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22 神殿

巴爾莫亞王國的神殿。

バルモア王国神殿。

通常只稱作『神殿』。因為祭祀的只有女神瑟蕾斯汀一柱,沒必要特意冠名說明。若因細微教義差異需與外國宗派區別,則自稱『女神正教正統原理派』。

通常は、ただ『神殿』とのみ呼ばれる。神は女神セレスティーヌ唯一神であるため、誰を祭っているかなど、わざわざ名前を冠して示す必要などないからである。もし細かな教義の違いで他国の宗派と区別する時は、『女神正教正統原理派』と名乗る。

王國內最高位是索爾尼耶大主教。其下有數名主教,再下為司祭、神官長、神官、修道士。地方的神殿由神官長等數人常駐,司祭以上通常在王都的大神殿任職。

王国での最上位者はソルニエ大司教。その下に数名の司教、更に司祭、神官長、神官、修道士と続く。地方の神殿には神官長以下の者が数名常駐し、司祭以上は通常は王都の大神殿に勤める。

這些位階並無男女之別,但另有一職『巫女』僅限女性。雖然祭祀的是女神,並非字面上『神的嫁』,但瑟蕾斯汀常以少女形象現身,且偶爾會與少女交談,因此需要少女作為與女神的接點。

これらの位階に男女の別はないが、これらとは別にある『巫女』だけは女性のみである。祭られているのが女神なので『神の嫁』という意味はないが、女神セレスティーヌは少女の姿であり、また、時たま少女に話しかけることがあったため、女神との接点として少女を擁する必要があったためである。

曾與女神接觸的巫女,即便結婚或年老,仍保有其稱號。

女神と接触があった巫女は、結婚したり歳を取ったりしてもその称号は保持される。

大主教以上的位階,如樞機卿與教皇,僅存在於宗教國家盧艾達聖國。

大司教以上の位階、枢機卿と教皇は、宗教国家であるルエダ聖国にのみ存在する。

非聖國的各國則戒心十足,擔心聖國會藉教皇之名發佈宗教指示,努力削弱與本國神殿的關係,但成效不彰。因此各國苦心讓國內神殿不插手國政,並將其置於王權之下。

聖国以外の国としては、何かあった時に聖国が教皇の名で宗教的な指示を出すのではないかと警戒し、自国の神殿との関係を弱めようと努力しているが、あまりうまく行ってはいない。そのため、自国の神殿勢力自体が国政には口出ししないよう、そしてあくまでも王の下位に位置づけるよう腐心していた。

女神瑟蕾斯汀多以少女之姿顯現,隔數年到數十年降臨一次,賜下神託以警示眾人危機。

女神セレスティーヌは少女の姿をとり、数年から数十年の間隔でその姿を現し人々に危険を知らせるべく神託をお与えになる。

然而在過去五十多年中未見神託,神殿裡大多數人已非親眼見過女神降臨的一代。誠摯的信仰逐漸淡薄,神殿工作淪為牟利手段,腐敗蔓延。

しかしここ50年以上の間、神託は無く、神殿に勤務する者の大半は既に女神の降臨を体験していない世代となっていた。しだいに真摯な信仰心は薄れ、神殿の仕事はただの金儲けの手段と化し、腐敗が蔓延っていった。

神殿人員知道女神已五十多年未顯現,也知道盧艾達聖國教皇其後宣稱的神託多為聖國大神殿自作主張,因此便斷定小事不會遭女神懲罰,認為只要是為了傳教做些自由行動,女神不會動怒。

神殿関係者は、女神が既に50年以上も姿を見せていない事、それ以降にルエダ聖国の教皇から発表された神託はいずれも聖国の大神殿が勝手に作ったものだと知っていること等から、少々のことでは女神による神罰はない、女神は自分達が布教するためなら色々と自由にやってもお怒りにはならない、と決めつけていた。

結果社會陷入了『平民反而比神職更虔誠』的怪異狀態。

そして、まだ庶民の方が信仰心が遥かに篤い、という状態に陥っていたのであった。

薩拉贊主教。他也未曾親見女神降臨,升到高位也不過是用來過上富裕生活的手段。

サラザン司教。彼もまた、女神降臨をその眼で見たことはなく、上位に登ったその位階は、ただ豊かな生活のために活用すべきものに過ぎなかった。

女神那溫和少女的畫像,也讓薩拉贊認為『女神慈祥、不會可怕』,成了他心態的一部分。

優しそうな少女の姿である女神の絵姿も、サラザンに『女神は温厚であり、恐ろしいものではない』と思わせる一因となっていた。

「御使者?是嗎?」

「御使い様、だと?」

薩拉贊主教聽了部下神官長從下級貴族處得到的消息,皺起眉頭。

サラザン司教は、配下の神官長を通じて得た、下級貴族からの情報に眉を寄せた。

「是、是的,有好幾位貴族說,看見了奇蹟……」

「は、はい、複数の貴族が、奇跡を見た、と……」

荒謬。史冊上女神總是親自下達神託,從未透過什麼『御使者』當媒介。她會同時在各國大神殿現身,直接對巫女與神官訓示。距離上一次神託已經五十三年了。

馬鹿馬鹿しい。過去の記録では、女神はいつも直接神託を下している。御使いなどという仲介者を介したことなど一度もない。各国の大神殿に同時に現れて、巫女や神官に直接告げるのだ。それも、最後の神託から既に53年。

某個小姑娘,是一時僥倖利用巧合,還是用了某種手段巴結了貴族……

どこかの小娘が、偶然を利用したか、何かの仕掛けを使ってうまく貴族に取り入ったか……。

不過,等等。

いや、しかし待てよ。

不管那所謂的御使者是真是假,難道不無所謂嗎?

御使いとやらが本物であろうがなかろうが、関係ないのでは?

若當事人自稱是御使者,貴族們也相信,只要好好利用……

本人がそう称し、貴族連中がそれを信じているのであれば、ただそれをうまく利用さえすれば……。

就算被揭穿是假冒者,只要她宣稱自己是御使者、是被大家欺騙的,被我們也只是受害者,說不定就說得過去。只要在此之前充分利用、好好賺上一筆即可──

なに、偽物とばれても、本人が御使いだと主張して皆を騙したのだ、こちらも騙されただけの被害者だ、女神様の御使いを名乗る者を疑うわけには行かなかったのだ、と主張すれば問題あるまい。それまでに存分に利用してたっぷりと儲けさせて貰えれば……。

幸好消息尚未傳到大主教或其他主教。若自己先行與那小姑娘接觸,巧妙成為她的照顧者就成了關鍵。

幸い、まだ大司教様や他の司教達には話は流れていない。自分が最初にその小娘と話し、うまく小娘の世話役となれれば。

貴族的消息還包括王宮查到的姑娘下落。宮中也有虔誠者。

貴族からの情報には、王宮が調べた娘の居場所も含まれていた。王宮内部にも、信仰篤き者はいるのである。

「把多倫司祭叫來。」

「ドルン司祭を呼べ」

薩拉贊主教帶著不似聖職者的粗鄙冷笑,命令神官長。

サラザン司教は、聖職者らしからぬ下品な嗤いを浮かべて神官長に命じた。

卡歐爾被城門拒絕的次日。

カオルが城門で追い返された翌日。

她正在工房門口掃地,突然一輛看似豪華的馬車駛來。

工房の入り口前を掃除していると、なにやら豪華そうな馬車が来た。

然後窗戶打開,有聲音自裡面傳出──

そして、窓が開き、中から声が…。

「這裡是邁亞爾工房嗎?」

「マイヤール工房というのはここか」

『啊,有種不好的預感……』

(あ、何か、嫌な予感が……)

卡歐爾停下手中的掃帚,垂下頭。

カオルは箒を動かす手を止めて、がっくりと項垂れた。

「是的,這裡是邁亞爾工房,我就是卡歐爾。」

「はい、ここがマイヤール工房で、私がカオルです」

覺得麻煩的卡歐爾乾脆略過了應答的一段對話。

面倒なので、カオルは会話のやり取りを1回分省略した。

聽到卡歐爾的回應,那名男子從馬車上下來。

カオルの返答を聞くと、男は馬車から降りてきた。

那個五十多歲的男人肥胖,衣著看似奢華,但並非典型貴族打扮。

その50歳台くらいの男はでっぷりと太り、豪華そうな衣服を身につけていた。しかし、貴族らしい服装ではない。

「我是大神殿的司祭,多倫。主教有命,快跟我走!」

「大神殿の司祭、ドルンである。司教様がお呼びだ、来い!」

『果然是……』

(あ、やっぱり……)

奉薩拉贊主教之命來帶走卡歐爾的多倫司祭,與薩拉贊同一類人。當薩拉贊說『把御使者帶來』時,他心裡想的也差不多是同樣的事。自是薩拉贊派系一員,渴望分一杯羹。

サラザン司教に命じられてカオルを連れに来たドルン司祭もまた、サラザン司教の同類であった。サラザンから『御使い様を連れてこい』と言われた時点で、概ねサラザンと同じようなことを考えていた。当然、サラザンの派閥の者なので、お零れに与る気満々であった。

和薩拉贊一樣,他並不認為卡歐爾是真正的御使者,因此絲毫沒有敬意。再說,薩拉贊交代的是『連れてこい』而不是『お連れしろ』,字面就是叫他硬帶回來,難有商量。

サラザン同様、カオルが本物の御使い様だとは思っていないので、敬意の欠片もない。そもそも、サラザンからの命令が『お連れしろ』ではなく『連れてこい』であるから、何をか言わんや、である。

「我拒絕。」

「お断りします」

「欸……」

「え……」

卡歐爾的回應讓多倫一時間不知該如何是好。

カオルの返答に、ドルンは一瞬何を言われたのか分からなかった。

畢竟,平民頂撞司祭這種事超出他的想像。

なにしろ、司祭様の言葉に逆らう平民など、想定の範囲外であったので。

隨著卡歐爾的話被理解,多倫的臉漸漸漲紅。

しだいにカオルの言葉が理解されていくにつれ、顔が赤くなっていくドルン司祭。

「你、你在說什麼啊!這是主教的命令啊!那、那個……」

「な、なに、何を言っておるかぁっ! 司教様の御命令であるぞ! そ、それを……」

「可是我不是這個國家的人啊。自己的國家還罷了,宗派也不同的外國神殿的人我可沒義務服從吧。」

「え、だって私、この国の者じゃありませんから。自分の国のならともかく、宗派も違う他国の神殿の人の言うことに従う義理はないと思いますけど。

「而且,神職人員通常應該不會對人發號施令吧,對吧?」

それに、聖職者の人は、人に命令したりしないんじゃないですか、普通」

「你、你……」

「な、な……」

多倫被卡歐爾的話激怒,語塞。

カオルの言葉に激昂し、言葉を詰まらせるドルン。

不知發生何事,人群開始聚集。

何事かと、人々が集まり始める。

卡歐爾接著發動追擊言語。

そこに放たれる、カオルの追撃。

「強拉不願的女孩子進神殿深處到底想做什麼……『然後再沒有人見過那女孩的身影』或是『隔天在河岸發現被糟蹋的屍體』之類的橋段,真叫人受夠了。」

「嫌がる女の子を無理矢理神殿の奥に連れ込もうなんて、何をしようとしているのやら…。『そしてその後、その少女の姿を見た者は誰もいなかった』とか、『翌日、弄ばれた少女の変わり果てた死体が川岸に…』とか、勘弁して下さいよ」

「你、你這個……」

「き、きき、貴様……」

滿臉通紅的多倫終於擠出聲。

真っ赤になったドルンは、ようやくのことで声を絞り出した。

「你難道不怕神罰嗎!女神大人會憤怒的……」

「貴様、神罰が恐ろしくはないのかあぁっ! 女神様のお怒りが……」

「神罰?神罰是什麼意思……」

「神罰? 神罰って…」

卡歐爾甜甜一笑。

カオルはにっこりと微笑んだ。

「你說的是這種人嗎?」

「こういうヤツのことかな?」

轟然一聲!

どおぉ~ん!

馬車頂蓋伴隨爆裂聲被炸飛。

馬車の屋根が、爆発音と共に吹き飛んだ。

那是從上方落下、像是硝化甘油般的物質引發的爆炸。

上から屋根に落ちてきた、『ニトログリセリンのようなもの』の爆発によって。

「嗚、嗚哇!」

「ひ、ひぃっ!」

多倫癱坐在地。

へたり込むドルン。

馬車上的馬也癱倒,車夫逃走,兩名隨從在多倫身後呆立。

馬車馬も座り込み、御者は逃げ出した。供の者2名は、ドルンの後ろで呆然と立っている。

砰!砰!砰!

ポン! ポン! ポン!!

多倫周圍接連響起小型爆裂聲。

へたり込んだドルンの周りで立て続けに起こる小爆発。

「女神大人會生氣的是誰呢?神罰會降臨在誰的身上呢?」

「女神様がお怒りなのは、誰に対して、かな? 神罰が落ちるのは、誰に、かな?」

「嗚哇啊啊啊──!」

「ひいぃぃぃぃ~~っっ!!」

多倫拼命爬起,拔腿就逃。

必死で立ち上がり、一目散に逃げ出すドルン。

兩名隨從慌忙跟上。

供の者も、あわてて後を追う。

謠言迅速擴散開來。

そして、噂が急速に広まっていった。

『大神殿的司祭試圖綁架御使者,惹怒了女神』、『大神殿侮辱御使者,神罰降下』──。

『大神殿の司祭が御使い様を拉致しようとして女神様の怒りに触れた』、『大神殿が御使い様を侮辱して神罰が落ちた』と……。

「國王,大事不妙!神殿動手對御使者,現在看起來是神罰降臨!!」

「国王、大変です! 神殿が御使い様に手を出し、神罰が!!」

「什、什麼!!」

「な、何だとぉ!!」

卡歐爾的護衛,或者更確切說是盯梢者,急報傳到年輕國王塞爾日,讓他震驚不已。

カオルの護衛、というか、監視のために張り込ませていた者からの急報に、若き国王セルジュは驚愕した。

『神罰!數百年前曾有國家觸怒女神瑟蕾斯汀而滅國……糟、糟糕!!』

(神罰! 数百年前に、女神セレスティーヌの怒りに触れて、ある国が壊滅したという……、ま、まずい!!)

「哥、哥哥,我該怎麼辦!」

「に、兄さん、どうしよう!」

平時堅守王位職責的塞爾日,一旦陷入困境仍會不由自主依賴哥哥。

普段はしっかりと国王を務めているのだが、追い詰められた時にはつい兄に頼ってしまう癖が抜けない、国王セルジュであった。

「冷靜,塞爾日!總之得把御使者找出來保護起來!」

「落ち着け、セルジュ! とにかく、御使い様を確保し、保護しなきゃならん!

「聽著,據子爵和守門人所聞,御使者說得更精確的是『不會進入這王城,也不會聽從本國王族或貴族的大人物』。

いいか、御使い様が言っていたというのは、正確には『この王城にははいらないし、この国の王族の人や貴族の偉い人の言うことは聞きません』との事だったな、子爵や門番から聞いた限りでは。

換句話說,『在非王城之處,對於不那麼有地位的貴族的話是可以聽的』。而所謂『不聽從』,只是指不會任人擺佈,而非不能商談。」

だから、つまり、『王城ではない場所で、貴族の偉くない人の言うこと』ならば問題ない、ということだ。そして、『言うことは聞かない』というのは、言いなりにはならない、ということであって、話し合いが出来ない、という意味ではない!」

「真不愧是哥哥!立刻派個根本不那麼了不起的貴族去!」

「さすが兄さん! すぐ、全然偉くない貴族を派遣します!」

「啊、啊啊……」

「あ、あぁ……」

『塞爾日,說話也得稍微注意點。就算是國王……』

(少しは言い方に気を付けような、セルジュ。いくら国王とは言え……)

王兄羅蘭德的口角微微抽動。

王兄ロランドは、少し口元を引き攣らせた。

「……那麼,是要我去?」

「……で、私をお呼びになったと?」

「是的。想起與御使者有關且又完全不顯赫的貴族,想到的只有你,李奧塔爾子爵,非您莫屬。」

「そうだ。御使い様と縁があり、全然偉くない貴族と考えたら、リオタール子爵、貴公しか思い浮かばなくてな」

「唉……」

「はぁ………」

咦?那不是多倫司祭嗎?

おや? あれはドルン司祭では?

少見的事。向來不熱心奉職、只喜歡應酬貴族與大商人的多倫,竟然如此埋頭祈禱……

珍しい。あまりお勤めには熱心ではなく、貴族や大商人の相手ばかりしたがるあのドルン司祭が、ああも熱心に祈りを捧げ続けるとは……。

路過禮拜堂的索爾尼耶大主教看見多倫專注祈禱,點頭表示讚許。

たまたま礼拝堂に立ち寄ったソルニエ大司教は、真面目にお勤めに励むドルン司祭の姿を見て、うんうんと頷いた。

……但再看仔細,總覺得哪裡怪怪的。

…しかし、よく見ると、何だか様子がおかしい。

與其說是虔誠祈禱,不如說是被某種恐懼驅動、眼神發紅,氣氛顯然非同尋常。

敬虔な祈りを捧げている、というよりは、何か、鬼気迫るというか、恐怖に駆られているというか、眼が血走っているというか……。明らかに、尋常ではない雰囲気であった。

「多倫司祭,您怎麼了?」

「ドルン司祭、どうしました?」

大主教一現身,多倫便抓著他的膝蓋。

大司教の姿に気付くと、ドルン司祭はその膝に縋り付いた。

「大、大主教!我、我做了件可怕的事!!」

「だ、大司教様! わ、私は、とんでもない事を!!」

隨即述說了事情經過。

そして語られる、事の次第。

大主教聽罷大驚,面色蒼白。

驚愕し、蒼白になる大司教。

「必須立刻去迎接!快去叫佩里埃主教,立刻!」

「す、すぐにお迎えに行かねば! ペリエ司教を呼びなさい、大至急です!」

當時薩拉贊主教雖覺得多倫回來晚了些,但以為是那女孩為上神殿升堂梳妝花了時間,並未太在意。

その頃サラザン司教は、ドルン司祭の帰りが少し遅いな、とは思っていたものの、娘が神殿にあがるために身支度に時間をかけているのだろうと、あまり気にはしていなかった。