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戦国小町苦労譚

千五百六十五年 十月中旬

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大きないも穴が五つ、干し芋を入れた壺が棚に三〇数個ほど並んでいた。

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今年の薩摩芋は大豊作だった。

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これだけあれば来年の夏まで食べるのに困らないと、はっきり断言出来るほどだ。

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その上、甘味を持つ腹持ちのよい食べ物だ。村人たちが気持ちを高ぶらせるのも無理は無い。

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そもそも戦国時代は、甘いというだけで高級食材として扱われる時代だった。

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「おー焼けてる焼けてるー」

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皿一杯に載せられた焼き芋を見て、静子は楽しそうに声を上げた。

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微かに漂う甘い匂いが彼女の胃を刺激する。

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それは村人たちも同じで、チラチラと焼き芋の山を見ては唾を飲み込んでいた。

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「全員揃ってるようだし、各自芋を手にとってー」

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見た限り静子たちが最後だったようで、その声と共に村人たちは焼けた芋の山に群がる。

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一分もしないうちに焼き芋の山は、すっかり姿を消していた。

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「村長ー、何か一言お願いしますー」

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そのまま食べるかと思いきや、村人は全員静子の方を向いていた。

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音頭が欲しい、と理解した彼女だが、流石に三〇人から一斉に視線を向けられた事に腰が引けた。

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「えー、まぁ難しい事や長い事は言わないよ」

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そう言いつつもコホンと一つ咳払いをする静子は、意外とノリノリだった。

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「皆、お疲れ様でした。お陰で薩摩芋が大豊作です。今日は飲んで食べて騒ぐよ! 来年の豊作を願って!?」

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「おー!」

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静子が芋を天高く掲げると、それに呼応するかのように村人たちも薩摩芋を天高く突き上げる。

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ある意味シュールだが、モチベーションは何よりも重要なのだ。多少の事を気にしていては始まらない。

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その声が祭りの始まりの合図だった。

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「さーて、綺麗な黄金色のお芋さん。貴方はどんな味かなー」

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村人が皮ごと食べたり、押しこむように食べて喉を詰まらせたりしてるのを見ながら、静子はゆっくりと薩摩芋の皮を剥いていく。

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剥けていくたびに綺麗な黄金色の身が見えて、彼女は年甲斐もなくウキウキした気分を感じていた。

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「ほぅ、確かに美味そうな色じゃな」

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三分の一ほど皮を剥いた所で、ふいに背後から人の声が飛んできた。

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声に反応して振り返ろうとしたが、その前に芋を持った手を強く引っ張られた。

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「うむ。程よい甘味で美味いぞ」

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静子の腕を引っ張った人物は、あろうことか彼女の薩摩芋へ無遠慮にかぶりついた。

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一瞬にして皮の剥いた部分が半分ほどが消えてしまった。

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しかし彼女はその人物に対して文句など言わず、逆に驚愕してわなわなと震えていた。

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「お、おおおおおお館様!?」

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静子の芋を食べた人物は、彼女の主である織田信長だった。

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「干し芋か。程よい歯応えと甘味が美味じゃ」

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「はぁ……」

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皿に盛られた干し芋を食べている信長を、静子は半分ほど呆けた表情で見ていた。

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それもそのはず、訪問するなどという連絡は一切受けていない、本当に突然の来訪だったからだ。

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「あの、お館様。本日のご来訪、どういったご用向きでしょうか?」

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「出陣前に温泉を活用しに。それと貴様に用があった」

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(出陣……ああ、そろそろ美濃を攻める時期だね)

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織田信長が尾張と美濃の二カ国を有する大名になったのは、永禄十年(1567年)と言われている。

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信長の一代記である『信長公記』が八月辺りで美濃を支配したと書かれている。

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正確な時期は不明だが、永禄十年十一月九日付けで信長に美濃国内と思われる御料所回復を、正親町天皇が信長に命じた綸旨がある。

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それらを考えると永禄十年(1567年)が美濃を支配した年と考えていい。

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勿論、それに至るまで色々と小競り合いを続けていた。

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おそらくその一つが、近日中に起こるのだろうと静子は理解した。

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「……え? 私に?」

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戦争は理解したが自分に用がある、というのは理解できなかった。

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一体どの様な用件かも分からないので、静子はただ不思議そうに首を傾げるしかなかった。

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「ここにいる村人、そして新たに追加する五十人の農民。そやつらは戦場へ連れて行かない。代わりに貴様はそれらを使って、ここを一大生産拠点に変えろ」

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「え、ええ?」

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「それからこの干し芋は貰っていく」

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「はぁ……それは問題ないのですが。何故、生産拠点を作れと命じるのでしょうか?」

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もとより生産増加を考えていた静子だが、信長の方から命じられた訳ではなくあくまで自分で増やそうと考えていた。

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だから突然信長がこの場を生産拠点にしろと命じてきた事が不思議に思えたのだ。

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「……貴様はこの国をどう思う?」

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それは突然の質問だった。

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静子は答えに詰まっていたが、信長は答えを期待したわけではなく、単に自分に言い聞かせたかったようだ。

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だから静子が回答に詰まっていても、全く気にせず語り出した。

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「今もなお大名同士の小競り合いが続いておる。もはや国も民も疲弊しきっているだろう。早く国を一つに纏めなければならない。そうしなければ南蛮や明に追いつけない」

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しばし考えるような表情をした後、信長はポツリと言った。

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「だから、まずは貴様の語った『富国強兵』が必要と感じたのじゃ。盤石な基盤なくして、国を一つに纏め上げる事など到底不可能じゃ」

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そこまで言った後、信長は大きく息を吸って、そしてゆっくりと吐いた。

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「静子、お主がした功績は誰も理解出来ぬだろう。だがわしは分かる。少人数で大量生産を行う事の難しさを」

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「ありがとうございます」

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「だからこそ、次は米の大量生産を命ずる。己の役目、しかと果たして貰うぞ」

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薄い笑みを浮かべる信長の言葉に、静子は深々と頭を下げる事で応えた。

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不思議な気持ちだと静子は思った。

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言っている事は命令だし、それを叶えた所で褒美をくれる保証もない。

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しかし不思議と嫌な気持ちにはならなかった。

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むしろ信長がどこまで行くのか知りたくなった。

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「この国を統一したら、次は明や南蛮を超える国へと発展させる。それから――――」

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静子は知っている。今夢を語る信長は、決して天下を統一など出来ぬ事を。

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夢半ばで謀反にあい、その人生を終えるという事を。

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それでも知りたいと思った。彼がどこまで道を走り続けるのかを。

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人生そのものを一瞬で駆け抜けていく信長を、静子は心から知りたいと思った。

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(歴史が記した信長じゃない。今、目の前にいる信長を知りたい)

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結局、作った干し芋の殆どは信長が持ち帰る事になった。

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だが代わりに戦場へ行かなくていいのだからまだ良いと言える。

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普通なら収穫物を税として徴収された上で、働き手である農民を全て戦場へ連れて行くのだから。

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「静子に従い収穫量を増加させよ。それが貴様たちの役目だ!」

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馬上から信長は村人たちへそう告げた。

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静子は直感的に理解した。信長は自分の国の基盤を強化する気でいる事を。

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(上洛までの数年間で、常識を超える国家基盤を作ろうと考えている?)

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戦国時代、米や作物の収穫量は農民の数や土地によって変わっていた。

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大量生産も効果的な農業技術も何もない。

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現代のように最低の収穫量を維持出来ず、毎年ほぼ運任せに近い形だった。

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「お館様、ご期待下さい。来年の今頃、あっと驚く量の米を収穫してご覧にいれましょう」

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だが静子は違う。

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彼女の頭の中には、戦国時代から現代までの間に生み出された育成方法がある。

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現代の知識を用いて栽培すれば、それだけで収穫量は格段に違う。

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「ほほぅ、それは楽しみな事だ」

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自分を真っ直ぐ見据える静子を見て信長はニヤリと笑った。

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それだけで村人の何人かは悲鳴を上げそうになったが、静子だけは小さく笑っていた。

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絶対の自信があるわけではない。

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現代では常識の機械が戦国時代には全くない。

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タイムスリップ時に持ち込んだ現代技術品はあっても、それで何でも片付けられるほど万能でもない。

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壊れたら代用品を用いなければならないので、おいそれと使い潰す訳にもいかない。

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それでも彼女は笑っていた。

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それは楽しくて楽しくて仕方ないからだ。

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広大な農地を耕し、それらを使って大量の農作物を作り上げる事が彼女には楽しくて仕方ないのだ。

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「私の知識を用いて、どの国よりも、そしてどの国も真似出来ない石高をご覧に入れましょう」

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「大した自信だな。それだけ大口を叩けるとは」

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「私一人ならここまで大きく言えません。しかし、私にはこの半年近くついて来てくれた人たちがいます。彼らと力を合わせれば、必ずや成功するでしょう」

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静子はそう言いながら村人たちの方へ視線を向ける。

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今までの収穫も彼女一人で成功した訳ではない。

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村人たちの協力があったからこそ、あれほどの薩摩芋やトウモロコシが収穫出来たのだ。

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二十歳にも満たない若輩なのに、彼らは黙ってついて来てくれた。

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最初は脅されて嫌々付き合っていたが、今では全員固い絆で結ばれている。

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だからこそ静子は次も失敗しないと確信していた。

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「楽しみにしておるぞ!」

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そう言い終えると、話はこれでおしまいと言いたげに信長は馬の首を反転させる。

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それを見た静子は深く頭を下げ、そしてその静子を見た村人たちは慌てて頭を下げた。

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暫く馬の蹄の音が聞こえていたが、やがて聞こえなくなると静子はゆっくり頭を上げた。

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当然ながらそこに信長の姿はなかった。

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「ふぅ、色々と大変になるなー」

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先ほど信長へ自信満々に語っていた人物とは思えないほど、その声はどこか気楽さが混じっていた。