據說對九州諸大名造成相當衝擊。

無論この一方的な縁組解消は九州諸大名にかなりの衝撃を与えたとされている。

雖說本願寺並非處於絕對盤石的地位,但與五摂家之一締結猶子關係,對宗主而言仍是絕對必要。

盤石の立場ではないとは言え、それでも五摂家の誰かと猶子(ゆうし)を結ぶ事が本願寺宗主には絶対必要だった。

若無法成為五摂家的猶子,就無法取得『門跡寺院(もんせきじいん)』的資格。

五摂家の猶子(ゆうし)になれなければ、『門跡寺院(もんせきじいん)』の資格が得られないからだ。

因此,本願寺第十世宗主證如(しょうにょ)為了取得朝廷的後盾,接近五摂家之一的九條家,成為第十五代當主九條尚經(ひさつね)的猶子。

そこで本願寺第十世宗主の証如(しょうにょ)は、朝廷の後ろ盾を手に入れる為、五摂家の一つである九条家に接近し、第十五代当主・九条(くじょう) 尚経(ひさつね)の猶子(ゆうし)となった。

他的長子顕如也成為九條家第十六代當主九條稙通(たねみち)的猶子。

彼の長子である顕如も、九条家の第十六代当主・九条(くじょう) 稙通(たねみち)の猶子(ゆうし)となっている。

如此一來,本願寺成為了『門跡寺院(もんせきじいん)』,並獲得了『守護不入権(しゅごふにゅうけん)』。

これにて本願寺は『門跡寺院(もんせきじいん)』となり、『守護不入権(しゅごふにゅうけん)』を獲得した。

從第九世宗主實如到第十一世宗主顕如的一百年間,本願寺的教勢顯著發展,獲得了驚人的影響力,成為一股強大的勢力。

第九世宗主の実如から第十一世宗主顕如の百年の間、本願寺の教勢は著しく発展し、絶大な影響力を誇る一大勢力の地位を獲得した。

但那也須仗朝廷的後盾。

だがそれも朝廷の後ろ盾というものがあってこそ、である。

換言之,即便被認為與朝廷同等的宗教勢力,實際上也與朝廷的支配體制脫不了關係,反而必須屈從才能存活。

つまり朝廷と同等の勢力と思われた宗教勢力も、実際は朝廷の支配体制と無関係ではおられず、むしろ従属しなければ生き残れなかったのである。

話題回到織田家。

話を織田家へと戻そう。

時光流轉,自先前會談已過兩週,今日靜子再次與近衛前久會面。

時は流れて先の会談から二週間が経過し、本日静子は近衛前久と再び会談を行っていた。

雖然從前久身上已不像上回那般感到敵意與戒心,但仍未建立到會無條件接受靜子所提出要求的信任關係。

前久からは前回程の敵意や警戒心が感じられなくなったものの、静子の提示した要望を無条件に受け入れる程の信頼関係を構築するには至らなかった。

話雖如此,在宴席上廢除試毒等舉措,已展現出明確進展。

とは言え会食に際して毒見を廃するなど、確かな進捗を見せていた。

喝了自上次會談起便深得前久喜愛的餐後梅昆布茶、稍作歇息後,前久切入正題。

先の会談よりすっかり前久のお気に入りとなった食後の梅こぶ茶を飲んで一息ついた後、前久が本題に切り込んだ。

「在回答上次的請求之前,有件事想確認」

「さて、前回の要望に対する返事をする前に確認したい事がありまする」

話音剛落,前久的表情便變了。不再是那個悠然啜茶、露出破綻的前久。

言い終えると同時に、前久の顔つきが変わる。旨そうに茶を啜っていたどこか隙がある前久ではない。

那裡坐著一位在動亂時期擔任過關白、左大臣與太政大臣、在魑魅魍魎跋扈的朝廷世界裡擔任關白長達十四年的傑出人物。

動乱期に関白左大臣・太政大臣を務め、魑魅魍魎が跋扈する朝廷の世界で実に十四年もの間関白を務めた傑物がそこにいた。

僅僅對視便讓心臟如遭鷲掴,幾欲被重壓壓垮的靜子,咬緊後牙以氣力忍住。

相対するだけで心臓が鷲掴みされ、重圧に押し潰されそうになった静子だが、奥歯を噛んで気合で耐え切る。

「還請回覆,靜子殿。若我贊同妳的提案,將對我有何利得?」

「お答え頂きたい、静子殿。貴女の話に賛同するとして、私にどのような利がありましょう」

與上回不同,前久說出了靜子的名字。靜子對那含意瞭然於心,甚至感到不快也難以避免。

前回と違い前久は静子の名を口にした。その意味を静子は嫌というほどに理解していた。

即便靜子年下十歲,被視作女子兒童,前久卻仍以一個人的身份看待,且絕不會有任何手下留情。

例え静子が十も年下の女であろうと一人の人間と認めたと同時、女子どもであろうと前久は一切の手加減もしないという事だ。

「在回答近衛大人之前,須先聲明此會談為我個人獨斷,並非受我主織田弾正忠大人的意向所為。」

「近衛様の問いに答える前に、この会談は私の独断であり、我が主である織田弾正忠様の意向を受けてはおりません」

這種獨斷行為若處理不當會被視為『有謀反之心』,但靜子無論如何都必須將這次會談成功,甚至不惜以命相托。

下手をすれば『謀反の心あり』と取られる、静子の独断行動だが彼女はこの会談は命をかけてでも成功させなければならなかった。

「再次申明,我認為近衛大人的所望是排除公方大人與二條關白。」

「改めて申し上げます。近衛様の望みは公方様と二条関白様の排除、と私は見ております」

「哦……不,無需賣弄心機。確實我的所望如靜子所言。但織田殿帶著公方大人上洛,難以想像那織田殿會協力排除公方大人,難道不是?」

「ほぅ……いや、腹芸はすまい。確かに私の望みは、静子殿の仰る通りだ。だが織田殿は公方殿を擁して上洛された。その織田殿が、公方殿の排除に協力的になるとは思えぬが?」

「我不認為我方主君會長久事奉那等愚人,會冤枉一位被稱為傑物的近衛大人而將其放逐。」

「無実の罪を着せて、傑物と名高い近衛様を追放するような愚か者に、いつまでも我が主が仕えるとは思えませぬ」

「哈哈,靜子殿毫不客氣。」

「ははっ、静子殿は遠慮がない」

「既然是坦誠相對,故讓我坦率說出我對公方大人的評價。」

「本音で語り合う、という事ですので私の公方様の評価を正直に語らせて頂きました」

「呼,果然如此……很好,我同意靜子殿的意見。」

「ふっ、そうだったな……良かろう、静子殿の話に賛同しよう」

出乎意料地,前久如此乾脆地道出同意之言。

意外にもあっさりと前久は了承の言葉を口にした。

聽到那話的靜子,身體不禁差點失去力氣。

その言葉を聞いた静子は、思わず身体から力が抜けそうになる。

「不過,靜子殿的請求須以相應的無理條件作交換。」

「ただし、静子殿の要望に相応しい無茶を飲んで頂こう」

前久的話令她再度打起精神。

前久の言葉に再び身体に気合を入れる。

靜子所言前久與信長利益一致只是事後論,不能作為作為交易回報的利益。

静子が語った前久と信長との利害の一致は結果論であり、対価として供される利にはなり得ない。

若要轉入織田陣營並解除與教如(きょうにょ)的猶子關係,彼方必須獲得相當的回報才能達成平衡。

織田陣営に移り、教如(きょうにょ)との猶子関係を解消するには、それ相応のものを彼が手にしなければ釣り合いが取れない。

「是啊……嗯,我有個熟人罹患腳病(かくびょう)(腳氣)。雖然已嘗試藥師煎煮藥湯甚至加持祈禱等一切方法,但無復原希望,懇請靜子殿為其治療。」

「そうだな……ふむ、私の知り合いが脚病(かくびょう)(脚気のこと)を患っております。薬師の煎ずる薬湯や加持祈祷に至るまで手を尽くしたものの快復の見込みがなく、是非とも静子殿に治して頂きたい」

「那、那未免太離譜了!」

「そ、それは幾ら何でも無茶です!」

長治對前久的話先一步做出反應。

前久の言葉に長治がいち早く反応する。

腳氣在維生素B1發現之後仍被視為難治之症,直到1950年代後半仍造成許多死亡。

脚気はビタミンB1が発見された後も難病扱いで、1950年後半になるまで多くの死者を出した。

而且這是昭和時代的事,若在戰國時代則被視為不治之症。換言之,前久的要求是要將不可能變為可能的無理之事。

しかもこれは昭和時代の話であり、戦国時代ならば不治の病扱いである。つまり前久の要求は、不可能を可能にしろという無理難題となる。

「靜子殿所言欲解除猶子關係,確是如此艱難。既然如此,我方亦須通過相應的無理要求以求平衡。那麼,請靜子殿回覆。」

「静子殿の仰る猶子の解消というのは、それほどの難事。ならばこちらも、相応の無茶を通させて頂かねば釣り合いが取れぬ。さて、それでは静子殿の返答をお聞かせ願おうか」

「沒問題。若只是那種程度的事,能得到近衛大人的援助,便是廉價的代價。」

「問題ありません。その程度(・・・・)の事で、近衛様のお力添えを頂けるのでしたら安いものです」

「哦哦,妳有信心能治好腳病。失禮了,靜子殿知不知腳病是何種病?」

「ほほぅ、脚病を治せる自信があると。失礼ですが脚病が何なのか、静子殿はご存知なのでしょうか」

「首先是食慾不振、全身倦怠;接著心悸、氣短、感覺麻痺、腳部麻木或浮腫。進一步惡化則四肢無力而臥床不起,最後會引起心臟異常致死。」

「まずは食欲不振、全身の倦怠感。次いで動悸、息切れ、感覚の麻痺、足のしびれやむくみ。更に進行すれば手足に力が入らず寝たきりになりますね。最後には心の臓に異常を来たし死に至ります」

「……正是如此。罹患腳病而喪命者眾,痊癒者極少。妳仍說能治好嗎?」

「……その通り。そして脚病を患い死を賜る人間は多い。反して病が癒えた人間は極僅か。それでも治せると仰るか」

「是的,我的回答不變。」

「ええ、私の回答は変わりません」

「好吧。若腳病痊癒之日,我便保證歸附織田家。然若未能痊癒,妳必須承擔相應的覺悟。」

「良かろう。では脚病が治った暁には、私は織田家にお味方する事を確約致しましょう。しかし、治らなかった場合は、それ相応の覚悟をして頂きます」

雖然意在說些威脅話的前久,靜子面無表情、微微一笑地說道。

脅し文句を言う前久だが、静子は表情を変えず小さく笑みを浮かべながらこう言った。

「沒有任何問題」

「委細問題ありません」

靜子與近衛前久最後出現一段波瀾的會談,大約只有兩小時這麼短,然而在旁待命的長治與彩卻被迫緊繃得彷彿過了半日。

最後に一波乱を見せた静子と近衛前久との会談は、およそ二時間という短いものだったが、傍らに控えていた長治と彩には半日にも感じられる程の緊張を強いられるものであった。

會談結束後不久,前久便將腳氣患者送往岐阜;靜子對他彷彿在會談前就已準備妥當的周到安排感到驚訝。

会談から日を空けずに前久は脚気患者を岐阜へと運んだ。会談前から準備をしていたかのような段取りの良さに静子は驚きを隠せなかった。

靜子為以防萬一,決定親自診察病患。

念のため静子は患者を診察することにした。

從簡單問診到用木槌檢查腱反射的膝蓋腱反射,果然如周圍所判,確認出公家中常見的典型腳氣諸症狀。

簡単な問診から腱反射を診る木槌での膝蓋腱(しつがいけん)反射確認を取ったところ、やはり周囲の見立て通り、公家に多い脚気の典型的な諸症状が確認できた。

腳氣的成因是維生素B1不足,治療方法簡單明瞭。

脚気の要因はビタミンB1不足であり、治療法は単純にして明快。

只要補充維生素B1即可,因此靜子向前久說明了如下的治療方針。

ビタミンB1を与えれば良い。ゆえに静子は前久に次のような治療方針を語った。

「我的指示有三項。第一,每日三餐。第二,每餐必須食用三顆麻籽、醃漬的大根與蕪菁葉,並飲一杯夜酒。第三,三餐以外時間自由安排。若能遵守以上,十日內即可見症狀明顯改善。」

「私からの指示は三つです。一つ、食事は日に三度摂る事。一つ、毎食必ず麻の実を三つ、大根とカブの葉のぬか漬け、一夜酒を飲む事。一つ、三度の食事以外は自由にする事。以上を守って頂ければ、十日と経たずに目に見えて症状が改善されるでしょう」

一向認為腳氣是絕症的前久,對如此簡單的說法感到過於意外,甚至懷疑自己是否被以不讓喝藥湯的方式欺騙。

脚気と言えば死病であるという認識がある前久は、あまりにも呆気なく告げられ、薬湯も飲まさない方法に己を謀っているのかとも考えた。

但即便以前久的眼光來看,也能感覺到靜子是相當認真,並對此能治癒抱有確信。

だが前久の眼を以てしても静子は大真面目であり、それで充分治せるという確信が感じ取れた。

結果,前久依照靜子的指示對病患施行了飲食療法。

結局、前久は静子の指示通りの食餌療法(しょくじりょうほう)を患者に施した。

治療開始七日後,前久方面比預定更早提出了會見申請。

治療を開始して七日後、予定よりも早く前久側から会見の申し入れがあった。

靜子即刻應允,前往岐阜的別邸。

即座に了承の返事をし、静子は岐阜の別邸へと足を運んだ。

她懷抱著病患痊癒的預想策馬前去,果然如預期,但還帶來了意外的附帶條件。

患者の快気報告だとの推測を胸に馬を走らせた。予想は的中したが、想定外のおまけもついてきた。

「首先報告結果。照靜子殿的指示執行後,那位患腳病的人較數日前的情況好轉得幾乎不像話。」

「まずは結果をご報告しよう。静子殿の指示通りにした結果、脚病の友は数日前の容体が嘘のように快方した」

「是嗎。那真是太好了。」

「そうですか。それは良うございました」

「如約,我將離開石山本願寺,作為織田殿陣營盡我薄力;同時會以不為靜子殿添麻煩的方式,解除與教如殿的猶子關係。」

「約束通り、私は石山本願寺を出て、織田殿の陣営として微力ながら力を尽くしましょう。また静子殿に迷惑にならない方法で、教如殿との猶子関係も解消しよう」

「多謝您。」

「ありがとうございます」

「不過靜子殿的要求有兩項,而我只實現了一項,還想再請求一項。」

「しかし静子殿のご要望は二つ、私はまだ一つしか無茶を通しておらん。もう一つ要求をさせて頂きたい」

「若是我能做到的事,無論如何處理都沒問題。」

「私に可能な事でしたら如何様にして頂いても問題ありません」

「哈哈,有點像在威脅呢。不過,第二個無理的請求是,請為我安排與織田殿會面的席次,讓我可以親自向織田殿奏上。」

「ははっ、少々脅し気味でしたな。何、二つ目の無茶は、織田殿と会見する席を設けて頂き、直接織田殿に奏上したい」

「啊?是的。那個,因為需要向館主商量,需要一些時間,得請幾日,這樣可以嗎?」

「は? はい。あの、お館様に相談する必要があるため時間がかかります。しばし日にちを頂く事になりますが、宜しいでしょうか」

「是啊。如果靜子殿不介意的話,我想在此借住此家直到與織田殿會見完成,可以嗎?」

「そうだな。静子殿が問題ないなら、織田殿との会見までこの家に間借りしたいのだが宜しいかな?」

「欸……不過,話說回來,這房子很狹小喔?」

「え……でも、言ってはなんですが、この家は狭いですよ?」

本來靜子的別邸並非為長期居住而建,而是在實在無法返回尾張時,供臨時睡宿之用。

元々、静子の別邸は居住する為に建てたのではなく、どうしても尾張に戻れない時に、寝泊まりだけをするために建てた家だ。

因此雖具最低限的生活環境,卻無法達到公卿起居的設備等級。

よって最低限の生活環境が整えられてはいるが、公卿(くぎょう)が起居するほどの設備は無い。

靜子認為,作為近衛家當主居住實在是遠不夠格。

近衛家当主が住むには、とてもではないが格が足りないと静子は思った。

「無妨。我很喜歡那帶有無常感的庭園,而且近來也愈來愈想要無所思慮、任其自然度過的時光。」

「構わぬ。無常観漂う庭園を、私はとても気に入っております。それに最近は、何も考えず、ただあるがままに過ごす刻が欲しいと思うようにもなりました」

「那樣的話就沒問題了……」

「それでしたら問題ありませんが……」

暫且而言,靜子欲將近衛家拉入織田陣營的目的,以及解除前久與教如的猶子關係,均已暫時成功。

ひとまず静子の目的である近衛家を織田陣営に引き込む事、そして前久と教如の猶子関係解消もひとまず成功した。

本願寺方面或許還需勸說,但不太可能認為他會毀約。

本願寺側の説得工作はあるだろうが、彼が約束を反故にするとも考えられない。

(這樣一來,要削弱反織田聯合結束力的工作就算完成一半了吧。畢竟反織田聯合的中樞並非本願寺,而是近衛家當主近衛前久……)

(これで反織田連合の結束力を弱める工作は半分終わったかな。何しろ反織田連合の軸は本願寺ではなく、近衛家当主の近衛前久なのだから……)

義昭、朝倉、淺井、本願寺、延曆寺、武田及其他大小勢力結盟,對信長造成重大威脅的「信長包圍網」表面上看似以本願寺為主軸,實際上並非如此。

義昭、朝倉、浅井、本願寺、延暦寺、武田、その他大小様々な勢力が結託し、信長を大いに苦しめる『信長包囲網』は、本願寺が主軸のように見えるが実はそうではない。

促使溫和派的顯如決定舉兵,以及十一年後使石山本願寺開城,前久皆扮演了重要角色。

穏健派の顕如に挙兵を決断させたのも、十一年後に石山本願寺を開城させたのも、前久が大きく関与していた。

起初自信過度而從朝廷驅逐前久的義昭,後來與信長關係惡化時,痛切地發現若不借助前久之力便無法組成反信長的聯合軍。

最初は己の力を過信し朝廷から前久を追放した義昭も、後に信長と関係が悪くなると、前久の力を借りなければ反信長連合軍を構成出来ない事が痛いほど分かった。

換言之,要說服顯如,除了朝廷之外,還必須有與多數國人及寺社有聯繫與人脈並保有巨大影響力的五摂家首席近衛家的支持,這是絕對不可或缺的。

つまり義昭が顕如を説得するには、朝廷は勿論の事、多くの国人、そして寺社にまで縁故と人脈を持ち、絶大な影響力を保持する五摂家筆頭近衛家の力が絶対不可欠なのだ。

(剩下就只剩拉攏甲賀了呢。館主自有名為饗談的忍者集團,但甲賀是想要的對象。啊,伊賀不行呢,那裡由伊賀上忍三家掌控,不會輕易受諜略……不過那個愚蠢兒子的屠殺得阻止才行)

(残りは甲賀の取り込みだけだね。お館様は独自に饗談(きょうだん)という忍集団を持っているけど、甲賀は欲しい所。あ、伊賀は無理だね。あそこは伊賀上忍三家が支配しているし、簡単に諜略は受けないだろうからなぁ……でも馬鹿息子の大虐殺は止めないとね)

天正6年(1578年),當伊賀與甲賀與織田家的關係開始惡化時,信長的次子織田信雄擅自率約八千大軍侵攻伊賀,所謂的「天正伊賀之亂」就此發生。

伊賀・甲賀と織田家の関係が悪化し始めた天正6年(1578年)、信長の次男である織田信雄が八千という大軍を率いて伊賀に独断で侵攻を行う、いわゆる「天正伊賀の乱」事件が起きた。

但當時伊賀採取近似現今所謂的游擊作戰,僅數百名伊賀忍軍便使信雄軍潰敗,信雄本人也狼狽逃回。

ただしこの時、伊賀は今で言うゲリラ活動を行い、僅か数百の伊賀忍軍に信雄軍は壊滅。信雄本人も這う這うの体(ほうほうのてい)で逃げ帰った。

為了信雄軍武將們的名譽先說明,信雄原本的伊賀侵攻本就是魯莽至極,周遭的人都拼命勸他改變主意。

なお信雄軍の武将の名誉の為に語るが、元々信雄の伊賀侵攻は周囲が必死になって考えを改めるよう進言していたほど無謀な作戦だった。

因此,在出兵前軍心已然低落,統制完全瓦解。在那種狀況下的軍隊,即便不是在伊賀,也極易被徹底殲滅。

その為、侵攻する前から軍の士気は低く統制は完全に失われていた。そんな状態の軍では、例え伊賀でなくとも簡単に壊滅させられたであろう。

無所斬獲之下,從八千兵中損失了六千,且重臣柘植保重被討死等慘狀,令信長怒不可遏。

何の成果も挙げぬまま八千の兵から六千をすり減らし、更に重臣である柘植保重が討ち取られるなど、散々な結果に信長は激怒した。

但因此信長對忍者提高了警戒,數年後織田軍出動全軍侵攻伊賀,爆發了「第二次天正伊賀之亂」。當時的總大將仍是信雄。

だがこれにより信長は忍に対して警戒心を高めてしまい、数年後に織田軍が全軍を投入し伊賀を侵攻する『第二次 天正伊賀の乱』が起きてしまった。この時の総大将も信雄である。

信雄如要替「第一次 天正伊賀之亂」報仇般,在陷落的寺院與村落中不分老幼悉數屠殺。

信雄は『第一次 天正伊賀の乱』の恨みを晴らすが如く、陥落した寺院や里で老若男女問わず全て皆殺しにしていった。

後世雖傳言是信長屠殺了伊賀的忍者,但實際上是臭名昭著的蠢兒子信雄逐一殘殺而已。

後の世では信長が伊賀の忍を虐殺したと言われるが、実際は馬鹿息子と名高い信雄が片っ端から皆殺しにしただけだ。

「(嘛,那等事留到征討伊勢之後再想吧。雖對近衛大人的動向稍有不安……但不宜去逗弄草叢引出蛇來)那麼這處宅邸,獻給近衛大人。請隨意使用,若合心意便好。」

「(まぁそこは伊勢侵攻後に考えよう。近衛様の動向に少しばかり不安はあるけれども……藪をつついて蛇を出すようなことはしない方が良いね)それではこの家は、近衛様に進呈致します。どうぞ、お気に召すままお使いください」

雖然直到最後也無法完全放鬆警惕,但見到一定的成果後,靜子終於鬆了口氣。

最後まで気が抜けないと思いつつも、一定の成果が見えた事に静子は肩の力を抜いた。

二條城築城有了眉目後,信長將後事託付給光秀,並帶著其他人返回岐阜。

二条城築城の目処が立った信長は光秀に後事を託し、それ以外の人間を連れて岐阜へと戻る。

在回國前,他就伊勢之事與義昭商談。畢竟面對掌控南伊勢的北畠氏,義昭也表示難以接受開戰。

帰国直前、彼は伊勢について義昭と話をした。流石に南伊勢を支配する北畠との戦には、義昭も難色を示す。

何況北畠氏出身公家,擁有高於將軍的従三位位階,且被任為權中納言。

何しろ北畠氏は公家出身、将軍より高い従三位の位を持ち、更に権中納言を任官している。

換言之,義昭將北畠氏視為支撐室町幕府的一員,自然無法認同與同為幕府支柱的信長開戰。

つまり義昭は北畠氏を、室町幕府を支える一員として認識している。同じく室町幕府を支える一員たる信長との戦を認める訳にはいかなかった。

不過從義昭的立場來說,也不能將信長的請求粗暴地拒絕,義昭為此苦思如何取捨。

とはいえ義昭の立場から言えば、信長の話を無下に断る事も出来ない。どうすれば良いか義昭は頭を悩ませる。

信長本只是想試探那個神輿的反應,卻再次認清這事比預期更為棘手。

神輿の反応を見る程度の気持ちだった信長だが、これは予想外に面倒だと再認識した。

信長運用說服與哄攏之術,從義昭那裡取得確約:若今年內戰事未決,義昭將居中調停和睦;若無此情況,則允許信長平定伊勢國。

信長は説得と言いくるめを駆使し、今年中に戦の決着がつかなかった場合は義昭を仲介して和睦、そうでなければ伊勢国平定を許す、という確約を義昭から取り付けた。

得到了事實上的豁免後,外界以為信長會立刻出兵平定伊勢,卻與預期相反地保持沈默。

事実上の免状を得た信長は即座に伊勢国平定へと乗り出すと思われたが、周囲の予想に反して沈黙を保っていた。

他未從岐阜動身,只是慰勞旗下並進行鍛鍊。

岐阜から動こうとせず、配下たちを労い、鍛錬をするだけだった。

一向以果斷行動見稱、行事如電光石火的信長沉默不語,令各國國人一致緊張不安。

即断即決を信条とし、電光石火の如く行動する信長の沈黙に各国の国人は一様に緊張を強いられた。

實際上是因為軍需物資的庫存已低於規定量,所以暫時避免消耗巨大的行軍作為。

実の所は軍需物資の備蓄が規定量を下回ったため、物資の消費が激しくなる行軍を控えていただけであった。

他認為在軍備欠缺的情況下硬闖伊勢不如徹底蒐集情報、伺機而動更為妥當。

軍備が心もとない状況で無理を押して伊勢を侵攻するより、情報収集に徹して機会を伺う方が得策だと彼は判断した。

那些儲備也是因為在尾張與美濃全境施行『三組之一街』政策,到了九月到十月便能取得龐大數量。

その備蓄も『三組之一街』政策を尾張・美濃全土に敷いているため、九月から十月になれば莫大な量が手に入る。

因此信長不打算在八月下旬以前行動──那時大致能估算出收穫量。即便九月才開始侵攻,也有把握能平定伊勢。

よって信長は推定収穫量が計算出来る八月下旬まで動く気はなかった。そして九月から侵攻しても伊勢を平定出来る勝算があった。

回到岐阜後,信長立刻召見靜子,想試探近衛前久會談的用意。

岐阜に戻った信長は早速静子を呼び出し、近衛前久との会談の目的を探ろうとした。

「別去揭發女子的祕密,那樣實在太不得體了。」

「女の秘密を暴き立てようなど、あまり無粋な事をなされますな」

但阻止這樣做的,正是濃姫。

だがそれに待ったをかけたのが、他ならぬ濃姫だった。

「你是說就這樣放任不管嗎?」

「このまま放置しておけと、貴様は言うのか?」

「至今靜子一向必經殿而行事。此次她擅自處理,想必是判斷不經殿反而有利於殿。」

「今まで静子は、必ず殿を通して話を進めていました。それが今回、独断で話を進めたのは殿を通さないことが、殿の利になると判断したからでしょう」

「……唉」

「……はぁ」

在發出一聲長長的嘆息後,信長粗魯地坐了下來。

盛大に溜息を吐いた後、信長は荒々しく腰を下ろす。

「呵呵,被排擠所以發火了嗎?」

「ふふっ、仲間外れにされてご立腹ですか?」

「誰知道呢。話說把近衛家拉入我方陣營……還是得佩服靜子的才幹。」

「さてな。それにしても近衛家を我が陣営に引きこむとは……相変わらず静子の才には驚かされる」

「嗯,靜子總是以異於常規的行動讓人驚喜。話說回來,是被靜子拉攏來的近衛家當主向殿提出會談的請求……殿欲如何回應?」

「ええ、相変わらず埒外の行動で楽しませてくれる女子(おなご)ですよ、静子は。さて、そんな静子が引き込んだ近衛家当主様から、殿に会談の申し入れがありますが……返答は如何なさいますか?」

「不用多說。靜子精心擺設的席面,如今若在此退縮,男子漢也就枉然了。」

「言うまでもなかろう。静子が念入りに設(しつら)えた席、ここで引くようでは男が廃るわ」

會談的準備立刻進行。

会談の準備はすぐに行なわれた。

兩日後,信長前往靜子的別邸。雖然在自己的居館也無妨,但他想既然未曾見過靜子的別邸,便親自前往一觀。

二日後、信長は静子の別邸へ向かった。自分の居館でも問題なかったが、静子の別邸を見た事がないのを思い出し、こうして足を運んだ訳だ。

「初次見面,織田弾正忠殿。」

「お初にお目に掛かる、織田弾正忠殿」

一方是朝廷中的首屈一指實力者、五摂家之首近衛家的當主近衛前久;另一方則是掌握京中實權、最接近天下人的國人織田信長。

かたや朝廷随一の実力者であり五摂家筆頭近衛家当主の近衛前久。かたや京の実権を握り天下人に最も近い国人の織田信長。

見證這對可能成為歷史轉折點的兩人相遇瞬間的,只有以庭園為巢的蟲鳴。

歴史の転換点とも言える二人の出会いの瞬間に立ち会ったのは、庭園をねぐらとする虫たちだけだった。

兩人默然相對良久,前久下定決心,終於開口。

しばらくの間、二人は無言で見つめあったが、意を決したように前久が口を開いた。

「好了,就這樣相望是不會有結果的。容我奉上一杯茶。」

「さて、いつまでも見合っていても始まりませぬ。茶を一杯進ぜましょう」

「……就收下吧」

「……頂こう」

「不必矜持。這不是茶道而是煎茶。不拘禮法,一邊飲茶一邊閒談吧」

「肩肘をはる必要はありませぬ。これは茶の湯ではなく煎茶。形式にとらわれず、茶を飲みながら清談を交わしましょうぞ」

「……」

「……」

「這是靜子殿教我的。相當不錯。最近我沉迷於一邊賞庭園一邊飲茶。」

「と、静子殿に教わった。これが中々に良い。最近では庭を眺めながら、茶を飲む事に凝っております」

如前久所言,他的作法與信長在京學的茶道完全不同。

前久の言葉通り、彼の作法は信長が京で学んだ茶の湯とは全く異なっていた。

不過可以感受到與茶道不同的優雅,信長覺得這樣也別有趣味。

しかし茶の湯とは違う優雅さが感じられ、これはこれで面白いと信長は感じた。

「靜子殿真是個奇妙的女人」

「不思議な女人(にょにん)だ、静子殿は」

「是啊。我也時常被她驚到」

「そうだな。わしも時々驚かされる」

接過遞來的茶,信長毫不猶豫地喝了一口。

差し出された茶を受け取ると、信長は躊躇いなく茶を一口飲んだ。

「好喝啊。和茶道品嘗的茶又是不同的風味。」

「旨いな。茶の湯で味わう茶とはまた違った味わいよ」

「呵呵,確實如是。起初我也覺得她端出的茶奇怪,但現在在晚風中喝上一杯成了我的樂趣。」

「ふふっ、然(さ)もありましょう。私も最初は面妖な茶を出すものよと思いましたが、今は夕涼みに一杯飲むのが楽しみになりました」

如此說著,前久也喝了一口茶。

そう言って前久も茶を一口飲む。

之後並無特別交談。只是以庭園為伴喝著茶,只有如此而已。

それから特段会話はなかった。ただ庭を肴に茶を飲む、それだけだった。

然而包圍兩人的空氣清新,擁有無人能侵入的寂靜。

だが二人を包む空気は清々しく、何者も立ち入れぬ静謐さがあった。

「那麼,進入正題。我還被允諾可以向靜子殿要求一件事。我希望能從織田殿那裡得到裁可。」

「では、本題と参りましょう。私はもう一つ静子殿に要求することを許されております。そしてその裁可を織田殿に頂きとう存じます」

「還有一件?第一件是什麼?」

「もう一つ? 一つ目は何なのだ」

「靜子殿請我協助織田家。作為回報,我希望治好一位友人的腳病,這已經實現了。」

「静子殿は私に織田家への協力を願った。代わりに私は、友の脚病を治す事を願い、既に叶えて頂きました」

「那個笨蛋……」

「あのうつけ者が……」

腳病被視為不治之症,但信長從靜子那裡聽說了發病機理到治療法的全部。

脚病は不治の病扱いされているが、信長は静子より発病の仕組みから治療法までを伝え聞いている。

利用這項優勢,想拉攏那群中多有腳病的公家。然而本應保密的王牌,靜子卻在與近衛前久的會談中使用了。

そのアドバンテージを利用し、脚病が多い公家を取り込もうと考えた。しかしその秘匿すべきカードを、静子は近衛前久との会談で使ってしまったのだ。

近衛前久是位十九歲就被任命為關白的俊才。對於腳氣什麼適合,他大概已有個大致的判斷。

十九歳で関白に任じられた俊英の前久だ。脚気には何が良いか、おおよその見当はつけられているだろう。

(藉由取得近衛家的勢力,能否抵消那次失誤?)

(近衛家の力を手に入れた事で、その失態は相殺(そうさい)出来るか)

「靜子殿的另一個願望是解除與教如殿的猶子關係,這件事將在近日著手。而我則要提出我的願望。」

「静子殿のもう一つの願いは教如殿と猶子関係の解消とのこと、これは近日中に動きましょう。そして対する私の願いを申し上げます」

露出爽朗笑容的前久,說出與那表情截然相反的驚人之語。

爽やかな笑顔を浮かべた前久は、その表情と裏腹にとんでもない事を口にした。

「我希望與靜子殿結為猶子」

「私は静子殿と猶子を結びたい」

靜子要與近衛家當主締結暫時的親子關係。對信長而言,這簡直可稱為天大的驚雷。

静子が近衛家当主と仮の親子関係を結ぶ。それは信長にとって、青天の霹靂とも言うべき内容だった。

若靜子成為近衛前久的猶子,信長無法想像那影響會擴及到何等程度。

もし静子が近衛前久の猶子となった場合、その影響がどこまで及ぶか、信長は想像すら出来なかった。

或許從信長的反應看出他的心情。前久微微一嘆,然後說道:

信長の様子から彼の心情を察したのだろう。前久は小さく息を吐くとこう言った。

「請安心。這事尚未告知靜子殿。若靜子殿拒絕,那便作罷。」

「ご安心召されよ。これはまだ静子殿にも言っておらぬ。そして静子殿が断れば、それで終わりの話」

「看來近衛殿相當看重靜子。」

「近衛殿は静子を随分と高く買っておいでと見える」

「或許確實如此。身為一介不出仕的女人,竟能在我面前不退一步,堅持自己的所求。實在非同小可。」

「然もありましょう。世に出る事の無い女人の身でありながら、この私を前に一歩も引かず、己の望む所を通した。なかなかどうして出来る事ではありませぬ」

於是稍作停頓,前久將剩餘的茶一飲而盡。

そこで一呼吸置き、前久は残っていた茶を一気に飲み干す。

輕輕嘆息後,他繼續說道。

軽く息を吐いた後、彼は言葉を続けた。

「若織田殿走上天下統一之路,靜子殿終將佔據重要地位。」

「織田殿が天下統一の道を進むなら、いずれ静子殿は重要な位置を占めるであろう」

「她似乎喜歡不露面,藏於幕後謀劃各種事務。」

「本人は表に出ず、裏に隠れて色々と画策するのを好んでおるようだがな」

「哈哈,的確如此。只是不久之後她必然要站到台面上。並非某人刻意使然,而是亂世本身不會允許她隱居幕後。時代會需要她,必有一日她必然站到表舞台上。」

「ははっ、そうでしょう。だがいずれ彼女は表に立たなければならなくなる。誰かの手によって、ではない。乱世という存在が、彼女が裏に隠れる事を許さなくなる。時代が彼女を必要とし、必ずや表舞台に立つ日が来るでしょう」

「難道……是為了那個目的而結猶子?」

「まさか……その為の猶子か」

「正是。當她出面時,僅僅作為一個普通女子恐怕不利;若為我的猶子,自然會帶來相當的光環。」

「然様。世に出た時、単なる女子では都合が悪かろう。私の猶子なら、それなりの箔はつく」

對信長而言,這可不只是加個光環而已。

信長にとっては、箔がつくどころの話ではなかった。

「……確實會帶來光環。但結為猶子的時機,希望由我來指定。」

「……確かに箔はつくだろう。だがその猶子を結ぶ時期は、こちらで指定したい」

「就交給你吧。從一開始這就是為了守護靜子殿的策劃。作為其宗家的織田殿,覺得合適時便宣布吧。在那之前,我會在朝廷中把自己的地位鞏固好。」

「お任せしましょう。元より静子殿を守るための策。親元たる織田殿が良かれと思う時に宣言なされよ。その時までに私は朝廷での立場を確固たるものにしておきましょうぞ」

「那是……」

「それは……」

「織田殿的夢想應該是統一天下。如此一來,總有一天現任關白殿與公方殿會成為阻礙。若非如此,霸道無法實現。」

「織田殿の夢は天下統一であろう。ならば、いずれ現関白殿と公方殿が邪魔になる時期が来る。でなければ、覇道は為し得ませぬ」

「哼,確實如此。」

「ふっ、確かにそうだな」

對於前久不加修飾的直言,信長露出愉快的笑容。

前久の歯に衣着せぬ物言いに、信長は楽しげな笑みを浮かべた。

之後,兩人發現彼此都有獵鷹這一共同話題,便一直聊到日落前不久。

その後、鷹狩りという共通の話題がある事に気付いた二人は、日が沈む直前まで語り合った。

六月中旬。

六月中旬。

齒輪與曲柄等動力傳達機構的研究順利推進,在盛夏來臨前終於有望在保持一定品質的情況下實現量產化。

歯車やクランクなどの動力伝達機構の研究は順調に進み、夏の盛りを前にして漸(ようや)く一定の品質を保ちながら量産化の目処が立った。

技術街的婦人們夢寐以求的水車動力式自動洗衣機(以下簡稱水車式洗衣機)在解決了前述的動力傳達問題後,已作為規格化產品組裝完成。

技術街の婦人たちの垂涎の的であった水車動力式自動洗濯機(以降は水車式洗濯機と略す)は前述の動力伝達問題をクリアした事で、規格化された製品として組みあがった。

目前正在運轉試作品。若通過耐用試驗,只要有水車動力可得之處,便能安裝水車式洗衣機。

現在試作品を運用中だ。耐用試験をクリアすれば水車動力が得られる場所ならば、どこでも水車式洗濯機を設置できる。

作為洗劑使用的無患子粉末具有非常高的生物分解性,因此將洗衣廢水排入河川時,造成嚴重水質污染的可能性很低。

洗剤として使用しているムクロジ粉末は生分解性が非常に高い為、洗濯排水を河川に流したところで重篤な水質汚染を招く恐れは低い。

話雖如此,絕對化是不可能的,且具有魚毒性(魚類攝取後會進行生體濃縮而產生毒性),因此對排水的處理仍需充分注意。

とは言え絶対という事は有り得ない、また魚毒性(魚が摂取して生体濃縮を行い毒性を持つこと)があるため、排水の取り扱いには充分に注意を払う必要がある。

釀造街也完成了各式釀造設施與職人居住的長屋,準備就緒的人們已開始遷入。

醸造街も各種醸造施設と、職人たちが住む長屋が完成し、準備が整った人たちから移住を開始している。

由於有技術街的管理ノウハウ,街區管理順利展開,並未發生特別問題。

街の管理も技術街のノウハウがある為、特に問題等が起きる事なく順調にスタートを切った。

從米醋、鹽麴、味醂、味噌、醬油,到包括清酒與燒酎在內的日本酒等日本代表性的調味料,凡是與發酵有關的東西都會製造。

米酢・塩麹・みりん・味噌・醤油・清酒や焼酎を含む日本酒など、日本の代表的な調味料をはじめ、発酵が絡むものなら何でも製造する。

當然,技術街與釀造街並非只有一處。信長計畫未來將這類街區分散建造於各地。

勿論、技術街や醸造街は一つだけではない。信長は今後、この様な街を分散して各地に建造する予定だ。

分散管理與集中管理各有利弊,信長仍選擇冒著技術外洩風險採取分散管理。

分散管理と集中管理の手法はそれぞれ一長一短あるものの、信長は技術漏えいのリスクを冒してでも分散管理を選択した。

雖然生產據點分散會倍增管理成本與技術外洩風險,但信長重視的是可用性:即便遭遇災害或戰事導致據點崩壞,技術與生產也不會中斷,能由他處替代。

生産拠点が分散することで管理コストや技術漏えいリスクが倍化するものの、分散化によって災害や戦で拠点が崩壊しても技術や生産が途絶せずに、他所で代替可能であるという可用性に重きを置いた。

此外,各生產據點能互相補足,讓他國難以判斷出應攻擊的致命要點,這也是一項優勢。

またそれぞれの生産拠点が補完し合える事で、他国にとっては攻め入るべき致命の急所を判断できなくするというメリットもある。

薪資(salary)一詞源自鹽,鹽既是重要的軍需物資,也是製造味噌和醬油不可或缺的生活物資。

給料(salary)の語源たる塩は重要な軍需物資であるとともに、味噌や醤油の製造に欠かせない生活物資でもある。

為了增產鹽,流下式鹽田的規模擴張與負責生產的村莊增加,流通量大幅上升。

これの増産に力を入れた結果、流下式塩田の規模の拡張や生産担当の村も増え、流通量が格段に増加した。

一度市場流入超過需求,發生了鹽價崩盤。

一時期市場への流入が需要を超え、塩の価格破壊が起きた。

原本只是因為價格昂貴而需求低落,但潛在需求與人口數量同樣龐大。

元々高価であったため需要が低かっただけであり、潜在的な需要は人の数だけある。

很快便挖掘出與供給量相匹配的需求,價格逐漸穩定下來。

すぐに供給量に釣り合う需要が掘り起こされ、価格は徐々に安定していった。

如今在尾張與美濃一帶,鹽已不再是貴重品,連庶民也能輕易取得作為調味料。

今では尾張・美濃に限り塩は貴重品ではなく、庶民ですら気軽に入手出来る調味料となった。

隨著生產據點擴大,作為對靜子所實施技術指導的謝禮,農作物、鹽、釀造品與工業製品陸續送到靜子處。

生産拠点の拡大に伴い、静子が実施した技術指導のお礼として農作物や塩、醸造品や工業製品が静子の元へと届けられた。

這既是對指導的純粹謝禮,也有向老師展示我們已能生產到這個程度的熟練度之意義。

純粋に指導に対するお礼でもあるが、我々はここまでの物を生産できるようになりましたという、先生に対する習熟度合を見せる意味合いもあった。

不過因為收受的是靜子一人,導致大量物資集中到她那裡,於是倉庫被緊急擴建以儲存物資。

とは言え受け取るのは静子一人であるため膨大な物資が集まる事になり、物資集積用の蔵を急遽建て増しすることとなった。

「……沒有也麻煩,但太多也會困擾呢」

「……ないのも困るけど、多すぎても困るよね」

個人無法消耗數百公斤的鹽,做了各種保存食後,剩下的部分決定作為信長的軍備儲備。

個人で何百キロもの塩を消費する事など出来るはずもなく、様々な保存食を作った後、余ったものは信長の軍備として備蓄する事にした。

戰國時代,賄賂與被稱為禮銭(れいせん)或禮物(れいもつ)的謝禮之界線十分微妙。

戦国時代、賄賂と礼銭(れいせん)や礼物(れいもつ)と呼ばれる謝礼の境界線は微妙であった。

將禮銭視為賄賂並嚴格禁止,是在建立統一權力的江戶時代以後的事。

礼銭を賄賂と見なし、厳しく禁じられたのは統一的権力を打ちたてた江戸時代以降の事だ。

換言之,即便權力者出於自身利益進行農業改革,只要農村因此獲利,農村向其獻上禮銭就是理所當然的禮節與道理。

つまり権力者側からの都合で農業改革が行なわれたとしても、それで利益を得た場合、農村側が礼銭を贈るのは当然の礼儀・道理だった。

然而,送到她那裡的大量贈禮中也摻雜著帶有感謝以外意圖的東西。

しかし彼女の元に届けられる大量の贈り物の中には、感謝以外の意図を含んだ物も混じっていた。

尾張無法消耗完的物資自然會透過商人流通到日本全土。

尾張だけで消費しきれない物資は当然商人を介して、日本全土へと流通していく。

稍有眼光的人即便無法直接接觸到靜子本人,也很容易察覺到存在一個負責技術指導的核心組織。

少しでも目端の利く者であれば静子本人には辿りつけずとも、技術指導を行う中核組織が存在する事は容易に知れた。

於是便有人透過出入的商人做仲介,給予賄賂或小費以換取情報。

となれば情報を欲して袖の下や心付けを出入りの商人に仲介させる者も出てくる。

送到靜子那裡的不相稱昂貴物品,顯然帶有想找出甜頭來源的用意。

静子の元に届く不相応に高価な品々は、甘い汁の源泉を見つけようとする意図が明らかであった。

「這是諜略(挖角)呢。會做到要透過人牽線才做的諜略嗎?」

「これは諜略(引き抜き)だね。人を経由させてまで、諜略ってするものなのかな」

不用多說,戰國時代是實力主義的時代,無論派閥或血統,靠汗水與實力就能往上爬。

語るまでもなく戦国時代は実力主義であり、派閥や血筋などに関係なく汗と実力だけで成り上がれる時代だ。

然後,有一定才能的人常常會受到外地的挖角。

そしてある程度の才がある人間は、他所から引き抜き工作を受ける事が多々ある。

就連在幕後主導信長對尾張、美濃農地改革的靜子也不例外。

それは信長による尾張・美濃の農地改革を、裏で主導した静子でも例外ではなかった。

「可以說是因為才幹被外地人知曉所帶來的功過吧」

「余所の国人に知れ渡る程の才覚を示した功罪と言ったところか」

奇妙丸讀著附在送來贈禮上的文書,苦笑著這麼喃喃道。

届けられた贈り物に付随していた文を読んだ奇妙丸が、苦笑しながらそう呟いた。

「哼。叫人頭也不回地歸順於軍門,不只針對靜子,連要稱霸天下的織田家也被看得相當輕啊」

「ふん。頭ごなしに軍門に下れとは、静子だけに留まらず天下に覇を唱える織田家も随分と軽く見られたものよ」

長可皺起眉頭,一臉不服氣。

長可は眉を吊り上げて不服そうな顔をしていた。

未示任何根據,卻口頭保證若來我這裡會給予比織田家更優厚的待遇,這種空頭承諾令人反感。

何の根拠も示さず、我が元へ来れば織田家以上の厚遇を約束するという空手形。

用這一張紙片就想把靜子掌控在人前,那種驕矜讓人看不順眼。

この紙切れ一枚で静子を自由に出来るという増上慢が気に入らない。

「話說回來,那些人搞這種工作還不明白沒用嗎?不過就算要退回去,連同仲介的商人也會被牽連,讓對方丟臉,所以不能退,聽說是這樣說的」

「それにしても、こんな工作しても無意味って分からないのかな。でも返そうにも仲介した商人諸共、相手方の顔を潰す事になるから返してはならぬ、という話だけど」

「嗯。那就怎麼處理吧。我不多說什麼,但對你打算怎麼處理倒是挺感興趣的」

「ふむ。ま、どう片付けるのじゃ。別にあれこれは言わんが、どう扱う気かは興味がある」

「對茶器我沒興趣,就把文書和茶器一併送給館樣吧。金銀財物我也不要,這些交給館樣,讓織田軍在論功行賞時回饋給有功之人比較好?我的地方錢堆太多也不健康」

「茶器は興味ないから文と一緒にお館様に贈ればいいかな。金品は必要ないから、これもお館様に渡して織田軍の論功行賞で功のあった者に還元して貰うのが良いんじゃないかな? 私のところでお金が溜まり続けるのは不健全だしね」

對不貪權勢與金錢的靜子來說,茶器是多餘之物。她沒有蒐集茶道具的嗜好,更不會因持有名器而感到優越。

権力や金子を不相応に求めない静子にとって、茶器は手に余る物品だ。茶道具をコレクションする趣味はないし、何より名のある茶器を持つ事に優越感を感じない。

而且她知道茶道與政治有深厚關聯,信長巧妙地把它當作權力的演出工具來運用。

そして茶の湯は政治に深く関わりを持ち、権力の演出装置として信長が巧みに利用する事を彼女は知っている。

因此會過度接近權力的茶道,對靜子而言只有危險可言。

故に権力へ過剰に近づく恐れがある茶の湯は、静子にとって危険しか感じられないのだ。

「話說回來,即便我此刻離開,館樣的改革也已到了不會停止的階段了」

「そもそも今さら私が抜けた所で、お館様の改革は止まらない段階に来てるんだけどね」

「哦,這倒是有趣的說法」

「ほぅ、それは興味ある話だな」

「其實不難。我已安排好即便我不在,改革機構也能繼續推進。既然那個機構已經建構完成,雖然我離開會有停滯,但長遠來看影響不大。當然這並不代表我會隨便去別處」

「何も難しい事じゃないよ。私は自分が居なくなっても、改革機構が進むようにしているからね。その機構が構築された今、私が抜けても停滞は生まれるだろうけど、長い目で見れば大した影響はないよ。まぁだからと言って、ほいほい他の所へ行く気もないけどね」

在實施農業改革時,靜子認為最危險的是那種沒有她就無法運作的系統。

農業改革を行う時、静子は自分がいなければ成り立たないシステムが、一番危険だと考えた。

因為一旦她的負荷超過承受力或身體出了問題,一切就會停擺。

自分の負荷が許容量を超えたり、身体を壊したりすれば全てが停止するからだ。

因此可以說她傾注心血去構築即便她不在也能正常運作的系統。

故に自分がいなくても問題なく稼働するシステムを構築する事に心血を注いだとも言える。

「真搞不懂。那樣的話你總有一天會被拋棄的哦?」

「分からんなぁ。それだとお前は、いつか捨てられるって事だぞ?」

長可抱臂,似乎對靜子的想法並不太認同,喃喃道。

静子の考えにいまいち納得出来ないのか、腕を組んで長可が呟く。

「到處都一樣,但比他人更早起步的人,常常會暴露於生命危險。我是個膽小的人,不想被他人殺害吧?既然如此,開拓出一定道路後乾脆抽身,反而風險較低」

「どこでも変わらないけど、他の人より飛び抜けて先駆ける人は、常に命の危険に晒されるの。私は臆病だから他人に殺されるのは嫌よ? だったらある程度の道を作った後は、さっと身を引く方が危険は少ないわ」

「我覺得沒必要在意那種愚人的嫉妒。畢竟只會嫉妒他人的人,本身就像在宣告自己沒有存在價值」

「そんな愚か者の嫉妬など、気にする必要はないと思うがな。所詮、他人を妬むだけの奴など、存在価値はないと自ら語っているようなものなのだし」

「如我剛說的,我是個現實主義的膽小者。我無法樂觀到能習慣被他人懷惡意而活。如果只有我的地方收成好,總有一天會被周遭嫉妒而遭襲擊。所以我提高了尾張與美濃全域的生產力。不求權力是為了避免捲入政治派系之爭。而且一旦和平到來,武官與文官勢必會展開權力鬥爭,我不想捲入。我想過個平靜的晚年,權力鬥爭就免了吧」

「さっきも言ったけど、私は現実主義の臆病者なの。他人から悪意を向けられる事を当たり前に生きていけるほど楽観的にはなれない。私の所だけ収穫が良ければ、いつか周囲に嫉妬されて襲撃される。だから尾張・美濃全土の生産力を上げたの。権力を求めないのは、政治的な派閥争いに巻き込まれるのを避ける為だし。それに平和になった時、確実に武官と文官は権力闘争をするから、それにも巻き込まれたくない。私は静かな余生を過ごしたいから、権力闘争なんてご勘弁です」

「不管你怎麼想,織田家需要你。那麼平靜的晚年也不會那麼容易到來吧」

「まあ貴様がどう考えていても、織田家は貴様を必要としているからな。そう簡単に静かな余生は訪れないのじゃないか」

「我這女人說這話也有點不對,但不該把過多權力交給容易以情緒優先的女性。正因情緒優先,母親為了孩子能變成惡鬼羅剎。『女は弱し、されど母は強し』這句話也不是沒有道理」

「女の私が言うのもあれだけど、感情を優先しやすい女に過剰な権力を与えない方が良いよ。ただ感情を優先するが故に、母は我が子の為に悪鬼羅刹になれる。女は弱し、されど母は強し、なんて言葉もあるぐらいだしね」

『女は弱し、されど母は強し』這句話出自從七月王政時代到法國第二共和時代的政治家、法國浪漫主義詩人兼小說家維克多·雨果。

『女は弱し、されど母は強し』は、七月王政時代からフランス第二共和政時代の政治家であり、フランス・ロマン主義の詩人、小説家であるヴィクトル・ユーゴーの言葉だ。

意思是即便外表看似脆弱的女性,作為母親的存在為了保護孩子可以變得非常強大。

見た目がか弱い女性でも、母親という存在は子どもを守るためにどのようにも強くなれる、という意味だ。

「確實翻開唐朝史,因為女性帶來的惡影響而滅亡的政權也有好幾個。不是說靜子你就是那樣,但這點確實該注意」

「確かに唐の歴史を紐解けば、女の悪影響で滅んだ王朝は幾つもあるからな。いや、別に静子がそうだとは言わんが、確かにその点は注意するべきか」

「我倒是不在意。而且我也不知道自己何時會把感情放在理論之前。因此作為保險,需要有人能夠制止我。嗯,目前那個人是館樣」

「別に気にしてないよ。それに、私もいつ理論より感情を優先するようになるか分からないしね。だから保険として、誰かが止められるようにしておかないと。まぁ、今はそれがお館様だけども」

「原來如此。也就是說在其他地方那個保險可能無法發揮,會被暗殺,所以你才不去別處?」

「なるほどなぁ。つまり他ではその保険が上手く機能せず、暗殺されるかもしれないから他所へは行かないという事か」

「那也是其中一個理由吧」

「それも理由の一つかなー」

「我不懂像政治那樣的難事。雖然不懂,但你得不到認可讓我很不甘心」

「俺は政のような難しい事は分からん。分からんがお前が認められないのは悔しい」

「呵呵,謝謝你」

「ふふっ、ありがとね」

聽到長可的話靜子高興起來,差點伸手去撫摸長可的頭,但在最後一刻停住了。

長可の言葉に嬉しくなった静子は、思わず長可の頭を撫でそうになったが、すんでの所で手を止めた。

他很想早點元服成為大人。她覺得把他當小孩子看待不太好。

彼は早く元服して大人になりたがっている。そんな彼に子供扱いするのは悪いと思ったからだ。

「簡單說,不用多說那些大道理,我就是喜歡這裡。這裡就像是我的第二故鄉」

「まぁ御託を並べず簡単に言うと、私はここが好きだから。ここは私の第二の故郷みたいなものよ」

靜子帶著微笑這麼說,兩人都帶著某種喜悅且滿足的表情點頭。

微笑みながらそう言った静子に、二人は何処か嬉しそうな、それでいて満足気な表情で頷いた。

信長第二次前往技術街進行視察。

信長は技術街へ二回目の視察に訪れていた。

以前明顯改變的是屋頂瓦的施工法──縱桟螺絲固定工法已經有了初步成形。

以前から目に見えて変わった事は屋根瓦の施工法である縦桟ビス止め工法が、ある程度形になった事。

木製車床完成了。自動洗衣機完成了。齒輪與曲柄的研究成果也見到了成果。

木製旋盤が完成した事。自動洗濯機が完成した事。歯車やクランクの研究成果が日の目を見たことだ。

「喔!這就是旋盤嗎!形狀真古怪,但僅靠這一台就能省去好幾個工匠的工作!」

「おお! これが『旋盤』か! 何とも奇っ怪な形をしておるが、これ一つで職人何人分の作業を省略できることか!」

在眼前進行的示範中,信長笑逐顏開,不停讚嘆;畢竟那塊粗糙鋸好的角材,轉眼就變成了均勻粗細的木棒。

目の前で行われたデモンストレーションに信長は頬を緩めて褒めちぎる。何しろ不格好に製材された角材が、あっという間に均一な太さの棒へ変わったのだ。

對於那種從未見過也未聽過的加工流程,信長興奮得難以抑制。

今まで見たことも聞いたこともない加工の流れに、信長は興奮を抑えきれない。

他揮舞著加工好的木棒,抓起球體到處滾動,確認球面的光滑程度。

加工された棒を振り回し、球体を掴んではあちこちへと転がして球面の滑らかさを確認していた。

「(真是興奮得不得了……)那、那位大人,抱歉打擾您享受,不過滾到腳邊還是很危險的……」

「(凄いはしゃぎっぷり……)あ、あのお館様、お楽しみ中申し訳ありませんが、足元に転がると流石に危険ですから……」

「喔,抱歉。沒想到那塊方形邊材能在短時間內變成如此漂亮的球……就忍不住想確認到底有多圓。」

「おお、すまん。四角い端材が短時間でここまで見事な玉になるとは……ついどの程度丸いのか確かめたくなってな」

「(請不要順手就把它滾到有人所在之處。工匠們是因為另一種原因而驚恐)咳咳,旋盤的性能如你所見。視使用方式而定,原本需要工匠長時間完成的加工,任何人都能在短時間內以相同精度完成。」

「(つい、で人が居る所に転がさないで欲しい。職人たちが別の意味で怯えている)コホン、『旋盤』の性能は見ての通りです。使い方次第で今まで職人が長時間かけて仕上げていた加工が、誰でも短時間で同じ精度の製品として仕上げる事が出来ます」

「嗯,那個加工麻線的機關已讓人驚訝,但這次更勝一籌。」

「うむ、あの麻糸を加工するからくりにも驚かされたが、今回はそれ以上じゃ」

靜子聽到那話,回想起信長視察シュリヒテン剝皮機的情景。

そう言われて静子は思い返す。信長がシュリヒテン剥皮機の視察を行った時の事を。

那時信長也是滿臉喜色地操作著。靜子隱約理解,這次隨行的馬廻衆之所以很少,或許是為了不讓人看見那一幕。

あの時も信長は喜色満面で操作していた。今回の視察に同行する馬廻衆が少ないのは、その様子を見られないようにするためか、と静子は何となく理解する。

「那是シュリヒテン剝皮機。消耗零件製造需時,目前只有六台在運轉。不過即便只有六台,生產力也截然不同。若以十二台為一組計算,生產絹絲的紡績機有九組。」

「シュリヒテン剥皮機ですね。消耗部品の製造に時間がかかるので、現在でも六台しか稼働しておりません。しかし、六台でも生産力は桁違いです。絹糸用の紡績機は十二台を一組と計算すれば九組あります」

「確實,你曾說過那些沒法紡成絹絲的叫真綿。用那東西做成的被子真的很好。」

「確か絹糸に出来ないものを、貴様は真綿と言っていたな。あれで作った掛け布団は実に良い」

靜子大量生產絹絲,但並非所有蠶都能做出生絲,也會產生達不到生絲品質的蠶繭。

大量の絹糸を生産している静子だが、全ての蚕から生糸が作られる訳ではない。生糸の品質に至らない蚕の繭も出来る。

因此把低品質的繭集中加工,製成真綿。真綿白且有光澤、柔軟且保溫性佳,作為被胎填充物非常優秀。

そこで低品質の繭を集めて加工を施し真綿を生成する事にした。真綿は白くて光沢があり、柔らかく保温性に優れている為、掛け布団の中に詰め込む素材としては優秀なのだ。

此外,中世日本的養蠶主要是指真綿的生產。由於多數絹絲是從中國進口而被吹捧,國內把生絲紡成絹絲的技術便已失傳。

なお中世日本における養蚕は専ら真綿の生産の事を意味した。主に中国から輸入される絹糸ばかりが持て囃されたため、国内で生糸を絹糸に紡ぐ技術が失われてしまったからだ。

「齒輪與曲柄尚有改良空間。應用這些機構,我們做出了製造金平糖的機械。黑砂糖消耗很大,但試作品總算完成了。」

「歯車やクランクについてはまだまだ改良の余地があります。これらの機構を応用することで、金平糖を製造する機械を作りました。黒砂糖の消費が激しいですが、何とか金平糖の試作品は完成する所まで出来ました」

「這就是金平糖嗎。嗯,和伴天連的貢品略有不同,但也很好吃。呵呵,我能想見那些伴天連驚訝的表情。」

「これが金平糖か。ふむ、伴天連の貢物と少し違うがこれも旨い。ふふっ、伴天連どもの驚く顔が目に浮かぶわ」

(並不是因此而叫我做金平糖,對吧?)

(その為に金平糖を作れ、なんて言ったわけじゃーないですよね?)

信長被金平糖的潛力(當然包括味道、還有營養價值、保存性、可攜性等)所吸引,便立刻命靜子製造。就算在江戶時代,個人也能製作,金平糖的配方並不困難。

金平糖の潜在能力(味は勿論のこと栄養価、保存性、可搬性など)に魅せられた信長は、早速静子に製造を命じた。江戸時代でも個人で製造が可能なほど、金平糖のレシピは難しくない。

其製程是對耐心的考驗:不斷向核心材料淋上熱糖漿再冷卻,如此反覆。

芯材に対して延々と熱した蜜を掛けては冷やすという工程を繰り返すという忍耐が試される作業なのである。

為了減輕那部分作業,才需要齒輪與曲柄。但即便如此,高溫長時間工作的艱辛仍未改變。

その辺りの作業を軽減するために歯車やクランクが必要となった。ただし、それでも高熱環境での長時間作業という過酷さは変わらない。

「以上到此說明結束。若無其他問題,接下來將引導各位前往用餐處。」

「これをもちまして説明を終了させて頂きます。ご質問等が無ければ、続いて食事処へとご案内致します」

「好像準備了南蠻的パオン這道菜吧。」

「確か南蛮のパオンという食べ物を準備していたのだったな」

「是的。那是歐洲的主食。還有另一種主食叫馬鈴薯,但其量產體制尚未完善,百姓能吃到可能要到明年以後。」

「はい。欧州での主食になります。ジャガイモという別の主食もありますが、こちらは量産体制が整っておらず、民草の口に入るのは来年以降になるかと思います」

「食材越多國家就越富足。要優先建立有餘裕的量產體制。」

「食材が増えるほど我が国は豊かになる。余裕のある量産体制を整える事を優先せよ」

新作物正逐步增加生產據點並進入量產體制,但一年的時間仍不足以向所有據點提供充足種苗,甚至有些據點改種替代作物。

新しい作物は徐々に生産拠点を増やし量産体制に入っているが、やはり一年程度では全ての生産拠点に充分な量の種苗を提供できず、代替作物を作付けしてる拠点も出ている。

若從明年起便會先提供給鄰近村莊,若那裡沒有問題再分發到『三組之一街』。一旦運行順利便能一口氣大量生產。

来年以降ならば近隣の村へ提供し、そこで問題がなければ『三組之一街』に配布する。そこまで軌道に乗れば一気に生産出来るのだ。

「『三組之一街』也很順利。尾張、美濃已經讓他國無法追趕。因為沒有食物不安,百姓的不滿也減少了。說真的,我沒想到供應充足的食物會有這麼大的效果。」

「『三組之一街』も順調だ。既に尾張・美濃は他国の追従を許さない。食の不安がないお陰で、民からの不満も少なくなった。正直な所、食料が不足しない事が、これほど効果があるとは思わなかったな」

「只要有明天的飯吃,民眾對一些事情便會睜一隻眼閉一隻眼……」

「明日の食事に事欠かない環境であれば、民は多少の事には目を瞑りますから……」

「那個曹孟德在充分確保民眾糧食後,才確保可行軍的軍備。我也要借用那個方法。」

「かの曹孟徳は民の食料を十分確保した上で、行軍出来る軍備を確保した。わしもその手法を利用させて貰う」

「那麼……」

「では……」

信長微微點頭,繼續說話。

信長は小さく頷いてから言葉を続ける。

「歷史已證明,若為行軍而囤積買斷,治安會惡化。行軍時若民心動搖就很危險。再者在他國人唆使下可能發生一向一揆,所以最好讓民眾有適量的食糧。」

「行軍の為に買い占めを行えば、治安が悪化する事は歴史が証明している。進軍中に足元が揺らぐなどたまったものではない。他国の手引で一向一揆もありえる以上、民には程よく飯を与えている状態が良い」

「在衣、食、住中,我也認為食最為有效。」

「衣食住の内、食がもっとも効果的だと私も思います」

「不僅如此」

「それだけではない」

「哇噗」

「わぷっ」

信長把靜子的頭揉來揉去,靜子對突如其來的舉動任由他為之。

信長は静子の頭をわしゃわしゃと撫でる。突然の事に、静子はされるがままだった。

她的髮型因此變得滑稽,但信長不以為意,繼續說下去。

彼女の髪型が愉快な感じになってしまったが、信長は気にせず言葉を続ける。

「我以前一直以為用餐只是為了活著的作業。但你做的料理讓我的眼睛愉悅、香氣愉悅、口感愉悅、味覺也愉悅。現在才明白,お濃め堅持講究用餐的理由……真不愧是你,你真了不起。總是向我展示各種可能性」

「わしは今まで食事とは生きる為の作業だと思っておった。だが貴様の作る料理はわしの目を楽しませ、香りを楽しませ、食感を楽しませ、味を楽しませる。今なら分かる、お濃めが食事にこだわっている理由が……全く、貴様は大した奴じゃ。いつもわしに様々な可能性を見せてくれる」

接著一陣子,靜子持續被信長撫摸著頭。

それから暫く、静子は信長に頭を撫でられ続けた。

在技術街之後,信長又來到了釀造街。

技術街に続いて醸造街を信長は訪(おとな)った。

同行的不只有信長與靜子,還有主要的家臣們、靜子的馬廻衆慶次與才藏,以及近衛家當主前久也一同前往。

こちらは信長と静子だけでなく、主だった家臣たち、静子の馬廻衆である慶次と才蔵、そして近衛家当主の前久も同伴した。

這次釀造街視察的重點是酒,尤其是清酒。

今回の醸造街視察の目玉は酒、それも清酒だ。

戰國時代的酒基本上是濁酒,而且酒的製造幾乎被寺社勢力獨占。

戦国時代の酒は基本的に濁酒(にごりざけ)であり、また酒の製造は寺社勢力がほぼ独占していた。

清酒的起源無法確切考證。據一說,攝津鴻池的山中勝庵將灰加入濁酒以製成清酒,據稱由此開始。

清酒の始まりは正確には分からない。一説によれば摂津鴻池の山中勝庵が、濁酒に灰を入れて清酒を作ったのが始まりと言われている。

但除此之外,近似現代清酒製法的方法也記錄於「御酒之日記」「多閉院日記」,因此何時從濁酒轉為清酒並不明朗。

しかしそれ以外にも、現代の清酒の製法に近い方法が「御酒之日記」、「多閉院日記」に記録されていたりするため、いつから濁酒から清酒へ切り替わったかははっきりしていない。

酒不僅是嗜好品,更能豐富人生。

酒は単なる嗜好品に留まらず人生を豊かにする。

了解源遠流長酒史的靜子,召集了已退役或未被寺社圈養的杜氏(とうじ),將現代清酒的釀造方法傳授給他們。

脈々と受け継がれる酒の歴史を知る静子は、現役を引退したり寺社に囲い込まれていない状態の杜氏(とうじ)を集め、現代の清酒の製造方法を伝授した。

與濁酒相比,清酒的製法需要更多的作業工程,杜氏們半信半疑。

清酒の製法は濁酒のそれと比べると必要とする作業工程が多く、杜氏達は半信半疑であった。

然而,聽說能釀出如清水般無人能及的美酒,作為業內專家不得不接受挑戰。

だが誰も作り得ない澄んだ水の如き旨い酒と聞いては、その道の専門家としては挑戦せざるを得なかった。

基本上清酒製程約九成在寒冷季節到梅雨時期完成,但最後一道工序是貯藏,可能兩個月就能完成,也可能花上三年。

基本的に清酒製造工程の九割は寒い時期から梅雨の時期辺りで終わるが、最後の工程に貯蔵があり、二ヶ月で終わらせる場合もあれば三年をかける場合もある。

這部分依酒的種類與成品狀況而異。

この辺りは酒の種類、出来具合で変わる。

這次釀製的清酒使用精心挑選的尾張米豪華地精米,實際上削掉了外層四成,成為本釀造酒。

今回仕込んだ清酒は選び抜いた尾張米を贅沢に削り、実に外側の4割を削った本醸造酒とした。

經過約半年的反覆試作,確保了可供信長品嘗的品質,這是那個經半年熟成的木桶首次亮相。

約半年をかけて試作を繰り返し、信長に提供できるだけの品質を確保できた樽(半年熟成)の初のお披露目であった。

「那麼,就開始初呑切吧」

「さて、それでは初呑切りと参りましょうか」

為了檢驗酒,打開槽的呑口稱為「呑切り」。從初呑切於六月開始,到秋天出貨前,每個月都會進行一次。

酒を検査するため、タンクの呑口を開ける事を「呑切り」と言う。これは初呑切りが行われる六月から、出荷される秋まで一ヶ月ごとに行なわれる。

直到江戶中期左右,日本酒幾乎全年都在釀造。靜子的釀造街也不例外,雖以濁酒為主,但幾乎全年都在釀酒。

江戸中期頃まで日本酒は一年中作られていた。静子の醸造街も例外ではなく、濁酒だがほぼ一年中酒造りが行なわれている。

這次初呑切的對象,是以能產出優良品質的「寒造り」方式釀製的清酒。

今回の初呑切り対象は、品質の優れたものが出来る「寒造り」で作った清酒だ。

從釀造用的大木桶轉移到為此次初呑切準備的一斗桶中。

仕込み用の大樽から今回の初呑切り用に用意した一斗樽に移される。

清酒散發出的醇厚香氣充滿四周,眾人皆露出陶醉的表情。

清酒が放つ芳醇な香りが辺りに充満すると、皆一様に陶然とした表情になった。

在家臣間,佐々、柴田與慶次等人焦急得坐立難安,等不及似的。

家臣の中でも佐々と柴田と慶次は、今か今かと待ちきれない様子で、やたらそわそわしていた。

「今日能夠聚集於此參加初呑切,深表感謝。關於清酒是什麼的詳細說明就省略不談,百聞不如一見,請先嘗一口」

「本日は初呑切りにお集まり頂き、誠にありがとうございます。清酒が何か、という詳しい説明は省きます。百聞は一見にしかずと申します、まずはお上がりください」

說罷靜子先將清酒倒入黑色的酒坏,作為這不是濁酒的證明。

そう言って静子はまず黒色の酒坏に清酒を注ぐ。濁酒ではない、という証明だ。

接著倒入白色的酒坏,以其透明度向信長與主要家臣們展示。

次に白色の酒坏へ注ぎ、その透明さを信長や主だった家臣たちにアピールした。

「喔,幾乎像水一般透明。」

「おお、まるで水のように透き通っておる」

得到預期反應的靜子,於是將清酒注入兩只格外堂皇的酒坏。

狙い通りの反応を得られた静子は、ひときわ立派な二つの酒坏に清酒を注ぐ。

這是為她的主君信長與近衛家當主前久準備的酒坏。她把酒坏放在盤上,先遞給信長。

彼女の主君である信長用と、近衛家当主の前久用だ。酒坏を盆に乗せてまず信長に差し出す。

信長默然接過酒坏,接著前久也接過酒坏。

信長は無言で酒坏を受け取る。続いて前久が酒坏を受け取った。

兩人先將臉靠近杯口,享受香氣。

二人はまず杯に顔を近付け香りを楽しむ。

「嗯,酒精似乎相當柔和,沒有像濁酒那樣的氣味。」

「ふむ随分と酒精が弱いのか、濁酒程の匂いはせぬな」

「是啊,反而有些像甜美果實的香氣。像桃子般並帶有清爽的酸味,實在是非常芳醇的香氣,味道也令人期待。」

「そうですな、代わりにやや甘い果実のような香りがしますな。桃の様でいて瑞々しい酸味も窺わせる実に芳醇な香り、これは味も楽しみだ」

靜子在開封時嗅到香氣,覺得有點像荔枝的香味。

封を切った際に香りをかいだ静子は、ライチに似た香りだなと感じた。

聽了前久的話,兩人同時傾杯啜飲。

前久の言を受けて、二人は同時に杯を傾けた。

與如水般的外觀相反,出乎意料的強烈酒精在喉間灼燒,一股灼熱直衝喉嚨而過;瞬間鼻腔中竄出的果實般甜香、舌頭上爆發的酒精與米的鮮美。

水のような見た目とは裏腹に意外に強い酒精が喉を焼く、カッと喉を熱くする液体が喉を通りぬける。一瞬の間を鼻を抜ける果実にも似た甘い香りと舌に炸裂する酒精と米の旨み。

「這酒比想像中還要烈。那種一股灼熱的吞嚥感與餘韻縈繞的香氣真是極佳。」

「これは思ったよりも強い酒だな。カッと熱くなるような喉越しと後に残る香りが素晴らしい」

「少了濁酒那種雜味,反而能品嘗到米本身的鮮美。」

「濁酒のような雑味が無い分、米本来の旨さを味わえますな」

「靜子,也讓可成等人喝吧。有三個人看起來快要忍不住了。」

「静子、可成たちにも呑ませてやれ。そろそろ我慢しきれそうにない奴が、三人ほどいるからな」

果然如信長所言,柴田、佐々與慶次三人個個面露幾乎要把手伸進酒桶的模樣。

信長の言葉通り、柴田と佐々と慶次は今にも樽に手を突っ込まんばかりの形相だった。

苦笑著,靜子把酒盃分給各位武將,並為他們斟上清酒。

苦笑しながら静子は各武将たちに酒坏を配り、清酒を注いでいく。

果然可能是受主君痛快飲用的影響,被斟上酒的人紛紛搶著把酒盃一飲而盡。

やはり主君が旨そうに飲んでいた影響か、注がれた人は我先と言わんばかりに酒坏を傾ける。

「和平常喝的酒完全不同呢。」

「いつも呑んでいる酒とは別格ですな」

「像水般澄澈這點真好。若酒盃上有圖案,倒更風雅吧。」

「水のように透き通っておるのが良い。酒坏に絵があれば、なお風流じゃろう」

「問題是得注意別不小心喝過頭了。」

「問題はついつい呑み過ぎてしまわぬよう、注意する事ですな」

得到好評之後,靜子鬆了口氣,撫了撫胸口。

好感触を得られた事に、静子はホッと胸を撫で下ろした。

「只喝酒也很好,但清酒若搭配料理一起喝又會呈現不同面貌。昨天網到的魚中有好料,已稍作料理,請當作下酒菜享用。」

「お酒だけ飲んで頂くのも良いのですが、清酒は料理と一緒に飲んで頂くとまた別の顔を見せます。昨日網に掛かった魚で良い物がありましたので、いくつか料理してみました。お酒のあてにお摘み下さい」

靜子示意後,內室待命的彩與侍女端著菜盤走了過來。

静子が合図をすると奥に控えていた彩や下女が、膳を持ってやってくる。

陶瓷盤上襯著竹葉擺放的鹽烤魚。故意留下粗鹽顆粒塗抹烤製,白肉看起來美觀誘人。

陶器の皿に笹の葉を敷いて盛られた魚の塩焼き。敢えて塩の粒が残るように塗して焼いた目にも美しい白身が映える。

「這種魚叫做平政。其味道清淡而雅致,不過不會過於搶味,請務必與酒一同品嚐。」

「この魚はヒラマサと呼ばれます。淡白で上品な味を身上としていますが、自己主張しすぎないので是非お酒と共に召し上がってください」

聽了靜子的話,最先動筷的果然是信長,接著前久用筷子分出魚肉送入口中。

静子の言葉に真っ先に箸を取ったのは、やはりと言うか信長であり次いで前久が箸で身を解して口に運ぶ。

再也沒有人提起什麼試毒等粗俗的話題了。

もはや毒見がどうのと言う無粋な話をする輩もいない。

「喔!雖有如鯉般的肉質,卻完全沒有泥腥味。果然是海魚,烤過的鹽帶來的甘味與鹹味,反而將魚的鮮味緊緻起來。」

「ほう! 鯉のような身でありながら、まるで泥臭さがない。流石は海の魚と言ったところか、そして焼けた塩の甘味、塩辛さが魚の旨みを引き締める」

「在京城絕對嘗不到這味。雖然虹鱒、鮎、岩魚都很美味,但這種味道又與它們不同。只是略嫌太過清淡了些。」

「京ではこの味は到底味わえませぬな。鱒や鮎、岩魚も旨いが、そのどれとも異なる旨さがある。ただやや淡白すぎるきらいがありますな」

接著又喝了一口清酒,把口中充滿的鹹味連同華麗的香氣一併沖散。

そして次に清酒を一口流し込む。口の中に満ちていた塩味を艶やかな香りと共に押し流す。

「原來如此,這很棒。與酒一起食用時,那種略嫌過淡的味道反而會令人想再多吃一口。」

「なるほど、これは良い。酒と一緒に食すと、淡白すぎる味が逆にもう一口と食べたくなる」

「重鹹的下酒菜與帶辛味的清爽酒,交替著吃喝是前所未有的快感啊。」

「塩味の強い肴と辛みのあるスッキリした酒。これを交互にやるのが今までにない快感ですな」

緊盯上座表情的諸人也紛紛動筷,四處傳出讚嘆聲,清酒獲得認可讓靜子臉上綻開笑容。

上座の様子を息を飲んで見守っていた面々も次々に箸をつける。あちこちで歓声が上がり、清酒が受け入れられた事に静子は顔を綻ばせる。

「沾這個一起吃也很美味喔。」

「こちらを付けて召し上がって頂いても美味しいですよ」

靜子一示意,這次紅色的小堆被放在盤邊。

静子の合図で今度は赤い小山が皿の脇に添えられる。

「這是釀造街醃製的梅干,把梅肉拌開,加入少量酒與高湯調和而成的梅醬。」

「これは醸造街で漬けました梅干しの実を解して、少量の酒と出汁で練りました梅醤(うめひしお)でございます」

清淡的白肉配上鹹味,再加入梅子的風味與酸味,讓爽口感更上一層。

淡白な白身に塩味、そこに梅の風味と酸味が加わる事で爽やかさがいや増す。

「天哪!跟梅醬一起吃平政後再喝清酒,香氣會改變!!」

「なんと! 梅醤と共にヒラマサを食べた後に清酒を飲むと香りが変わるぞ!!」

因為尚未傳入日本,眾人雖不知情,但梅的風味加入類似荔枝的甜美香氣後,從果香轉為類似香料般複雜的氣味。

未だ日本には伝来していないため皆は知らないものの、ライチのような甘やかな香りに梅の風味が加わることで果実のような香りからスパイスのような複雑な香りへと姿を変えた。

「這就是清酒……若能在世間流通,或許會取代濁酒也說不定。」

「これが清酒……これが世に出回る事になれば濁酒を駆逐するやもしれぬ」

前久帶著驚愕的表情如此低語。

前久は驚愕の表情でそう呟いた。