戦国小町苦労譚
1578年 五月中旬
由信忠指揮的征伐北條行動正順利推進。憑藉堅實的兵站支援,採取絕不冒進的慎重攻略,雖然緩慢,卻穩紮穩打地將北條氏逼入困境。
信忠が指揮を執る北条征伐は順調に推移していた。盤石な兵站を背景に、決して無理をしない慎重な攻略を続けることにより、ゆっくりではあるが着実に北条氏を追い詰めつつあった。
尤其是破壞北條方各支城間聯繫的工作,成果超乎預期。若相鄰三處支城存在,就以壓倒性的攻勢瞬間制壓中央支城,使各支城彼此孤立。
ことに北条側の支城間の連係を破壊する工作は予想以上の成果を上げる。隣り合う三か所の支城があれば、圧倒的攻撃力で中央の支城を瞬く間に制圧してしまい、各支城が孤立するように仕向けたのだ。
成為彼此無法互相庇護距離的支城城主,只能像烏龜縮起頭般一味地鞏固防守。
互いに庇(かば)い合えない距離となった支城の城主は、亀のように首を竦(すく)めて守りを固くすることに終始する。
如此一來,連城外情報都難以取得,縱使派出斥候,也會被埋伏的織田軍捕獲,無一人得以回歸。
こうなってしまえば城外の情報を得ることすら容易では無くなり、斥候を放とうにも待ち伏せしている織田軍によって捕らえられてしまい、誰一人として戻ってこない有様となった。
面對一刻刻減少的兵糧備蓄,支城城主們開始焦躁並被迫做出決斷。他們可選擇二:信賴援軍來臨繼續守城,或趁條件尚佳時投降。
刻一刻と減っていく兵糧の備蓄を前に、支城の城主たちは焦り始め決断を迫られることとなる。彼らが取りうる選択肢は二つ、援軍が来ることを信じて籠城を続けるか、条件の良い間に降伏するかだ。
深知戰局遲遲不見好轉的城主們最終選擇了後者。
そして一向に好転しない戦況を鑑(かんが)みた城主たちは後者を選択することとなった。
「若様,幾乎所有奉命守備的支城已經陥落了」
「若様、ご下命のあったほぼ全ての支城が陥落しました」
「幾乎所有? 報告時應該用具體數字來陳述,我不是這樣交代過嗎」
「ほぼ全て? 報告に当たっては具体的な数値で表現するよう申し渡したはずだ」
信忠對傳令兵含糊的說法提出指正。被指正的傳令兵整頓儀容後做了精準報告。聽畢所有內容的信忠點了點頭,慰勞了傳令兵後讓他退下。
伝令兵の曖昧(あいまい)な物言いに信忠が注意する。指摘を受けた伝令兵は襟を正して正確な報告を述べた。全てを聞き終えた信忠は一つ頷くと伝令兵を労って下がらせる。
由於採取切斷各支城聯繫的策略,序盤最有可能遭受夾擊;隨著攻略推進,各支城距離拉開,攻城也變得容易。
各支城の連係を切る戦略をとっている関係上、緒戦が最も挟撃を受ける可能性が高く、攻略が進むにつれ各支城間の距離が離れるため攻城が楽になる。
自房總半島開始侵攻後,織田軍已將關東平原各地散佈的城郭納入掌握;在織田軍已掌握約三十座城中,實際控制的竟超過七成,達到二十三座。
房総半島より侵攻を開始した関係から関東平野全域に点在する城々を手中に収め、現時点で織田軍が把握している約30にも及ぶ城の内、実に七割を超える23までをも支配下においていた。
剩餘三成中,仍具支城功能的多為小田原城以西的沼津城、山中城等,其他城則被分割,無法進行積極攻勢。
残り三割についても、支城として機能し得るのは沼津(ぬまづ)城、山中城といった小田原城以西の物が中心となり、他は分断されたまま積極的な攻勢など望めない状態となっている。
北條如今的處境可謂如砧板上的鯉,信忠細細體會到靜子與信長常說的「於戰前先取勝」一語之意。
もはや北条は俎板(まないた)の鯉と言っても差し支えない状況となり、信忠は静子や信長が常々口にしている『戦う前に勝つ』という言葉の意味を噛み締めることとなった。
回顧對武田之戰,不禁深感自己當時準備不足。同樣重要且無庸置疑的,則是能製造充裕準備時間的兵站與諜報工作。
今になって対武田戦を振り返れば、いかに自分が準備不足であったかを痛感してしまう。また入念に準備をするだけの余裕を生み出している兵站及び諜報の重要性は言うまでもない。
「若早在令人蒙羞之前有人警告我……雖然不禁如此想,但當時的我真的會採納嗎」
「生き恥を晒す前に忠告してくれれば……と思わないでもないが、当時の俺は果たして聞き入れただろうか」
信忠帶著悔恨喃喃自語,但很快擺脫沉湎於過去的念頭,並在招集的諸將面前宣告。
信忠は悔恨を込めて独り言(ご)ちるが、今は過去に囚われるべきではないと頭を振って雑念を払う。そして信忠は招集した諸将を前に宣言する。
「北條已是垂死之狀。諸君,久候了,時機終於成熟!」
「北条はもはや虫の息よ。皆の者待たせたな、ついに時は満ちた!」
信忠的話使諸將沸騰。第二次東國征伐規模龐大且旷日持久,諸將早已焦躁難耐。
信忠の言葉に諸将たちは沸き立った。第二次東国征伐は異例の大規模遠征に加えて、長期に及んでいるため諸将たちは焦れていたのだ。
「即便事至如今,北條那些人仍自以為能勝我等。既然如此,就直搗其傲慢,向天下示我等霸業!出發,進小田原!」
「北条どもはことがここに及んでも、未だ我らに勝利できると思いあがっておる。ならばその増上慢(ぞうじょうまん)を真っ向から叩き伏せ、天下に我らの覇業を示そうではないか! いざ小田原へ!」
信忠一聲令下,諸將振奮。對北條氏而言,小田原城是繁榮的象徵,只要小田原城存在,他們的士氣便不會崩潰。
信忠の号令一下、諸将たちが気炎を上げる。北条氏にとって小田原城は繁栄の象徴であり、小田原城が健在である限り彼らの心が折れることは無い。
此外小田原城有稱為總構え的構造,以外郭將小田原城與其城下町整體包圍守護。
また小田原城は総構(そうがま)えと呼ばれる構造を持っており、小田原城とその城下町を丸ごと囲い込む外郭(がいかく)で守っている。
換言之那是一座將補給線完全納入城內的要塞都市,因此兵糧攻城等手段難以奏效。
つまりは補給線を丸ごと内部に抱え込んでいる要塞都市であるため、兵糧攻め等が通用しない。
史實上,秀吉進行小田原征伐時,小田原以九公里總長的大規模堀與土塁被要塞化。
史実に於いて、秀吉が小田原征伐を行った折には、総距離9キロメートルにも及ぶ大規模な堀と土塁によって要塞化されていたと言う。
正因為是這樣的小田原城,信忠才一直細緻準備。為了將小田原城與外界徹底切斷並完全包圍,他不惜壓抑急躁的諸將,一一殲滅周邊的支城。
そんな小田原城だからこそ信忠は入念に準備を続けてきていた。焦れる諸将を抑えてまで、徹底的に周囲の支城を潰して回ったのは小田原城を外界から切り離し、完全に包囲するためであった。
對於被切斷外部聯繫的小田原城,信忠在外郭的各個虎口配置己軍將兵把守出入口。
こうして外と連携できなくなった小田原城に対し、信忠は外郭に存在する出入口である各虎口(こぐち)に自軍の将兵を布陣させた。
從位於小田原城幾乎正南的早川口開始,順時針環繞至正東的山王口,由織田軍或同盟軍圍住。空出的東南方因面向海上,則由九鬼水軍與長宗我部水軍負責。
小田原城のほぼ真南に位置する早川口から時計周りにぐるりと真東の山王口までを織田軍または同盟軍で取り囲む。空いている南東方面は海に面しているため、九鬼水軍及び長宗我部の水軍が受け持つことになる。
從早川口至水之尾口的西面由信忠主力駐守;北方有荻窪口與久野口由柴田軍駐守;東方有井細田口與渋取口則由上杉軍與德川軍駐紮,成此佈局。
早川口から水之尾口に至るまでの西方面には総大将となる信忠本軍を置き、荻窪口から久野口が存在する北方には柴田軍が、井細田口や渋取口がある東方は上杉軍及び徳川軍が陣取る構図だ。
起初德川家並無出陣計劃,但見機行事的家康率軍趕來參陣,因而獲准加入兵力。
当初、徳川家の出陣予定は無かったのだが、機を見るに敏な家康は軍を率いて駆け付けたため参陣を許された経緯がある。
到了五月中旬前後,這一小田原城包圍網終於完成。北條氏從未經歷過陸海皆被完全封鎖的局面,北條軍整體產生動搖。
五月も中旬に差し掛かろうかという頃に、この小田原城包囲網が完成した。北条氏としても陸海ともに完全封鎖されることなど未経験であるため、北条軍全体に動揺が走る。
信忠在北條軍還未從動搖中恢復前就已展開下一步行動。包圍完成的當日晚間,信忠派出傳令,翌晨竟發生令人驚愕的事。
信忠は北条軍が動揺から立ち直る前に次なる手を打っていた。小田原城の包囲が完成した日の夕刻に、信忠が何処かへ伝令を放つと、翌朝には驚くべきことが起こる。
在信忠本軍駐紮的西面更西側,俯瞰小田原城的笠懸山頂,忽然出現了一座嶄新的城。
信忠本軍が布陣している西方面の更に西、小田原城を見下ろすように聳(そび)える笠懸(かさかけ)山頂に突如として真新しい城が出現した。
從北條一方看去,彷彿一夜之間城池突兀出現般。製造那場噩夢般景象的手段,與史實中秀吉所採用的策略相同。
北条側からすれば、まるで一夜にして城が出現したように見えたことだろう。その悪夢のような光景を生み出したのは、史実に於いて秀吉が実行したものと同じ策であった。
事先命人在笠懸山築城,並以仿若山林景觀的臨時圍蔽遮掩建築的施工樣貌不被發現。
事前に笠懸山に築城を命じておき、その建築中の様子が見えないよう山林の様子に合わせた仮囲いで隠蔽していたのだ。
接獲信忠的通知後,於晚間至夜間一口氣伐除遮擋笠懸山東側視線的樹木,遂突然揭露其雄偉風貌。
そして信忠からの連絡を受けて、夕刻から夜間に掛けて笠懸山の東側からの視線を遮っていた木々を一斉に伐採したことにより、突如としてその威容を晒すことになる。
「北條那群膽小鬼,恐怕嚇破膽了吧」
「北条の腰抜けどもは、さぞ胆を潰したことであろう」
令北條震撼的此城被稱為笠懸山城。史實上其所處位置大致與後世江戶時代已被拆除、僅存石垣的石垣山城相同。
北条を震撼させた城を笠懸山城と呼ぶ。史実では江戸時代に入り、既に取り壊された後の石垣ばかりが残る有様をして石垣山城と呼ばれたものと凡(およ)そ同じ位置に築城されていた。
笠懸山城乍看如同普通的山城,但無論建材或建築樣式皆有異於常規之處。
笠懸山城は一見すると極普通の山城に見えるが、実は建材から建築様式に至るまでが異例尽くしの城である。
其基礎建材使用鋼筋混凝土,城體中腹仿佛長出航空母艦的飛行甲板般,呈現奇特構造。
基礎建材として鉄筋コンクリートを使用し、和城の中腹辺りから航空母艦の飛行甲板が生えているような奇妙な構造を取っていた。
從小田原城的角度看,大概仍然像座普通的和式城郭。但雖無飛行器存在,那如跑道般的長大平面上排滿了砲列,呈現宛若戰艦的模樣。
小田原城からは角度的に普通の和城に見えていることだろう。航空機など存在しないというのに滑走路のような長大な平面にはずらりと砲が並んでおり、まるで戦艦のような様相を呈している。
「就讓他們無法再躲在小田原城裡了!」
「これで小田原城に籠れないようにしてやろう!」
北條方面對於高座的彌勒所開發的新型火繩槍寄予厚望。雖然新火繩槍的性能遠不及織田軍的新式火槍,但在肉眼可見的射程內,其命中精度與威力不可小覷。
北条としては高座の弥勒(みろく)が開発した新火縄銃に希望を見出している。新火縄銃の性能は織田軍の新式銃に大きく劣るとはいえ、目視できる距離での命中精度と威力は侮れない。
若從小田原城堅固的防禦設施處遭以新火繩槍攻擊,與傳統的攻城戰相比,預計我軍將承受重大損失。
小田原城の堅牢な防衛施設から新火縄銃で攻撃されれば、従来の城攻めと比べて自軍側に大きな損害が出ることが予想された。
對此,信忠選擇以射程更遠的武器預先摧毀防禦設施;而這一計畫的集大成便是笠懸山城。
これに対して信忠は、より長射程を持つ武器で予(あらかじ)め防衛設備を破壊することを選択する。その集大成が笠懸山城であった。
「那麼,看見這座城的北條那些人會如何行動呢……」
「さて、この城を見た北条どもはどう動くか……」
信忠把本陣移至笠懸山城,一邊用配備的巨大高倍率望遠鏡觀察小田原城的情況一邊喃喃自語。
信忠は本陣を笠懸山城へ移し、備え付けの巨大かつ高倍率望遠鏡で小田原城の様子を観察しながら呟いた。
然而事到如今發生了違背信忠預想的事態,接到報告的信忠不由得抱頭苦惱。
しかし、ここに来て信忠の予想を裏切る事態が発生する。報告を受けた信忠は思わず頭を抱え込んでしまった。
「沒想到友軍的士氣竟然下降到這種地步……」
「友軍の士気がここまで下がってしまうとは……」
信忠像擠出聲音般呻吟。終於完全包圍了北條的牙城,原本滿懷要迎來最後決戰的幹勁。
絞り出すように信忠が唸る。遂に北条の牙城を完全包囲し、ようやく最終決戦だと意気込んだまでは良かったのだ。
然而小田原城包圍剛完成不久,信忠便接獲報告,指出不只敵方,連我方士氣也在低迷。
しかし小田原城包囲が完成して間もなく、信忠は敵だけでなく味方までも士気が低迷しているとの報告を受ける。
織田軍的士氣仍維持在高水準,上述情勢對我有利,卻不明白友軍士氣下降的理由。
織田軍の士気は依然として高い水準を維持しているだけに、有利な状況にあるにもかかわらず友軍の士気が低下する理由が判らなかった。
信忠急命展開內偵,不久便得知友軍士氣下降的原因。
信忠は急ぎ内偵を進めるように命じ、程なくして彼は友軍の士気が下がった理由を知る。
「因為我們早已把兵農分離視為理所當然,反而忘了別處仍是半農半兵的狀況」
「自軍の兵農分離が当たり前になったことで、他所(よそ)が半農半兵であることを失念しておったわ」
糧食生產能力高、經濟亦較寬裕的織田軍,其大多數為職業軍人。相對而言,友軍如德川、上杉、長宗我部等在平時是動員為農民的領民。
食料生産能力が高く、経済にも余裕がある織田軍は、その大半が職業軍人で構成されている。これに対して友軍である徳川や上杉、長宗我部にしても平時は農民である領民を動員しているのだ。
因此若遠征期延長至農忙季節,眾人難免將心思轉回本業農務。
それゆえに遠征が長期間に及び、農繁期を迎えてしまえば本業である農業に意識が向いてしまうのは避けられない。
相較之下北條一方處於被攻擊、被包圍且無後路的境地,因為拼命一搏的心態而相當程度維持士氣。
これに対して北条側は、攻め込まれている立場であり、包囲を受けて後がない状況であるため命懸けの必死さからそれなりに士気が維持されていた。
友軍如德川與上杉等也都了解情勢並試圖鼓舞以提升戰意,但情況未見改善。即便從小田原城西側發動猛攻,若東側士氣低落導致包圍被突破而使敵人逃脫,將本末倒置。
友軍である徳川及び上杉なども状況は把握しており、戦意高揚をするべく鼓舞しているのだが状況は改善しないでいる。小田原城の西側から猛攻を掛けたとして、士気の低い東側の包囲を破って逃亡されては本末転倒となる。
信忠與首腦們為此苦思,但軍議空轉、始終無良策。將帥信忠懷著內心的愧疚與不安,向靜子提出商議。
どうしたものかと信忠及び首脳陣は思案したのだが、軍議は空転するばかりで名案はついぞ出ることが無かった。大将である信忠は、内心忸怩(じくじ)たるものを抱えながら静子に相談を持ち掛ける。
「有個方案,但那還在試作階段,無法保證性能喔?」
「案はあるけれど、試作段階の物だから性能を保証できないよ?」
「沒問題。現狀無論怎麼做都僵局,如果有可能打開局面,就拼一把。」
「問題ない。現状では何をやっても手詰まりなんだ。打開出来る可能性があるならば、それに賭ける」
「知道了。那我就只送現有的東西過去。」
「判ったよ。それじゃあ、現状であるだけを送らせるから」
「雖然各種東西應該都會準備好,拜託你了。」
「色々とあるだろうがよろしく頼むよ」
交談到此為止,信忠便結束了與靜子的通信。
それを最後に信忠は静子との通信を切った。
接到信忠請求的靜子隨即下令準備。儘管尚未充分評估性能,但那是在戰國時代難以想像的兵器,對比石山本願寺的夜襲更可能帶來更大的衝擊,這並不難想像。
信忠の依頼を受けた静子は、早速手配を命じた。充分な性能評価が出来ていないとはいえ、戦国時代ではあり得ない兵器であり、石山本願寺での夜襲よりも大きなインパクトを与えるであろうことは想像に難くない。
靜子還指示一併準備大量糧食與酒,甚至安排女人。不論戰勢多麼有利,畢竟是遠征,須承受節制之苦。
更に静子は一緒に大量の食料と酒、更には女をも手配するよう指示を出す。どれだけ戦況が優位であろうとも、遠征である以上は節制を強いられる。
織田軍的伙食雖有所改善,但友軍仍在忍受粗食從軍。美食、美酒,以及在男性主導的軍中,女人可以成為良方。
織田軍に関しては食事の内容も改善されてはいるが、友軍たちは粗食に耐えて従軍しているのだ。ご馳走や酒、さらには男だらけの世界である軍に於いて、女は特効薬足りうる。
這畢竟只是權宜之計,但若在眼前掛出誘餌,激勵人心是人之常情。
所詮は一時しのぎに過ぎないが、鼻先に人参をぶら下げられれば奮起するのが人の常であろう。
「稍微手下留情點吧」
「少しは手加減してやれよ」
「我已經有手下留情了。要是根本不打算憐惜,就早把小田原城夷為平地了。」
「手加減はしているよ。する気がないなら、最初から小田原城を更地にしているし」
長可搭話時對靜子的回答苦笑。靜子在與長可交談的同時,仍接連處理文件;一疊疊像小山般的文件被丟進批示完畢的箱子,長可呆然注視著。
話しかけた長可が、静子の返答に苦笑する。静子は長可と言葉を交わしつつも、書類を次々と片付けていった。小山を為していた書類が、次々と決裁済みの箱へと放り込まれていくのを長可は呆然と見守っていた。
「還是工作速度很快啊。原以為休了那麼久會有點遲鈍,沒想到復職馬上就是這樣。」
「相変わらず仕事が早いな。長く休んでいたから休み呆(ぼ)けがあるかと思ったが、復帰した途端にこれか」
「因為已決定在秋天舉辦御馬揃。連上様也沒餘裕讓我閒著了。」
「秋に御馬揃(おうまぞろ)えの開催が決定したからね。流石の上様も、私を遊ばせておく余裕がなくなったみたい」
所謂御馬揃,是史實上天正九年(千五百八十一年)信長在京舉行的觀兵式。
御馬揃えとは、史実に於いて天正九年(千五百八十一年)に信長が京で行った観兵式(かんぺいしき)である。
有說法稱此活動是為迫使正親町天皇讓位而舉,但近年因為舉辦地點為內裏東側的所謂陣中──沒有牛車宣旨(即未獲允許乘牛車通過宮門)的人無論身分皆禁止入內──而使用該地朝廷並未表示異議,故此說法近年逐漸被否定。
一説には正親町(おおぎまち)天皇に譲位を迫るため行われたとも言われているが、開催場所が牛車(ぎっしゃ)宣旨(せんじ)(牛車に乗車したまま宮門を通過出来る許可)のない者は如何なる身分の者でも乗り入れが禁じられていた陣中と呼ばれる内裏の東側であること、この場所を使用しても朝廷が問題視しなかった事から近年では否定されつつある。
此外雖以軍事遊行之名,看似織田軍的活動,實際上精通馬術的公家如近衛前久、正親町季秀、日野輝資等也參與其中。
また軍事パレードということで織田軍だけのイベントと思うだろうが、馬術に通じた近衛前久(さきひさ)や正親町季秀(すえひで)、日野(ひの)輝資(てるすけ)などの公家も参加していた。
尤其近衛前久事前準備周到,開幕兩週前仍在尋找良馬。相傳他辛苦獲得良馬,因不明原因不喜歡,隔日便把馬送回的逸聞仍留存。
特に近衛前久は入念に準備を進め、開催二週間前にも良馬を求めている。なお苦心して入手した良馬だが、理由は不明ながら馬を気に入らなかった前久が、翌日送り返したという逸話が残っている。
此外原本應能參加的秀吉,因中國征伐的時機無法調整而不得不含淚缺席。他為無法帶領配下武將同赴而深感懊悔,甚至寫信託長谷川秀一詳細描述當日內容與氛圍。
他にも本来は参加できたはずの秀吉は中国攻めの折り合いで、泣く泣く不参加となってしまった。配下武将を引き連れて参加が出来なかったことを大変悔しく思い、当日行われた内容や雰囲気を知りたいと長谷川(はせがわ)秀一(ひでかず)に書状で頼んだ程である。
可見御馬揃是如此重要的盛事,能參與是極大的榮譽。
それほど御馬揃えとは重要なイベントであり、参加出来ることは大変な名誉であった。
「我知道參加是榮譽啦……」
「名誉なのは分かるんだけどねえ……」
靜子一邊喃喃自語,一邊嘆氣。對於御馬揃本身並無怨言,反而為能參與那些未被記錄下來的活動感到高興。
呟きながら静子はため息を吐く。御馬揃え自体には文句などあろうはずがなく、むしろ記録が残っていない催しに関与できることを嬉しく思う。
若問何為問題所在,答案就在於靜子軍要以什麼順序參與。
では何が問題なのかと問われれば、答えは静子軍がどの順番で参加するかにあった。
信長認為最熱鬧的中央附近較為妥當,而包括前久在內的朝廷一方為了表現親善,主張應該在公家衆人面前。
信長は最も盛り上がるであろう真ん中付近が妥当と言い、前久含む朝廷側は懇意であることを示すべく公家衆の前が妥当だと主張する。
織田家中對於要安排在繼承人信忠之後感到不妥,為此激烈紛爭,意見始終無法達成一致。
織田家の家中としては後継者である信忠よりも後ろというのは流石に如何なものかと紛糾し、一向に意見が折り合う様子を見せない。
若鬧到那種地步,靜子建議乾脆排在最前面,當然遭到眾人無視。
そこまで揉めるのであれば、いっそ先頭に配置してはどうかという静子の案は、当然ながら全員から無視されることとなる。
因為各方面都在爭取位置,靜子察覺信長是想在某種權謀上利用靜子軍的順序。
このように各方面から引き合いがあることから、静子は信長が何かしらの駆け引きに静子軍の順番を用いたいのだと察した。
之後靜子的行動迅速且精彩,眨眼間就把交涉談妥,還從信長那裡討到褒美(・・)。
それからの静子の行動は素早く、見事の一言に尽きた。瞬く間に交渉を纏めると、信長から褒美(・・)をせしめてきたのだ。
「說起來,妳難得跟上樣交涉,那時要求的是什麼?」
「そう言えば珍しく上様に交渉をしていたが、アレは何を要求していたんだ?」
「呼呼呼。我被拿來當作政爭的工具,當然要要求相應的正當回報。」
「ふっふっふ。私を政争の道具にしたんだから、その正当な見返りを要求したんだよ」
「喔!真罕見。我本以為妳不會在意那種事。」
「ほう! 珍しいな。お前ならそんなことに頓着しないと思っていたんだが」
長可對靜子所言歪頭疑惑。基本上靜子若能幫助信長,即使被當作政爭工具也不在意,也不會要求報酬。
長可は静子の言葉に首を傾げる。基本的に静子は信長の役に立つのであれば、政争の道具にされようが気にもしないし、報酬など要求しない。
一向無欲的靜子竟然親自交涉要求褒美,實屬異常。
根本的に無欲な静子が、交渉までして褒美を求めたことが異常であった。
「那麼,拿到什麼了?土地、金錢,還是某種權利?」
「それで、何を貰ったんだ? 土地か、金か、それとも何かの権利か?」
「就是這個、就是這個!」
「コレだよ、これ!」
對於長可的問題,靜子聲音雖然變得相當低沉,但仍一邊拍著堆得高高的文件一邊回答。
長可の質問に対して、静子は随分と低くはなったが、それでも堆(うずたか)く積まれている書類を叩きながら答えた。
長可起初皺眉不解靜子在說什麼,但漸漸察覺到靜子所求褒美的真相後,驚愕不已。
長可は静子が何を言っているのか判らず眉を顰(ひそ)めるが、やがて静子が求めた褒美の正体に気付いて驚愕する。
「妳不會是……把那種東西當成褒美吧?」
「お前まさか……そんなもんを褒美っていうのか?」
「真是正好碰上好機會。御馬揃え需要各種準備啊。」
「いやあ、渡りに船だったよ。御馬揃えって色々な下準備が必要なんだね」
靜子的回答讓長可明白自己的猜想沒錯:靜子從信長那裡爭取到作為褒美,御馬揃え的(・・・・・)幕後工作(・・・・)。
静子の返答で長可は自分の考えが間違いではないと悟った。静子は信長から褒美として、御馬揃えの(・・・・・)裏方仕事(・・・・)を勝ち取ってきたのだ。
當然信長也抓頭苦惱不已。然而靜子展現出平日難以想像的兇猛氣勢與堅韌強硬的交涉,最終不得不讓步。
無論、信長が頭を抱えたのは言うまでもない。しかし、普段の静子から想像もできない鬼気迫る様子と、粘り強く強気な交渉についぞ折れざるを得なかった。
(呼呼呼。能親自參與那些未留在史書上的事並留下紀錄,真是太棒了!連微小之事也絕不放過!)
(ふふふ。歴史に残らなかった事柄に直接携わり、記録を残せるなんて最高! 些細な事すら見逃す気はないよ!)
歷史上著名的信長御馬揃え,其詳細記錄幾乎未曾保存。信長公記記載了概要,但對靜子而言那遠遠不夠。
歴史的には有名な信長の御馬揃えだが、その詳細な記録は殆ど残されていない。信長(しんちょう)公記には概要が記されているが、静子にとってはそれでは物足りない。
(記錄經過取捨選擇,許多事情若不親身參與便無從得知。任何微小的事物背後,應有無數無名者的盡力支撐。正因如此,我無論如何都要參與御馬揃え!)
(記録は取捨選択されているから、その場に携わらなければ判らないことが多い。どんな些細な物事も、その裏には無数の名もなき人たちの尽力で成り立っているはず。だからこそ、御馬揃えには何が何でも関わるわ!)
「把工作都帶回來然後還說要給褒美的,大概就只有妳了。到底在想些什麼啊……」
「褒美を寄越せと言って仕事を持ち帰ってくる奴は、お前ぐらいだろうよ。本当に何を考えているのやら……」
「土地、金錢、權力已經足夠了,不想再多要,也不覺得自己能駕馭更多。不是有句話說『過猶不及』嗎?不抱不相稱的野心,知足才是幸福。」
「土地やお金や権力は既に充分持っているからね。これ以上を欲しいとは思わないし、私が扱い切れるとも思えない。『過ぎたるは猶(なお)及ばざるが如し』って言うでしょ? 分不相応な野望は持たず、足ることを知るのが幸せだよね」
「雖然這麼說,但工作……不,根本沒有工作。」
「だからって仕事……いや、仕事はない」
「我不會叫你理解。這對我來說兼具興趣與實利,其他人恐怕無法因此滿足。」
「理解しろとは言わないよ。私はこれが趣味と実益を兼ねているから良いのであって、他の人だとまず満足しないでしょうね」
「放心吧,完全無法理解。只能說這就是靜子而已。」
「安心しろ、一切合切理解できん。これが静子なんだな、としか思わない」
長可的回答是不理解但也不否定。靜子對他的態度露出笑容,繼續說道。
理解できないが否定もしない、が長可の答えだった。長可の態度に静子は笑みを浮かべながら言葉を続ける。
「順帶一提,從岐阜某個關所傳來報告,說有人沒下馬就強行通過關所……你知道是誰嗎?」
「ところで岐阜のとある関所から、下馬をせずに関所を強引に突破した人がいるとの報告が私に届いたんだけど……何か知らないかな?」
那一瞬間,長可露骨地把臉轉開。靜子雖然沒有出聲,仍以濃烈的視線盯著長可,但他沒有把轉開的臉轉回來。
その瞬間、長可は静子から露骨に顔を逸らした。静子は言葉を発さずじっとりとした視線を長可に送り続けるが、彼が逸らした顔を戻すことは無かった。
沉默片刻後,靜子重重嘆了口氣。
しばし沈黙した後、静子は重いため息を吐く。
「本該下馬的上樣,不知為何竟然許可了,也就算了吧。」
「まあ下馬を命じたはずの上様が、何故かお許しになったから良いけどね」
「那就不用擔心了吧。那個不端的人應該也有好好反省,靜子應該專心準備御馬揃え!嗯嗯。」
「じゃあ気にする必要は無いんだろう。その不届き者も充分反省しているだろうし、静子は御馬揃えに集中するべきだな! うんうん」
雖然等同於在自白,但靜子以帶點溫熱的眼神看著長可,聽而不聞。
もはや自白しているも同然なのだが、静子は生暖かい目で長可をみつつ聞き流す。
最近在岐阜的關所發生馬匹暴走事故。事故後,岐阜境內的關所以確保安全為名,發布通告要求任何人下馬通行。
このところ、岐阜にある関所で馬が暴走する事故が発生した。事故の後、岐阜内の関所には安全確保を名目に、如何なる者も下馬して通るよう布告が出される。
當然,如果僅靠那樣就能讓所有人遵守規則,那就沒人會困擾了。很多人仗著身分拒絕下馬。
勿論、それだけで全員が規則を守るならば誰も苦労しない。身分をかさに着て下馬を拒否する者は沢山いた。
對那些人曾被允許以武力壓制,但即便如此,也有幾位人物是他們不敢動手的。其中一人就是眼前的長可,這不用多說。
そういった者に対しては武力制圧を許可されていたのだが、そんな彼らですら手を出せない人物が何人かいる。その内の一人が、目の前にいる長可なのは言うまでもない。
「那跑來跑去的人抓到了嗎?」
「それで、逃げ回っている人は捕まえたの?」
「不,那人極擅長躲藏……啊!」
「いやどうにも隠れ潜むのが得意……はっ!」
說到一半時長可發覺自己被引導了。臉色一變,靜子輕輕嘆息,遞上了一疊文件。
途中まで口にしたところで長可は誘導されたことに気付いた。顔色を変えた長可に、静子は小さく息を吐くと書類束を差し出す。
本以為會被責罵的長可,疑惑地接過出乎意料的一疊文件,開始確認內容。
叱責されると思っていた長可は、予想外の書類束を訝し気に受け取って中身を確認した。
內容記載了長可所追蹤的風魔間諜如何逃亡,還有有多少協力者,以及他們是些什麼人。
中身は長可が追っていた風魔の間者がどのように逃亡しているのか、また協力者は何人いて、それが何者かが記載されている。
連長可都無法完全掌握的情報毫無遺漏地記載著,對方被徹底揭露了。
長可ですら把握できていない情報が余すところなく記されており、相手が完全に丸裸にされていた。
不由自主地回頭看向靜子時,她對長可露出笑容。
思わず静子を見返すと、彼女は長可に笑みを浮かべる。
「武力手段也不錯,但有時也別忘了使用迂迴手段」
「力業も良いけれど、時には搦(から)め手を使うことも忘れないように」
「你……為什麼做到這等地步?」
「おまっ……なんでここまで」
「好久沒上課了呢。勝藏君不管好壞都很顯眼。無論如何都容易讓對方掌握你的動向。若是擅長隱匿的人,就會一邊推測你的行蹤一邊逃亡。畢竟性命攸關啊」
「久々の授業だね。勝蔵君は良くも悪くも目立つのよ。どうしたって相手に動向を知られやすい。隠れるのが上手な人間なら、君の動向を推測しつつ逃亡するよ。何しろ命が懸かっているからね」
但喃喃道完後,靜子拿起一份文件遞給長可。
だけど、と呟いた後、静子は一つの書類を手に取って長可に渡す。
「人類隨著年長行為樣式(模式)在某程度上會固定下來。若以行為科學去分析,自然就能看出對方會採取的行動」
「人間というのは長じるほどに行動様式(パターン)がある程度固定されてしまうものなの。それを行動科学的に分析すれば、自ずと相手の取る行動が見えてくるよ」
文件中從風魔的組織性動向到行為傾向都被事無鉅細地分析了。對於調查得如此詳細他有些吃驚,但長可理解,正因為如此,他才能比任何人都更能採取讓對方厭惡的手段。
書類には風魔の組織的な動向から、行動傾向までもが事細かに分析されていた。ここまで詳細に調べていることに若干引いたが、だからこそ誰よりも相手の嫌がる手を講じることが出来るのだと長可は理解した。
「還好你不是敵人,真是太好了」
「お前が敵でなくて本当に良かったよ」
「不過我直接作戰並不太行喔?」
「でも私、直接の戦闘はろくに出来ないよ?」
「……擁有謙虛天賦的人真是犯規呢」
「……謙虚な才能持ちって反則だよな」
聽到靜子的話長可嘆了口氣。正如她所說,除去射擊能力之外,靜子的戰鬥能力不過比雜兵稍強一些。
静子の言葉に長可はため息を吐く。彼女の言葉通り、静子自身の戦闘能力は射撃能力を除くと雑兵に毛が生えた程度でしかない。
只是靜子的情況是,會在開戰前就把戰事本身處理掉,讓其不會發生。
ただ静子の場合は、戦闘になる前にいくさ自体を発生しないよう処理してしまう。
(就算想陷害她,這傢伙也會利用那點。當你以為一切都照自己的計劃進行時,突然從背後被刺這種事就會理所當然地發生……)
(策に嵌めようにも、コイツはそれすら利用してくるんだよな。自分の思い通りにことが進んでいると思ったら、いきなり後ろから刺されるなんてことが当たり前に起こるし……)
如果本人的戰鬥能力低下,自然會認為直接襲擊就有勝算。然而,對靜子發動直接戰鬥幾乎是不可能的。
本人の戦闘能力が低いのならば、直接襲撃すれば勝ち目があると考えるのは当然だ。しかし、静子相手に直接戦闘を仕掛けるということが不可能に近い。
而且靜子幾乎不會離開受嚴密警備守護的宅邸,且靜子在領民中的名聲大致良好,想要傷害她的人無可避免會顯得突兀,因此尾張一帶可以說是安全圈。
そもそも静子が厳重な警備に守られた自邸からそれほど動かないし、概ね領民からの評判が良い静子を害そうとする人物は否が応でも目立ってしまうため尾張一帯が安全圏と言える。
本來,靜子是那種在內政上才會發揮真本領的類型。剛臣服於信長時期因為沒閒著的餘裕而有參與戰事,但如今已經不需要靜子親自上陣了。
本来、静子は内政でこそ本領を発揮するタイプだ。信長に臣従した初期こそ遊ばせておく余裕がなくていくさにも出ていたが、いまや静子が直接いくさに出る必要性はない。
「雖然靜子打起來也微妙,但你本來會在戰事開始之前就把戰事結束,對吧?」
「まあ静子が戦っても微妙だが、そもそもお前はいくさが始まる前にいくさを終わらせるだろう?」
對於長可的話,靜子輕笑了一聲。
長可の言葉に静子はクスリと笑った。