戦国小町苦労譚
1567年 四月中旬
靜子借了快馬折返,立刻前往奇妙丸的寢所。
早馬を借りて取って返した静子は早速奇妙丸の寝所へと向かった。
進入房間時,奇妙丸正側躺著休養。
部屋に入ると奇妙丸は横になって安静にしていた。
「請在房間四角放上盛有熱水的桶。還有,準備幾條冷水和手巾……以及能拿到的替換衣物。」
「部屋の四隅に湯を張った桶を置いて下さい。あと、冷たい水と手ぬぐいを幾つか……着替えもあるだけ用意して下さい」
她對在一旁伺候的教導官如此說道。
奇妙丸の傍に控えていた教育係にそう声をかける。
「照靜子的話去做。」
「静子の言う通りにいたせ」
奇妙丸對那被靜子話語弄得困惑的教導官下達了這個命令。
静子の言葉に戸惑っていた教育係へ、奇妙丸はそう命を飛ばす。
他微微低下頭後離開房間,開始對侍僕們交代各種事務。
彼は一度頭を下げると部屋を辞して、小間使いにあれこれと指示をしはじめた。
「雖說是快馬趕來,來回跑一趟也應該趕得及吧。」
「早馬で駆けたとは言え、往復したから時間的にも大丈夫でしょう」
本來最好讓人休息個半天左右,但靜子一面這麼想一面拿出一只小巧的竹筒。
本来は半日程度寝かせておく方が良いのだが、と思いつつ静子は小振りな竹筒を取り出す。
裡面是蘿蔔和蜂蜜,也就是用來喉嚨痛時服用的蘿蔔蜜糖。
中に入っているのは大根と蜂蜜、つまり喉が痛い時に服用する大根あめだ。
她用木匙舀起上澄液,含在自己口中試味。因為用蜂蜜代替水飴,和一般的蘿蔔蜜不同,但靜子判斷甜度和稀釋度都剛好。
木製の匙で上澄みをすくって加減をみるために自分の口に含む。水飴の代わりに蜂蜜を用いたため通常の大根あめとは違っていたが、適当な甘さと水加減だと静子は判断した。
「那是什麼……?」
「何だそれは……?」
「蘿蔔蜜。原本應該用水飴做,但沒找到就用蜂蜜做了。喉嚨沙啞時喝了會有作用喔。」
「大根あめ。本当は水飴で作るんだけど、なかったんで蜂蜜で作ったよ。喉がいがらっぽい時に飲むと効果があるんだよ」
蘿蔔所含的酵素(澱粉酶、脂肪酶、蛋白酶)含有助消化以及能鎮靜喉部黏膜炎症的成分。
大根の持つ酵素(アミラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ)には消化を助けたり、喉の粘膜の炎症を鎮める成分が多く含まれている。
可以直接喝,也可以用白湯等稀釋後飲用。
そのまま飲むもよし、白湯などで薄めて飲むもよしだ。
做法也很簡單,把蘿蔔切成骰子狀,然後浸入水飴或蜂蜜中放著即可。
作り方も簡単で大根をサイコロ状にカットして、後は水あめか蜂蜜に漬けてそのまま放置するだけだ。
過一陣子蘿蔔會出水,把上澄取來喝就行。不過蘿蔔的酵素怕熱,這點要注意。
暫くすると大根から水分が出てくるので、それの上澄みをすくって飲めば良い。ただし、大根の酵素は熱に弱いのでそこだけは注意が必要だ。
「……嗯,好甜。」
「……ん、甘いな」
「嘛,因為放了蜂蜜。還會讓你吃些其他東西。維持體力胃腸功能是不可或缺的唷——」
「まぁ蜂蜜が入っているからね。その他にも色々と食べて貰うよ。体力の維持には胃腸の働きが不可欠だからねー」
「嘛……食慾沒那麼好,但會想辦法努力的。」
「まぁ……食欲はそこまでないが、何とか頑張ろう」
之後,教導官端著手巾和裝在桶裡的水回來了。
その後、教育係が手ぬぐいと桶に入れた水を持って戻ってきた。
用手巾擦去奇妙丸的汗,替換他滿是汗水的衣服。靜子對奇妙丸在擦拭時極力抗拒而歪了歪頭。
手ぬぐいで奇妙丸の汗を拭き取り、汗まみれの服を着替えさせる。体を拭く時に奇妙丸がやたら抵抗した事に静子は首を傾げた。
他只是年齡相稱地感到害羞,但她沒有察覺那種微妙的男人心情。
年相応に恥じらいを感じているのだが、そういう微妙な男心には気付かない彼女だった。
「可、可恥……話說回來那到底是什麼東西?」
「く、屈辱だ……ともあれそれは一体なんなのだ?」
奇妙丸一邊看著靜子拿來、硬是夾在他腋下的那根看起來像是玻璃製的棒狀物,一邊提出疑問。
奇妙丸は静子が持ち込み、強引に脇に挟まされたガラス製と思しき棒状のものに視線を向けながら疑問を口にする。
「嗯——體溫計……37.9度。因為不知道昨天的體溫如何所以說不準,但也不是危及生命的體溫。」
「んー、体温計……37.9度。昨日からの体温が分からないから何ともいえないけど、まぁ命に係わるような体温じゃないね」
「我不太懂你在說什麼,但我感到生命有危險……」
「何を言っておるのか分からんが、俺は生命の危機を感じているのだが……」
「嗯,只能靠補充體力並調理養生了。先把切碎的蔥放在枕邊。飯做成地瓜飯,生薑末和蔥放入白湯裡。再來就是烤過的梅干嗎……生病時以滋養強壯和補充營養最為重要。」
「まぁ体力を付けて養生するしかないね。とりあえず刻みネギを枕元に置いておくよ。ご飯はさつまいもご飯と、下ろし生姜とネギを白湯に入れてね。後は焼き梅干しかな……病気には滋養強壮と栄養補給が何よりも重要だしね」
「……怎麼說呢,太簡單反而讓人不安。」
「……何というか手軽過ぎて逆に不安になってくるぞ」
生薑、蔥、蘿蔔、薩摩芋等被視為對感冒有益的食物,但戰國時代並沒有那種觀念。
風邪に良い食品として生姜やネギ、大根や薩摩芋などがあるが戦国時代にはそういう考えはない。
本來漢方的理念是透過日常飲食建立不易被病魔擊倒的身體,並不像西醫那樣有太多對症療法的藥物。
そもそも漢方の考え方は、普段の食生活で病気に負けない身体を作ることにあり、西洋医学のような対症療法的な薬はさほどない。
戰國時代以填飽肚子為首要,營養素尚未被發現,因此也無可厚非。
戦国時代は食事は腹を満たすのが第一であり、栄養素など発見もされていない時代なのだから無理もない。
因此站在奇妙丸的角度,完全無法理解靜子所說之物為何有其必要性。
ゆえに奇妙丸の視点に立てば、静子の言っているものがどういう理由で必要か皆目見当もつかないのだ。
「來吧,這裡還是相信靜子姊姊吧。」
「まま、ここは静子お姉さんを信用しなさいな」
「不,我並非不信你……吧?」
「いや、貴様を信じておらぬ訳ではない……ぞ?」
這話不假。
その言葉に偽りはない。
對奇妙丸來說,現在的靜子是『可以忘卻利害得失與立場去傾心交談的對象』。
奇妙丸にとって、今や静子は『損得勘定や立場を忘れて話せる相手』なのだ。
如果靜子是男的,應該會成為能夠推心置腹相交的無二好友吧。
もしも静子が男なら、腹を割って話せる無二の親友となれただろう。
從這個意義上說,靜子是女性實在有些可惜;但同時也覺得也正因為是女性,才會以這樣的方式相遇吧。
そういう意味では静子が女なのが実に惜しかった。同時に女だからこそ、こうして出会えたのだろうとも思っていた。
「人的緣分真是奇妙的東西啊。」
「人の縁とは不思議なものよのぅ」
奇妙丸一邊嘀咕著那些話,一邊閉上眼睛。蓋在額頭上的手巾冰涼而舒適。
そんな事を呟きながら奇妙丸は目を閉じる。額に乗せられた手ぬぐいが冷たくて心地よかった。
可能也因為全身的倦怠,奇妙丸的意識逐漸模糊。
全身の気だるさもあってか、奇妙丸の意識は徐々に薄れていった。
「咦? 已經要睡了?算了吧……晚安,茶丸君」
「あれ? もう寝ちゃう? まぁいいか……おやすみ、茶丸君」
在那句話傳入耳中後,他便沉入了深沉的睡眠。
その言葉が耳に届いたのを最後に、彼は深い眠りについた。
關於奇妙丸的咳病,遠在戰場的諸人也陸續被通報。
奇妙丸の咳病については、遠く離れた戦場(いくさば)にいる男にも逐次伝えられていた。
「什麼,靜子?」
「何、静子が?」
正在攻打位於美濃國井之口的斎藤氏居城稻葉山城的信長。
美濃国井之口にある斎藤氏の居城・稲葉山城を攻めている信長だ。
他一聽說奇妙丸患了咳病,便下令派遣藥師等相當於現代醫師的人員前去。
彼は奇妙丸が咳病を患ったと聞くやいなや、薬師(くすし)など現代でいう医者に当たる人たちを派遣するように命令した。
然而一週過去仍未收到好轉等相關報告。若是其他孩子不會做到這種程度,但對信長而言,奇妙丸是繼承家督的嫡子。
しかしそれから一週間経っても快方に向かった等の報告は届けられなかった。他の子供ならここまでしないのだが、信長にとって奇妙丸は家督を継ぐ嫡男だ。
現在若因病去世就糟了;正當苦思該怎麼辦時,傳來靜子正在照料奇妙丸病情的報告。
今、病気で死なれては困る。さて、どうしたものかと思案していた時に、静子が奇妙丸の病気を看ているとの報告を受けた。
「是。家中人說她指示了許多奇怪的事項,例如在房間四隅放置盛有熱湯的木桶、在枕邊放置剁碎的蔥……還有對食事提出各種要求。」
「はい。家の者によりますと、何やら奇妙な指図が多いとか。湯が入った桶を部屋の四隅に置いたり、枕元に刻んだ葱を置いたり……また、食事にも色々と注文をつけているとの事です」
「……」
「……」
信長托著下巴沉思。
顎に手を当てて信長は考える。
根據報告,奇妙丸深信自己的壽命短促,向靜子傾吐了自己的身世。
報告によれば奇妙丸は自身の命が短い、と思いつめて静子に素性を語ったとの話だ。
即便知道那些事,靜子仍試圖治療奇妙丸的咳病。信長一度思索其用意為何,但很快又認為那不過是多心的臆測。
それを知ってなお、静子は奇妙丸の咳病を治そうとしている。どういう思惑か、と考えたがすぐに信長はその考え自体が邪推に過ぎないと思い直した。
(若那丫頭真能巧妙應對世事,就不會來到我這裡。換言之,靜子是『沒有別的打算』。大概只是單純出於善意,想治療身邊的奇妙丸的咳病)
(あの娘が器用に世を渡れるのなら、わしの所に来る事などない。つまり静子は『何も考えていない』のだ。単純に善意から身近にいる奇妙丸の咳病を治そうとしているだけなのだろう)
「命家中人遵從靜子的指示。她所需之物儘可能備齊。告知靜子稍後要聽她的詳報。」
「家の者に静子の指示に従うように命じておけ。奴が必要としたものは可能な限り用意しろ。静子には詳しい報告を後で聞くと伝えておけ」
「是!」
「はっ!」
他深深低頭致意後,轉身回去將信長的話傳達給傳令。
深々と頭を下げて返事をした後、伝令に信長の言葉を伝えるべく踵を返した。
「靜子大人不僅精於農事,對於醫病也博學嗎?」
「静子殿は農業だけでなく、病に対しても博識なのか」
森可成帶著幾分讚許如此低語。
森可成が若干感心しつつそう呟く。
信長差點贊同那話,但稍作思忖後,邊指著自己的頭邊說道。
信長はその言葉に同意しかけたが、少しだけ考えた後、指で自分の頭を指しながらこう言った。
「對靜子的博學固然驚人,但她不只止於此。我認為她可怕之處在於,擁有能依對象調整說明內容的豐富詞彙。」
「静子の博識ぶりには驚くが、奴はここが良いだけではない。あ奴の恐ろしい所は、相手に合わせて内容を説明できる語彙の多さにこそあるとわしは考える」
接獲奇妙丸、丹羽以及彩的報告後,信長察覺到一個共通點。
奇妙丸や丹羽、それから彩の報告を受けていた信長は、ある一つの共通点に気付いた。
靜子雖然博學,卻會把知識『針對他人』『以易懂方式說明』。
静子は博識だが、その知識を『他人』に向けて『分かりやすく説明している』と。
意識到那點的信長,再次翻閱了孫子的兵法書、其他兵法書以及南蠻的傳記等。
それに気付いた信長は、孫子の兵法書やその他の兵法書、南蛮での伝記などをもう一度読み返した。
信長認為這些兵法書都比其他書更為簡潔,且條理分明易於理解。詮釋方式具有一致性,對於難解之處也適時加注,顧及到沒有太多前提知識者也能理解。
どの兵法書も他よりずっと簡潔で、それでいて分かりやすく纏められていた。解釈の仕方も一貫性があり、また難解な部分には適宜注釈が入れられており、前提知識を多く持たない者にも理解ができるように気が配られていると信長は思った。
「確實如館主所言。向她請教時,她會把要點簡潔整理後說明給人。」
「確かにお館様の言う通りです。彼女に説明を求めると、要点を簡潔に纏めて説明してくれますし」
「是啊。不過先把她的事放一放。那件關於德川的家臣現在如何處理?」
「そうだ。まぁ今は奴のことは置いておこう。件(くだん)の徳川の家臣についてどのようになっている?」
「據說已經完成交付給德川従五位下三河守大人了。」
「既に徳川従五位下三河守殿への引き渡しは完了しているとの事です」
「嗯,那就好。這時期不想為額外的紛擾操心。或許寬手了些,但就壓到只是警告當事人一番即可。」
「うむ、それならば良い。この時期に余計な騒動で頭を悩ませたくない。手緩いかもしれんが、本人に釘を刺す程度に抑えておく」
「館主的遠見,實在令人讚嘆。與美濃交戰時,如若後方有隱患,將被迫承受緊張情勢。」
「お館様のご慧眼、誠に素晴らしく思います。美濃との戦の時、後顧の憂いあると緊張状態を強いられます故」
在尾張人手薄之際,三河是否為敵或友不明的情況,對信長極為不利。
尾張が手薄な時期に三河国が敵か味方か分からぬ状況は、信長にとって非常に好ましくない。
有時一切外交上辛苦努力讓鄰國不敢干涉美濃,可能因此付諸流水。
場合によっては、外交で近隣諸国が美濃へ手出し出来ぬようにした苦労が水泡に帰す。
因此信長判斷在忠勝一事上應避免將事態鬧大。
故に信長は忠勝の件で、事を荒立てるのを避けるべきと判断した。
最終信長決定把忠勝曾在靜子村莊的事視為『未曾發生』,並定調丹羽與忠勝之間存在友好關係,形成一段『並不存在的關係』。
最終的に信長は忠勝が静子の村にいた事を『なかった事』とし、丹羽と忠勝は友好関係がある、という『存在しない関係』がある事にした。
忠勝當然未提出異議便同意了。
無論、忠勝はこれに異論を挟む事なく了承した。
本來只要不牽連到主君家康,他就有心理準備接受任何條件。
元より彼は主人である家康にまで累が及ばないのであれば、どの様な条件も飲む心構えだったが。
「稻葉山城的情況如何?」
「稲葉山城の状況はどうだ」
聽到那句話森可成緊繃表情。
その言葉に森可成は表情を引き締める。
「城下的井口燒討已結束,稻葉山城已成為裸城。目前已在城周圍完成鹿籬的築設。」
「城下の井口の焼き討ちは終わり、稲葉山城を裸城にしました。現在は城の周囲に鹿垣を作り終えた所です」
「好,進入下一階段。將各據點的士兵分組。以十人為一組,白天值勤七人,夜間值勤三人。」
「よし、次の段階に移る。各拠点の兵士を分けろ。一〇人を一組とし七人を昼番、三人を夜番にせよ」
「啊……?」
「は……?」
雖然能理解要將士兵分開,但對接下來的命令意義不明,森可成顯得困惑。
兵士を分ける事までは理解出来たが、そこから次の命令が何を意味しているのか分からず、森可成は困惑を反す。
但信長絲毫不顧森可成的心情,露出狠毒的笑容說道。
だが信長は森可成の内心など気にも留めず、悪どい笑みを浮かべてこう言った。
「從現在起就是耐力的較量」
「ここからは根気比べよ」
齋藤龍興派人偵察信長的陣地,但聽到報告後他大為混亂。
斎藤龍興は配下に信長の陣を偵察させたが、その報告を聞いて彼は激しく混乱した。
報告稱主要的家臣近半不在,表面上似乎我方優勢許多,但剩下的人到底在做什麼,根本毫無頭緒。
主立った家臣の半分近くが見当たらないとの事より自軍の方がはるかに有利だと考えられるが、残っている人間が何をしているのか皆目見当もつかなかった。
偵察者也說不清楚,只是回報堆土、挖洞等零碎訊息,毫無要領。
偵察した人間もよく分かっておらず、土を積んでいるだの、穴を掘っているだの要領を得ない報告ばかりが寄せられていた。
唯一能確定的是信長在布下包圍陣勢。
唯一理解できたのは信長が包囲網を敷こうとしている事だけだ。
因此是否趁此良機出擊或應堅守城池,家臣間的意見頓時分成兩派。
そのせいかこの好機を逃さず討って出るべきか、それとも籠城をするべきか、家臣の間でも意見が真っ二つに割れてしまった。
龍興本人也苦惱於應選擇哪一方。
龍興自身、どちらを選ぶべきか考えあぐねていた。
他先派密使去稻葉、卜部、安藤這三位美濃重臣,等待回信再決定行動。
ひとまず稲葉、卜部、安藤の美濃三人衆に密使を送り、その返答を待って行動を決めようとした。
幸而回信很快到來,內容為『正與織田軍對峙,需約十日左右方能讓兵到達』。
幸いにも返事はすぐに返ってきた。内容は『織田軍と相対中のため、兵の到着まで一〇日前後掛かる』だった。
結論已定。龍興採取留守稻葉山城、等待他們援軍的作戰。
これで結論は出た。稲葉山城に籠城し、彼らの援軍を待つ作戦を龍興は採った。
家臣也無反對,因為大家認為信長軍兵力減半,是因為他們正攻打西美濃。
家臣からも反対意見はなかった。信長軍の兵力が半減しているのも、西美濃を攻めているからだと判断をしたからだ。
表面上看似無懈可擊的判斷,但他們忽略了一個小卻絕不可忽視的決定性變化。
一見どこにも穴がない判断に見えるが、彼らは小さな、だが決して見落としてはならない決定的な変化を見落としてしまっていた。
照理織田軍應從東方渡過長良川紮營,總力攻城,但這次一到達竟分軍將一半派向西美濃,其用意何在?
従来であれば織田の軍勢は城の東方より長良川を渡河して陣を張り、総力を以って城攻めを行うはずが、今回に限って到着した途端に軍を分け半分を西美濃に送り出した狙いはどこにあったのか。
為何美濃三人衆能立刻回答援軍可在十日左右趕到?
何故美濃三人衆は援軍を一〇日前後で送ることが出来ると即答できたのか。
各個問題看似微小,但從對方視角俯瞰全局所導出的必然性,龍興陣營未曾察覺。
一つ一つは些細な問題だが相手の視点に立って全体を俯瞰することによって導き出される必然に龍興陣営は気付いていない。
他們已經落入信長掌中,正一刻刻被逼入死地。
既に自分たちは信長の手中にあり、刻一刻と死地へと追い込まれていることに。
包圍稻葉山城的信長向家臣下達的命令極為簡單。
稲葉山城を包囲した信長が家臣に下した命令は至極簡単だった。
「不要積極追求戰果,只做能將我軍消耗降到最低程度的平凡戰鬥,連續七日晝夜不休反覆進行」,「攻擊方採取當番制,輪替休息以持續維持前線士氣」,以及「變換地點製造激戰區,使敵人無法漫不經心地專注防守」這三條。
『積極的に戦果を求めず自軍の損耗を最小限に抑えられる程度の凡戦を七日間、昼夜を徹して休まず繰り返せ』と『攻め手は当番制にし、交代制で順に休みを取り前線の士気を常に高く保て』、更に『場所を変えて激戦区を作り、漫然と防御に専念できなくせよ』の三つだ。
雖然家臣對信長目的不解而困惑,但他們忠實執行命令,反覆進行平凡之戰。
信長の目的が分からず戸惑った家臣たちだが、彼らは命令を忠実に守り凡戦を繰り返した。
家臣不懂也在情理之中,因為信長根本沒把龍興放在眼裡。
だが家臣たちが分からないのは当然である。信長は龍興など見ていなかったのだ。
金華山是多懸崖的險峰,山頂的稻葉山城有許多櫓、倉庫與曲輪,配備大量兵力,是座堅不可摧的要塞。
金華山は崖の多い険しい山だ。そして山頂にある稲葉山城は多くの櫓や蔵と郭を構え、多数の兵を配した要害堅固な城だ。
而且士兵們都是經歷過無數修羅場、百戰老練的猛士,信長深知要擊潰他們並不容易。
更に兵士はこれまで幾多の修羅場をくぐり抜けてきた百戦錬磨の猛者揃いだ。これを撃破するのは容易ではない事を信長はよく理解していた。
因此他先著手削弱這些百戰老將,為此採取的作戰就是「晝夜無休的平凡之戰」。
だから彼はまず百戦錬磨の猛者たちを潰すべく動いた。その為の作戦が『昼夜問わずの凡戦』である。
「晝夜無休」字面即二十四小時之意;「平凡之戰」亦是字面上指平凡的戰鬥。
昼夜問わず、は文字通り二十四時間の事だ。そして凡戦も文字通り平凡な戦いをする事だ。
此舉乍看毫無意義,是因為該作戰沒有速效性,亦無可奈何。
一見して意味のない行動に見えるのは、この作戦に即効性がない為仕方ない。
但看不見的「那東西」會在身體內靜靜且確實地累積,即便是熟練的精銳也一樣。
しかし目に見えない『ソレ』は、熟練の精鋭であっても体へ静かに、そして確実に蓄積していく。
持續處於極度緊張狀態所產生的「壓力」。
極度の緊張状態を常に強いられる事による『ストレス』。
被迫無法安心入眠所造成的「睡眠不足」。
安心して眠る事が出来ない状態を強いられる事による『睡眠不足』。
無法充足進食所造成的「營養與水分補給不足」。
満足に食事が出来ない状態を強いられる事による『栄養と水分補給不足』。
這些都是身為人類無可避免會伴隨的弱點。
それらは人である以上、どうしても付きまとう弱点だ。
若「睡眠不足」持續,專注力會下降,無法即時應對緊急狀況。
『睡眠不足』が続けば集中力が低下し、緊急事態に即応できなくなる。
免疫力下降導致體調惡化,暴露在戰場這種非日常帶來的過度「壓力」中後,情緒控制也將變得困難。
更に免疫力が低下することで体調が悪化し、戦場という非日常からくる過剰な『ストレス』に曝され、感情のコントロールが難しくなっていく。
「水分不足」字面上即體內水分不足,會引起脫水、熱中症及低血壓等症狀。
『水分不足』は文字通り体内の水分量が不足し、脱水症状や熱中症、低血圧症を引き起こす。
此外,人體若失去約15%的體液便會影響維持生命活動,超過20%則可能致命。
更に人体は保有する水分の15%を失うと生命活動の維持に支障を来たし、20%を超えれば死に至る。
信長並非對人體的細節有那麼深入的了解。
信長は人体にそこまで詳しい訳ではない。
他只是從經驗中知道,持續飢餓與口渴,或是長期睡眠不足,是危險的。
彼は経験から腹が減り喉が渇いた状態が続く事と、寝不足状態が続く事が危険だと知っているだけだ。
如果那種狀態持續會如何,與此相關的是靜子的話語。
その状態が続けばどうなるか、その事については静子の言葉が絡んでくる。
由於缺乏關於人類維生的基礎知識,信長無法判斷那是否為真;正因如此,他決定在這場戰中驗證其真假。
人間の生命維持に関する基礎知識がない以上、信長はそれが本当かどうか判断出来なかった。だからこそ、この戦でそれが真か否かを調べる事にした。
(……那麼,結果會如何)
(……さて、結果はどうなるか)
數日後,他得知「睡眠不足」與「營養・水分不足」對人體極為致命。
数日後、彼は『睡眠不足』と『栄養・水分不足』が人体にとって非常に致命的である事を知る。
那是在包圍稻葉山城的第四天。
それは稲葉山城を包囲してから四日目の事だった。
先前一直遭到強烈抵抗的織田家家臣們,注意到百戰老將的反擊已失去往日銳氣。
今まで強い抵抗を受け続けていた織田家家臣たちは、百戦錬磨の精鋭の反撃が精彩を欠いている事に気付いた。
本以為是進攻時機,但因信長下了「七日間」的嚴命,他們壓抑著躁動的心情,反覆進行無功的交戰。
攻め時かとも思ったが信長より『七日間』が厳命されているため、彼らは逸(はや)る気持ちを抑えつつ凡戦を繰り返す。
但能壓制的也僅到第六日,臨近第七日之夜,便有人前往向信長直陳,請求批准進攻。
しかし抑えが利いていたのも六日目までであり、七日目を目前にした夜に信長へ攻撃の許可を取りつけに直談判に赴くものが現れた。
「殿,請將一支部隊託付給這個猿。讓我把龍興那傢伙的首級擺在殿面前給您看」
「お館様、どうかこのサルに一部隊をお預け下さい。龍興めのそっ首を御前に並べてご覧に入れましょう」
最先抵達本陣的秀吉,一見到坐著的信長便這樣開口。
いの一番に本陣へ到着した秀吉は、腰を下ろしている信長に開口一番そう言った。
正在嘴裡含著烘芋的信長,把它咽下後這麼說道。
干し芋を口に含んでいた信長は、それを飲み下した後にこう言った。
「猿啊,我知道你想說的。其他人也會陸續來,到那之前先坐著等候」
「サルよ、お前の言いたい事は分かっておる。他の者もその内来るだろう。それまでしばし座して待て」
秀吉遵從那話,在本陣一隅坐下。
その言葉に従った秀吉は、本陣の一角に腰を下ろす。
大約一小時後,參與攻城的大多數武將都抵達了本陣。
それから一時間ほどで城攻めに参加している殆どの武将が本陣へ到着した。
「這六日以來,一直反覆打些平庸之戰,情況如何?」
「この六日間、凡戦を繰り返してどうだった」
信長如此問向聚集的武將們。
信長は集まった武将たちに対してそう尋ねる。
多數武將讀不透信長的意圖而難掩困惑,但目光敏銳者則有如心中所想般開口回報。
殆どの武将は信長の意向が読めず戸惑いを隠せずにいたが、目端の利く武将たちはわが意を得たりと口を開いた。
「頭一、二日抵抗激烈,為了抑制損耗費了不少心力,但到了第四日左右,銳勢已明顯消失」
「初日、二日目は抵抗が激しく損耗を抑えるのに苦心しましたが、四日を数える頃には目に見えて勢いが失せました」
「第五日的夜襲時,守望幾乎失靈,直到放箭才有反應」
「五日目の夜襲では見張りが機能しておらず、矢を射掛けてはじめて反応があったほどです」
「也有報告說在防守中有兵卒力竭而倒下」
「防戦の最中に力尽きて倒れる兵が居たとの報告も受けております」
森可成與秀吉一開口,其他武將也紛紛發言。
森可成や秀吉が口を開くと、他の武将たちも次々と言葉を口にする。
「在下負責的區域也是相同的情形」
「某の担当場所も同じような感じです」
「說起來,確實從第五日左右起手感就變得遲鈍了……」
「そういえば、確かに五日頃から手応えが鈍くなったような……」
「敵將聲嘶力竭地鼓舞同袍,但士卒行動遲緩,士氣已無法維持」
「敵将は声を嗄らして味方を鼓舞しておりましたが、兵卒の動きは緩慢で士気は保てておりませぬ」
「我方的損害日益減少啊」
「こちらの損害は日に日に減っておりますな」
其後武將們仍然喧囂不休地交換意見。
その後も喧々囂々(けんけんごうごう)と武将たちは意見を交わしている。
信長默默聽著。即便場面呈現半是閒談的樣子,他仍一味沉默、專心聆聽。
それらを信長は黙って聞いていた。半ば雑談状態の様相を呈しても、ひたすらに黙して聞きに徹した。
待到武將們話語耗盡的時刻,信長微微一笑然後開口說道。
やがて武将たちの言葉が尽きた頃合を見計らって、信長は小さく笑みを浮かべて告げる。
「諸位,想必鬱懣已在胸中積累許多。明日盡情把它們砸在那些人頭上吧」
「皆の者、さぞや鬱憤が溜まっているであろう。明日はそれを連中に存分に叩きつけて参れ」
雖然並非明確下令,武將們卻都認為『總攻擊的許可已下』。
それは明確な言葉ではなかったが、武将たちは皆「総攻撃の許可が出た」と考えた。
會議隨後無事結束,眾人回到各自陣地。
その後何事も無く会議は終わり、彼らは自分の陣地へ戻る。
剛一回到,武將們立刻發命給部下,開始準備總攻擊。
戻った直後、早速部下たちに命を飛ばして武将たちは総攻撃の準備にとりかかる。
當然,原先計畫的夜間行動仍在持續;除了夜班士兵之外,其餘人都獲得了充足的飲食與休息,以備明日。
無論、当初の予定通り夜間の攻撃は継続している。夜番の兵士以外には十分な食事と休息を取らせ明日への備えを怠らなかった。
立下武勳是武人的榮耀。他們在攻打稻葉山城的第七日,獲得了那個機會。
武勲を立てたるは武人の誉。彼らは稲葉山城を攻めて七日目に、その機会を得た。
剩下的,只需一把抓住它。
後はそれを掴み取るだけだ。
因此,他們比以往更加周詳地準備,細心謹慎以避免任何不測。
それ故、彼らは今まで以上に入念に準備を整え、不測の事態が起こらぬよう細心の注意を払った。
然而在眾人之中,僅有森可成依然保持一貫的態度沒有改變。
しかしその中で森可成だけは、いつもと態度を変えなかった。
對於被周圍氣氛感染而急於進言的部下,他如此諄諄告誡。
周りの熱に中てられて進言した部下に彼はこう諭した。
「氣勢昂揚固然可嘉。但若因急於立功而疏忽了自身的根基,那就是二流。一流的武士(もののふ)會約束自己,不為榮達所動,先求活著並完成主命,然後方能成就自己的仕途與出身」
「意気軒昂たるその様やよし。しかし功を焦るが余りに己の足元を疎かにするようでは二流。一流の武士(もののふ)は栄達に逸る己を律し、まずは生き残り更には主命を達し、その上で己の立身出世を成し遂げるのだ」
聽了那番話,部下意識到自己的淺陋,羞愧地垂下臉。
その言葉に部下は己の浅はかさに気づき、羞恥に面を伏せる。
但森可成一手按住他,露出如看待兒子的慈愛笑容,接著又說道。
しかし森可成は片手でそれを制し、まるで息子を見るような優しい笑みを浮かべて重ねてこう言った。
「我並不是說追求武功有錯。但若被慾望蒙蔽雙眼,到了關鍵時刻便會落後。年輕人偏向往上追求也是情理之中。空也上人曾言『捨身方能有浮出之時』,但我認為『活著才有翻身之機』。不要心急,不僅顧自己,也要環顧四周互相扶持,活著一起朝主公所指的下一個時代努力吧。」
「武功を求めるのが悪いとは言わぬ。だが欲に目が眩めば、いざという時に後れを取る。若さゆえ上を目指しがちになるのは道理。空也上人の言に『身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ』とあるが、わしは『生きてこそ浮かぶ瀬もあれ』と考える。焦らずに自分のみならず周りを見回して助け合い、生きてお館様の示す次の世を目指そうぞ」
之後,把部下遣退的森可成如其所言,以和平常無異的態度度過了整個夜晚。
その後、部下を下がらせた森可成は言葉通り、最後まで普段と変わらぬ態度で夜を過ごした。
與此形成對照的正是木下藤吉郎秀吉。
それとは対極的な事をしているのが木下藤吉郎秀吉だった。
他一方面召集了數名部下,同時向大多數兵士下達各種指示。
彼は何人かの部下を集める一方、大多数の兵士たちに様々な指示を飛ばしていた。
在敵我雙方各自盤算交錯的氛圍中,信長攻略稻葉山城的第七個早晨到來了。
そんな敵味方それぞれの思惑が渦巻く中、信長の稲葉山城攻略七日目の朝がくる。