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戦国小町苦労譚

千五百七十六年 六月上旬

蟲聲也已消失的深夜。靜子因撫過手背的風之寒冷而醒來。

虫の声すら絶えた夜半。静子は手の甲を撫でる風の冷たさに目を覚ました。

自從請求家臣們協力後,靜子便把寢具搬進與那兩隻同住的穀倉同處生活,但那天卻有些不同。

静子は家臣の皆に協力を願って以来、二頭と同じ納屋に寝具を持ち込み共に生活をしていたのだが、その日は何かが違っていた。

靠著室內灑進的月光確認四周時,發現ヴィットマン與バルティ的臥榻已空。

室内に差し込む月明かりを頼りに周囲を確認すると、ヴィットマンとバルティの寝床が空になっていた。

本來取光用突出的窗戶是關著的,因此竟有月光灑入本身就不尋常。

そもそも明り取りの突き出し窓が閉じられているため、月明かりが差し込むこと自体がおかしい。

循著光源追去,納屋的大門果然敞開著,從那裡射入帶點青色的月光。

光源を辿(たど)ると、やはり納屋の入り口が開け放たれたままになっており、そこから青みがかった月の光が差し込んでいる。

將感到風的手背朝向月光時,確認到些微濕痕。大概是兩隻向她作別時留下的。

風を感じた手の甲を月明かりに向けると、わずかに濡れた痕跡が確認できた。二頭が別れの挨拶をしていったのだろう。

「終於要走了呢……」

「とうとう逝っちゃうんだね……」

這一天早有心理準備。然而,親眼看到空蕩蕩的寢床,寂寞仍湧上心頭。

この日がいずれ訪れることは覚悟していた。しかし、もぬけの殻となった寝床を目の当たりにすると寂しさが胸に込み上げてくる。

感覺到淌過臉頰的熱度,靜子注意到自己正在滂沱大哭。她粗暴地用袖子擦拭淚水,但接連不斷湧出的淚珠止不住。

頬を流れる熱いものを感じ、静子は己が滂沱(ぼうだ)と涙を流していることに気が付いた。乱暴に袖で涙を拭(ぬぐ)うが、後から後から溢れてくる涙は止まってくれなかった。

與他們的別離已無法避免,但她認為至少可以送行,便起身奔向前去。

もはや彼らとの別離(わかれ)は避け得ないが、見送ることぐらいはできるはずだと彼女は身を起こして駆けだした。

雖說初夏,夜裡的空氣仍寒冷。靜子踏入月光下的世界時,有人從旁為她披上外衣。

初夏とは言え夜の空気は冷たい。静子が月明かりの世界へ踏み出すと、横手から彼女に上着を掛ける者がいた。

「足滿大叔……怎麼會在這裡?」

「足満おじさん……どうしてここに?」

「那樣單薄的衣裳會著涼的吧?這是忠心不二侍奉妳的忠臣的啟程之日。就算有人來送行也無妨,而且不只有我們在。」

「その様な薄着では風邪を引くぞ? なに、二心無くお前に仕えてくれた忠臣の門出(かどで)だ。見送りが居ても罰は当たらぬだろう。それに我らだけではないぞ?」

足滿這麼說並指向前方,望去正堂的縁側可見慶次與兼続的身影,裡面更遠處似乎還有四六。

そう言って足満が指さす先を見ると、母屋の縁側に慶次と兼続の姿が見え、さらに奥には四六も居るようだった。

靜子在足滿陪同下走到屋敷正門,平時關閉的門此刻敞開著,門衛只點著最少的燈明,左右守候。

静子は足満に付き添われて屋敷の正門まで進むと、普段は閉ざされている門が開いており、門衛が最小限の燈明だけを点(とも)して左右に控えていた。

對默默行禮的門衛回以微作揖後,兩人走出門外。只有月光照亮黑暗,能看見兩隻狼並肩走去的身影。

黙したまま礼をしてくる門衛に会釈を返し、二人は門の外へと歩みを進めた。月明かりだけが闇を照らす中、二頭の狼が寄り添うように歩んでゆく姿が見えた。

望著逐漸變小的背影,靜子拼命壓抑著自己幾乎要跑出去的衝動。

徐々に小さくなってゆく後ろ姿に、静子は思わず駆けだしそうになる自分を抑えるので精一杯だった。

「笑著送他們吧,靜子。雖是今生的別離,那兩個人已精彩地完成了職責。承認他們拒絕糟糕老去、也不願暴露難看屍骸的自尊,這才是主人該做的事。」

「笑って見送ってやってくれ静子。今生(こんじょう)の別れではあるが、あ奴らは見事に務めを果たし終えたのだ。老いさらばえ、無様な骸(むくろ)を晒すのを良しとせぬ奴らの矜持(きょうじ)を認めてやるのが主(あるじ)の務めだ」

為了平復翻湧的淚水與狂亂的情緒,靜子用掌狠狠拍了自己的兩頰。寂靜支配的蒼白世界裡,響起如拍手般響亮的聲音,或許是疼痛的緣故,淚也止了,心也定了下來。

溢れる涙と荒れ狂う感情を落ち着かせるため、静子は自分の両頬を思い切り平手で打った。静寂が支配する蒼白い世界に、柏手を打つような音が盛大に響いたが、痛みのお陰か涙も止まり腹が据わった。

「謝謝你,足滿大叔。哭隨時都能哭,但能送行的只有現在。」

「ありがとう、足満おじさん。泣くのはいつでも出来るけど、見送れるのは今しかない」

不是淹沒在悲嘆中哭著送行,而是向他們的奉獻與忠義表達感謝,並以笑容送別將來自己也會去往之處,這大概是作為飼主最後的責任吧。

悲嘆にくれて泣き送るのではなく、彼らの献身と忠義に感謝を示し、いずれ自分も向かう先への門出を笑顔で見送ることこそが飼い主としての最後の務めだろう。

當靜子下定決心送別並目送他們遠去時,發現其實有許多人也同樣在送那兩隻走向山裡。

そうして静子が覚悟を決めて遠ざかる姿を見送っていると、実に多くの者たちが同様に山へと去っていく二頭を見送っていることに気が付いた。

被禁止夜間非必要外出的民眾,各自在家門口盤坐合掌祈禱,送別那兩隻的身影。

不急不要の夜間外出が禁じられた民たちは、それぞれの家で玄関口に座り込んで両手を合わせ拝みながら、二頭の姿を見送っている。

對百姓而言,伴隨在靜子身邊、守護這位善良領主的狼們,早已不再只是野獸,甚至成了信仰的對象。

民たちにとっても静子の傍らに付き従い、民たちにとって良き領主である彼女を守る狼達は、いつしか獣ではなく信仰の対象とすらなっていた。

「ヴィットマン、バルティ。承認你們的生存方式並對你們心存感謝的人竟有這麼多。我很高興曾是你們的主人。」

「ヴィットマン、バルティ。貴方達の生き様を認め、感謝してくれる人達がこんなにもいるよ。私は貴方達の主人であれたことを嬉しく思う」

在眾人送別中漸行漸遠的身影,潛入通往敞開山路的外門後消失不見。

皆に見送られながら遠ざかる影は、開かれたままとなっている山へと続く外門を潜って見えなくなった。

彷彿緊繃的弦斷裂般,坐倒在地的靜子聽到一聲劃破夜的寂靜傳來。

張り詰めていた糸が切れたかのように、その場に座り込んだ静子へ夜の静寂(しじま)を切り裂いて届く声があった。

「嗷嗚嗚嗚嗚──」

「ァオォォォォーン」

視力雖退化,但牠們敏銳的嗅覺大概仍感受到前來送行的靜子存在。

視力は衰えたものの、彼らの鋭敏な嗅覚は見送りにきていた静子の存在を感じ取っていたのだろう。

牠們在依依不捨的同時,對讓牠們自由的主人,鼓起最後的體力發出告別的敬意。

別れを惜しみつつも自由にさせてくれた主人へ、少ない体力を振り絞って最後の挨拶を告げたのだ。

雖然那只是唯一一次的遠吠,靜子仍能感受到那是ヴィットマン與バルティ之間確實存在的羈絆之證。

たった一度切りの遠吠えだったが、静子はそれでもヴィットマンとバルティとの間に確かに存在した絆の証を感じ取れた。

告別儀式結束了。以遠吠為終,聲響斷絕,兩隻消失於聳立於黑暗中的山林之中。

別れの儀式は終わったのだ。遠吠えを最後に物音は絶え、二頭は闇に聳(そび)える山の中へと消えて行った。

正堂的縁側上,慶次默默斟飲。平日多話的慶次一句不發,只是仰望月光,一杯接一杯地乾杯。

母屋の縁側では慶次が黙って盃を傾けていた。普段は饒舌(じょうぜつ)な慶次が一言も発することなく、ただ月を見上げながら盃を重ねる。

他的左側坐著兼続,也以平靜的表情細啜酒盞。同行的四六則與兩人不同,顯得坐立不安、心神不寧。

彼の左側には兼続が座り、同様に穏やかな表情で酒を舐めるようにして飲んでいた。同席している四六は、二人と異なり落ち着かない様子でそわそわしている。

「……這樣做真的沒問題嗎?」

「……これで良かったのでしょうか?」

下定決心的四六向慶次提問。四六的疑問是關於對於ヴィットマン與バルティ離開屋敷一事只是沉默送行是否妥當。

意を決した四六が慶次に訊ねる。四六の質問は、ヴィットマンとバルティが屋敷から去るのをただ黙って見送ったことについてだった。

望著從縁側遠去的背影,慶次只對著背影說了句「保重」,兼続則說「總有一天我們也會去的。再會了」然後抿了一口酒。

縁側から遠ざかる背中を見送る慶次は、その背に向けて「達者でな」とだけ声を掛け、兼続は「いずれ我らも向かう。またな」と告げて盃を呷った。

看到兩位長者的反應而困惑的四六,因被告知兩隻消失的含意,於是向離去的牠們深深鞠躬。

大人二人の反応を見て混乱を来たした四六だが、二頭が姿を消す意味を教えられていた彼は、去り行く彼らに深く頭を下げた。

僅此而已。慶次與兼続連要告知靜子兩隻離去的事也沒做,只是留在縁側乾杯。

それだけが全てだった。慶次と兼続は去り行く二頭の事を静子に知らせることすらせず、ただ縁側に留まって酒杯を乾(ほ)している。

四六不確定這是否妥當,也覺得自己是否能做些什麼,這念頭讓他坐立難安。

四六にはそれが良いことなのか判らず、何かしてやれるのではないかと言う思いが彼を落ち着かなくさせていた。

「他們早已下定決心了。多餘的幫助只會玷污他們的覺悟。相信並送他們離去,才是禮節。」

「あいつらはとうに覚悟を決めている。余計な手助けは奴らの覚悟に泥を塗ることになる。信じて送り出してやるのが礼儀ってもんだ」

「正是如此。他們光榮地完成了使命。這不是意外的別離,而是帶著覺悟的告別。憐憫或同情反而是失禮的。」

「然様(さよう)。彼らは見事役目を果たした。不慮の別れではない、覚悟の別れだ。同情や哀れみは失礼となろう」

作為一個在被忽視中長大、又在靜子府上受到優待而逐漸找回人類般情感的四六,他根本無法認為袖手旁觀是件好事。

ネグレクトを受けつつ大きくなり、静子邸での厚遇によって人らしい感情を取り戻しつつある四六としては、手を差し伸べないでいることが良い事だとは到底思えなかった。

然而,當他望見自己信賴的慶次那帶著寂寥之感的眼神時,便再也說不出更多話,沉默下來。

しかし、自分が信頼を寄せる慶次の寂寥(せきりょう)感を帯びた目を見てしまうと、それ以上言葉を重ねることが出来ずに押し黙ってしまった。

兩位大人只是默默注視著仍無法釋懷的四六。

納得できずにいる四六の姿を二人の大人はただ黙って見守っていた。

這個世界總是充滿不合理。如何面對並與之妥協,正是成長之所在。

この世は常に不条理に満ちている。それとどう向き合い、折り合いをつけていくのかということこそが成長となる。

兩人以自身經驗明白這一點,他們既不嘲笑四六的掙扎,也不強加似懂非懂的答案,而是等他消化後能提出屬於自己的結論。

それを己の経験を通じて知る二人は、四六の葛藤を馬鹿にすること無く、また解ったような答えを押し付けることなく、彼が消化して自分なり答えを出せるのを待っている。

不久四六深深吐了一口氣,然後向兩人開口說道。

やがて四六は大きく息を吐きだすと、二人に向かって声をかけた。

「果然即便思考也無法理解。恐怕這不是理性能解答的,而是需要去感受(……)然後心服的那一類事。以我而言尚未達到那種境地。」

「やはり考えても判りませぬ。恐らくは理屈ではなく、感じて(・・・)納得する類(たぐい)のものなのでしょう。私では未だその境地には至れません」

剛說完那些話,慶次便遞上只斟了一點酒的杯子給四六。

ようようそれだけ告げ終えた四六に対して、慶次は少量だけ酒を注いだ盃を差し出した。

「『不明白』就是你現在的答案。答案會隨著積累而改變。現在的你不懂,未來的你或許會給出不同的答案。不過他們大概不想要黏膩的告別,喝下這杯替他們送行吧。」

「判らないってのが今のお前さんの答えなのさ。答えってのは積み重ねた時によって変わるもんだ。今のお前さんは判らずとも、未来のお前さんは違う答えを出すかも知れん。ただ湿っぽい別れを奴らは望まないだろうから、これを飲んであいつらを送ってやってくれ」

「……明天我可能得請假不去學校。以防萬一我會準備些甜食。」

「……明日は学校を休むことになるかも知れません。万一に備えて甘い物を用意しておきます」

「嗯?」

「あん?」

四六平時不喝酒,可能會因宿醉而缺課這點能理解,但為何必須準備甜食這個理由卻不明白。

普段酒を呑まない四六が、二日酔いから学校を休むかもしれないというのは理解できたが、甘い物を用意せねばならないという理屈が判らない。

面對兩人疑惑的表情,四六開口說明。

訝(いぶか)しむ二人に向かって、四六が口を開いた。

「繼母曾說過。若想避免宿醉,補充糖分和水分是最簡便且有效的方法。」

「義母(はは)上が仰っていたのです。二日酔いを避けたいのなら、糖分と水分を補給しておくのが最も手軽で効果的だと」

酒精進入體內後,大部分被肝臟分解。省略細節,酒精分解過程所產生的物質會抑制糖質新生(葡萄糖生成)。

酒に含まれるアルコールが体内に入ると、各所で吸収されたアルコールの大部分を肝臓が分解する。細かい理屈は省くが、アルコールの分解過程で生成される物質によって糖新生(ブドウ糖の生産)が抑制されてしまう。

換言之,大量攝取酒精會自然導致低血糖,並令大腦命令身體從外界攝取糖分,使人感到飢餓。

つまりアルコールを多く摂取すると自然と低血糖状態となり、外部から糖分を摂取させるよう脳が命令を下して空腹を感じるようになる。

這也是為何喝酒後以拉麵作為「收尾」很受歡迎的原因。不過比起屬於碳水化合物的麵,分解吸收更快的甜食更合適,所以以葡萄糖為主成分的汽水糖等可以說是最佳解。

お酒を呑んだ後の『締め』としてラーメンが人気なのもこのためである。炭水化物である麺よりも、分解吸収が早い甘い物が適しているため、ブドウ糖が主成分であるラムネ菓子等は最適解とも言える。

順帶一提,若忽視這些需求不補充糖分,起床時因血糖下降會出現頭痛與倦怠等宿醉症狀。

因みにこれらの欲求を無視して糖分補給を怠ると、起床時に血糖値が低下しているため頭痛や倦怠(けんたい)感と言った二日酔いの症状が出る。

事先說明以免誤會:喝酒後大量補充糖分並不等於沒喝過酒,也不能保證以酒量或個人體內分解酒精的能力就能確實避免宿醉。

誤解のないよう断っておくと、飲酒後に大量の糖分を補給したとしても飲酒が無かったことにはならないし、酒量や個人のアルコール分解能によって二日酔いを確実に回避できるという保証もない。

更不用說所謂的『接酒』,即便在宿醉時再喝酒也是危險行為。因為酒中糖分會暫時緩解症狀,但為分解那部分酒精會消耗更多糖分與水分,之後可能導致更嚴重的症狀。

まして『迎え酒』と嘯(うそぶ)いて、二日酔い状態にもかかわらず更に酒を呑むのは危険な行為である。何故なら酒に含まれる糖分によって一時的に症状は改善するが、そのアルコールを分解するために更に大量の糖や水分が消費されるため、後になってより深刻な症状を招くことになりかねない。

飲酒後吃甜食只是對預防宿醉相對有效而已。最好的方法是了解自己合適的飲酒量,保持節制地享受。

飲酒後の甘い物は、二日酔いを予防するための効果が比較的高いだけである。最善は自分の身体に合った飲酒量を知り、節度を保って楽しむことだ。

「當然並無保證能絕對不宿醉,這只是預防措施。」

「勿論、確実に二日酔いにならないという保証はなく、あくまで予防策だそうです」

「啊啊!原來如此,難怪靜子的宴會會讓人中途喝水,或在最後端出甜點。」

「ああ! なるほど、それで静っちの宴会には、途中で水を飲まされたり、最後に甘い物が出たりするのか」

「畢竟在宴席中直接出糖果有困難,所以會提供那些不易察覺但含糖量高的料理。」

「流石に宴席の最中に菓子を出すのは難しいので、それと判らないように糖分が多く取れる料理を供したりしているそうです」

「真是體貼的關懷。能連那種場面都替人著想,只能說果然不愧是她。」

「何とも有難い気遣いだな。そういう体面にまで配慮した気遣いが出来るのは流石としか言えん」

「是啊。」

「そうですね」

聽著慶次稱讚靜子,四六感到像是為自己感到驕傲。雖然仍害羞得說不出口,但四六既以靜子為母般敬慕,也以人之尊敬她。

四六は慶次が静子を褒めるのを聞いて、我がことのように誇らしく思えた。未だに恥ずかしくて口には出せないでいるが、四六は静子の事を母として慕っており、また人間として尊敬していた。

周遭認為器很早就親近靜子,但只有與她共度幼年時光的四六早已洞悉真相。

器は早い段階で静子に懐いたと周囲は思っているが、幼少期を共に過ごした四六だけは見抜いていた。

那正是器的處世之道。以明顯的好意示人,讓對方不會對自己生出敵意,這是種悲哀的生存手段。

あれこそが器なりの処世術なのだと。相手にあからさまな好意を見せることで自分に敵意を(・・・・・・)向けられない(・・・・・・)ようにするという悲しい処世術だ。

器曾在所處的環境中,即便對人表現好意也被以敵意回應,因此在新環境中這成了她為自保少數的自衛手段之一。

器が置かれた環境では、相手に好意を向けてすら害意で返された経緯があり、新しい環境下で自分を守るための器の数少ない自衛手段でもあった。

即便如此,器如今仍由衷地將靜子當作母親敬慕。因為與世隔絕的過往無法改變她那有些超脫世俗的性格,但靜子也理解並接受這一切。

そんな器ですら今では心から静子を母と慕っている。世間から隔絶された経緯から浮世離れした性格までは変えようがないが、静子はそれすら理解した上で受け入れてくれている。

在靜子眼中,她認識的有些人症狀比器嚴重得多,所以器僅是個偶有古怪行為的孩子,並不值得過度擔心。

静子からすれば器よりもずっと重篤な症状の人々を知っているし、少し突飛な行動をする子だな程度で気にする事もない。

然而,回想器過去曾被否定其存在、被冷落虐待,靜子不僅對器而言是難得的理解者,對自認為她庇護者的四六也是難得的知心人。

しかし、器にとって今まで存在自体を否定されたり、疎(うと)まれ虐待されたりしてきたことを思えば静子は器にとってだけでなく、彼女の庇護者を自任していた四六にとっても得難い理解者であった。

「看來四六大人相當敬慕靜子大人呢。」

「四六殿は随分と静子殿を慕っておいでのようだ」

「是的。我對義母心懷感謝,也由衷敬重。正因如此不願見到義母悲傷。為了讓她能稍微展露笑顏,只要我能做到的事都想做。但我也意識到,這並不成為干涉義母已經接受的別離的理由。」

「そうですね。義母上には感謝しておりますし、心より尊敬もしています。だからこそ義母上の悲しむ様子は見たくありませぬ。少しでも笑顔になって頂くために、私に出来る事ならば何でもしたい。しかし、だからと言って義母上が納得された別離に介入して良い理由とはならないと気が付きました」

不知是酒精麻痺了理性,平日深藏心中的話便自然脫口而出。

酒が理性を麻痺させているのか、普段は心に秘めている言葉が自然と口を突いて出る。

「義母與那些狼人之間想必有著旁人無法參與的羈絆。這讓人有些羨慕。畢竟我們至今還未能建立到那樣的關係……」

「きっと義母上と狼達の間には余人が立ち入れない絆があるのでしょう。それが少し羨ましくもありますね。私達では未だにそこまでの関係を構築できていませんから……」

「那是前人們累積出來的結果,無可奈何。不過你們擁有未來,往後能成為怎樣的關係就看你們兩人了。」

「それは先人が積み上げてきた結果ですから、仕方のないことです。ただし貴方達には未来がある。ここから先にどのような関係となれるかはお二人次第です」

「謝謝您,與六大人。是啊,我們會努力補上他們留下的空缺」

「ありがとうございます、与六様。そうですね、彼らが抜けた穴を我らが補えるように頑張ります」

「那可不一樣,四六」

「それは違うぜ、四六」

慶次否定了四六為未來所說的話。因為意外的反駁把視線轉向慶次時,慶次不同於平常,直直地看著這邊。

これからの事を見据えて四六が語った内容を慶次が否定した。思わぬ反論に慶次の方へ目を向けると、慶次は普段と異なり真っすぐこちらを見つめている。

「不需要成為誰的替代。沒有人能也不該去替代他們。你要用你自己的方式去支撐靜子。而且那不是遙遠的『某一天』,是從『今天起』就開始。在這裡很容易忘記,但這個世界仍然是亂世,沒有人能保證明天會和今天一樣延續」

「誰かの代わりになる必要は無いんだ。あいつらの代わりは誰にも務まらないし、務めちゃいけない。お前はお前のやり方で、静っちを支えてやるんだ。そしてそれは遠い『いつか』じゃない、『今日から』始めるんだ。ここにいると忘れがちだが、この世は未だに乱世だ。今日と同じ明日が続くなんて誰にも保証なんて出来やしないんだからな」

「正是如此。正如慶次殿所言,只有今日盡全力生活的人,明天才會對他微笑。若每天都全力以赴,到了生命盡頭時也能笑著離去吧」

「然り。慶次殿の言うように、今日精一杯生きた者だけに明日はほほ笑むのです。毎日を精一杯生きておれば、いざ最期を迎える時も笑って逝けましょう」

那是帶有戰士般死生觀的一句話。慶次與兼續都是在亂世波濤中活下來的人,都努力使自己無論何時面臨終結都不留遺憾。

それはいくさ人らしい死生観を持った台詞であった。慶次も兼続も乱世の荒波を渡り生き抜いてきた身、いつ最期を迎えても悔いが残らないよう心掛けてきたのだ。

正因如此,慶次否定了四六想要『哪天代替維特曼他們』的念頭。某種意義上這是正確的,因為後悔總是來不及先於當下。

だからこそ慶次は四六の『ヴィットマン達の代わり』に『いつかなり替わろう』という考えを否定した。これはある意味で正しいと言える、後悔は常に先に立たないものだからだ。

「真是惶恐不安。我似乎仍脫不掉依賴。只覺得漫不經心地把明日視為理所當然,感到羞愧」

「お恥ずかしい限りです。私は未だに甘えが抜けきらぬようです。漫然と明日が与えられて当然と考えていたことを恥じ入るばかりです」

看著低頭說著這話的四六,慶次牢牢握住他那瘦弱的肩膀,露出微笑。

そう言って俯く四六を見て、慶次はその細い肩をがっしりと握ってにかりと笑って見せた。

「喂,這只是心態的問題。我們也並非已經做得完美無缺。只是有個從現在就開始的決心,和為了不讓自己後悔所需的覺悟罷了」

「ま、これは心構えの話だ。なに、俺たちだって十全にやれている訳じゃない。ただ、今から始めるんだと言う心意気と、後悔しないための覚悟って奴だ」

慶次如此說著並微笑,四六肩上的緊張便消散了。過於認真的四六似乎被這股勁頭稍稍激勵得過頭了。

慶次がそう言ってほほ笑むと、四六の肩に入っていた力がすっと抜けた。どうにも生真面目すぎる四六には、少し過剰に発破が掛かったようだった。

慶次回想自己與四六年紀相仿時到底在做什麼,發現自己根本沒有資格說教。

慶次は自分が四六と同じぐらいの年頃、いったい何をやっていたのかと思い返せばとても説教等出来た立場ではない。

然而,為了不讓有前途的年輕人踏上與自己相同的覆轍而後悔,前輩不禁出言相勸也是常情。

しかし、未来ある若者が自分と同じ轍(てつ)を踏んで後悔しないよう、思わず口出ししてしまうのも先達の常というものだろう。

對於不覺得被打擾而真誠接受勸告的四六,慶次既感到喜愛,也覺得有些耀眼。

それを煩わしく思うでもなく、真っすぐに受け入れている四六を慶次は好ましく思うとともに、少し眩しくもあった。

送走向兩人致謝後先行休息離去的四六,慶次和兼續舉杯,思緒寄向下一代的尾張。

二人に礼を述べて先に休むと去っていく四六を見送り、慶次と兼続は次代の尾張へと想いを馳せて盃を交わした。

維特曼與巴爾蒂的步伐隨時可能停止。雖然稍微恢復了一些,兩人互相扶持,在月光照耀的山路上緩慢行走。

ヴィットマンとバルティの歩みはいつ止まっても不思議ではない状態だった。多少回復をしたものの、お互いに体を支え合って月明かりが照らす山道をゆっくりと歩む。

兩頭的體力已經耗盡,每踏一步身體就發出求休的悲鳴。然而,若此刻一坐下,就沒有人能保證他們還能再次站起行走。

二頭の体力は既に尽きており、一歩ごとに体が休息を求めて悲鳴を上げている。しかし、今座りこんでしまえば、次に立ち上がり歩ける保証はない。

驅使兩頭前行的是想要回到締造他們一生價值、編織那段相遇的地方的念頭。

それでも二頭を突き動かすのは、自分達の一生を価値あるものとした出会いを紡いだ場所へ帰りたいという思いだった。

不久他們來到山道中腹一處毫無特別之處、略為開闊的地帶。那正是當年維特曼帶著巴爾蒂回來時,靜子遭歹徒襲擊的地方。

やがて山道の中腹ほどにある何の変哲もない少し開けた場所へと辿り着いた。そこはかつてヴィットマンがバルティを連れて戻った際に、無法者に静子が襲われた場所であった。

救了靜子的危局,並帶著巴爾蒂真正成為靜子家人的地方。兩頭把這裡定為自己的歸宿之地。

静子の窮地を救い、バルティを伴って本当の意味で静子の家族となった場所。二頭はここを己の死地と定めていた。

兩頭不約而同地盤起身體躺下。維特曼向山腳望去,黑暗中有一點孤單的亮光。

二頭はどちらからともなく足を折って体を横たえる。ヴィットマンが麓へ目を向けると、闇の中にぽつりと光る点があった。

那光的方向就是靜子所在。能一邊凝望她而迎接最後時刻的這片地,對兩頭而言是最合適的歇息之地。

あの光の許に静子が居る。そこを眺めながら最期を迎えられるこの地は、二頭にとって格好の寝床であった。

無論是維特曼或巴爾蒂,都不知道自己出生的地方在哪兒,與他們一生大多度過的這片土地相比,根本沒有任何眷戀。

ヴィットマンもバルティも、自分が生まれた場所には見当もつかない。またその生涯の殆どを過ごしたこの地と比べれば、何の愛着もなかった。

兩頭互相理毛,等待最後時刻的到來。但那時發生了奇妙的事。

二頭は互いに毛づくろいをして、最期の瞬間が訪れるのを待った。しかし、その時不思議なことが起こった。

顯然從山頂方向傳來某個在呼喚兩頭的聲音。那並非聲音,而是直接在兩頭心中回響的某種存在。

明らかに山頂の方から二頭を呼ぶ何者かの声がする。それは音ではなく、二頭の心に直接響く何かであった。

維特曼與巴爾蒂對視後緩緩站起。原本被認為已耗盡的活力神奇地湧現,腳步比以往更穩健地朝山頂前進。

ヴィットマンとバルティはお互いに視線を合わせると、ゆっくりと立ち上がった。最早尽き果てたと思われた活力は不思議と満ち、今までよりもしっかりとした足取りで山頂を目指す。

兩頭感覺到正如他們曾朝山前進般,山正在召喚他們,便毫不猶豫地筆直邁向山頂。

二頭は自分達が山を目指したように、山が自分達を招いてくれているのを感じ、迷うことなく真っすぐに山頂へと歩を進めた。

當維特曼與巴爾蒂抵達山頂時,正巧月光從雲間露臉,一柱光芒彷彿連接天地,照亮山頂的一角。

ヴィットマンとバルティが山頂に辿り着くと、折よく雲の合間から月が顔を覗かせ、光の柱が天地を繋ぐように山頂の一角を照らした。

兩頭向著將他們鮮明照亮的月亮用力吠叫。那有力的長嘯大概也傳到了遙遠山腳的靜子那裡。

二頭は自分達を冴え冴えと照らし出す月に向かって力いっぱい吼えた。その力強い遠吠えは、遥か麓の静子の許まで届いたことだろう。

後世記載『大神(おおかみ)神社』的由來便是如此。

後の世において、『大神(おおかみ)神社』の縁起はこのように記されている。

為了援助戰國的天命之女綾小路靜子,天遣來兩頭巨大的狼。牠們身形如雪般潔白,毛色閃耀,甚至堪比巨熊的巨大獸。

戦国の申し子、綾小路静子を援(たす)けるために天は二頭の巨大な狼を遣わせた。その姿は雪の様に白く、輝くような毛並みを持った熊をも凌駕(りょうが)する巨獣であった。

憂慮戰火不止的日本,天命將她送至亂世魔王『織田信長』麾下。名為靜子的女傑身高逾六尺,魁梧壯健,憑藉神機妙算輔佐信長,同時也以無雙的剛力聞名。

戦火の絶えぬ日ノ本を憂えた天が、乱世の魔王こと『織田信長』の許へ彼女を送り出した。静子と言う女傑は、身の丈六尺を超える隆々たる体躯(たいく)を誇り、神算(しんさん)鬼謀(きぼう)を以て信長を支えるだけでなく、剛力無双でも知られる。

她以驚人的頭腦打敗了被譽為戰國最強的武田。據說她騎乘於狼背馳騁戰場,親自領陣粉碎敵軍。

彼女はその恐るべき頭脳を以て、戦国最強と謳われた武田を破った。また狼に跨って戦場を駆り、自らが先陣を切って敵を粉砕したという。

然而,當信長完成天下統一,她們的任務也到了返回天界的時刻。她與兩頭神使到達山頂後向月祈禱。

しかし、そんな彼女らも信長の天下統一が為るとその役目を終えて天へ還る時が来た。彼女と二頭の神使は、山頂へ辿り着くと月へと祈りを捧げた。

接著天際裂開一柱光芒伸向大地,山頂與天被光柱相連。據說在那光的召喚下,三者一同歸向天界。

すると天を割って光の柱が地へと伸び、山頂と天は光の柱で結ばれた。そしてその光に招かれるように、一人と二頭は天へと還っていったとされている。

為了讚揚她與兩頭狼的功績,據說信長在山頂建立了『大神神社』。

彼女と二頭の狼の功績を称え、信長は山頂に『大神神社』を建立したのだと言う。

若靜子親見此等傳說必定嗤之以鼻,但這是後人為了抬升山與神社的權威,不斷添油加醋的結果。

静子が実際にこれを目にすれば噴飯ものの縁起だが、これは後世の人々が山と神社の権威を盛り上げるため、話をこれでもかと盛り続けた結果であった。

本來成為大神神社祭神的維特曼本是灰色狼,巴爾蒂也應是同類。牠們並不可能有閃亮潔白的毛色,與熊相比自然小得多。

そもそも大神神社の祭神となったヴィットマンは灰色狼であったし、バルティも同種だろう。輝くような真っ白の毛並み等持っているはずもなく、流石に熊と比べれば随分と小さい。

再者,即便算是大個子的女性,靜子其實身材矮小,與剛力無雙相去甚遠。長可等部下所為之事不知何故被歸於靜子,結果她被描繪成猶如大猩猩的模樣。

更に戦国の世では大女の部類ではあるとはいえ、静子は小柄であったし剛力無双とは程遠い。長可を筆頭とした配下がやらかした事件が何故か静子の仕業として伝えられた結果、彼女はゴリラもかくやという姿で描かれるようになった。

傳聞不一,從赤手擊殺鎧武者開始,到跨狼馳行無路之道、於一夜之間從尾張抵達京城等荒誕不經的說法不勝枚舉。

曰く、素手で鎧武者を殴り殺したに始まり、道なき道を狼に跨って駆け、一夜にして尾張から京へと辿り着いたと言う荒唐無稽(こうとうむけい)なものまで枚挙にいとまがない。

然而,經過後世人們的努力,儘管位於偏遠的深山、甚至在山頂這等偏僻之處,大神神社仍然非常熱鬧。

しかし、そうした後世の人々の努力が実り、不便な山奥の更に山頂という辺鄙(へんぴ)な位置にあるというのに大神神社は大層賑わっている。

以靜子的神算鬼謀所祈的學業成就為首,該社被認為在家內安全、厄年祓除、事業安全、商業繁盛、事業繁榮、應試必勝、無病息災、病癒、安產、身體健康、交通安全、心願成就、諸災消除、八方除等方面皆有靈驗。

静子の神算鬼謀に肖(あやか)った学業成就を筆頭に、家内安全・厄年厄祓い・事業安全・商売繁盛・事業繁盛・受験必勝・無病息災・病気平癒・出産安産・身体健康・交通安全・心願成就・諸災消除・八方除に霊験があるとされた。

據說這座神社唯一無法成就的,是結緣之事,因為據稱靜子一生貫徹獨身。

この神社で叶わないのは静子が生涯独身を貫いたとされるため、縁結びだけであったとか。