戦国小町苦労譚
一五七五年五月中旬
靜子到達京城後,先暫且在自己的京都屋敷安頓下來。她派出先遣使打招呼,首先便與擔任京都所司代的村井貞勝約好了會面。
静子は京に着くと、一先ず自らの京屋敷へと身を落ち着ける。訪問の先触れを出し、真っ先に京都所司代を務める村井(むらい) 貞勝(さだかつ)と約束を取り付けた。
村井自古以來即為織田信長效力的行政官,負責織田家與朝廷之間的橋樑工作,從宮內的修復工程、二條城的興建,到公文書調查與爭端調停等,所擔當的角色絕非等閒。
村井は古くから信長に仕える行政官であり、織田家と朝廷との橋渡しを担い、禁裏の修復事業や二条城の造営、公文書調査から係争の調停など、彼が果たしてきた役割は決して小さいものとは言えない。
負責京都行政全盤、且深受信長信賴可謂其代理人的村井,曾被路易斯·弗洛伊斯稱為「都(京都)的總督」。
京における行政全般を取り仕切り、信長の名代とも言える信任篤い村井を指して、ルイス・フロイスは『都(京都)の総督』と称した。
若村井為「都之總督」,則靜子可謂「尾張之總督」,彼此任地相距甚遠,迄今鮮有直接拓展交流的機會。
村井が『都の総督』ならば、静子は言わば『尾張の総督』であり、互いの任地が決定的に離れていたため、今まで直接交流を深める機会に恵まれなかった。
因今年靜子幸得南下至京,雖屬倉卒,卻得以促成會談。
今年は幸いにして静子が京へと足を運ぶため、急遽ではあったが会談を持つことが可能となった。
「此次匆促相邀,還能撥冗相見,深表感謝」
「此の度は急な申し出にも関わらず、お時間を割いて頂き感謝しております」
「何言之有。提到靜子殿,乃是上樣托付尾張之重任之人,早已聽聞其名」
「何を仰います。静子殿と言えば、上様が尾張をお任せになる程のお方。お噂はかねがね伺っておりまする」
「哈哈哈,若傳入之是佳話自無妨,但我為年輕輩分,難免有疏失,或許也曾有令人不悅之事吧?」
「ははは、お耳に入っているのが良い噂ならば構わないのですが、若輩者ゆえ不手際も多く、お聞き苦しい話などもあったのではないでしょうか?」
面對年齡差可如祖孫般之靜子,村井以毫不居下的款待相迎,言行舉止皆十分和煦。
下手をすると祖父と孫程にも歳が離れた静子を相手に、村井は下にも置かないもてなしで遇し、柔らかい物腰で応対していた。
靜子留在京都亦對村井有利;由她率領的軍隊在她留京期間會輪流給予休假。
それに静子が京に滞在することは、村井にとってもメリットがあった。静子が率いてきた軍は、静子が京に滞在中、交替で休暇が与えられる。
然而因須能即時應對緊急召集,故不能遠離,只能在京都各處消遣以度無聊。
とは言え、緊急の召集に即応できねばならないため、遠く離れることなく、京のあちこちで無聊(ぶりょう)を慰めることになる。
即便在休假中,作為精銳軍士其言行仍與常人不同;惡徒自然噤聲,京都治安反而更為緊繃。
休暇中とは言え、精鋭の軍属であるため物腰からして一般人とは異なる。必然的に悪人は鳴りを潜め、京の治安は引き締められることになる。
靜子軍亦以闊綽聞名,金錢較為充裕至基層兵士,花費大方。
また静子軍は羽振りが良い事でも有名であり、末端の兵にまで比較的金が行き渡っており、財布の紐が緩い。
兵士們買罕見的京都土產、逛街戲弄景物,紛紛花錢消費,使街市因意外的繁榮而沸騰。
兵たちは珍しい京の土産を買ったり、京の街並みや見世物などを冷やかしたりして金を落とし、時ならぬ好景気に街は沸いていた。
「承蒙迅速派遣黑鍬衆前往鴨川(賀茂川)普請,深表感謝」
「さて、早速鴨川(賀茂川)普請へ黒鍬衆を派遣していただき、ありがたく存じます」
「不不,鴨川之安堵乃京都之大事,若能助一臂之力,甚幸」
「いえいえ、鴨川の安堵は京の重用事。お力添えとなったのなら幸いです」
鴨川素有多次氾濫之記錄,是條兇猛的河川。
鴨川は過去に何度も氾濫を起こした暴れ川である。
其因在於河道本身坡度陡峭致使流速自然加快,且水源處北山樹木遭伐,蓄水力下降,合力造成問題。
そもそも川自体に急な勾配が付いており、自然と流速が上がることに加え、水源地である北山の樹木が伐採され保水力が落ちた事が原因とされる。
早在平安末期,縱然握有極大權勢的白河法皇亦以「加茂河之水」為難以駕馭之物,足見歷代統治者為之頭疼。
平安末期に於いて、絶大な権勢をふるった白河法皇でさえも、思い通りにならないものとして『加茂河の水』を挙げたほど、時の支配者をして手を焼かされていた。
題外話為,現今常以「賀茂川」字形稱鴨川;雖讀音相同但表記不同,源於上賀茂神社與下鴨神社之名。
余談だが現在では鴨川は賀茂川との字を当てることがある。読みは同じだが表記が異なる理由は、上賀茂神社(かみがもじんじゃ)と下鴨神社(しもがもじんじゃ)に起因する。
各神社依其勢力範圍所流之川取名為賀茂川或鴨川,故以現今加茂大橋為界,上游稱賀茂川、下游稱鴨川,總稱則以鴨川表記。
それぞれの神社が、己の支配域を流れる川を神社名に因んで賀茂川、鴨川と呼んだため、現在の加茂大橋(かもおおはし)より上流を賀茂川、下流を鴨川と呼び分け、総称を鴨川と表記している。
村井所言之普請,即指挖深河床與築堤,並改修已老舊的五條大橋及四條大橋,另包括史實上於江戶時代被指定為公儀橋的三條大橋之修繕。
村井の語った普請とは、川底の掘り下げと堤防の構築、老朽化の進んだ五条大橋と四条大橋に加え、史実に於いて江戸時代に公儀橋(こうぎばし)に指定された三条大橋の改修を指す。
雖說距離天皇所居之御所有段距離,但被託付具有戰略價值之橋梁工程,不僅顯示信長之權勢,亦凸顯村井將其落實為具體計畫之高度協調力。
帝のおわす御所から遠いとは言え、戦略的価値を有する橋の工事を任されるということは、信長の権力もさることながら、それを現実の計画へと落とし込める村井の調整力の高さを示していた。
整備橋梁、改善交通便利固然會降低防禦力,但京城本就是易攻難守之地。
橋を整備し、交通の便を良くすることは防衛力の低下を招くが、元来京は攻めるに易く、守るに難い土地である。
一旦軍勢攻入京都,便已陷入絕境,因此信長自始便未打算在京城進行防衛戰。
京まで軍勢が攻め込んできた時点で詰みであり、信長は最初から京での防衛戦を考えていなかった。
隨後與村井之會面始終和緩進行,彼此談論近況、交換情報,偶爾也互相吐露因侍奉信長為主君而生之苦惱。
その後も村井との会見は終始和やかに進行した。互いの近況を語り、それぞれの情報を交換し、時に信長を主君と抱くが故の苦労に対する愚痴を零し合う。
這場跨越性別與年齡的重臣間會談對雙方皆是有意義之時光,但因各自皆繁忙,故僅稍作片刻便散會。
性別も年齢をも超えた重臣同士の会談は、双方にとって有意義な時間となったが、共に多忙な身であるため、僅か一刻ばかりでお開きとなった。
「依依不捨」
「お名残惜しゅうございます」
「正是彼此有幸能與名高的靜子殿結交,我亦深感欣慰。然而如今當以刻苦精勵之志支援上樣統一日本之業;待天下一統之時,彼此周遭自當安定。」
「こちらこそ、名高き静子殿と交誼を結べたことを嬉しく思います。されど、今は刻苦精励(こっくせいれい)を以て上様の日ノ本統一を支える時。天下統一が成った暁には、お互いの身辺も落ち着いておりましょう」
「屆時請務必來尾張一遊,這回由我盡心款待。」
「その折には是非、尾張へお立ち寄り下さい。今度は私が精一杯おもてなし致しましょう」
「素聞尾張名物,真心期待一見。」
「名にし負う尾張の風物、心より楽しみにしております」
靜子告辭後,與村井之會談落幕。村井抬起垂下的頭,確認眾人已看不見,方才鬆了口氣,長舒一口大氣。
静子の暇乞いを以て、村井との会談は終わった。村井は下げていた頭を起こし、静子達が見えなくなったのを確認して、ようやく肩の力を抜いて大きく息を吐いた。
「人言真不可盡信。聞說是擊敗過武田的剛強之人,原以為會見到何等鬼魅婦女,卻是令人感到端莊氣質的柔弱女子模樣。」
「人の噂とは当てにならんな。武田を下した剛の者と聞き、どのような鬼女が現れるかと思えば、気品すら感じさせる手弱女(たおやめ)ぶりよ」
「實在可惜。若非女性,當真是一位足以覬覦天下的器量之人。」
「実に惜しい御仁でございます。女子でさえなければ、天下を窺える器であったことでしょう」
擔任村井輔佐之長子貞成繼承父言。對於兒子稍顯不中聽之言,村井只是哈哈大笑帶過。
村井の補佐を務める長男、貞成(さだなり)が父の言葉を継いだ。息子の的外れな意見を、村井はからからと笑い飛ばす。
「靜子殿並無那種俗人所懷之奪天下或留名青史之野心。她所具者乃古語所謂『王佐之才』,唯有與上樣相伴方能顯耀。若要提出唯一之缺點……」
「静子殿には天下を獲るだとか、歴史に名を残すだのという俗人が抱く野心は無かろうよ。彼女が持つのは故事に曰く『王佐の才』、上様と共にあってこそ輝くのだろう。唯一つ難点を挙げるならば……」
貞成聽父言喉音一動,等待下一句話語。
貞成は父の言葉に喉を鳴らし、次の一言を待った。
「年齡差實在過大,且她才情過於卓絕。與靜子殿相處,令人如同看著孫輩成長般生出護持之心。」
「余りにも歳の差があり過ぎ、また彼女は才を持ちすぎた。静子殿と接していると、孫のように成長を見守りたくなる」
因村井極為繁忙,遂由靜子前往會見,然眾多人則紛紛到靜子在京都之屋敷造訪。
多忙を極める村井へは、静子が出向く形を取ったが、多くの人々は静子の京屋敷を訪れた。
不僅公家,連武家之人甚至佛門也求與靜子結交,列隊恭候入見。
公家に限らず武家の人間や、仏家ですらも静子との誼(よしみ)を求め、目通りを願って列を為した。
天下被信長掌握王權的懷刀、以溫和人格著稱的靜子,很多人想巴結接近她。
天下に王手を掛ける信長の懐刀であり、穏やかな人格者と名高い静子に取り入りたいと考える人間は多い。
對於那些人交織出的欲望與博弈雖感厭煩,表面上卻始終平等且和顏悅色地回應。
そんな人々の織り成す欲望と駆け引きに辟易としながら、しかし表面上は分け隔てなく終始にこやかに対応していた。
靜子隨後派先使去找她的後見人兼義父前久;不巧前久因急事出向堺,無法應對。
静子は次に、自分の後見人であり義理の父にあたる前久へと先触れを遣わせた。折り悪く前久は急用の為、堺へと出向いており都合がつかなかった。
靜子本可親赴堺,然而前久的家宰以不宜勞動遷就為由婉拒,會談因此未能成行。
静子が堺まで足を伸ばすこともできたのだが、前久の家宰がそれには及ばないと遠慮したため、会談が実現することはなかった。
取而代之,她將親筆書信與各種禮物託付給家宰,然後離開近衛屋敷。後來前久被告知與靜子錯過會面,便在尚未對事項作決斷前責成家宰,即便要派早馬也要先徵求他的意見。
代わりに静子直筆の文と、各種手土産を家宰に託し、近衛の屋敷を後にした。後に静子とのすれ違いを知らされた前久は、静子との用件については判断する前に、早馬を仕立ててでも自分の意見を仰ぐようにと家宰を窘(たしな)めた。
「嗯……我好像懂得連濃姬也會厭惡的原因了……總覺得有種被毒氣侵襲的感覺呢」
「うーん。濃姫様ですら嫌がる理由が判ったかも……なんと言うか毒気に中(あ)てられるね」
帶著些許憔悴,靜子伏在文案上。俗話說『魚心あれば水心』,但那些毫不掩飾下心的賄賂互換,遠比想像中更刺傷靜子的精神。
少しばかり憔悴した面持ちで、静子は文机に突っ伏した。『魚心あれば水心』と故事にはあるが、下心を隠そうともしない賄賂の応酬は、想像以上に静子の精神をささくれさせた。
靜子伸手想藉觸摸想像中的維特曼以求心神安定,這時小姓的腳步聲靠近。她慌忙整理坐姿,回應小姓的呼喚。
静子の手が精神安定を求めて想像上のヴィットマンを触ろうとしたところへ、小姓の足音が近づいてくる。慌てて居住まいを正し、小姓の呼びかけに応じた。
「靜子大人,宗易(そうえき)大人求見,如何是好?」
「静子様、宗易(そうえき)様がお目通りをお求めです。如何致しましょうか?」
「哦?是位少見來訪的人呢,請告知我會見他」
「おや? 珍しいお方からのお誘いですね、お会いしますので、そのように伝えて下さい」
「喔」
「はっ」
利休求見的理由無法立刻想通,靜子歪頭沉思,但覺得總比無謂的試探好,於是同意會談。
利休が会見を求める理由が思い当たらず、静子は首を傾げつつも、実りの無い腹の探り合いよりはと思い、彼との会談を了承した。
「這次百忙中還撥冗見我,萬分感謝」
「此度(このたび)はお忙しい処、お時間を取って頂き、有難く存じます」
「請不必在意。我也對那些圖利的拜會已經厭倦。同行者是我頭一次見到的人吧?」
「どうぞ、お気になさらず。こちらも欲得づくの面会に食傷しておりましたので。お連れの方は、初めて見る方ですね?」
互致寒暄後,靜子轉向利休的同行者。外貌看來是三十末至四十歲、帶有工匠般藝術家氣質的男性。
互いに口上を述べた後、静子は利休の連れに話を向けた。外見からは30代後半の男性であり、職人のような芸術家肌の人物に見える。
雖然不認為利休會帶出身可疑之人,但也不能不追問。
利休が素性の怪しい人間を連れてくるとは思えないが、問い質さない訳にはいかなかった。
一提及此人為靜子初見,後方戒備的才蔵等護衛瞬間轉入可立刻出手的姿勢。
静子にとって初見の人物であると言及した途端、背後に控える才蔵や小姓たちは一瞬で前に飛び出せる姿勢へと移行している。
「失禮了。遲來介紹,這位是我的友人,名為長谷川(はせがわ)信春(しんしゅん)」
「失礼しました。遅ればせながらご紹介させて頂きます。こちらは私の友人で、名を長谷川(はせがわ) 信春(しんしゅん)と申します」
在利休介紹下,那名男子低頭行禮。靜子對此人名有些印象。
利休の紹介を受け、男が頭を下げる。静子は男の名前に心当たりがあった。
長谷川信春,後來號等伯,是構成所謂長谷川派的畫師之一。
長谷川信春、後に等伯(とうはく)と号する彼は、長谷川派と呼ばれる派閥を構成する絵師だ。
史實中,他在安土桃山時代至江戶初期崛起,興起長谷川派,足以威脅當時畫壇頂點的狩野派;但此時尚處於蛰伏期,只是少數人知曉的名氣。
史実では安土桃山時代から江戸時代初期に掛けて、当時画壇のトップであった狩野派を脅かす程の存在となる長谷川派を興す人物だが、この時は未だ雌伏の時を過ごしており、知る人ぞ知る程度の知名度であった。
才蔵等護衛一直保持警戒,靜子則憑藉在現代所得的歷史知識,回想起此時期的他曾與利休及日蓮宗僧人日通交往。
才蔵たち護衛の警戒は緩むことが無かったが、静子は現代で得た歴史の知識から、この時期の彼は利休や日蓮宗の僧侶、日通(にっつう)と交流を得ていたことを思い出した。
「長谷川……原來如此。那麼您就是為日堯上人(にちぎょうしょうにん)畫過肖像的人吧?」
「長谷川……なるほど。それでは貴方が日堯上人(にちぎょうしょうにん)の肖像画を描いた方ですね」
靜子僅憑長谷川的名字就辨出身世並說出其作品,令在場二人無法掩飾驚訝。利休自然如此,被指出作品的信春本人更是明顯慌張。
静子が長谷川の名を聞いただけで、素性を察した上に作品の一つを口にしたことに驚きを隠せない二人。利休は勿論、作品を言い当てられた信春自身が露骨に狼狽(うろた)える。
「我也受朝廷委以藝事保護之責,對被視為有望之人多少有所耳聞」
「私はこれでも芸事保護を任されております。将来有望と目される方の情報は、多少なりとも私の耳に届くようになっております」
「喔!承蒙讚揚,深感榮幸」
「はっ! お褒めに与り光栄です」
恢復鎮定的信春再度鞠躬。對還埋沒在凡間的自己被靜子關注,他既驚訝又難掩喜悅。
我に返った信春は頭を下げた。未だ在野に埋もれている己に目を付けていてくれた静子に、彼はその腕の広さに驚愕しつつも嬉しさを隠せなかった。
靜子心知這是因為她知道他的後來成就而非何等卓越的先見之明,因而略感歉意。
静子としては後の業績を知っているがための知識であるため、先見の明でも何でもなく、少し申し訳ない気分になっていた。
「把他介紹給我,是否另有目的?」
「彼を私に紹介すると言うことは、何か狙いがあってのことでしょう?」
作為受朝廷託付的藝事保護者,靜子處不僅聚集信長鍾情的茶器,亦匯集各式美術與藝術品。
朝廷より芸事保護を任されている静子の許には、信長が執心している茶器は勿論、様々な美術・芸術品が集まってくる。
並且對寺院等秘藏之物,也被特別賦予閱覽權限。
また、寺院などが秘蔵している品についても、特別に閲覧を許される権限を付託されていた。
在這一時期,信春透過人脈接觸各種美術品,被襖與屏風上繪製的所謂障壁畫所影響。
この時期の信春は伝手を頼って様々な美術品に触れ、襖や衝立(ついたて)に描かれた障壁画と呼ばれる障子絵に影響を受けたとされる。
受此刺激,他吸收知識與技術,並昇華成獨自的畫風。
それらに刺激を受け、知識や技術を吸収して独自の画風へと昇華させるに至ったのだ。
利休看重信春的才華,自然想把他介紹給管理最多藏品的靜子,讓他有更多接觸作品的機會。
信春の才能を認めた利休が、最も多くの美術品を管理する静子に彼を紹介し、少しでも多くの作品に触れる機会を作ってやりたいと思うのは自然な流れであった。
「是的,這位男子確有出色才華,但我認為在其才華開花前仍需一段修養。因此斗膽請求,能否開陳靜子大人所管理的當代一流作品群供他觀摩,實屬厚顏的請求,故特地帶他來請求此事」
「はい、こちらの男は素晴らしい才を持っておりますが、それが開花するには今暫し修養を積む必要があるとみております。つきましては、当代一級の作品群を管理される静子様の所蔵物を開陳していただけまいかと思い、大変厚かましい願いではございますが連れて参りました」
「嗯」
「ふむ」
若素性由利休擔保無虞,但靜子認為單憑此就無償優待他,從外界名聲上看實在不妥。
素性は利休が保証すれば問題ないが、だからと言って何の利益も無しに彼だけを優遇するのは、流石に外聞が悪いと静子は考えた。
允許他閱覽藝術品雖易,然一旦此事傳開,除利休外,透過靜子的關係網也會湧現大批同等請求者。
彼に美術品閲覧の許可を与えるのは簡単だが、その事実が知れ渡れば利休以外にも、静子の知己を通して同等の許可を求める人々が殺到するのは目に見えている。
靜子雖知信春將來必成大器,但目前他仍是無名之輩,必須讓眾人信服有充分理由方能只優待他。
静子自身は信春が大成するのを知っているが、現時点の信春は無名の存在であり、彼だけを優遇するに相応しいと万人に認めさせる根拠を示させる必要があった。
「既是宗易殿的介紹,他的人品與手藝應該沒問題。但這對只優待他仍不足為據。請出示能證明他將成為未來引領美術界乃至畫壇的第一人者、配得此等優待的實績」
「宗易殿のご紹介ですし、その人品や腕前は確かなのでしょう。しかし、彼だけを優遇する根拠とするには弱い。彼が今後の美術界を、ひいては画壇を牽引するであろう第一人者たると、優遇するに相応しい実績を示して頂きたい」
說罷靜子吩咐小姓,把一副屏風請了進來。屏風左右畫風不同,左側的兩扇描繪松樹,右側的兩扇畫著檜木的姿態。
そう言うと静子は小姓に指図し、とある屏風(びょうぶ)を運び込ませた。屏風は左右で異なったモチーフが描かれており、左側の屏風の二面を使って松が、右側の屏風の二面には檜の姿が描かれていた。
這是稱為四曲一雙的作風,其鮮豔的色彩與充滿躍動感的精緻筆觸,即便外行人也能看出出自一位有相當造詣之人的手筆。
これは四曲一双(よんきょくいっそう)と呼ばれる作風であり、その鮮やかな色彩や、躍動感あふれる精緻な筆致は、素人目にも一廉(ひとかど)の人物の手に拠るものだと理解できた。
順帶一提,屏風的一個面稱為扇,連成一體的扇數以偶數遞增,二曲、四曲、六曲。左右成組的作品稱為雙,獨立成立的屏風則以隻計數。
因みに屏風は1つの面を扇(せん)と呼び、一つながりとなった扇の数で二曲、四曲、六曲と偶数で増えていく。そして左右一組となる作品を双(そう)、単独で成立する屏風は隻(せき)と数えられた。
「這是狩野殿(狩野永德)獻給我的屏風。我不敢要求超越當代第一的狩野殿,但希望你看了這件作品後,用你自己的表現來繪出一幅使我認為值得優待你的作品。以此來決定是否給予許可。」
「これは狩野(かのう)殿(狩野 永徳(えいとく))が私にと、献上された屏風です。当代随一と名高い狩野殿を超えよとは申しませんが、これを見て私が貴方を優遇するに相応しいと思えるだけの作品を描いて頂きたい。それを以て許可を与えるか判断したいと思います」
靜子對著被狩野屏風吸引的信春斷然宣告道。
狩野の屏風に魅入っている信春に、静子は決然と宣言した。
「並非要你立刻展示能超越此作的才華。請以你自己的表現方式,嘗試創作對現時畫壇頂尖人物作品的回應。我不會設定明確期限,如有需要我會支援人手、物資與資金;作為交換,請務必提交一件能成為你回答的作品。那麼,答覆如何?」
「今すぐにこれを超える才を示せと言う訳ではありません。現時点で画壇の頂点に立つ人物の作品に対して、自分なりの表現で作品を作ってみてください。明確な期限は切りません。必要ならば人や物、金も支援いたしましょう。代わりに必ずや、自分なりの回答となる作品を提出して頂きます。して、返答や如何に?」
信春無法對靜子的提案立即回答,因為他意識到這是在提供可望的最大支援的同時,設定了一個不容他退縮的條件。
静子の提案に対して信春は即答できなかった。望み得る最高の支援をする代わりに、逃げを許さぬ条件だと彼は気付いたからだ。
這是一個嚴苛的挑戰,不允許以有人手、金錢或時間就能做得更好為藉口,而要求以當下所能達到的最好作品與當代一流的人才競爭。
人手さえあれば、金さえあれば、時間さえあればもっと良い物が作れたという言い訳を許さず、その時点での最善を尽くした作品で、当代随一の才能と競い合えという厳しい問いだ。
「還請賜我一點時間。」
「暫し、時間を頂戴しとう存じます」
即便未必能達到頂峰,但要求在當時展現最高才華並承認不足之處的嚴厲挑戰,信春好不容易擠出那句話。
及ばずとも良いが、その時点で最高の才を示し、劣っているのを認めよという厳しい問いに、信春はようようそれだけの言葉を絞り出した。
靜子對於被保留的回覆並不在意,只交代說等有答案後透過利休轉告即可。
返答を保留された形の静子だが、彼女は気にした風でもなく、答えが出たら利休を通じて伝えるようにとだけ告げた。
信春的用事辦妥後,利休便與他一同辭去。利休只是為撮合信春與靜子而來,自己並無其他特別事務。
信春の用件が終わると、利休は彼と共に場を辞した。利休は信春と静子とを引き合わせるためだけに訪問しており、自身はこれといって用事を持たなかった。
「是不是下的條件有些過於嚴苛了呢?但若要明顯給予特別待遇,就需要相應的實績。既然不是誰都能隨便看見的開架方式,不先讓人展現資質就會沒法收場啊。」
「少し厳しい注文を付け過ぎたかな? でも、明らかに特別扱いするには、それに相応しいと言える実績が必要。誰にでも気軽に見せる開架方式じゃない以上、資質を示して貰わないと収拾がつかなくなるからね」
原本懷著或許能見到唐朝作品或古今中外一級名品的期待,卻被擲來如此嚴苛的課題,這種落差光是想像就令人心驚。
唐の作品や古今東西の一級品を目に出来るかもと期待を抱いていたところへ、厳しい課題を突き付けられたのだ。その落差たるや想像するだに恐ろしい。
「那麼,接下來是奧爾甘蒂諾大人嗎。這段時間沒穿男裝,真覺得有些拘束呢。」
「さて、お次はオルガンティノ殿か。この処、男装をしていなかったから、なんとも窮屈だね」
靜子一邊被侍女用裹布緊束胸部,一邊抱怨著穿上男裝的窘迫。
侍女にサラシで胸を締め上げられながら、男装を纏う静子がぼやいた。
她不禁覺得也許該是揭露真相的時候了,但既然得不到信長的許可,只能繼續男扮男裝。
そろそろ正体を明かしても良いのではと思わないでもないのだが、信長から許可が下りない以上は男装を続けるしかなかった。
另一方面,說到信長,自從最初那次之後便沒有再同席,他已忘了靜子一直男扮男裝這回事。
一方信長と言えば、最初の一件以来同席することがないため、静子に男装させていることを失念していた。
在忍受這身拘束休息時,小姓告知會談已準備就緒。靜子鼓起一股氣轉動肩膀,邁步走向謁見之間。
窮屈な恰好に耐えつつ休憩していると、会談の準備が整ったと小姓が告げた。一つ気合を入れると肩を回し、静子は謁見の間へと歩を進める。
「久仰大名,閣下的豐功偉績在遙遠故鄉也屢屢傳聞。能如此親眼得見閣下安康之姿,謹表由衷歡喜。」
「ご無沙汰しております、閣下のご活躍は遠く離れた故郷でも度々噂となっております。こうして直接お目通りが叶い、お元気な姿を拝見し心よりお慶び申し上げます」
「過獎了。果然是奧爾甘蒂諾大人,看來您對我國文化亦頗有研究。您那邊可還好?」
「これはご丁寧に。流石はオルガンティノ殿と言った処でしょうか、我が国の文化にも長じておられるご様子。そちらはお変わりありませんか?」
由奧爾甘蒂諾代表謁見者致詞,靜子則回應。此次前來謁見的是奧爾甘蒂諾、弗洛伊斯與羅倫索三人。
謁見者を代表してオルガンティノが口上を述べ、それに静子が応じる。今回謁見に訪れたのはオルガンティノ、フロイス、ロレンソの三名となる。
那些修道士們各自忙於布教,近來已很少露面。
修道士たちはそれぞれ布教に勤しんでいるのか、ここのところ姿を見せることはない。
「我以為在前任地(印度西岸的果阿)已習慣炎熱,但這裡的熱度別有一番滋味。每次來見閣下之前都不可不先沐浴一番。」
「前の任地(インド西海岸のゴア州)で暑さには慣れたつもりだったのですが、こちらの暑さは一味違いますな。こうしてお会いする前には行水が欠かせませぬ」
「京為盆地,濕氣容易滯留,氣候便會顯得格外炎熱或寒冷。日暮時分會吹些涼風。」
「京は盆地であるため、湿気がこもりますから、どうしても暑さ寒さが厳しくなりましょう。夕暮れともなれば、多少は涼しい風が吹くのですが」
奧爾甘蒂諾並不急於切入正題,他先從寒暄開始,互相談近況、活絡話題並取得共鳴,藉此抓住談話的切入點。
オルガンティノはすぐに用件を切り出さない。まず挨拶から入って近況を語り合い、会話を弾ませ相手と共感を得ることで会話の糸口をつかむ。
必然上奧爾甘蒂諾常是話題的提供者,而他的口才極為出色。
必然的にオルガンティノが話題を提供することが多くなるが、彼の話術は非常に優れていた。
憑藉紮實的親身經驗,他擁有豐富的話題,語調與停頓都拿捏得恰到好處,連自己的失敗談也能用幽默化為笑料。
実体験に裏打ちされた豊富な話題に、言葉の抑揚や間の取り方は言うに及ばず、己の失敗談すらもユーモアを交えて笑い話にしてしまう。
「筷子真是有趣的器具。起初我還以為那樣的木棍怎麼能吃飯,但一旦習得,便是再萬能不過的工具。我甚至想教故鄉那些用手抓麵吃的人學會。」
「箸というのは面白い道具です。当初はあんな棒切れで食事が出来るものかと思いましたが、一度習熟してしまえばあれほど万能な道具もありません。手掴みで麺を口に運ぶ故郷の人々にも教えてあげたいぐらいです」
「習得需些時間,但據說熟練後甚至能從盤中挑出小豆與大豆來。」
「習得に少し時間を要しますが、慣れれば小豆と大豆を皿から選り分けるといったことも可能となるそうです」
「哎呀!如果能不滑地抓住圓豆,我想挑戰看看。對了,說到抓豆子,讓我想起之前聽說的珍珠之事,可否稍微談談?」
「なんと! 丸い豆を滑らずに掴めるようになれば、挑戦してみたいと思います。そうそう、豆を掴む話で思い出したのですが、以前伺った真珠の件、少しお話しても宜しいでしょうか?」
奧爾甘蒂諾從閒聊自然而然引入正題。奧爾甘蒂諾來訪時,靜子已對大致情況有所掌握。
オルガンティノが世間話の延長から、実に自然に本題へと話を誘導する。オルガンティノが訪問を申し入れてきた時点で、静子としてはおおよその事情を掴んでいる。
她猜測是關於靜子在領地養殖的珍珠一事有了某種進展。
静子が領土で養殖している真珠の件について、何らかの進展があったのだろうと当たりを付けていた。
「好,沒問題。看您這樣子,大概可以說是對雙方都有利的好消息,對吧?」
「ええ、構いません。そのご様子では、双方にとって良いお話と思って良さそうですかな?」
「當然。首先我把消息傳到了前任地果阿以及我方故鄉的王侯貴族那裡,整體上獲得了良好反應。」
「勿論です。まずは前任地であるゴアと、我らの故郷の王侯貴族たちに情報を流したところ、概ね好感触を得ることができました」
聽了奧爾甘蒂諾的話,靜子點頭示意請他繼續。
オルガンティノの言葉に静子は頷いて次を促す。
對於這項大幅領先時代的養殖珍珠是否能被接受,靜子也只能祈禱,但依奧爾甘蒂諾所言似乎頗受好評。
大きく時代を先取りした養殖真珠が受け入れられるか否かは、神ならぬ静子としては祈る他なかったのだが、オルガンティノの言に依れば好評だったようだ。
不過靜子也預感事情不會就此結束。
しかし静子は、話がそれだけでは終わらないだろうとも予感していた。
「然而,也並非沒有難點。最大問題在於色澤。依我們的常識,珍珠應呈近似銀色的色調,但閣下所提供的珍珠顯示出接近純白的色澤。」
「しかし、難点が無いわけでもありません。一番問題となったのは、その色合いです。我らの常識では真珠とは銀に近い色味を呈するのですが、閣下にご用意頂いた真珠は純白に近い色を示しております」
「……嗯,色澤嗎。原來如此……」
「……ふむ、色合いですか。なるほど……」
當時歐洲流通的天然珍珠為銀色,而養殖的阿古屋貝所產珍珠則為白色。這是由分泌珍珠質的母貝種類所決定的。
当時欧州に流通していた天然真珠は銀色、対して養殖のアコヤ貝産真珠は白色となる。これは真珠質を分泌する母貝の種類に起因している。
當時世界有崇尚銀的風潮,靜子認為銀色比白色更符合歐洲人的喜好。
当時の世界は銀を貴ぶ風潮にあったため、静子は白色よりも銀色の方がヨーロッパ人の好みに合致すると考えた。
「要把色澤調到接近銀色很困難。能否把它們當作另一種珍珠推銷呢?」
「色合いを銀に近づけるのは困難です。別種の真珠として売り込んでは頂けませんか?」
「那樣一來對方會被視為讓步,可能會要求比閣下期望的價格降低一些。如果能接受這點,就有談判的餘地。」
「そうなりますと、相手が譲歩した形となりますので、閣下の希望される値段より幾ばくか値下げを求められるかと思います。これを呑んで頂けるのであれば、交渉の余地があるかと」
奧爾甘蒂諾從始至終都帶著和善的笑容推動談判。靜子聽後不禁讚嘆,果然是傳教士。
オルガンティノは終始にこやかに善意で交渉しているように話を進める。静子はそれを受けて、流石は宣教師だと舌を巻いていた。
顏色喜好確實是一個因素,但實際上他們的真實意圖可能是藉由指出瑕疵(缺點)來爭取更低的進貨價。
色の好みというのは確かに一つの要因なのだろう。しかし、実際のところは瑕疵(かし)(欠点)を指摘することで、少しでも安く仕入れたいと言うのが本音であろう。
在他們手裡,顏色偏好的程度隨時可以被處理,但他們會以此為籌碼迫使降價。表面像和藹可親的長者,實際上卻是相當老練的策略家。
彼らの手に掛かれば、色の好み程度は何とでも出来るのだろうが、それを材料に価格交渉を迫る。好々爺(こうこうや)然(ぜん)としながらも、中々に強かな策略家であった。
不過,並不會說奧爾甘蒂諾心腸陰險。若連這種心機都使不出來,就無法在沒有祖國後盾的敵方土地進行近似侵略的宗教傳播。
しかし、オルガンティノを指して腹黒いとは思わない。この程度の腹芸が出来なければ、母国と言う後ろ盾がない敵地で侵略行為に近しい宗教の布教など出来ようはずもない。
「(那就採用計畫B的時候!)理所當然。作為賣方當然希望以越高價格被收購越好,但若沒有買主就無法成為商品,降價也是必然。」
「(ならばプランBを採用する時!)当然でしょうね。売り手としては少しでも高く買い取って頂きたいが、買い手がつかないのでは商品となりません。値下げも必然でしょう」
「承蒙高見,十分感謝」
「ご賢察、恐れ入ります」
「考慮到這些,我方提出兩個方案。一是降低買入價格的普通交易,二是維持價格不變並簽訂獨家販售契約。」
「それらを考慮した上で、こちらは二つの方案を提案しましょう。一つは買取価格を下げての通常の取引、もう一つは価格を据え置いた状態での独占販売契約を結びます」
「能否請您詳細說明?」
「詳しくお話を聞かせて頂けますか?」
聽了靜子的話,奧爾甘蒂諾周遭的氣氛改變了。
静子の言葉を受けて、オルガンティノが纏う雰囲気が変わった。
雖然表情未變,但在警戒之餘那股可能抓住龐大利益的野心仍不禁滲了出來。
表情は変わらないが、警戒しつつも大きな利益を掴めるかも知れないという野心が、彼をして滲(にじ)み出てしまうのだろう。
已經抓住了。靜子在心裡比出勝利手勢。由於戴著頭巾難以看出表情,她仍小心翼翼使言語不帶情緒地進行對話。
掴みは得られた。静子は心中でガッツポーズをとっていた。頭巾を被っているため、表情は読まれないが、それでも言葉に感情が乗らないよう慎重に会話を進める。
「關於通常交易,沒有特別要說的。關於獨家販售契約說明如下。首先買入價格將以先前我方提出的價格提供。作為交換,原則上可提供的全部珍珠數量僅販售給貴方等。雖有銷路不佳、庫存積壓的可能,但貴方等將成為我國珍珠處理的唯一窗口。這種立場所帶來的優勢,對於熟悉商務的奧爾甘蒂諾大人應可理解。」
「通常の取引については、特にお話することはありません。独占販売契約について解説いたします。まず買い取り価格ですが、以前こちらが提示した価格での提供となります。代わりに原則として提供できる真珠の全量を貴方がたのみに販売致します。売れ行きが振るわず在庫を持て余す可能性を含みますが、貴方がたが我が国から産出される真珠取り扱いの唯一の窓口となれるのです。その立場が生み出す優位性は、商売に明るいオルガンティノ殿ならばご理解頂けるかと」
雖然提出了兩個方案,但有把握奧爾甘蒂諾會選擇獨家契約。
二つの案を提示してはいるが、オルガンティノならば独占契約を選択するとの確信があった。
其背景是從天主教系商人那裡聽說,近來新教系商人開始進軍東洋並活躍起來。
その背景には近頃、プロテスタント系の商人が東洋に進出し、活発に活動を始めているとカトリック系の商人から聞いていたというものがある。
雖然尚未進入東南亞以東的諸國或中國、日本市場,但這也只是時間問題。耶穌會派能獨占交易的時間所剩無幾。
未だ東南アジア以東の諸国や、中国、日本の市場へは進出していないが、それも時間の問題だと言える。更にイエズス会派が交易を独占できる時間的猶予は残り少ない。
新教商人向東洋挺進,意味著他們已建立起自己的航路。
プロテスタント側の商人が東洋へと歩を進めたという事は、彼らが独自の航路を確立したことを意味する。
再過數年,英國與荷蘭等新教國家擴張到極東的日本,並在商圈擴張上與天主教國家爭奪,這一點容易想像。
数年も経てば、イギリスやオランダというプロテスタント国家が、極東日本まで進出し商圏拡張を巡ってカトリック国家と覇を争うことになるのは容易に想像できる。
「……非常有趣,但稍超出我的裁量。可以帶回去一談,再改日向您請示嗎?」
「……大変興味深いお話ですが、少々私の裁量を上回ります。一度話を持ち帰り、改めてお伺いするという流れでも宜しいでしょうか?」
看似會撲上前去咬餌,但奧爾甘蒂諾冷靜地保留了判斷。
目の前に吊るされた餌に飛びつくかと思われたが、オルガンティノは冷静に判断を保留した。
靜子無意行騙,也沒有必要把生意夥伴限定在耶穌會。
静子としては騙し討ちにするつもりもなく、商売相手をイエズス会に限らねばならない理由もない。
這正是事先納入考量的計畫B,一切都在預期之中。
そこまで織り込み済みのプランBであり、全て想定内の事象に収まっていた。
「當然沒問題。我方也認為我國的珍珠會受到矚目,稍微有些過於積極。請盡情考慮,期盼能得到好的回覆。」
「勿論構いません。こちらも我が国の真珠が脚光を浴びると思い、少々前のめりになり過ぎておりました。ご存分にご検討いただき、その上で良いお返事が頂ける事を願っております」
「實在不敢當。我會將閣下的意向回報國方,必將為您爭取良好的答覆。」
「とんでものうございます。閣下のご意向を国許に伝え、必ずや良い返答を勝ち取って参ります」
「若奧爾甘蒂諾大人願意承擔,實在再令人安心不過。」
「オルガンティノ殿が請け負って頂けるとあらば、これ以上頼もしいこともありますまい」
聽了奧爾甘蒂諾的話,靜子低頭致謝。
オルガンティノの言葉に、静子は頭を下げて礼を述べた。
珍珠方面以暫時保留的方式達成了協議。
真珠については仮押さえということで折り合いがついた。
暫時靜子不會將珍珠流向他處,作為交換,奧爾甘蒂諾等人買下了為出口準備的兩箱珍珠全部。
当面、静子は真珠を他所に流さない代わりに、オルガンティノたちは輸出用に準備されていた真珠箱二つの全てを買い取った。
這次暫時保留是否會進入正式契約或破談,取決於奧爾甘蒂諾等人今後的表現,但靜子認為十之八九會達成正式契約。
この仮押さえが本契約へと進むか、それとも破談となるかは、今後のオルガンティノたちの活躍次第ではあるが、静子としては十中八九本契約に至るであろうと考えていた。
「唉呀,真是累壞了……」
「いやはや、疲れた疲れた……」
回到房間脫下男裝後的靜子伸展全身,喃喃自語。
自室に戻って男装から解き放たれた静子は、全身を伸ばしつつ独り言を漏らす。
一邊舒展僵硬的肩膀,一邊回想會談中羅倫索與弗洛伊斯幾乎未曾多言的情形。
凝り固まった肩を解しながら、会談の最中にロレンソとフロイス両名が殆ど喋らなかったことを思い出していた。
無論是珍珠的事或其他事,主導談話的都是奧爾甘蒂諾,除非被徵詢意見,兩人幾乎不開口發言。
真珠の件も、それ以外についても話を主導するのはオルガンティノであり、意見を求められた時以外は二人が口を開くことは無かった。
(大概窗口業務會統一交由奧爾甘蒂諾負責吧。兩人則徹底以支援角色確保順利交接。)
(恐らく、窓口担当はオルガンティノに一本化されるんだね。そして、二人はスムーズに引継ぎが出来るよう、サポートに徹しているのかな?)
促成靜子與耶穌會結緣的是弗洛伊斯與羅倫索。至於他們為何以何種經過脫離與靜子的交涉角色,並把接手之事託付給奧爾甘蒂諾,則不得而知。
静子とイエズス会との縁を紡いだのは、フロイスとロレンソだ。その二人がどういった経緯で静子との交渉役から離れ、オルガンティノに後を託したのかは判らない。
既然苦思也得不出答案,靜子便把此事放在心底的一角。
悩んでいても答えが出そうにないため、静子は心の片隅に留めおくことにした。
「那麼,差不多該回到尾張一趟,之後還得去向德川家致意才行呢。」
「さて、そろそろ一度尾張に戻り、その後徳川家へ挨拶に向かわないとね」
對家康的慰問是奉信忠之命,作為他的名代去執行。
家康へのご機嫌窺いは、信忠からの命を受け、彼の名代として務めることになる。
表面上是接受信長委任統治尾張與美濃,正式就任尾張奉行與美濃奉行,並趁機前往同為盟國且為鄰國的三河國及遠江國打招呼並告知此事。
表向きは信長より尾張と美濃を任され、正式に尾張奉行並びに美濃奉行に就任したことを同盟国でもあり、隣国でもある三河国(みかわのくに)及び遠江国(とおとうみのくに)に周知がてら挨拶に向かうこととなっている。
提到奉行多數人會想到大岡越前或遠山金四郎,但那些是江戶時代以後的町奉行,此處所說的奉行並非朝廷任命的公職,而僅是在織田領內通行的職務。
奉行というと大岡越前や遠山金四郎を思い浮かべる方も多いだろうが、あれらは江戸時代以降の町奉行であり、ここで言う奉行とは朝廷から任命される公的役職ではなく、あくまで織田領国内のみで通用する役職となる。
奉行的主要職責是輔佐擔任尾張與美濃守護的信忠,擔負如同執行實務的事務長官之角色。
奉行の主な役目は尾張及び美濃の守護に就く信忠の補佐となり、実務を実行する事務長官のような役目を担う。
然而,信忠本身因為忙於掌控尾張與美濃部下的繫絆而心力交瘁,根本無餘力顧及外交事務。
しかし、当の信忠は尾張と美濃の配下達の手綱を握ることで手一杯になっており、とても外交にまで気を回しているような余裕はない。
如此一來,安排整個行程的是信長,而他欲傳達給家康的訊息相當明確。
そう考えれば、一連の予定について手筈を整えたのは信長であり、彼が家康に伝えんとしたメッセージは明確であった。
(終於,要開始征伐東國了嗎)
(いよいよ、東国征伐が始まるのかな)
靜子前往德川領是向統治東國的諸國人清晰展現旗幟的機會,也是一則明確的宣示。也就是,服從或死。
静子の徳川領行きは、東国を治める各国人に対して、旗幟を鮮明にする機会を明確に示すメッセージだ。即ち、服従するか、さもなくば死だ。
雖然被安土城築城的動向掩蓋難以察覺,但作為靜子軍中樞的後勤部隊正積極運作中。
安土城築城の動きに隠されて見えにくいが、静子軍の中核を担う兵站軍が活発に動いている。
靜子判斷,不會太久,最早可能在夏末東國征伐就會開始。
そう遠からず、早ければ夏の終わりにも東国征伐が始まるだろう。そう静子は睨んでいた。
(務必要好好盡到職責)
(きちんとお役目を果たさないと)
從京城返回的靜子在尾張逗留數日整備後,再度啟程前往家康駐守的遠江。
京より戻った静子は尾張に数日留まり準備を整え、再び家康の待つ遠江を目指して旅立った。
進入三河國後,與擔任嚮導的夏目吉信會合。
三河国に入ると案内人を務める夏目(なつめ) 吉信(よしのぶ)と合流した。
史實上他是在三方原之戰中為掩護家康而犧牲身命的人,但靜子對他如今仍然活著感到奇異的感慨。
史実では三方ヶ原の戦いで家康を逃がすために身代わりとなって命を落とした人物だが、今も生き永らえていることに静子は奇妙な感慨を覚えていた。
需要嚮導的理由是三河與遠江的街道尚未完善,若非當地人,旅途上可能會遇到困難。
案内人が必要となる理由は、三河や遠江は街道整備が十分でなく、地元の人間でなければ道中に難儀する可能性があるためであった。
果然受命擔任嚮導的夏目領路可靠,靜子一行毫無問題地抵達家康居城——浜松城。
流石に案内役を任された夏目の先導は確かであり、何の問題もなく静子達一向は家康の居城である浜松城へと到着した。
「千里迢迢,歡迎光臨」
「遠路はるばる、ようこそお越し下さいました」
「看來德川大人身體康健,真是太好了」
「徳川様も御壮健なようで、何よりです」
在謁見場與家康交談。忽見視線一角,忠勝略微揮手以免太過招搖,結果被察覺的半藏與康政給了他一記肘擊。
謁見の場にて家康と言葉を交わす。ふと視界の隅で、忠勝が目立ち過ぎない程度に小さく手を振っており、気付いた半蔵と康政から肘鉄を貰っていた。
(為什麼連這種時候還要耍漫才呢?)
(どうして、こんな時まで漫才をやるんだろう?)
即便是為了緩和氣氛的即興小劇,也不該在暗暗顧忌周遭目光下偷偷進行,靜子邊如此想邊把注意力拉回到家康身上。
場を和ませるための寸劇にしても、こっそりと周囲の目を気にしながら行うことではないと思いつつ、静子は家康に意識を戻す。
既然未有從信長那裡帶來明確訊息或文書,談及東國征伐的話題自然不會出現。完成尾張·美濃奉行就任的寒暄後,談話便只是在日常閒聊的延伸上。
信長から明確なメッセージや文書を預かっていない以上、東国征伐の話題など出ようはずもない。尾張・美濃奉行就任の挨拶を終えれば、終始世間話の延長上の話題が飛び交う。
對靜子而言只是前來致意,本就無意久留,於是會談後停留數日便返回尾張。
静子としては挨拶に訪れただけであり、元より長居するつもりもないため、会談後数日の逗留を経て尾張へと帰国することとなった。
回程的嚮導本是由忠勝負責,但不知是否半藏與康政暗中牽線,實際負責靜子周邊警備的卻是忠勝的叔父本多忠真。
帰りの案内人は忠勝が務めることになったのだが、半蔵と康政が裏から手を回したのか、静子の周辺警備を担当したのは忠勝の叔父である本多(ほんだ) 忠真(ただざね)であった。