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19 使者

卡爾文。

カルヴィン。

過去,他是賽德里克的護衛、劍術鍛鍊夥伴,對長子賽德里克來說,既像兄長又像朋友的男人。

以前、セドリック付きの護衛であり、剣の鍛錬相手であり、長子であるセドリックにとっては兄のような、友人のような男であった。

直到有一天,賽德里克不顧阻止的家臣,執意去冒險狩獵,卡爾文為了保護被撲向的賽德里克擋下灰熊,結果重傷纔改變了一切。

ある日、セドリックが止める家臣を振り切って無茶な狩りを行い、襲いかかるグレイベアからセドリックを庇って大怪我をするまでは。

因為那次受傷,卡爾文的左腿無法順利活動,理所當然無法再擔任護衛,既不能做守衛,也無法勝任獵人。

怪我のため左脚がうまく動かせなくなったカルヴィンには、当然のことながら護衛の任は果たせず、警備の兵士も、ハンターすら務まらない。

一個唯有劍術本領的男人失去戰鬥能力,而且行動不便,可做的工作便少之又少。

剣しか能のない男が戦えなくなり、しかも足が不自由とあっては、できる仕事は少なかった。

雖然已不能以劍士身分工作,但誰也不會因為卡爾文的愚行而把他逐出門庭,子爵更不會因自己兒子為人擋下傷害就將卡爾文粗暴對待。

いくら剣士として働けなくなったとは言え、自分の愚かな行為のせいで将来を失ったカルヴィンを追い出すことなど出来るはずがない。子爵も勿論、息子の盾となって怪我をしたカルヴィンを無下に扱うつもりなどなかった。

於是決定繼續雇用卡爾文,讓他擔任一些即便行動不便也能勝任的家僕。

そしてカルヴィンを、多少足が不自由でも務まる使用人として雇い続けることにした。

卡爾文曾想過若無法為主家效力便引退,但他別無所長,且想到若盜賊入侵時,自己仍保有瞬間戰力,留在僕從中也許能抓住空隙反擊,或以身作盾、派上用場,於是決意以家僕身分留下來工作。

カルヴィンは、主家のお役に立てないならばと身を引くことも考えたが、他にできることもなく、また、賊が侵入した時などには、瞬間的な戦闘力は少しは残っている自分が使用人の中にいれば、隙を突いての反撃、この身をもって盾となる等、役に立てることもあるかも知れないと考えた。そして、使用人として働くことを決意したのであった。

對賽德里克而言,他成了自我厭惡與罪惡感的象徵。

セドリックにとり、自己嫌悪と罪悪感の象徴。

要把那人帶到這裡來。要把自己的愚蠢攤在眾人面前。

それを、この場に呼べと。己の愚かさを人々に見せろと。

賽德里克的臉扭曲起來。

セドリックの顔が歪む。

「要、去叫卡爾文,嗎……」

「カルヴィンを、呼べ、と、言うのか……」

「是的。拜託了」

「はい。お願いします」

那少女不知是察覺還是不察覺賽德里克的痛苦,仍直直凝視他的眼睛那麼說道。

セドリックの苦悩を知ってか知らずか、少女はじっとセドリックの眼を見つめてそう言った。

「…………」

「…………」

沈默。

沈黙。

會場陷入寂靜,沒有人發出聲音。

会場は静まり返り、声を発する者もいない。

連里歐塔爾子爵也沉默不語。

リオタール子爵さえ、黙り込んだままであった。

「卡爾文,過來!」

「カルヴィン、来い!」

終於,賽德里克發出了這個指示。

そして遂に発せられる、セドリックの指示。

一名一瘸一拐來到賽德里克身旁的僕從。

セドリックの近くに来た、左脚を引き摺るひとりの使用人。

「在場的各位!」

「会場のみなさん!」

於是,卡歐爾的聲音在宴會廳迴盪開來。

そしてカオルの声がパーティー会場に響いた。

「這位是卡爾文先生。為了守護賽德里克先生,擋在灰熊面前的人。」

「こちらが、カルヴィンさん。セドリックさんを守るため、グレイベアに立ち塞がった方です」

會場傳出一聲讚嘆的「哦」。

会場から、おお、と感嘆の声があがる。

沒有人不知曾以自身作盾守護王者的王兄羅蘭。能做到與之相當之事者,自然應當受到讚揚。

自らの身体を盾にして王を守った王兄、ロランドのことを知らない貴族などいない。それに匹敵することを成した者は、賞賛されて当然であった。

「不過,當時的傷讓他已無法再戰鬥。」

「しかし、その時の怪我のせいで戦うことは出来なくなりました」

賽德里克痛苦扭曲的臉。卡爾文毫不在意。

苦悶に歪むセドリックの顔。気にもしないカルヴィン。

卡歐爾從桌上取起一只未用過的酒杯。

そこでカオルは、テーブルから未使用のワイングラスを1つ手に取った。

「來吧,為了守護主家的子嗣而不惜犧牲自身的忠義之人,還有那位因感謝而留下他於子爵家的主人——你們當中認為這些人應有資格接受女神祝福的,請舉起右手!」

「さて、主の子息を守るため我が身を犠牲にすることを厭わなかった忠義の者。そしてその忠義に対し、感謝を忘れず子爵家に留め置いた主。この者達には女神の祝福が与えられる資格があるのではないかと思う人は、右手を挙げて下さい!」

所有人的手都舉了起來。

全員の手が挙げられる。

在這種場合沒有人會不看氣氛而不舉手,誰也不想事後被責難。

ここで空気を読まずに手を挙げない者はいないだろう。後で何を言われるか分からない。

「然後,把手臂往前伸,手掌朝向這只酒杯!」

「そして、その腕を前に突きだし、掌をこのグラスに向けて!」

卡歐爾伸出拿著酒杯的右手。

ワイングラスを持った右手を突き出すカオル。

「祈願吧。女神的祝福!」

「願って下さい。女神の祝福を!」

來賓們被現場氣氛帶動,照著指示行動。

場の雰囲気に飲まれ、言われた通りにする来客達。

就在那時,卡歐爾遞出的酒杯上方數公分處出現了紅色的霧氣。

そしてその時、カオルが差し出したワイングラスの数センチ上に現れる赤い霧。

驚訝的來賓注視著,霧逐漸凝成紅色水滴,成為水球,伴著「啪嚓」一聲落入酒杯中。

驚く客達が見つめる中、霧はしだいに赤い水滴となり、水球となり、ちゃぽん、という音と共にグラスの中へと落ちた。

在敬畏與驚愕讓會場無聲之時,只有卡歐爾的聲音回響著。

畏怖と驚きに声無き会場に、ただカオルの声だけが響く。

「來吧,卡爾文先生」

「さぁ、カルヴィンさん」

被遞上的酒杯。

差し出されるワイングラス。

動不了的卡爾文。

動けない、カルヴィン。

「啊……啊啊……」

「あ…、ああ……」

卡歐爾走向卡爾文,握住他的手讓他握住酒杯。

カオルはカルヴィンに歩み寄り、その手を取ってグラスを握らせた。

「喝下去!」

「飲んで!」

卡爾文顫抖著把杯子送到嘴邊,一飲而盡那紅色液體。

震える手でグラスを口に寄せ、赤い液体を飲み干すカルヴィン。

然後……。

そして……。

「動了……左腿,像以前一樣能好好彎曲了……」

「動く……。元のように、左脚がちゃんと曲がる………」

起初戰戰兢兢,然後漸漸大膽地彎曲伸展那條腿的卡爾文。

始めは恐る恐る、そしてしだいに思い切り足を曲げ伸ばしするカルヴィン。

最後他竟然跳了起來。

遂には飛び跳ねだした。

試了又試,滿足後他轉向賽德里克。

充分試して満足すると、セドリックの方を向いた。

「哈哈……動了。這樣,我就能再和賽德里克大人一起上山、到原野、練劍、又、又,可以再做你的護衛了……」

「はは……。動きます。これで、また、セドリック様と一緒に、山に、野原に、剣の鍛錬、ま、また、またお守り、でき………」

接下來只剩下啜泣聲,無法成語。

あとは嗚咽で声にならなかった。

賽德里克跑上前抱緊卡爾文,淚水沿著臉頰滑落。

駆け寄り、カルヴィンの身体を抱き締めるセドリック。頬に流れる涙。

「卡爾文,卡爾文,卡爾文──!!」

「カルヴィン、カルヴィン、カルヴィンっっ!!」

見著那感動的一幕,旁人也跟著落淚。

その感動の姿に、貰い泣きする人々。

對於那主從相守的畫面,以及能目睹女神奇蹟的幸運,會場響起感動的讚嘆聲,並不斷有讚頌女神仁慈的祈禱。

主従の姿に、そして女神の奇跡を目にすることができた幸運に、会場中から聞こえる感動の声。女神の慈悲を讃える祈りが続く。

人群轉頭望向這位帶來數十年罕見女神奇蹟的使者少女時,

そして、この、数十年振りに顕された女神の奇跡をもたらした御使いの少女は、と人々が目を向けると。

黑髮少女的身影已不見於任何地方。

黒髪の少女の姿は、既にどこにも無かった。

『真是,看到了了不起的東西……』

(いやぁ、凄いものを見た……)

在女兒被救時,藥效他已親眼見過,但即便如此,剛才的場景仍令他驚訝不已。

娘を助けて貰った時に、薬の効果はその目で見ている。しかし、それでも、今のには驚かされた。

還有,那些寶石——就算以自己作為商人的自負,也不知道能否立即湊齊。這究竟是何等之物啊……我到底在說些什麼。

それに、商人として少しは自負のある自分でもすぐには揃えられるかどうかという、あの宝石……。いったい何者、って、何を言ってるんだ、自分は。

『當然是女神的使者了……』

女神様の御使い様、に決まっているではないか……。

阿希爾小心翼翼地向門口移動,盡量不被人發覺。

アシルは、誰にも気付かれないよう、ゆっくりと扉の方へと移動していた。

如今卡歐爾不知何時已消失,他知道自己肯定會被一堆問題圍攻,而他根本沒有任何可回答的資訊。

カオルがいつの間にか姿を消した今、自分が質問攻めに遭わされるのは間違いない。そして、自分には答えられる情報が何もない。

『一定得逃!一定得逃!!』

逃げなきゃダメだ! 逃げなきゃダメだ!!

離門口還有一小段路。再一點點……。

扉まで、あと少し。あと少し……。

這時,卡歐爾已順利離開子爵宅邸,登上等待的馬車,朝阿比里商會前往。車伕也是商會的人,絕不會洩露情報。為防尾追,她繞遠路返回。

その頃、カオルは既に無事子爵邸から離脱、待機していた馬車に乗り、アビリ商会へと向かっていた。御者も商会の者であり、情報を漏らすことはない。尾行に備え、少し遠回りをして戻った。

原本有幾個孩子埋伏準備阻擋追蹤者,但並未有人尾隨,因此未發揮作用。

もし跡をつける者がいれば妨害すべく待機していた数名の子供達の姿があったが、追跡者の姿はなく、その出番は無かった。

在子爵家宴會場裡,沒有一人曾在數月前親眼見證王宮的那場奇蹟;若有人在場,必能立刻察覺相似之處。

子爵家のパーティー会場には、数ヶ月前に王宮にて起きた奇跡に立ち会った者はひとりも居なかった。もし居れば、すぐにその類似性に気付いたことであったろう。

然而,能在王宮侍見王者之人身分高貴,並非普通會出席子爵宴會的人;且那些人年事已高,不屬於會有未婚子女的年齡層。

しかし、王宮で王の謁見に立ち会う者は身分が高く、ただの子爵家のパーティーに出るような者達ではなかった。また、皆年配者であり、結婚前の子供がいるような年齢層でもなかった。

此外,曾受『女神之淚』恩惠的王兄羅蘭、騎士佛蘭塞特,乃至與女神交談的阿丹伯爵家等人,為避免貴族或神殿過度干涉,對此事進行了資訊管制,因此知曉那場『奇蹟』的人很少。

また、『女神の涙』の恩恵を受けた王兄ロランド、騎士フランセットを始め、女神と言葉を交わしたというアダン伯爵家の者達に対して貴族や神殿側から余計な干渉が行われないようにと情報統制が行われたため、その『奇跡』について知る者は少なかったのである。

但這次的事件要傳到王宮與神殿,以及所有貴族和平民耳裡,已只是時間問題。

だが、今回の件が王宮と神殿、そして全ての貴族や平民達に伝わるのは、もはや時間の問題であった。

阿希爾也成功從子爵宅邸逃離。在眾人忙著尋找卡歐爾之際,他巧妙地掩藏了去向。

アシルもまた、子爵邸から逃げ出すことに成功していた。皆の頭にカオルを探すことしかない間に、うまく行方を眩ませることが出来たのである。

若留在宅邸,肯定會被父親與兄長追問;甚至可能連賓客都會蜂擁而至……。

屋敷に留まると、父や兄たちに質問攻めにされるのは間違いない。それどころか、招待客達すら押しかけて来るかも……。

於是,只能往工房逃去。

ここは、工房に逃げるしかなかった。

因為步行回來沒有坐馬車,抵達工房時已經相當晚。沒有人起床,他悄悄進了研究室,換上工作服後在房間角落躺下。

馬車も使わず歩いて帰ったため、工房に着いたのはかなり遅い時間であった。他に起きている者もなく、そっと研究室にはいり、作業衣に着替えると部屋の片隅で横になった。

卡歐爾在眾人面前展現了不可思議的力量──她會不會就此消失,永遠不再回來?

不思議な力を大勢の前で見せてしまったカオルは、このまま姿を消してしまうのではないか。もう二度とここには戻って来ないのではないか。

都是因為自己強人所難……。

自分が無理なことを頼んだせいで……。

他沒有勇氣向仍是孩子的卡歐爾提出正式的訂婚。然而,曾想過即便只有一天,若以未婚夫的身分行事並向父親介紹,日後或許能成真;只是被卡歐爾回絕,理由是『不想留下被解除婚約的前科』……。

まだ子供であるカオルに、正式に婚約を申し込む勇気はなかった。しかし、一日だけとは言え婚約者として振る舞い、父にもそう紹介しておけば、そのうち本当に、という下心が無かったわけではない。もっとも、それはカオルに『婚約破棄の前科が付くのはイヤ』と断られてしまったが……。

即便如此,他仍想在宴會上讓父親見見卡歐爾,事後說一句『是個有意結婚的人』,父親應不會反對;他相信父親若與卡歐爾聊上幾句,定能看出她不只是外表,還有真正的美好。

それでも、パーティーで父にカオルを会わせて、あとで『将来を考えている人だ』と言えば、反対はされないだろうと思っていた。父ならば、カオルと少し話せば、見た目だけでなく、カオルの本当の素晴らしさを分かってくれるはずだと思っていたのである。

可偏偏卡歐爾排在哥哥的『求婚儀式』隊伍中,並在眾人面前展示了作為女神使者的力量。

なのに、カオルは兄への『交際申し込みの儀』に並んでしまった。そして、女神様の御使いとしての力を大勢の前で見せてしまった。

聰明的卡歐爾不可能不知道這會帶來什麼後果,事實上她到現在還能保密就是證明……。

あの頭の良いカオルに、それが何を招くことになるかが分からないはずはないのに。事実、今まで隠し通していたのだから……。

『是因為從我這裡聽到卡爾文的事而同情嗎?』

私からカルヴィンのことを聞いて、同情したからか?

『還是因為喜歡哥哥?』

兄のことが気に入ったからか?

卡歐爾會不會已經不會再回來了。

もう、カオルはここへは戻らないのではないか。

會不會就這樣消失了。

このままいなくなってしまうのではないか。

阿希爾的心被懊悔染成一片黑,難以入眠。

アシルの心は後悔に黒く塗り潰され、なかなか眠りにつくことは出来なかった。

卡歐爾的物品箱裡有一瓶玻璃藥瓶。

カオルのアイテムボックスの中には、1本のガラス瓶がはいっていた。

『原本黏在瓶蓋上的髮飾型珠寶』與『繞在瓶身上的項鍊型飾品』都被取下,變成只剩廉價瓶子的一瓶……。

『ふたの部分についていた、髪飾り型の宝飾品』も、『瓶本体に巻き付くように付いていた、首飾り型の宝飾品』も取り外されて、ただの安物の瓶に過ぎなくなった、1本の瓶が……。

『那藥品,就會像當時想的那樣,裝在預想的容器中出現』

『その薬品は、その時に考えた通りの容器にはいって出てくる』