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戦国小町苦労譚

一五七四年 一月下旬

元旦。來向信長賀年的人,比起去年增加了好幾倍。

元日。新年の挨拶を交わすため、信長の許を訪ねる者は昨年に比して数倍にもなっていた。

為了應對預期的擁擠所準備的候見處擠滿了人,連進入候見處也得做好排長隊的心理準備。

混雑を予想して用意された待合所は人で溢れ、待合所に入るにも長蛇の列を覚悟せねばならない有様であった。

當然在那種狀態下,每人被分配到的時間被嚴格限制。大家絞盡腦汁,想用簡潔且最少的言語讓信長記住自己。

当然そのような状態であるため、一人一人に割り当てられる時間は厳しく制限される。簡潔かつ、必要最小限の言葉で信長に覚えて貰おうと皆が頭を捻っていた。

雖說點著了營火,但要忍受寒風吹拂的考驗,終於得以謁見信長時,能交談的也不過是幾句套話的寒暄。

篝火が焚かれているとはいえ、寒風吹きすさぶ試練に耐え、ようやく信長との謁見が叶おうとも、交わせる言葉は定型句の挨拶以外に一言二言に過ぎない。

一邊看著結束拜年失意而歸的人們,我看到那些燃起野心、發誓要更會表現的人的隊伍綿延不絕。

挨拶を終えた者が失意にくれながら帰る様を眺めながら、俺はもっと上手くやって見せると野心を燃やす人々の列が何処までも伸びていた。

「茶真好喝呢」

「お茶が美味しいね」

元旦一到,大家都回了娘家。平日吵鬧的靜子屋敷,只有這一天籠罩在寂靜中。

元日ともなれば、皆実家に戻っている。いつも騒々しい静子の屋敷も、この日ばかりは静寂に包まれていた。

動不動就惹事的市與茶々、還有初,也都在正月期間回到織田家。

事あるごとに騒動を起こす市と茶々、初も正月の間は織田家に帰省している。

因為連侍女和下僕都給了休假和路費遣送回家,靜子的宅邸顯得完全無人跡。

侍女や下男たちにも休暇と路銀を与えて帰してしまったため、静子の邸宅からはすっかり人気(ひとけ)が感じられない。

側室等人手全出外了,無論做什麼都只能自己動手,但靜子並不覺得不便。

側仕えが全て出払っているため、何をするにも自分で動くしかないのだが、静子はこれを不便だとは思っていなかった。

在火爐邊悠閒地燒水,親手替自己和彩泡了茶,喝了一口。

囲炉裏でのんびり湯を沸かし、手ずから自分と彩の分の茶を淹れて一服する。

「我準備了美濃產的上等茶葉」

「美濃産の良い茶葉(ちゃよう)を、ご用意いたしました」

舉起剛才靜子用過的茶筒,撲克臉但帶著一絲得意地回應。

今しがた静子が使った茶筒を掲げつつ、ポーカーフェイスにどこか得意げな表情を浮かべて返答する。

因為和彩相處已久,已能讀出她細微的表情變化。

彩とも長い付き合いであるため、僅かな表情の変化を読み取れるようになっていた。

她並不是在談味道,而是把這份悠閒的時光也一併評價,靜子苦笑著說這正是彩的風格。

味について言及している訳ではなく、このゆったりとした時間も含めて総評したのだが、と苦笑しつつも彩らしいと静子は笑った。

比起相遇時,兩人都變得身分太高了。周圍總是有人侍從,因此能兩人單獨靜下來交談的時間,除了正月幾乎不可能有。

出会った頃に比べると、両名共に身分が高くなり過ぎた。終始周りに誰かしらが侍(はべ)っているため、二人だけで落ち着いて会話が出来る時間など、正月以外にはあり得なかった。

近來靜子常受信長差遣而離家;彩為了代管靜子不在時的家務,必須與蕭一同掌理家中事務。

近頃の静子は信長の命を受け、家を空けることが多い。一方の彩は、静子の留守中を預かるため、蕭と共に家中を取り仕切る必要がある。

因此兩人自然而然地錯過彼此,連交談都難,甚至有時超過一個月都見不上面。

このため、自然とすれ違い生活をすることとなり、会話はおろか、下手をすれば一月以上も顔を合わせないということさえあった。

「總覺得好像很有過年的感覺呢」

「なんだか、お正月って感じがするよね」

不與他人參與,和彩兩人安靜地交談。僅僅這件事都很難。對現在的靜子來說,這是每年只有一次、只在正月才有的特別時光。

余人を交えず、彩と二人で落ち着いて話をする。ただそれだけのことが難しい。今の静子には年に一回、正月のみに訪れる特別な時間だった。

回想起從前。當時自己住在與現在宅邸無法相比的小房間,周圍圍著慶次、才蔵、長可和彩。

少し昔を思い返す。今の屋敷とは比ぶべくもない狭い部屋に自分が居て、周りを慶次や才蔵、長可、彩が囲む。

雖然想不起來在談什麼,但確實是在笑鬧。並不是說以前比較好,但靜子覺得自己彷彿走了很遠的路。

何を話していたのか思い出せないが、笑い合っていたのは確かだった。昔の方が良かったなどとは言わないが、静子は随分遠くへ来てしまったような心持ちになっていた。

「總覺得各種事物都在改變呢」

「なんだか、色んなものが変わっていくよね」

「雖然我不太能理解靜子大人想表達的是什麼,但只要您不說不需要,我將繼續侍奉在您左右」

「静子様が何を仰りたいか解りかねますが、貴女様が不要と仰らない限り、私は貴女様のお側に仕え続けます」

「……謝謝妳」

「……ありがとね」

聽到彩真誠的話,靜子感到有點害羞。之後兩人都沒再開口,但並不覺得沉默令人尷尬。

彩の飾らない言葉を耳にして、静子は少しくすぐったいような気持ちになった。それからはどちらも口を開くことが無かったが、無言の時を気まずいとは思わなかった。

(如果上様統一了日之本,會不會稍微安靜一些呢?)

(上様が日ノ本を統一されたら、少しは静かになるのかな?)

如果戰亂從日之本消失,世上帶來太平,或許能安靜地生活。懷抱著這樣的夢想,靜子與彩度過了兩人共度的正月。

日ノ本からいくさが消え、世に泰平が齎されれば静かに暮らせるかも知れない。そんな事を夢想しながら、静子は彩と二人の正月を過ごした。

一夜過後,從隔日開始一切回復如常。家人們也都回來,昨日的寂靜像謊言般被喧囂取代。

一夜明けて、翌日からはいつも通りに戻っていた。家人たちも戻ってきており、前日の静けさが嘘のような喧噪となっていた。

作為頭一件事,先向信長行新年問候。今年起也需向信忠致意,大家忙著準備。

最初の仕事として、まずは信長へ新年の挨拶を告げに行く。今年からは信忠への挨拶も必要となり、準備に皆が慌ただしくしていた。

即便向主君致意後,也沒有閒暇安定下來。到了第三日,自己的部下以及織田家中要人也會來靜子的屋敷拜年。

主君への挨拶を終えても、落ち着いていられる暇などない。三日目にもなると自身の部下や、織田家家中の要人たちも、正月の挨拶に静子の屋敷を訪れる。

因為家格提高,已不需要出門拜訪,但成為接待方後,辛苦依舊沒有改變。

家格が上がったため、出向く必要は無くなったが、迎える側になっても大変なのは変わらない。

從接見用的房間到要穿的服飾都要配合對方改變,雖然事先與蕭商量過,但再加上不熟悉,還是弄不清該怎麼辦。

相手に合わせて通す部屋から、着る衣装まで変える必要があり、事前に蕭と相談していたとは言え、不慣れなのも相俟(あいま)って勝手が分からないでいた。

把那些事辦妥後,接下來還得去自己領地上的主要城鎮逐一拜年。

それらを済ませると、次は自分の所領にある主な街へ、新年の挨拶を告げに行く必要があった。

到了這時,即便慶次尚未回來,其他人也已回到靜子宅邸,會作為護衛隨行於行事。

この頃になると慶次が戻っておらずとも、他の面々は静子邸へと帰参しているため、行事に護衛としてついてくる。

若能順利把這些都辦完就能稍微喘息,但到那時一月也已過半。

ここまでを万事滞りなく終わらせると一息つけるのだが、その頃には一月も半ばを過ぎていた。

本來所謂的松之內期間被視為直到『小正月』的十五天,因而新年匆忙地過去。

元々松の内と呼ばれる期間は、『小正月』までの15日とされているため、新年は慌ただしく過ぎていく。

「呼——總算結束了」

「ぐえー、やっと終わった」

靜子伏在文案桌上。還有贈禮的檢查沒做完,但那不算大事。

静子は文机に突っ伏していた。未だに進物のチェックが残っているが、それは大した手間ではない。

靜子行新年問候的同時,彩與蕭已幫忙準備好按身分分類整理的資料。

静子が新年の挨拶をしている間に、彩と蕭が身分別に整理した資料を準備してくれていた。

剩下的工作由靜子確認內容並補足不足之處。她檢閱了文件,又補寫了幾封信,約一小時後就快接近完成。

後は静子が内容を確認し、不足しているところを補うだけとなっていた。書類を確認し、追加で何通かの書を認(したた)め、1時間もすると終わりが見えてきていた。

「嗯……或許是因為有黑鍬衆在轄下,來的人各式各樣呢」

「ふーむ。黒鍬衆を抱えているからか、色々な人が来ているね」

列著光秀、細川藤孝等以京為根據地的有力者,以及以秀吉為首,柴田、佐久間等織田家世代家臣的名單。

光秀や細川藤孝などの京に拠点を置く有力者や、秀吉を始めとして、柴田に佐久間など織田家譜代の家臣の名が並ぶ。

靜子一邊翻閱文件,一邊想著雖然已做了最低限的回贈,但或許還應該另外贈送些什麼。忽然,她注意到除了文件外還附了兩封信。

最低限のお返しはしているものの、追加で何か贈った方が良いと思いながら静子は書類をめくっている。ふと、静子は書類とは別に二通の手紙が添えられているのに気が付いた。

「這是……?」

「なんだろこれ?」

拿起來一看,發現一封是前久寄來,另一封則是足滿的書信。靜子心想,前久倒也罷了,足滿寄信來倒是少見。

手に取って見ると一通は前久からのものであり、もう一通は足満からの文だと判った。前久はともかく、足満が手紙を寄越すのは珍しいなと静子は思う。

她判斷若是急件,足滿大概會親自前來,便先把足滿的信擱置,先打開前久的信。

急ぎならば、直接出向いてくるであろう足満の文を後回しにし、先に前久の文を開くことにした。

信中記載的是准許進入朝廷所屬寶物庫正倉的內容。

書かれていた内容は、朝廷所有の宝物殿である正倉への立ち入りを認める旨が記されていた。

「這個……嗯嗯」

「これは……ふむふむ」

正倉是當時朝廷為保管財物而設置的倉庫,而到了現代,其大部分已遭燒毀消失。

正倉とは時の朝廷が財物を保管するために設けた倉であり、現代ではその殆どが焼失してしまっていた。

過去曾有在南都七大寺各有正倉並列,並以圍牆圍起的『正倉院』區域,但現存者只剩東大寺正倉院內的一棟建築。

かつては南都七大寺にそれぞれ正倉が立ち並ぶ区画を塀で囲った『正倉院』が存在したが、現存しているのは東大寺正倉院の中にある一棟だけとなってしまった。

當年寶物能跨越時光依然保存良好的理由之一,是高床式構造能防止受潮與蟲害。

当時の宝物が時を越えて、今なお良好な状態を保っている理由は、高床式の構造により湿損や虫害を防げた事が一つ。

另一個原因是以勅封制度嚴格管理,不會任意開封。

勅封制度で厳重に管理され、みだりに開封されなかった事が理由に挙げられる。

「果然時期未定嗎。嗯,這也理所當然」

「流石に時期は未定か。まあ、当然だよね」

能獲得查看那些被嚴重封存、僅限少數人目睹的正倉寶物的權利,其背後與越前的行動有關。

厳重に封印され、限られた人の目にしか触れない正倉の宝物を閲覧出来る権利を得られた背景には、越前での行動があった。

雖然靜子本人並非刻意為此,但事實上先將一乘谷的文物疏散後再行燒討,對於自詡為文化擔當的公家與朝廷而言,是一件大事件。

静子自身が意識しての事ではなかったが、一乗谷にある文物を避難させてから焼き討ちしたという事実は、文化の担い手を自称する公家や朝廷にとって大事件であった。

對信長而言,朝倉是多次令他吃苦頭的存在。朝倉竟然向信長申請緩期搬運文物,並獲准許,這一事實分外沉重。

信長にとって朝倉とは幾度も煮え湯を飲まされた存在。その朝倉をして、信長に文物を運び出す猶予を願い出て、それを認めさせたという事実は重かった。

對於沒有機會直接面見信長的公家們,信長如鬼神般可怕,而能馴服信長並保護文物的靜子,讓公家們看到她是『文化的守護者』。

直接信長に会う機会の無い公家達にとって、信長とは鬼神の如く恐ろしい存在であり、その信長を制して文物を保護する静子に、公家達は『文化の守護者』の姿を見た。

「為了能在何時得到許可都行,準備這點絕不能鬆懈。」

「いつ許可を頂いても良いように、準備だけは怠らないようにしないとね」

因為那是朝廷的寶物庫,不會輕易開放。瞭解此點的靜子壓抑住急切的心情,決定等候對方動向。

朝廷の宝物庫であるため、容易に開かれることはない。それを理解している静子は、逸る心を抑えつつ、先方の出方を待つことにした。

靜子沒有察覺到,准入正倉的許可證上未記載日期,正是朝廷有其用意所在。

静子は気づいていなかったが、正倉への立ち入り許可証に日付が記されていないのには、朝廷の狙いが存在していた。

若靜子對許可證內容不滿,並以強硬手段要求進入,朝廷方面打算找藉口予以拒絕。

もしも静子が許可証の内容に不満を持ち、強権を以て立ち入りを要請すれば、朝廷側は理由を付けて断るつもりでいた。

被視為即便面對寶物也不會利己行事的理性人物的靜子,便打開了先前沒看過的足滿信。

計らずして宝物を前にしても、利己的に振る舞うことのない理性的な人物とみなされた静子は、避けておいた足満の文を開く。

「嗯。原來是要請柳生家協助擔任劍術指南。特地用書信送來,還以為發生什麼對立呢。」

「ふーん。剣術指南役として柳生家の協力を仰げることになったんだ。わざわざ文で送ってくるから、対立関係にでもなったのかと思ったよ」

現在的柳生家正侍奉著與足滿有深仇宿怨的松永久秀。

現在の柳生家は、足満にとって因縁の深い松永久秀に仕えていた。

信中寫道,松永在正月作為問候來到岐阜時,足滿強行安排了談判場面,而松永已快諾(・・)應允。

その松永が正月の挨拶として岐阜を訪れた際に、足満は強引に交渉の場を持った。松永は快諾(・・)してくれた、と文にはあった。

「你沒有拒絕權。要不接受,要不備戰,隨你選擇。」

「貴様には拒否権など無い。承服するか、いくさ支度をするか、好きな方を選べ」

「切記(ゆめゆめ),別妄想逃走。你的一舉一動始終有人注視著。」

「努々(ゆめゆめ)、逃げようなどとは思うなよ? 貴様の一挙手一投足は常に見られていると思え」

「即便此刻不作決斷亦無妨,但要知道日後條件會越來越苛刻。」

「ここで決断せずとも構わぬが、後日になる程に条件は厳しくなると心得よ」

「為免誤會再三聲明,此事非我一人之意,而是以織田殿的旨意傳達。」

「誤解が無いよう念を押すが、これはわしの一存ではなく、織田殿の意向として伝えておる」

「綜合以上,速將回覆送來。」

「これらを踏まえた上で、可及的速やかに返答を寄越せ」

「若你因不願放棄柳生而拒絕回覆,本方也有對策。毋需過分畏懼。至少你仍可回到國許。現在則(・・)。」

「貴様が柳生を惜しんで、返答をせぬと言うのならば、こちらにも考えがある。そう怯えることは無い。少なくとも国許までは帰れよう。今は(・・)な」

這樣明顯帶有脅迫性質的交涉正被進行。靜子不知其實質只是名義上的談判、一方的最後通牒,正思量是否接受柳生家的協助。

このような明らかに恫喝めいた交渉が行われていた。交渉とは名ばかりの、一方的な最後通牒に過ぎない内容を知らない静子は、柳生家の受け入れについて思案していた。

現任柳生家當主為宗厳。然而宗厳在從戰場歸途中墜馬,受了重傷。

今の柳生家当主は宗厳が務めている。しかし、当の宗厳はいくさからの帰国途中に落馬し、大怪我を負っていた。

嫡子巖勝在辰市城之戰中受傷,無人扶持便無法起身。

嫡男の巌勝に至っては、辰市城の合戦で負傷し、介添えが無くては起き上がれない状態であった。

後世確立柳生新陰流地位的宗矩(むねのり)在此時期也只是個年幼的孩童。

後世に於いて柳生新陰流の地位を確立した宗矩(むねのり)も、この時点では年端もゆかぬ童に過ぎない。

由於世代相傳的領地在此,想到會派誰來便覺得有些不安。

先祖代々の所領があるため、誰を派遣してくるのかと考えると、一抹の不安があった。

(照理說應該是次男久斎吧?三男德斎幼時已出家,基本不會被考慮。若派四男宗章(むねあき),那是連十歲都不到的少年……唔,這困難啊)

(順当にいけば次男の久斎かな? 三男の徳斎は幼少期に出家しているから、まず対象に挙がらないよね。四男の宗章(むねあき)だと、十にも満たない少年……うーん、これは厳しいかなあ)

靜子判斷,以現況看,等宗章成丁行成人禮比較妥當。

現状から判断すると、宗章が元服を迎えるまで待つのが得策だと、静子は考えた。

現階段並無能勝任指導的人選。

現時点では満足に指南など出来る人物が居ない。

上泉信綱的直弟子,據說打敗過柳生宗嚴(說法不一),並在史實上向織田信忠、豐臣秀次等人傳授兵法的疋田景兼也曾被考慮過,但現在下落不明。

上泉信綱の直弟子であり、柳生宗厳を倒し(諸説あり)、史実では織田信忠や豊臣秀次などに兵法を伝授したとされる疋田(ひきた)景兼(かげとも)も考えたが、今どこにいるかが判らない。

他不被列為候補的理由是他的遊歷習性。史實中他終生秉持武者修行的態度,從不在一處久留,過著流浪的生活。

彼が候補に挙がらない理由として、彼の放浪癖が挙げられる。史実では生涯武者修行の姿勢を貫き、決して一つ所に留まらない流浪の生活を続けていた。

「果然身為劍術指南役,卻以武者修行之名多次讓行蹤成謎,這樣是有問題的」

「流石に剣術指南役が、武者修行の旅と称して、度々行方(ゆくえ)を晦(くら)ませるのは問題だしね」

靜子嘆了口氣,覺得需要靜下心好好思考。接著對她來說更為棘手的事態來臨。

腰を据えて考える必要があるなと、静子はため息を吐いた。そんな彼女に、更なる追い打ちをかける事態が訪れる。

那是在一月下旬,再過幾日就要入二月之際。靜子接到信長的召見,前往他的居城岐阜城。

それは一月も末、もう数日で二月になろうかという時期のことだった。信長から呼び出しを受け、静子は彼の居城である岐阜城へと向かっていた。

城中,堀與蘭丸這對凸凹搭檔依舊以如同漫才般的對話引導靜子。襖被掀開,映入靜子眼簾的景象讓她不由得退縮。

城では堀と蘭丸の凸凹コンビが相も変わらず、漫才じみたやり取りをしながら静子を案内する。襖が開かれ、静子の目に飛び込んできた光景に、彼女は及び腰となった。

「好生前來。久等了」

「よくぞ参った。待ちかねておったぞ」

靜子並非對信長的話感到驚訝,而是看到坐於上座的信長為中心,左右齊整站著眾多重臣,覺得事有異常而畏懼。

静子は信長の言葉に驚いた訳ではない。上座におわす信長を中心に、左右にずらりと重臣達が揃っている現場を見て、ただ事ではないなと怯んだのだ。

以嫡男信忠為首,還有秀吉、光秀、柴田、佐々、前田利家、丹羽長秀等一眾錚錚人物齊聚一堂。

嫡男の信忠を始め、秀吉に光秀、柴田に佐々、前田利家に丹羽長秀等、錚々たる面子が揃い踏みをしていた。

意識到自己的格格不入,靜子露出一絲乾笑,戰戰兢兢地坐到靠近上座為她準備的席位上。

己の場違いさに乾いた笑みを浮かべつつ、静子は上座のほど近くに用意された席に、恐る恐る座った。

「好了,靜子既已到齊,大家也都到齊了。總算可以開始說了」

「さて、静子の到着を以て全員が揃ったな。ようやく話を始められる」

信長一句話讓在場眾人神情為之一凜。即便信長不明言,大家也都明白:接下來信長將宣告的內容會左右各人的去留。

信長の言葉に全員の表情が引き締まった。信長が明言せずとも皆が理解していた。これから信長が告げる内容によって、己の進退が左右されるということを。

眾人屏息以免漏聽信長的話,那景象似乎令信長覺得有趣,他帶著笑容開口了。

全員が信長の言葉を聞き漏らすまいと固唾を飲むが、その様子が面白かったのか信長は笑みを浮かべつつ口を開いた。

「別急。先說朝廷送來一封有意思的勅書(天皇下的命令書)」

「そう急くでない。まずは朝廷より、面白い勅書(天皇からの命令書)が届いた」

話音剛落,身後侍從便動了起來。兩名小姓恭敬地將置於膳上的勅書捧上,分別置於靜子與光秀眼前後退。

その言葉と同時に、背後に控えていた小姓が動き出す。二人の小姓が膳に載せられた勅書を恭しく捧げ持ち、静子と光秀の前にそれぞれの膳を置いて下がる。

靜子僅以視線望向光秀,不知他是否也有相同想法,兩人不由自主地對視起來。

静子は視線だけを光秀へ向けるが、彼も同じことを考えていたのか、はからずして二人で見つめ合う恰好となった。

不顧兩人的動作,信長以下巴示意靜子。靜子察覺那是叫她讀,於是審視勅書內容。

二人の行動をよそに、信長は顎で静子を促した。読め、という事だろうと察した静子は、勅書の中身を検める。

「帝欲將護持藝事之責託付於爾等二人」

「帝(みかど)が、その方ら二人に芸事の保護を任せたいそうだ」

信長見靜子為那獨特且難解的措辭苦惱,便將勅書內容要旨講述出來。

独特の難解な言い回しに四苦八苦している静子を見て、信長が勅書の内容を要約して語った。

勅書大意是設立新職,朝廷出面後援,命令他們保護散佈於日ノ本各地的藝術品與職人。

新たな役職を設け、朝廷が後援するから、日ノ本各地に散らばっている芸術品や、職人たちの保護をせよとの内容だった。

形式上雖為命令,卻可拒絕,近似懇求的內容。就連保存朝廷寶物的東大寺過去也遭遇過兩度的焼討。

形式上は命令だが、断る事も可能という、懇願に近い内容であった。朝廷の宝物を預かる東大寺でさえ、過去に二度の焼き討ちに遭っている。

當然,那並非為了搶奪寶物而起的焼討,但連被視為佛教總本山之一的東大寺也不能保證安全。

勿論、宝物を狙っての焼き討ちではなかったが、仏教の総本山の一つに数えられる東大寺ですら安全ではない。

尤其是松永久秀與三好三人衆對東大寺大佛殿發動的戰鬥,已足以讓公卿們心驚膽寒。

特に松永久秀と三好三人衆が繰り広げた、東大寺大仏殿の戦いは公卿たちの心胆を寒からしめるのに十分であった。

「有意思,就由靜子承接。キンカン不要摻和這種事,我另有差事交付於汝」

「面白いので、静子が引き受けよ。キンカンはその様な事にかかずらうな。貴様には別の仕事を申し付ける」

「是,謹遵」

「はっ、承知致しました」

雖然勅書已被交付,但最終由信長決定了方針。

勅書こそ渡されはしたものの、結局は信長が方針を決定した。

靜子理解,從信長的話可知,勅書上寫的是兩人之中只要有一人接受即可。

信長の言葉から、勅書には静子と光秀のどちらかが受けてくれさえすれば良いと、書かれていたのだと言う事を理解した。

朝廷大概認為,若結合現為武家頂點、最接近天下的織田家之威光與各地寺社的力量,便能保護文物。

今や武家の頂点に立ち、天下に一番近い位置にいる織田家の威光と、地方を纏める寺社たちの力を合わせれば、文物の保護が出来ると朝廷は考えたのだろう。

(嗯……)

(ふむ……)

然而,若僅是接受此事,對信長似乎沒有直接利益,這令她難以釋懷。雖說信長對藝事有理解,但並非對文藝沉迷至此。

しかし、この話を受けたところで信長に利益が無いことが腑に落ちない。芸事にも理解を示すとは言え、信長はそこまで文芸に入れ込んでいる訳ではない。

若不掌握觸動信長心弦的要點,便會辜負他的期待。既然信長不會親自說明,只得靠自己揣測他的胸中所想。

何処に信長の琴線に触れる要素があったのか、そこを抑えておかないと信長の期待を裏切ることになる。信長が自ら明かさない以上、自分でその胸の裡を推測するより他にない。

(……啊,也許懂了)

(…………あ、分かったかも)

信長與柴田交談之際,靜子一直沉思。雖有數種推論卻難以確認,直到她聽到信長脫口而出的「茶器」一詞,靜子立刻捕捉到那個線索。

信長が柴田と話している間中、ずっと静子は沈思黙考していた。幾つか推論は浮かんだが、確信を得られずにいたところ、信長が漏らした『茶器』という単語を、静子の耳は拾い上げた。

缺失的拼圖片湊合完成,靜子全然理解了一切。

欠けていたパズルのピースが揃う。静子は全てを理解した。

(若是保護文物,茶器當然包含其內。若以帝的勅命名義進行文藝調查,便無法推辭此要求。若上樣喜歡,持有者恐會收到不定期限的借用書與對其配合的褒狀吧)

(文物の保護となれば、当然茶器もその対象に含まれる。帝の勅命で文芸の調査をしていると言えば、この要請を突っぱねることは出来ない。上様が気に入れば、持ち主には期限を定めない借用書と、協力に対する感状が届けられるんだろうね)

勢如破竹的織田家再加上雖已衰落但仍不可小覷的朝廷攜手;在武力上我方不敵織田家,且對方還掌握大義名分。

飛ぶ鳥を落とす勢いの織田家に加え、衰えはしたものの決して侮れない朝廷が手を組んだ。武力では織田家に劣り、大義名分すら相手にある。

在此情況下發動戰事無異愚行。所謂的合作請求不過是徵發行為,若違抗便會被後世視為「朝敵」。

この状態でいくさを仕掛けるなど愚の骨頂。協力の要請とは名ばかりの、徴発行為に他ならないが、逆らえば『朝敵』として後世に名を残すことになる。

(上樣的企圖我已看懂,但若一開始就以武力取徑恐招致反彈,先以溫和方式推進較妥。或可請近衛大人與細川大人相助?)

(上様の狙いは判ったけど、最初から力業に頼ると反発が怖いから、まずは穏便に進めよう。近衛様や細川様のご助力を願おうかな?)

雖然大義在我方,沒必要一開始就採取挑釁姿態。靜子決定將以強權為最後手段。

大義がこちらにあるとは言え、最初から喧嘩腰で挑む理由もない。強権に頼るのは最終手段にしよう、そう結論付ける静子だった。

靜子獨自點頭時,信長宣佈了柴田的處遇:任命柴田勝家為總大將,討伐盤據北陸的最後敵對勢力——加賀一向宗。

静子が一人で頷(うなず)いていると、信長が柴田の処遇を発表した。北陸に巣くう最後の敵、加賀一向宗の討伐に際し、柴田勝家を総大将に任じた。

柴田所率領的北陸方面軍,配備了秀吉、佐々以及前田利家和不破光治等為協力將領。以織田家內數一數二的兵力,被命令平定北陸。

柴田が率いる北陸方面軍の陣容は、秀吉や佐々、前田利家に不破光治らを与力として付けられていた。この織田家内でも有数の軍勢を以て、北陸を平らげろと命じられていた。

從這次人事便已確定由柴田負責北陸。在家臣的升遷競爭中,柴田也因此先拔頭籌。

この人事から、北陸を任されるのは柴田であると確定した。家臣達の出世争いでは、柴田が一歩先んじた形となる。

除不關心榮達的靜子外,其他重臣都理解此事的重要性。

栄達に興味がない静子を除く、他の重臣たちは、ことの重大さを理解していた。

(這裡是和史實一致的)

(ここは、史実通りなんだ)

史實上,柴田勝家於1580年11月17日平定加賀國,終結了長達近九十年反覆發生的一揆歷史。

史実では、柴田勝家が1580年11月17日に加賀国を平定し、実に90年もの間、幾度も繰り返された一揆の歴史に終止符を打った。

此次也由柴田承擔平定任務,但社會情勢與史實有所不同。

今回の場合も柴田が平定の任を受けたが、史実とは社会情勢が異なっていた。

史實上,上杉謙信曾進軍加賀國,柴田在手取川之戰中為謙信所挫敗。

史実では上杉謙信が加賀国まで進出し、柴田は手取川の戦いに於いて謙信に煮え湯を飲まされることとなる。

然而現況是已與上杉家結盟,從情勢看來遭遇背叛的可能性極低。越前由光秀駐守,他奉命切斷加賀一向宗的退路。

然るに、現状では上杉家とは同盟を結んでおり、情勢を鑑みても裏切りに遭う可能性は極めて低い。越前には光秀が陣取り、彼は加賀一向宗の退路を断つことを任されていた。

綜合以上,加賀一向宗自始便無勝算;他們只能解除武裝接受信長統治,或是戰至全滅。

これらを踏まえると、加賀一向宗には最初から勝ち目など存在しない。武装解除し、信長の支配を受け入れるか、それとも全滅するまで戦うかのどちらかしか道はなかった。

「我必定會把大任完成給你們看」

「見事、大役を果たしてご覧に入れましょうぞ」

「絕對不要先行攻擊。盡量挑釁他們,待取得他們先行攻擊的理據後再反擊。」

「決して、こちらから攻め込むでないぞ。ひたすら奴らを挑発し、奴らが攻めてきたという大義を得て後(のち)、反撃せよ」

這是一場慘烈的耐性較量。現今信長與本願寺已有和議,若其他本願寺派趁機攻擊信長,石山本願寺也只能默默觀察。

これは壮絶な我慢比べであった。現在信長は本願寺と和平を結んでおり、この間に他の本願寺派が信長を攻撃した場合、石山本願寺は黙ってみているしかない。

只要能做出加賀一向宗先對信長發起攻擊的樣子,石山本願寺一兵也不得動彈。

加賀一向宗が先に信長に仕掛けたという体裁さえあれば、石山本願寺は一兵たりとも動かすことが許されない。

若違反和約,本身就會成為信長攻打石山本願寺的正當理由。

和平の約定に反すれば、それ自体が信長に石山本願寺攻めをさせる大義名分となってしまう。

「照你想的方式去攻吧」

「貴様の思うように攻めてみよ」

信長故意沒有向柴田示以具體方針。他打算讓柴田肩負北陸統治及牽制謙信的重任。

信長は敢えて柴田に具体的な方針を示さなかった。信長は柴田に北陸の統治及び、謙信の抑え役を担わせる心づもりであった。

為此,他判斷柴田已到了必須開始自己思考行動的時候。

その為には、そろそろ全てを自分で考えて動ける必要があると判断したのだ。

信長對柴田施以試煉,是因柴田偏向於等待指示的武將型態。

信長が柴田に試練を課したのは、柴田がどちらかと言えば指示待ちタイプの武将であるためだ。

他正因有信長這位主君,才能發揮一百分的能力;接受主命時能毫不遲疑挺進,但若要自己思考便無法做出判斷。

彼は信長という主君を抱くからこそ、100の力を発揮するタイプであった。主命を受ければ躊躇なく前に進めるが、自身が考えるとなると判断が出来ないでいた。

但若要託付北陸,這樣不行。信長目光無法無時無刻顧及,柴田必須自己思考判斷並採取對策。

しかし、北陸を任せるにはそれではいけない。信長の目が行き届かない以上、柴田は自分で考えて判断し、その場に応じた対策を取らねばならない。

這場對加賀一向宗的征討,將成為判定柴田是否能治理北陸的試金石。

この加賀一向宗征伐は、柴田が北陸を治めるに足るかを見極める、試金石となる。

「哈!必定會帶來好消息!」

「はっ! 必ずや朗報をお届け致します!」

「此次的用人或許有人有話要說。但目前要專注於平定北陸。若此處瓦解,剩下的據點只有紀伊,你們就去那裡立功吧。」

「此度の采配に言いたい事もあろう。しかし、今は北陸平定に注力するのだ。ここを崩せば、残る拠点は紀伊のみよ。貴様らは、そちらで手柄を立てるが良い」

「哈哈!」

「ははっ!」

柴田最先回應,秀吉與光秀等也跟著俯首。信長滿意地點了點頭。

真っ先に柴田が応じ、秀吉や光秀たちもそれに倣って平伏した。彼らの様子に信長は満足げに頷く。

「靜子,我給你獨斷行動的裁量。世上無人不會關注你的舉動。故意讓你自由行動,或可攪亂局勢。」

「静子。貴様には独断で動く裁量を与える。この世の誰しも、貴様の動きには注意を払わずにはおられまい。敢えて貴様を自由にさせることで、場を掻き乱すことが出来るやもしれぬ」

「哈、哈!」

「は、ははっ」

靜子對信長的話感到驚訝。這幾乎等同於交付白紙委任狀,使她無需諮詢信長即可依自身判斷調動部隊。

静子は信長の言に面食らった。いわば白紙委任状を託されたに等しい。信長の指示を仰がずとも、静子の判断で軍を動かすことが可能となる。

以靜子的性格,這也可視為對她不會做出對織田家不利之事的信任證明。靜子軍即使單獨行動也能取得驚人戰果,現轉為遊擊。

静子の性格上、織田家にとって不利益となることはしないという信頼の証とも言えた。単独部隊でも目覚ましい戦果を挙げる静子軍が遊撃に回る。

對敵對勢力而言,沒有比這更嚴酷的了。一張能一舉扭轉局勢的『鬼札』正悄然伏在看不見之處。

これ程、敵対勢力にとって厳しいことは無い。局面を一手でひっくり返す『鬼札』が、見えない場所に伏せられているのだ。

僅僅因為名震一方的靜子軍未現身,便足以對敵持續施加壓力。

名にし負う静子軍が姿を見せないというだけで、敵に圧力を掛け続けることが出来る。

(若解除對靜子的束縛,家中諸臣必會蜂擁而至請求合作。先讓我看看你處理家中紛爭的手腕吧)

(静子の縛りを解けば、家臣共は挙(こぞ)って協力を要請に動こう。まずは家中の諍いを取り仕切る手腕を見せて貰おう)

故意放靜子一馬的理由,亦在於觀察此處在場那些野心勃勃的家臣們會如何行動。

あえて静子を自由にした理由。それは、この場に居合わせた野心溢れる家臣達の動きを見る狙いもあった。

如今彼此相互牽制,雖口中不言但目光已道盡一切。秀吉、光秀乃至柴田都在虎視眈眈,想方設法將靜子納入己隊。

今は互いに牽制し合い、口にこそ出さないものの、目は雄弁に語っていた。秀吉や光秀、それに柴田までもが如何にして静子を自陣営に取り込むかを、虎視眈々と狙っている。

(現在就看這些傢伙能否掌舵了,這將決定能否把國家託付。以靜子為餌讓大家露出馬腳,無論結果如何我皆無損。呵呵,不知會出現鬼還是蛇,倒要好好看戲。)

(さて、こ奴らの舵取りが出来るか否か、それ次第で国を任せられるかが判る。静子を餌に皆が動き、どう転んだところでわしに損はない。ふふっ。鬼が出るか、蛇が出るか、結果を楽しませてもらおう)

不理會信長與柴田等人的盤算,靜子悠閒地思索著如何保護文物。

信長や柴田たちの思いを他所に、静子は暢気にも、どうやって文物を保護しようかと思案していた。

待眾人恢復鎮定之際,信長再次開口。

皆が落ち着きを取り戻した頃合いを見計らい、信長が再び口を開いた。

接著指派信忠為東國征伐的總大將。

北陸に続いて、信忠に東国征伐の総大将を命じる。

雖不復往昔的氣勢,武田仍顯示出強國的存在;而被說與武田、上杉並立的北條,至今仍未表明旗幟。

もはや、かつての勢いはないとはいえ、未だに強国として存在を示す武田。そして武田や上杉と伍すると言われ、未だに旗幟を鮮明にしない北条。

本應處於三方相互牽制的局面,但因收攏上杉,天秤已大幅傾向織田。

本来ならば三竦(すく)みの状態だが、上杉を取り込んだことで天秤は大きく織田へと傾いた。

若把局面鋪陳到這種程度,便能讓信忠取得作為繼承人的足以稱道的武功,同時喪命的風險會顯著降低。

ここまでお膳立てを整えれば、信忠が後継者となるに相応しい武勲でありながら、命を落とす危険性は格段に低くなる。

「承蒙任命,奉命前往討伐東國。」

「東国征伐の任、承りましてございます」

信忠不畏武田或北條等列強,堂堂正正接受使命。開始顯露出作為一名有擔當武將的端倪,令信長露出一抹欣慰的微笑。

武田や北条と言った列強に怯えることなく、信忠は堂々たる態度で拝命する。一廉(ひとかど)の武将としての片鱗を見せ始めた信忠に、信長は頼もし気な笑みを浮かべた。

隨後以信長叮嚀各自不可怠慢準備的話語作結,會議告一段落。

その後、各自準備を怠るなという信長の言葉で、場は締め括られた。

第一道招呼靜子的便是信忠。他見靜子事已了結、正欲早早退去,便未等她回話就把她拉了進來。

真っ先に静子に声を掛けたのは信忠だった。彼は用事も終わったし、早々に退散しようとしていた静子を見つけ、有無を言わさずに引っ張り込んだ。

「借得一名間諜嗎?」

「間者を貸して欲しい?」

面對搶先說出用意的信忠,靜子朝他投以狐疑的目光,然後把他的話原封不動地復述了一遍。

機先を制して用件を告げる信忠に、胡乱(うろん)げな視線を向けつつ、彼女は信忠の言葉をオウム返しに口にした。

「嗯。之前你應該已拉攏了一位出身東國的武將吧?叫什麼來着……」

「うむ。先だって東国出身の武将を取り込んだのであろう? なんと言ったか……」

「會不會是指真田家的事呢?」

「もしかして真田家の事かな?」

「對對,就是那個真田某某。我雖說要借來,但並非由我親自運用。要讓真田某某帶頭,散播那些流言。」

「そうそう、その真田何某(なにがし)だ。借りたいとは言ったが、俺が運用する訳ではない。真田何某に率いて貰い、噂を流して欲しい」

「……大致猜到你的意圖了,不過想聽你親口說清楚一遍可以嗎?」

「……何となく狙いは読めたけど、君の口から正確に教えて欲しいかな?」

僅憑要散布流言這點,靜子便已猜出信忠欲為何事。

噂を流すという時点で、静子は信忠が何をしたいのかを察していた。

信長常常言語簡略,靜子久而久之已習慣探究他心思,漸能在信長未盡言之處領會其意。

信長は得てして言葉が足りず、彼の胸の裡を探る事に慣れた結果、信長が皆まで語らずとも意図するところを酌(く)めるようになっていた。

然而信長也因此開始依賴靜子的敏銳洞察,於是對外人給出只有靜子能理解的粗略指示。

しかし、静子の察しが良いことに胡坐(あぐら)をかき、信長は静子以外には到底理解出来ない大雑把な指示を出すようになった。

靜子並未要求事無鉅細地解釋,但仍希望至少能得到必要的最低指示。

噛んで含めるようにとは言わないが、せめて必要最低限の指示が欲しいと思う静子であった。

「目的很單純:要把民心從武田轉離。交戰時在地民是否合作會決定局勢。雖說情勢本已有利,但正因如此才要再下手,使優勢穩不可動搖。」

「狙いは単純。民の心を武田から離す。いくさに当たっては、現地の民が協力的であるかが状況を左右する。元より有利な状況ではあるが、なればこそ更に優位を揺るぎなきものにするべく一手を講じる」

「滲透敵方領地、進行離反工作會相當耗時,這點可以事先估進來吧?」

「敵地に浸透して、離反工作をするとなると相当に時間が掛かるけど、それは織り込み済みと考えて良いんだよね?」

「當然。要穩紮穩打、徹底進行。即便勝頼向民眾施捨,也要讓人起疑:難道另有不可告人的目的?」

「当然だ。じっくりと腰を据え、徹底的にやる。勝頼が民に施しをしようとも、何か裏があるのでは? と疑心を抱くほどにな」

信忠的策略雖簡單卻極為有效。武士本身不生產物資;一旦耕作民心離去,無論軍力多強,戰事便無從談起。

信忠の作戦は、単純だが効果が高い。基本的に武士は何も生み出さない。作物を育てる民の心が離れれば、如何に軍事力があろうとも、いくさをしているどころではなくなる。

顯著例子為史實中的『長久手之戰』,家康命令各村長交出妻兒為人質,以防被池田軍內通。

顕著な例として、史実での『長久手の戦い』に於ける家康の行動がある。家康は村々の長に対して妻子を人質に差し出させ、池田軍に内通されないよう対策を取った。

原因被認為是德川・織田信雄聯軍在當地民眾中頗不受歡迎。

これは徳川・織田信雄連合軍が地元の民から嫌われていたことが原因とされる。

一旦民心離去,為防止有利於敵方的行為,不得不採取更為嚴厲的手段,陷入惡性循環。

民の心が離れれば、それによる利敵行為を防ぐために、更なる苛烈な措置を取らざるを得ず、悪循環に陥っていく。

史實中信忠在短短一個月左右便攻滅甲斐,據說也是因勝頼遭民眾厭惡,且有人起來更換統治者所致。

史実での信忠は、僅か一月ほどで甲斐を攻め滅ぼしているが、これも勝頼が民たちから疎まれ、為政者を挿(す)げ替えるべく動いたためと言われている。

民眾積極引入織田軍,報告武田軍內情,甚至放火燒村田以降服於織田。

民たちは積極的に織田軍を招き入れ、武田軍の内情を報せ、村や田畑を焼いてまで織田に降った。

民心離散導致防守方遭受焦土政策的屈辱局面,從而促成短期決戰收場。

民心が離れたことで、防衛側が焦土作戦を受けるという屈辱的な情勢を生み、短期決着を促した。

「要做到那一步,就得戳中勝頼的問題點,使家臣們對他的向心力跌入谷底。唉,他本就不討喜,又未被教導如何承襲武田家督,才被譜代家臣輕視……從這點來看,多少有些可憐。」

「そこまでするとなると、勝頼の問題点を突いて、家臣達への求心力を地に落とす必要があるね。まあ、今でも既に嫌われているし、武田家の家督相続に関する教育も受けていないから、譜代の臣に軽んじられているよね……そういう意味では、少し哀れだね」

熟知勝頼一生經過的靜子如此自語。勝頼雖為武田信玄第四子,因為是庶子,成為兄弟中唯一繼承母家諏訪家的名跡者。

勝頼の辿った人生の足跡を知る静子は、そうひとりごちた。武田信玄の四男ではあるが、庶子であったため、勝頼は兄弟の中で唯一母親の生家である、諏訪家の名跡を継いでいる。

因不能以武田之名出頭,他持續被家臣輕視,成年後也未被賜予武田家直系男子必得的「信」字。

武田を名乗れぬがために、家臣達から軽んじられ続け、成人後も武田家直系の男子には必ず与えられる『信』の字を授かれなかった。

勝頼或許對此極為不滿,但信玄與譜代重臣們都選擇忽視此事。

この沙汰に勝頼が大きな不満を抱いていた可能性があるが、信玄や譜代の重臣たちはそれを黙殺した。

信玄死後勝頼成為武田家的當主,卻自始被視為過渡性當主,且甲斐守護職、大膳大夫等官位無一授予於他。

信玄亡き後、武田家の当主となった勝頼だが、最初から中継ぎ当主扱いであった。更に甲斐守護職や、大膳大夫などの官位が、勝頼には一つも与えられなかった。

戰時亦禁止使用象徵武田家的旗幟如風林火山、武田菱,因此一門眾、宗親和譜代重臣更加輕視勝頼。

いくさに於いても風林火山、武田菱などの武田家を象徴する旗の使用も禁じられた。そのため一門衆や御親族衆、譜代の重臣たちは勝頼を更に侮った。

他們率先違抗勝頼的命令,獨斷行事忽視其策略;結果若有成效便據為己有,若失敗則怪罪於勝頼。

率先して勝頼の言いつけに背き、勝頼の政策を無視した独断に走る。その結果、良い成果が出れば手柄を己のものとし、悪ければ勝頼のせいにした。

在未接受繼承武田家家督的教育、未獲得可信賴參謀或親信的情況下,他就繼承了家督。

武田家の家督を継ぐ教育を施されぬまま、信頼できる参謀や腹心を得られぬまま、武田家の家督を継いだ。

因此在諏訪家眼中他被視為「武田的人」而被保持距離;在武田家則被看作「諏訪的人」,地位更低一等。

この為、諏訪家からは「武田の人間」として距離を置かれ、武田家からは「諏訪の人間」として一段低く見られていた。

雖然只是形式上,但他無法整合那些不把主君當主君的家臣,成為在信玄死後決定武田家衰落的愚將而被人所記。

形式上とは言え、主君を主君とも思わない家臣達を纏めることが出来ず、信玄亡き後の武田家の凋落を決定づけた、愚将として名を残している。

「對於先代偉大而導致的遭遇不幸雖感同情,但不會手下留情。」

「先代が偉大であったがための不遇には同情するが、手加減はせぬ」

「……嗯,確實如此呢。」

「……まあ、そうだよね」

勝頼雖開始走上比史實更為艱難的道路,但既然繼承了武田家家督,他便不能鬆懈。

史実以上に過酷な道を歩み始めている勝頼だが、それでも武田家の家督を継いだ以上、手を緩めることは出来ない。

唯有討伐武田家,織田家才能首次自稱為武家之巔。

武田家を討つことで初めて、織田家は武家の頂点を名乗れるのだから。

「三年,還是兩年呢?豪商們或許會有武田家隱匿門戶來洽商的情況,我會通知他們即便如此也可照常交易。」

「三年、いや二年かな? 豪商たちにも武田家が素性を隠して商いを持ちかけて来るだろうけど、構わず取引しても良いって通知をしておくね」

「那樣一來,武田會不會恢復實力呢?」

「それでは武田が力を取り戻してしまうのではないか?」

「某種程度的實力會回來吧。不過,急於立功的勝頼大概會強行擴充軍備吧?你認為他會從哪裡籌措買軍備的資金?照理說只能再向領民徵收吧。以現在武田家的戰力,根本沒有餘力攻入他國。」

「ある程度の力は戻るでしょうね。でも、功を焦る勝頼は軍備拡張を強行しようとするんじゃないかな? その軍備を買い付ける資金は何処から調達すると思う? 順当に考えれば領民から更に徴収するしかないよね。今の武田家の戦力じゃ、他国に攻め入る余裕なんてないからね」

即便做得到,也頂多掠奪國境附近一小塊而已。可那麼做只會換來一點微薄的利益,卻招致諸國的怨恨。

出来たとしても国境付近を少々掠め取る程度が関の山だろう。しかし、それをすれば僅かばかりの利益と引き換えに、他国の恨みを買うだけだ。

如今的武田家,除了對所領課重稅外別無復興之路。靜子希望能啟建新府城,若有可能希望他們著手興建。

今の武田家には、所領に重税を課す以外に取りうる復興の道が無い。出来ることならば、新府城の築城に着手して欲しいと静子は願った。

新府城之築城是以經濟復興為目的的公共工程,但能分得其利者有限,並非將利益再分配至全國的機制。

新府城の築城は、経済復興を目的とした公共事業だが、その利益に与れる者は限られ、国全体へと利益が再配分される仕組みにはなっていない。

若被強加過重負擔、領民不滿一旦爆發,甲斐各地可能會同時發生一揆。

過度な負担を背負わされ、領民の不満が一気に爆発すれば、甲斐の至る所で一揆が起こる可能性もあった。

「原來如此……確實無計可施。細節就交給你們處理。用靜子或真田等人認為妥當的方法,把民心從勝頼身上拉開。我會考慮之後的統治事宜。」

「なるほど……確かにどうしようもないな。まあ、細かいところはそちらに任せる。静子や真田何某が良いと思う方法で、民の心を勝頼から離してくれ。俺はその後の統治について考えておこう」

理解靜子意旨的信忠一邊確認內容,一邊連連點頭。

静子の言わんとする事を理解した信忠は、内容の確認を込めて何度も頷いた。

與信忠道別、正要回程的靜子剛出房間就被喚住了。

信忠と別れ、今度こそ帰路に就こうとした静子だが、部屋を出てすぐに声が掛かった。

「靜子殿,能否給我一點時間?」

「静子殿、少しお時間を頂戴できませぬか?」

「喂,靜子,有些事想和妳說,是否方便?」

「やあ静子、少し話をしたいのだが、構わぬか?」

從靜子的視角右手邊走來的是光秀,左手邊是秀吉。兩人似乎都注意到對方的存在,於是隔著靜子互相對視較勁。

静子から見て右手側からは光秀が、左手側からは秀吉が話しかけてきた。互いに相手の存在に気が付いたようで、静子を挟んで視線をぶつけ合う。

「「其實,有個相當重要的請求……」」

「「実は、折り入って頼みが……」」

靜子心想這下麻煩了時,秀吉與光秀的聲音竟整齊重疊,連時機與內容一字不差,彼此都露出驚訝的表情。

これは面倒な事になったなと静子が思っていると、秀吉と光秀の声が綺麗に重なった。タイミングも内容も一言一句まで一致した事に、お互いが驚いた表情となった。

但兩人很快回過神,露出不悅的表情,開始互相牽制。

しかし、すぐに我に返ると、互いに不快げな表情を浮かべ、相手を牽制し始めた。

「再為了順序爭執下去我可受不了。就交給天命吧。若骰子點數為偶數由明智大人先,若為奇數則由羽柴大人先來說。」

「これ以上、順番で揉めるのは御免です。ここは一つ、運を天に委ねましょう。賽の目が偶数を示せば明智様が、奇数を示せば羽柴様が先として話を伺います」

說罷靜子從懷中掏出一顆正六面體的骰子擲出,滾過板間數次後撞到襖停下。

そう言うと静子は懐から出した正六面体のサイコロを投げた。板の間を何度か転がり、襖に当たってその動きを停めた。

秀吉與光秀屏息注視骰子點數,結果是『四』。光秀一看自己先了便得意揚揚,秀吉則垂肩失落。

秀吉も光秀も固唾を飲んで賽の目を窺う。果たして出た目は『四』であった。自分が先だと理解すると光秀は得意満面となり、逆に秀吉は肩を落として消沈した。

「那麼,先聽明智大人發言。稍後再去羽柴大人那裡。」

「では、明智様からお話を伺います。後程、羽柴様の許へと伺います」

「不必先來通報,等你那邊的事辦妥,隨時來我這裡都可以。」

「先触れは要らぬぞ、そちらの用事が済み次第、いつ来て貰っても構わぬ」

或許認為反駁天意印象不好,秀吉意外地乾脆退讓。光秀雖以扇遮口,但大概笑得更深了。

天の決定に異を唱えるのは印象が悪いと考えたのか、秀吉は意外にもあっさりと引き下がった。光秀は扇子で口元を隠してはいたが、おそらく笑みを深くしていたのだろう。

「不能在此站著閒聊。已備好房間,請勞駕到那裡一趟可以嗎?」

「立ち話という訳には参りませぬ。部屋を用意しておりますゆえ、そちらにご足労願えますか?」

光秀親自引領到的一間房,擺設雅緻不華麗,頗具光秀風格的小巧精緻房間。

光秀自身が案内された一室は、華美にならない絶妙な調度を設(しつら)えられた、光秀らしい小洒落た部屋であった。

但靜子注意到幾名與場內雅緻氛圍不相稱的人,正待在較遠的下座。

しかし、洗練された場の雰囲気にそぐわない人物が数人、離れた下座に控えていることに、静子は気が付いた。

雖略感戒備,靜子仍被引至上座,背後站著才藏,已悄然趕來的慶次在才藏旁坐下。

僅かに警戒しつつも静子は上座へと案内され、その背後に才蔵が立ち、いつの間にか駆けつけていた慶次が才蔵の隣に腰を下ろす。

「這是稍微棘手的事,事先告知於你。」

「少々込み入った話になります。予(あらかじ)め、ご承知おき下され」

「明白了」

「承知しました」

「先介紹一下後面的這位。這位是被委以長宗我部殿水軍之任的池大人。」

「まずは後ろの者を紹介いたします。こちらは長宗我部殿の水軍を任されておられる、池(いけ)殿です」

被光秀介紹的池微微上前,向靜子深深鞠躬。

光秀に紹介された人物、池が僅かに進み出て静子に向かって深々と頭を下げた。

「初次見面。鄙人為長宗我部的家臣,名為池四郎左衛門。」

「お初にお目に掛かります。拙者、長宗我部(ちょうそかべ)が臣、池四郎左衛門(しろうざえもん)と申します」

「啊,這真是周到。我叫靜子。」

「あ、これは御丁寧に。私は静子と申します」

對於這位意外出現的人物,靜子脫口出了一句有些不合時宜的回答。

予期しない人物の登場に、静子は時代にそぐわない返答を返してしまう。

池四郎左衛門頼和(よりかず)。池本是土佐的國人,起初曾與長宗我部國親爭鬥。

池四郎左衛門頼和(よりかず)。池は元々土佐の国人であり、当初は長宗我部国親(くにちか)と争っていた。

但自從娶了他的女兒後便歸屬,成為長宗我部水軍的主力。

しかし、彼の娘を娶ってからは従属し、長宗我部水軍の主力を担うようになっていた。

他亦與堺往來頻繁,支撐長宗我部的財政。

堺との交易を活発に行い、長宗我部の財政を支えた人物でもある。

史實上後來他與妻不和、被懷疑謀反,並被當時的主君長宗我部元親命令自刃。

史実では後に妻と不和になり、謀反の疑いをかけられ、その当時の主君である長宗我部元親(もとちか)の命により自刃させられている。

「為我主君長期助力,卻遲未致意,深表歉意。主君對織田大人與靜子大人的盡力深表感謝。」

「我が主君の為に、長らくご助力を頂戴しておきながら、ご挨拶が遅れた事をお詫び申し上げます。主君は織田様、静子様のご尽力に大変感謝しておりまする」

「那真是太好了(要是說把我們當作實驗場,會被生氣嗎?)」

「それは何よりです(実験場にしたって言ったら、怒られるかな?)」

池道出感謝之語,靜子表面笑臉以對,內心卻不禁抽搐。

池が感謝の言葉を告げる。対する静子は表面をにこやかに繕いつつも、内心では頬が引きつる思いであった。

史實上長宗我部治理土佐耗時10年、統一四國又需再花10年,難道現在能提前整整12年就逼近四國統一了嗎?

史実では土佐統治に10年を費やし、四国統一に更に10年を要した長宗我部が、12年もの時を早めて四国統一に王手を掛けられたのか。

那是由於多重偶然,以及對長宗我部而言幾近神跡般的幸運在起作用。

そこには幾つもの偶然と、長宗我部にとって神懸かり的な幸運が働いたためであった。

當信長上洛時,長宗我部元親尚未完成土佐的統一。之後他觀察信長的一舉一動約一年,卻在一夕之間做出了決斷。

信長が上洛した際、長宗我部元親は未だ土佐統一を果たせずにいた。その後、1年ほど信長の動向を見守っていたが、突如として元親は決断した。

元親主張即便放棄自主獨立也要與信長結盟,最壞情況縱被從屬也無妨。當然家臣們提出反對,但他將所有反對一一壓下。

自主独立を捨てでも、信長と同盟を結ぶ。最悪従属することになっても構わないと元親が言い出した。当然家臣達からは反対の声が上がったが、その悉(ことごと)くを彼は黙らせた。

然而對於信長來說,與連土佐一國都尚未統一的元親結盟,並無任何利益。

しかし、信長からすれば、土佐一国すら統一出来ない元親と同盟を結んだところで、一切の利益がない。

第一次連面見都未能如願,請光秀斡旋的第二次也被冷酷地打發走。

一度目は目通りすら叶わず、光秀に仲介を頼んでの二度目すらも、けんもほろろに追い払われた。

下定決心這是最後一次的元親,幾乎以把國家賣掉般的條件請求從屬,然而仍未從信長那裡得到好答覆。

これが最後と腹を括った元親は、三度目の正直と言わんばかりに、国を投げ売るが如き条件で従属を願い出た。それでも、信長から色よい返事は貰えなかった。

不知信長是否另有考量,他舉出靜子作為籌碼,提議元親與她結盟。

しかし、信長は思うところがあったのか、静子を引き合いに出し、元親に彼女との同盟を結ぶよう持ちかけた。

對靜子而言,元親向信長提出結盟,無異於晴天霹靂。

静子からすれば、元親が信長に同盟を申し出るなどという事は、青天の霹靂であった。

然而,對於知道有一種說法認為因為對待長宗我部的分歧導致信長與光秀反目、進而發生本能寺之變的人來說,絕不能放過這個機會。

しかし、長宗我部の扱いを巡って信長と光秀が反目し、本能寺の変が起きたとされる説を知っている身としては、到底これを見逃すことはできなかった。

靜子判斷長宗我部若能及早統一四國,終將對織田家有利,於是向信長傳達了同意結盟的意見。

長宗我部が早い段階で四国を統一することが、最終的に織田家にとって利益となると判断した静子は、信長に同盟の承諾を伝えた。

「以何為利?」

「何を以て、利とする?」

「長宗我部殿的據點土佐位於四國下方,若有意進攻九州,作為海路上的補給據點極為有利。此外,若他能及早統一四國,便能對中國地方的毛利等施加壓力。若在此確立堅固的主從關係並在四國築起橋頭堡,將成為向日本統一進軍的重要布局。」

「長宗我部殿の拠点たる土佐は、四国の下部にあたります。九州遠征を見込んだ場合、海路上の補給地点としては非常に好立地となります。また、彼が早期に四国を纏め上げれば、中国地方の毛利などに圧力を掛けることが出来ます。ここでしっかりと主従関係を確立し、四国に橋頭保を築ければ、日ノ本統一に向けて躍進するための布石となりましょう」

「哦,頗有遠見。有趣,把調度全權交給你。」

「ほう、中々に先を見ておるな。面白い、差配は貴様に一任する」

靜子向信長展示了從現代帶來的地圖並討論展望,憑藉精確無比的地形圖,信長也能以視覺理解靜子所主張的利點。

静子は現代より持ち込んだ地図を信長に見せつつ、展望を話し合った。正確無比な地形図が描かれる地図のお陰もあり、信長にも静子が唱える利点を視覚的に理解出来た。

在第三次的談判後,長宗我部向信長臣服。雖無法以國力與織田家結盟,但與織田家寶物般的靜子結盟,後來卻帶來卓越的成果。

三度目にして長宗我部は、信長に臣従することとなった。国力的に織田家との同盟は叶わなかったが、それでも織田家秘蔵の静子との同盟は、後に出色の成果となった。

但在此時點長宗我部的立場並無改變。隨後在靜子的促成下,前久行動起來,朝廷頒發了四國統一的綸旨。

ただし、この時点では長宗我部の立場に変化はない。その後、静子の働きかけにより前久が動き、朝廷から四国統一の綸旨が出される。

不過即便朝廷認可,在遙遠的四國之地其實效力幾乎等於不存在。

しかし、朝廷が認めたと言っても遠く離れた四国の地では、実効力など無いに等しい。

僅被視為『朝廷作為朝廷認可長宗我部為四國代表』這種程度的認定而已。

あくまでも『朝廷としては長宗我部を四国の代表として認めます』という程度にしか受け止められていなかった。

起初信長對於對長宗我部提供軍事支援持消極態度,部分是因為織田被包圍無餘力,但更是認為沒有那份義務去做出那樣的投入。

当初、信長は長宗我部への軍事的な支援に消極的な姿勢を示していた。織田包囲網により余裕がなかったという理由もあるが、そこまでする義理も無いと考えていたからだ。

然而發生了一件事將信長的態度徹底改變:在四國與長宗我部爭霸的三好軍,將信長從南蠻訂購、裝載貨物的船擊沉了。

しかし、この信長の姿勢を正反対に変えてしまう事件が起こった。四国で長宗我部と覇を争う三好の軍が、信長が南蛮から手配した荷物を載せた船を沈めてしまったのだ。

貨物滿載了信長費盡心力從南蠻購入的各種礦石。起初,三好軍以為那是長宗我部用於與堺貿易的船隻。

積荷には信長が苦心の末に南蛮より買い付けた、各種の鉱石が満載されていた。当初、三好軍は長宗我部が堺との交易に使用している船と考えていた。

三好觸怒了信長。信長為下一個飛躍耗費巨資與大量時間所取得的成果,被化為海上的浮萍。

三好は信長の逆鱗に触れた。信長が次なる飛躍を期して、莫大な費用と多くの時を費やした成果を、海の藻屑としてしまった。

知悉船隻被擊沉後,信長的憤怒驚人。

船を沈められたと知った信長の怒りは凄まじかった。

戰國時代本無貨物保障,令他憤怒的是耗費巨量時間準備的佈局付諸東流,並因此錯失出手的良機。

戦国時代に荷物の保障などあるはずもなく、それよりも膨大な時間を掛けた仕込みが水泡に帰し、次なる一手を打つための機会を逸したことに激怒した。

信長立刻欲親征四國滅三好,為阻止他,許多家臣受了不輕的傷。

信長は直ちに三好を滅ぼさんと、四国に乗り込もうとしたため、彼を引き留めるため多くの家臣が少なくない傷を負った。

損毀的器物很多,像襖這類完好的反而較少。

損壊した器物も多く、襖などは無事だった物の方が少ない有様であった。

他連日怒火不斷,但轉為冷靜後決定利用長宗我部來滅掉三好。

連日怒りをまき散らしたが、一転して冷静になると信長は長宗我部を使って三好を滅ぼすことに決めた。

然而長宗我部連土佐統一都尚未達成,信長認為需要一個起爆劑。

しかし、未だに土佐統一にすら手を拱(こまね)いている長宗我部ゆえ、起爆剤が必要だと彼は考えた。

於是目標落在了織田家所擁有的九鬼水軍身上。

そこで白羽の矢が立ったのが、織田家の擁する九鬼水軍だった。

九鬼水軍在靜子提供各種技術援助後實現近代化,包括螺旋槳船等,但因未曾歷經海戰,實戰經驗貧乏。

スクリュー船を始め、静子から様々な技術供与の果てに近代化を成し遂げた九鬼水軍だが、海戦自体が無かったため、実戦経験に乏しかった。

信長打算以三好為對手試驗九鬼水軍的實力。

信長は九鬼水軍の実力がどれほどのものかを把握するため、三好を相手に試し斬りを行うつもりであった。

於是九鬼水軍被派往支援長宗我部,長宗我部在未完成土佐統一的情況下便被迫對三好開戰這樣的難題降臨。

こうして長宗我部に九鬼水軍が派遣され、土佐統一を為さずして三好とも戦端を開くという無理難題が長宗我部に降りかかった。

家臣們為突如其來的災禍悲嘆,但元親豁然表示「連這種程度的難事都無法突破,便不可能統一四國」,說服家臣後向三好發起戰事。

家臣達は降って湧いた災難に悲嘆したが、元親は「この程度の無理を通せずして、四国統一は不可能」と開き直り、家臣達を説得した上で、三好にいくさを仕掛けた。

因為是倉促組成的聯合軍,長宗我部軍起初處於被壓制之勢,但局勢自中途開始好轉。

急造の連合軍であるため、最初は押され気味であった長宗我部軍だが、途中から状況が好転する。

三好軍的有能將領『湊巧』病死,且三好軍主力的淡路水軍在九鬼水軍壓倒性火力面前幾近全滅,遭受慘敗。

三好軍の有能な武将が『都合良く』病死し、三好軍の主力であった淡路水軍が九鬼水軍の圧倒的火力の前に、全滅寸前という大敗を喫した。

此外為切斷三好軍補給線,反覆以長射程發揮對陸炮擊,將他們使用的港口一一摧毀殆盡。

更に三好軍の補給路を断つため、長射程を生かした対地砲撃を繰り返し、彼らの使う港を一つ残らず破壊した。

因此喪失海上支援的三好軍以為既然港口被毀,長宗我部軍亦無法從海上登陸攻擊陸地。

これにより海からの支援を受けられなくなった三好軍だが、港を破壊したという事は長宗我部軍も海上から陸へと攻め込めないと考えた。

但九鬼水軍開發了近似現代登陸艦的運輸船,即便沒有港口仍能輸送人員與物資,支援長宗我部軍。

しかし、現代の揚陸艦に近い輸送船を開発していた九鬼水軍は、港が無くとも人員や物資を運び込み、長宗我部軍を支援した。

其間第二次織田包圍網展開,織田家的情況變得窘迫,然而出人意表地在三方原之戰擊敗信玄,並在短短數日內又將長島一向宗驅散。

その間に、第二次織田包囲網が始まり、織田家の状況は苦しくなった。しかし、大方の予想を裏切り、三方ヶ原の戦いでは信玄を打ち破り、僅か数日で長島一向宗をも蹴散らした。

這一急速的事態發展令四國除了長宗我部外的國人們由衷恐懼。

この急展開に長宗我部以外の四国の国人たちは心底怯えた。

尤其是支持三好的一方動搖尤為明顯。長宗我部則不放過此機,交替運用策反與武力來擴張勢力。

特に三好に与する勢力の動揺は顕著だった。対する長宗我部はこの機を逃さず、調略と武力とを交互に織り交ぜて勢力を伸ばした。

如今在四國,不服從長宗我部的只剩下三好的勢力,其他國人都已向長宗我部元親屈服。

今や四国で長宗我部に従わないのは、三好の勢力のみとなっており、他の国人は全て長宗我部元親に屈していた。

「(所謂破竹之勢大概就是這種情況吧)話說回來,我不認為您只是來打招呼。請問您有何要事?」

「(破竹の勢いってこういう事を言うのだろうね)さて、単に挨拶をするためだけにお越しになると思えません。私に何の御用でしょうか?」

回顧過去時,靜子促使池說出接下來的話。若只是單純會面,過去也有過機會。

過去を振り返りつつ、静子は池に次の言葉を促した。単純に面会するだけなら、今までにも機会はあった。

靜子推測,既然沒有先行會面卻要在此刻由光秀來布置場面,必定有重大之事要談。

それをせずに、今この場で光秀が場を整えると言う事は、何か重大な話があると静子は推察した。

「哈哈,您慧眼獨具,實在令人佩服。其實我要說的甚為厚顏,但還是有件事想鄭重向靜子大人請求。」

「ははっ。ご慧眼、恐れ入りましてございます。実は大変に厚かましい事を申しますが、静子様に折り入ってお願いがございます」

「請求?」

「お願い?」

對靜子的提問,池點了點頭,然後提出了一個意外的請求。

静子の問いに池は一つ頷くと、彼は意外な願い事を申し出た。

「其實……我希望能婉拒更多的支援,為此才請您安排了這次會面。」

「実は……これ以上のご支援を遠慮したく、この場を設けて頂きました次第」